JP5842617B2 - エンジンの制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、エンジン始動時の吸入空気量を演算するエンジンの制御装置に関する。
従来、車両に搭載されたエンジンの制御装置では、吸気管内の圧力や吸気流量に基づいてシリンダー内に吸入された吸入空気量が演算されている。吸気管内の圧力は、インテークマニホールドやスロットルバルブの下流側に設けられた圧力センサーで計測される。これらのセンサーは、吸気管の壁面に内蔵させることができるため吸気抵抗になりにくく、エンジンの吸気特性に悪影響を与えにくいという利点がある。しかし、吸気管内圧力が吸入空気量に対して必ずしも比例しない場合があるほか、センサーの検出値が吸気脈動の影響を受けることから、吸入空気量の演算精度を向上させにくいという欠点がある。
一方、吸気流量は、典型的にはスロットルバルブの上流側に設けられるエアフローセンサーや流速センサーで計測される。これらのセンサーは、吸気脈動の影響の少ない正確な吸入空気量を把握できるという長所がある。ただし、実際にシリンダーに導入される吸気流量はセンサーの検出値に対して遅れて変化するため、即時性が要求される制御に適用する場合には応答遅れを考慮する必要がある。
上記のように、吸入空気量の演算精度や応答性はその演算手法によって異なる。そこで、これらの手法をエンジンの運転状態に応じて使い分けることによって、吸入空気量をより正確に把握する技術が提案されている。
例えば特許文献1には、エアフローメーターの検出値と吸気圧センサーの検出値とを併用して二種類の吸入空気量を演算するエンジンの制御装置が記載されている。この技術では、エンジンの始動時に判定される各種条件に基づいて、吸気マニホールドの空気収支モデルにおける空気質量の算出手法を切り換える制御が記載されている。例えば、エンジンの始動時に所定の各種条件が成立するまでは、吸気圧センサーの検出値に基づく吸入空気量を算出し、各種条件の成立後にエアフローメーターの検出値に基づく吸入空気量を算出している。このような演算を経て得られた吸入空気量に基づく燃料噴射量の制御により、排気悪化やトルク段差が生じなくなるとされている。
特開2010−209840号公報
しかしながら、従来の吸入空気量の演算では、通常燃焼時に燃焼室内に存在する気体と、停止中のエンジンの燃焼室内に存在する気体との種類の違いが考慮されていない。
例えば、通常燃焼時の燃焼室内には、前行程で燃焼した排気の残留分である既燃ガスが存在する。図7(a)に示すように、既燃ガスはピストンが排気上死点に位置するときにシリンダーの上端部側に残留するガスであり、新気(すなわち、燃焼室に導入される外気)よりも酸素濃度が著しく低く、エンジントルクの増大にほとんど寄与しない。そのため、従来のエンジントルクの算出手法では、図7(b)に示すように、燃焼室内に存在する気体のうち、ピストンが吸気下死点まで移動する過程でシリンダー内に導入される新気の気体量が、いわゆる吸入空気量として演算されている。
一方、エンジンの停止時には燃焼室内の気体が燃焼しないことから既燃ガスが存在せず、ピストンが排気上死点に位置するときにシリンダーの上端部側には大気圧の空気(外気と同じ酸素濃度を有する空気)が残留する。つまり、エンジンの始動時には、既燃ガスの代わりにエンジントルクの増大に寄与しうる気体がシリンダー内に存在することになる。したがって、シリンダー内に導入される新気の気体量のみを基準とした算定手法では、正確な吸入空気量が把握できない。なお、吸入空気量の演算精度が低下すると、エンジンから実際に出力されたトルクや実際にエンジンで発生すると推定される出力トルクの正しい値を得ることができず、燃料噴射量や空燃比,点火時期等を適切に設定することができなくなるほか、吸入空気量やEGR量,可変動弁機構の作動量の制御等にも影響を及ぼす可能性がある。
本件の目的の一つは、上記のような課題に鑑み創案されたもので、エンジンの制御装置に関し、エンジン始動時の吸入空気量の演算精度を向上させることである。
なお、この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的として位置づけることができる。
(1)ここで開示するエンジンの制御装置は、エンジンのシリンダー内に残留する残留空気量を演算する残留空気量演算手段と、前記エンジンのシリンダーに流入する新気空気量を演算する新気空気量演算手段と、停止中の前記エンジンを始動させる始動時であるか否かを判定する始動時判定手段とを備える。また、前記始動時判定手段にて前記始動時であると判定されたときに、前記残留空気量及び前記新気空気量の加算値に基づいて前記エンジンの吸入空気量を演算する吸入空気量演算手段を備える。
また、前記吸入空気量演算手段で前記加算値に基づいて演算された前記吸入空気量を用いて、前記エンジンの出力するトルクを演算するトルク演算手段と、前記始動時判定手段にて前記始動時であると判定されたときに、前記トルク演算手段で演算された前記トルクに基づき前記エンジンの運転パラメーターを制御する制御手段とを備える。
さらに、前記トルク演算手段が、前記新気空気量と前記加算値との比に基づき、前記始動時の前記トルクを演算する。
前記吸入空気量演算手段は、前記始動時でないときに、前記新気空気量に基づいて前記吸入空気量を演算することが好ましい。つまり、前記残留空気量は前記始動時にのみ考慮されることが好ましい。
なお、前記始動時判定手段は、前記エンジンの何れかのシリンダーで最初の吸気行程又は燃焼行程が完了していない場合に、前記始動時であると判定することが好ましい。一方、全てのシリンダーで最初の吸気行程又は燃焼行程が完了している場合に、前記始動時でないと判定することが好ましい。
(2)また、前記エンジンの回転速度を検出する回転速度検出手段を備え、前記トルク演算手段が、前記回転速度及び前記新気空気量に基づき標準トルクを演算するとともに、前記標準トルクを前記比で補正することにより前記始動時の前記トルクを演算することが好ましい。
)なお、前記残留空気量演算手段が、前記始動時の大気圧に基づいて前記残留空気量を演算することが好ましい。この場合、前記大気圧を検出する大気圧センサーを設けることが好ましい。
)また、前記新気空気量演算手段が、前記エンジンの吸気通路を流通する吸気流量に基づき前記新気空気量を演算することが好ましい。この場合、前記吸気流量を検出するエアフローセンサーを前記エンジンの吸気通路上(例えば、スロットルバルブの上流側)に設けることが好ましい。
)また、前記新気空気量演算手段が、前記エンジンの吸気系圧力に基づいて前記新気空気量を演算することが好ましい。この場合、前記吸気系圧力を検出するインマニ圧センサーを前記エンジンのインテークマニホールドやスロットルバルブの下流側などに設けることが好ましい。
)また、前記エンジンの吸気系に設けられたスロットルバルブ部の上流圧に対する下流圧の圧力比を演算する圧力比演算手段を備えることが好ましい。この場合、前記新気空気量演算手段が、前記圧力比と前記エンジンの回転速度とに基づき、前記新気空気量を演算することが好ましい。
)また、前記圧力比と前記回転速度とに基づき、前記エンジンの体積効率を前記吸気系圧力で標準化した値に相当する体積効率係数を演算する体積効率係数演算手段を備えることが好ましい。この場合、前記新気空気量演算手段が、前記体積効率係数に基づき、前記新気空気量を演算することが好ましい。
開示のエンジンの制御装置によれば、エンジンが始動し始めたときの残留空気量が考慮された正確な吸入空気量を求めることができる。これにより、エンジンの始動直後の燃料噴射量,点火時期,スロットル開度等を適切に制御することができ、エンジンの制御性及び始動性を向上させることができる。
一実施形態に係るエンジンの制御装置のブロック構成及びこの制御装置が適用されたエンジンの構成を例示する図である。 エンジン始動時のシリンダー内部の状態を説明するための模式図であり、(a)はピストンが排気上死点に位置する状態、(b)はピストンが吸気下死点に位置する状態である。 本制御装置の第一演算部での演算内容を説明するためのブロック構成図である。 本制御装置に係る実回転速度Ne及び圧力比RPRSと体積効率係数Kmapとの関係を例示する三次元グラフである。 本制御装置の第二演算部での演算内容を説明するためのブロック構成図である。 本制御装置のトルク演算部での演算内容を説明するためのブロック構成図である。 比較例としてエンジンの通常燃焼時におけるシリンダー内部の状態を説明するための模式図であり、(a)はピストンが排気上死点に位置する状態、(b)はピストンが吸気下死点に位置する状態である。
図面を参照してエンジンの制御装置について説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができるとともに、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることが可能である。
[1.装置構成]
[1−1.エンジン]
本実施形態のエンジンの制御装置は、図1に示す車載のガソリンエンジン10に適用される。ここでは、多気筒のエンジン10に設けられた複数のシリンダーのうちの一つを示す。ピストン16は、中空円筒状に形成されたシリンダー19の内周面19aに沿って往復摺動自在に内装される。また、シリンダー19の天井面19bは、シリンダーヘッド側へ向かって突出した凸形状に形成される。図1では、天井面19bがペントルーフ型(三角屋根形状)に形成されたものが例示されている。この天井面19b,シリンダー19の内周面19a,ピストン16の頂面16aの三者に囲まれた空間は、エンジン10の燃焼室26として機能する。
ピストン16の下部は、コネクティングロッドを介して、クランクシャフト17の軸心から偏心した中心軸を持つクランクアームに連結される。これにより、ピストン16の往復動作がクランクアームに伝達され、クランクシャフト17の回転運動に変換される。
燃焼室26の空間の容積は、ピストン16の上下方向(シリンダー19の筒軸方向)の位置に応じて変化する。例えば、ピストン16が上死点に位置するときに燃焼室26の容積が最小となり、ピストン16が下死点に位置するときに最大となる。なお、ピストン16が上死点に位置するときの容積(燃焼室26の最小容積であって隙間容積)をVcとおき、ピストン16が上死点から下死点まで移動するときの容積(行程容積であって、いわゆるシリンダー容積)をVとおくと、シリンダー19の圧縮比eは以下の式1で表される。
Figure 0005842617
シリンダー19の天井面19bには、吸入空気を燃焼室26内に供給するための吸気ポート11と、燃焼室26内で燃焼した後の排気を排出するための排気ポート12とが穿孔形成される。また、吸気ポート11,排気ポート12の燃焼室26側の端部には、吸気弁14及び排気弁15が設けられる。これらの吸気弁14,排気弁15は、エンジン10の上部に設けられる可変動弁機構27によって各々の動作を個別に制御される。また、シリンダー19の頂部には、点火プラグ13がその先端を燃焼室26側に突出させた状態で設けられる。
可変動弁機構27は吸気弁14及び排気弁15のそれぞれについて、最大バルブリフト量及びバルブタイミングを個別に、又は、連動させつつ変更する機構である。また、シリンダー19の頂部には、点火プラグ13がその先端を燃焼室26側に突出させた状態で設けられる。点火プラグ13による点火時期は、後述するエンジン制御装置1で制御される。
[1−2.吸排気系]
吸気ポート11内には、燃料を噴射するインジェクター18が設けられる。インジェクター18から噴射される燃料量は、後述するエンジン制御装置1によって制御される。また、インジェクター18よりも吸気流の上流側には、インテークマニホールド20(以下、インマニと呼ぶ)が設けられる。このインマニ20には、吸気ポート11側へと流れる空気を一時的に溜めるためのサージタンク21が設けられる。サージタンク21よりも下流側のインマニ20は、各シリンダー19の吸気ポート11に向かって分岐するように形成され、サージタンク21はその分岐点に位置する。サージタンク21は、各々のシリンダーで発生しうる吸気脈動や吸気干渉を緩和するように機能する。
インマニ20の上流側には、スロットルボディ22が接続される。スロットルボディ22の内部には電子制御式のスロットルバルブ23が内蔵され、インマニ20側へと流れる空気量がスロットルバルブ23の開度(スロットル開度)に応じて調節される。このスロットル開度は、エンジン制御装置1によって制御される。
スロットルボディ22のさらに上流側には吸気通路24が接続され、吸気通路24のさらに上流側にはエアフィルター25が介装される。これにより、エアフィルター25で濾過された新気が吸気通路24及びインマニ20を介してエンジン10の各シリンダー19に供給される。
[1−3.検出系]
エンジン10のクランクシャフト17には、その回転角を検出するエンジン回転速度センサー31が設けられる。回転角の単位時間あたりの変化量(角速度)はエンジン10の実回転速度Ne(単位時間あたりの実回転数)に比例する。したがって、エンジン回転速度センサー31は、エンジン10の実回転速度Neを取得する機能を持つ。なお、エンジン回転速度センサー31で検出された回転角に基づいて、エンジン制御装置1の内部で実回転速度Neを演算する構成としてもよい。
エンジン制御装置1の内部又は車両の任意の位置には、大気圧センサー32が設けられる。大気圧センサー32は大気の圧力(大気圧)BP[mmHg]を検出するものである。この大気圧BPは、吸気通路24の入口での圧力(エアフィルター25よりも上流側の圧力)に相当する。
また、車両の任意の位置(例えばアクセルペダルの近傍)には、アクセルペダルの踏み込み操作量(アクセル開度APS)を検出するアクセル開度センサー33が設けられる。アクセル開度APSは、運転者の加速要求に対応するパラメーターであり、すなわちエンジン10への出力要求に対応する。
スロットルバルブ23の下流側には、インマニ圧PIM[mmHg](サージタンク21内の圧力に対応する圧力)を検出するインマニ圧センサー34が設けられる。一方、スロットルバルブ23の上流側の吸気通路24内には、吸気流量Qを検出するエアフローセンサー35が設けられる。上記の各種センサー31〜35で取得された実回転速度Ne,大気圧BP,アクセル開度APS,インマニ圧PIM,吸気流量Qの各情報は、エンジン制御装置1に伝達される。
なお、大気圧センサー32で検出された大気圧BP及びインマニ圧センサー34で検出されたインマニ圧PIMは、エンジン制御装置1において、エンジンの体積効率に準ずる吸気性能の評価指標である体積効率係数Kmapの演算や、シリンダー19内に導入された吸入空気量に対応する実充填効率Ecの演算に用いられる。大気圧センサー32及びインマニ圧センサー34は、エンジン10の吸気系圧力BP,PIMを検出する圧力検出手段として機能する。
また、エアフローセンサー35は、吸気流量Qを検出する流量検出手段として機能する。吸気流量Qも、シリンダー19内に導入された吸入空気量に対応する実充填効率Ecの演算に用いられる。
車両の任意の位置(例えば、車室内)には、一般的なイグニッションキースイッチに連動するキーセンサー36が設けられる。このキーセンサー36は、イグニッションキースイッチの操作位置を検出してその操作位置に対応する信号をエンジン制御装置1へ出力するセンサーである。イグニッションキースイッチの操作位置には、図1中に示すように、オフ位置(OFF),アクセサリ位置(ACC),オン位置(ON),スタート位置(START)等がある。エンジン制御装置1は、この操作位置がスタート位置であるときに停止中のエンジン10を始動させる。また、イグニッションキースイッチがオフ位置又はアクセサリ位置に操作されたときには、エンジン10を停止させる。
[2.制御装置構成]
上記のエンジン10を搭載する車両には、エンジン制御装置1(Engine Electronic Control Unit,制御装置)が設けられる。このエンジン制御装置1は、例えばマイクロプロセッサやROM,RAM等を集積したLSIデバイスや組み込み電子デバイスとして構成され、車両に設けられた車載ネットワーク網の通信ラインに接続される。なお、車載ネットワーク上には、例えばブレーキ制御装置,変速機制御装置,車両安定制御装置,空調制御装置,電装品制御装置といったさまざまな公知の電子制御装置が、互いに通信可能に接続される。
エンジン制御装置1は、エンジン10に関する点火系,燃料系,吸排気系及び動弁系といった広汎なシステムを総合的に制御する電子制御装置であり、エンジン10の各シリンダー19に供給される空気量や燃料噴射量、各シリンダー19の点火時期等を制御するものである。ここでは、エンジン10に要求されるトルクの大きさを基準としたトルクベース制御が実施される。エンジン制御装置1の具体的な制御対象としては、インジェクター18から噴射される燃料量や噴射時期,点火プラグ13での点火時期,スロットルバルブ23のスロットル開度等が挙げられる。
本実施形態では、エンジン10で実施される制御のうち、エンジン10の始動時にシリンダー19に吸入されたと推定される吸入空気量(実吸入空気量)の演算と、これに基づくトルクベース制御について説明する。ここでいうエンジン10の始動時とは、停止中のエンジン10を始動させる始動時のことであり、車両のイグニッションキースイッチがSTART位置に操作された時点から、エンジン10の各シリンダー19で所定回数の燃焼行程(あるいは、吸気行程)が終了するまでの期間を指すものとする。また、ここでいう所定回数とは、典型的には一回である。この場合、エンジン10の全てのシリンダー19で最初に混合気が爆発し終わるまでの期間が「エンジン10の始動時」となる。ただし、上記の所定回数を二回以上としてもよいし、燃焼行程以外の行程の回数を計測してもよい。
前述の通り、通常燃焼時のシリンダー19内には、前行程で燃焼した排気の残留分である既燃ガスが存在する。一方、停止中のエンジン10のシリンダー19内には、既燃ガスが存在しない。例えば、図2(a)に示すように、ピストン16が排気上死点に位置するときの燃焼室26には、既燃ガスの代わりに大気圧の空気が残留する。その後、図2(b)に示すように、ピストン16が吸気下死点まで移動したとき、シリンダー19内には吸気行程で導入された新気(燃料を含む混合気)と残留空気とが混在する。
そこで、エンジン制御手段1は、エンジン始動時の吸入空気量を演算する際には、図2(a)に示す残留空気を考慮して演算を実施する。なお、エンジン10の始動時以外では残留空気を考慮せず、吸気行程で導入された新気量のみに基づいて吸入空気量を演算する。また、このように演算された吸入空気量に基づいてインジェクター18からの燃料噴射量や空燃比を制御するとともに、点火プラグ13での点火時期,スロットルバルブ23のスロットル開度,可変動弁機構27の動作等を制御する。
エンジン制御装置1の入力側には、図1に示すように、エンジン回転速度センサー31,大気圧センサー32,アクセル開度センサー33,インマニ圧センサー34,エアフローセンサー35及びキーセンサー36が接続される。また、エンジン制御装置1の出力側には、トルクベース制御の制御対象である点火プラグ13,インジェクター18,スロットルバルブ23,可変動弁機構27等が接続される。
エンジン制御装置1の内部には、エンジン始動時判定部2,第一演算部3,第二演算部4,トルク演算部5及び制御部6が設けられる。これらの各要素は、電子回路(ハードウェア)によって実現してもよく、ソフトウェアとしてプログラミングされたものとしてもよいし、あるいはこれらの機能のうちの一部をハードウェアとして設け、他部をソフトウェアとしたものであってもよい。
[2−1.エンジン始動時判定部]
エンジン始動時判定部2(始動時判定手段)は、エンジン10の状態が停止状態からの始動時であるか否かを判定するものであり、所定の始動時条件が成立するときに、エンジン10の状態が始動時であると判定する。所定の始動時条件とは、例えば以下の全ての条件が成立することであり、キーセンサー36で検出された操作位置の情報やエンジン回転速度センサー31で検出された実回転速度Neの情報に基づいて判定される。
〔1〕キーセンサーで検出された操作位置がスタート位置又はオン位置である
〔2〕クランキング中である(実回転速度Neが所定の範囲内にある)
〔3〕クランキング行程数が所定値以下である
エンジン始動時判定部2は、これらの全ての条件〔1〕〜〔3〕が成立する場合にエンジン10の状態が始動時であると判定し、この情報を第二演算部4に伝達する。一方、少なくとも何れかの条件が成立しない場合には、エンジン10の状態が始動時でないと判定し、この情報を第二演算部4に伝達する。
[2−2.第一演算部]
第一演算部3は、エンジン10の吸気性能を評価するための指標値の一つである体積効率係数Kmapを演算するものである。この体積効率係数Kmapとは、体積効率Evを吸気系圧力について標準化したものである。ここでいう吸気系圧力とは、エンジン10の吸気系で検出される圧力を意味し、例えばインマニ圧PIMやスロットルバルブ23の下流圧,上流圧,大気圧BPなどである。本実施形態では、測定時の大気圧が標準大気圧(一気圧;760[mmHg])であるときの値に体積効率Evを換算したもののことを、体積効率係数Kmapと定義する。
図3に示すように、第一演算部3には、圧力比演算部3A及び体積効率係数演算部3Bが設けられる。
圧力比演算部3A(圧力比演算手段)は、エンジン10の吸気系圧力に基づいて、スロットルバルブ23部の上流圧に対する下流圧の比を圧力比RPRSとして演算するものである。本実施形態の圧力比RPRSは、インマニ圧センサー34で検出されたインマニ圧PIMと、大気圧センサー32で検出された大気圧BPとに基づいて演算される。ここで演算された圧力比RPRSの値は、体積効率係数演算部3Bに伝達される。なお、大気圧BPから吸気通路24内の圧力損失量を減じたものをスロットルバルブ23の上流圧として求め、これに対するインマニ圧PIMの比を圧力比RPRSとして演算してもよい。
体積効率係数演算部3B(体積効率係数演算手段)は、エンジン10の実回転速度Neと圧力比RPRSとに基づき、体積効率係数Kmapを演算するものである。ここには、実回転速度Ne及び圧力比RPRSと体積効率係数Kmapとの対応マップや数式,関係式などが予め設定されており、体積効率係数演算部3Bはこのような関係に基づいて体積効率係数Kmapを演算する。ここで演算された体積効率係数Kmapの値は、トルク制御部5に伝達される。体積効率係数Kmapを求めるためのマップとしては、例えば図4に示すようなマップが用いられる。
なお、エンジン10の体積効率Evは、インマニ圧PIMが低下するほど小さい値となる。しかし、体積効率Evとインマニ圧PIMとの関係は必ずしも線形ではなく、インマニ圧PIMを変化させたときの体積効率Evの変化量(変化勾配)はインマニ圧PIMが低下するほど大きくなる。これは、体積効率Evの値がインマニ圧PIMで決まる吸入空気のシリンダー19への押し込みやすさだけでなく、可変動弁機構27の作動状態等に応じて決まる吸入空気のシリンダー19への入り込みやすさの影響を受けて変化するためである。
一方、体積効率係数Kmapは吸気系圧力について標準化された値であることから、インマニ圧PIMによる吸入空気の押し込みやすさの影響をほとんど受けない。したがって、体積効率Evの代わりに体積効率係数Kmapを用いることで、エンジン10の吸気性能に対する評価からインマニ圧PIMの影響を取り除くことが可能となる。
[2−3.第二演算部]
第二演算部4は、シリンダー19に吸入されているものと推定される吸入空気量を演算するものである。ここでは、吸入空気量に相当するパラメーターとして、各シリンダー19の充填効率が演算される。充填効率とは、一サイクルで吸入された吸入空気の質量を標準大気条件での行程容積相当の空気質量で除したものである。また、第二演算部4は、エンジン10の始動時と始動時以外の時とでは異なる手法を用いて充填効率を演算する。図5に示すように、第二演算部4には、残留空気量演算部4A,新気空気量演算部4B,第二新気空気量演算部4C及び吸入空気量演算部4Dが設けられる。
残留空気量演算部4A(残留空気量演算手段)は、エンジン10の始動時の残留空気量を演算するものである。ここでは、エンジン10の始動時に限り、直前の吸気行程でシリンダー19に空気が導入されるよりも前から存在していたと考えられる空気量が残留空気量として演算される。本実施形態では、空気質量の代わりに充填効率が演算されるものとし、残留空気量に対応する充填効率のことを残留空気相当充填効率EcREMと呼ぶ。
残留空気相当充填効率EcREMは、大気圧センサー32で検出された大気圧BPに基づき、以下の式2にしたがって演算される。式2中のeは、式1に示されるシリンダー19の圧縮比である。ここで演算された残留空気相当充填効率EcREMの値は、吸入空気量演算部4Dに伝達される。なお、エンジン10の状態が始動時でない場合、残留空気相当充填効率EcREMの値は0とする。
Figure 0005842617
新気空気量演算部4B(新気空気量演算手段)は、新気吸気量を演算するものである。ここでは、エンジン10の状態に関わらず、吸気流量Qに基づく新気空気量の演算が実施される。本実施形態では、直前の吸気行程(ピストン19が上死点から下死点に移動するまでの一行程)の間にエアフローセンサー35で検出された吸気流量Qの合計から実空気量が推定され、これに対応する充填効率がセンサー充填効率EcAFSとして演算される。あるいは、以下の式3に基づいてセンサー充填効率EcAFSが演算される。ここで演算されたセンサー充填効率EcAFSの値は、第二新気空気量演算部4C及び吸入空気量演算部4Dに伝達される。なお、式3中の係数aは予め設定された定数である。
Figure 0005842617
第二新気空気量演算部4C(新気空気量演算手段)は、新気空気量演算部4Bで演算されたセンサー充填効率EcAFSに吸気応答遅れの影響を考慮した実充填効率Ecを演算するものである。センサー充填効率EcAFSは、エアフローセンサー35での検出値の変化が即座に反映されるパラメーターであり、すなわちエアフローセンサー35が設けられる部位(スロットルバルブ23部の近傍)での空気量に対応する。一方、スロットルバルブ23を通過した実際の空気がシリンダー19に到達するまでには、多少の遅れ時間が存在する。そこで、第二新気空気量演算部4Cは、センサー充填効率EcAFSに所定の遅れ処理を施したものを実充填効率Ecの今回値Ec(n)として演算する。
本実施形態の第二新気空気量演算部4Cは、センサー充填効率EcAFSと実充填効率Ecの前回値Ec(n-1)とに基づいて実充填効率Ecの今回値Ec(n)を演算する。この今回値Ec(n)は、センサー充填効率EcAFS及び前回値Ec(n-1)の関数として表現される所定量f(Ec(n-1),EcAFS)に応答遅れを与えたものとされる。応答遅れを与えるための手法は種々考えられるが、一次応答遅れを与える場合には、例えば以下の式4に基づいて実充填効率Ecの今回値Ec(n)を求めることができる。なお、式4中のtは吸気応答遅れに相当する変化を実充填効率Ecの値に与えるための時定数である。ここで演算された実充填効率Ecの今回値Ec(n)は、トルク演算部5に伝達される。
Figure 0005842617
吸入空気量演算部4D(吸入空気量演算手段)は、残留空気量と新気空気量との加算値に基づき、実質的なエンジン10の吸入空気量を演算するものである。ここでは、残留空気相当充填効率EcREMと新気空気量演算部4Bで演算されたセンサー充填効率EcAFSとに基づいて、エンジン10の実質的な充填効率であるトータル充填効率EcTOTALが演算される。すなわち、トータル充填効率EcTOTALは以下の式5で与えられる。ここで演算されたトータル充填効率EcTOTALの値は、トルク演算部5に伝達される。
Figure 0005842617
[2−4.トルク演算部]
トルク演算部5(トルク演算手段)は、第二演算部4で演算された吸入空気量を用いて、エンジン10から出力されるトルクを演算するものである。図6に示すように、トルク演算部5には、標準トルク演算部5A,吸気量比演算部5B及び始動時トルク演算部5Cが設けられる。
標準トルク演算部5Aは、エアフローセンサー35での検出値に基づく吸入空気量から推定されるエンジン10の出力トルクを標準トルクTとして演算するものである。標準トルクTとは、図2(b)に示すシリンダー19内の気体のうち、新気のみによって生成されるトルクである。標準トルク演算部5Aには、標準トルクT,実回転速度Ne及びセンサー充填効率EcAFSの関係を記述した対応マップや数式,関係式が予め設定されており、標準トルク演算部5Aはこのような関係に基づいて標準トルクTを演算する。ここで求められた標準トルクTの値は、始動時トルク演算部5Cに伝達される。
吸気量比演算部5Bは、エアフローセンサー35での検出値に基づく吸入空気量と、実際のシリンダー19内の吸入空気量とがどの程度相違しているのかを把握するためのパラメーターとして、吸気量比Aを演算するものである。この吸気量比Aとは、吸気流量Qから推定される新気空気量に対する、実際の吸入空気量(残留空気量と新気空気量とを加算したもの)の比に相当する。つまりこれは、新気空気量に対応するトルクに対して、実際の吸入空気量で生じさせることのできるトルクの比を意味する。
本実施形態では、新気空気量演算部4Bで演算されたセンサー充填効率EcAFSと吸入空気量演算部4Dで演算されたトータル充填効率EcTOTAL(または、残留空気量演算部4Aで演算された残留空気相当充填効率EcREM)とに基づき、以下の式6に従って吸気量比Aが演算される。ここで演算された吸気量比Aの値は、始動時トルク演算部5Cに伝達される。なお、吸気量比Aは、エンジン10の始動時にのみ1よりも大きい値となる。エンジン10が通常運転している状態では、残留空気相当充填効率EcREMが0となるため、A=1となる。
Figure 0005842617
始動時トルク演算部5Cは、吸気量比演算部5Bで演算された吸気量比Aに基づき、エンジン10の出力トルクの推定値を補正するものである。ここでは、標準トルクTに吸気量比Aを乗じたものが補正後トルクTESTとして演算される。ここで演算された補正後トルクTESTの値は、制御部6に伝達される。
残留空気量と新気吸気量との加算値(すなわち、式6の分子に対応する値)は、実際に筒内に存在する空気量である。つまりここでは、実際に筒内に存在するトータルの空気量が新気空気量に対して何倍であるかを演算し、これと同じ割合でエンジン10から出力されるトルクが増大するものとしている。なお、式1,式2,式6を用いると、補正後トルクTESTは以下の式7のように二通りに表現することができる。
Figure 0005842617
[2−5.制御部]
制御部6(制御手段)は、トルク演算部5で演算された補正後トルクTESTに基づいて、インジェクター18から噴射される燃料量や点火プラグ13での点火時期(点火リタード量),スロットルバルブ23のスロットル開度,可変動弁機構27で制御されるバルブリフト量及びバルブタイミング等を制御するものである。
例えばエンジン10の始動時でない通常時には、新気空気量演算部4Bで演算された新気空気量で生じうるトルクの推定値がトルク演算部5から伝達され、新気空気量に見合った空燃比,燃料噴射量が設定される。また、点火プラグ13での点火時期は、新気空気量で最大のトルクが発生する最適点火時期を基準としたリタード量が設定され、設定されたリタード量となるタイミングで制御信号が点火プラグ13に出力される。
一方、所定の始動時条件が成立するエンジン10の始動時には、残留空気量演算部4Aで演算された残留空気量を含む吸入空気量で生じうるトルクの推定値がトルク演算部5から伝達される。これにより、エンジン10の始動前からシリンダー19内に残存している空気量が加味されたた空燃比,燃料噴射量が設定される。また、点火プラグ13での点火時期は、残存空気量と新気空気量とを加算した吸入空気量で最大のトルクが発生する最適点火時期を基準としたリタード量が設定され、設定されたリタード量となるタイミングで制御信号が点火プラグ13に出力される。
[3.作用,効果]
(1)このように、本エンジン制御装置1では、エンジン10の始動時にシリンダー19内に導入される新気空気量に対応する値(センサー充填効率EcAFS)と、燃焼室26の容積に相当する残留空気量に対応する値(残留空気相当充填効率EcREM)との加算値に基づいて、エンジン10の始動時における吸入空気量に対応する充填効率(トータル充填効率EcTOTAL)が演算される。
したがって、残留空気量が考慮された正確な吸入空気量を求めることができ、エンジン10の制御性や始動性を高めることができる。例えば、エンジン10の始動直後の燃料噴射量,点火時期,スロットル開度等を適切に制御することができる。
(2)また、本エンジン制御装置1では、エンジン10の始動時の燃料噴射量や点火時期,吸入空気量等がトータル充填効率EcTOTALに基づいて制御される。つまり、残留空気によって生じうるトルク増加分を加味した出力トルクの演算が可能となる。したがって、始動直後の空燃比,出力トルクの制御誤差を解消することができ、エンジン10の制御性や始動性を高めることができる。
(3)また、本エンジン制御装置1は、吸気流量Qから推定される新気空気量に対する、実際の吸入空気量(残留空気量と新気空気量とを加算したもの)の比を吸気量比Aとして演算し、これを用いてトルクを制御している。このように、エンジン10の出力トルクがシリンダー19内の空気量にほぼ比例するという特性を利用することで、残留空気量によって出力トルクに与えられる影響の大きさを割合で表現することができ、エンジン始動時の出力トルクの増加量を正確に演算することができる。
(4)特に、本エンジン制御装置1では、吸気量比Aを標準トルクTに乗じたものを補正後トルクTESTとして演算している。一方、吸気量比Aはエンジン10の始動時以外ではA=1になるため、補正後トルクTESTの値は標準トルクTと同一の値となる。このように、エンジン10の出力トルクの演算式をエンジン10の始動時と非始動時とで共通化することができ、簡素な演算構成で正確にエンジントルクを把握することができ、コストを低減させることができるというメリットがある。
(5)また、本エンジン制御装置1では、式2に示すように、大気圧BPに基づいて残留空気相当充填効率EcREMを演算している。これにより、エンジン10の環境条件にかかわらず、始動する時点でシリンダー19内に残留している残留空気量を精度よく演算することができる。
(6)また、本エンジン制御装置1では、吸気流量Qに基づいて新気空気量が演算されるため、吸気脈動の影響を受けない正確な空気量を演算することができる。言い換えれば、出力トルクの推定にインマニ圧PIMが使用されないため、吸気脈動が空気量演算に与える影響を小さくすることができ、出力トルクの推定精度を向上させることができる。また、インマニ圧センサー34を省略することも可能である。
[4.変形例]
上述した実施形態に関わらず、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。本実施形態の各構成は、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせてもよい。
[4−1.インマニ圧を用いる場合]
上述の実施形態の新気空気量演算部4Bは、エアフローセンサー35で検出された吸気流量Qに基づいてセンサー充填効率EcAFSを演算しているが、充填効率の演算手法はこれに限定されない。例えば、体積効率係数Kmap及びインマニ圧PIMに基づいてセンサー充填効率EcPIMを演算してもよい。この場合、体積効率係数Kmapは、体積効率係数演算部3Bで演算されたものを使用すればよい。あるいは、体積効率Evに吸気密度補正を施すことで充填効率を求めてもよい。
この場合、吸気量比演算部5Bでは、センサー充填効率EcPIMとトータル充填効率EcTOTALとに基づき、以下の式8に従って吸気量比Aを演算することとする。式8は、式6中のセンサー充填効率EcAFSを置き換えたものである。また、式8を用いれば、始動時トルク演算部5Cで演算される補正後トルクは、以下の式9のように二通りに表現することができる。
Figure 0005842617
このように、インマニ圧PIMを用いたトルク演算により、演算式からセンサー充填効率EcAFSを取り除くことができる。また、標準トルクTについても、インマニ圧PIMを用いて推定することが可能である。したがって、吸気流量Qが不明な場合であっても正確にエンジン10から出力される補正後トルクTESTを演算することができ、例えばエアフローセンサー35が搭載されていない車両であっても本制御装置を適用することができる。
なお、インマニ圧PIMに基づく吸入空気量の演算では、吸気流量Qに基づく演算のように吸気応答遅れの影響を考慮する必要がないため、制御応答性を向上させることができるというメリットがある。また、式9に示すように、体積効率係数Kmapを用いて吸入空気量を演算することで、エンジン10の体積効率Evが変動したときに実際にシリンダー19に吸入された空気量を精度よく演算することができる。さらに、この体積効率係数Kmapがスロットルバルブ23部の圧力比RPRSに基づいて演算されるため、吸入空気量の演算精度を向上させることができる。またこれにより、エンジン10の始動直後の燃料噴射量や点火時期等の制御性を高めることができる。
[4−2.新気の流入タイミングを考慮する場合]
前述の吸気量比演算部5Bでは、式6に示すように、吸気流量Qから推定される新気空気量に対する比率が演算されているが、「吸気流量Qから推定される新気空気量」の代わりに「対象となるシリンダー19で吸気行程が実施されたときに導入されたものと推定される新気吸気量」を用いることも可能である。つまり、上記の式6の代わりに以下の式10を用いることが考えられる。この場合、始動時トルク演算部5Cで演算される補正後トルクは、以下の式11のように二通りに表現することができる。
Figure 0005842617
このように、吸気行程でシリンダー19内に導入される空気量に対応する充填効率を用いたトルクの補正演算により、エンジン10の燃焼状態が新気の導入量に与える影響と、エンジン始動時に燃焼室26内に残留する残留空気が新気の導入量に与える影響とがともに考慮されるため、エンジン始動時の出力トルクをより正確に演算することができる。また、吸気行程でシリンダー19内に導入される空気量に対応する充填効率をインマニ圧PIM及び体積効率係数Kmapに基づいて演算することで、より正確なトルク演算が可能となる。
[4−3.物質量を用いる場合]
上述の実施形態では、残留空気量と新気吸気量とのそれぞれに対応する充填効率を加算したものを実質的なエンジン10の吸入空気量としているが、充填効率を用いることなく実質的な吸入空気量を求めることも考えられる。例えば、残留空気の物質量(モル数)をn1とおき、新気の物質量をn2とおくと、エンジン始動時にシリンダー19内の空気の物質量はn1+n2である。一方、物質量n1及びn1+n2はそれぞれ、以下の式12,式13のように表現することができる。なお、これらの式12,式13中のTempは空気の温度,Rは気体定数であり、インマニ圧PIMの単位は[kPa]とする。
Figure 0005842617
したがって、吸気量比演算部5Bで演算される吸気量比Aは、以下の式14のように表現することができる。このように、空気の物質量を基準とした演算式によれば、センサー充填効率EcAFSを用いることなく体積効率係数Kmapに基づいてエンジン始動時の出力トルクを求めることができる。
Figure 0005842617
[4−4.その他の変形例]
上述の実施形態のエンジン始動時判定部2は、条件〔1〕〜〔3〕の全てが成立したときにエンジン10の状態が始動時であると判定しているが、具体的なエンジン10の始動時の判定条件はこれに限定されない。例えば、クランキング行程数のみに基づいて始動時であるか否かを判定してもよいし、あるいは上記の始動時条件に加えて(または代えて)、イグニッションキースイッチが操作されてからの経過時間に関する条件を用いてもよい。少なくとも、図2(a),(b)に示すような残留空気がシリンダー19内に存在する状態であるか否かを判定するための条件が上記の始動時条件に含まれていればよい。
また、上述の実施形態では、センサー充填効率EcAFSが新気空気量に対応するパラメーターとして用いられる演算を例示したが、センサー充填効率EcAFSの代わりに実充填効率Ecを使用してもよい。あるいは、演算対象となるシリンダー19でエンジン始動後の最初の吸気行程の終了時にはセンサー充填効率EcAFSを用い、二回目以降は実充填効率Ecを用いることとしてもよい。少なくとも、新気空気量に相関するパラメーターを用いることで、上述の実施形態と同様の効果を奏するものとなる。
また、上述の実施形態では、シリンダー19に吸入された空気量を把握するための指標値として実充填効率Ecを演算するものを例示したが、少なくともシリンダー19に吸入された空気量に相当するパラメーターが演算されるシステムであれば、上記のエンジン制御装置1でエンジン出力を制御することが可能である。したがって、実充填効率Ecの代わりに体積効率Evや空気体積,空気質量を演算する構成としてもよい。
なお、上述の実施形態は、本エンジン制御装置1をガソリンエンジンに適用したものを例示したが、ディーゼルエンジンやその他の燃焼形式の内燃機関に適用することも可能である。
1 エンジン制御装置
2 エンジン始動時判定部(始動時判定手段)
3 第一演算部
3A 圧力比演算部(圧力比演算手段)
3B 体積効率係数演算部(体積効率係数演算手段)
4 第二演算部
4A 残留空気量演算部(残留空気量演算手段)
4B 新気空気量演算部(新気空気量演算手段)
4C 第二新気空気量演算部(新気空気量演算手段)
4D 吸入空気量演算部(吸入空気量演算手段)
5 トルク演算部(トルク演算手段)
6 制御部(制御手段)
10 エンジン
31 エンジン回転速度センサー(回転速度検出手段)
32 大気圧センサー
33 アクセル開度センサー
34 インマニ圧センサー
35 エアフローセンサー
36 キーセンサー

Claims (7)

  1. エンジンのシリンダー内に残留する残留空気量を演算する残留空気量演算手段と、
    前記エンジンのシリンダーに流入する新気空気量を演算する新気空気量演算手段と、
    停止中の前記エンジンを始動させる始動時であるか否かを判定する始動時判定手段と、
    前記始動時判定手段にて前記始動時であると判定されたときに、前記残留空気量及び前記新気空気量の加算値に基づいて前記エンジンの吸入空気量を演算する吸入空気量演算手段と
    前記吸入空気量演算手段で前記加算値に基づいて演算された前記吸入空気量を用いて、前記エンジンの出力するトルクを演算するトルク演算手段と、
    前記始動時判定手段にて前記始動時であると判定されたときに、前記トルク演算手段で演算された前記トルクに基づき前記エンジンの運転パラメーターを制御する制御手段とを備え、
    前記トルク演算手段が、前記新気空気量と前記加算値との比に基づき、前記始動時の前記トルクを演算する
    ことを特徴とする、エンジンの制御装置。
  2. 前記エンジンの回転速度を検出する回転速度検出手段を備え、
    前記トルク演算手段が、前記回転速度及び前記新気空気量に基づき標準トルクを演算するとともに、前記標準トルクを前記比で補正することにより前記始動時の前記トルクを演算する
    ことを特徴とする、請求項記載のエンジンの制御装置。
  3. 前記残留空気量演算手段が、前記始動時の大気圧に基づいて前記残留空気量を演算する
    ことを特徴とする、請求項1又は2記載のエンジンの制御装置。
  4. 前記新気空気量演算手段が、前記エンジンの吸気通路を流通する吸気流量に基づき前記新気空気量を演算する
    ことを特徴とする、請求項1〜の何れか1項に記載のエンジンの制御装置。
  5. 前記新気空気量演算手段が、前記エンジンの吸気系圧力に基づいて前記新気空気量を演算する
    ことを特徴とする、請求項1〜の何れか1項に記載のエンジンの制御装置。
  6. 前記エンジンの吸気系に設けられたスロットルバルブ部の上流圧に対する下流圧の圧力比を演算する圧力比演算手段を備え、
    前記新気空気量演算手段が、前記圧力比と前記エンジンの回転速度とに基づき、前記新気空気量を演算する
    ことを特徴とする、請求項記載のエンジンの制御装置。
  7. 前記圧力比と前記回転速度とに基づき、前記エンジンの体積効率を前記吸気系圧力で標準化した値に相当する体積効率係数を演算する体積効率係数演算手段を備え、
    前記新気空気量演算手段が、前記体積効率係数に基づき、前記新気空気量を演算する
    ことを特徴とする、請求項記載のエンジンの制御装置。
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