JP5841028B2 - Al−Cu系鋳造合金の製造方法 - Google Patents

Al−Cu系鋳造合金の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5841028B2
JP5841028B2 JP2012197633A JP2012197633A JP5841028B2 JP 5841028 B2 JP5841028 B2 JP 5841028B2 JP 2012197633 A JP2012197633 A JP 2012197633A JP 2012197633 A JP2012197633 A JP 2012197633A JP 5841028 B2 JP5841028 B2 JP 5841028B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
molten metal
alloy
ultrasonic
ultrasonic vibration
temperature
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2012197633A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2014050869A (ja
Inventor
西川 直樹
直樹 西川
好樹 恒川
好樹 恒川
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toyota School Foundation
Toyota Motor Corp
Original Assignee
Toyota School Foundation
Toyota Motor Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toyota School Foundation, Toyota Motor Corp filed Critical Toyota School Foundation
Priority to JP2012197633A priority Critical patent/JP5841028B2/ja
Publication of JP2014050869A publication Critical patent/JP2014050869A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5841028B2 publication Critical patent/JP5841028B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Description

本発明は、Al−Cu系鋳造合金の製造方法に係り、特に溶湯を冷却させる際に超音波振動を利用したAl−Cu系鋳造合金の製造方法に関する。
従来から、部材の軽量化を目的として、アルミニウム合金が利用されている。たとえば、アルミニウム合金製の製品を鋳造する際には、Alの溶湯に、Si,Mg,Cuなどの元素が添加されることがある。たとえば、Cuを添加した場合には、Cuは、Alに対して固溶強化および析出強化が期待され、鋳造物の高温強度の向上を図ることができる。
たとえば、このようなアルミニウム製品として、全体を100質量%としたときに、9〜13質量%のSiと、1〜5質量%のCuと、残部であるアルミニウム(Al)と不可避不純物および/または改質元素とからなるアルミニウム系鋳造合金が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
ところで、超音波を液体に照射したとき、液体中への音響流や超音波キャビテーションの発生が広く知られている。金属液相プロセスへの超音波の適用も多数報告されており、中でも超音波による凝固組織の微細化は古くから知られている。このような凝固組織の微細化は、金属を溶融した溶湯に超音波振動した際に、溶湯内に発生するキャビテーションなどの物理現象が密接に関係すると言われおり、超音波振動をアルミニウム合金の鋳造プロセスに適用することは公知となっている(例えば非特許文献1参照)。
特開2012−132054号公報
南埜宜俊他、高圧下におけるアルミニウム合金中の拡散と状態図、(社)軽金属学会、1983年8月,第39巻、第12号、P.921−929
しかしながら、特許文献1の如きアルミニウム合金は、合金中の初晶α−Alに固溶しているCuの濃度が低いため、鋳造合金としての強度が十分なものではなかった。ここで、たとえば、非特許文献1の如く、溶湯に対して単に超音波を付与した場合であっても、Alに対するCuの固溶度は、わずかに広がるものの十分な量のCuが固溶されているものとはいえなかった。
本発明は、このような点を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、Al−Cu系鋳造合金を鋳造するにあたり、Alに対するCuの固溶を向上させ、得られる鋳造合金の強度を高めることができるAl−Cu系鋳造合金の製造方法を提供することにある。
上記課題を鑑みて、発明者らは鋭意検討を重ねた結果、Al−Cu系合金からなる溶湯に、ある特定の期間超音波振動を付与することで、初晶α−Alに対して添加されたCuが画期的に固溶することができるとの新たな知見を得た。
本発明は、発明者らのこの新たな知見に基づくものであり、本発明に係るAl−Cu系鋳造合金の製造方法は、Al−Cu系合金を溶融してAl−Cu系合金からなる溶湯を得る溶融工程と、前記溶湯の冷却過程の際に、前記溶湯に初晶α−Alが晶出し始める時期から前記溶湯が少なくとも共晶温度に到達するまでの間に、前記溶湯に超音波振動を連続して付与することにより、アルミニウム溶湯の初晶α−AlにCuを固溶させる工程と、を少なくとも含むことを特徴とするものである。
本発明によれば、溶湯の冷却過程の際に、Al−Cu系合金の溶湯に初晶α−Alが晶出し始める時期から溶湯が少なくとも共晶温度に到達するまでの間、この溶湯に超音波振動を連続して付与することにより、初晶α−Alに対するCuの固溶量を増加させ、鋳造合金の強度を向上させることができる。
Al−Cu系合金の溶湯に初晶α−Alが晶出し始める時期から溶湯が共晶温度に到達する前に、溶湯への超音波振動の付与を終了した場合には、Cuが初晶α−Alに入りきらず、それ以降も溶湯に超音波振動を付与しなければ、初晶α−Alが元の状態に戻ってしまうことがある。
より好ましい態様としては、前記超音波振動の付与を、前記溶湯が完全に凝固するまで行う。すなわち、この態様によれば、溶湯が共晶温度に到達してから完全に凝固するまでの期間もさらに連続して超音波振動を付与することにより、初晶α−Alに対するCuの固溶量をさらに増加させ、Al−Cu系鋳造合金の強度をさらに高めることができる。
さらに好ましい態様としては、前記共晶温度からの前記凝固した溶湯の冷却速度を、200℃/秒以上の条件で行う。この態様によれば、冷却速度をこの範囲にすることで、Cuの固溶量を確保することができる。すなわち、冷却速度が200℃/秒未満の場合には、一旦初晶α−Alに固溶したCuは元の状態に戻り、初晶α−Alに対するCuの固溶の増加を期待することができない。
さらに、好ましい態様としては、前記Al−Cu系合金として、5〜11質量%Cuが添加されたAl−Cu系合金を用いる。この態様によれば、5〜11質量%Cuが添加されたAl−Cu系合金を用いることにより、Al−Cu系鋳造合金の強度を向上させるとともに、耐腐食性も確保することができる。すなわち、Al−Cu系合金に対するCuの添加量が5質量%未満である場合、Al−Cu系鋳造合金の強度向上を十分に図れない場合がある。一方、Al−Cu系合金に対するCuの添加量が11質量%を超えた場合、Al−Cu系鋳造合金の耐腐食性が低下するおそれがある。さらに、Al−Cu系合金に対するCuの添加量が11質量%を超えた場合であっても、これ以上Al−Cu系鋳造合金の強度向上を期待することができない。
本発明によれば、Al−Cu系鋳造合金を鋳造するにあたり、溶湯の冷却段階で、超音波振動を付与することで、Alに対するCuの固溶を向上させ、得られた鋳造合金の強度を高めたAl−Cu系鋳造合金を得ることができる。
本発明の一実施形態に係るAl−Cu系合金溶湯に超音波振動を付与して凝固を行うための鋳造装置の全体構成を示す側面図。 溶湯に超音波振動を付与する工程を説明するための図。 超音波付与におけるAl−Cu系合金の状態図。 図3のCuの添加量におけるAl−Cu系合金の組織状態を説明するための図。 実施例1、2およびその比較例1、2に係るCuの添加量に対するAl−Cu系鋳造合金のビッカース硬さおよび腐食減量の結果を示した表図。 実施例1、2およびその比較例1、2に係るCuの添加量とAl−Cu系鋳造合金のビッカース硬さとの関係を示した図。 実施例1、2およびその比較例1、2に係るCuの添加量とAl−Cu系鋳造合金の腐食減量との関係を示した図。 実施例1および比較例1のうち添加したCuが3質量%、7質量%におけるAl−Cu系鋳造合金の組織写真を示した図。 実施例1および比較例1のうち添加したCuが7質量%におけるAl−Cu系鋳造合金のSEMおよびSEM−EDXの写真を示した図。 実施例1および比較例1のうち添加したCuが3質量%におけるAl−Cu系鋳造合金のSEMおよびSEM−EDXの写真を示した図。 実施例2、3、4および比較例3、4に係るAl−Cu系鋳造合金の製造方法における冷却速度とAl−Cu系鋳造合金のビッカース硬さの関係を示した図。
次に、発明の実施の形態を説明する。本発明の一実施形態に係るAl−Cu系合金溶湯に超音波振動を付与して凝固を行うための鋳造装置の全体構成を示す側面図である。なお、本実施形態においては、微細結晶組織を有するAl−Cu系合金を実験的に製造する鋳造装置を用いて本発明の実施形態を説明するが、特にこの装置構成のみに限定するものでなく、本実施形態に係る実験装置の構成と同様となるように鋳造装置等を構成することで本発明と同様の作用効果を得ることが可能である。
鋳造装置10(以下、装置10という)は、冷却過程にある金属溶湯を超音波加振しながら凝固させるための装置である。装置10は、図1に示すように、超音波発生部1、処理容器2、処理容器固定部3、熱電対4、上下プレート5、6、図示しない溶湯温度調整部を備えている。
超音波発生部1は、超音波伝達部である超音波ホーン7と、当該超音波ホーン7の底部に連接される超音波振動子8から構成される。超音波ホーン7は、超音波振動子8により発生させた所定方向(本実施形態においては図1に示す矢印方向)の振動エネルギーを被伝達物に伝達する金属製(Ti−6Al−4V(mass%)合金製)の共鳴体である。
超音波ホーン7の上端面は、被伝達物である処理容器2の底部を当接して載置することが可能な形状であり、その外周面はホーン自身の空冷効果を高めるためにフィン形状に加工されている。また、超音波振動子8は、図示しない超音波発振器を介して高周波電源に接続されており、所定の振動条件の超音波振動を発生させることが可能である。ここでは、超音波振動の周波数帯は、17kH〜25kHにあることが好ましい。
処理容器2は、コップ状の金属製るつぼ(上部内径40mm、底部内径30mm、有効深さ33mmのSUS304製容器)であり、本実施形態ではAl−Cu系合金溶湯が貯留される。
処理容器固定部3は、上下方向に伸縮可能であるロッド3aを有するエアシリンダであり、ロッド3aの先端にはロッド3aが下方(処理容器2側)に伸長して処理容器2の上端部を押えるための緩衝材3bを備える。処理容器固定部3は、エアシリンダのロッド3aを下方に伸長し、緩衝材3bの下面を処理容器2の上端部に当接し、処理容器2の上端部を超音波ホーン7側に所定圧にて押圧することで処理容器2が動かないように固定することが可能である。
熱電対4は、溶湯温度を計測する手段であり、処理容器2内に貯留した溶湯内に浸漬して、溶湯内の所定位置における溶湯温度を測定することが可能である。熱電対4は、図示しない計測記録部に接続されており、計測記録部は計測された溶湯温度を連続してモニターしながら記録することが可能である。また、熱電対4にて計測される溶湯温度により溶湯の冷却過程において形成される結晶組織状態を把握することが可能となり、その結果、所望の結晶組織を有する素材を得ることができる。
上プレート5は、処理容器固定部3であるエアシリンダを固定支持するための板状部材である。また、下プレート6は、前記超音波ホーン7と超音波振動子8とを固定支持するための板状部材である。また、上下プレート5、6は、所定間隔を保持した状態で配置されるとともに、超音波加振を行った際に、前記下プレート6の位置が超音波振動子8の共振の腹の部分となるように配置されている。
溶湯温度調整部は、溶湯を加熱または冷却をすることにより、溶湯を溶湯温度するための手段である。溶湯温度調整部は、溶湯に対して所定の条件(温度・時間)にて温度調整を行うことが可能であり、例えば、溶湯が冷却工程において共晶温度に到達したときに、溶湯を共晶温度に保持することが可能なように調節することができる。しかしながら、溶湯が共晶温度に到達したときは、凝固時における潜熱により、共晶温度は保持されるため、特に溶湯温度調整部は用いなくてもよい。
以下に本実施形態に係るAl−Cu系鋳造合金の製造方法を説明する。本実施形態では、Cuが5〜11質量%の範囲で含有した(添加された)Al−Cu系合金を素材として用いる。まず、Al−Cu系合金の素材を溶融してAl−Cu系合金からなる溶湯を得る(溶融工程)。
次に、溶湯の冷却過程の際に、溶湯に超音波振動を付与する。具体的には、上述した装置10を用いて、溶湯に超音波振動を付与する。まず、処理容器2内に所定量の溶湯を注湯して超音波ホーン7の上端部に載置する。載置後、エアシリンダを駆動して緩衝材3bにて処理容器2の上端面を押えて固定する。
この状態で、図示しない超音波発振器により、後述する期間において、超音波振動子8を所定の振動条件にて振動させると、溶湯に超音波振動が非接触(溶湯と超音波ホーン7とが直接触れない状態)で付与(印加)され、処理容器2内の溶湯中に超音波キャビテーション(気泡)と音響流を発生させることが可能である。
すなわち、装置10は、超音波ホーン7の上端面に押しつけられた処理容器2の底面が超音波振動することで、処理容器2内に注湯した溶湯に下方から超音波振動を伝播させることが可能である。こうして、装置10は、溶湯に超音波振動を非接触で印加することが可能となる。
図2は、溶湯に超音波振動を付与する工程を説明するための図である。図3は、超音波付与におけるAl−Cu系合金の状態図である。図4は、図3のCuの添加量におけるAl−Cu系合金の組織状態を説明するための図である。
本実施形態では、図2に示すように溶湯の冷却過程の際に、溶湯に初晶α−Alが晶出し始める時期から溶湯が少なくとも共晶温度に到達するまでの間、溶湯に超音波振動を連続して付与することにより、アルミニウム溶湯の初晶α−AlにCuを固溶させる(図2のパターン2参照)。より好ましくは、超音波振動の付与を、溶湯が完全に凝固するまで行う(図2のパターン1参照)。ここで、初晶α−Alが晶出し始める時期は、溶湯の温度を測定することにより管理することができる。
このように、溶湯の冷却過程の際に、Al−Cu系合金の溶湯に初晶α−Alが晶出し始める時期から溶湯が少なくとも共晶温度に到達するまでの間、この溶湯に超音波振動を連続して付与することにより、図3に示すように、初晶α−Alに対するCuの固溶量を増加させることができる(図3の如くCuの濃度bから濃度aに増加させることができる)。
具体的には、図4に示すように、上述した条件で溶湯に超音波を付与した場合に晶出する初晶α−Al(αa)は、超音波を付与した場合に晶出する初晶α−Al(αb)に比べて、Cuの固溶量が多くなる。特に、溶湯が共晶温度に到達してから完全に凝固するまでの期間もさらに連続して超音波振動を付与することにより、初晶α−Alに対するCuの固溶量をさらに増加させることができる。これにより、鋳造合金の強度(具体的には硬さ)を向上させることができる。
一方、Al−Cu系合金の溶湯に初晶α−Alが晶出し始める時期から溶湯が共晶温度に到達する前に、溶湯への超音波振動の付与を終了した場合(図2のパターン3参照)、Cuが初晶α−Alに入りきらず、それ以降も溶湯に超音波振動を付与しなければ、初晶α−Alが元の状態(濃度bの状態)に戻ってしまう。
さらに、超音波振動の付与後、溶湯温度調整部を用いて、共晶温度からの完全に凝固した溶湯(図2のA点から)の冷却速度を、200℃/秒以上の条件で行う。これにより、Cuの固溶量を確保しやすくなる。すなわち、後述する発明者らの実験によれば、冷却速度が200℃/秒未満の場合には、一旦初晶α−Alに固溶したCuは元の状態に戻り、初晶α−Alに対するCuの固溶の増加を期待することができない場合がある。
このようにして得られたAl−Cu系鋳造合金は、Alに対するCuの固溶を向上させ、その強度を高めることができるので、車両のブレーキ周りなどの耐圧性が要求される部材に、好適に用いることができる。
以下に本実施形態を実施例により説明する。
〔実施例1〕
実施例1では、Al−Cu系鋳造合金を製造した。まず、図5に示すAl−1%Cu合金〜Al−15%Cuの素材を準備し(たとえばAl−7%Cu合金の場合液相線温度639℃、共晶温度550℃、溶融温度760℃)を準備し、黒鉛るつぼ内に投入し、これを溶融炉内に投入した。大気雰囲気下で、溶融炉内の温度を760℃にし、溶融温度に到達後1時間、脱ガスとして、高純度Arガス、0.75MPa、0.5L/minの条件で供給し、30分間静置した。
離型材として、BN(ボロンナイトライド)が塗布された、底面直径45mm、開口部直径58mmの処理容器(SUS製カップ)内に、溶湯深さ54mmになるまで注入した(鋳込み重量170g)。なお、補強のために、処理容器の底部に底板として1mmの厚さのSUSプレートをスポット溶接した。
次に、図1に示す装置を用いて、溶湯に超音波振動を付与した(超音波を付与した)。具体的には、図2のパターン1に示すように、溶湯の冷却過程の際に、溶湯に初晶α−Alが晶出し始める時期(溶湯温度639℃)から溶湯が共晶温度(溶湯温度550℃)に到達し、さらに、溶湯が完全に凝固するまでの間、溶湯に超音波振動を連続して付与した。
すなわち、溶湯が液相線温度(645℃)に到達したときから溶湯が完全に凝固するまでの間、連続して溶湯に超音波を照射した具体的には初晶α−Alが晶出し始めてから150秒間、超音波振動を溶湯に付与した)。その後、放冷する(冷却速度が200℃/秒)ことにより、Al−Cu系鋳造合金を得た。なお、このときの処理容器の押し付け力を6.5Nとし、ホーンは強制冷却し、さらに超音波振動の周波数を20kHとした。
〔実施例2〕
実施例1と同じ製造方法でAl−Cu系鋳造合金を製造した。実施例2が実施例1と相違する点は、超音波照射の時期ある。具体的には、実施例2のものは、図2のパターン2に示すように、溶湯の冷却過程の際に、溶湯に初晶α−Alが晶出し始める時期から溶湯が共晶温度に到達するまでの間、溶湯に超音波振動を連続して付与した。具体的には初晶α−Alが晶出し始めてから170秒間、超音波振動を溶湯に付与した。
〔比較例1〕
実施例1と同じ製造方法でAl−Cu系鋳造合金を製造した。比較例1が実施例1と相違する点は、超音波照射を行っていない点である。
〔比較例2〕
実施例1と同じ製造方法でAl−Cu系鋳造合金を製造した。比較例2が実施例1と相違する点は、超音波照射の時期ある。具体的には、比較例17〜24のものは、図2のパターン3に示すように、溶湯の冷却過程の際に、溶湯に初晶α−Alが晶出し始める時期から溶湯が共晶温度に到達する前に終了した点である。具体的には初晶α−Alが晶出し始めてから75秒間、超音波振動を溶湯に付与した。
<マイクロビッカース硬さ試験>
実施例1、2およびその比較例1、2に係るAl−Cu系鋳造合金に対してマイクロビッカース硬さ試験を行った。具体的には、各Al−Cu系鋳造合金の中央部において、測定荷重を0.025kgで各Al−Cu系鋳造合金ともに5点の測定点の平均値をマイクロビッカース硬さとしている。この結果を図5および図6に示す。
<腐食試験>
実施例1、2およびその比較例1、2に係るAl−Cu系鋳造合金に対して腐食試験を行った。実施例1、2およびその比較例1、2に係るに係るAl−Cu系鋳造合金を厚さ3mm、1辺23mmの正方形状に切出し、端1.5mmをマスキングしてテストピースとした。次に、塩水噴霧試験法(TSH1552Gに準拠)により、塩水をテストピースに噴霧し、CCT試験後の試験片をマスキング除去後、濃硝酸にて洗浄し、テストピースの重量を測定することで、腐食によるテストピースの減量(腐食減量)を算出した。この結果を図5および図7に示す。
<顕微鏡観察>
実施例1、2およびその比較例1、2に係るAl−Cu系鋳造合金に対して顕微鏡観察を行った。図8は、その一例として、実施例1および比較例1のうち添加したCuが3質量%、7質量%におけるAl−Cu系鋳造合金の組織写真を示した図であり、このときの共晶(CuAl)の晶出物面積率も合わせて示した。
<SEM−EDXによる分析>
実施例1、2およびその比較例1、2に係るAl−Cu系鋳造合金に対してSEM−EDXにより、AlおよびCuの分布状態を測定した。図9は、その一例として、実施例1および比較例1のうち添加したCuが7質量%におけるAl−Cu系鋳造合金のSEMおよびSEM−EDXの写真を示した図であり、図10は、実施例1および比較例1のうち添加したCuが3質量%におけるAl−Cu系鋳造合金のSEMおよびSEM−EDXの写真を示した図である。
(結果1)
表1および図6に示すように、実施例1および2の如く、溶湯に初晶α−Alが晶出し始める時期から溶湯が少なくとも共晶温度に到達するまでの間、溶湯に超音波振動を連続して付与することで、Al−Cu系鋳造合金のビッカース硬さが向上したといえる。特に、実施例1の如く、超音波振動の付与を、溶湯が完全に凝固するまで行うことにより、さらにAl−Cu系鋳造合金のビッカース硬さが向上したといえる。
この理由は、図8に示すように、通常、比較例1の如く添加するCuを増加させると共晶(CuAl)の晶出物も増加するが、実施例1の如く上述した期間において溶湯に超音波を付与することにより、共晶(CuAl)の晶出が抑制され、図8および9に示すように初晶α−Alに対するCuの固溶量を増加させることができたといえる。
しかしながら、比較例2の如く、溶湯に初晶α−Alが晶出し始める時期から溶湯が共晶温度に到達する前に終了した場合には、Cuが初晶α−Al(初晶α−Al)に入りきらず、それ以降も溶湯に超音波振動を付与しなければ、初晶α−Alが元の状態に戻ってしまうと考えられる。
さらに、表1および図7に示すように、添加するCuを増加させることにより、比較例1および比較例2の場合には、腐食減量が増加した。しかしながら、実施例1および2の場合には、添加するCuが11質量%以下の場合には、腐食減量の増加は認められなかった。実施例1および2の場合、上述した如く、共晶(CuAl)の晶出が抑制され、初晶α−Alに対するCuの固溶量を増加させることができたことによると考えられる。
このような結果から、5〜11質量%Cuが添加されたAl−Cu系合金を用いることにより、Al−Cu系鋳造合金の強度を向上させるとともに、耐腐食性も確保することができると考えられる。
〔実施例3および4〕
実施例1と同じ製造方法でAl−7%Cu合金を用いてAl−Cu系鋳造合金を製造した。実施例3および4が実施例1と相違する点は、共晶温度から(完全に凝固した時点から)の溶湯の冷却速度(図2の完全凝固以降の冷却速度)を、それぞれ500℃/秒、1000℃/秒にした点である。
〔比較例3および4〕
実施例1と同じ製造方法でAl−7%Cu合金を用いてAl−Cu系鋳造合金を製造した。比較例3および4が実施例1と相違する点は、共晶温度から(完全に凝固した時点から)の溶湯の冷却速度(図2の完全凝固以降の冷却速度)を、それぞれ500℃/秒、1000℃/秒にした点である。
実施例3、4および比較例3、4に係るAl−Cu系鋳造合金に対して上述したマイクロビッカース硬さ試験を行った。この結果を、上述した実施例1Al−7%Cu鋳造合金の結果とともに図11および以下の表1に示す。なお、図11は実施例3、4および比較例3、4に係るAl−Cu系鋳造合金の製造方法における冷却速度とAl−Cu系鋳造合金のマイクロビッカース硬さ試験さの関係を示した図である。
Figure 0005841028
(結果2)
表1および図10に示すように、比較例3および4の如く、冷却速度が200℃/秒未満の場合には、一旦初晶α−Alに固溶したCuは元の状態に戻り、初晶α−Alに対するCuの固溶の増加を期待することができないことがあると考えられる。この結果、Al−Cu系鋳造合金の強度を向上させることができなかったと考えられる。
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
1:超音波発生部、2:処理容器(るつぼ)、3:処理容器固定部、7:超音波ホーン、
8:超音波振動子、10:鋳造装置

Claims (3)

  1. Al−Cu系合金を溶融してAl−Cu系合金からなる溶湯を得る溶融工程と、
    前記溶湯の冷却過程の際に、前記溶湯に初晶α−Alが晶出し始める時期から前記溶湯が少なくとも共晶温度に到達するまでの間、前記溶湯に超音波振動を連続して付与することにより、アルミニウム溶湯の初晶α−AlにCuを固溶させる工程と、を少なくとも含み、
    前記Al−Cu系合金として、5〜11質量%Cuが添加されたAl−Cu系合金を用いることを特徴とするAl−Cu系鋳造合金の製造方法。
  2. 前記超音波振動の付与を、前記溶湯が完全に凝固するまで行うことを特徴とする請求項1に記載のAl−Cu系鋳造合金の製造方法。
  3. 前記共晶温度からの完全に凝固した溶湯の冷却速度を、200℃/秒以上の条件で行うことを特徴とする請求項1または2に記載のAl−Cu系鋳造合金の製造方法。
JP2012197633A 2012-09-07 2012-09-07 Al−Cu系鋳造合金の製造方法 Active JP5841028B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012197633A JP5841028B2 (ja) 2012-09-07 2012-09-07 Al−Cu系鋳造合金の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012197633A JP5841028B2 (ja) 2012-09-07 2012-09-07 Al−Cu系鋳造合金の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2014050869A JP2014050869A (ja) 2014-03-20
JP5841028B2 true JP5841028B2 (ja) 2016-01-06

Family

ID=50609855

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2012197633A Active JP5841028B2 (ja) 2012-09-07 2012-09-07 Al−Cu系鋳造合金の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5841028B2 (ja)

Family Cites Families (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4601489B2 (ja) * 2005-05-13 2010-12-22 独立行政法人産業技術総合研究所 振動凝固鋳造鋳型及びその鋳造法
JP5328569B2 (ja) * 2009-08-27 2013-10-30 トヨタ自動車株式会社 微細結晶組織を有するAl−Si系合金、その製造方法、その製造装置及びその鋳物の製造方法
JP5861254B2 (ja) * 2010-12-21 2016-02-16 株式会社豊田中央研究所 アルミニウム合金製鋳物およびその製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2014050869A (ja) 2014-03-20

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5328569B2 (ja) 微細結晶組織を有するAl−Si系合金、その製造方法、その製造装置及びその鋳物の製造方法
JP2013215756A (ja) Al−Si系鋳造合金の製造方法
Wang et al. Effect of ultrasonic melt treatment on the refinement of primary Al3Ti intermetallic in an Al–0.4 Ti alloy
JP5051636B2 (ja) 鋳造方法とそれに用いる鋳造装置。
JP4594336B2 (ja) 凝固方法
JP5565115B2 (ja) アルミニウム合金の製造方法
Tuan et al. Grain refinement of Al-Mg-Sc alloy by ultrasonic treatment
JP2008200692A (ja) 鋳造方法。
Wu et al. Microstructural evolution of SiC joints soldered using Zn–Al filler metals with the assistance of ultrasound
JP4551995B2 (ja) 鋳物用アルミニウム合金
JP2006102807A (ja) 金属組織改質方法
Wu et al. Microstructure and properties of rheo-diecast Al-20Si-2Cu-1Ni-0.4 Mg alloy with direct ultrasonic vibration process
JP5555435B2 (ja) Al合金鋳造品及びその製造方法
JP5841028B2 (ja) Al−Cu系鋳造合金の製造方法
Tamura et al. Refinement factors of mechanical vibrations on microstructure of Al-7 mass% Si alloys
JP5905809B2 (ja) Al−Si系鋳造合金の製造方法
JP7206965B2 (ja) チタン鋳塊の製造方法および製造装置
Jian et al. Effect of Ultrasonic Vibration on the Solidification Structure of A 356 Alloy
Tsunekawa et al. Appearance of Non-Equilibrium α-Aluminum Grains in Hypereutectic Al-Si Alloy through Sono-Solidification
JP5960634B2 (ja) Al−Si−Cu系共晶合金からなる鋳造品の製造方法
JP2018015788A (ja) アルミニウム合金の溶湯の凝固方法
JP3536559B2 (ja) 半溶融金属の成形方法
Ying et al. Microstructure evolution of 3003/4004 clad ingots under diverse physical fields
JP7211122B2 (ja) チタン鋳塊
Kumar et al. Effect of vibration on mechanical properties of A356 aluminum alloy casting

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20141110

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20150817

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20150825

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20151008

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20151027

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20151112

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 5841028

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250