以下、図面を参照しながら、本実施形態について詳細に説明する。以下の説明において、同一の機能及び構成を有する要素については、同一符号を付し、重複する説明は必要に応じて行う。
(A) 基本構成
図1を参照して、実施形態に係る放射線検出装置の基本構成について、説明する。
図1は、実施形態の放射線検出装置の基本構成を示す鳥瞰図である。
図1に示されるように、実施形態の放射線検出装置1000は、第1の検出部1と、第2の検出部2とを含んでいる。第1の検出部1は、第2の検出部2上に積層されている。第1及び第2の検出部1,2は、積層構造200を形成している。
第1の検出部1は、放射線を検出する機能を有する。
第1の検出部1は、複数の光電変換素子(例えば、フォトダイオード)5がマトリクス状に配置された領域120を含んでいる。以下では、複数のフォトダイオードがマトリクス状に設けられた領域のことを、フォトダイオードアレイ120とよぶ。
第1の検出部1はイメージセンサであり、検出部1のフォトダイオードアレイ120は、画素(セル回路)を形成するフォトダイオード5やリードトランジスタなどの単位セルが配列された画素アレイによって形成されている。第1の検出部1は、1以上のイメージセンサ10のチップを含む。
第1の検出部1は、マトリクス状に配列された複数のフォトダイオード5に放射線が入射した際に発生する電荷を蓄積することによって、外部から放射線を検出する。
第2の検出部2は、放射線を検出する機能を有する。
第2の検出部2は、第1の検出部1と同様の1以上のイメージセンサでもよいし、CdTeのようなシリコンより高感度で放射線の検出の可能な放射線検出デバイスでもよい。
例えば、放射線検出装置1000は、検出部1,2からの出力信号に対して所定の信号処理を施す解析部3を、さらに含む。
(B) 第1の実施形態
図2乃至図14を参照して、第1の実施形態に係る固体撮像装置及びその製造方法について説明する。
(1) 構造
図2乃至図8を用いて、第1の実施形態に係る放射線検出装置の構造について、説明する。
図2は、第1の実施形態の放射線検出装置を模式的に示す鳥瞰図である。図3は、第1の放射線検出装置の断面構造の模式図である。図4は、第1の実施形態の放射線検出装置を模式的に示すブロック図である。
図2乃至図4に示されるように、第1の実施形態の放射線検出装置1000は、第1及び第2の検出部1,2としての2以上のイメージセンサを含む。本実施形態において、第1及び第2の検出部1,2の両方が、イメージセンサを用いて形成されている。
放射線検出装置1000は、第1の検出部1としての少なくとも1つのイメージセンサと、第2の検出部2としての少なくとも1つのイメージセンサとを有する。本実施形態では、支持基板9上に解析部3を積層し、解析部3上に第1及び第2の検出部1,2としての複数のイメージセンサ101,102,・・・,10n−1,10nのチップが積層されている。各々のイメージセンサ101〜10nを区別しない場合には、単にイメージセンサ10と表記する。
フォトダイオード5が、入射した放射線のコンプトン散乱により発生した電荷を捕獲、蓄積し、その電荷に応じた信号を読み出すことによって、放射線の散乱(相互作用)の発生及び放射線の入射が検出される。尚、放射線の散乱(ここでは、コンプトン散乱)により発生する電荷量は、フォトダイオード5の飽和電子数に近い。それゆえ、フォトダイオード5の出力信号に応じて、可視光を検出したフォトダイオード5と放射線を検出したフォトダイオード5とを区別できる。尚、放射線は透過性が高い。それゆえ、第1及び第2の検出部1,2としてのイメージセンサに可視光が入射されないように、イメージセンサ10を覆う遮蔽物(例えば、フィルタや金属膜)が設けられてもよい。
解析部3は、画像処理回路を含む半導体チップであって、LSIである。図2及び図3に示されるように、解析部3のチップは、イメージセンサのチップと同じ支持基板9上に設けられている。例えば、解析部3上に、第1及び第2の検出部1,2の積層構造200が、積層されている。これによって、支持基板9上における放射線検出装置1000の占有面積が、縮小される。なお、解析部3の配置は本実施形態に限定されない。例えば、解析部3は同じ支持基板9上であって、第1及び第2の検出部1,2を積層しなくてもよい。また、支持基板9上に配置されていなくてもよい。
解析部3は、第1及び第2の検出部1,2としてのイメージセンサ10からの出力信号に対する信号処理を行う。図4に示されるように、第1及び第2の検出部1,2としてのイメージセンサ10からの出力信号は、解析部3に送信される。解析部3は、イメージセンサ10からの出力信号を受信し、放射線の飛来方向及び放射線源の位置を予測/特定するための信号処理を行う。処理結果が、解析部3から外部へ出力される。
例えば、解析部3は、各イメージセンサ10のフォトダイオードアレイ120の出力信号の解析(例えば、コンプトン散乱の検出結果に対する各フォトダイオードアレイ120のロウ/カラム情報の重ね合わせ)に基づいて、検出された複数のコンプトン散乱のうちどのコンプトン散乱が一連の多重コンプトン散乱であるか判別できる。また、解析部3は、各イメージセンサ10のフォトダイオードアレイ120の出力信号に基づいて、複数のイメージセンサ10の中から第1の検出部1と第2の検出部2の関係を判別できる。
解析部3は、第1及び第2の検出部1,2としてのイメージセンサ10の動作を制御する制御部としての機能を有していてもよい。
イメージセンサ10は、シリコン等で形成された半導体基板上にフォトダイオード5及びリードトランジスタなどの読み出し回路を備えた単位セル、これらの単位セルを制御するロジック回路又はアナログ回路等の周辺回路を備えている。以下、図5を用いて、イメージセンサの一例について説明する。
図5に示されるように、1つの単位セルUCが、画素としての1つのフォトダイオード5を含む構成のことを、1画素1セル構造とよぶ。
単位セルUC内の各素子5,7A,7B,7C,7Dは、以下のように、接続されている。
フォトダイオード5のアノードは、例えば、接地されている、又は、所定の大きさの定電圧線に接続されている。フォトダイオード5のカソードは、リードトランジスタ7Aの電流経路を介して、フローティングディフュージョン6に、接続されている。
リードトランジスタ7Aは、フォトダイオード5の電荷の蓄積及び転送を制御する。
リードトランジスタ7Aのゲートは、読み出し制御線TRFに接続されている。リードトランジスタ7Aの電流経路の一端はフォトダイオード5のカソードに接続され、リードトランジスタ7Aの電流経路の他端はフローティングディフュージョン6に接続されている。
アンプトランジスタ7Bは、フローティングディフュージョン6の信号(電位)を検知及び増幅する。アンプトランジスタ7Bによって増幅された信号は、垂直信号線VSLに出力される。アンプトランジスタ7Bは、ソースフォロワとして機能する。
アンプトランジスタ7Bのゲートは、フローティングディフュージョン6に接続されている。アンプトランジスタ7Bの電流経路の一端は垂直信号線VSLに接続され、アンプトランジスタ7Bの電流経路の他端はアドレストランジスタ7Dの電流経路の一端に接続されている。
リセットトランジスタ7Cは、フローティングディフュージョン6の電位をリセットする。
リセットトランジスタ7Cのゲートはリセット制御線RSTに接続されている。リセットトランジスタ7Cの電流経路の一端はフローティングディフュージョン6に接続され、リセットトランジスタ7Cの電流経路の他端は電源端子309に接続されている。
アドレストランジスタ7Dは、単位セルUCの活性化を制御する。
アドレストランジスタ7Dのゲートは、アドレス制御線ADRに接続されている。アドレストランジスタ7Dの電流経路の一端はアンプトランジスタ7Bの電流経路の他端に接続され、アドレストランジスタ7Dの電流経路の他端は電源端子309に接続されている。
電源端子309は、ドレイン電源、又は、グランド電源、又はオプティカルブラック領域内の単位セル(基準電位セル)に接続されている。
垂直シフトレジスタ300は、読み出し制御線TRF、アドレス制御線ADR及びリセット制御線RSTに接続されている。垂直シフトレジスタ300は、読み出し制御線TRF、アドレス制御線ADR及びリセット制御線RSTの電位を制御し、フォトダイオードアレイ(画素アレイ)120内の複数の単位セルUCをロウ単位で制御及び選択する。垂直シフトレジスタ300は、各トランジスタ7A,7C,7Dのオン及びオフを制御するための制御信号を、各制御線TRF,ADR,RSTに出力する。
ノイズ除去回路302は、垂直信号線VSLに接続されている。ノイズ除去回路302は、例えば、フォトダイオード(単位セルUC)からのアナログ信号をデジタル信号に変換したり、CDS(Corrected Double Sampling:相関二重サンプリング)処理したりするための処理ユニット303を含む。これによって、フォトダイオードによって検出された信号のノイズが除去される。
水平シフトレジスタ305は、水平選択トランジスタ306のゲートに接続されている。水平シフトレジスタ305は、所定の動作タイミングに基づいて、水平選択トランジスタ306のゲートに、水平選択パルスを供給し、フォトダイオードアレイ120のカラムを制御する。
水平選択トランジスタ306の電流経路の一端は、水平制御線HSLに接続されている。水平選択トランジスタ306の電流経路の他端は、処理ユニット303を介して垂直信号線VSLの一端に接続されている。水平選択トランジスタ306は、水平シフトレジスタ305からの水平選択パルスによって、活性化又は非活性化される。
負荷トランジスタ307は、垂直信号線VSLに対する電流源として用いられる。負荷トランジスタ307のゲートは制御線DCに接続されている。負荷トランジスタ307の電流経路の一端は、垂直信号線VSLを介して、アンプトランジスタ7Bの電流経路の一端に接続される。負荷トランジスタ307の電流経路の他端は、制御線DCに接続されている。
フォトダイオードの信号(電荷)の出力動作の一例について、説明する。例えば、検出部1,2としてのイメージセンサ10は、可視光の画像を形成するためのイメージセンサと実質的に同じ動作で駆動できる。
フォトダイオードアレイ120の所定のロウが、垂直シフトレジスタ300によって選択される。
選択されたロウに属するアドレストランジスタ7Dが、垂直シフトレジスタ133の制御によって、オン状態になる。垂直シフトレジスタ300の制御によって、リセットトランジスタ7Cが、オン状態になる。フローティングディフュージョン6は、オン状態のリセットトランジスタ7Cを介して、電源端子309に接続される。これによって、フローティングディフュージョン6は、リセット状態になる。
垂直信号線VSLの電位は、ソースフォロワを形成しているアンプトランジスタ7Bによって、リセット状態のフローティングディフュージョン6の電位に応じた電圧(リセット電圧)に変化する。リセット電圧は、ノイズ除去回路302に入力される。
リセット電圧がノイズ除去回路302にサンプリングされた後、リセットトランジスタ7Cは、オフ状態にされる。
リードトランジスタ7Aが、垂直シフトレジスタ300の制御によって、オン状態になり、フォトダイオード5に蓄積された電荷(信号電荷)が、フローティングディフュージョン6に転送される。フローティングディフュージョン6の電位は、フォトダイオード5から転送された信号電荷数に応じて変調される。
ソースフォロワを形成しているアンプトランジスタ7Bによって、垂直信号線VSLの電位が、変調されたフローティングディフュージョンの電位(信号電圧)に応じた大きさに変化する。
垂直信号線VSLに出力された信号電圧が、ノイズ除去回路302にサンプリングされる。
共通のロウに属する各単位セルUCからのリセット電圧及び信号電圧は、ノイズ除去回路302によって、アナログ値からデジタル値へ順次変換されたり、リセット電圧及び信号電圧に対するCDS処理されたりする。各単位セルUCからのリセット電圧と信号電圧との差分値がセル信号として、水平シフトレジスタ305及び水平選択トランジスタ306の制御によって、解析部3へ出力される。
これによって、所定のロウに属する複数のフォトダイオードからの信号の出力動作が、完了する。このような、フォトダイオードアレイ120の信号の出力動作が順次繰り返されて、イメージセンサ10が検出した信号が、解析部3に送信及び取得される。
第1及び第2の検出部1,2として用いられるイメージセンサ10は、2画素1セル構造、4画素1セル構造或いは8画素1セル構造のように、1つの単位セルが、2以上の画素(フォトダイオード)を含む単位セルを用いて形成されてもよい。また、イメージセンサ10の動作は、上述の動作に限定されず、放射線の検出シーケンス(動作サイクル)に応じて、適宜変更されてもよい。
なお、図5に示すイメージセンサ10は一例であって限定されることはない。例えば、本実施形態で用いるイメージセンサ10は、図5に示すノイズ除去回路302が無くても、放射線検出装置1000に適用可能である。これは、放射線の入射によって発生した電荷量は比較的多いので、可視光の検出よりもノイズに対してクリティカルではないからである。ノイズ除去回路302等の不要な回路を削除することにより回路面積を小さくすることも可能である。
第1及び第2の検出部1,2としてのイメージセンサ10は、カラーフィルタやマイクロレンズアレイを有していなくてもよい。もちろん、カラーフィルタ及びマイクロレンズアレイを有していてもよい。また、第1及び第2の検出部に用いるイメージセンサ10は、表面照射型CMOSイメージセンサでもよく、また、裏面照射型CMOSイメージセンサでもよい。例えば、表面照射型CMOSイメージセンサにおいて、図3に示す半導体基板150の厚さは、100μm以下(例えば、60μm程度)であり、半導体基板150上の多層配線構造の厚さは、数μmである。
尚、CMOSイメージセンサの代わりに、CCDイメージセンサが、第1及び第2の検出部1,2として用いられてもよい。また、第1及び第2の検出部1,2に用いられるイメージセンサ10は、これらの混合でも構わない。
図3に示されるように、積層されたイメージセンサ10のそれぞれは、半導体基板150内の貫通ビアTVと層間絶縁膜80内の多層配線81とによって、互いに電気的に接続される。
イメージセンサ10が、解析部3上に積層されている場合、解析部3のチップ内に設けられた貫通電極TV/多層配線81によって、イメージセンサ10と解析部3とが、互いに電気的に接続されてもよい。
イメージセンサ10及び解析部3は、接続端子900を介して、支持基板9内に設けられた配線901に接続されてもよい。
尚、積層されたイメージセンサ10間、イメージセンサ10と解析部3又は解析部3と支持基板9とは、ボンディングワイヤによって、互いに接続されてもよい。
図2乃至図5においては、本実施形態の放射線検出装置1000は、放射線を検出するための第1及び第2の検出部1,2に、CMOSイメージセンサが用いられている。
上述のように、本実施形態の放射線検出装置1000は、複数のイメージセンサ10を第1及び第2の検出部1,2として用いて、ガンマ線による多重コンプトン散乱により発生した電荷を検出する。
第1及び第2の検出部1,2によるコンプトン散乱の検出頻度を向上させるために、3以上のイメージセンサ10のチップが積層されることによって、第1及び第2の検出部1,2が形成されることが好ましい。
例えば、支持基板9上に積層された複数のイメージセンサ101〜10nのチップのうち、1回目のコンプトン散乱が検出されたイメージセンサが、第1の検出部1として用いられる。1回目のコンプトン散乱が発生したイメージセンサの下方のイメージセンサチップのうち、1回目のコンプトン散乱により発生した散乱ガンマ線に起因した2回目のコンプトン散乱を検出したイメージセンサが、第2の検出部2として用いられる。
このように、本実施形態において、第1及び第2の検出部1,2は、2以上のイメージセンサ10を含む積層構造200から形成される。
図6は、本実施形態の放射線検出装置における放射線(コンプトン散乱)の検出を説明するための模式図である。
積層されたイメージセンサ10内の複数のフォトダイオード5において、コンプトン散乱により高エネルギーの反跳電子、及び、コンプトン散乱の反跳電子により発生した電荷が、生成される。反跳電子はシリコンと衝突して電荷を生成しながらシリコン中でエネルギーを失って減衰する。生成した電荷はフォトダイオード5により捕獲、蓄積することによって、フォトダイオードアレイ(画素アレイ)120内のおけるコンプトン散乱の発生位置C1,C2及び反跳電子SEの移動方向(軌跡)TEを検出する。尚、図6において、入射ガンマ線IGを模式的に示しているが、1回目のコンプトン散乱の検出時及び装置による放射線の検出シーケンスが完了するまで、不可視のガンマ線IGの飛来方向(入射方向)は、未知である。
第1の検出部1としてのイメージセンサ10iにおいて、装置外部から入射されたガンマ線(入射ガンマ線)IGに起因する1回目のコンプトン散乱が、フォトダイオードアレイ120内のフォトダイオード5によって検出される。
また、1回目のコンプトン散乱に起因する反跳電子SEがイメージセンサ10i内に発生する。反跳電子SEの軌跡TEが、フォトダイオードアレイ120内の複数のフォトダイオード5によって、検出される。フォトダイオードアレイ120内のフォトダイオード5間の間隔(ピッチ)は、例えば、1μmから2μm程度である。このように、比較的小さい間隔で複数のフォトダイオード5が隣り合っていることによって、本実施形態の放射線検出装置1000は、1μmから数十μm程度の反跳電子SEの軌跡TEを検出できる。
1回目のコンプトン散乱によって、入射ガンマ線IGが散乱し、散乱ガンマ線SGが発生する。
イメージセンサ10iより下層(支持基板9側)の第2の検出部2としてのイメージセンサ10jにおいて、散乱ガンマ線SGに起因する2回目のコンプトン散乱が、フォトダイオード5によって検出される。
入射ガンマ線IGの入射方向と散乱ガンマ線SGの散乱方向がなす角(散乱ガンマ線の散乱角)は、入射ガンマ線IGのエネルギーに依存する。それゆえ、入射ガンマ線IGのエネルギーをある範囲に仮定しておくことで、散乱ガンマ線SGの散乱方向、換言すると、2回目のコンプトン散乱が発生する領域を絞り込むことができる。この結果として、2回目のコンプトン散乱の検出の精度が向上する。
本実施形態においては、イメージセンサ10i,10jの出力結果によって、1回目及び2回目のコンプトン散乱の発生位置C1,C2及び反跳電子SEの軌跡TEが、フォトダイオードアレイ120のロウ及びカラムによって示される位置情報(座標)として、取得される。
解析部3は、各検出部1,2のフォトダイオードアレイ120内における1回目及び2回目のコンプトン散乱の発生位置C1,C2、フォトダイオードアレイ120内における反跳電子SEの軌跡(例えば、移動方向の始点/終点)TEの3つの位置情報に基づいた計算処理を実行する。解析部3によって、多重コンプトン散乱の検出によって取得された3つの座標(点)を含む平面RPが計算される。算出された平面(以下、算出平面とよぶ)RPは、ガンマ線の飛来方向(ガンマ線IGの入射方向)に対応する直線を含む。例えば、算出平面RPの延長線上に放射線源が存在する。
得られた算出平面RPに基づいて、本実施形態の放射線検出装置1000は、ガンマ線の飛来方向、及び、ガンマ線IGの入射方向上に存在する放射線源の位置を判別できる。
以上のように、本実施形態の放射線検出装置1000は、複数のイメージセンサによって検出された3つの位置情報を用いた解析によって、ガンマ線のエネルギーの大きさを検出器によって直接測定すること無しに、放射線の飛来方向及び放射線源の位置を予測/特定できる。
このように、本実施形態の放射線検出装置1000は、ガンマ線のエネルギーの大きさを精度よく計測するための構成/機能を含まなくともよいので、装置の大きさを小さくできる。
また、1つのイメージセンサのチップの厚さは、60μm〜100μm程度である。それゆえ、本実施形態によれば、第1及び第2の検出部1,2を形成するために、複数のイメージセンサ10が積層されていても、比較的小さいサイズの放射線検出装置を、提供できる。
また、放射線を検出するためのイメージセンサ10のチップ(シリコンチップ)は、周知の放射線検出装置に用いられている材料(例えば、CdTe)よりも、安価である。それゆえ、本実施形態によれば、低コストの放射線検出装置を、提供できる。
したがって、本実施形態によれば、放射線検出装置のサイズを小さくでき、その装置の製造コストを低くできる。
(b) 多重コンプトン散乱及び反跳電子の検出
図7乃至図11を用いて、本実施形態の放射線検出装置におけるコンプトン散乱の検出及び検出されたコンプトン散乱に基づいた放射線の飛来方向(放射線源の位置)の解析について、説明する。尚、図2乃至図6も適宜用いて、本実施形態の放射線検出装置におけるコンプトン散乱の検出及び放射線の飛来方向(放射線源の位置)の解析について、説明する。
図7は、コンプトン散乱を説明するための模式図である。
比較的高いエネルギー(例えば、100keV〜1MeV程度)のガンマ線が、ある物質(ここでは、シリコン層)内に入射した場合、ある確率で、コンプトン散乱が生じる。
図7に示されるように、コンプトン散乱において、入射されたガンマ線IGは、フォトダイオードを形成するシリコン原子の電子軌道上の電子(軌道電子)OEに衝突する。入射ガンマ線IGと軌道電子OEとの衝突によって、ガンマ線IGは散乱し、高エネルギーの反跳電子SEと散乱ガンマ線SGを発生する。
散乱ガンマ線SGは、入射ガンマ線IGのエネルギーの大きさに応じた角度θ1で、散乱する。また、反跳電子SEも、入射ガンマ線IGのエネルギーの大きさに応じた角度θ2で、原子の電子軌道上から打ち出される。入射ガンマ線IG、散乱ガンマ線SG及び反跳電子SEの間に、エネルギー保存則が、成立している。それゆえ、散乱ガンマ線SGは、入射ガンマ線IGのエネルギーから反跳電子SEのエネルギー分を失ったエネルギーを有する。
入射ガンマ線IGのエネルギーが大きくなると、ガンマ線の散乱断面積は、前方に散乱する傾向が大きくなる。
例えば、入射ガンマ線IGのエネルギーの大きさが、500keVから1MeVの範囲である場合、散乱ガンマ線SGは、70%以上の確率で前方に散乱され、さらにその前方に散乱されるガンマ線はある程度高い確率で入射ガンマ線IGの入射方向を基準(中心)として、入射ガンマ線IGの入射方向と散乱ガンマ線SGの散乱方向がなす角θ1が−30°から+30°の範囲内になる。
例えば、放射線源としてセシウムを想定した場合、放射性セシウム(例えば、134Cs、137Cs)から発生するガンマ線は、500keV以上のエネルギーを有している。
例えば、137Csから放出されるエネルギーは、662keVである。この場合、散乱ガンマ線SGの散乱方向と反跳電子SEの反跳方向とがなす角度(θ1+θ2)は、ほぼ90°である。
ガンマ線のエネルギーが500keVから1MeVの範囲である場合、入射ガンマ線の入射方向を基準とした散乱ガンマ線(散乱光子)SGの散乱角θ1は、上述のように、ある程度高い確率で0°から30°程度の大きさになり、入射ガンマ線IGの入射方向を基準とした反跳電子SEの散乱角θ2は、60°から90°の大きさになる。この場合、反跳直後の反跳電子SEのエネルギーは、0〜100keV程度である。
<コンプトン散乱及び反跳電子の検出>
図8乃至図11を用いて、本実施形態の放射線検出装置におけるコンプトン散乱の検出及び反跳電子の軌跡の検出について、説明する。
図8は、あるイメージセンサにおけるガンマ線の入射方向、散乱ガンマ線及び反跳電子の散乱方向の検出について説明するためのイメージセンサの模式図である。図9は、あるイメージセンサ内における反跳電子の散乱方向の検出について説明するためのイメージセンサの模式的平面図である。また、図10は、あるイメージセンサに対するガンマ線の入射方向、散乱ガンマ線及び反跳電子の散乱方向の検出を説明するためのイメージセンサの模式的断面図である。
図8乃至図10に示されるように、フォトダイオード5(単位セル)が、アレイ状に配列されている。図8乃至図10において、図示の簡略化のため、単位セル内のトランジスタ及び素子分離絶縁膜などの図示は、省略する。
ある空間に存在する放射線源からの不可視のガンマ線(光子)IGは、ある方向及びある入射角度で、イメージセンサ10のフォトダイオードアレイ(画素アレイ)120に、入射する。
入射したガンマ線IGによって、ある確率でコンプトン散乱が発生する。コンプトン散乱が発生した位置に存在するフォトダイオード5Cは、コンプトン散乱の反跳電子によって発生した電荷を、捕獲及び蓄積する。
電荷を蓄積したフォトダイオード5Cの信号が出力されることによって、フォトダイオードアレイ120内におけるコンプトン散乱の発生した位置を、検出できる。この結果として、コンプトン散乱の発生位置を、フォトダイオードアレイ120のロウ及びカラムに対応する座標情報として取得できる。
入射ガンマ線IGによるコンプトン散乱に起因して、反跳電子SEと散乱ガンマ線SGが発生する。上述のように、入射ガンマ線IGのエネルギーが500keVから1MeVの範囲である場合、散乱ガンマ線(散乱光子)SGの散乱角θ1は、ある程度高い確率で0°から30°程度の範囲になり、このとき、ガンマ線の入射方向と反跳電子SEの散乱方向(反跳方向)とによって形成される反跳電子SEの散乱角(反跳角)θ2は、60°から90°の範囲になる。そのため、反跳電子SEは、コンプトン散乱が発生したフォトダイオード5Cに隣接する他のフォトダイオード5に向かって移動する可能性が高い。
尚、図8及び図9に示される例において、反跳電子SEが、半導体基板150の主面に対して平行方向に関してコンプトン散乱が発生したフォトダイオード5Cに隣接する複数のフォトダイオードのうちどのフォトダイオードに向かって移動するかは、ランダムである。
発生した反跳電子SEは、反跳電子SEの有するエネルギーに応じて、複数のフォトダイオード5にまたがって、移動する。反跳電子SEは、シリコン基板150内の原子(電子)と衝突し、電離作用によって反跳電子SEのエネルギーの大きさに応じた電子−正孔対を生成しながら、複数のフォトダイオード5間を移動する。そして、反跳電子SEは、エネルギーを減衰させ、消失する。反跳電子SEが数keVから数百keVのエネルギーを有する場合、反跳電子SEの軌跡TEは、数μmから数十μm程度になる。
生成された電子−正孔対に応じた電荷が、反跳電子SEが通過したフォトダイオード5T内に、捕獲及び蓄積される。これによって、コンプトン散乱が生じたフォトダイオード5Cだけでなく、反跳電子SEが通過したフォトダイオード5Tにおいても、反跳電子SEによって発生した電荷が蓄積される。
電荷を蓄積したフォトダイオードの信号が出力されることによって、フォトダイオードアレイ120内における反跳電子SEの軌跡TEを検出できる。この結果として、反跳電子SEの軌跡TEを、フォトダイオードアレイ120のロウ及びカラムに対応する座標情報として取得できる。
ここで、図10を用いて、コンプトン散乱によって発生した反跳電子SEの検出について説明する。
図10に示されるように、ある入射角度のガンマ線IGは、イメージセンサ10におけるガンマ線の受光面側からイメージセンサ10の深さ方向へ向かって、イメージセンサ10内に入射する。そのため、コンプトン散乱によって発生した反跳電子SEは、半導体基板150の深さ方向に対してある角度を有して、移動する可能性がある。すなわち、反跳電子SEの軌跡TEは、半導体基板150の主面に対して平行方向のベクトル成分だけでなく、半導体基板150の主面に対して垂直方向のベクトル成分を有している。
例えば、デジタルスチルカメラ(例えば、DSLR)用のイメージセンサチップが第1及び第2の検出部1,2として用いられる場合、フォトダイオードアレイ(画素アレイ)120内のフォトダイオードの個数(画素数)は、1000万個(10M画素)以上である。CMOSイメージセンサにおいて、コンプトン散乱を検出するために2次元に配列されたフォトダイオード(画素/単位セル)は、例えば、1μm〜2μmのピッチを有して、隣接している。フォトダイオード5,5Cの不純物半導体層(拡散層)は、例えば、3μm〜4μmの深さ(シリコン基板の主面に対して垂直方向の寸法)を有している。
例えば、一般的なイメージセンサは、可視光に対して60°程度の視野角(画角)を有するように、形成されている。後述のように、本実施形態の放射線検出装置によって計算された放射線の飛来方向及び放射線源の位置を、観測対象の空間(又は被写体)の画像と重ね合わせて表示する場合、可視光に対する視野角に対応するガンマ線の入射角の範囲を考慮して、反跳電子を検出することが好ましい。
イメージセンサの可視光に対する視野角が60°である場合、半導体基板150の表面(イメージセンサの受光面)における法線とガンマ線の入射方向が形成するガンマ線IGの入射角θIは、+30°から−30°の範囲になる。図10の(a)〜(c)において、イメージセンサ120に入射するガンマ線IGのエネルギーが、500keV〜1MeV程度の場合を想定する。上述のように、このエネルギーのガンマ線において、ガンマ線IGの入射方向を基準とした反跳電子SEの反跳角θ2は、ある程度高い確率で60°から90°の範囲になる。
例えば、図10の(a)は、ガンマ線IGが、半導体基板150の法線方向(角度θI=0°)から半導体基板150に入射した場合を示している。反跳電子SEは、半導体基板150表面に対して平行方向を基準(0°)とすると、0°から30°の角度をなして半導体基板150の裏面側(下層のイメージセンサ側)に向かって移動する。
上述のように、反跳電子SEは、フォトダイオードアレイ120内において、数μmから数十μmの距離を移動する。また、フォトダイオードアレイ120内のフォトダイオード5,5Cのピッチは、1μmから2μmである。それゆえ、図10の(a)に示される場合、反跳電子SEの反跳方向が、半導体基板150の表面に対して垂直方向に移動する成分を含んでいたとしても、フォトダイオード間の間隔とフォトダイオードの深さとを考慮すると、反跳電子SEは、複数のフォトダイオードをまたがって移動する可能性が高い。
図10の(b)及び(c)は、ガンマ線IGが、半導体基板150の主面に対する法線に関して30°の角度θIで入射した場合を示している。
図10の(b)は、反跳電子SEが入射ガンマ線IGと同じ方向に反跳し、前方散乱する場合である。反跳電子SEの反跳角θ2が60°から90°の範囲である場合、半導体基板150の表面の法線に対して反跳電子SEの反跳方向がなす角度は、90°から120°となる。換言すると、反跳電子SEは、半導体基板150の表面に対して平行方向を基準として0°から30°の角度(仰角)で、隣接するフォトダイオード5へ向かって移動する。
図10の(c)は、反跳電子SEが入射ガンマ線IGと逆方向に反跳し、後方散乱する場合である。反跳電子SEは、半導体基板150の表面に対して平行方向に対して30°から60°の角度(俯角)で、隣接するフォトダイオード5へ向かって移動する。
図10の(b)及び(c)に示されるように、ガンマ線IGが、イメージセンサの可視光の視野角に対応する入射角度で、3μm〜4μmの深さを有するフォトダイオードが1μm〜2μmのピッチで配列されているフォトダイオードアレイ120に入射した場合、反跳電子SEが半導体基板150の主面に対して垂直方向に移動する成分を有していたとしても、フォトダイオード間の間隔とフォトダイオードの深さとを考慮すると、反跳電子SEは、2以上のフォトダイオード5にまたがるように、イメージセンサ10のフォトダイオードアレイ120内を移動する。
それゆえ、イメージセンサ10の視野角の範囲内の入射角のガンマ線を鑑みた場合、反跳電子SEの軌跡を検出できる。
尚、ガンマ線IGのエネルギーが500keV〜1MeVである場合、散乱ガンマ線SGの散乱角θ1は、ある程度高い確率で0°から30°の範囲になる。図12の(a)〜(c)のように、イメージセンサ10の視野角(ここでは、60°)に対応した範囲の入射角度でイメージセンサ10に入射したガンマ線IGを想定した場合、その入射ガンマ線IGに対応する散乱ガンマ線SGは、半導体基板150の表面に対する法線を基準として0°〜60°の角度の範囲内で、下方のイメージセンサに向かって伝搬する。
それゆえ、図10の(a)〜(c)に示される場合のように、入射ガンマ線IGが半導体基板150の表面に対する法線を基準として+30°から−30°の入射角θIの範囲であれば、1回目のコンプトン散乱が検出されたイメージセンサより下方のイメージセンサに入射する可能性が高い。
尚、上述のように、反跳電子SEはエネルギーを失いながらフォトダイオードアレイ120内を移動する。そのため、反跳電子SEが通過したフォトダイオードにおいて、反跳電子SEの軌跡の終端側に位置するにしたがって、フォトダイオードが蓄積する電荷量は、少なくなる。その結果として、反跳電子SEの軌跡の終端側のフォトダイオードから出力される電気信号は、反跳電子SEの軌跡の始点側のフォトダイオードから出力される電気信号より小さくなる。
以上のように、イメージセンサによって、フォトダイオードアレイ内におけるコンプトン散乱及びその発生位置(座標)、及び、コンプトン散乱によって発生した反跳電子の軌跡を検出できる。
散乱ガンマ線SGは、1回目のコンプトン散乱が発生したイメージセンサより下方のイメージセンサに入射する。イメージセンサに対して入射された散乱ガンマ線SGによって、2回目のコンプトン散乱がある確率で発生する。尚、散乱ガンマ線SGの散乱角及び散乱方向は、入射ガンマ線IGの入射角及び入射方向と同様に、1回目のコンプトン散乱が発生したフォトダイオード5を頂点とした円錐形状の範囲(放射状の領域)で示すことができる。
第1の検出部1としてのイメージセンサ10iと同様の動作によって、第2の検出部2としてのイメージセンサ10jが、散乱ガンマ線SGによるコンプトン散乱(2回目のコンプトン散乱)の反跳電子により発生した電荷を捕捉、蓄積する。この蓄積された電荷を読みだすことによって散乱ガンマ線SGによるコンプトン散乱が発生した位置を検出することができる。この結果として、2回目のコンプトン散乱の発生位置を、フォトダイオードアレイのロウ及びカラムに対応する位置情報として取得できる。
第1及び第2の検出部1,2としてのイメージセンサ10から信号が出力されることによって、1回目のコンプトン散乱の発生位置、1回目のコンプトン散乱の反跳電子の移動方向、及び、2回目のコンプトン散乱の発生位置が、取得される。第1及び第2の検出部1,2によって検出された3つの情報(座標)によって、3つの放射線検出装置内における3次元の位置情報が得られる。
取得された3つの位置情報に基づいて、解析部(画像処理回路)3が、3つの位置情報に対応する座標(点)を含む算出平面を計算する。3つの位置情報に基づいて計算された算出平面は、ガンマ線の飛来方向(飛来方向に対応する直線)を含む。
このように、複数のイメージセンサ10の積層構造から形成される第1及び第2の検出部1,2によって、検出したコンプトン散乱及び反跳電子SEの位置情報に基づいて、ガンマ線の飛来した方向を含む算出平面が算出される。
図11は、本実施形態における多重コンプトン散乱の検出に基づく放射線の飛来方向及び放射線源の位置の解析方法の一例を説明するための模式図である。
図11に示されるように、第1及び第2の検出部(イメージセンサ)を含む放射線検出装置が、ある放射線源RSからの放射線GRを受ける。
入射ガンマ線IGが、第1の検出部1としてのイメージセンサ10iに入射する。
入射ガンマ線IGによるコンプトン散乱が、1回目のコンプトン散乱として、第1の検出部としてのイメージセンサ10iによって検出される。1回目のコンプトン散乱が発生した位置(コンプトン散乱を検出したフォトダイオードの位置)C1が、フォトダイオードアレイ120のロウ及びカラムで示される位置情報(座標)として、取得される。
1回目のコンプトン散乱に起因した反跳電子SEが生成する電荷が、反跳電子SEが通過したフォトダイオードによって蓄積される。この結果として、反跳電子SEの軌跡TEが検出され、反跳電子SEの軌跡TEが、フォトダイオードアレイ120のロウ及びカラムで示される位置情報として、取得される。
散乱ガンマ線SGは、入射ガンマ線IGのエネルギーに応じた大きさの散乱角で、第1の検出部1に対して放射線源RSの反対側に設けられた第2の検出部2(ここでは、イメージセンサ)に、入射する。
散乱ガンマ線SGによって2回目のコンプトン散乱が、第2の検出部としてのイメージセンサ10jによって検出され、2回目のコンプトン散乱が発生した位置(コンプトン散乱を検出したフォトダイオードの位置)C2が、フォトダイオードアレイ120のロウ及びカラムで示される位置情報として、取得される。
フォトダイオードアレイによって得られた信号が、イメージセンサから解析部3に出力され、解析部3は、1回目のコンプトン散乱の発生位置C1を示す位置情報、反跳電子の軌跡TEを示す位置情報(例えば、軌跡の始点/終点)、及び、2回目のコンプトン散乱の発生位置C2を示す位置情報を、受信する。3つの位置情報(3つの座標)に基づいて、放射線の飛来方向の予測及び判別に用いられる算出平面RPが、解析部3によって形成される。
例えば、1回目のコンプトン散乱の発生位置C1と反跳電子の軌跡(軌跡の終点)TEとによって、第1の検出部1としてのイメージセンサのフォトダイオードアレイ120に対応する平面(以下では、フレームともよぶ)内に、直線A1−B1が形成される。
第2の検出部2としてのイメージセンサ10jのフォトダイオードアレイ120に対応する平面(フレーム)内に、直線A2−B2が形成される。例えば、イメージセンサ10jの直線A2−B2は、イメージセンサ10iの直線A1−B1に対して平行な直線になっている。散乱ガンマ線SGの散乱方向(散乱角の大きさ)に応じて、イメージセンサの主面に対して法線方向(チップの積層方向)における直線A1−B1と直線A2−B2との位置は、イメージセンサの主面に対して平行方向にずれる。この結果として、散乱ガンマ線SGの散乱方向(散乱角の大きさ)に応じて、放射線検出装置の受光面(イメージセンサの主面)の法線方向において、算出平面RPに傾きが生じる。
例えば、散乱ガンマ線SGの散乱角が0°である場合、イメージセンサの主面に対して法線方向(イメージセンサの積層方向)において、1回目のコンプトン散乱の発生座標と2回目のコンプトン散乱の発生座標とが重なる位置となり、直線A1−B1と直線A2−B2とはイメージセンサの主面に対して法線方向において重なる。
散乱ガンマ線SGの散乱角は、放射線の飛来方向の予測及び判別のための角度分解能に対応する。
3つの位置情報(3つの点)に基づいて計算された平面RPは、2つのイメージセンサ10i,10jのフォトダイオードアレイ120に設定された各直線A1−B1,A2−B2の一端及び他端の点A1,A2,B1,B2を頂点とする。
多重コンプトン散乱に関する3つの位置情報C1,C2,TEに基づいた算出平面RPを用いた画像処理(例えば、2次元化処理)が、解析部によって、実行される。画像処理された算出平面RPが、放射線検出装置1000の観測範囲に対応した放射線源RS側の2次元平面(以下では、観測平面又は解析画像ともよぶ)S1に、反映される。
算出平面RPに対する画像処理の結果に基づいて、放射線源RS側の2次元平面S1内に、線状又は帯状の領域(以下では、予測領域とよぶ)RRが、形成される。この予測領域RRに示される範囲内に、多重コンプトン散乱を引き起こしたガンマ線IG,SGを放出する放射線源RSが存在する可能性が高いと、判別できる。例えば、予測領域RRは、ある幅(線幅)の線状又は帯状の平面形状で示される。予測領域RRの幅は、フォトダイオードのサイズに応じた第1及び第2の検出部1,2(イメージセンサ10i,10j)のフォトダイオードアレイの位置分解能によって、生じる。
ある観測対象の空間に対して、複数回の多重コンプトン散乱毎に算出平面RP及び領域RRを計算し、複数の算出平面RP及び予測領域RRを算出することによって、放射線GRの飛来方向及び放射線源の位置RSの特定の精度を向上できる。例えば、複数の予測領域RRが交差する領域が、放射線源RSが存在する可能性が高い領域(ホットスポット)と、判別される。
尚、第1の検出部としてのイメージセンサに入射されるガンマ線の入射方向(1回目のコンプトン散乱の発生位置C1)が同じであっても、そのガンマ線に起因する反跳電子の軌跡や散乱ガンマ線の散乱方向は、検出される多重コンプトン散乱毎に異なる。そのため、同じ方向から入射されたガンマ線に対応する算出平面RP及び予測領域RPの形状は、放射線検出装置1000の検出シーケンス及び解析シーケンス毎に異なる。
上述のように、散乱ガンマ線の散乱角は、入射ガンマ線のエネルギーに依存するため、入射ガンマ線のエネルギーをある範囲に仮定しておくことで、2回目のコンプトン散乱が発生する領域を、絞り込むことができる。この結果として、2回目のコンプトン散乱の検出の精度を向上でき、放射線源の飛来方向及び放射線源の位置の予測/判別を向上できる。
放射線検出装置(コンプトンカメラ)内に3以上の検出部を設けて、多重コンプトン散乱における連続した3回以上のコンプトン散乱の発生位置及び2つ以上の反跳電子の軌跡を検出することによって、入射されたガンマ線に対応する算出平面RP及び予測領域RPを算出してもよい。
このように、本実施形態の放射線検出装置1000によって、複数のイメージセンサから構成される検出部1,2によって、ガンマ線の飛来方向及び放射線源の位置を予測/特定できる。
<検出条件>
図12を用いて、イメージセンサを放射線の検出部として用いた放射線検出装置における、放射線(放射線による散乱現象)の検出条件の一例について、説明する。
積層された複数のイメージセンサによってガンマ線によるコンプトン散乱を検出する場合、イメージセンサの1層あたりのコンプトン散乱の発生率は、0.1%程度である。例えば、10層のイメージセンサによって多重コンプトン散乱を検出する場合、10層のイメージセンサによる多重コンプトン散乱の検出率は、0.001%程度である。
図12を用いて、放射線源の吸収線量、イメージセンサに入射される光子数(放射線の本数)及びコンプトン散乱の検出回数との関係について、説明する。
図12の(a)は、放射線源の吸収線量と放射線検出装置に入射される放射線との関係を示している。
ここでは、放射線が入射されるイメージセンサ(検出部)のフォトダイオードアレイの面積は、1cm×1cmに設定される。フォトダイオードの深さは3μm程度に設定される。イメージセンサを形成するシリコン基板の厚さは、60μm程度に設定される。662keVの放射線(ガンマ線)に対する60μmの厚さを有するシリコンの透過率は、99%程度である。放射線源の吸収線量は、10μSv/hとする。
図12の(a)に示されるように、10μSv/hの吸収線量の放射線源を想定した場合において、フォトダイオードアレイ内に入射する光子数(ガンマ線)は、1秒当たり1000(1×103)個であり、1分当たり60000(6×104)個であるとする。放射線の受光時間(観測時間)が10分間の場合において、入射光子数は600000(6×105)個、放射線の受光時間が60分間(1時間)の場合において、入射光子数は3600000(3.6×106)個とする。
図12の(b)は、図12の(a)の条件におけるイメージセンサの積層数と1回目のコンプトン散乱(1回散乱イベント)の検出回数との関係を示している。図12の(c)は、図12の(a)の条件におけるイメージセンサの積層数と1本のガンマ線によって引き起こされた2回目のコンプトン散乱(2回散乱イベント)の検出回数との関係を示している。図12の(b)及び(c)において、受光時間(放射線検出装置の計測時間)毎のコンプトン散乱の検出回数が示されている。
放射線の飛来方向及び放射線源の位置の予測/特定の精度を向上させるために、2回散乱イベントが10回以上検出されることが望ましい。
図12の(b)及び(c)に示されるように、図12の(a)に示される放射線源の条件下において、10層のイメージセンサを含む放射線検出装置の場合、受光時間(計測時間)が60分間に設定されることよって、多重コンプトン散乱における10回以上の2回散乱イベントを検出できる。
また、20層のイメージセンサを含む放射線検出装置の場合、受光時間が10分間以上に設定されることによって、10回以上の2回散乱イベントを検出できる。第1及び第2の検出部1,2を構成するイメージセンサの積層数を増加させることによって、ある期間内の2回散乱イベントの検出回数を増加できる。
このように、放射線検出装置内のイメージセンサの積層数及び放射線の受光時間(計測時間)を適宜設定することによって、放射線の飛来方向及び放射線源の位置の判別のための精度を、向上できる。
なお、イメージセンサ内でのフォトダイオード以外におけるコンプトン散乱の発生を抑えるため、半導体基板におけるフォトダイオード以外の領域の厚さを薄くすることもできる。
尚、半導体基板の厚さに対するフォトダイオードの深さ(半導体基板の表面に対して垂直方向の寸法)の比率を大きくすることで、コンプトン散乱が検出されない不良を低減できる。例えば、60μmの厚さの半導体基板に対して、フォトダイオードの深さが10μm程度のフォトダイオードが形成された場合、フォトダイオードの深さが3μmの場合に比較して、1層あたりのコンプトン散乱の検出率は、3倍程度になる。
また、半導体基板150の厚さを薄くすることによって、コンプトン散乱の検出に寄与しない半導体領域が削減されれば、フォトダイオードの外部におけるコンプトン散乱の発生を低減できる。但し、半導体基板の厚さに対するフォトダイオードの相対的なサイズを維持又は大きくするために、半導体基板の厚さを薄くしても、半導体基板の表面に対して垂直方向におけるフォトダイオードのサイズ(例えば、1〜2μm)は、小さくしないことが好ましい。
尚、各イメージセンサの半導体基板の表面上における多層配線構造(配線層)の全体の厚さは、数μm程度であり、各イメージセンサのシリコン層の厚さより小さい。高いエネルギーのガンマ線によって引き起こされる物理現象は、コンプトン散乱が支配的である。多層配線構造内の金属層の膜厚はシリコン層の膜厚に比較して十分小さいため、金属層においてコンプトン散乱が発生する可能性は小さい。それゆえ、金属層内で発生したコンプトン散乱が、フォトダイオードによる多重コンプトン散乱の検出に悪影響を及ぼす可能性は小さい。
このように、検出部を形成するイメージセンサの積層数を調整したり、イメージセンサを形成する半導体基板150の厚さを薄くしたりすることによって、検出されないコンプトン散乱の影響をさらに低減できる。
以上のように、多重コンプトン散乱を検出するための構成及び条件を適宜設定することによって、コンプトン散乱の検出不良又は誤検出などに起因する悪影響が、放射線の飛来方向及び放射線源の位置を算出するための処理に及ぶのを、低減できる。
したがって、本実施形態の放射線検出装置は、多重コンプトン散乱の発生位置及び放射線の飛来方向及び放射線源の位置を、予測/判別できる。
(c) 動作
図13及び図14を参照して、第1の実施形態の放射線検出装置の動作(放射線の検出方法)について、説明する。尚、ここでは、図1乃至図12も適宜用いて、第1の実施形態の放射線検出装置の動作について、説明する。
図13は、第1の実施形態の放射線検出装置の動作を説明するためのフローチャートである。図14は、第1の実施形態の放射線検出装置の動作の一例を説明するための図である。
例えば、図11に示されるように、放射線源RSが、観測対象空間に存在した場合、放射線源RSからのガンマ線GRが、放射線検出装置1000に入射される。
放射線検出装置1000が含む複数(n個、例えば、n=20)のイメージセンサのうちいずれか1つ(ここでは、i番目とする)のイメージセンサ10iで、入射ガンマ線IGによる1回目のコンプトン散乱(相互作用)が発生する。
図13に示されるように、入射ガンマ線IGによる1回目のコンプトン散乱が、i番目のイメージセンサ10iによって検出される(ステップST1)。
第1の検出部1としてのイメージセンサ10iのフォトダイオードアレイ120において、コンプトン散乱が発生した位置C1に存在するフォトダイオード5が、コンプトン散乱の反跳電子SEによって発生した電荷を、捕獲及び蓄積する。
上述のように、コンプトン散乱によって、散乱ガンマ線SGと反跳電子SEとが発生する。反跳電子SEは、電子−正孔対を生成しながら、イメージセンサ10iのフォトダイオードアレイ120内を移動する。
反跳電子SEが通過したフォトダイオード5内に、反跳電子SEに起因した電荷が捕獲及び蓄積される。この結果として、コンプトン散乱が発生した位置C1のフォトダイオードだけでなく、反跳電子SEが通過したフォトダイオードも、電荷を蓄積される。
これによって、第1の検出部1としてのi番目のイメージセンサ10iによって、フォトダイオードアレイ120内における入射ガンマ線IGによる1回目のコンプトン散乱が発生した位置情報(座標)C1と、1回目のコンプトン散乱によって発生した反跳電子SEの軌跡TEの位置情報(例えば、軌跡の始点、中間点又は終点の座標)を取得する。
1回目のコンプトン散乱によって発生した散乱ガンマ線SGは、入射ガンマ線IGのエネルギーの大きさに応じた散乱角を有して、イメージセンサ10iより下方のイメージセンサへ伝搬する。
散乱ガンマ線SGに起因する2回目のコンプトン散乱が、1回目のコンプトン散乱が発生したイメージセンサより下方のj番目のイメージセンサ内で発生した場合、1回目のコンプトン散乱に連続した2回目のコンプトン散乱が、第2の検出部2としてイメージセンサ10jによって検出される(ステップST2)。
2回目のコンプトン散乱が発生したイメージセンサ10j内において、コンプトン散乱に起因する電荷が、フォトダイオードアレイ120内の2回目のコンプトン散乱が発生した位置C2に存在するフォトダイオード5に捕獲及び蓄積される。
これによって、第2の検出部2としてのj番目のイメージセンサ10jによって、フォトダイオードアレイ120内における散乱ガンマ線SGによる2回目のコンプトン散乱が発生した位置情報(座標)C2を取得する。
尚、ガンマ線(光子)は光速で複数のイメージセンサ10から構成される第1及び第2の検出部1,2内を伝搬するため、多重コンプトン散乱における1回目及び2回目のコンプトン散乱の検出は、イメージセンサの動作サイクル(例えば、0.01秒の平均検出期間)を考慮すると、実質的に同時のタイミングで生じている。
このように、第1及び第2の検出部としてのイメージセンサによって、ある多重コンプトン散乱に関する1回目及び2回目のコンプトン散乱の発生位置C1,C2及び反跳電子の軌跡が検出される。
所定の制御及びタイミングで、フォトダイオードが保持している信号が、ノイズ除去回路などに出力され、イメージセンサ10の検出結果が、第1及び第2の検出部1,2としてのイメージセンサ10から解析部(画像処理回路)3へ転送される。尚、コンプトン散乱の発生位置C1,C2及び反跳電子SEの軌跡TEを示す位置情報は、フォトダイオードアレイのロウ及びカラムの情報とフォトダイオードが蓄積した電荷量に対応する電気信号の大きさとによって、判別できる。
このように、第1及び第2の検出部1,2としてのイメージセンサ10によって、放射線検出装置1000の積層されたイメージセンサ10内における多重コンプトン散乱に関する3次元の位置情報を取得することができる。
ガンマ線の飛来方向を解析するための計算処理が、1回目のコンプトン散乱の発生位置C1、反跳電子SEの軌跡TE及び2回目のコンプトン散乱の発生位置C2をそれぞれ示す情報に基づいて、解析部3によって実行される(ステップST3)。
1回目のコンプトン散乱の発生位置C1、反跳電子SEの軌跡TE及び2回目のコンプトン散乱の発生位置C2を用いて、ガンマ線の飛来方向を含む算出平面RPが、解析部3によって算出される。例えば、算出平面RPは、イメージセンサ10の積層構造に対応する3次元の空間内に形成される2次元の平面である。
このように、第1及び第2の検出部1,2としての積層されたイメージセンサ10によって得られた3つの情報を用いて、観測対象空間における放射線の飛来方向及び放射線源の位置を予測するための算出平面RPが、得られる。
尚、1回目のコンプトン散乱の発生位置C1及び反跳電子SEの軌跡TEが検出されたとしても、1回目のコンプトン散乱に対応する散乱ガンマ線SGによる2回目のコンプトン散乱が検出されない場合がある。例えば、各イメージセンサからの出力結果に基づいて、解析部3が計算処理の要否を判定する。各イメージセンサからの出力結果(例えば、各フォトダイオードアレイのロウ/カラムの情報の重ね合わせ)に基づいて、解析部3が、あるイメージセンサによって検出された1回目のコンプトン散乱に続く2回目のコンプトン散乱があるイメージセンサより下層のイメージセンサによって検出されていないと判別した場合、解析部3は、ガンマ線の飛来方向を解析するための計算処理を実行しない。これによって、放射線源の飛来方向を含む算出平面RPの計算結果が得られない処理を削減でき、放射線検出装置のシステムエラーや解析部3に生じる負荷を低減できる。
放射線の飛来方向及び放射線源の位置の判別の精度を向上させるために、1つの観測対象空間に対して、多重コンプトン散乱及び反跳電子SEの軌跡から得られる算出平面RPが、複数個、算出されることが好ましい。
例えば、多重コンプトン散乱の検出回数、又は、算出平面RPの個数が、あらかじめ設定されたしきい値以上であるか否か、解析部3によって判定される(ステップST4)。
多重コンプトン散乱の検出回数又は算出平面の計算回数がしきい値より小さい場合、上述のステップST1からステップST3の動作が、再び実行される。そして、検出回数又は計算回数がしきい値以上になるまで、繰り返される。
これによって、ある計測対象空間に対して、複数の算出平面RPが算出される。このように、1つの観測対象空間に対して複数回の解析処理(算出平面の計算)が実行されることによって、放射線の飛来方向及び放射線源の位置の予測/判別の精度を向上できる。
尚、上述のように、多重コンプトン散乱の発生位置及び反跳電子SEの軌跡TEは、同じ放射線源からのガンマ線であっても、検出された多重コンプトン散乱毎に異なる可能性がある。そのため、解析結果毎に、算出平面RPの形状が異なる場合がある。
例えば、図14の(a)に示されるように、変換処理されたガンマ線の飛来方向を含む平面RPが、2次元像490上に、第1及び第2の検出部1,2のフォトダイオードアレイの位置分解能(フォトダイオードのサイズ)に応じた複数の帯状(又は線状)の予測領域RRとして示される。
図14の(b)に示されるように、複数の帯状の予測領域RRが重なった領域RAが、ガンマ線の飛来方向である可能性が高い。複数の帯状の予測領域RRが重なった領域RAが、放射線の飛来方向及び観測対象空間における放射線源RSが存在する位置(存在領域)RAとして、解析部3によって、判別される。
多重コンプトン散乱及び反跳電子の軌跡を用いた放射線の飛来方向及び放射線の位置の計算結果が、放射線検出装置の外部に出力され、放射線源の位置が、ユーザーに認識される。
以上のステップST1〜ST5によって、放射線検出装置による放射線の飛来方向及び放射線の位置の判別が、終了する。
以上のように、第1の実施形態の放射線検出装置及び放射線の検出方法によって、ある空間における放射線の飛来方向及び放射線源の位置を、予測又は判別できる。
本実施形態は、複数のイメージセンサを用いた多重コンプトン散乱及び反跳電子の検出によって、装置に対する放射線の飛来方向及びある空間における放射線源の位置を、予測又は判別する。
本実施形態によれば、放射線のエネルギーを用いずに、放射線の飛来方向及び放射線源の位置を解析できる。それゆえ、放射線のエネルギーを高い精度で検出するための構成及び機能を装置内に設けずに、イメージセンサのような比較的安価なシリコンデバイスで、放射線(及びコンプトン散乱)の検出部を、形成できる。このように、放射線(コンプトン散乱)の検出部が複数のイメージセンサによって形成できることによって、低コストの放射線検出装置を提供できる。
放射線及び多重コンプトン散乱の第1及び第2の検出部1,2がイメージセンサによって形成されることによって、放射線検出装置1000を小型化できる。
このように、新規の放射線の検出方法(放射線の飛来方向及び放射線源の予測/特定方法)を用いることによって、新規の放射線検出装置を提供できる。
以上のように、本実施形態によれば、比較的低コストで、小さいサイズの放射線検出装置を提供でき、その装置によって、放射線及び放射線源を検出できる。
(C) 第2の実施形態
図15乃至図17を参照して、第2の実施形態の放射線検出装置について、説明する。
ここでは、説明の簡略化のため、第1の実施形態で述べた構成は同一符号を付し、それらの機能及び動作に関して実質的に同じ説明は省略する。
図15乃至図17は、第2の実施形態の放射線検出装置の複数の構成例を模式的に示す鳥瞰図である。尚、図15乃至図17において、第2の実施形態の放射線検出装置の主要部を抽出して、図示している。
第1の実施形態で述べたように、第1の検出部1は、多重コンプトン散乱における1回目のコンプトン散乱の発生位置と、そのコンプトン散乱により発生した反跳電子の軌跡を検出する。第2の検出部2は、1回目のコンプトン散乱により発生した散乱ガンマ線による2回目のコンプトン散乱の発生位置を検出できればよく、反跳電子の軌跡を検出せずともよい。
それゆえ、図15乃至図17に示されるように、第2の検出部2X,2Y,2Zは、その放射線検出領域に対する放射線(ガンマ線)が入射した位置を検出できるデバイスであれば、イメージセンサ以外でもよい。また、このときコンプトン散乱だけでなく、検出デバイスによっては光電効果(光電吸収)による相互作用によって発生した電荷の検出をすることで、散乱ガンマ線の入射位置を検出することができる。
例えば、1回目のコンプトン散乱後の散乱ガンマ線の入射位置の検出率を向上させるために、イメージセンサ10に比較してガンマ線の検出率が高いデバイスが、第2の検出部2Zとして、用いられる。
例えば、第2の実施形態の放射線検出装置の第2の検出部2として、ストリップ型のガンマ線検出デバイス、ピクセル型のガンマ線検出デバイス、又は、シンチレータを含むガンマ線検出デバイス等が用いられる。
図15は、ストリップ型のガンマ線検出デバイスの構造例を示す模式図である。
図15に示されるように、ストリップ型(例えば、クロスストリップ型)のガンマ線検出デバイス2Xは、Y方向に延在する複数の検出素子(ストリップ)21と、X方向に交差(直交)する方向に延在する複数の検出素子(ストリップ)22とを有している。各ストリップ21,22は、直線状の平面形状を有している。各ストリップ21,22は、半導体基板20内に設けられた半導体領域である。
半導体基板20の主面に対して垂直方向において、Y方向に延在するストリップ21は、X方向に延在するストリップ22と異なる高さに設けられている。Y方向に延在するストリップ21とX方向に延在するストリップ22は、半導体基板20の主面に対して垂直方向において、互いに交差している。
図16は、ピクセル型のガンマ線検出デバイスの構造例を示す模式図である。
図16に示されるように、ピクセル型のガンマ線検出デバイス2Yは、基板20内においてX方向及びY方向に沿って2次元に配列された、複数の矩形状の検出素子25を有する。
ストリップ型及びピクセル型のガンマ線検出デバイス2X,2Yの検出素子21,22,25は、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、テルル化カドニウム(CdTe)、テルル化カドニウム亜鉛(CdZnTe)等を用いて、形成される。例えば、ストリップ型ガンマ線検出デバイス2Xにおいて、Siのストリップ21,22は、100μm程度の膜厚を有する。CdTeのストリップ21,22は、500μm程度の膜厚を有する。
Ge、CdTe又はCdZnTe等を用いて、ストリップ型及びピクセル型のガンマ線検出デバイスを形成することによって、ガンマ線の検出感度を、CMOSイメージセンサよりも高くできる。
例えば、ピクセル型のガンマ線検出デバイス2Yがシリコンを用いて形成される場合、アバランシェフォトダイオード(Avalanche Photo Diode)やSiPM(Silicon Photomultiplier)などが用いられる。
これらのストリップ21,22やアバランシェフォトダイオード25によって、ガンマ線が検出される。
ストリップ型及びピクセル型のガンマ線検出デバイス2X,2Yにおいて、互いに隣り合う検出素子間の間隔(ピッチ)は、イメージセンサのフォトダイオード(単位セル)間の間隔より大きい。例えば、ストリップ型ガンマ線検出デバイス2Xにおいて、基板表面に対して平行方向に隣り合うストリップ21間の間隔は、400μmから1mm程度に設定されている。
例えば、ストリップ型及びピクセル型のガンマ線検出デバイス2X,2Yにおいて、ガンマ線を検出するための素子の面積は、イメージセンサのフォトダイオードの面積より大きい。ストリップ型及びピクセル型のガンマ線検出デバイス2X,2Yが含むガンマ線を検出するための素子数は、イメージセンサ内に設けられるフォトダイオードの素子数より、少ない。ストリップ型及びピクセル型のガンマ線検出デバイス2X,2Yの画素数は、イメージセンサの画素数より少ない。例えば、ストリップ型又はピクセル型のガンマ線検出デバイス2X,2Yの分解能は、16K(128×128)画素程度である。
このようなストリップ型及びピクセル型のガンマ線検出デバイス2X,2Yによって、CMOSイメージセンサ(フォトダイオード)よりもガンマ線の検出感度を向上できる。この結果として、放射線検出装置における散乱ガンマ線の入射位置の検出率を向上できる。
図17に示されるように、ガンマ線検出デバイスの検出素子25上に、シンチレータ27が設けられてもよい。
シンチレータ27は、入射された放射線に対して高い感度で光る(蛍光する)。
ガンマ線及びガンマ線に起因したシンチレータ27の高感度の発光が、その下層の検出素子25によって検出される。この結果として、第2の検出部2Zにおけるガンマ線の検出感度が向上する。
例えば、シンチレータ27が、ストリップ型又はピクセル型の検出デバイスに組み合わせられる場合、シンチレータ27の材料として、NaI、ケイ酸ガドリニウム(GSO)、ゲルマニウム酸ビスマス(BGO)、ケイ酸ルテチウム(LSO)等が用いられる。
図15乃至図17のいずれかの放射線検出装置よって放射線源の位置が判別される場合積層された複数のイメージセンサによって1回目のコンプトン散乱が検出され、イメージセンサより高感度のガンマ線検出デバイス2X,2Y,2Zによって、散乱されたガンマ線の入射位置が検出される。
放射線検出装置の第2の検出部に、イメージセンサと異なる放射線検出デバイスが用いられた場合においても、第2の実施形態の放射線検出装置は、第1の実施形態と実質的に同様の動作によって、放射線の飛来方向及び放射線源の位置を、予測及び判別できる。
第2の実施形態の放射線検出装置によれば、第1の実施形態と同様の効果が得られるとともに、1回目のコンプトン散乱で散乱されたガンマ線の入射位置が、イメージセンサより高い感度で検出されるため、放射線検出装置に対するガンマ線の入射方向を算出する時間を、短縮できる。
(D) 応用例
図18乃至図23を参照して、実施形態の放射線検出装置の応用例について、説明する。本実施形態において、第1及び第2の実施形態と同じ構成部材及び動作に関する説明は、必要に応じて行う。
(1) 構造
図18及び図19を用いて、実施形態の放射線検出装置の応用例について説明する。図18は、本実施形態の放射線検出装置の応用例の構造を模式的に示す鳥瞰図である。図19は、本実施形態の放射線検出装置の応用例の構成例を示すブロック図である。尚、ここでは、第1の実施形態における第1及び第2の検出部が用いられているが、第2の実施形態における第1及び第2の検出部が用いられてもよい。
実施形態の放射線検出装置によって得られた放射線源の位置を、放射線源を含む空間の可視光の画像上に、表示されることによって、ある空間における放射線源の位置を、ユーザーが認識し易くなる。
このため、放射線源を含む空間を撮影するための撮像デバイスを含むように、実施形態の放射線検出装置が構成される。
図18及び図19に示されるように、空間(被写体)を撮影するための撮像デバイス4が、本実施形態の放射線検出装置1000のイメージセンサ10を含む検出部1,2と同じ支持基板9上に、設けられる。
ある空間OJを撮影するための撮像デバイス4は、可視光を光電変換することによって可視光の画像を形成する。撮像デバイス4は、例えば、イメージセンサである。
例えば、空間を撮影するためのイメージセンサ4が、CMOSイメージセンサである場合、そのイメージセンサ4は、図5に示される構成に類似した構成を有する。
以下では、説明の区別化のため、撮像デバイスとしてのイメージセンサのことを、可視光センサとよび、可視光センサが含むフォトダイオードアレイのことを、画素アレイとよぶ。
可視光センサは、半導体チップの主面に対して垂直方向において画素アレイと重なる位置に、カラーフィルタCF及びマイクロレンズMLが設けられている。カラーフィルタCF及びマイクロレンズMLは、画素アレイ120の光の受光面側に設けられている。
各色の色素膜に対応するフォトダイオードが、放射線源を含む可能性がある空間OJからの光(可視光)VLを光電変換し、光電変換された各色成分に対応する電気信号が生成される。画素アレイから出力された電気信号は、AD変換やCDS処理がノイズ除去回路によって施され、ノイズが除去される。
図18及び図19に示されるように、CMOSイメージが取得した電気信号は、DSP(Digital Signal Processor)やISP(Image Signal Processor)が含まれるLSI41などによって処理され、観測及び撮影された空間(放射線源RSが存在する可能性がある空間)OJの画像が形成される。例えば、LSI41は、可視光センサ4と支持基板9との間に設けられてもよいし、可視光センサ4の画素アレイと同じ半導体基板内に形成されていてもよい。
画像合成部42が、計算された放射線の飛来方向及び放射線源の位置と撮影された空間の画像とを重ね合わせる。画像合成部42は、解析部3又はLSI41内に、設けられてもよいし、解析部3及びLSI41とは別途のチップとして、支持基板9上に設けられてもよい。
放射線の位置(放射線の飛来方向)と空間の可視光の画像とを重ね合わせた画像データ(以下では、合成画像データとよぶ)が、表示部43(例えば、液晶ディスプレイ)上に、表示される。これによって、撮影された空間内における放射線源の位置が、ユーザーに認知されるように、画像上に示される。
このように、本実施形態の放射線検出装置1000によって得られた放射線源の飛来方向及び放射線源の位置と観測対象とした空間の可視光の画像データとが合成されることによって、放射線源の飛来方向及び放射線源の位置を、視覚化できる。
尚、イメージセンサから形成される第1の検出部1が、被写体の画像を撮影する撮像デバイスとしての機能を有していてもよい。例えば、複数のイメージセンサのうち最上層のイメージセンサ(1番目のイメージセンサ)に、可視光を光電変換可能なように、カラーフィルタ及びマイクロレンズが取り付けられる。これによって、最上層のイメージセンサが、放射線センサ(検出部)としての機能を有するとともに、可視光センサ(撮像デバイス)としての機能を有する。
観測対象の空間の撮影用の可視光センサ4は、放射線検出装置1000と同じ支持基板9上に設けられてもよいし、放射線検出装置1000とは異なる基板上に設けられてもよい。可視光センサ4のチップが、第1及び第2の検出部1,2の積層構造上に、積層されてもよい。可視光センサが、第1の検出部1上に積層されることによって、支持基板9上における放射線検出装置の占有面積を小さくできる。可視光センサ4は、例えば、CCDイメージセンサや裏面照射型CMOSイメージセンサのように、第1の検出部1としてのイメージセンサと異なる構成を有するイメージセンサでもよい。可視光の画像データと放射線源の位置の重ね合わせを考慮すると、可視光センサ4は、検出部としてのイメージセンサと画素数及び画像サイズを有していることが好ましい。
LSI41、画像合成部42及び表示部43は、放射線検出装置1000及び可視光センサ4とは別途の装置(例えば、コンピュータ)に搭載されてもよい。
(2)動作
図20及び図21を用いて、実施形態の放射線検出装置の応用例の動作について、説明する。実施形態の放射線検出装置の応用例の動作を説明するために、図18及び図19も適宜用いる。尚、説明の簡略化のため、本応用例における上述の実施形態の放射線装置の動作と実質的に同じ動作は、必要に応じて説明する。
図20は、本応用例の放射線検出装置の動作の一例を示すフローチャートを示している。図21は、本応用例の放射線検出装置の動作の一例を説明するための図である。
放射線源からのガンマ線が、第1及び第2の検出部を含む放射線検出装置1000に入射される。それとともに、放射線源を含む被写体からの光が、撮像デバイスとしてのイメージセンサに入射される。
図20及び図21に示されるように、図13及び図14を用いて説明した動作と実質的に同様の動作に、多重コンプトン散乱における1回目のコンプトン散乱の発生位置、反跳電子の軌跡及び2回目のコンプトン散乱の発生位置が、第1及び第2の検出部1,2によって、検出される(ステップST1〜ST4)。複数回実行されたイメージセンサによる多重コンプトン散乱の検出結果に対する計算処理によって、放射線の飛来方向及び放射線源の位置が、図20に示されるように、予測及び判別される(ステップST5)。
図20及び図21に示されるように、第1及び第2の検出部1,2による多重コンプトン散乱の検出及びその計算処理と平行して、放射線検出装置1000が観測対象としている空間の可視光の画像が、可視光センサ4によって、形成される(ステップST10)。
可視光センサ4の画素アレイ内のフォトダイオードによって、被写体からの光が光電変換される。光電変換された信号(信号電荷)が、画素アレイのロウ単位で、各フォトダイオードから所定の動作で読み出される。ノイズ除去などの処理が施された信号データが、可視光センサ4からLSI41に出力される。
可視光センサ4からの1フレーム分の信号に基づいて、撮影された観測対象空間の画像が、LSI41によって形成される。
放射線検出装置1000によって解析された観測対象空間の放射線源の位置と可視光センサが取得した観測対象空間の画像との重ね合わせ処理(合成処理)が、実行される(ステップST11)。
図20に示されるように、第1及び第2の検出部1,2による多重コンプトン散乱及び反跳電子の軌跡の検出結果が、解析部3によって解析される。解析結果が、帯状又は線状の予測領域RRとして、2次元の解析画像(観測平面)490上に示される。また、観測空間の画像データ400が、可視光センサ4及びLSI41によって、形成される。
解析部3によって形成される解析画像490は、可視光センサ4によって形成される画像(可視光画像)400のスペック(例えば、フレームサイズ、視野角、解像度)に対応するように、形成される。
解析画像490と可視光画像400とが、画像合成部42によって重ね合わせ処理される。図13を用いて説明したように、予測領域RRが交差する位置(判別領域)RAに、放射線検出装置によって判別された放射線源が存在する可能性が高い。
図21に示されるように、放射線源が存在する可能性が高い位置RAがマーク化され、そのマークRSが、可視光画像400上に示される。
画像490,400の合成結果が画像合成部42から表示部43に出力され、放射線源の位置を示すマークRSを含む画像401が、表示部43として液晶ディスプレイ上に表示される。
なお、観測空間内に放射線源が無い場合(又は、放射線強度が装置の計測限界より小さい場合)には、放射線源の位置を示すマークは、ディスプレイ上に表示されない。
以上のように、実施形態の応用例の放射線検出装置は、ある観測空間内において判別された放射線の飛来方向及び放射線源の位置を、ある観測空間の可視光の画像データ上にできる。
したがって、実施形態の応用例の放射線検出装置によれば、放射線の飛来方向及び放射線源の位置を画面上に表示することによって、目視することが困難な放射線の飛来方向及び放射線源の位置を、視覚化できる。
(E) 変形例
図22及び図23を参照して、本実施形態の放射線検出装置の変形例について説明する。
<変形例1>
図22は、本実施形態の放射線検出装置の変形例を示す模式的な鳥瞰図である。
1つの支持基板9上に、第1及び第2の検出部1,2を含む積層構造200が、支持基板9の表面に対して平行方向に隣り合うように、複数個設けられてもよい。
解析部3は、第1及び第2の検出部の積層構造200ごとに、設けられてもよい。1つの解析部3が、複数の積層構造200によって共有されてもよい。
本変形例のように、支持基板9表面に対して平行方向に配列された複数の積層構造200から1つの放射線検出装置が形成されることによって、広い範囲から放射線GRを受光できる。この結果として、ある計測期間において1つの放射線検出装置が計測可能な空間を拡大でき、広い空間における放射線の飛来方向及び放射線源の位置を特定できる。
<変形例2>
本実施形態の放射線検出装置1000を用いて、所定の受光期間内において検出されたコンプトン散乱の回数を、カウントすることによって、放射線源から発生している放射線の強度を測定することも可能である。
本実施形態の放射線検出装置1000は、第1及び第2の検出部1,2を構成するイメージセンサ内で発生するコンプトン散乱の発生回数をカウントすることによって、放射線検出装置1000に入射されるガンマ線の本数(光子の個数)を検出することもできる。
例えば、放射線検出装置1000に入射されるガンマ線の本数の検出は、1つのイメージセンサ(例えば、最上層のイメージセンサのチップ)内で生じるコンプトン散乱の発生回数をカウントすることによって、実行されてもよいし、放射線検出装置1000内の2以上のイメージセンサ内で生じるコンプトン散乱の発生回数に対して演算処理を施すことによって、実行されてもよい。但し、多重コンプトン散乱の発生と検出期間とを考慮して、放射線の強さを測定するために用いられるイメージセンサ10の個数が、設定されることが好ましい。
本実施形態の放射線検出装置1000を用いて、放射線源/放射線の強度を測定する場合、解析部3は、コンプトン散乱の発生回数と放射線の強度とが関連付けられた数値テーブルに基づいて、放射線の強度を算出する。放射線源の強度を求めるための数値テーブルは、例えば、解析部3内の記憶領域内に、一時的又は不揮発に記憶されてもよいし、装置1000の外部の記憶装置(HDD、SSD、メモリカードなど)に記憶されていてもよい。放射線の強度を判別するための数値テーブルは、放射線源の核種毎に設けられてもよい。
このように、本実施形態の放射線検出装置1000は、コンプトン散乱の発生回数に基づいて、放射線の飛来方向及び放射線源の位置の判別に加えて、所定の空間の放射線量及び放射線源の強度を測定できる。
<変形例3>
図23は、本実施形態の放射線検出装置の変形例の一例を示す模式図である。
図23の放射線検出装置は、イメージセンサを含む第1及び第2の検出部とともに、距離測定センサ4Zを含む。距離測定センサ4Zは、観測対象の空間(放射線源)と放射線検出装置1000との距離を測定する。例えば、距離測定センサ4Zは、赤外線照明(例えば、赤外線レーザ)440と、赤外線センサ441とを含む。赤外線照明440は、観測対象空間(被写体)に向けて赤外線を照射する。赤外線センサ441は観測対象空間で反射された赤外線の大きさを検出し、参照値と検出された赤外線の大きさとを比較する。これによって、放射線検出装置と観測対象空間との距離が測定される。
上述のように、実施形態の放射線検出装置は、検出部内で発生したコンプトン散乱のカウントに基づいて放射線源の強度を計測でき、計測値から放射線源の吸収線量(単位:Sv/h)を求めることができる。距離測定センサ4Zによって測定された放射線源と放射線検出装置1000との距離を用いて、放射線源の計測単位を“Sv/h(シーベルト)”から“Bq(ベクレル)”に変換できる。これによって、ある核種を想定した放射線源の放射性物質の量(放射能)を求めることができる。
(D) その他
上述した各例の放射線検出装置は、モジュール化されてもよい。
上述のように、本実施形態の放射線検出装置1000は、1以上のイメージセンサを放射線の検出部として含む。それゆえ、イメージセンサの検出部を、図18及び図19の可視光の画像を形成するためのイメージセンサ4及びDSP等を含んだLSI41などと同じ支持基板上に搭載できる。
例えば、本実施形態の放射線検出装置は、デジタルカメラやカメラ付き携帯電話内に搭載されてもよい。また、本実施形態の放射線検出装置は、デジタルカメラやカメラ付き携帯電話に着脱可能な外部ユニットとして、提供されてもよい。
このように、本実施形態の放射線検出装置を含むモジュールを提供できる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。