実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1、2に係る加熱調理器全体を示す斜視図である。なお、以下の説明において、正面、背面、上下、左右、前後は、加熱調理器を前面側から見た場合の方向を意味している。また、図1及び後述の各図において、同一の符号を付したものは、同一の又はこれに相当するものであり、これは明細書の全文において共通している。更に、明細書全文に表れている構成要素の形態は、あくまで例示であってこれらの記載に限定されるものではない。
(加熱調理器本体)
図1において加熱調理器の本体1の筐体2の上側には上枠3が着脱自在に配置される。上枠3の背面側に吸排気口カバー5、中央にトッププレート4が配置されている。トッププレート4の上には被加熱物(図示せず)が載置される。吸排気口カバー5は通気性があり、吸気及び排気の気流がスムースに通過する。本体1前面中央には後述の調理室7の前面扉7aが設けられ、その左右には調理室7での調理及びトッププレート4上の調理制御等を指示するための操作部6が設けられる。本実施の形態1においては調理室7だけでなくトッププレート4上においても加熱調理が可能な構成としているが、トッププレート4上の調理機能は必要に応じて搭載すればよく、本体1の上面は調理室7を覆う単純な外装としてもよい。
図2は、図1の加熱調理器の筐体2の上側からトッププレート4と吸排気口カバー5を取り外した状態の本体1の斜視図である。また、図3は、図1の加熱調理器の上枠3、トッププレート4、吸排気口カバー5、前面右側の誘導加熱コイルユニット11を取り外した状態の本体1の斜視図である。
上枠3の背面側の中央に筐体排気口9が設けられて、筐体排気口9の左右に筐体吸気口8が設けられている。筐体排気口9は排気風路14に接続され、筐体吸気口8から吸い込まれて筐体2内を通過した冷却風の排気を行う。排気風路14内には調理室7に連通する調理室排気ダクト10が配置され、調理室7からの排気も筐体排気口9より行われる。筐体吸気口8及び筐体排気口9は、通常の使用状態においては図1に示したように吸排気口カバー5で覆われている。
筐体2上面からトッププレート4を取り外した下方には、前面側の左右に誘導加熱コイルユニット11が配置され、背面側中央にはラジエントヒーター13が配置されており、これらはトッププレート4上に載置される被加熱物の加熱に使用される。また、誘導加熱コイルユニット11の下方には平面的に見て略円形状のチャンバ16が配置されている。チャンバ16は、後述の基板ケースユニット15内に設けた冷却ファン18(図4参照)からの空気を誘導加熱コイルユニット11に導く風路として形成されており、その上面には空気噴き出し用の複数の吐出穴16aが形成されている。誘導加熱コイルユニット11、ラジエントヒーター13及びチャンバ16はトッププレート4上での調理機能の必要性に応じて搭載され、調理機能不要の場合は搭載されない。
誘導加熱コイルユニット11及びラジエントヒーター13の下方には調理室7が配置される。調理室7は本体1前面中央までを含めて構成され、調理室7内空間にて焼く、蒸す等の加熱調理・スチーム調理等を行う。調理室7の左右両側にはそれぞれ基板ケースユニット15が配置されている。
図4は、図3の右側の基板ケースユニット15の斜視図である。左右の基板ケースユニット15の構成はほぼ対称であり、ここでは右側の基板ケースユニット15を用いて説明する。基板ケースユニット15は、筐体吸気口8に連通する吸気口15aから、チャンバ16に連通する排気口15bに至る一体の風路として形成されている。排気口15bはチャンバ16に気密性高く接続され、冷却ファン18からの冷却風を効率良くチャンバ16に導いている。
基板ケースユニット15内には、冷却ファン18と電子回路基板12とが納められている。基板ケースユニット15内には更に、電子回路基板12に実装された発熱部品(電子部品)の冷却効率を高めるため、ヒートシンク(冷却フィン)が納められる場合もある。電子回路基板12は、操作部6の操作により指示された調理内容に従って誘導加熱コイルユニット11、ラジエントヒーター13、調理室7内の上方加熱装置21及び下方加熱装置23を適宜制御(駆動タイミングや能力・出力等を制御)する。
以上の構成により、操作部6の操作により加熱調理開始が指示され、冷却ファン18が駆動すると、筐体2外の空気は吸排気口カバー5及び筐体吸気口8を通過し、基板ケースユニット15の吸気口15aから内部に吸引される。基板ケースユニット15内に吸引された空気は電子回路基板12に実装された発熱部品を冷却した後、排気口15bから排出される。排気口15bから排気された空気はチャンバ16に流入した後、複数の吐出穴16aから誘導加熱コイルユニット11に向けて噴出される。
誘導加熱コイルユニット11に向けて噴出された空気は、誘導加熱コイルユニット11を冷却した後、筐体2内を広がりながら流れ、その後、背面側の排気風路14に集められて筐体排気口9から吸排気口カバー5を経て筐体2外へ排気される。吸排気口カバー5から排気された空気の温度は、その排気に人が触れても問題無い温度となっている。このように冷却ファン18を駆動して筐体2内を冷却することにより、加熱調理に伴う筐体2内の温度上昇により筐体2内部の各部品が機能しなくなることや寿命が短くなることを回避している。
(調理室7、調理室排気構造)
図5は、図1の加熱調理器全体を示す底面斜視図である。図6は、図5の調理室7とその排気構造部分を示す斜視図で、調理室7の上面及び前面扉7aを取り外した状態を示している。図7は、図6の触媒ユニット17、調理室排気ダクト10及び駆動気流ダクト20の下方分解斜視図である。
調理室7は、上方加熱装置21と下方加熱装置23とを備えており、調理台22上に載置された被加熱物を上方加熱装置21及び下方加熱装置23により上下方向から一度に加熱する。調理室7には更に、下方加熱装置23に受け皿24が配置される。なお、ここでは、上方加熱装置21及び下方加熱装置23を備えた構成としたが、どちらか一方のみ備えた構成としてもよい。また、被加熱物の上下を反転させる等すれば、上下方向から一度に加熱する場合と同様の加熱調理が可能であり、加熱装置の数・配置によらず本発明の効果は同様に得られる。
調理室7の壁面や前面扉7a部等には適度の開口(図示せず)が設けられており、調理室7内に、外気が圧力損失少なく、また排気を妨げることなく流入し、調理室7の背面壁面に設けた調理室排気口25から調理室7外へ排気されるようになっている。
調理室排気口25の外側には触媒ユニット17を介して調理室排気構造50が接続されている。この調理室排気構造50は、触媒ユニット17の排気側に接続された調理室排気ダクト10と、調理室排気ダクト10の下方に配置接続され、内部に駆動気流ファン(例えば、軸流ファン)28を備えた駆動気流ダクト20とを備えている。調理室排気ダクト10の駆動気流ダクト20との対向面には後述のノズル31が開口されており、ノズル31により調理室排気ダクト10と駆動気流ダクト20とは連通している。本実施の形態1は、ノズル31の形状や形成位置を一つの特徴としているが、その特徴については以下の調理室排気構造50の排気動作の説明部分で説明する。
この調理室排気構造50では、空気エゼクタの原理によって駆動気流ダクト20が調理室7内の空気に直接接触せずに排気できる構造としている。すなわち、駆動気流ファン28からの駆動気流を調理室排気ダクト10内に送風することで調理室7内の空気(排気)を調理室排気ダクト10内に誘引し、調理室排気構造50外へ排気するようにしている。
次に、触媒ユニット17、調理室排気ダクト10及び駆動気流ダクト20のそれぞれの構成について詳細に説明する。
(触媒ユニット)
触媒ユニット17は、前記内部に触媒体27を備えている。触媒体27は調理室7の排気温度で触媒活性が得られるMn又はPt等、比較的低温で活性化する触媒が一種類又は複数が配合され触媒体27基材に添着されたものである。
触媒体27は、調理室7からの排気の熱や、上方加熱装置21及び下方加熱装置23等の調理室7内からの輻射等により加熱され、触媒体27に添着されている触媒が活性化される。触媒が活性化されることにより油煙や臭気成分を酸化分解し、濃度を低減させ、浄化を行う。触媒体27の種類によっては、本実施の形態1とは異なる方法、例えば吸着や燃焼による浄化手段のものもあるが、浄化手段は特に限定するものではなく、排気の浄化機能を有するものであればよい。
(調理室排気ダクト)
調理室排気ダクト10は、立体形状が略L字状に形成され、正面側から背面側に延びる奥行き部10Aと奥行き部10Aから上方に向かって延びる垂直部10Bとを有している。奥行き部10Aは上面10eが後方に向かうにしたがって高くなる傾斜面となっており、調理室7から排出された高温空気の空気浮力を妨げる事無く利用して傾斜に沿って排気を上昇させ、調理室排気ダクト10の垂直部10Bへの空気の移動を補助する作用を有している。また、調理室排気ダクト10の底面10aには、五角形の穴で構成されたノズル31が開口されている。
(駆動気流ダクト)
図8は、図7の駆動気流ダクト20の上方斜視図である。図9は、図8の駆動気流ダクト20の平面図である。図10は、図8のC−C断面図である。
駆動気流ダクト20は上下方向の風路を形成しており、駆動気流ダクト20の下端が駆動気流吸込口30、上端が駆動気流流出口20aとなっている。駆動気流流出口20aは調理室排気ダクト10の底面10aと気密性良く接続され、駆動気流ファン28からの気流を概ね駆動気流流出口20aを介してノズル31に流入させる。
駆動気流ダクト20の風路の途中には駆動気流ファン28の外周形状に合わせた略断面四角形状の筒状に構成された駆動気流ファン保持部32が駆動気流ダクト20と一体的に形成されている。この駆動気流ファン保持部32内に駆動気流ファン28が、正面側が上方に向くように傾斜した状態で配置保持されている。保持構造としては、駆動気流ファン保持部32の前面側の一部にフランジ32aが形成されており、このフランジ32aに駆動気流ファン28の流入面28aが支持され、駆動気流ファン28を保持している。駆動気流ファン保持部32の形状は駆動気流ファン28の形状に合った形状であればよく、略断面四角形状は一例であり駆動気流ファン28が保持できる形状であればこれに限るものではない。なお、以下では、駆動気流ダクト20において、駆動気流ファン28を境として駆動気流吸込口30側を吸込側ダクト20A、駆動気流流出口20a側を噴出側ダクト20Bとして区別する場合がある。
駆動気流ファン保持部32は、駆動気流ダクト20の内周面との間に、駆動気流ファン28の外周全周に渡って貯水部40を形成している。貯水部40の一部は、調理室排気ダクト10に形成されたノズル31と上下方向に対向しており(後述の図11参照)、ノズル31から駆動気流ダクト20内へと侵入した被調理物等の液体を回収する。また、貯水部40の底面は傾斜しており、傾斜の最も低い部分に被調理物等の液体を排出する排水口35が設けられている。
また、駆動気流ファン保持部32の内周と駆動気流ファン28の外周との間には、必要に応じて防振材や気密材が挿入され、駆動気流ファン28の振動の吸収及び伝達抑制や、気流の漏れの抑制及び循環の抑制を行う。また、気密材により駆動気流ファン28の取付穴等の一部を塞いで気密性を高め、駆動気流ダクト20内の気流の循環を抑制している。
駆動気流ダクト20の調理室排気ダクト10との接続面には締結部33が設けられており、この締結部33によりネジなどの締結部材34(図6参照)にて調理室排気ダクト10の締結部33と締結されている。
(配置関係、駆動気流吸込口)
次に、調理室排気ダクト10及び駆動気流ダクト20の筐体2内における配置関係について説明する。
図11は、図5のA−A縦断面図である。図12は、図11の筐体2の底面を下から見た図である。
筐体2の底面2aには、筐体2内に配置された駆動気流ダクト20の駆動気流吸込口30と対向して複数の概円形の筐体外駆動気流吸込口19が開口されている。そして、筐体外駆動気流吸込口19、駆動気流ダクト20(吸込側ダクト20A)、駆動気流ファン28、駆動気流ダクト20(噴出側ダクト20B)、ノズル31及び調理室排気ダクト10の垂直部10Bは直線L1に示すように概ね直線状に配置されている。よって、駆動気流ファン28が駆動して筐体外駆動気流吸込口19から吸引された駆動気流は、風路の曲り等による圧力損失の増加が少なくスムースに調理室排気構造50内を上方へと導かれ、調理室排気ダクト10の上面開口10f及び筐体排気口9を介して筐体2外に排気される。
また、駆動気流ファン28の傾斜を直線L1の傾きに近い傾きとしており、これにより駆動気流ファン28からの駆動気流の軸方向成分は概ね風路と平行となり不要な圧力損失を生じさせず効率の良い送風が可能となっている。また、複数の筐体外駆動気流吸込口19が形成された吸込み領域19aは、駆動気流ファン28の流入面28aよりも広い領域とされ、通過風速を低減して圧力損失を軽減している。
また、駆動気流ファン28の傾斜を手前側が上方に向く傾斜としているため、駆動気流ファン28と筐体2の底面2aとの距離は背面側にいくほど近くなる。本体1はシステムキッチン等に組み込んで使用されるものであり、本体1の下方は、前後方向にスライドして開閉する引き出し収納スペースとして用いられることがある。この場合、引き出し収納スペースの開閉動作時に、収納スペース内部に収納された箸又は菜箸のテーパ状の先端が、筐体外駆動気流吸込口19を介して駆動気流ダクト20内に押し込まれる可能性がある。押し込まれた箸又は菜箸のテーパ状の先端が駆動気流ファン28の羽根車に接触すると、羽根車の回転が停止して気流を誘引できなくなったり、駆動気流ファン28の羽根車が破損して故障してしまったりすることがある。よって、本実施の形態1ではこれを回避するための構成を採用している。この構成について以下に説明する。
箸が筐体外駆動気流吸込口19に入り込む長さを短くするには、筐体外駆動気流吸込口19の穴径を小さくすればよい。筐体外駆動気流吸込口19の穴径を例えば直径3mm程度とした場合、一般的な箸がその穴に入り込む長さは先端1cm程度となる。よって、駆動気流ファン28の羽根車と筐体外駆動気流吸込口19との最短距離が1cm以上となるように駆動気流ファン28を配置すればよい。
しかし、筐体外駆動気流吸込口19の穴径を直径3mmとすると、吸込穴としては小さいため吸込みの圧力損失が高くなってしまう。そこで、筐体外駆動気流吸込口19の穴径を、駆動気流ファン28の羽根車との距離が近い部分は例えば直径3mmとし、この距離が遠くなるにしたがって拡大するようにしている。穴径の拡大範囲は、箸等が羽根車に接触せず、また圧力損失を許容範囲内に抑えられる程度とすればよく、例えば最大6mm程度とする。これにより圧力損失の過度の上昇を軽減しながら筐体外駆動気流吸込口19への箸等の挿入による羽根車の回転停止・損傷を抑制できる。
なお、吸込み領域19aの前後方向については筐体外駆動気流吸込口19の穴径を変化させ、吸込み領域19aの左右方向については同一径としている。しかし、吸込み領域19aにおいて駆動気流ファン28と対向する領域(入り込んだ箸が駆動気流ファン28と接触する可能性がある筐体外駆動気流吸込口形成領域)の左右外側の領域においては、左右方向においても羽根車の左右端面から遠くになるにしたがい、箸等が羽根車に接触しない範囲で穴径を拡大してもよい。
(調理室排気構造の排気動作)
次に、調理室排気構造50の排気動作の詳細を説明する。なお、本実施の形態1では駆動気流ファン28の回転方向を前面側から見て時計回りとしており、以下に説明するノズル31の形状及び配置、調理室排気構造50内の気流の流れは、駆動気流ファン28の回転方向が時計回りの場合に対応している。
ここではまず、調理室排気構造50の排気動作に関連の深いノズル31の形状及び配置位置について図13を参照して説明する。
(ノズル)
図13は、図7のノズル31の形状及び配置の説明図で、触媒ユニット17及び調理室排気ダクト10のB−B断面図である。なお、図13にはノズルと駆動気流ファン28との位置関係を明らかにするため、駆動気流ファン28を点線で示している。
ノズル31は、左右方向(図13では前後方向)に延びるスリット状を成し、調理室排気ダクト10の左右方向の幅よりも短く形成され、調理室排気ダクト10の右側面10bと間隔を空けて設けられている。また、ノズル31は、調理室排気ダクト10の背面10dから間隔を空けて設けられている。また、ノズル31の前辺31aの右側は傾斜辺31cとなっており、ノズル31内の右側部分が右端に向かうにつれて後辺31b寄りに先細り状となる先細り形状となっている。ノズル31をこのような形状としたことにより得られる作用効果は後述する。
また、調理室排気ダクト10の底面におけるノズル31の配置位置は、以下の2つの条件を満足する位置とする。一つ目の条件は、ノズル31の少なくとも一部が、駆動気流ファン28をその回転軸方向に調理室排気ダクト10の底面10aに投影させた領域Sにかかるように配置される。二つ目の条件は、平面的に見て駆動気流ファン28と重ならない位置に配置する。
一つ目の条件を満たすことにより、駆動気流ファン28とノズル31間の風路が概直線的となり、圧力損失を低減することができる。また、二つ目の条件を満たすことにより、ノズル31から滴下した被調理物等の液体が直接駆動気流ファン28に接触することを防止できる。
なお、駆動気流ファン28の回転方向が時計回りの場合のノズル31の形状及び配置位置は上記の通りであるが、駆動気流ファン28の回転方向が反時計回りの場合には調理室排気ダクト10の左右方向の中心ラインを中心として左右反転させた形状及び配置となる。
(調理室排気構造における気流の流れ)
次に、調理室排気構造50における気流の流れを流体解析の結果に基づき図14及び図15を参照して説明する。
図14は、図7の駆動気流ダクト20及び調理室排気ダクト10における気流の流れを説明するための斜視図である。図15は、図7の触媒ユニット17及び調理室排気ダクト10のB−B断面図である。なお、図15にはノズルと駆動気流ファン28との位置関係を明らかにするため、駆動気流ファン28を点線で示している。
駆動気流ファン28から流出する気流は軸方向成分と旋回成分とを含んでおり、駆動気流ファン28から流出する気流の旋回方向A1は、平面的に見て駆動気流ファン28の回転方向と同じ時計回りとなっている。
図14に示すように、駆動気流ファン28から流出した旋回成分a1を有する気流は、ノズル31内の左側を通過して調理室排気ダクト10に噴出され、調理室排気ダクト10の背面方向に向う気流となり、調理室7内の空気を誘引しながら垂直部10B内を上方に向けて流れ、垂直部10Bの途中から垂直部10Bの背面10dに沿った流れとなって上面開口10fから外部に排気される。
ところで、ノズル31の形状及び配置を、図13に示した形状及び配置としたことにより各種の効果が得られるが、この効果は、ノズル31を調理室排気ダクト10の左右の幅と概同じ幅の長方形ノズルとした場合と比較することにより明確になる。よって、ここではまず長方形ノズルとした場合の気流の流れ及び問題点について明らかにする。
駆動気流ファン28から流出した駆動気流は全体的に旋回方向A1に流れるが、駆動気流ダクト20の背面20bに当接した気流は、ノズル31を通過後、旋回方向A1と大きく異なった方向に向かって流れ、調理室排気ダクト10の右側面10bに衝突する気流(以下、第1気流という)となる。これは、駆動気流ダクト20の背面20bに当接した気流の旋回成分a2の方向が、駆動気流ダクト20の背面20bとの当接により大きく変化して旋回成分a3となることによる。この第1気流はノズル31を通過後、調理室排気ダクト10の右側面10bに向かう気流となり、以下の2点を原因として調理室7からの排気を阻害する気流を形成する。
まず1点目は、第1気流は長方形ノズル内の中央から右側を通過して噴出された直後、流速が速い状態で調理室排気ダクト10の右側面10bに衝突する点。2点目は、駆動気流ダクト20の右側面10b付近の気流に含まれる旋回成分には調理室7側(前面側)に向かう成分が含まれている点。以上の2点を原因として、第1気流は調理室排気ダクト10の背面側の右側面10b付近で調理室7側に逆流する流れを生じさせ、その流れは調理室排気ダクト10の底面10a側に向かった後、背面10d側に向かう気流となり、結果的に調理室排気ダクト10内に渦を形成し、この渦が調理室7からの排気を阻害する。
このようにして発生する、調理室7からの排気を阻害する流れを抑制するため、本実施の形態1ではノズル31を図13に示した形状及び配置とし、第1気流が調理室排気ダクト10の右側面10b方向へ向かうことを抑制するようにしている。以下、図13に示した形状及び配置としたことによる効果について説明する。
ノズル31を調理室排気ダクト10の右側面10bから間隔を空けて設け、ノズル31と右側面10bの距離を離してノズル31からの気流が右側面10bへ衝突しにくくするとともに、距離を離すことでノズル31からの噴出し直後の流速が速い状態から遅い状態とすることで壁面への接触に対する損失を低減した。
また、ノズル31の右側を先細り形状としたため、ノズル31内の右側の通過流量を更に減らすことができ、更に衝突を抑制する。また、先細り形状の先端を後辺寄りとしているため、傾斜辺31cが旋回成分a3と鋭角θ1で交差することから、その傾斜辺31c付近の気流には、傾斜辺31cに概垂直な上向きの成分a4がみられ、旋回成分a3と対抗する流れを形成し、旋回成分a3を緩和する。よって、旋回成分a3を緩和する成分a4を有する気流がノズル31を通過する他の気流と合流することにより、気流全体の流れとして、調理室排気ダクト10の右側面10b方向への流速成分は遅くなり気流の流れは垂直に近い方向となる。すなわち、調理室7からの排気を阻害する流れが軽減され、調理室7からの排気が調理室排気ダクト10の上面開口10fからスムースに排気される。
また、ノズル31を調理室排気ダクト10の右側面10bから間隔を空けて設けたことにより、調理室7側からの排気が、その間隔部分から矢印a5に示すようにノズル31の背面側に回り込みやすくなり、ノズル31の背面側での排気の誘引を容易としている。
また、ノズル31を調理室排気ダクト10の背面10dから間隔を空けて設けたことにより、調理室排気ダクト10内のノズル31より背面側の気流も誘引に用いられ誘引効果を高めることができる。逆に、ノズル31を調理室排気ダクト10の背面10dに近接して設けた場合、言い換えれば、図14の構造において調理室排気ダクト10の背面10dの位置が、駆動気流ダクト20の背面20bと同じ奥行き方向の位置の場合、誘引に用いられる気流が少なくなり誘因効果が低減することになる。
(加熱調理器の動作)
次に、加熱調理器の動作について説明する。ここでは本発明と主に関係する調理室7での調理が指示された場合の動作を説明する。
操作部6の操作により調理室7の調理が選択されると、冷却ファン18及び駆動気流ファン28が駆動されると共に、調理室7の上方加熱装置21及び下方加熱装置23の通電や電力が制御され、調理台22に載置された被加熱物が加熱調理される。冷却ファン18、駆動気流ファン28、上方加熱装置21及び下方加熱装置23のそれぞれの駆動タイミングは調理メニューに応じて様々であるが、ここでは全てが駆動した状態について説明する。
調理室7内の温度は、調理メニューにより異なるが、一例としては上下の加熱装置21、23を500〜800℃に発熱させた場合、200〜300℃程度の高温となる。このため、調理室7の壁面に一定の断熱手段を備えていても、放射や熱伝達により筐体2内の温度は上昇する。したがって、調理室7の使用時は、筐体2内の温度上昇により筐体2内部の各部品が機能しなくなることや寿命が短くなることを回避するため、冷却ファン18を駆動し、筐体2内の各部品が耐熱温度以下となるよう冷却するようにしている。冷却ファン18の駆動による筐体2内の空気の流れは、上述の通りである。
調理室7では、上方加熱装置21及び下方加熱装置23の駆動により調理台22に載置された被加熱物が調理される。被加熱物は魚等の食材そのままでもよいし、ラッピングされたり調理容器等に収納されたりしたものでもよい。そして、調理が進むと、被加熱物である食材から油煙や臭気成分が発生する。油煙や臭気成分は、被加熱物から直接発生する場合もあるし、食材からの汁気や脂分が受け皿24や下方加熱装置23と接触して揮発することにより発生する場合もある。このようにして発生した油煙や臭気成分は、調理室7内で拡散し、前述の駆動気流により調理室排気口25から触媒ユニット17に誘引される。触媒ユニット17に誘引された油煙や臭気成分を含む気流は、触媒ユニット17の触媒体27により油煙や臭気成分の一部が浄化されて濃度が低減された上で、空気エゼクタの原理により調理室排気構造50内に誘引される。
調理室排気構造50における空気エゼクタの効果による作用・動作は上述の通りであり、調理室排気構造50内に誘引された調理室7からの排気は駆動気流ファン28に接触することなく筐体2外へと排気される。
ここで、加熱調理に伴う吹きこぼれや調理動作のミス等により、筐体2上面にこぼれた被調理物等の液体(以下、侵入液という)が吸排気口カバー5及び調理室排気ダクト10の上面開口10fを介して調理室排気ダクト10内部に侵入した場合について考える。この場合、調理室排気ダクト10内に侵入した侵入液は、ノズル31から駆動気流ダクト20内へと滴下し、貯水部40内に回収される。
貯水部40は、駆動気流ファン28の外周全周に渡って形成されているため、ノズル31から直接滴下した侵入液が貯水部40に貯留するのはもちろんのこと、ノズル31から駆動気流ダクト20の背面20bを伝って流れる侵入液や、調理室排気ダクト10の底面10a(図11参照)の裏面を伝って流れた後、調理室排気ダクト10の周面を伝って下方に流れる侵入液も貯水部40で回収することができる。また、ノズル31と駆動気流ファン28とは平面的に見て重ならない位置に配置されているため(図11参照)、ノズル31から下方に滴下する侵入液はノズル31下方の貯水部40に滴下し、ノズル31下方からずれて配置された駆動気流ファン28には滴下しない。このため、侵入液が駆動気流ファン28に接触することによる故障を軽減できる。なお、貯水部40は駆動気流ファン28の外周全周に形成されることが好ましいが、一部を省略した形状としてもよい。
また、調理室排気ダクト10の上面開口10fは排気風路14(図2参照)の上面とほぼ同一高さとされ、調理室7からの排気が調理室排気ダクト10の上面開口10fから出た後、すぐに筐体排気口9から筐体2外へ排出されるようにしている。これにより、調理室7からの排気に含まれる侵入液が排気風路14内に拡散して筐体2内部を汚すことを防止できる。
以上説明したように本実施の形態1では、ノズル31の少なくとも一部が、駆動気流ファン28をその回転軸方向に調理室排気ダクト10の底面10aに投影させた領域Sにかかるようにノズル31を形成し、駆動気流ファン28からノズル31へ至る風路を直線的な風路とした。これにより、従来のS字風路とした場合のように駆動気流ファン28からの気流を阻害するのを抑制でき、圧力損失を軽減できる。
このように圧力損失が軽減されることでノズル31からの駆動気流の噴出し流速が速くなり空気エゼクタの効果が向上すると共に調理室排気ダクト10の上面開口10fよりスムースに排気される流れを形成でき、調理室7からの排気の誘引性能を高くできる。その結果、駆動気流ファン28の送風負荷を軽減でき、低騒音の加熱調理器とすることができる。
また、ノズル31と駆動気流ファン28との間の風路だけでなく、筐体外駆動気流吸込口19から調理室排気ダクト10の上面開口10fに至る風路全体を概直線的とし、駆動気流ファン28を、その直線の傾きに近い傾きとなるように配置した。これにより、駆動気流ファン28からの気流の軸方向成分は概ね風路と平行となり、不要な圧力損失を生じさせず効率の良い送風を行うことができる。その結果、駆動気流ファン28の送風負荷を軽減でき、低騒音の加熱調理器とすることができる。
また、ノズル31と駆動気流ファン28とを平面的に見て重ならないように配置したので、ノズル31からの侵入液が駆動気流ファン28に滴下するのを防止でき、駆動気流ファン28への侵入液の接触に伴う故障を軽減できる。その結果、排気の誘引・浄化が維持され、信頼性が高く長寿命で品質の高い加熱調理器とすることができる。
また、駆動気流ファン28の外周全周に渡って貯水部40を形成しているため、ノズル31から貯水部40へと直接滴下する侵入液はもちろんのこと、調理室排気ダクト10の底面10a(図11参照)の裏面を伝って流れた後、調理室排気ダクト10の周面を伝って下方に流れる侵入液も貯水部40で回収することができる。このように本実施の形態1ではノズル31から貯水部40へと直接滴下する以外の侵入液も回収できるため、侵入液の回収率が高まり、その結果、駆動気流ファン28の故障抑制効果が向上し、更に信頼性が高く長寿命で品質の高い加熱調理器とすることができる。
また、ノズル31を調理室排気ダクト10の右側面10bから間隔を空けて設けたため、調理室排気ダクト10の右側面10bとの距離を離すことができる。よって、ノズル31から噴出した直後の流速が速い噴流が右側面10bに衝突することを抑制できる。よって、この衝突を起因とした誘引性能の低下を抑制でき、エゼクタ効果・誘引性能が高まり送風機負荷が低減され、送風機騒音が低下して低騒音の加熱調理器とすることができる。
また、ノズル31を調理室排気ダクト10の右側面10bから間隔を空けて設けたことで調理室7側からノズル31背面側への排気の流入路が確保されるとともに、調理室排気ダクト10の背面10dからも間隔を空けて設けたため、ノズル31から調理室排気ダクト10に流入した駆動気流による噴流の背面10d側の面も空気エゼクタとして機能させることができる。よって、背面10d側での誘引効果を高めることができ、誘引性能が向上する。
また、ノズル31の右側部分が右端に向かうにつれて先細り状となる先細り形状としたため、ノズル31内の右側の通過流量を減らすことができ、更に衝突を抑制してより誘引性能を向上することができる。
また、ノズル31の右側の先細り形状の先端を後辺31b寄りとし、すなわちノズル31の前辺31aの右側を傾斜辺31cとして駆動気流ファン28の旋回方向A1と鋭角で交差するようにしたので、ノズル31内の右側を通過する気流の旋回成分a3を緩和する。これにより調理室排気ダクト10の右側面10b方向への流速成分は遅くなり気流の流れは垂直に近い方向となる。すなわち調理室7からの排気を阻害する流れを軽減でき、エゼクタ効果・誘引性能が高まり送風機負荷が低減され送風機騒音が低下して低騒音の加熱調理器とすることができる。
また、筐体2の底面2aに設けた複数の筐体外駆動気流吸込口19の穴径を、駆動気流ファン28の羽根車からの距離が近いものより遠くのものを大きくしたことにより、圧力損失の過度の上昇を軽減しながら、穴からの箸等の挿入による駆動気流ファン28の停止や損傷、故障を抑制できる。その結果、信頼性が高く、送風機負荷を低減でき低騒音の加熱調理器とすることができる。
なお、ノズル31の形状は図13に示した形状に限定されず、少なくとも以下の(1)、(2)の配置条件を満たすように形成されれば、形状については変更可能である。なお、(3)〜(6)は、図13のノズルの特徴部分について整理して明記したものである。
(1)ノズル31の少なくとも一部が、駆動気流ファン28をその軸方向に調理室排気ダクト10の底面10aに投影させた領域Sにかかるように設けられる。
(2)平面的に見て駆動気流ファン28と重ならない。
(3)調理室排気ダクト10の右側面10b(駆動気流ファン28の旋回方向A1と対向する面に相当。駆動気流ファン28の回転方向が反時計回りの場合は左側面10cとなる。)との間に間隔を空けて設けられる。
(4)調理室排気ダクト10の背面(調理室排気口25と対向する面に相当)10dとの間に間隔を空けて設けられる。
(5)ノズル31の右側(駆動気流ファン28の旋回方向A1側に相当。駆動気流ファン28の回転方向が反時計回りの場合は左側となる。)を先細り形状とする。
(6)ノズル31の右側の先細り形状の先端を後辺31b寄りとし、ノズル31の前辺31aの右側が駆動気流ファン28の旋回方向A1と鋭角で交差するようにする。
なお、ノズル31の形状には駆動気流ファン28の配置、駆動気流ダクト20のダクト形状、ノズル31の位置、調理室排気ダクト10の形状により適切な形状が存在するが、旋回成分a3を緩和するノズル形状や第1気流の通過流量を抑制するノズル形状であれば、上記(5)又は(6)の条件を満たす範囲で以下の図16〜18に示すような別形状としてもよい。
(ノズルの別形状例)
旋回成分a3(図14参照)を緩和するノズル形状や、第1気流(調理室排気ダクト10の右側面10bに衝突する気流)の通過流量をコントロールするノズル形状の別形状の例として、以下に具体的な構成例を示す。
図16〜図18は、ノズル31の別形状の例を示す図である。なお、図16〜図18に示す形状は、上記5点の全てを満たしている場合の別形状の例である。
図16では、ノズル31内の右側部分を右端に向かうにつれて段階的に小さくした先細り形状とした例を示している。また、図17は、ノズル31の先細り部分を背面側に傾斜させた例を示している。また、図18は、ノズル31の先細り部分を背面側に湾曲させた例を示している。これらの形状とした場合も上記と同様の効果が得られる。
実施の形態2.
実施の形態2の加熱調理器は、触媒ユニット、調理室排気ダクト、駆動気流ダクト及び筐体等のそれぞれにおいて一部の構成や形状等が実施の形態1と異なっている。それ以外は実施の形態1と同様であり、以下では実施の形態2が実施の形態1と異なる部分を主に記載する。
実施の形態2の加熱調理器は、図1〜図4に示す構成は実施の形態1と同様である。
図19は、本発明の実施の形態2に係る加熱調理器全体を示す底面斜視図である。図20は、図19のD−D縦断面図である。図21は、図19の調理室7とその排気構造部分を示す斜視図で、調理室7の上面及び前面扉7aを取り外した状態を示している。図22は、図21の触媒ユニット170、調理室排気ダクト100及び駆動気流ダクト200の下方分解斜視図である。
(触媒ユニット)
実施の形態1の触媒ユニット17は専用の加熱装置を用いずに排気成分の一部を浄化する構成であったが、実施の形態2の触媒ユニット170は、調理室7側に触媒加熱装置26を備えている。触媒加熱装置26には例えばシーズヒータ等が用いられる。触媒加熱装置26は触媒体27の前面に配置され、触媒体27を輻射加熱すると共に、触媒体27に流入する排気を加熱することで触媒体27を対流加熱する。実施の形態2の触媒体27に添着される触媒は実施の形態1のMnよりも高い温度で触媒活性が得られるPd等が用いられ、耐熱性の低いMn等は用いられない。Ptは低い温度より触媒活性が得られると共に耐熱性はPdと同程度であり、単独又は配合して添着して使用される。
実施の形態2の触媒ユニット170は、触媒加熱装置26を設けたことにより触媒体27の温度を実施の形態1よりも高くできることから、酸化分解の反応速度を速めることができ、より多くの排気成分を分解・浄化して排気の清浄度を高めることができる。
(調理室排気ダクト)
調理室排気ダクト100は、奥行き部10Aの形状が実施の形態1と異なり、正面側から背面側に渡って風路断面積を概同一とした形状としている。また、奥行き部10Aは全体的に背面側に向かうにしたがって上方に傾斜しており、実施の形態1と同様、調理室7内の高温の空気を空気浮力により調理室排気ダクト100の垂直部10Bへ導く作用を有している。
調理室排気ダクト100の底面10aには、実施の形態1と同様にエゼクタ効果を高め誘引性能を向上させるためのノズル310が形成されている。実施の形態2のノズル310は、いわば実施の形態1のノズル31に遮蔽部311を設けて左右に分割し、二つのノズルで構成したもので、実施の形態1と同様、上述の(1)〜(6)の要件を満足している。ノズル310による作用効果については後述することとし、ここではまず調理室排気ダクト100においてノズル310以外で実施の形態1と異なる構成部分について説明する。
(調理室排気ダクトの底面(傾斜面))
実施の形態2では、調理室排気ダクト100の底面10aを背面側が高くなる傾斜面としたことにより以下の効果が得られる。
この傾斜面により、調理室排気ダクト100の底面10aと駆動気流ファン28との距離が背面側に向かうにつれて広がった状態となる。このため、駆動気流ファン28からの気流が底面10aに接触するときの流速は、背面側の方が遅くなる。よって、底面10aに傾斜を持たせず前面側と同じ高さで概水平にした場合に比べて圧力損失を低減できる。また、駆動気流ダクト200の風路縦断面積が背面側に向かうにつれて大きくなることも圧力損失低下に寄与する。
また、底面10aを傾斜面としたことで、水平面とした場合に比べて駆動気流ファン28からの気流がノズル310へと導かれ易くなり、結果として圧力損失を低減できる。
このように、調理室排気ダクト100の底面10aを背面側が高くなる傾斜面としたことにより、駆動気流ファン28からノズル310に至る風路におけるロスが低減され、その結果、ノズル310からの噴出し流速が増して誘引性能を向上させることができる。
調理室排気ダクト100の底面10aを背面側が高い傾斜面としたことは、逆に言えば調理室7側が低い傾斜面となる。以下、これにより得られる効果について説明する。
底面10aが調理室7側が低くなる傾斜面であることから、ノズル310から底面10aの裏面(駆動気流ダクト200側の面)に回り込んだ侵入液が調理室排気ダクト100の底面10aの裏面を伝って流れる際、侵入液の流速が増して噴出側ダクト20Bの前面20cまでスムースに流れ、前面20cに至る途中での駆動気流ファン28への滴下が抑制される。よって、駆動気流ファン28への侵入液が接触することに伴う故障を軽減でき、信頼性の高い長寿命の加熱調理器とすることができる。なお、ここでは調理室排気ダクト100の底面10a全体を傾斜させたが、少なくともノズル310と駆動気流ダクト200と対向する領域とを含む領域をノズル310側が高くなるよう傾斜させた構成とすればよい。
また、調理室排気ダクト100の底面10aにおいてノズル310の背面側に、調理室排気ダクト100の上面開口10fと対向して貯水部入口37を開口している。貯水部入口37を設けたことによる効果は、駆動気流ダクト200に設けた後述の貯水部41の効果と同様であるため後述する。
(駆動気流ダクト)
図23は、図22の駆動気流ダクト200の上方斜視図である。図24は、図23の駆動気流ダクト200の平面図である。
(貯水部)
駆動気流ダクト200の背面側の外部には、調理室排気ダクト100の貯水部入口37からの侵入液を回収する貯水部41が設けられている。貯水部41は駆動気流ダクト200内部の風路とは独立して形成されている。
また、貯水部41の最下部には排水口42が設けられている。筐体2の上面にこぼれた侵入液が調理室排気ダクト100内部に入った場合、貯水部入口37を介して貯水部41に回収され、排水口42から貯水部41外に排出される。貯水部41外に排出された侵入液等は筐体外駆動気流吸込口190から筐体2外へ排出される。
このように、調理室排気ダクト100の垂直部10Bの下方に貯水部入口37及び貯水部41を配置したことで、垂直部10Bに浸入した侵入液は主に貯水部入口37から滴下するため、貯水部入口37の前方に配置したノズル310を介して駆動気流ダクト200に入るのを極力抑制できる。その結果、駆動気流ファン28への侵入液の接触に伴う故障を軽減でき、信頼性の高い長寿命の加熱調理器とすることができる。
また、駆動気流ダクト200の駆動気流流出口20aは、調理室排気ダクト100の底面10aの傾斜に合わせて背面側に向けて上方に傾斜する形状となっており、貯水部41と調理室排気ダクト100の貯水部入口37とは概水密に接続されている。水密な接続を得るための構成としては、例えば駆動気流ダクト200と調理室排気ダクト100との間に、気密性や水密性を高めるシール材を挟んで接合すればよい。
また、駆動気流ダクト200の上面と調理室排気ダクト100の底面10aとの間には、防振や断熱の特性を持つ素材を挟んで接合するようにしてもよい。防振素材を挟んだ場合、駆動気流ファン28の動作に伴う振動を吸収・遮断でき、低騒音化を図ることができる。また、断熱素材を挟んだ場合、駆動気流ダクト200に対する断熱対策コストを低減できる。具体的には、駆動気流ダクト200を製造するにあたっては、調理室7からの排気による温度上昇に耐えうる高耐熱性を有する樹脂を素材として用いる必要があるが、断熱素材を挟むことで、耐熱性のグレードを下げた安価な樹脂を用いることができ、コスト低減が可能である。
(筐体内駆動気流吸込口)
駆動気流ダクト200の吸込側ダクト20Aにおいて、左右側面の背面側の底部に、駆動気流ダクト200とその外側の筐体2内の空間とを連通する筐体内駆動気流吸込口29が開口されている。以下、筐体内駆動気流吸込口29を設けたことにより得られる作用効果について説明する。
筐体内駆動気流吸込口29を設けたことにより、駆動気流ダクト200の吸入側は筐体2内にも連通するため、筐体2外の空気だけでなく筐体2内の空気も駆動気流ダクト200内に吸引されることになる。ところで、筐体2内は、冷却ファン18により筐体2外の空気が強制的に押し込まれて筐体2外に比べ圧力が高い状態となっている。このため、駆動気流ダクト200内に空気を吸引するにあたり、筐体2外の空気よりも筐体2内の空気の方が低負荷で吸引可能である。よって、筐体内駆動気流吸込口29を設けて筐体2内の空気を吸引する構造とすることで吸込み負荷を軽減でき、駆動気流ファン28の送風量を増加できる。その結果、ノズル310から噴出される気流の流速を速めることができる。また、吸込み負荷の軽減により送風機騒音が低下して低騒音の加熱調理器とすることができる。
なお、筐体2内の温度は、加熱調理中、筐体2外の温度よりも高くなる。このため、駆動気流ダクト200内に新たに筐体2内の空気も吸引するようにしたことで駆動気流ファン28の温度は高くなる。よって、駆動気流ファン28には、その上昇後の温度に耐えうる耐熱性が求められるが、高耐熱性とするにはコストが嵩む。したがって、筐体外駆動気流吸込口190からの吸引風量と筐体内駆動気流吸込口29からの吸引風量との比率を調整し、駆動気流ダクト200内で合流後の空気温度を下げるようにすれば、耐熱温度の低い低コストのファンを使用できる。
(筐体外駆動気流吸込口)
図25は、図20の筐体2の底面を下から見た図である。以下、図25及び前述の図20を参照して筐体2の底面2aの吸込み領域190aについて説明する。
実施の形態2では、吸込み領域190aを下方に突出させ、吸込み領域190aの位置をその周囲の底面2aよりも低くした構成としている。これにより、以下の効果が得られる。
吸込み領域190aでは、吸込み領域190a内の前後方向で風速差が生じており、駆動気流ファン28との距離が近い後方側の流入風速が前方側の流入風速に比べて速くなっている。よって、吸込み領域190aの位置を下げて駆動気流ファン28の流入面28aとの距離を離すことで全体的に流入風速を下げることができる。特に流入風速の速い後方側の流入風速を下げられることは圧力損失の軽減に繋がり、送風機負荷を軽減できる。
また、吸込み領域190aの位置を下げたことにより駆動気流ファン28の流入面28aとの距離が離れるため、筐体外駆動気流吸込口19の開口面積を拡大できる。その結果、圧力損失を軽減して送風機負荷を低減できファン騒音が低く低騒音の加熱調理器とすることができる。
また、吸込み領域190aの位置がその周囲の底面2a部分より低いことにより、貯水部41の排水口42から排出されて吸込み領域190aに流れ込んだ侵入液が筐体2の底面2aの他の部分に広がって流れることがない。よって、電子回路基板12等の部品へ侵入液が接触することに伴う故障を軽減でき、信頼性の高い長寿命の加熱調理器とすることができる。
また、実施の形態1では筐体外駆動気流吸込口19の開口は概円形であったが、実施の形態2では左右方向に延びるスリット状の長穴としている。これにより開口率が高まり、通過風速が下がって圧力損失が減少し、送風機負荷を低減できる。また、筐体外駆動気流吸込口19を構成する長穴の奥行き方向の幅を、駆動気流ファン28の羽根車からの距離が近いものの方から遠くのものの方に向かうにつれて拡大している。このように構成したことによる効果は実施の形態1と同様であり、箸等の挿入による駆動気流ファン28の停止や損傷を抑制でき、また、駆動気流ファン28の故障を軽減できて信頼性の高い加熱調理器とすることができる。
本実施の形態2においては、吸込み領域190aの左右方向については筐体外駆動気流吸込口19の左右方向のスリット幅を同一幅としているが、以下のようにしてもよい。すなわち、吸込み領域190aにおいて駆動気流ファン28と対向する領域の左右外側の領域については、左右方向においても羽根車の左右端面から遠くになるにしたがい、箸等が羽根車に接触しない範囲でスリット幅を拡大するようにしてもよい。
(ノズル)
図26は、図22の駆動気流ダクト200及び調理室排気ダクト100における気流の流れを説明するための斜視図である。図27は、図22の触媒ユニット170、調理室排気ダクト100の横断面図である。
駆動気流ファン28から流出する気流は軸方向成分と旋回成分とを含んでおり、駆動気流ファン28から流出する気流の旋回方向A1は、平面的に見て駆動気流ファン28の回転方向と同じ時計回りとなっている。以下、時計回りの場合の気流の流れを流体解析の結果に基づき説明する。なお、ノズル310における気流の流れの構成・効果は基本的に実施の形態1のノズル31と同様であり、以下、実施の形態2のノズル310において特に着目すべき点について説明する。
ノズル310は、上述したようにいわば実施の形態1のノズル31を左右に分割して二つのノズルで構成したものであるが、その分割位置は第1気流とそれ以外の気流(以下、第2気流という)との境界部分を分割位置とする。
本実施の形態2では、上記の分割位置で分割したノズル構成とすることで、以下の作用効果を得ることができる。
第1気流と第2気流とをそれぞれノズル310Aとノズル310Bとで分けて通過させることができる。よって、ノズル310A及びノズル310Bをそれぞれ、内部を通過する気流に応じた適切な配置・形状とすることができる。これにより、ノズル310A及びノズル310Bからの噴出しの流れをコントロールでき、誘引性能を高めることができる。
また、ノズル310Aとノズル310Bとの間の間隔部分が、ノズル310の背面側へ誘引される調理室7からの排気の流入路となる。このため、ノズル310の右端(ノズル310Aの右端)と調理室排気ダクト100の右側面10bとの間の間隔部分のみが流入路であった実施の形態1と比較すると、ノズル310Aと310B間にも流入路が確保されることで排気の流入量が増し、誘引性能の向上に寄与する。
なお、誘引性能を良好とできるノズル310の開口面積は駆動気流ファン28の風量と静圧の特性に応じて決まった範囲となる。その範囲を満たすノズルとするにあたり、分割した二つのノズルで満たす場合、一つのノズルで満たす場合に比べて合計の外周長さを長くできる。すなわち、誘引される排気との接触面積を増加させることができ、この点も誘引性能の向上に寄与する。
また、左側のノズル310Bの分割辺(右辺)31eは、駆動気流ファン28の旋回方向A1と鋭角θ2で交差することから、分割辺31eには左側に向かう気流a6がみられ、この気流によりノズル310B内の中央部を通過する流れは左側へ収束させられて気流の横断面が絞られ、流速が高められる。これによりノズル310Bからの噴出速度を増速でき、誘引性能が向上する。
以上のように誘引性能が高まることで送風機負荷を低減でき、低騒音の加熱調理器とすることができる。
(加熱調理器の動作)
以上の構成において、調理室7での調理が指示された場合の基本動作は実施の形態1と同様であり、同様の作用効果を得ることができる。
以上説明したように、本実施の形態2によれば実施の形態1と同様の作用効果が得られると共に、実施の形態1と異なる構成部分により以上に説明した作用効果を得ることができる。
(ノズルの別形状の例)
実施の形態2のノズル310は、第1気流と第2気流との境界部分で左右二つに分割したノズル310A、310Bで構成されていることと、実施の形態1で説明した(1)、(2)の少なくとも2点の要件を満たしていればよく、他に例えば、図28〜図30に示す形状としてもよい。これらの形状とした場合も上記と同様の作用効果が得られる。なお、図28〜図30に示す形状は、上記(1)〜(6)の全てを満たしている場合の別形状の例である。
図28〜図30の別形状の例では何れも、右側のノズル310Aを左側のノズル310Bに比べて背面側に近づけた形状としている。この形状により、右側のノズル310Aを通過する気流が旋回成分により調理室7側に傾斜しても、その気流を概垂直部10B内に流入させることができ、調理室排気ダクト100の奥行き部10Aの上面10eへの衝突を緩和することができる。
また、図28〜図30の別形状の例では、左側のノズル310Bの分割側の辺(右辺)31fを、後方に向かうにつれてノズル310Bの左右幅が縮小する方向に直線的又は曲線的に変化させている。この形状とすることで、図27の形状に比べてノズル310Bを通過する気流の横断面領域を小さくして流速を高める作用が増加する傾向を示す。また図30のようにノズル310Bにおいて分割側と反対側の辺(左辺)31eも同様に、後方に向かうにつれてノズル310Bの左右幅が縮小する方向に直線的又は曲線的に変化させてもよい。この場合、気流の収束による増速・誘引向上をもたらす傾向を示す。
また、各実施の形態1、2においてそれぞれ別の実施の形態として説明したが、各実施の形態の特徴的な構成を適宜組み合わせて加熱調理器を構成してもよい。