JP5839318B2 - 炭素膜の形成方法、炭素膜の形成装置、及び炭素膜 - Google Patents

炭素膜の形成方法、炭素膜の形成装置、及び炭素膜 Download PDF

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Description

本発明は、低温度の環境下でターゲットとなる被加工材の表面に高品位な炭素膜を加工形成するための炭素膜の形成方法、炭素膜の形成装置、及び炭素膜に関する。
従来、炭素膜としては、例えば切削工具、軸受などの摺動部品などの表面に製膜されるDLC膜が知られている。DLC膜の製法には、従来より様々な方法が提案されており、最近では水素含有量が極めて低い低水素炭素膜、あるいは水素がほとんど含まれない水素の含有量が1%未満の炭素膜(いわゆる真性カーボン膜)が存在する。低水素炭素膜あるいは真性カーボン膜は、膜としての耐摩耗性、耐久性が存在し、高硬度であるため、例えば電極、金型、工具、機械部品などの各種被加工材の表面材として利用されている。
一般に水素含有量が0.5%以上5%以下のDLC膜は、カソードアーク法及びフィルタードアーク法、レーザーアブレーション法、スパッタリング法の各方法で成膜される。
カソードアーク法及びフィルタードアーク法は、アーク放電の投入電圧0〜200Vで、電流は10A以上で製膜が行われる。また合成温度は下記特許文献1に示すように180〜230℃、膜密度は2.8g/cm3以上3.3 g/cm3以下で成膜可能とされる。
レーザーアブレーション法では、下記特許文献1に示すように、合成温度は220℃、膜密度は3.05g/cm3で成膜可能とされる。
フィルタードアーク法としては、下記特許文献2に示す方法が知られており、この方法で製膜される硬質膜の膜密度は、2.7g/cm3以上3.4 g/cm3以下とされ、Sp3/(Sp2+Sp3)の構造比は0.5以上0.9以下とされる。
さらにスパッタリング法としては、下記特許文献3に示す方法が知られている。この方法による製膜によれば膜密度が2.0g/cm3程度の膜が製膜可能とされる。
特開2003-147508号公報 特開2008-297171号公報 特開2007-70667号公報
ただ、いずれの方法においても、製膜するための装置は、真空装置内において低い温度帯でも180℃以上の環境下で製膜しなければならず、例えば被加工材が合成樹脂で形成される場合では製膜が不可能とされ、低温度の環境下で被加工材の表面に、良好かつ高品位な炭素膜を形成することのできる方法および装置の開発が期待されていた。
本発明は、上述した背景に鑑みてなされたものであり、低温度の環境下でターゲットとなる被加工材の表面に、良好かつ高品位な炭素膜を形成することを目的とするものである。
上記目的を解決するため、本発明の請求項1は、所定の真空度に減圧可能とされる真空チャンバ内に、被加工材を保持し、基板電圧印加手段により所定の電圧に印加される基板と、上記基板に対向配置される炭素原料基板上で、上記真空チャンバ内に導入される放電発生用の媒体ガスをパルス電源より上記炭素原料基板に出力される調整電力に基づきプラズマ化し、上記炭素原料基板から上記基板に保持される上記被加工材に向けて炭素原料とともに放電するプラズマ発生源と、を備え、上記被加工材の表面に炭素膜を加工形成する炭素膜の形成方法であって、上記基板電圧印加手段により上記基板に印加される電圧を0〜−300Vの範囲に設定し、上記パルス電源より上記炭素原料基板に出力される調整電力を、79.6KW/m〜3,184KW/mの範囲に、調整電力におけるパルス電圧の印加時間を1nsec〜60μsecの範囲に設定し、上記基板電圧印加手段により上記基板に印加される電圧を0〜−300Vの範囲に設定し、上記パルス電源より上記炭素原料基板に出力される調整電力を79.6KW/m〜3,184KW/mの範囲に、調整電力におけるパルス電圧の印加時間を1nsec〜60μsecの範囲に設定することにより、上記被加工材の表面に形成される炭素膜を、密度2.4g/cm〜2.7g/cm、ビッカース換算硬度HV2,000〜HV4,000、換算熱伝導率1.0〜1.5W(m・K)、電気抵抗率0.01Ω・cm〜10Ω・cm、水素含有量1%以下に設定したことを特徴とする炭素膜の形成方法としたものである。
また、本発明の請求項2は、上記真空チャンバ内を、室温〜80°Cの範囲に設定調整した請求項1に記載の炭素膜の形成方法としたものである。
また、本発明の請求項は、上記基板電圧印加手段を、基板に対してパルス電圧を出力するパルス電源とし、該出力するパルス電圧は、プラズマ発生源のパルス電源より炭素原料基板に出力される調整電力におけるパルス電圧と同期、または1nsec〜60μsecの範囲で遅延させることとした請求項1又は請求項2に記載の炭素膜の形成方法としている。
また、本発明の請求項は、真空チャンバ内に導入される放電加工用の媒体ガスを、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノンのいずれか、あるいはこれらを任意に混合したものである請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の炭素膜の形成方法としている。
また、本発明の請求項は、上記炭素原料基板を炭素含有量が99%以上の純粋炭素板のものとする他、炭素含有量を70〜90%の範囲に設定し、残余の含有元素をシリコン、ボロン、リン、リチウム、マグネシウム、白金、タングステン、タングステンカーバイトのいずれか、またはこれらを混合させたものとする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の炭素膜の形成方法としている。
また、本発明の請求項6は、上記炭素原料基板を炭素含有量が99%以上の純粋炭素板のものとする他、炭素含有量を70〜90%の範囲に設定し、残余の含有元素をクロムとした請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の炭素膜の形成方法としている。
また、本発明の請求項7は、真空チャンバ内に導入される放電加工用の媒体ガスに加えて、窒素、酸素、二酸化炭素、炭化フッ素のいずれかを含むドーピングガスを真空チャンバ内に導入することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の炭素膜の形成方法としている。
また、本発明の請求項8は、基板に保持される被加工材を、合成樹脂、紙、繊維、不織布のいずれかとした請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の炭素膜の形成方法としている。
また、本発明の請求項9は、所定の真空度に減圧可能とされる真空チャンバ内に、被加工材を保持し、基板電圧印加手段により所定の電圧に印加される基板と、上記基板に対向配置される炭素原料基板上で、真空チャンバ内に導入される放電発生用の媒体ガスをパルス電源より炭素原料基板に出力される調整電力に基づきプラズマ化し、炭素原料基板から上記基板に保持される被加工材に向けて炭素原料とともに放電するプラズマ発生源と、を備え、被加工材の表面に炭素膜を加工形成する炭素膜の形成装置であって、上記基板電圧印加手段により基板に印加される電圧を0〜300Vの範囲に設定し、上記パルス電源より炭素基板に出力される調整電力を79.6KW/m〜3,184KW/mの範囲に、調整電力におけるパルス電圧の印加時間を1nsec〜60μsecの範囲に設定調整するコントローラを備え
上記基板電圧印加手段を、基板に対してパルス電圧を出力するパルス電源とし、該出力するパルス電圧は、プラズマ発生源のパルス電源より炭素原料基板に出力される調整電力におけるパルス電圧と同期、または1nsec〜60μsecの範囲で遅延させる印加タイミングの調整手段を備えることを特徴とする炭素膜の形成装置としたものである。
本発明の請求項10は、請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の炭素膜の形成方法によって形成したことを特徴とする炭素膜としている。
本発明の請求項1によれば、所定の真空度に減圧可能とされる真空チャンバ内に、被加工材を保持し、基板電圧印加手段により所定の電圧に印加される基板と、上記基板に対向配置される炭素原料基板上で、真空チャンバ内に導入される放電発生用の媒体ガスをパルス電源より炭素原料基板に出力される調整電力に基づきプラズマ化し、炭素原料基板から上記基板に保持される被加工材に向けて炭素原料とともに放電するプラズマ発生源と、を備え、被加工材の表面に炭素膜を加工形成する炭素膜の形成方法であって、上記基板電圧印加手段により基板に印加される電圧を0〜300Vの範囲に設定し、上記パルス電源より炭素原料基板に出力される調整電力を、79.6KW/m〜3,184KW/mの範囲に、調整電力におけるパルス電圧の印加時間を1nsec〜60μsecの範囲に設定したため、真空チャンバ内においてアーク放電移行しない遷移領域で効率よくプラズマ放電を発生させることが可能となり、これにより真空チャンバ内の被加工材の表面に低水素あるいは水素の含有量が1%未満の高品位の炭素膜を形成することが可能となる。すなわち、本発明の請求項1に係る炭素膜の形成方法によれば、真空チャンバ内で低温度の環境下で被加工材の表面に、良好かつ高品位な炭素膜を形成するができるという効果がある。
さらに、本発明の請求項1によれば、極めて高硬度で特性に優れた炭素膜を提供することができるという効果がある。
また、本発明の請求項によれば、真空チャンバ内を、室温〜80℃の範囲に設定調整可能とし、かつ被加工材の表面に、良好かつ高品位な炭素膜を形成するができるため、従来DLC膜等を形成することが不可能とされてきた合成樹脂、紙等の被加工材の表面に炭素膜を放電により形成することができるという効果がある。
また、本発明の請求項によれば、上記基板電圧印加手段を、基板に対してパルス電圧を出力するパルス電源とし、該出力するパルス電圧は、プラズマ発生源のパルス電源より炭素原料基板に出力される調整電力におけるパルス電圧と同期、または1nsec〜60μsecの範囲で遅延させる状態で被加工材の表面に炭素膜が形成されるため、より確実に良好かつ高品位な炭素膜を形成することが可能となる。
また、本発明の請求項によれば、真空チャンバ内に導入される放電加工用の媒体ガスを、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノンのいずれか、あるいはこれらを任意に混合するようにしたため、被加工材の表面に形成される炭素膜の性質を任意に変更することが可能となり、より確実に良好かつ高品位な炭素膜を提供できることとなる。
また、本発明の請求項によれば、上記炭素原料基板を炭素含有量が99%以上の純粋炭素板のものとする他、炭素含有量を70〜90%の範囲に設定し、残余の含有元素をシリコン、ボロン、リン、リチウム、マグネシウム、白金、タングステン、タングステンカーバイトのいずれか、またはこれらを混合させるようにしたため、被加工材の表面に形成される炭素膜の性質を任意に変更することが可能となり、より確実に良好かつ高品位な炭素膜を提供できることとなる。
また、本発明の請求項6によれば、上記炭素原料基板を炭素含有量が99%以上の純粋炭素板のものとする他、炭素含有量を70〜90%の範囲に設定し、残余の含有元素をクロムにしたため、被加工材の表面に形成される炭素膜の性質を任意に変更することが可能となり、より確実に良好かつ高品位な炭素膜を提供できることとなる。
また、本発明の請求項7によれば、真空チャンバ内に導入される放電加工用の媒体ガスに加えて、窒素、酸素、二酸化炭素、炭化フッ素のいずれかを含むドーピングガスを真空チャンバ内に導入することとしたため、被加工材の表面に形成される炭素膜の性質を任意に変更することが可能となり、より確実に良好かつ高品位な炭素膜を提供できることとなる。
また、本発明の請求項8によれば、基板に保持される被加工材を、合成樹脂、紙、繊維、不織布のいずれかとしたため、様々な材質からなる被加工材の表面に良好かつ高品位な炭素膜を形成することが可能となる。
また、本発明の請求項9によれば、所定の真空度に減圧可能とされる真空チャンバ内に、被加工材を保持し、基板電圧印加手段により所定の電圧に印加される基板と、上記基板に対向配置される炭素原料基板上で、真空チャンバ内に導入される放電発生用の媒体ガスをパルス電源より炭素原料基板に出力される調整電力に基づきプラズマ化し、炭素原料基板から上記基板に保持される被加工材に向けて炭素原料とともに放電するプラズマ発生源と、を備え、被加工材の表面に炭素膜を加工形成する炭素膜の形成装置であって、上記基板電圧印加手段により基板に印加される電圧を0〜300Vの範囲に設定し、上記パルス電源より炭素基板に出力される調整電力を79.6KW/m〜3,184KW/mの範囲に、調整電力におけるパルス電圧の印加時間を1nsec〜60μsecの範囲に設定調整するコントローラを備えることとしたため、真空チャンバ内においてアーク放電移行しない遷移領域で効率よくプラズマ放電を発生させることが可能となり、これにより真空チャンバ内の被加工材の表面に低水素あるいは水素の含有量が1%未満の高品位の炭素膜を形成することが可能となる。すなわち、本発明の請求項9に係る炭素膜の形成装置によれば、真空チャンバ内で低温度の環境下で被加工材の表面に、良好かつ高品位な炭素膜を形成するができるという効果がある。
さらに、本発明の請求項9によれば、上記基板電圧印加手段を、基板に対してパルス電圧を出力するパルス電源とし、該出力するパルス電圧は、プラズマ発生源のパルス電源より炭素原料基板に出力される調整電力におけるパルス電圧と同期、または1nsec〜60μsecの範囲で遅延させる印加タイミングの調整手段を備えることとしたため、こうした手段により確実に良好かつ高品位な炭素膜を形成することが可能となる。
また、本発明の請求項10によれば、被加工材の表面上の炭素膜であって、密度2.4g/cm 〜2.7g/cm であり、ビッカース換算硬度HV2,000〜HV4,000であり、換算熱伝導率1.0〜1.5W(m・K)であり、電気抵抗率0.01Ω・cm〜10Ω・cmであり、水素含有量1%以下であることを特徴とする炭素膜としたため、こうした手段により確実に良好かつ高品位な炭素膜を形成することが可能となる。
本発明の実施形態に係る炭素膜の形成装置の全体を示す模式図である。 調整電力を出力するパルス電源を示す回路図である。 印加タイミングの調整手段を示す回路図である。 実施例1ないし4の各方法により、炭素膜を被加工材としての基板に形成するプロセスを示すフローチャートである。 実施例1ないし4の各炭素膜の形成方法において、調整電力としてのパルス電源の出力波形の時間変化を示すグラフである。 実施例6の炭素膜の形成方法において、炭素原料基板に出力される調整電力のパルス電圧の出力波形の時間変化を示すグラフである。 実施例1の示す炭素膜の形成方法により形成された炭素膜のX線反射率を示すグラフである。 実施例2の示す炭素膜の形成方法により形成された炭素膜のX線反射率を示すグラフである。 実施例3の示す炭素膜の形成方法により形成された炭素膜のX線反射率を示すグラフである。 実施例4の示す炭素膜の形成方法により形成された炭素膜のX線反射率を示すグラフである。 比較例としての通常のDLC膜のX線反射率を示すグラフである。 実施例1の示す炭素膜の形成方法により形成された炭素膜の深さ方向に対する水素含有量を示すグラフである。 実施例2の示す炭素膜の形成方法により形成された炭素膜の深さ方向に対する水素含有量を示すグラフである。 実施例3の示す炭素膜の形成方法により形成された炭素膜の深さ方向に対する水素含有量を示すグラフである。 実施例4の示す炭素膜の形成方法により形成された炭素膜の深さ方向に対する水素含有量を示すグラフである。 比較例としての通常のDLC膜の深さ方向に対する水素含有量を示すグラフである。 実施例1の炭素膜の形成方法により形成された炭素膜のSEM画像を示す図である。 実施例2の炭素膜の形成方法により形成された炭素膜のSEM画像を示す図である。 比較例としての通常のDLC膜のSEM画像を示す図である。 実施例1の炭素膜の形成方法により形成された炭素膜のTEM画像と電子線回折画像を示す図である。 実施例3の炭素膜の形成方法により形成された炭素膜のTEM画像と電子線回折画像を示す図である。 実施例10に示す炭素膜の形成方法により、形成された炭素膜のX線反射率を示すグラフである。 実施例11に示す炭素膜の形成方法により、形成された炭素膜のX線反射率を示すグラフである。 実施例10に示す炭素膜の形成方法により、形成された炭素膜の深さ方向の元素含有量を示すグラフである。 実施例11に示す炭素膜の形成方法により、形成された炭素膜の深さ方向の元素含有量を示すグラフである。 実施例8に示す炭素膜の形成方法により、形成された炭素膜の純水に対する接触角を示す図である。 実施例8に示す炭素膜の形成方法により、形成された炭素膜の純水に対する接触角を示す図である。 実施例2、実施例10および実施例11に示す炭素膜の形成方法により、形成された炭素膜の耐熱試験後の表面粗さを示す図である。
図1は、本発明の実施形態に係る炭素膜の形成装置を示す。この炭素膜の形成装置は真空チャンバ1を備えてなり、該チャンバ1はその内部を不図示の真空ポンプを作動して矢印方向に排気を行い、所定の真空度に減圧可能とされる。真空チャンバ1内には基板2が配置され、該基板2は基板電圧印加手段3により所定の電圧に印加される。基板電圧印加手段3は、基板用のパルス電圧又は直流電圧を印加するものとされ、該基板2には被加工材4がその表面に保持可能とされる。以下の説明において、基板2に印加する電圧は負の電圧である。
真空チャンバ1内には、上記基板2に対向配置される状態でプラズマ発生源としての炭素原料基板5が備えられる。炭素原料基板5は電極基板6上に支持され、電極基板6には炭素原料基板用のパルス電源7が接続される。真空チャンバ1にはガス導入ポート8が備えられ、ガス導入ポート8からは真空チャンバ1内に放電発生用の媒体ガスが導入可能とされる。またガス導入ポート8からは真空チャンバ1内に放電発生用の媒体ガスに加え、ドーピングガスも導入可能とされる。
基板電圧印加手段3および炭素原料基板用のパルス電源7には、コントローラ9が接続される。コントローラ9は上記基板電圧印加手段3により基板2に印加される電圧を所定の電圧値に設定調整可能とするとともに、炭素原料基板用のパルス電源7から電極基板6に、さらに電極基板6から電極基板6上に支持される炭素原料基板5へと出力される調整電力の値を、所定の値に設定調整することを可能としている。さらに加えてコントローラ9は、炭素原料基板5に出力される調整電力におけるパルス電圧の印加時間についても所定の値に設定調整することを可能にしている。
このように炭素膜の形成装置は、真空チャンバ1内を所定の真空度に減圧し、この状態でコントローラ9の指令に基づく基板電圧印加手段3の作動により、基板2に所定の電圧を印加し、さらにコントローラ9の指令に基づくパルス電源7から炭素原料基板5への調整電力の出力を行うことができる。これにより、ガス導入ポート8から真空チャンバ1内に導入される放電発生用の媒体ガスを、パルス電源7より電極基板6を介して炭素原料基板5に出力される調整電力に基づき、プラズマ化することが可能となり、炭素原料基板5から上記基板2に保持される被加工材4に向けて炭素原料とともにプラズマ放電が発生する状態となる。この結果、該プラズマ放電により被加工材4の表面に炭素膜を加工形成することが可能となる。
ここで基板電圧印加手段3は、基板用のパルス電圧あるいは又は直流電圧を印加するものとされ、先ず直流電圧を印加する場合、コントローラ9は基板2を0〜300Vの範囲に設定調整する状態で電圧を印加するものとされる。一方、炭素原料基板用のパルス電源7から電極基板6に、さらに電極基板6から電極基板6上に支持される炭素原料基板5へと出力される調整電力はコントローラ9がその値、並びにパルス電圧の印加時間について所定の値に設定調整するものとし、調整電力の値を79.6KW/m2〜3,184KW/m2の範囲に、調整電力におけるパルス電圧の印加時間を1nsec〜60μsecの範囲に設定調整するものとしている。
ここで調整電力を出力するパルス電源7としては、図2に示すような回路が採用可能とされる。この回路は高圧直流安定化電源の出力をコンデンサに充電し、そのエネルギーをIGBTでパルス状に変換し、加えてスナバ回路で安定化した状態で時間的に圧縮させた状態にして、大電力パルスとしてLOAD(電極基板6側)に供給出力することを可能にしている。すなわちこの回路は、直流安定化電源の出力電圧EoをコンデンサCoで充電し、IGBTでパルス状に変換するとともに、スナバ回路で安定化を図り、さらにLstはLOAD(電極基板6側)で急激なインピーダンスの低下が発生したような場合において、過電流から電源やIGBTを保護するものである。
基板電圧印加手段3において、基板用のパルス電圧を印加する場合、図3に示すような印加タイミングの調整手段としての回路が採用可能とされる。この回路を採用する場合においても、コントローラ9は基板2を0〜300Vの範囲に設定調整する状態で電圧を印加するものとされる。この回路は基板2に対し、基板電圧用パルス電源の部分においてパルス電圧を印加し、出力することを可能とするとともに、炭素基板用パルス電源の部分において炭素原料基板用のパルス電源7から電極基板6に、さらに電極基板6から電極基板6上に支持される炭素原料基板5へと出力される調整電力を出力可能とするものである。すなわち、この回路は、図1に示すコントローラ9の指令に基づき、基板2に対し基板電圧用パルス電源より印加するパルス電圧に対し、プラズマ発生源としてのパルス電源(炭素基板用パルス電源)より炭素原料基板側(電極基板6)に出力される調整電力におけるパルス電圧を同期させるか、あるいは1nsec〜60μsecの範囲で遅延させる状態でパルス電圧の出力するタイミングを調整することを可能にし、これにより後述するように被加工材4の表面に炭素膜を形成する場合において、その形成状態を調整可能にしている。こうした基板電圧用パルス電源から出力されるパルス電圧に対し、炭素基板用パルス電源のパルス電圧を同期あるいは遅延させるタイミング調整については、図3の基板電圧用パルス電源に示すように「パルス幅の設定」や「遅延時間の設定」をコントローラ9の指令に基づいて調整することで行われる。
炭素膜の形成装置により被加工材4の表面に炭素膜を形成するについては、例えば図5のフローチャートに示すプロセスが採用可能とされる(後述する実施例1〜4の各方法で形成される炭素膜はこの方法で形成されたものである)。すなわち、被加工材4の表面への炭素膜の形成が導電性保護膜の被着である場合、被加工材4の表面に対してイオンボンバードによる前処理を行う前処理工程(図4のボンバード)、前処理された被加工材4表面に密着性を向上させる中間層の成膜(図4の中間層成膜)、中間層が成膜された被加工材4表面に応力を緩和させる1層目の傾斜層の成膜(図4の傾斜層(1層目)成膜)、1層目の傾斜層が成膜された加工材4の表面に応力を緩和させる2層目の傾斜層の成膜(図4の傾斜層(2層目)成膜)、2層目の傾斜層が成膜された加工材4の表面に低水素の炭素膜、あるいは水素を含有しない炭素膜の成膜(図4の真性カーボン膜)、が順次行われるようにしている。
図4に示す前処理としてのボンバードは、真空チャンバ1内を所定の真空度に減圧した後にガス導入ポート8よりAr等のガスを導入して行われ、これにより加工材4の表面がイオンボンバードされ、プラズマ洗浄されることとなる。
図4に示す中間層の成膜は、インジウム(In)、タングステン(W)、タングステンカーバイト(WC)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)及び珪素(Si)、炭化ケイ素(SiC)、テトラメチルシラン(TMS)、ヘキサメチルジシロキサン(TEOS)からなる群から選ばれる一種又は二種以上からなる元素を被加工材4の表面に被着して行われる。中間層の形成としは、プラズマCVD法、スパッタリング法、イオン化蒸着法、蒸着法、印刷法またはメッキによって行うことが可能とされるが、プラズマCVD法又はスパッタリング法が好適である。
図4に示す中間層が成膜された被加工材4への傾斜層(1層目)の成膜は、前記中間層の成膜に用いられた各元素、あるいはこれにカーボン(C)を加えた元素から選ばれる一種又は二種以上の材料を混合して用いて成膜形成される。傾斜層(1層目)の形成としては、プラズマCVD法、スパッタリング法、蒸着法、イオン化蒸着法、印刷法又はメッキによって行うことが可能とされるが、プラズマCVD法とスパッタリング法が好適である。図4に示す被加工材4への傾斜層(1層目)が成膜された被加工材4への傾斜層(2層目)の成膜についても、前記中間層の成膜に用いられた各元素、あるいはこれにカーボン(C)を加えた元素から選ばれる一種又は二種以上の材料を混合して用いて成膜形成される。この場合において、傾斜層(2層目)は傾斜層(1層目)よりもカーボン(C)の割合を多くし、その上面に形成される炭素膜との応力を緩和することが好適である。傾斜層(2層目)の形成には、プラズマCVD法、スパッタリング法、蒸着法、イオン化蒸着法、印刷法又はメッキによって行うことが可能とされるが、プラズマCVD法とスパッタリング法が好適である。
被加工材4において、傾斜層(2層目)の上面における実施形態に係る炭素膜の成膜(図4に示す真性カーボン膜の成膜)としては、その膜厚が0.005〜1μmとするのが好ましく、前記中間層の厚さとしては0.005〜10μmが好ましい。また傾斜層(1層目および2層目)の厚さとしては0.005〜10μmが好ましい。
被加工材4の表面に対する炭素膜を形成については、上記炭素膜の形成装置において真空チャンバ1内を所定の真空度に減圧し、続いて真空チャンバ1内に放電加工用の媒体ガスをガス導入ポート8より導入する。放電加工用の媒体ガスとしては、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノンのいずれか、あるいはこれらを任意に混合したものが採用可能とされるが、アルゴンが最も好適である。続いて、コントローラ9の指令に基づく基板電圧印加手段3の作動により、基板2に0〜−300Vの範囲に設定調整する状態の電圧を印加し、さらにコントローラ9の指令に基づき、パルス電源7から79.6KW/m〜3,184KW/mの範囲、パルス電圧の印加時間を1nsec〜60μsecの範囲に設定調整された調整電力が炭素原料基板5へ出力される。するとガス導入ポート8から真空チャンバ1内に導入される放電発生用の媒体ガス(例えばアルゴン)が、パルス電源7より電極基板6を介して炭素原料基板5に出力される調整電力に基づき、プラズマ化することとなる。すなわち、炭素原料基板5から上記基板2に保持される被加工材4に向けて炭素原料とともにプラズマ放電が発生する状態となる。ここで被加工材4の表面に低水素あるいは水素の含有量が1%未満の高純度の炭素膜を成膜する場合、炭素原料基板5は炭素含有量が99%以上の純粋炭素板を用いることが好適である。また被加工材4の表面に他の性質を有する低水素あるいは水素の含有量が1%未満の炭素膜を成膜したい場合、炭素原料基板5の炭素含有量を70〜90%の範囲に設定し、残余の含有元素をシリコン、ボロン、リン、リチウム、マグネシウム、白金、タングステン、タングステンカーバイトのいずれかを混合させるようにしてもよい。この結果、該プラズマ放電により被加工材4の表面に炭素膜を加工形成することが可能となる。
こうして真空チャンバ1内において被加工材4の表面に炭素膜を形成する状態においては、真空チャンバ1内に導入される上記放電加工用の媒体ガスに加えて、ガス導入ポート8より窒素、酸素、二酸化炭素、炭化フッ素のいずれかを含むドーピングガスを真空チャンバ内に導入することも可能とされる。これにより、被加工材4の表面に形成される炭素膜の性質を任意に変更することも可能となる。
こうして真空チャンバ1内において被加工材4の表面に形成される炭素膜は、上記基板電圧印加手段3により基板2に印加される電圧を0〜−300Vの範囲に設定調整され、上記パルス電源7より炭素原料基板5に出力される調整電力を79.6KW/m〜3,184KW/mの範囲に、調整電力におけるパルス電圧の印加時間を1nsec〜60μsecの範囲に設定調整されるため、真空チャンバ1内においてアーク放電移行しない遷移領域の範囲で効率よくプラズマ放電を発生させることが可能となる。ここでプラズマ放電は、基板2に印加される電圧値の設定調整や炭素原料基板5に出力される調整電力の値と調整電力におけるパルス電圧の印加時間の設定調整により、上記真空チャンバ1内においてアーク放電等による放電加熱が発生せず、真空チャンバ1内を室温〜80℃の範囲に設定する低温状態に保持することが可能となる。よって、従来DLC膜等を形成することが不可能とされてきた合成樹脂、紙、繊維、不織布等の被加工材4の表面に炭素膜を放電により形成することが可能となる。すなわち、基板2に保持される被加工材4は、従来の金属等の材質に限定されることなく、合成樹脂、紙、繊維、不織布など様々な材質のものとし、こうした被加工材4の表面に良好かつ高品位な炭素膜を形成することが可能となる。
また、上記実施形態に係る炭素膜の形成装置については、上記コントローラ9の指令に基づき、上記基板電圧印加手段3により基板2に印加される電圧を0〜−300Vの範囲に設定調整され、上記パルス電源7より炭素原料基板5に出力される調整電力を79.6KW/m〜3,184KW/mの範囲に、調整電力におけるパルス電圧の印加時間を1nsec〜60μsecの範囲に設定調整され、これにより被加工材4の表面に形成される炭素膜の特性(密度、ビッカース換算硬度、換算熱伝導率、電気抵抗率、水素含有量)を調整することが可能とされる。すなわち、こうした装置により被加工材4の表面に形成される炭素膜は、密度2.4g/cm〜2.7g/cm、ビッカース換算硬度HV2,000〜HV4,000、換算熱伝導率1.0〜1.5W(m・K)、電気抵抗率0.01Ω・cm〜10Ω・cm、水素含有量1%以下に設定可能とされる。
次に、上記炭素膜の形成装置により、被加工材4の表面に炭素膜を形成した実施例をそれぞれ説明する。各実施例1〜6は、上記炭素膜の形成装置により、被加工材4の表面に形成される炭素膜の形成条件を、基板2に印加する電圧値、パルス電源7から電極基板6、炭素原料基板5へと出力される調整電力の値(ターゲットとしての炭素原料基板5に印加するパルス電圧とパルスピーク)、さらに真空チャンバ1内に導入される媒体ガス(アルゴンガス)の圧力、をそれぞれ変更して行い、各条件で形成された炭素膜の特性(ビッカース換算硬度、膜厚、電気抵抗率、換算熱伝導率、密度、水素含有量)を測定することにより行った。これら実施例1ないし6における各条件と、形成された膜の特性については、下記表1に示す。なお、表1において、比較例1は、イオン化蒸着法で成膜し、従来の一般的なDLC膜の形成条件で製造されるDLC膜とその特性内容を示すものである。また、表1の電圧は負の電圧である。
4インチのカーボンターゲット(炭素原料基板5)に出力するパルス電源7の調整電力において、ピークで1.2kV,安定部分で0.61kVのパルス電圧を27μs印加し、パルスピーク電流を19.2Aの条件で出力した。また基板電圧印加手段3より基板2に印加する電圧は、直流電圧100Vとした。その時の合成温度(チャンバ内温度)は65℃であり、Arガス圧力は4.3×10 −1 Paとした。この条件で成膜された炭素膜(真性カーボン膜)の特性は、膜厚が0.35μm、膜密度が2.58 g/cm、抵抗率が1.8×10 −1 Ω・cm、換算熱伝導率が1.4 W/(m・K)、硬さがビッカース換算値HV 3140、水素含有量が0.9atomic%であった。
4インチのカーボンターゲット(炭素原料基板5)に出力するパルス電源7の調整電力において、ピークで1.2kV,安定部分で0.62kVのパルス電圧を27μs印加し、パルスピーク電流が19.6Aで出力した。また基板電圧印加手段3より基板2に印加する電圧は、直流電圧150Vとした。その時の合成温度(チャンバ内温度)は71℃であり、Arガス圧力は6.2×10 −1 Paとした。この条件で成膜された炭素膜(真性カーボン膜)の特性は、膜厚が0.35μm、膜密度が2.58 g/cm3、電気抵抗率が3.1×10 −1 Ω・cm、硬さがビッカース換算値HV 3266、水素含有量が0.9atomic%であった。
4インチのカーボンターゲット(炭素原料基板5)に出力するパルス電源7の調整電力において、ピークで1.2kV,安定部分で0.63kVのパルス電圧を27μs印加し、パルスピーク電流が19.2Aで出力した。また基板電圧印加手段3より基板2に印加する電圧は、直流電圧220Vとした。その時の合成温度(チャンバ内温度)は69℃であり、Arガス圧力は5.0×10 −1 Paとした。この条件で成膜された炭素膜(真性カーボン膜)の特性は、膜厚が0.34μm、膜密度が2.51 g/cm、電気抵抗率が3.9×10 −1 Ω・cm、硬さがビッカース換算値HV 2863、水素含有量が0.6atomic%であった。
4インチのカーボンターゲット(炭素原料基板5)に出力するパルス電源7の調整電力において、ピークで1.2kV,安定部分で0.63kVのパルス電圧を27μs印加し、パルスピーク電流が19.2Aで出力した。また基板電圧印加手段3より基板2に印加する電圧は、直流電圧250Vとした。その時の合成温度(チャンバ内温度)は71℃であり、Arガス圧力は4.8×10 −1 Paとした。この条件で成膜された炭素膜(真性カーボン膜)の特性は、膜厚が0.35μm、膜密度が2.53 g/cm、電気抵抗率2.1×10 −1 Ω・cm、硬さがビッカース換算値HV2896、水素含有量が0.5atomic%であった。
4インチのカーボンターゲット(炭素原料基板5)に出力するパルス電源7の調整電力において、ピークで1.2kV,安定部分で0.64kVのパルス電圧を27μs印加し、パルスピーク電流が20.8Aで出力した。また基板電圧印加手段3より基板2に印加する電圧は、直流電圧150Vとした。その時の合成温度(チャンバ内温度)は77℃であり、Arガス圧力は3.5×10 −1 Paとした。この条件で成膜された炭素膜(真性カーボン膜)の特性は、膜厚が0.42μm、電気抵抗率6.5×10 Ω・cm、硬さがビッカース換算値HV 2797であった。
5×8インチのカーボンターゲット(炭素原料基板5)に出力するパルス電源7の調整電力において、ピークで1.2kV,安定部分で0.64kVのパルス電圧を27μs印加し、パルスピーク電流が21.2Aで出力した。また基板電圧印加手段3より基板2に印加する電圧は、上記パルス電源7からのパルス電圧出力に対し、図3に示す印加タイミングの調整手段の作動により3μsのディレイ(遅延)し、20μsの間隔の150Vのパルス電圧を印加することとした。その時の合成温度(チャンバ内温度)は80℃であり、Arガス圧力は3.5×10−1Paとした。この条件で成膜された炭素膜(真性カーボン膜)の特性は、膜厚が0.37μm、電気抵抗率6.5×10 Ω・cm、硬さがビッカース換算値HV 2844であった。
4インチのカーボンターゲット(炭素原料基板5)に出力するパルス電源7の調整電力において、ピークで1.2kV、安定部分で0.61kVのパルス電圧を25μs印加し、パルスピーク電流が16.8Aで出力した。また基板電圧印加手段3により基板2に印加する電圧は直流電源150Vとした。さらに真空チャンバ内に導入される放電加工用の媒体ガスとしてクリプトンを使用し、Krガス圧力は8.5×10-1Paとした。この条件で成膜された炭素膜(真性カーボン膜)の特性は膜厚が150nm、ビッカース換算硬さHv2000であった。
4インチのカーボンターゲット(炭素原料基板5)に出力するパルス電源7の調整電力において、ピークで1.2kV、安定部分で0.61kVのパルス電圧を25μs印加し、パルスピーク電流が16.8Aで出力した。また基板電圧印加手段3により基板2に印加する電圧は直流電源150Vとした。さらに真空チャンバ内に導入される放電加工用の媒体ガスとして窒素とアルゴンの混合ガスを使用し、混合ガス圧力は8.5×10 −1 Paとした。この条件で成膜された炭素膜(真性カーボン膜)の特性は膜厚が250nm、純水に対する接触角40度であった。
4インチのカーボンターゲット(炭素原料基板5)に出力するパルス電源7の調整電力において、ピークで1.2kV、安定部分で0.61kVのパルス電圧を25μs印加し、パルスピーク電流が16.8Aで出力した。また基板電圧印加手段3により基板2に印加する電圧は直流電源150Vとした。さらに真空チャンバ内に導入される放電加工用の媒体ガスとして酸素とアルゴンの混合ガスを使用し、混合ガス圧力は8.5×10 −1 Paとした。この条件で成膜された炭素膜(真性カーボン膜)の特性は膜厚が40nm、純水に対する接触角10度であった。
炭素含有量を90%、シリコン含有量を10%とした5×8インチのカーボンターゲット(炭素原料基板5)に出力するパルス電源7の調整電力において、ピークで1.2kV、安定部分で0.61kVのパルス電圧を25μs印加し、パルスピーク電流が30Aで出力した。また基板電圧印加手段3により基板2に印加する電圧は直流電源150Vとした。このときアルゴンガスの圧力は1.8×10-1Paとした。この条件で成膜された炭素膜(真性カーボン膜)の特性は膜厚が100nm、電気抵抗率8.8×100[Ω・cm]であった。
炭素含有量を70%、シリコン含有量を30%とした5×8インチのカーボンターゲット(炭素原料基板5)に出力するパルス電源7の調整電力において、ピークで1.2kV、安定部分で0.61kVのパルス電圧を25μs印加し、パルスピーク電流が30Aで出力した。また基板電圧印加手段3により基板2に印加する電圧は直流電源150Vとした。このときアルゴンガスの圧力は1.9×10 −1 Paとした。この条件で成膜された炭素膜(真性カーボン膜)の特性は膜厚が100nm、電気抵抗率1.5×10 [Ω・cm]であった。
炭素含有量を90%、タングステン含有量を10%とした5×8インチのカーボンターゲット(炭素原料基板5)に出力するパルス電源7の調整電力において、ピークで1.2kV、安定部分で0.61kVのパルス電圧を25μs印加し、パルスピーク電流が30Aで出力した。また基板電圧印加手段3により基板2に印加する電圧は直流電源150Vとした。このときアルゴンガスの圧力は1.9×10-1Paとした。この条件で成膜された炭素膜(真性カーボン膜)の特性は膜厚が100nm、電気抵抗率2.1×10-2[Ω・cm]であった。
炭素含有量を90%、クロム含有量を10%とした5×8インチのカーボンターゲット(炭素原料基板5)に出力するパルス電源7の調整電力において、ピークで1.2kV、安定部分で0.61kVのパルス電圧を25μs印加し、パルスピーク電流が30Aで出力した。また基板電圧印加手段3により基板2に印加する電圧は直流電源150Vとした。このときアルゴンガスの圧力は1.45×10-1Paとした。この条件で成膜された炭素膜(真性カーボン膜)の特性は膜厚が100nm、電気抵抗率6.9×10-2[Ω・cm]であった。
炭素含有量を90%、ボロン含有量を10%とした4インチのカーボンターゲット(炭素原料基板5)に出力するパルス電源7の調整電力において、ピークで1.2kV、安定部分で0.61kVのパルス電圧を25μs印加し、パルスピーク電流が13Aで出力した。また基板電圧印加手段3により基板2に印加する電圧は直流電源100Vとした。このときアルゴンガスの圧力は9.15×10-1Paとした。この条件で成膜された炭素膜(真性カーボン膜)の特性は膜厚が70nm、電気抵抗率1.14×10-1[Ω・cm]であった。
5×8インチのカーボンターゲット(炭素原料基板5)に出力するパルス電源7の調整電力において、ピークで1.2kV,安定部分で0.62kVのパルス電圧を27μs印加し、パルスピーク電流が21.2Aで出力した。また基板電圧印加手段3より基板2に印加する電圧は、0Vとした。その時の合成温度(チャンバ内温度)は80℃であり、Arガス圧力は9.0×10-1Paとした。この条件で成膜された炭素膜(真性カーボン膜)の特性は、膜厚が0.34μm、電気抵抗率5.3×10-1Ω・cm、硬さがビッカース換算値HV 690であった。
下記比較例1は、イオン化蒸着法で成膜したDLCを比較例として示す。合成温度は250℃であった。成膜されたDLC膜の特性は、膜厚が0.45μm、膜密度が2.16g/cm、電気抵抗率が5.0×10 Ω・cm、換算熱伝導率が0.84W/(m・K)、硬さがビッカース換算値HV2460、水素含有量が21.4atomic%であった。
上記各実施例のうち、実施例1ないし4の各炭素膜の形成方法において、炭素膜形成に際しての炭素原料基板5に出力する調整電力のパルス電源の出力波形の時間変化(パルス電圧とパルス電流の時間推移)については、図5のグラフに示すとおりである。また上記各実施例のうち、実施例6の炭素膜の形成方法において、炭素原料基板5に出力される調整電力のパルス電圧の出力波形の時間変化については、図6のグラフに示すとおりである。
なお、上記各実施例に基づき形成された炭素膜の特性測定において、先ず抵抗率の測定は、四探針法又はファン・デル・パウ法を用いた。測定条件は探子間印加電圧10Vとした。
硬さ測定に関しては、薄膜の硬さ試験においては、従来法であるマイクロビッカースやヌープ試験を適用した場合、膜厚からある臨界値を越えると基材の影響が大きく、薄膜自身の硬さがわからないため、この影響を抑えるために、一般的に押し込み深さを膜厚の10%以下(ただし、基材材質と膜特性による)にする必要があると言われている。そのためナノインデンテーション(Nanoindentation)法が開発され、薄膜の硬度測定が可能となった。そして2002年には、ISO14577としてナノインデンテーション法のドラフトが作成され世界的に認知が広まっている。ISO14577に記載されている算出方法は、インデンテーションハードネス(Indentation
Hardness)(HIT)があり、投影接触面積Apと最大荷重Fmaxから下記式(1)のように示される。
改変型ベルコビッチ圧子を用いたビッカース換算値の計算方法を(2)式に示す。なお、分析条件については、押し込み荷重 1mN、荷重印加速度 2mN/minとした。
熱伝導率測定(熱拡散率測定)については、下記のように換算熱伝導率の測定することにより行い、その原理は、パルス光加熱サーモリフレクタンス法の表面加熱/表面測温(FF)により、薄膜断面方向の熱浸透率を計測することにより行う。得られた温度履歴曲線を下記理論式(3)にてフィッティングを行い、求められた時定数および温度振幅係数から、対象薄膜の熱浸透率を算出する。
(3)式において時定数τmは、熱が膜を横切る特性時間(熱拡散時間)である。また、温度振幅係数γは反射膜と対象薄膜の熱浸透率比によって定まり、−1と1の間の数値をとる。対象薄膜の熱浸透率が非常に小さく、反射膜が断熱されていると見なせる場合はγ=1となる。反射膜と対象薄膜の熱浸透率が同じ場合(反射膜と対象薄膜が同一で半無限とみなせる場合を含む)はγ=0となる。対象薄膜の熱浸透率が非常に大きく、反射膜と対象薄膜との界面が等温面であると見なせる場合はγ=−1となる。
ここで、下記(4)式の関係から反射膜の熱拡散率が求まる。
また、仮想熱源の温度振幅係数γは、反射膜の熱浸透率をbm、対象薄膜の熱浸透率bfをとすると、下記の(5)式で表わされる。


単位体積あたりの比熱容量(体積熱容量:比熱と密度の積)をCとすると、対象薄膜の熱伝導率λは、下記の(6)式で求められる。
水素含有率の測定は、形成される炭素膜の界面状況と水素含有量の測定を行うものであり、その原理はHeイオンビームを試料としての膜に照射し、試料内に含まれている水素を試料表面からイオンビームに対して前方に弾き飛ばすことにより、水素含有量の定量分析を行うものである。すなわち、弾き飛ばされた反跳イオンを検出する方向には入射イオンも散乱されている。この散乱イオンは反跳イオンと比較して何桁も多く、また通常の半導体検出器では反跳イオンと区別することができない。そのため検出器の前に吸収材を設置して、入射イオンよりも軽い反跳イオンのみを通過させる。また入射イオンの照射量を確認するため、HFS測定と同時にRBS測定も行われる。測定は下記測定条件により実施した。
測定条件
測定装置 :NEC 社製3S-R10、CEA 社製RBS-400
測定手法 :RBS (Rutherford Backscattering
Spectrometry)
HFS (Hydrogen
Forwardscattering Spectrometry)
入射イオン :2.275
MeV 4He++ (RBS,
HFS)
ビーム径 :1〜2 mmφ
RBS検出角度
:Normal Angle 160°
HFS検出角度
:Grazing Angle 30°
この測定結果から明らかなように、通常DLCの水素含有量は、21atomic%であるのに対し、本発明による成膜法で形成された炭素膜では、実施例1〜6のすべてにおいて水素含有量が1
atomic %未満となり,目標の水素を含有しない高硬度の炭素膜(真性カーボン膜)が成膜可能となった。なお、HFS(RBS)により各層の状況と水素含有量の分析を行ったところ、最表層の200Å程度にある水素は表面吸着した元素であり膜中の水素含有量から除外した。
上記各実施例に基づき、成膜された炭素膜につき、出願人はX線反射率を測定した。このうち、図7は実施例1により形成された炭素膜のX線反射率の測定結果を示すグラフ、図8は実施例2により形成された炭素膜のX線反射率の測定結果を示すグラフ、図9は実施例3により形成された炭素膜のX線反射率の測定結果を示すグラフ、図10は実施例4により形成された炭素膜のX線反射率の測定結果を示すグラフ、図11は比較例としての通常のDLC膜のX線反射率を示すグラフである。
X線反射率(XRR)の測定は、形成される炭素膜の膜密度を計測するために行われるものであり、その原理は平坦な物質(薄膜)にX線をごく浅い角度で入射させると、薄膜の表面及び薄膜/基板界面で反射したX線が互いに干渉し、その物質の膜厚、密度、平坦性(ラフネス):に応じて、特有の強度分布(振動パターン等)を観測することができる(反射率測定)。逆に得られた強度分布を解析することによって、薄膜の膜厚、密度、平坦性(ラフネス)を求めること基づくものである。測定は下記測定条件により実施した。

測定方法 :高分解能X線反射率測定(XRR)
X線発生部 :対陰極
Cu
出力 50 kV
300 mA
入射側分光条件
Ge(111)非対称 ビーム圧縮結晶
図7ないし図10に示す各実施例により形成された炭素膜のX線反射率の測定結果に対し、図11に示す通常のDLC膜のX線反射率と比較した結果から明らかなように、膜密度は従来法に比して同等に成膜されることが確認された。
上記各実施例に基づき、成膜された炭素膜につき、出願人は炭素膜の深さ方向に対する水素含有量をそれぞれ測定した。このうち、図12は実施例1により形成された炭素膜の深さ方向に対する水素含有量を示すグラフである。
図13は実施例2により形成された炭素膜の深さ方向に対する水素含有量を示すグラフである。図14は実施例3により形成された炭素膜の深さ方向に対する水素含有量を示すグラフである。図15は実施例4により形成された炭素膜の深さ方向に対する水素含有量を示すグラフである。加えて図16は比較例としての通常のDLC膜の深さ方向に対する水素含有量を示すグラフである。これらの結果から明らかなように本発明による成膜法で形成された炭素膜では、実施例1〜4のすべてにおいて、表面に対する深さ方向での水素含有量が存在せず、または存在しても極めて少量の水素しか検出されない目標の水素を含有しない高硬度の炭素膜(真性カーボン膜)が成膜可能された事が確認できた。
上記各実施例に基づき、成膜された炭素膜のうち、図17は実施例1の炭素膜の形成方法により形成された炭素膜のSEM画像、図18は実施例2の炭素膜の形成方法により形成された炭素膜のSEM画像であり、図19は比較例としての通常のDLC膜のSEM画像である。SEM画像の撮影は下記機器により、下記条件で行われ、この画像から通常のDLC膜に比し、高質量で炭素膜が成膜されていることが確認される。

日立ハイテクノロジーズ社製 S-5500 電界放出形走査電子顕微鏡(FE-SEM)
加速電圧: 2.0 kV
撮影方法: 二次電子像
上記各実施例に基づき、成膜された炭素膜のうち、図20は実施例1の炭素膜の形成方法により形成された炭素膜のTEM画像と電子線回折画像を示す図、図21は実施例3の炭素膜の形成方法により形成された炭素膜のTEM画像と電子線回折画像を示す図である。これら画像の撮影は下記機器により、下記条件で行われ、この画像から成膜される炭素膜は表層から深層に至るまで高質量で分布されていることが確認される。
加工装置:日立製作所製 FB2000A
最終仕上げ加速電圧:30
kV
観察装置:日立製作所製 HF-2000透過電子顕微鏡
加速電圧:200 kV
観察倍率:20,000倍、100,000倍
総合倍率:60,000倍、300,000倍
電子線回折測定領域:約1nm径
さらに、上記各実施例に基づき、成膜された炭素膜のうち、図22は実施例10に示す炭素膜の形成方法により、形成された炭素膜のX線反射率を示すグラフ、図23は実施例11に示す炭素膜の形成方法により、形成された炭素膜のX線反射率を示すグラフである。また図24は実施例10に示す炭素膜の形成方法により、形成された炭素膜の深さ方向の元素含有量を示すグラフ、図25は実施例11に示す炭素膜の形成方法により、形成された炭素膜の深さ方向の元素含有量を示すグラフである。これらグラフに示す結果からも明らかなように、これらの実施例においても図7ないし図10に示す各実施例により形成された炭素膜と同様に、高密度に成膜することができることが確認された。
また図26は実施例8に示す炭素膜の形成方法により、形成された炭素膜の純水に対する接触角を示す図、図27は実施例8に示す炭素膜の形成方法により、形成された炭素膜の純水に対する接触角を示す図である。こられの結果からも明らかなように、実施例8に示す方法で製膜された炭素膜は、良好な親水性を有することが確認される。
また図28は実施例2、実施例10および実施例11に示す炭素膜の形成方法により、形成された炭素膜の耐熱試験後の表面粗さを示す図である。これらの図からも明らかなように既存の方法により成膜された水素・Siを含む炭素膜やスパッタリングにより成膜された炭素膜と比べて実施例2、実施例10および実施例11に示す方法で製膜された炭素膜は、加熱試験の前後においてもその表面の粗さに変化を生じることがなく、耐熱性に優れた膜を形成できることが確認される。
このように上記各実施例に基づき、成膜された炭素膜の特性は、高質量、高硬度、高密度なものであり、従来のDLC膜に比して高品位とされる。
本願発明によれば、従来に比較して低温度の環境下で被加工材の表面に、耐摩耗性および耐久性を有する炭素膜を高密度に形成することが可能となり、金型、機械部品などはもちろんのこと、高温度の環境下では溶融してしまうようなプラスチック材等で形成される被加工材に対してもその表面に炭素膜を形成することが可能となるため、例えば軽量である程度の表面強度を要求される自動車部品、航空宇宙材料への加工応用が期待できる。
1:真空チャンバ
2:基板
3:基板電圧印加手段
4:被加工材
5:炭素原料基板
6:電極基板
7:パルス電源
8:ガス導入ポート
9:コントローラ

Claims (10)

  1. 所定の真空度に減圧可能とされる真空チャンバ内に、
    被加工材を保持し、基板電圧印加手段により所定の電圧に印加される基板と、
    上記基板に対向配置される炭素原料基板上で、上記真空チャンバ内に導入される放電発生用の媒体ガスをパルス電源より上記炭素原料基板に出力される調整電力に基づきプラズマ化し、上記炭素原料基板から上記基板に保持される上記被加工材に向けて炭素原料とともに放電するプラズマ発生源と、
    を備え、
    上記被加工材の表面に炭素膜を加工形成する炭素膜の形成方法であって、
    上記基板電圧印加手段により上記基板に印加される電圧を0〜−300Vの範囲に設定し、
    上記パルス電源より上記炭素原料基板に出力される調整電力を、79.6KW/m〜3,184KW/mの範囲に、調整電力におけるパルス電圧の印加時間を1nsec〜60μsecの範囲に設定し、
    上記基板電圧印加手段により上記基板に印加される電圧を0〜−300Vの範囲に設定し、
    上記パルス電源より上記炭素原料基板に出力される調整電力を79.6KW/m〜3,184KW/mの範囲に、調整電力におけるパルス電圧の印加時間を1nsec〜60μsecの範囲に設定することにより、上記被加工材の表面に形成される炭素膜を、密度2.4g/cm〜2.7g/cm、ビッカース換算硬度HV2,000〜HV4,000、換算熱伝導率1.0〜1.5W(m・K)、電気抵抗率0.01Ω・cm〜10Ω・cm、水素含有量1%以下に設定したことを特徴とする炭素膜の形成方法。
  2. 上記真空チャンバ内は、室温〜80°Cの範囲に設定調整した請求項1に記載の炭素膜の形成方法。
  3. 上記基板電圧印加手段は、上記基板に対してパルス電圧を出力するパルス電源とされ、該出力するパルス電圧は、上記プラズマ発生源の上記パルス電源より上記炭素原料基板に出力される調整電力におけるパルス電圧と同期、または1nsec〜60μsecの範囲で遅延させることとした請求項1又は請求項2に記載の炭素膜の形成方法。
  4. 上記真空チャンバ内に導入される放電加工用の媒体ガスは、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノンのいずれか、あるいはこれらを任意に混合したものである請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の炭素膜の形成方法。
  5. 上記炭素原料基板には、炭素含有料が99%以上の純粋炭素板の他、炭素含有量を70〜90%の範囲に設定し、残余の含有元素をシリコン、ボロン、リン、リチウム、マグネシウム、白金、タングステン、タングステンカーバイトのいずれか、またはこれらを混合させたものである請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の炭素膜の形成方法。
  6. 上記炭素原料基板には、炭素含有量が99%以上の純粋炭素板の他、炭素含有量を70〜90%の範囲に設定し、残余の含有元素をクロムとした請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の炭素膜の形成方法。
  7. 上記真空チャンバ内に導入される放電加工用の媒体ガスに加えて、窒素、酸素、二酸化炭素、炭化フッ素のいずれかを含むドーピングガスを上記真空チャンバ内に導入することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の炭素膜の形成方法。
  8. 上記基板に保持される被加工材は、合成樹脂、紙、繊維、不織布のいずれかである請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の炭素膜の形成方法。
  9. 所定の真空度に減圧可能とされる真空チャンバ内に、
    被加工材を保持し、基板電圧印加手段により所定の電圧に印加される基板と、
    上記基板に対向配置される炭素原料基板上で、上記真空チャンバ内に導入される放電発生用の媒体ガスをパルス電源より上記炭素原料基板に出力される調整電力に基づきプラズマ化し、上記炭素原料基板から上記基板に保持される上記被加工材に向けて炭素原料とともに放電するプラズマ発生源と、
    を備え、
    上記被加工材の表面に炭素膜を加工形成する炭素膜の形成装置であって、
    上記基板電圧印加手段により上記基板に印加される電圧を0〜−300Vの範囲に
    設定し、
    上記パルス電源より上記炭素基板に出力される調整電力を79.6KW/m〜3,184KW/mの範囲に、調整電力におけるパルス電圧の印加時間を1nsec〜60μsecの範囲に設定調整するコントローラを備え、
    上記基板電圧印加手段は、上記基板に対してパルス電圧を出力するパルス電源とされ、該出力するパルス電圧は、プラズマ発生源のパルス電源より炭素原料基板に出力される調整電力におけるパルス電圧と同期、または1nsec〜60μsecの範囲で遅延させる印加タイミングの調整手段を備えることとしたことを特徴とする炭素膜の形成装置。
  10. 被加工材の表面上の炭素膜であって、密度2.4g/cm 〜2.7g/cm であり、ビッカース換算硬度HV2,000〜HV4,000であり、換算熱伝導率1.0〜1.5W(m・K)であり、電気抵抗率0.01Ω・cm〜10Ω・cmであり、水素含有量1%以下であることを特徴とする炭素膜。
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