以下、本発明の一実施形態に係る画像形成装置について図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置の構造を示す正面断面図である。
本発明の一実施形態に係る画像形成装置1は、例えば、コピー機能、プリンター機能、スキャナー機能、およびファクシミリ機能等の複数の機能を兼ね備えた複合機である。画像形成装置1は、装置本体11に、画像形成部12、定着部13、給紙部14、原稿給送部6、及び画像読取部5等を備えて構成されている。
画像読取部5は、原稿を載置するためのコンタクトガラス161と、このコンタクトガラス161に載置された原稿を押さえる開閉自在の原稿押さえカバー162と、コンタクトガラス161に載置された原稿の画像を読み取る読取機構163とを備えている。読取機構163は、原稿に向けて光を照射するLED(Light Emitting Diode)を有する光源としての光照射部と、CCD(Charge Coupled Device)等のイメージセンサーと、複数のミラー及び集光レンズ等を有して原稿読取スリット53の下方位置とコンタクトガラス161の下方位置である原稿読取位置との間で移動可能な光学系とを備え、これらを用いて原稿の画像を光学的に読み取り、画像データを生成する。
原稿給送部6は、給紙ローラー及び搬送ローラーの駆動により、原稿載置部61に載置された原稿を1枚ずつ繰り出して、原稿読取スリット53に対向する位置へ搬送し、原稿読取スリット53を介して画像読取部5の読取機構163による読取を可能とした後、原稿排出部66へと排出する。なお、読取機構163は、原稿読取スリット53の下方となる給送原稿読取位置において上記搬送されてくる原稿を読み取る。
給紙部14は、装置本体11に対して挿脱可能の給紙カセット142,143,144を有している。
画像形成部12は、給紙部14から給紙された記録紙にトナー像を形成する画像形成動作を行う。画像形成部12は、中間転写ベルト125の走行方向において上流側から下流側へ向けて順次配設された、マゼンタ色のトナーを用いるマゼンタ用の画像形成ユニット12M、シアン色のトナーを用いるシアン用の画像形成ユニット12C、イエロー色のトナーを用いるイエロー用の画像形成ユニット12Yおよびブラック色のトナーを用いるブラック用の画像形成ユニット12Bk(以下、各画像形成ユニットを区別することなく述べる場合には、それぞれを「画像形成ユニット120」という)と、駆動ローラー125a及び従動ローラー125b等の複数のローラー間に画像形成における副走査方向へ無端走行可能に張架された中間転写ベルト125と、中間転写ベルト125が従動ローラー125bに張架される部分で中間転写ベルト125の外周面に当接する二次転写ローラー210とを備えている。
各画像形成ユニット120は、現像ユニット128と、当該現像ユニット128に中間転写ベルト125を挟んで対向する位置に配置された一次転写ローラー126とを備える。現像ユニット128は、感光体ドラム121と、感光体ドラム121へトナーを供給する現像装置122と、トナーを収容するトナーカートリッジ(不図示)と、帯電装置123と、露光装置124と、ドラムクリーニング装置127とを備えている。
中間転写ベルト125は、各感光体ドラム121の上方位置に配置されている。中間転写ベルト125は、その外周面にトナー像が転写される像担持面が設定され、感光体ドラム121の周面に当接した状態で駆動ローラー125aによって駆動される。中間転写ベルト125は、各感光体ドラム121と同期しながら、駆動ローラー125aと従動ローラー125bとの間を無端走行する。
中間転写ベルト125を挟んで各感光体ドラム121に対向する位置には、一次転写ローラー126が設けられている。一次転写ローラー126は、各感光体ドラム121の外周周面に形成された上記トナー像を中間転写ベルト125の表面に転写させる。
画像形成装置1の制御部100(図2)は、各色のユニットについて一次転写ローラー126及び画像形成ユニット120を駆動制御して、中間転写ベルト125の表面に、マゼンタ用の画像形成ユニット12Mにより形成されたマゼンタのトナー像の転写と、次いで中間転写ベルト125の同一位置にシアン用の画像形成ユニット12Cにより形成されたシアンのトナー像の転写と、次いで中間転写ベルト125の同一位置にイエロー用の画像形成ユニット12Yにより形成されたイエローのトナー像の転写と、最後のブラック用の画像形成ユニット12Bkにより形成されたブラックのトナー像の転写とを、各色のトナー像が重なり合うように行わせ、これによりカラーのトナー像を中間転写ベルト125の表面に形成させる(中間転写(一次転写))。
二次転写ローラー210は、図略の転写バイアス印加機構により転写バイアスが印加されている。二次転写ローラー210は、中間転写ベルト125の表面に形成されたカラーの上記トナー像を、中間転写ベルト125を挟んで従動ローラー125bとの間のニップ部Nにおいて、給紙部14から用紙搬送路190を搬送されてきた記録紙に転写させる。
なお、画像形成機構40は、上述した画像形成部12、定着部13、及び、搬送ローラー対192等により構成される用紙搬送機構を備える。画像形成機構40は、画像読取部5で読み取られた画像データ等の画像形成を行う。
画像形成部12に対して図1での左方位置には、上下方向に延びる用紙搬送路190が形成されている。用紙搬送路190には、適所に搬送ローラー対192が設けられている。搬送ローラー対192は、給紙部14から繰り出された記録紙を、ニップ部N及び定着部13に向けて搬送する。
給紙部14は、装置本体11の図1における右側壁に開閉自在に設けられた手差しトレイ141と、給紙カセット142,143,144とを備えている。給紙カセット142,143,144の上方に設けられたピックアップローラー145は、給紙カセット142,143,144に収容された用紙束の最上位の記録紙を用紙搬送路190へ向けて繰り出す。
定着部13は、画像形成部12で転写された記録紙上のトナー像に対し、記録紙が加熱ローラー132と加圧ローラー134との間の定着ニップ部を通過する間に、加熱ローラー132から熱を与えて定着処理を施す。定着処理の完了したカラー画像形成済みの記録
紙は、定着部13の上部から延設された排紙搬送路194を通って、排出トレイ151へ向けて排出される。
用紙排出部15は、排出トレイ151を備える。排出トレイ151には、画像形成部12でトナー像が形成された記録紙が、定着部13で定着処理が施された後に排出される。
次に、画像形成装置1の構成を説明する。図2は画像形成装置1の主要内部構成を概略的に示す機能ブロック図である。
画像形成装置1は、制御ユニット10を備える。制御ユニット10は、CPU(Central Processing Unit)、RAM、ROM及び専用のハードウェア回路等から構成され、画像形成装置1の全体的な動作制御を司る。
画像読取部5は、制御ユニット10による制御の下、光照射部及びCCDセンサー等を有する上記の読取機構163を備える。画像読取部5は、光照射部により原稿を照射し、その反射光をCCDセンサーで受光することにより、原稿から画像を読み取る。
画像処理部31は、画像読取部5で読み取られた画像の画像データを必要に応じて画像処理する。例えば、画像処理部31は、画像読取部5により読み取られた画像が画像形成部12により画像形成された後の品質を向上させるために、シェーディング補正等の予め定められた画像処理を行う。
画像メモリー32は、画像読取部5による読取で得られた原稿画像のデータを一時的に記憶したり、画像形成部12のプリント対象となるデータを一時的に保存する領域である。
画像形成機構(印刷部)40は、上述した画像形成部12、定着部13、及び、搬送ローラー対192等により構成される用紙搬送機構411を備える。画像形成機構40は、画像読取部5で読み取られた画像データ等の画像形成(印刷)を行う。
操作部47は、画像形成装置1が実行可能な各種動作及び処理について操作者からの指示を受け付けるタッチパネル部及び操作キー部を備える。タッチパネル部は、タッチパネル機能が備えられたLCD(Liquid Crystal Display)等の表示部473を備えてなる。
ファクシミリ通信部71は、図略の符号化/復号化部、変復調部及びNCU(Network Control Unit)を備え、公衆電話回線網を用いてのファクシミリの送信を行うものである。
ネットワークインターフェイス部91は、LANボード等の通信モジュールから構成され、当該ネットワークインターフェイス部91に接続されたLAN等を介して、ローカルエリア内のコンピューター200等と種々のデータの送受信を行う。ネットワークインターフェイス部91は、インターネット用の通信モジュールを有し、インターネット上のコンピューター等とデータ送受信を行うものであってもよい。なお、当該コンピューター200の構成は後述する。
HDD92は、画像読取部5によって読み取られた原稿画像等を記憶する大容量の記憶装置である。
HDD92には、本発明の一実施形態に係るパスワード認証プログラムが記憶(インストール)されている。制御ユニット10は、パスワード認証プログラムに従って動作することで、後述する印刷許可期間算出部103と、認証部110と、チャレンジ・レスポンス部170として機能する。
但し、印刷許可期間算出部103、認証部110、及びチャレンジ・レスポンス部170は、上記のパスワード生成プログラムに基づく動作によらず、それぞれハード回路により構成することも可能である。以下、特に触れない限り、各実施形態について同様である。
但し、チャレンジ・レスポンス部170は、下記に示す実施形態において必要となる限りにおいて、本発明の実施形態に係る画像形成装置1又はパスワード認証プログラムの構成要素となる。
なお、本発明の一実施形態に係るパスワード認証装置は、印刷許可期間算出部103、認証部110、及びチャレンジ・レスポンス部170を備えてなる。
制御部100は、画像読取部5、原稿給送部6、画像処理部31、画像メモリー32、画像形成機構40、操作部47、ファクシミリ通信部71、ネットワークインターフェイス部91、HDD(ハードディスクドライブ)92等と接続されている。制御ユニット10は、上記各機構を動作制御して、例えば、スキャナー機能、プリンター機能、コピー機能及びプリンター機能の各機能を実行する。
印刷許可期間算出部103は、操作者から印刷要求を受けた印刷対象データについての画像形成機構40による印刷を許可する期間を、当該印刷対象データの重要度情報が示す重要度の度合いに応じて算出する。重要度情報とは、当該印刷対象データについての重要性を示す値からなり、例えば、秘匿性を保持させる期間の程度を数値により示したものが用いられる。重要度情報は、印刷対象データの付随情報とされ、当該印刷対象データの作成者等である操作者が設定して記憶させる。重要度情報としては、機密データ、重要データ、公開データ、普通データ等のデータ種別に応じてそれぞれに適した度合いの重要度が設定される。また、印刷許可期間とは、制御部100が、コンピューター200から受信した印刷対象データについての印刷を画像形成機構40に行わせる期間である。
認証部110は、操作者についてのパスワード認証を行う。認証部110は、パスワード作成部111と、パスワード送信部112と、パスワード受付部113と、パスワード認証部114とを備えている。
パスワード作成部111は、指示受付部101に、印刷対象データ及び当該印刷対象データの重要度情報がコンピューター200から受け付けられた場合に、この印刷対象データの重要度情報が示す重要度の度合いに応じた強度でパスワードを作成する。
パスワード送信部112は、パスワード作成部111によって作成されたパスワードを、印刷対象データ及び当該印刷対象データの重要度情報を送信してきた上記コンピューター200に送信する。
パスワード受付部113は、操作者から操作部47の操作等により入力されたパスワードを受け付ける。
パスワード認証部114は、パスワード受付部113に受け付けられたパスワードが正規のパスワードであるか否かを認証する。
例えば、上記の印刷許可期間算出部103は、パスワード作成部111によるパスワード作成が行われた場合には、印刷対象データの重要度情報が示す重要度の度合いに応じた印刷許可期間の算出に代えて、当該作成されたパスワードの強度が高いほど印刷許可期間を短くする算出を行う。
チャレンジ・レスポンス部170は、ネットワーク接続されているコンピューター200等との通信により、当該コンピューター200との間で、当該コンピューター200の操作者のユーザーに対して、チャレンジ・レスポンス方式によるユーザー認証を行う。
チャレンジ・レスポンス部170は、印刷要求受付部171と、チャレンジ作成部172と、チャレンジ送信部173と、レスポンス受信部174と、照合部175とを備えている。
印刷要求受付部171は、ネットワーク接続されているコンピューター200から、画像形成装置1での印刷処理の実行を求める印刷要求を受け付ける。
チャレンジ作成部172は、印刷要求受付部171に上記印刷要求が受け付けられたとき、チャレンジを作成する。このチャレンジは、例えば、ランダムな数値列からなる。
チャレンジ送信部173は、チャレンジ作成部172によって作成された上記チャレンジを、印刷要求を送信してきたコンピューターに送信する。
レスポンス受信部174は、チャレンジ送信部173から上記コンピューターに送信したチャレンジに対するレスポンスを、当該コンピューターから受信する。このレスポンスとは、コンピューター200において、操作者が予め保有している固有のパスワードと、上記数値列からなるチャレンジとが、予め定められたアルゴリズムに従って合成されることで作成される数値列である。
照合部175は、レスポンス受信部174によって受信されたレスポンスを照合する。例えば、照合部175は、予め登録されている複数の操作者のパスワードと、上記コンピューター200におけるレスポンス作成に用いられたのと同一のアルゴリズムとを記憶しており、上記複数のパスワードにおける上記印刷要求を送信してきた操作者のパスワードと、チャレンジ送信部173から送信したチャレンジとを用いて、上記同一のアルゴリズムによりレスポンスを作成し、当該作成したレスポンスを、上記レスポンス受信部174が受信したレスポンスと比較する。照合部175は、当該照合により両方のレスポンスが一致した場合に、認証成立と判定する。
なお、制御部100は、照合部175において上記レスポンスの照合が成立した場合に、通信部102による当該コンピューター200との通信を許可する。すなわち、通信部102は、照合部175において上記レスポンスの照合が成立したことを条件として、上記印刷要求を送信してきたコンピューター200から印刷対象データ及び当該印刷対象データの重要度情報を受信する。さらに、パスワード送信部112は、このように通信部102によって印刷対象データ及び重要度情報が受信されると、パスワード作成部111が作成したパスワードを、当該印刷対象データ及びその重要度情報を送信してきた当該コンピューター200に送信する。
指示受付部101は、パスワードの入力、及び印刷動作の実行指示の入力等を操作者から受け付ける。
通信部102は、画像形成装置1に接続されているコンピューター200との間でデータの送受信に必要な処理を行う。通信部102は、上記ユーザー認証、印刷等のために必要な各種のデータ通信を、上記コンピューター200との間で行う。
上述したコンピューター200の構成を説明する。当該コンピューター200は、画像形成装置1にネットワーク接続されているコンピューターの一例であり、その台数は限定されない。コンピューター200は、少なくとも、コンピューター200の全体的な動作制御を司る制御部201と、画像形成装置1との間でデータ送受信を行う通信部202と、LCD(Liquid Crystal Display)等からなる表示部203と、画像形成装置1との間でチャレンジ・レスポンス方式によるユーザー認証に必要な処理を行うチャレンジ・レスポンス部204とを行う。
次に、画像形成装置1による印刷処理及びユーザー認証処理の第1実施形態を説明する。図3は、画像形成装置1による印刷処理及びユーザー認証処理の第1実施形態を示すフローチャートである。
画像形成装置1では、通信部102が、コンピューター200から、印刷対象データ及び当該印刷対象データの重要度情報を、印刷要求とともに受信すると(S1)、制御部100は、内蔵するメモリー又はHDD92に設定されたセキュアな記憶領域(例えば、当該受信された印刷対象データに作成者情報(ユーザーID等)が附随している場合に、当該作成者情報の示す作成者が使用権限を有する記憶領域)に当該印刷対象データ及び重要度情報を一次的に記憶させる。印刷許可期間算出部103は、当該重要度情報の示す重要度に応じて、印刷許可期間を算出する(S2)。
なお、コンピューター200においては、制御部201等により上記印刷対象データ及び重要度情報が、秘密鍵暗号方式又は公開鍵暗号方式等により暗号化されていることが望ましい。この場合、画像形成装置1では、制御部100又は印刷許可期間算出部103が、暗号化された印刷対象データ及び重要度情報を復号化する。
例えば、印刷許可期間算出部103は、重要度情報の示す重要度としての値に対する印刷許可期間を示す各値を予め記憶している。この場合、重要度情報の当該値が1(低)、2(中)、3(高)の3段階からなるものとすると、1(低)については30分、2(中)については10分、3(高)については5分などを記憶している。すなわち、印刷許可期間算出部103は、重要度の高い場合ほど、短い印刷許可期間とされる。あるいは、重要度の値が大きい場合ほど重要度が高いことを示すものとすると、当該数値に反比例する値を印刷許可期間として算出する。
また、印刷許可期間算出部103は、上記印刷対象データ及び重要度情報が通信部102により受信された時刻が、予め設定されている時間帯(例えば、企業における終業後の時間帯等の使用低頻度時間帯、18時〜翌8時までの期間等)である場合には、上記算出した印刷許可期間を予め定められた一定時間だけ短縮させるようにしてもよい。以下に示す各実施形態について同様である。
上記のように印刷許可期間が算出された後、制御部100は、当該算出された印刷許可期間の計時を開始する(S3)。このとき、印刷許可期間が経過するまでに、指示受付部101にユーザーID及びパスワードの入力が受け付けられた場合には(S4でNO,S5でYES)、認証部110が当該入力されたユーザーID及びパスワードの認証を行う(S6)。
ここで、認証部110が、内蔵するメモリー等に記憶されている正規のユーザーID及びパスワードの組合せに、上記入力されたユーザーID及びパスワードの組合せが一致するか否かを判断し、両組合せが一致した場合にユーザーID及びパスワードの認証が完了(成立)したものとし、不一致の場合には、ユーザーID及びパスワードの認証が不成立とする。
なお、印刷許可期間が経過するまでに、指示受付部101にユーザーID及びパスワードの入力が受け付けられなければ、処理は終了する(S4でYES)。また、印刷許可期間により印刷を許可する時間(終了時刻)の管理は、当該ユーザーID及びパスワードの入力時点を基準とする場合に限られず、認証部110による認証成立時点を基準としてもよい。
認証部110による当該認証が完了した場合は(S6でYES)、制御部100は、S1で受信した印刷対象データを画像形成機構40に印刷させる(S7)。一方、認証部110による上記認証が不成立である場合は(S6でNO)、制御部100は、S1で受信した印刷対象データを画像形成機構40に印刷させることなく処理を終了する。
当該第1実施形態によれば、印刷許可期間算出部103が、画像形成機構40による印刷対象データの印刷を許可する期間を、当該印刷対象データの重要度情報が示す重要度の度合いに応じて算出し、制御部100は、認証部110によるパスワード認証の完了を条件として、上記算出された印刷許可期間のみ、画像形成機構40に印刷対象データを印刷させるので、上記のように、重要度の高い印刷対象データは印刷許可期間を短期間とし、重要度の低い印刷対象データは印刷許可期間を長くする等により、重要度の高い印刷対象データの印刷物は、操作者に対する印刷物取得の利便性を低減してでも、印刷物が他者の眼に触れる可能性がある時間を制限し、重要度の低い印刷対象データの印刷物は、操作者に対する印刷物取得の利便性を重視して、印刷物の保護レベルを低減して印刷許可期間を長めに設定する等の調整が可能になる。このため、本第1実施形態によれば、印刷物及び印刷対象データの重要度に応じた適切な保護レベルで当該印刷物及び印刷対象データを保護して印刷物の秘匿性を保持すると共に、操作者の利便性を可及的に向上させることが可能になる。
次に、画像形成装置1による印刷処理及びユーザー認証処理の第2実施形態を説明する。図4は、画像形成装置1による印刷処理及びユーザー認証処理の第2実施形態を示すフローチャートである。図5は、印刷対象データの重要度と、重要度に対応するパスワード強度との関係を示す図である。図6は、パスワード強度と、パスワード強度に対応する印刷許可期間との関係を示す図である。なお、第1実施形態と同様の処理は説明を省略する。
第2実施形態では、画像形成装置1にネットワーク接続されているコンピューター200において、通信部202が、印刷対象データ及び当該印刷対象データの重要度情報を、印刷要求と供に画像形成装置1に対して送信し(S21)、画像形成装置1において、通信部102が、コンピューター200から、印刷対象データ及び当該印刷対象データの重要度情報を、印刷要求とともに受信すると(S11)、認証部110のパスワード作成部111が、当該重要度情報の示す重要度の程度に応じた強度を要するパスワードを作成する(S12)。
例えば、パスワード作成部111は、図5に示すように、重要度情報の示す重要度としての上記各値に対するパスワード強度を有する各パスワードを予め記憶している。例えば、パスワード作成部111は、上記と同様に、重要度情報の示す重要度の値が1(低)、2(中)、3(高)の3段階であるとすると、1(低)については、パスワードを構成する文字数が8文字、2(中)についてはパスワードを構成する文字数が12文字、3(高)については英数記号混合を条件として、パスワードを構成する文字数が14文字などを記憶している。すなわち、パスワード作成部111は、重要度の高い場合ほど、解読困難性が高いパスワードを記憶している。パスワード作成部111は、当該記憶しているパスワードから、重要度情報の示す重要度に対応するパスワード強度を有するパスワードを読み出し、当該読み出すことで、重要度情報の示す重要度の程度に応じた強度を要するパスワードを作成する。
また、パスワード作成部111は、上記印刷対象データ及び重要度情報が通信部102により受信された時刻が、上述した予め設定されている時間帯である場合に、上記作成したパスワードを予め定められた一定強度だけ強度を高める(パスワード構成文字数の増加等)ようにしてもよい。印刷対象データから示す各実施形態について同様である。
この後、印刷許可期間算出部103が印刷許可期間を算出するが、上記作成されたパスワードの強度が高いほど、期間を長く設定して印刷許可期間を算出する(S13)。例えば、印刷許可期間算出部103は、図6に例を示すように、上記の重要度情報の示す重要度の値が上記1(低)、2(中)、3(高)に合わせて、パスワードの強度が、それぞれレベル1(強度低。例えば、上記文字数8文字のパスワード等),レベル2(強度中。例えば、上記文字数12文字のパスワード等),レベル3(強度高。上記英数記号混合を条件とした文字数14文字のパスワード等)の3段階であるとしている場合、レベル1(低)には短時間の印刷許可期間(例えば、5分)、レベル2(中)には中程度の印刷許可期間(例えば、10分)、レベル3(高)には長時間の印刷許可期間(例えば、30分)を設定する。
この後、制御部100は、当該算出された印刷許可期間の計時を開始する(S14)。この計時開始後、パスワード送信部112は、上記S12で作成したパスワードをコンピューター200に送信する(S15)。なお、S14及びS15はいずれの処理が先に行われてもよい。
コンピューター200において、通信部202が当該パスワードを受信すると(S22)、制御部201は、当該受信されたパスワードを表示部203に表示させる(S23)。これにより、コンピューター200の操作者は、画像形成装置1において、S21で送信した印刷対象データについての印刷を実行するために入力が求められるパスワードを認識可能になる。
この後、画像形成装置1において、上記印刷許可期間が経過するまでに、指示受付部101にユーザーID及びパスワードの入力が受け付けられた場合には(S16でNO,さらにS17でYES)、パスワード認証部114が当該入力されたユーザーID及びパスワードの認証を行い(S18)、制御部100は、当該認証の成立又は不成立に応じて、S11で受信された印刷対象データの画像形成機構40に行わせるか否かの制御を行う(S18,S19)。
なお、印刷許可期間が経過するまでに、指示受付部101にユーザーID及びパスワードの入力が受け付けられなければ、処理は終了する(S16でYES)。
この第2実施形態によれば、パスワード作成部111が、印刷対象データの重要度情報が示す重要度の度合いに応じた強度でパスワードを作成した場合には、印刷許可期間算出部103は、当該重要度の度合いに応じた印刷許可期間の算出は行わずに、上記作成されたパスワードの強度が高いほど印刷許可期間を長くする算出を行うので、印刷許可期間の長短、及びパスワード強度の強弱を組み合わせた総合的な保護レベルを用いて、印刷対象データの重要度に応じた保護レベルの調整が可能になる。例えば、印刷対象データの重要度が高い場合に、印刷許可期間及びパスワード強度の両方が保護レベルを高める方向に変更されてしまい、印刷物の秘匿性を高めるために操作者の利便性が一方的に低減されるという事態を防止可能になる。
次に、画像形成装置1による印刷処理及びユーザー認証処理の第3実施形態を説明する。図7は、画像形成装置1による印刷処理及びユーザー認証処理の第3実施形態を示すフローチャートである。なお、第1又は第2実施形態と同様の処理は説明を省略する。
第3実施形態では、第2実施形態と同様にして、パスワード作成部111が上記重要度情報の示す重要度に応じた強度を要するパスワードを作成し(S32)、この後に、印刷許可期間算出部103が印刷許可期間を算出するが、ここにおいては、印刷許可期間算出部103は、予め定められた一定時間を印刷許可期間として算出する(S33)。
例えば、印刷許可期間算出部103は、重要度情報の示す重要度の値が上記の1(低)、2(中)、3(高)の3段階であるとすると、重要度の値に拘わらず、一定期間、例えば15分を印刷許可期間として算出する。制御部100は、当該一定時間とされた印刷許可期間の計時を開始する(S34)。この後の処理は、第2実施形態と同様にして行われる。
この第3実施形態によれば、パスワード作成部111によるパスワード作成が行われた場合には、印刷許可期間算出部103が、予め定められた一定期間を印刷許可期間に固定して算出するため、印刷対象データの重要度に応じた印刷物の保護レベルを、パスワード強度の変更のみで調整することが可能になる。
次に、画像形成装置1による印刷処理及びユーザー認証処理の第4実施形態を説明する。図8は、画像形成装置1による印刷処理及びユーザー認証処理の第4実施形態を示すフローチャートである。なお、第1乃至第3実施形態と同様の処理は説明を省略する。なお、図8に示す第4実施形態の処理は、上述した第1実施形態におけるS1乃至S3の後、第2実施形態におけるS11乃至S15の後、第3実施形態におけるS31乃至S35の後に、当該各実施形態における以降の処理に代えて行われる。
第4実施形態では、第1乃至第3実施形態のいずれかと同様にして印刷許可期間が算出されて、この印刷許可期間の計時が開始された後、印刷許可期間内に、指示受付部101に入力が受け付けられたユーザーID及びパスワードの認証が認証部110により不成立とされた場合(S51でNO,S52でYES,S53でNO)、制御部100は、当該認証不成立が一度目であるか否かを判断する(S55)。
ここで、制御部100が、当該認証不成立が一度目であると判断した場合は(S55でYES)、印刷許可期間算出部103が、この認証不成立判断時における印刷許可期間の残り時間を短縮する処理を行う(S56)。例えば、上記算出されている印刷許可時間が30分であり、残り時間が28分の時点で、当該認証不成立の場合、印刷許可期間算出部103は、当該残り時間を3分に短縮する等の処理を行う。
この残り時間短縮後、処理はS51に戻る。以降、認証部110は、当該短縮された印刷許可期間内でのみ、操作者により入力されたユーザーID及びパスワードの認証を行う。
一方、制御部100が、当該認証不成立が二度目であると判断した場合は(S55でNO)、制御部100は、画像形成機構40に、印刷対象データの印刷を行わせることなく、セキュアな記憶領域に一次的に記憶している当該印刷対象データを削除して(S57)、処理を終了する。
すなわち、この第4実施形態では、制御部100が、上記短縮された印刷許可期間内にパスワード認証が再度不成立となった場合には、画像形成機構40による印刷対象データの印刷を禁止するので、当該印刷対象データの印刷物についての保護レベルが更に高められる。
次に、画像形成装置1及びコンピューター200間における通信を確立する処理を説明する。図9は、画像形成装置1及びコンピューター200間における通信を確立する処理を示すフローチャートである。
操作者が、コンピューター200から画像形成装置1に対して印刷対象データを送信して画像形成装置1において印刷を行う場合、まず、操作者がコンピューター200の操作部(図略)を操作して、当該操作者のユーザーID及び印刷対象データの印刷実行指示を入力すると、制御部201が通信部202に、画像形成装置1に対して当該ユーザーID及び印刷要求(リクエスト)を送信する(S71)。
画像形成装置1では、当該ユーザーID及び印刷要求を通信部102がネットワークインターフェイス部91を介してコンピューター200から受信すると、印刷要求受付部171に上記印刷要求が受け付けられる(S61)。チャレンジ・レスポンス部170のチャレンジ作成部172は、印刷要求受付部171に上記印刷要求が受け付けられたとき、上述したランダムな数値列からなるチャレンジを作成する(S62)。なお、チャレンジ作成部172は、印刷要求の受付毎に異なるチャレンジを作成することが好ましい。
チャレンジ送信部173は、チャレンジ作成部172によって作成された上記チャレンジを、ネットワークインターフェイス部91を介して、印刷要求を送信してきたコンピューターに送信する(S63)。
コンピューター200では、画像形成装置1から送信されてくる上記チャレンジを通信部202が受信すると(S72)、制御部201は、表示部203に、パスワードの入力を求める旨のメッセージを表示させ、操作者からパスワードが入力されるのを待機する(S73)。
操作者から図略の操作部の操作により、操作者が予め保有している操作者固有のパスワードが入力され、制御部201が当該パスワードの入力を受け付けると(S73でYES)、チャレンジ・レスポンス部204が、当該受け付けられたパスワードと、上記受信したチャレンジとを用いて、予め定められたアルゴリズムに従って合成して、レスポンスとしての数値列を作成する(S74)。チャレンジ・レスポンス部204は、チャレンジ作成後、秘密鍵暗号方式又は公開鍵暗号方式等により暗号化しておくことが望ましい。チャレンジ・レスポンス部204は、例えば、当該チャレンジを秘密鍵により暗号化する。通信部202は、チャレンジ・レスポンス部204により作成された当該レスポンスを送信する(S75)。
画像形成装置1では、通信部102がネットワークインターフェイス部91を介してコンピューター200から上記レスポンスを受信すると(S64)、照合部175は、S63においてチャレンジ送信部173から送信したチャレンジと、予め記憶している複数のユーザーID及び各ユーザーIDに対応付けられたパスワードから、S61で受信されたユーザーIDに対応するパスワードを抽出し、当該抽出したパスワードと、上記コンピューター200でのレスポンス作成に用いたアルゴリズムと同一のアルゴリズムを用いて確認用のレスポンスを作成する(S65)。
照合部175は、当該作成したレスポンスと、S64でレスポンス受信部174が受信したレスポンスとを比較し、両者の一致又は不一致を照合する(S66)。なお、レスポンスが上記暗号化されている場合は、照合部175は、受信されたレスポンスを復号した上で、当該照合を行う。例えば、レスポンスが上記秘密鍵により暗号化されている場合は、照合部175は、コンピューター200(データ送信側)の公開鍵を用いて復号した上で、当該照合を行う。
ここで、照合部175が、当該比較によりレスポンスが一致しておらず認証不成立と判定した場合(S66でNO)、画像形成装置1では、コンピューター200との以後の処理を行うことなく、処理が終了する。
また、照合部175が、当該比較によりレスポンスが一致するとして認証成立と判定した場合(S66でYES)、S61で受け付けられた印刷要求に対する返信として、コンピューター200に、印刷対象データ及び重要度情報の送信を許可する送信許可信号を、通信部102がネットワークインターフェイス部91を介して送信する(S67)。
コンピューター200では、当該送信許可信号を画像形成装置1から通信部202が受信すると(S76でYES)、第1乃至第4実施形態で示した印刷対象データ及び重要度情報の画像形成装置1に対する送信が制御部201及び通信部202により行われる(S77)。画像形成装置1では、当該印刷対象データ及び重要度情報を通信部102が受信すると、上述した印刷処理及びユーザー認証処理が開始される(S68)。
一方、コンピューター200では、上記レスポンスの送信時点から予め定められた一定期間が経過しても、当該通信許可信号を画像形成装置1から通信部202が受信しない場合は(S76でNO)、印刷対象データ及び重要度情報を画像形成装置1に対して送信することなく、画像形成装置1との間での処理を終了する。
上記一連の処理においては、通信部102は、照合部175におけるレスポンスの照合が成立した場合にのみ、コンピューター200から印刷対象データ及び当該印刷対象データの重要度情報を受信するので、当該画像形成装置1に印刷対象データを送信してくるコンピューター200及びその操作者に対して、正当な権限を有することを条件として、当該印刷対象データの印刷を許可するので、印刷対象データ及びその印刷物に対する保護レベルが更に高められる。
なお、本発明は上記実施の形態の構成に限られず種々の変形が可能である。例えば、上記第2乃至第4実施形態においてパスワード作成部111が、印刷対象データの重要度情報の示す重要度の値の度合いに応じて設定したパスワード強度を有するパスワードを作成しているが、パスワード作成部111は、重要度の値の度合いに応じて設定する当該パスワード強度に下限を設けてパスワードを作成するものしてもよい。例えば、重要度情報の示す重要度の値の度合いに応じて上記印刷許可期間が短く設定されても、パスワード強度が低ければ、この印刷許可期間内に画像形成装置1の設置場所に既に位置している他者に対しては、印刷物の秘匿性を保持する保護レベルが下がる。しかし、これによれば、パスワード作成部111により、パスワードがパスワード強度に下限を設けて作成されるので、画像形成装置1の設置場所に位置している当該他者に対する一定の保護レベルを確保することが可能になる。
また、上記各実施形態では、本発明に係る画像形成装置として、複合機を用いて説明しているが、これは一例に過ぎず、複合機以外のコピー機、スキャナー装置、ファクシミリ装置等の他の画像形成装置でもよい。
また、図1乃至図9を用いて上記各実施形態により示した構成及び処理は、本発明の一実施形態に過ぎず、本発明を当該構成及び処理に限定する趣旨ではない。