以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。なお、図中同一符号は同一または相当部分を示す。
図1は、本発明の実施の形態による電動車両の概略構成図である。
図1を参照して、電動車両100は、直流電源部10♯と、平滑コンデンサC0と、インバータ14と、モータジェネレータMGと、制御装置30と、アクセルペダル51と、ブレーキペダル55と、シフトポジションセンサ58と、駆動軸60と、ディファレンシャルギア70と、駆動輪80とを備える。
直流電源部10♯は、蓄電装置Bと、システムリレーSR1,SR2と、平滑コンデンサC1と、コンバータ12とを含む。
蓄電装置Bは、代表的には、ニッケル水素またはリチウムイオン等の二次電池によって構成されるため、以下では、蓄電装置BについてバッテリBとも表記する。ただし、「蓄電装置」については、バッテリのみならず、電気二重層キャパシタ等についても適用することが可能である点について、確認的に記載する。
バッテリBに対して、センサ群を含む監視ユニット10が配置される。監視ユニット10は、蓄電装置Bの電圧Vb、電流Ibおよび温度Tbを検出するとともに、その異常値の発生を監視するように構成される。なお、電流Ibについては、蓄電装置Bの放電時を正値(Ib>0)で示す一方で、充電時を負値(Ib<0)で示すものとする。監視ユニット10による検出値が、制御装置30へ出力される。なお、蓄電装置Bとして代表的にはバッテリが用いられるため、蓄電装置Bの電圧Vb、電流Ibおよび温度Tbについて、以下では、電池電圧Vb、電池電流Ibおよび電池温度Tbとも称する。
システムリレーSR1は、バッテリBの正極端子および電力線6の間に接続される。システムリレーSR2は、バッテリBの負極端子および接地線5の間に接続される。システムリレーSR1,SR2は、制御装置30からの制御信号SEによりオン/オフされる。
平滑コンデンサC1は、電力線6および接地線5の間に接続される。電圧センサ11は、平滑コンデンサC1の両端の電圧、すなわち、電力線6の直流電圧VLを検出し、その検出値を制御装置30へ出力する。
コンバータ12は、リアクトルL1と、電力用半導体スイッチング素子Q1,Q2とを含む。電力用半導体スイッチング素子Q1およびQ2は、電力線7および接地線5の間に直列に接続される。電力用半導体スイッチング素子Q1およびQ2のオン・オフは、スイッチング制御信号SG1およびSG2によって制御される。
この発明の実施の形態において、電力用半導体スイッチング素子(以下、単に「スイッチング素子」と称する)としては、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、電力用MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタあるいは、電力用バイポーラ等を用いることができる。スイッチング素子Q1,Q2に対しては、逆並列ダイオードD1,D2が配置されている。リアクトルL1は、スイッチング素子Q1およびQ2の接続ノードと電力線6との間に接続される。
平滑コンデンサC0は、電力線7および接地線5の間に接続される。電圧センサ13は、平滑コンデンサC0の両端の電圧、すなわち、電力線7の直流電圧VHを検出し、その検出値を制御装置30へ出力する。以下では、インバータ14の直流側電圧に相当する直流電圧VHをシステム電圧VHとも称する。
コンバータ12は、スイッチング素子Q1のオンオフ制御により、直流電圧VLおよびVHの間で直流電圧変換を実行する。コンバータ12による電圧変換比(VH/VL)は、スイッチング素子Q1,Q2のデューティ比に応じて制御される。具体的には、モータジェネレータMGの状態に応じて電圧指令値VHrが設定されるとともに、コンバータ12におけるデューティ比が、直流電圧VLおよびVHの検出値に基づいて制御される。なお、直流電圧VHを直流電圧VLから昇圧する必要がない場合には、スイッチング素子Q1およびQ2をオンおよびオフにそれぞれ設定することにより、VH=VL(電圧変換比=1.0)とすることもできる。
コンバータ12では、基本的には、各スイッチング周期内でスイッチング素子Q1およびQ2を相補的かつ交互にオンオフするように制御される。このようにすると、コンバータ12の電流方向に応じて特に制御動作を切換えることなく、バッテリBの充電および放電のいずれにも対応して、直流電圧VHを電圧指令値VHrに制御することができる。
インバータ14は、電力線7および接地線5の間に設けられる、U相上下アーム15と、V相上下アーム16と、W相上下アーム17とから成る。各相上下アームは、電力線7および接地線5の間に直列に接続されたスイッチング素子から構成される。たとえば、U相上下アーム15は、スイッチング素子Q3およびQ4から成り、V相上下アーム16は、スイッチング素子Q5およびQ6から成り、W相上下アーム17は、スイッチング素子Q7およびQ8から成る。また、スイッチング素子Q3〜Q8に対して、逆並列ダイオードD3〜D8がそれぞれ接続されている。スイッチング素子Q3〜Q8のオンオフは、制御装置30からのスイッチング制御信号SG3〜SG8によって制御される。
モータジェネレータMGは、代表的には、3相の永久磁石型同期電動機で構成され、図示しないステータに巻回されたU,V,W相の3つのコイルの一端が中性点に共通接続される。さらに、各相コイルの他端は、各相上下アーム15〜17のスイッチング素子の中間点と接続されている。
モータジェネレータMGは、インバータ14から供給される三相交流電力に応じて駆動力を発生し、機械的に連結された駆動軸60およびディファレンシャルギア70を介して駆動輪80を回転駆動する。すなわち、モータジェネレータMGは、駆動輪80と連結された駆動軸60との間でトルクを相互に伝達可能に構成されている。
なお、電動車両100が、図示しないエンジンをさらに搭載するハイブリッド車両である場合には、この図示しないエンジンからの出力による駆動輪80の回転駆動を可能にするために、モータジェネレータMGからの駆動力伝達経路上に、遊星歯車機構などの動力分割機構を介挿し、モータジェネレータMGおよびエンジンが発生する駆動力を適切に分配するように構成してもよい。
電流センサ24は、モータジェネレータMGに流れる電流(相電流)を検出し、その検出値を制御装置30へ出力する。なお、三相電流Iu,Iv,Iwの瞬時値の和は零であるので、図1に示すように2相分のモータ電流(たとえば、V相電流IvおよびW相電流Iw)を検出するように配置してもよい。
回転角センサ(レゾルバ)25は、モータジェネレータMGのロータ回転角θを検出し、その検出した回転角θを制御装置30へ送出する。制御装置30では、回転角θに基づきモータジェネレータMGの回転速度および回転周波数ωeを算出できる。なお、回転角センサ25については、回転角θを制御装置30についてモータ電圧や電流から直接演算することによって、配置を省略してもよい。
制御装置30は、単一あるいは複数の電子制御ユニット(ECU)により構成される。ECUは、予め記憶されたプログラムを図示しないCPU(Central Processing Unit)で実行することによりソフトウェア処理および/または専用の電子回路によるハードウェア処理により、所定の制御動作を実行する。
図1の構成例では、制御装置30は、MG−ECU35と、バッテリECU40と、HV−ECU50とを含むように構成される。ただし、これらのECUの一部または全部の機能を統合したECUを設けることも可能である。
バッテリECU40は、監視ユニット10によって検出された、バッテリB(蓄電装置)の状態値(電池電圧Vb、電池電流Ibおよび電池温度Tb)に基づいて、バッテリB(蓄電装置)の現在の充電状態(SOC)を推定する。SOCは、通常、満充電状態(100%)に対する現在の充電量の比率を百分率で表したものである。
さらに、バッテリECU40は、バッテリBの充放電を制御するために、少なくともSOCに基づいて、バッテリBへの充電電力の制限を示す充電電力上限値WINおよびバッテリBからの放電電力の制限を示す放電電力上限値WOUTを設定する。バッテリBの入出力電力についても、放電電力を正値、充電電力を負値で示すものとする。したがって、WIN≦0であり、WOUT≧0である。
HV−ECU50は、アクセルペダル51の操作量AC、ブレーキペダル55の操作量BKおよび、図示しないセンサからの車両状況を示す情報に基づいて、電動車両100の走行を制御する。たとえば、HV−ECU50は、ユーザのアクセル操作(AC)およびブレーキ操作(BK)に応じてユーザが所望する加速度または減速度が実現されるように、電動車両100の走行を制御する。
この走行制御の一環として、車両走行用のモータジェネレータMGのトルク指令値Trqcomが設定される。電動車両100の加速時には、モータジェネレータMGのトルク指令値が正(Trqcom>0)に設定される。
HV−ECU50は、ブレーキペダル55の操作時には、ブレーキ操作量BKと図示しない車速センサによって検出される車速に基づいて、車両全体で必要なトータル制動力を算出するとともに、このトータル制動力を油圧制動力と、モータジェネレータMGによる回生制動力とに分配する協調制御を行なう。この際に、モータジェネレータMGで回生制動力を発生するためのトルク指令値(Trqcom<0)は、モータジェネレータMGがトルク指令値相当の減速トルクを出力することによる発電電力が、充電電力上限値WINの範囲内に収まるように設定される。なお、モータジェネレータMGによる回生制動力が制限される場合でも、油圧ブレーキによる制動力を確保することによって、トータル制動力は常に確保することが可能である。
また、エンジンを駆動源とする従来の車両では、アクセルペダルのオフ時には、いわゆるエンジンブレーキ相当の減速度が自動的に発生される。したがって、HV−ECU50は、アクセルペダル51のオフ時には、上記エンジンブレーキ相当の所定の減速度を確保するために、トルク指令値Trqcomを所定値(負値)に設定する。
ただし、常に、トルク指令値Trqcomは、モータジェネレータMGが当該トルクを出力した際の消費電力あるいは発電電力に伴なうバッテリBの充放電電力が充電電力上限値WIN〜放電電力上限値WOUTの範囲内になるように制限した上で設定される。
MG−ECU35は、HV−ECU50によるトルク指令値Trqcomに従って、モータジェネレータMGが動作するように、インバータ14およびコンバータ12を制御する。MG−ECU35には、トルク指令値Trqcom、電圧センサ11によって検出された直流電圧VL、電圧センサ13によって検出されたシステム電圧VH、電流センサ24によって検出されるモータ電流Iv,Iw、および回転角センサ25からの回転角θが入力される。MG−ECU35は、これらの入力信号に基づいて、コンバータ12における直流電圧変換を制御するためのスイッチング制御信号SG1,SG2と、インバータ14による直流/交流電圧変換を制御するためのスイッチング制御信号SG3〜SG8を生成する。
電動車両100の加速時には、インバータ14が、正のトルク指令値(Trqcom>0)に従って制御されるように、スイッチング制御信号SG3〜SG8が生成される。これにより、モータジェネレータMGのステータに正トルクを発生させるための回転磁界を生じさせるための交流電圧が、インバータ14からモータジェネレータMGへ印加される。これにより、モータジェネレータMGは、バッテリBからの電力線7の直流電力を源に、電動車両100を加速するための駆動力を発生することができる。
モータジェネレータMGは、電動車両100の減速時には、駆動輪80の回転力によって駆動されることによって発電機として動作する。なお、ここで言う「減速時」とは、ブレーキペダル55が操作された場合の回生発電を伴なう制動時に加えて、ブレーキペダル55を操作しないもののアクセルペダル51をオフすることによる加速中止時を含む。
基本的には、電動車両100の減速時には、モータジェネレータMGのトルク指令値Trqcomは負に設定される(Trqcom<0)。そして、インバータ14が、負トルクの出力によりモータジェネレータMGで発電された電力を、直流電力に変換して電力線7へ出力する。この回生された直流電力は、平滑コンデンサC0およびコンバータ12を介して、バッテリBを充電する。
また、トルク指令値Trqcom=0に設定された場合には、モータジェネレータMGの出力トルクを零とするような回転磁界をステータに生じさせるための交流電圧がインバータ14から出力されるように、スイッチング制御信号SG3〜SG8が生成される。
上述のように、バッテリBの過充電が懸念されるSOC上昇時には、バッテリBへの充電が制限あるいは禁止される。このときには、充電電力上限値WIN(WIN<0に設定)の絶対値が低下される。そして、充電禁止時にはWIN=0となる。バッテリBの充電が制限あるいは禁止されている場合には、アクセルペダル51のオフ時(以下、単に「アクセルオフ時」とも称する)において、バッテリBの過充電を防止するために、モータジェネレータMGによる回生電力を抑制する必要がある。
図2には、電動車両100のアクセルオフ時におけるバッテリBの過充電防止のためのトルク指令値の設定態様の一例が示される。図2では、長距離の継続的な降坂走行が想定されている。
図2を参照して、トルク値−Trbは、エンジンブレーキ相当の減速度を確保するための減速トルクに対応する。この減速トルク−Trbについては、一定値であるとは限らず、車両状況(車速や路面勾配等)に応じて可変の値に設定されてもよい。
時刻t1までの間は、充電電力上限値|WIN|が、減速トルク−Trb発生時のモータジェネレータMGの充電電力よりも大きいため、トルク指令値Trqcom=−Trbに設定可能な状態であることを示している。この間、減速トルクの発生に伴なうモータジェネレータMGの回生電力によって、SOCは徐々に上昇する。
そして、時刻t1では、SOCの上昇に応じて充電電力上限値|WIN|が抑制されることにより、設定可能なトルク指令値Trqcom>−Trbとなり、減速トルクの発生が制限される。すなわち、アクセルオフ時のバッテリBへの充電が制限された状態となる。
時刻t1以降では、充電電力上限値|WIN|の範囲内に制御して、トルク指令値Trqcomが設定されるため、モータジェネレータMGによる減速トルクが減少するが、SOCの上昇度合いは緩やかになる。
そして、制限された減速トルクの発生がさらに継続することにより、時刻t2では、バッテリBの充電が禁止される制御上限値Smaxまで、SOCが上昇する。これにより、充電電力上限値WIN=0に設定される。この場合には、モータジェネレータMGによる回生発電が禁止されるため、トルク指令値Trqcom=0に設定される。トルク指令値Trqcom=0の状態では、モータジェネレータMGの出力トルクを零とするような回転磁界を生じさせるように、インバータ14が制御される。
上述のように、バッテリBへの充電が制限または禁止されることに起因して減速トルクの発生が制限または禁止されると、エンジンブレーキ相当の減速度を確保できなくなる可能性がある。そのため、本実施の形態による電動車両100では、減速トルクの発生が制限または禁止される場合には、回生制動力の発生が制限される旨をユーザに対して報知する。これにより、アクセルオフ時において、ユーザが意図している減速感と異なる減速感を与えることによる、ユーザの違和感を緩和することができる。
具体的には、電動車両100は、HV−ECU50からの表示情報を表示するためのユーザインターフェイスとして表示部90をさらに備える。表示部90には、表示ランプやLEDなどのインジケータ、あるいは液晶表示器などが含まれる。HV−ECU50は、後述するアクセルオフ時の減速制御中において、回生制動力すなわち、モータジェネレータMGによる減速トルクの発生が制限されると判断された場合には、表示部90を用いて回生制動力が制限される旨をユーザに報知する。表示部90は「報知部」に対応する。
たとえば、表示部90として表示ランプが搭載される場合には、HV−ECU50は、回生制動力が制限中であることを示す点灯指令を表示部90へ出力する。そして、点灯指令に応答して表示部90が点灯している状態において、回生制動力の制限が解除されると、HV−ECU50は、点灯指令を非活性化することにより表示部90を消灯させる。
なお、回生制動力の制限の報知には、表示ランプの点灯以外に、液晶表示器への文字表示あるいは音声メッセージなどが含まれる。
図3は、本発明の実施の形態による電動車両におけるアクセルオフ時の減速制御および表示制御を説明するためのブロック図である。なお、図3を始めとする各ブロック図に示された各機能ブロックについては、当該ブロックに相当する機能を有する電子回路(ハードウェア)をECU内に構成してもよいし、予め設定されたプログラムに従ってECUがソフトウェア処理を実行することにより実現してもよい。
図3を参照して、SOC推定部42は、監視ユニット10によって検出された、バッテリB(蓄電装置)の状態値(電圧、電流、温度等)に基づいて、バッテリBのSOCを推定する。簡略的には、電池電流Ibの積算値および/または開放電圧等に基づいて、SOCを推定する手法が知られている。
充放電制限算出部440は、SOC推定部42によって推定されたSOCに応じて、充電電力上限値WINおよび放電電力上限値WOUTを算出する。SOCが低下すると、放電電力上限値WOUTは徐々に低く設定される。反対に、SOCが高くなると、充電電力上限値WINが徐々に低下するように設定される。
また、バッテリBは、特に低温時に内部抵抗が上昇する温度依存性を有する。また、高温時には、さらなる発熱によって温度が過上昇することを防止する必要がある。このため、低温時および高温時には、充放電電力を制限することが好ましい。このように、SOCおよび電池温度Tbに応じて、充電電力上限値WINおよび放電電力上限値WOUTは算出される。
あるいは、充放電制限算出部440は、バッテリBの劣化度合いをさらに反映して、充電電力上限値WINおよび放電電力上限値WOUTを算出してもよい。具体的には、劣化度合いの増加に応じて、充電電力上限値WINおよび放電電力上限値WOUTを低下させることができる。図1の構成では、SOC推定部42および充放電制限算出部440は、バッテリECU40によって実現される機能ブロックに相当する。また、充放電制限設定部44は、HV−ECU50によって実現される機能ブロックに相当する。
充放電制限設定部44は、バッテリBとモータジェネレータMGとの間の電力収支を制御するための制御用充電電力上限値WINFおよび制御用放電電力上限値WOUTFを設定する。この制御用充電電力上限値WINFおよび制御用放電電力上限値WOUTFは、後述する方法によって、バッテリBの充放電状況を示す情報(バッテリBの充放電電力や状態値等)に応じて充電電力上限値WINおよび放電電力上限値WOUTをそれぞれ補正することによって生成される。充放電制限設定部44は、制御用充電電力上限値WINFおよび制御用放電電力上限値WOUTFをトルク指令値設定部52へ出力する。
トルク指令値設定部52は、アクセル操作量AC、ブレーキ操作量BKおよび電動車両100の車両状況に応じて、ユーザが所望する加速度または減速度が実現されるように、トルク指令値Trqcomを設定する。ただし、トルク指令値Trqcomは、モータジェネレータMGがTrqcom相当のトルクを出力したときの発電電力または消費電力が制御用充電電力上限値WINF〜制御用放電電力上限値WOUTFの範囲内となるように設定される。
トルク指令値設定部52は、制御用充電電力上限値WINFおよび制御用放電電力上限値WOUTFの範囲内で、モータジェネレータMGで発電または消費される電力に相当する電力目標値Pm*を決定する。そして、当該電力目標値Pm*に応じてモータジェネレータMGに対するトルク指令値Trqcomを算出し、MG−ECU35(図1)へ与える。このトルク指令値Trqcomに従って、MG−ECU35では、コンバータ12を制御するためのスイッチング制御信号SG1,SG2およびインバータ14を制御するためのスイッチング制御信号SG3〜SG8が生成される。
充放電制限設定部44はさらに、表示部90の点灯/消灯を制御するための表示用充電電力上限値WINSを設定する。表示用充電電力上限値WINSは、上記の制御用充電電力上限値WINFと同様に、バッテリBの充電状況を示す情報(バッテリBの充電電力や状態値等)に応じて充電電力上限値WINを補正することによって生成される。充放電制限設定部44は、表示用充電電力上限値WINSを表示判定部54へ出力する。表示判定部54は、表示用充電電力上限値WINSに基づいて、表示部90の点灯/消灯を制御する。トルク指令値設定部52および表示判定部54は、図1の構成では、HV−ECU50によって実現される機能ブロックに相当する。
図4には、充放電制限設定部44(図3)のさらに詳細な構成が示される。
図4を参照して、充放電制限設定部44は、充放電制限補正部442と、減算部444と、乗算部446とを含む。
充放電制限算出部440は、SOC推定部42によって推定されたSOCに少なくとも基づいて、充電電力上限値WINおよび放電電力上限値WOUTを算出する。充放電制限算出部440は、充電電力上限値WINおよび放電電力上限値WOUTをバッテリBのSOCに対応付けて規定した許容充放電電力特性をマップ形式で格納する。そして、各時点におけるバッテリBのSOCに基づいて格納するマップを参照し、対応する充電電力上限値WINおよび放電電力上限値WOUTを充放電制限補正部442へ与える。
充放電制限補正部442は、バッテリBの充電状況を示す情報(バッテリBの充電電力や状態値等)に応じて充電電力上限値WINを補正し、その補正された充電電力上限値を制御用充電電力上限値WINFとしてトルク指令値設定部52へ出力する。また、充放電制限補正部442は、バッテリBの放電状況を示す情報(バッテリBの放電電力や状態値等)に応じて放電電力上限値WOUTを補正し、その補正された放電電力上限値を制御用放電電力上限値WOUTFとしてトルク指令値設定部52へ出力する。
具体的には、充放電制限補正部442は、フィードバック制御系を含んで構成される。乗算部446は、監視ユニット10によって検出されたバッテリBの電圧Vbおよび電流Ibを乗算し、その演算結果をバッテリBで充放電される電力(以下、単に「バッテリ電力」と称する)Pbの実績値(Pb=Vb・Ib)として出力する。減算部444は、トルク指令値設定部52から与えられるモータジェネレータMGの電力目標値Pm*からバッテリ電力実績値Pbを減算し、その減算結果を偏差ΔPbとして出力する。
充放電制限補正部442は、減算部444から与えられるバッテリ電力の偏差ΔPbに少なくとも応じて充電電力上限値WINおよび放電電力上限値WOUTをそれぞれ補正することにより、制御用充電電力上限値WINFおよび制御用放電電力上限値WOUFを設定する。
より具体的には、バッテリ電力Pbは、下記式(1)に示されるように、充電電力上限値WINおよび放電電力上限値WOUTの範囲内とする必要がある。
WIN≦Pb≦WOUT ・・・(1)
ここで、電動車両100において、車両駆動力を発生するようにモータジェネレータMGが制御される場合には、モータジェネレータMGがトルク指令値Trqcom相当のトルクを出力するのに必要な電力Pmと、車両に搭載される補機負荷の消費電力Paとの和に相当する電力が、バッテリBから供給される。また、電動車両100の減速時には、モータジェネレータMGによる回生電力から補機負荷の消費電力Paを差し引いた電力が、バッテリBに供給される。
したがって、モータジェネレータMGの電力目標値Pm*と補機負荷の消費電力Paとの合計値をバッテリ電力Pbの目標値を示す電力指令値Pb*(=Pm*+Pa)に設定してバッテリ電力Pbをフィードバック制御することにより、バッテリ電力Pbを電力指令値Pb*に一致させることができる。
そして、このバッテリ電力Pbのフィードバック制御において電力指令値Pb*とバッテリ電力実績値Pbとの偏差をΔPb=Pb−Pb*とすると、上記式(1)に基づき、電力指令値Pb*(=Pm*+Pa)と、充電電力上限値WINおよび放電電力上限値WOUTと間には、下記式(2)の関係が成立する。
WIN≦Pm*+Pa+ΔPb≦WOUT ・・・(2)
さらに、下記式(3)および(4)に従って、充電電力上限値WINおよび放電電力上限値WOUTから、バッテリ電力Pbの偏差ΔPb(=Pb−Pb*)および補機負荷の消費電力Paを減算したものを、制御用充電電力上限値WINFおよび制御用放電電力上限値WOUTFとそれぞれ定義すると、上記式(2)の関係は、式(5)のような関係に変形することができる。
WINF=WIN−ΔPb−Pa ・・・(3)
WOUTF=WOUT−ΔPb−Pa ・・・(4)
WINF≦Pm*≦WOUTF ・・・(5)
すなわち、充電電力上限値WINおよび放電電力上限値WOUTに代えて、フィードバック制御上の偏差および補機負荷での電力損失を含ませた制御用充電電力上限値WINFおよび制御用放電電力上限値WOUTFを用いることにより、上記式(1)に示す関係を、モータジェネレータMGの電力目標値Pm*とバッテリBの充放電電力上限値との関係として扱うことが可能となる。上記式(5)によれば、トルク指令値設定部52は、モータジェネレータMGの電力目標値Pm*を、制御用充電電力上限値WINFおよび制御用放電電力上限値WOUTFの範囲内で設定すればよい。
しかしながら、バッテリBの連続充電、アクセルペダル51のオン/オフ、駆動輪80のスリップ/グリップなどが生じると、バッテリBの電圧が許容電圧を超えたり、許容電流を超える電流がバッテリBに充電されたりする。また、モータジェネレータMGからの回生電力が過剰になると、バッテリBの過充電が発生する虞がある。そして、これらの過電圧、過電流および過充電が要因となってバッテリBの劣化が進行する虞がある。
このようなバッテリBの過電圧、過電流および過充電を防止するためには、バッテリBの充放電電力をさらに制限することが好ましい。このため、本実施の形態では、バッテリBの電圧Vb、電流Ibまたは電力Pbが許容値を超過している場合には、式(6)に従って、その超過分を電力補正量ΔPb♯として制御用充電電力上限値WINFを補正する。すなわち、電力補正量ΔPb♯は、バッテリBの過電圧、過電流および過充電を抑制するバッテリ保護のフィードバック制御量に相当する。電力補正量ΔPb♯は、例えば、電圧Vb、電流Ibおよび電力Pbの超過分ΔVb,ΔIb,ΔPbを、予め定められた換算係数を用いて電力に換算したものである。
WINF=WIN−ΔPb−Pa−ΔPb♯ ・・・(6)
このように、バッテリBのSOCに基づいて算出される充電電力上限値WINおよび放電電力上限値WOUTを、バッテリ保護の観点から補正した制御用充電電力上限値WINFおよび制御用放電電力上限値WOUTFを用いて、バッテリBとモータジェネレータMGとの間の電力収支を制御することにより、バッテリBの過電圧、過電流および過充電を防止することができる。
その一方で、電動車両100のアクセルオフ時において、制御用充電電力上限値WINFを超えないようにモータジェネレータMGによる回生電力を抑制すると、上述のように、エンジンブレーキ相当の減速度を確保することができず、ユーザに違和感を与えてしまう(ドライバビリティを悪化させてしまう)可能性がある。このため、表示判定部54は、充放電制限補正部442から与えられる表示用充電電力上限値WINSに基づいて、減速度の低下によってユーザに違和感を与えてしまう可能性があるか否かを判断する。そして、ユーザに違和感を与えてしまう可能性があると判断された場合には、表示判定部54は、表示部90を用いて回生制動力が制限中であることをユーザに報知する。
具体的には、充放電制限補正部442は、上述した制御用充電電力上限値WINFとは別に、表示用充電電力上限値WINSを設定する。この表示用充電電力上限値WINSは、下記式(7)により算出される。
WINS=WIN−ΔPb♯−Pa ・・・(7)
式(7)から明らかなように、表示用充電電力上限値WINSには、モータジェネレータMGの電力目標値Pm*に対するバッテリ電力実績値Pbの偏差ΔPbが反映されていない。これは、偏差ΔPbが、モータジェネレータMGの駆動制御において発生する制御誤差に依存し、モータジェネレータMGの回転数や出力トルクの変化によって変動しやすいことに基づいている。偏差ΔPbを含めないようにすることで、ユーザのアクセル操作およびブレーキ操作に連動して偏差ΔPbが変動することに起因して、表示部90を構成する表示ランプが点灯と消灯とを頻繁に繰り返す、いわゆるハンチング現象が発生するのを防止することができる。
さらに、充放電制限補正部442は、電力補正量ΔPb♯が所定の閾値βに達した場合にのみ、表示用充電電力上限値WINSに電力補正量ΔPb♯を含めるものとする。すなわち、電力補正量ΔPb♯の大きさに応じて、表示用充電電力上限値WINSに電力補正量ΔPb♯を反映させるか否かを切換える。具体的には、電力補正量ΔPb♯が閾値β以上となるときには、表示用充電電力上限値WINSは、上記式(7)により算出される。一方、電力補正量ΔPb♯が閾値βよりも小さいときには、表示用充電電力上限値WINSは、下記式(8)により算出される。すなわち、電力補正量ΔPb♯=0に設定される。
WINS=WIN−Pa ・・・(8)
なお、上記閾値βについては、ユーザからの要求駆動力の変化が所定範囲内に収まる通常走行時における電力補正量ΔPb♯の分布に基づいて、予め定められる。すなわち、閾値βは、ユーザからの要求駆動力が大幅に変化することによってバッテリBへの充電が制限されるか否かを判定するための閾値である。たとえば、閾値βは、充電電力上限値|WIN|が所定値以下に抑制された状態において、ユーザのアクセル操作およびブレーキ操作に応じて電力補正量ΔPb♯が取り得る最大値の頻度分布に基づいて定められる。
ここで、上述したように、電力補正量ΔPb♯は、バッテリBの電圧、電流または電力が許容値を超過している場合における当該許容値からの超過分の電力に相当する。この電力超過分は、バッテリ保護を目的としたフィードバック制御量を構成するため、許容値を超える充電電流および充電電力の発生を検出する感度が高いことが要求される。また、許容値を超える充電電力が発生した場合に速やかに充電電力を制限できるような制御応答性を確保するためには、フィードバック制御の制御周期を短くする必要がある。このような観点から、電力補正量ΔPb♯は、ユーザのアクセル操作およびブレーキ操作に応じて細かに変動する。したがって、表示用充電電力上限値WINSにおいて、この電力補正量ΔPb♯を常に反映させるものとすると、電力補正量ΔPb♯の変動に連動して表示用充電電力上限値WINSも変化することとなる。そして、このような表示用充電電力上限値WINSに基づいて表示部90の点灯/消灯を制御すると、表示部90の表示状態が実際にユーザが受ける減速感にそぐわないものとなる不具合が多発してしまう可能性がある。
そのため、本実施の形態では、電力補正量ΔPb♯が上記の閾値β以上となるときにのみ、電力補正量ΔPb♯を表示用充電電力上限値WINSに反映させる。これにより、ユーザからの要求駆動力が大幅に変化したことに起因してバッテリBの充電が制限または禁止されている状態を、表示用充電電力上限値WINSに適切に反映させることができる。
以上のようにして充放電制限設定部44によって表示用充電電力上限値WINSが設定されると、表示判定部54は、表示用充電電力上限値WINSに基づいて、減速度の低下によってユーザに違和感を与えてしまう可能性があるか否かを判断する。そして、ユーザに違和感を与える可能性があると判断された場合には、表示判定部54は、表示部90を用いて回生制動力が制限中であることをユーザに報知する。図5を用いて、表示判定部54による表示部90の制御を詳細に説明する。
図5は、表示用充電電力上限値WINSおよび電力補正量ΔPb♯の時間的な変化の一例を示す図である。
図5を参照して、表示用充電電力上限値WINSは、図中実線で示すように、バッテリBのSOCに応じて設定される充電電力上限値WINS(図中下線)に対して電力補正量ΔPb♯を上乗せするように設定される。ただし、上述したように、電力補正量ΔPb♯が閾値βに達した場合にのみ、充電電力上限値WINに対して電力補正量ΔPb♯が上乗せされる。
表示判定部54は、表示用充電電力上限値WINSと判定値αとを比較し、その比較結果に基づいて表示部90を制御する。この判定値αとは、減速度の低下によってユーザに違和感を与えるか否かを判別するための閾値である。判定値αは、ユーザが意図した減速度とは異なる減速度をユーザに与えることによって減速感の不足をユーザが体感する可能性があるような領域(図中の「減速感不足領域」に相当)を求めることによって、予め定めることができる。たとえば、判定値αは、アクセルオフ時に、エンジンブレーキ相当の減速度を得るために必要な減速トルク−TrbをモータジェネレータMGが出力することによる回生発電電力となるように設定される。
なお、図5では、減速感不足領域の限界値を判定値αに設定する例を示したが、減速感不足領域の範囲内で判定値αを設定しても同様の効果を得ることができる。ただし、図5に例示するように、減速感不足領域の限界値に判定値αを設定する方が、表示部90の表示状態をユーザが受ける減速感により一層整合させることができる。
表示判定部54は、表示用充電電力上限値WINSと判定値αとの比較結果に基づいて、カウンタ56,57の加算を行なう。第1カウンタ56は、表示用充電電力上限値|WINS|が判定値αの絶対値以下となる時間を計測するために用いられる。第1カウンタ56は、回生制動力の制限を行なう期間、すなわち回生制動力の制限継続時間を計測するための「制限継続時間カウンタ」を構成する。表示判定部54は、表示用充電電力上限値|WINS|が判定値|α|以下となるとき(時刻t3〜t4,t5〜t6,t7〜t8,t9〜t11)、第1カウンタ56のカウント値CNT1を加算する。一方、表示用充電電力上限値|WINS|が判定値|α|を上回ると(時刻t4,t6,t8,t11)、表示判定部54は、第1カウンタ56をクリアすることにより、カウント値CNT1を初期化する。
これに対して、第2カウンタ57は、表示用充電電力上限値|WINS|が判定値αの絶対値を上回る時間を計測するために用いられる。第2カウンタ57は、回転制動力の制限が行なわれない期間、すなわち回生制動力の非制限継続時間を計測するための「非制限継続時間カウンタ」を構成する。表示判定部54は、表示用充電電力上限値|WINS|が判定値|α|よりも大きくなるとき(時刻t4〜t5,t6〜t7,t8〜t9)、第2カウンタ57のカウント値CNT2を加算する。一方、表示用充電電力上限値|WINS|が判定値|α|以下となるときには(時刻t3,t5,t7,t9)、表示判定部54は、第2カウンタ57をクリアすることにより、カウント値CNT2を初期化する。
そして、表示判定部54は、第1カウンタ56(制限継続時間カウンタ)のカウント値CNT1が所定の基準値Tonに到達すると(時刻t10)、回生制動力が制限中であることを示す点灯指令を表示部90へ出力する。これにより、表示部90は、点灯指令に応答して点灯する。さらに、第2カウンタ57(非制限継続時間カウンタ)のカウント値CNT2が所定の基準値Toffに到達すると(時刻t12)、表示判定部54は、表示部90に対する点灯指令を非活性化する。これにより、表示部90は消灯する。
このように、回生制動力の制限継続時間を計測するための制限継続時間カウンタ56のカウント値CNT1および回生制動力の非制限継続時間を継続するための非制限継続時間カウンタ57のカウント値CNT2を用いて、表示部90における点灯/消灯の切換えを制御することにより、電力補正量ΔPb♯の変動に起因して表示用充電電力上限値WINSが判定値αを一時的に超えたような場合において、誤って回生制動力が制限中である旨が表示部90に表示されるのを防止することができる。また、制限継続時間および非制限継続時間がそれぞれ所定値TonおよびToffに達したことに基づいて、表示部90における点灯/消灯が切換えられることにより、点灯状態と消灯状態とがハンチングするのを回避できる。この結果、安定した表示を実現することができる。
図6は、本発明の実施の形態による電動車両における表示制御の制御処理手順を示すフローチャートである。図6を始めとする以下のフローチャートの各ステップは、基本的には、制御装置30(ECU)によるソフトウェア処理によって実現されるが、ECU内に作製された電子回路によるハードウェア処理によって実現されてもよい。
図6を参照して、制御装置30は、ステップS01により、監視ユニット10からのバッテリB(蓄電装置)の状態値(電圧、電流、温度等)に基づいて、バッテリBのSOCを推定する。そして、制御装置30は、ステップS02により、推定されたSOCに少なくとも基づいて、バッテリBの充電電力上限値WINを算出する。
制御装置30は、ステップS03では、バッテリBとモータジェネレータMGとの間の電力収支におけるフィードバック制御量である電力補正量ΔPb♯を取得する。そして、制御装置30は、ステップS04により、電力補正量ΔPb♯を閾値βと比較する。
電力補正量ΔPb♯が閾値β以上となるとき(ステップS04のYES判定時)には、制御装置30は、ステップS05により、上記式(7)に従って表示用充電電力上限値WINSを算出することにより、電力補正量ΔPb♯を表示用充電電力上限値WINSに反映させる。
一方、電力補正量ΔPb♯が閾値βよりも小さいとき(ステップS04のNO判定時)には、制御装置30は、ステップS06により、上記式(8)に従って表示用充電電力上限値WINSを算出する。すなわち、電力補正量ΔPb♯を表示用充電電力上限値WINSに反映させない。
そして、制御装置30は、ステップS07により、ステップS05またはS06により設定された表示用充電電力上限値WINSを判定値αと比較する。制御装置30は、表示用充電電力上限値|WINS|が判定値|α|以下となるとき(ステップS07のYES判定時)には、ステップS08により、制限継続時間カウンタ56のカウント値CNT1を加算するとともに、非制限継続時間カウンタ57をカウント値CNT2をクリアする。
一方、表示用充電電力上限値|WINS|が判定値|α|を上回るとき(ステップS07のNO判定時)には、ステップS09により、非制限継続時間カウンタ57のカウント値CNT2を加算するとともに、制限継続時間カウンタ56をカウント値CNT1をクリアする。
そして、制御装置30は、ステップS11により、制限継続時間カウンタ56のカウント値CNT1を基準値Tonと比較する。カウント値CNT1が基準値Tonに達しているとき(ステップS11のYES判定時)には、制御装置30はさらに、ステップS12により、非制限継続時間カウンタ57のカウント値CNT2を基準値Toffと比較する。カウント値CNT2は基準値Toffよりも小さいとき(ステップS12のNO判定時)には、制御装置30は、ステップS13により、表示部90に点灯指令を出力することにより、表示部90を点灯させる。
これに対して、制御装置30は、カウント値CNT1が基準値Tonよりも小さいとき(ステップS11のNO判定時)または、カウント値CNT2が基準値Toffに達しているとき(ステップS12のYES判定時)には、ステップS14により、点灯指令を非活性化することにより、表示部90を消灯する。
このように、本発明の実施の形態による電動車両によれば、バッテリ保護を目的としたフィードバック制御量が閾値を超えたときには、充電電力上限値にこのフィードバック制御量を反映させたものを表示用充電電力上限値として用いて表示部を制御する。これにより、ユーザからの要求駆動力が大幅に変化したことに起因してバッテリの充電が制限または禁止されている状態を、表示用充電電力上限値に適切に反映させることができる。この結果、車両の減速度に応じた適切なタイミングで、回生制動力の制限をユーザに報知することができる。
(変形例)
なお、本発明は、車両に作用する回生制動力の発生の程度を調整可能に構成されたシフト操作装置を搭載した電動車両に対しても適用可能である。
本変形例による電動車両においては、シフト操作装置に対するユーザの操作に応じて、シフトポジションが選択される。なお、シフト操作装置は、シフトレバーを有するものであってもよいし、スイッチを有するものであってもよく、特に限定されるものではない。シフトポジションセンサ58(図1)は、シフト操作装置の操作状態に基づいてユーザが選択するシフトポジションを検出する。シフトポジションセンサ58は、シフト操作装置の操作状態を示す信号SPをHV−ECU50に出力する。HV−ECU50は、ユーザにより選択されたシフトポジションに対応する走行状態となるように、モータジェネレータMGを制御する。本変更例において、シフトポジションは、たとえば、正方向の駆動力を発生させるドライブ(D)ポジション、負方向の駆動力を発生させるリバース(R)ポジション、モータジェネレータMGから駆動輪80への動力の伝達を遮断するニュートラル(N)ポジション、および、車両の駐車状態に対応するパーキング(P)ポジションを含む。シフトポジションは、車両に作用する回生制動力の発生の程度を増加させるブレーキ(B)ポジション、および、車両に作用する回生制動力の発生の程度を段階的に変化させるシーケンシャルシフト(S)ポジションをさらに含む。
なお、シフトポジションにDポジションが選択された場合には、ユーザが要求する減速時の回生制動力および加速時の加速応答性が得られるように、モータジェネレータMGが制御される。
また、シフトポジションにSポジションが選択されている状態では、シフト操作装置を操作することにより、回生制動力が段階的に変化するように制御されるシーケンシャルシフト制御が実行される。たとえば、回生制動力の効きに応じて1段から6段までの段階を設定しておき、段階が小さくなるほど回生制動力が大きくなるように、回生制動力の発生の度合いを増加させる。これにより、Sポジションが選択されている状態で車両の減速中にシフト操作装置を−側(シフトレンジダウン)へ操作されると、回生制動力を段階的に増加させるダウンシフト制御が実行される。
このように、シフトポジションにBポジションまたはSポジションが選択されている場合には、シフトポジションにDポジションが選択されている場合に比べて、回生制動力が大きくなるように定められる。
したがって、回生制動力の発生が制限または禁止されたときにユーザに与える違和感は、シフトポジションにBポジションまたはSポジションが選択されている状態の方が、シフトポジションにDポジションが選択されている状態に比べて、より大きなものとなる。
そこで、本変形例においては、表示判定部54は、ユーザにより選択されているシフトポジションに応じて、判定値αを変更する。具体的には、シフトポジションごとに減速感不足領域を算出し、その算出された減速感不足領域に基づいて判定値αを設定する。なお、各シフトポジションおいて、エンジンブレーキ相当の所定の減速度を得るために必要な減速トルクは車速に応じて変化するため、シフトポジションごとに車速と減速度との関係を示すマップを予め記憶しておき、このマップを用いて判定値αを設定する。
図7は、表示用充電電力上限値WINSおよび電力補正量ΔPb♯の時間的な変化の一例を示す図である。図7を用いて、本発明の実施の形態の変形例による電動車両における表示部90の制御態様を説明する。
図7を参照して、表示用充電電力上限値WINSは、図5で説明したのと同様に、電力補正量ΔPb♯が閾値βに達した場合にのみ、充電電力上限値WINSに対して電力補正量ΔPb♯を上乗せするように設定される。表示判定部54は、表示用充電電力上限値WINSと判定値αとを比較し、その比較結果に基づいて表示部90を制御する。
判定値αは、上述のように、シフトポジションに応じて異なる値に設定される。図6においては、シフトポジションにSポジションが選択されたときには、シフトポジションにDポジションが選択されたときに比べて、判定値αの絶対値が大きくなるように設定される。また、シフトポジションにBポジションが選択されたときには、シフトポジションにSポジションが選択されたときに比べて、判定値αの絶対値がさらに大きくなるように設定される。
これにより、表示用充電電力上限値|WINS|と判定値αとの比較結果に基づいて表示部90が点灯するタイミングは、シフトポジションにBポジションが選択されたとき、シフトポジションにSポジションが選択されたとき、シフトポジションにDポジションが選択されたときの順に早くなる。この結果、減速感に対する違和感はシフトポジションシフトに応じて異なるところ、シフトポジションごとに、車両の減速度に応じた適切なタイミングで、回生制動力の制限をユーザに報知することができる。
図8は、本発明の実施の形態の変形例による電動車両における表示制御の制御処理手順を示すフローチャートである。
図8を参照して、制御装置30は、図6と同様のステップS01〜S06により、表示用充電電力上限値WINSを設定する。さらに制御装置30は、ステップS21により、シフトポジションセンサ58からユーザにより選択されたシフトポジションを取得するとともに、電動車両100の車速を検出する。そして、制御装置30は、ステップS22により、予め記憶されたマップを参照することにより、シフトポジションおよび車速に基づいて判定値αを設定する。
制御装置30は、判定値αを設定すると、図6と同様のステップS07〜S14により、表示用充電電力上限値WINSと判定値αとの比較結果に基づいて、表示部90の点灯/消灯を制御する。
なお、本実施の形態においては、蓄電装置Bが「蓄電装置」に相当し、モータジェネレータMGが「電動機」に相当し、表示部90が「報知部」に相当する。また、バッテリECU40およびHV−ECU50が「制御部」および「判定部」を構成する。
また、本発明の実施の形態およびその変形例では、電動車両の一例として、電動機のみを駆動力源として搭載した電気自動車について例示したが、エンジンをさらに駆動力源として搭載するハイブリッド自動車についても、同様に適用可能である。たとえば、ハイブリッド自動車において、モータジェネレータによる回生制動力およびエンジンブレーキによる機関制動力によってもエンジンブレーキ相当の所定の減速度を確保できない場面において、本発明を適用することが可能である。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。