JP5835727B2 - 耐虫性タンパク質及び該耐虫性タンパク質をコードする耐虫性遺伝子 - Google Patents
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Description
また、微生物、培養細胞、多細胞動植物個体に発現させ回収した耐虫性タンパク質を散布することにより新規の農薬等の耐虫剤として用いることも可能である。
また、Bt毒素に対しては、耐性・抵抗性を持つ昆虫出現の出現が危惧・報告されており、実際コナガ・アワのメイガ等で抵抗性昆虫が出現している。これらのことから、植物由来の耐虫性タンパク質の発見が望まれている。
また、本発明者等は、クワ由来の耐虫性タンパク質であるMLX56を発明し、特許出願している(例えば、特許文献3参照)。
また、バクテリア等に発現させたものを散布する場合でも、多量の耐虫性タンパク質を散布しなければならない欠点があり、散布による耐虫性の効果も緩慢であり害虫防除上問題がある。
そして、他種植物由来のタンパク質性の耐虫性因子を新たに特定するためにトウガンの滲出液中のタンパク質を分画したところ、所定のアミノ酸配列を有するタンパク質が上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
例えば、組換えベクターを宿主細胞や植物細胞に導入することができる。
上記耐虫性タンパク質、上記耐虫性遺伝子又は上記回収タンパク質は、耐虫剤の有効成分として好適に用いられる。
(耐虫性タンパク質)
本発明の耐虫性タンパク質は、配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する。なお、該アミノ酸配列と60%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは95%以上の相同性を有するものが本発明に含まれる。
また、「アミノ酸配列と60%以上の相同性」とは、アミノ酸配列において、60%以上のアミノ酸が同じ配列になっていることを意味する。すなわち、アミノ酸配列において、60%未満の1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入により変換されていてもよいことを意味する。
BLASTとGapped BLASTプログラムを用いる場合は、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる。なお、これらの解析方法の具体的な手法は公知である(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)。
したがって、上記耐虫性タンパク質は、篩部レクチンと60%以上の相同性を有する第1部分アミノ酸配列及び第2部分アミノ酸配列を有するものである。なお、本発明においては、第1部分アミノ酸配列と60%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは95%以上の相同性を有していればよく、第2部分アミノ酸配列と60%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは95%以上の相同性を有していればよい。
この植物としては、特に限定されないが、滲出液を出す植物であることが好ましい。
具体例としては、ウリ科、キク科、キキョウ科、ヒルガオ科、クワ科、トウダイグサ科、ガガイモ科、キョウチクトウ科、バショウ科、ケシ科、ウルシ科、オトギリソウ科、マメ科、サボテン科、ユリ科等の植物が挙げられる。
ウリ科植物の中でも、耐虫性タンパク質は、トウガン葉のトウガンBenincasa hispida滲出液から抽出されたものであることが更に好ましい。この場合、耐虫性タンパク質は滲出液の主要成分であるので、精製が比較的容易となる。
ここで、耐虫用餌とは、餌中に耐虫性物質を含有させ、虫に食べさせることにより、耐虫性を発揮させる餌を意味する。すなわち、上記耐虫性タンパク質は、耐虫性餌として用いられると、人体に被害をもたらす虫や植物の成長を阻害する虫等がそれを食べることにより、虫の成長が阻害され、又は、虫が死滅されることになるので、虫を簡便に取り除くことができる。
この場合、優れた耐虫性を発揮させる観点から、上記別のアミノ酸を含むタンパク質の総量の0.1質量%以上が上記アミノ酸配列になるようにすることが好ましく、0.2質量%以上が上記アミノ酸配列になるようにすることがより好ましい。
ここで、固相法とは、表面をアミノ基で修飾した直径0.1mm程度のポリスチレン高分子ゲルのビーズ等を固相として用い、ここから脱水反応によって1つずつアミノ酸鎖を伸長していき、目的とするアミノ酸配列ができあがったら固相表面から切り出し、目的の物質を得る方法である。
また、液相法とは、合成しようするタンパク質を固相に固定せず、液相で合成を行うものであり、アミノ酸残基を1つ伸長するたびに精製を行う方法である。
まず、ウリ科植物のトウガン滲出液を抽出し、これを上清と粒子層とに分離する。この分離手段としては、特に限定されないが、遠心分離、ろ過等が挙げられる。
これらの中でも、イオン交換クロマトグラフィーを用いることが好ましく、本発明の場合は陰イオン交換クロマトグラフィーを用いることがより好ましい。
そして、得られた画分を、半透膜を用いて脱塩し、濃縮することにより、耐虫性タンパク質を含む活性画分が得られる。なお、陰イオン交換クロマトグラフィーによる分画、脱塩、濃縮は、必要に応じて繰り返して行ってもよい。
本発明の耐虫性遺伝子は、上述した耐虫性タンパク質の配列番号1に示されるアミノ酸配列をコードしたものである。すなわち、本発明の耐虫性遺伝子は、植物由来であり、配列表の配列番号4に示される塩基配列を有する。なお、該塩基配列と60%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは95%以上の相同性を有するものが本発明に含まれる。
また、「塩基配列と60%以上の相同性」とは、塩基配列において、60%以上の塩基配列が同じ配列になっていることを意味する。すなわち、塩基配列において、60%未満の1若しくは複数の塩基が置換、欠失、付加及び/又は挿入により変換されていてもよいことを意味する。
本発明の組換えDNAは、上述した耐虫性遺伝子を組み換えたものであり、遺伝子工学的手法により得られた本発明の遺伝子を含有したDNAである。
例えば、配列表の配列番号1に示される塩基配列からなるDNA分子の中のある部分が切断と再結合により他のDNA分子の一部と混ぜ合わされたものである。
本発明の組換えベクターは、上述した耐虫性遺伝子又は上述した組換えDNAを含有する。
本発明の組換えベクターは、異種の宿主に、上記耐虫性遺伝子又は組換えDNAを運ぶ機能を発揮する。これにより、耐虫性遺伝子又は組換えDNAを他の耐虫性遺伝子に組み込むことができる。
上記組換えベクターには、E.coli−Agrobacteriumシャトルベクター等が用いられる。
本発明の宿主細胞には、上記組換えベクターが導入されている。
宿主細胞としては、組換えタンパク質の発現に適した細胞であれば特に制限はなく、大腸菌の他、例えば、酵母、種々の動物細胞、昆虫細胞等が挙げられる。
例えば、大腸菌への導入には、カルシウムイオンを利用した導入方法(Mandel, M. & Higa, A. (1970) Journal of Molecular Biology, 53, 158-162、Hanahan, D. (1983) Journal of Molecular Biology, 166, 557-580)等が挙げられる。例えば、昆虫(カイコ)の場合、piggyBacをもとに作製した組換えベクターを田村らの方法(Nat.Biotechnol.18,81-84,2000)を利用して形質変換すればよい。
本発明の植物細胞には、上記組換えベクターが導入されている。
植物細胞としては、単子葉植物や双子葉植物の細胞が含まれる。
単子葉植物としては、イネ科植物、ユリ科植物等が挙げられる。
イネ科植物としては、イネ、コムギ、オオムギ、トウモロコシ、エンバク、ソルガム、ライムギ、アワ、サトウキビ等が挙げられる。
ユリ科植物としては、ネギ、アスパラガス等が挙げられる。
双子葉植物としては、アブラナ科植物、マメ科植物、ナス科植物、ウリ科植物、ヒルガオ科植物、バラ科植物、クワ科植物、アオイ科植物等が挙げられる。
アブラナ科植物としては、シロイヌナズナ、ハクサイ、ナタネ、キャベツ、カリフラワー等が挙げられる。
マメ科植物としては、ダイズ、アズキ、インゲンマメ、ササゲ等が挙げられる。
ナス科植物としては、トマト、ナス、ジャガイモ、タバコ、トウガラシ等が挙げられる。
ウリ科植物としては、マクワウリ、キュウリ、メロン、スイカ等が挙げられる。
ヒルガオ科植物としては、アサガオ、カンショ、ヒルガオ等が挙げられる。
バラ科植物としては、バラ、イチゴ、リンゴ等が挙げられる。
クワ科植物としては、クワ、イチジク、ゴムノキ等が挙げられる。
アオイ科植物としては、ワタ、ケナフ等が挙げられる。
また、本発明の植物細胞には、培養細胞の他、植物体中の細胞も含まれる。また、プロトプラスト、苗条原基、多芽体、毛状根も含まれる。
例えば、ポリエチレングリコール法、エレクトロポーレーション、アグロバクテリウムを介する方法、パーティクルガン法等が挙げられる。
本発明の形質変換体は、宿主細胞を含み、上述した組換えベクターを宿主に導入することにより得られる。すなわち、形質変換体は、耐虫性遺伝子又は組換えDNAにより形質変換されたものである。
形質変換植物体は、植物細胞を含み、植物の種類に応じて公知の方法で作製される。なお、かかる植物としては、上述した単子葉植物や双子葉植物が用いられる。
形質変換植物体は、煩雑な農薬散布の作業を省けると共に、茎等の植物組織内部に潜み駆除しにくい害虫に対しても、容易に耐虫性の効果を発揮することが可能となる。
形質変換植物体やその子孫あるいはクローンから繁殖材料(例えば、種子、果実、切穂、塊茎、塊根、株、カルス、プロトプラスト等)を得ることができる。かかる繁殖材料によれば、形質変換植物を量産することも可能となる。
本発明の回収タンパク質は、上記宿主細胞、上記植物細胞、上記形質変換体、上記形質変換植物体から回収される。
例えば、宿主細胞内で発現させた組換えタンパク質は、宿主細胞又はその培養上清から、公知の方法により精製し、タンパク質を回収することが可能である。なお、組換えたタンパク質を上記のマルトース結合タンパク質等との融合タンパク質として発現させた場合には、容易にアフィニティー精製を行うことが可能である。
かかる回収タンパク質は、殺虫剤、農薬、耐虫用餌等の耐虫剤として好適に用いられる。なお、耐虫用餌とは、上述したものと同義である。
本発明の耐虫剤は、上述した耐虫性タンパク質、上述した耐虫性遺伝子、又は、上述した回収タンパク質、を有効成分とする。
20mMのトリス塩酸緩衝液(pH8.2)、5mMのEDTA、及び、10mMのジチオスレイトールからなる混合液に、500μlのウリ科植物のトウガン葉のトウガンBenincasa hispida滲出液を加え、1mlの滲出液を得た。
この滲出液を遠心分離(製品名:KUBOTAインバーターマイクロ冷却遠心機1920、クボタ社製)で遠心分離した。なお、遠心分離の条件は、回転速度8000rps、4℃、15分間とした。
そして、分離された上清を取出し、0.45μmのフィルターでろ過した。
そして、得られた非吸着画分及び吸着画分を脱塩、濃縮して精製タンパク質とした。
得られた精製タンパク質に対しバイオアッセイを行った。すなわち、精製タンパク質を、乾燥粉末1に対して水2.5を加えて蒸した広食性昆虫用人工飼料(商品名:L4M、日本農産工業社製)に対し、0、3.5、7.0、14μg/100mgの濃度で添加混合して耐虫用餌とし、該耐虫用餌をエリサン(ヤママユガ科の広食性の鱗翅目昆虫)孵化幼虫に摂食させ、2日後に体重を測定した。
精製タンパク質の濃度に応じて、エリサンの体重が減ったものは、成長阻害活性があるといえる。
図1に示すように、トウガン滲出液の精製タンパク質からは、成長阻害活性を示す非吸着画分Aと、吸着画分B,Cが認められた。
なお、耐虫性タンパク質であるゲル濾過活性画分Dは、トウガン篩管液1mlから約3.82μg精製された。このように、本発明の耐虫性タンパク質は、比較的多く含まれていることから、精製が容易である。
次に、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)を行った。電気泳動は、400μlのゲル濾過活性画分Dを等量のNative−PAGE緩衝液と混ぜ、さらに、12.5%(体積に対する質量の割合)となるようにポリアミドゲルを投入し、非変性条件(室温(25℃)、pH6.8〜8.8)でNative−PAGE電気泳動を行った。得られた結果を図3に示す。なお、図3の各レーンは左から、サイズマーカー、トウガン篩管液、DEAE−FF非吸着画分A、ゲル濾過活性画分D(還元剤ジチオスレイトール−)、ゲル過活性画分D(50mMジチオスレイトール+)である。
次に、上記ゲル濾過活性画分Dのタンパク質の構造を、内部アミノ酸配列解析及びその結果を元にデザインしたプライマーを用いたcDNAクローニングによって全一次構造を解析した。
明らかになった一次構造(配列番号1)は、Blast検索の結果、ウリ科植物のPhloem lectinと相同性を持っていたが、上述したように、演繹アミノ酸配列から予測される分子量は約35kDaで2量体ではなく単量体であること、Phloem lectinと相同性を示すがシステイン残基を持たないこと、同様の配列が2度繰り返されていること等の特徴を示した。この成分が、Phloem lectinで確認されるようなN−アセチルグルコサミンとの結合といったphloem lectinとしての機能を持つと考えられる。
上記ゲル濾過活性画分Dを、上記広食性昆虫用人工飼料(以下単に「人工飼料」という。)に添加してエリサンに摂食させ、エリサンの体重増加量を調査した。得られた結果を図4に示す。
図4に示すように、本発明の耐虫性タンパク質は、人工飼料中に20%という低濃度(タンパク質量として0.01%)であっても顕著な成長阻害・耐虫性効果を示した。
また、この効果は2日後にも顕著に現れ、2日後でも体重増加が半分程度になるなど短時間で顕著な成長阻害効果を示すことがわかった。
従来のレクチン、プロテアーゼインヒビター、アミラーゼインヒビター、MLX56、本発明の耐虫性タンパク質を上記人工飼料に添加してエリサンに摂食させ、エリサンの体重増加量を調査した。エリサンに対するそれぞれの作用濃度を表1に示す。
しかし、耐虫性遺伝子組み換え植物に用いられているタンパク質は、バクテリア由来のBt毒素に偏重しており、抵抗性害虫の出現を考えると他の植物由来のタンパク質の発見が待たれるが、低濃度で耐虫性を示す有効な耐虫性タンパク質は少ない。このため、本発明の耐虫性タンパク質は将来的に国際的に広く利用される可能性を有している。
本発明の耐虫性タンパク質は、0.01%程度の(他の耐虫性タンパク質に比べても)少量の発現で顕著な耐虫性・昆虫成長阻害活性を示す。この量を植物に発現するのは現在の技術でも十分に可能であり、耐虫性植物の遺伝子育種に利用できる。
また、本タンパク質は(微生物由来でなく)栽培植物由来(一部の国では実や葉に食経験がある)であるため消費者の心理的抵抗感が少ないという利点がある。
B,C・・・吸着画分
D・・・ゲル濾過活性画分
Claims (20)
- 植物由来の耐虫性タンパク質であって、
配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列に対する相同性が95%以上である耐虫性タンパク質。 - 植物由来の耐虫性タンパク質であって、
配列表の配列番号2に示される第1部分アミノ酸配列と95%以上の相同性を有するアミノ酸配列及び配列表の配列番号3に示される第2部分アミノ酸配列と95%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなる群より選ばれる少なくとも1つのアミノ酸配列を2以上含む耐虫性タンパク質。 - 前記植物がウリ科植物であり、該ウリ科植物の滲出液から抽出される請求項1又は2に記載の耐虫性タンパク質。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐虫性タンパク質をコードする耐虫性遺伝子。
- 植物由来の耐虫性遺伝子であって、
配列表の配列番号4に示される塩基配列に対する相同性が95%以上である耐虫性遺伝子。 - 請求項4又は5に記載の耐虫性遺伝子を組み換えた組換えDNA。
- 請求項4又は5に記載の耐虫性遺伝子又は請求項6記載の組換えDNAを含有する組換えベクター。
- 請求項7記載の組換えベクターが導入された宿主細胞。
- 請求項7記載の組換えベクターが導入された植物細胞。
- 請求項8記載の宿主細胞を含む形質転換体。
- 請求項10記載の形質転換体の子孫又はクローンである形質転換体。
- 請求項9記載の植物細胞を含む形質転換植物体。
- 請求項12記載の形質転換植物体の子孫又はクローンである形質転換植物体。
- 請求項12又は13に記載の形質転換植物体から得られる繁殖材料。
- 請求項8記載の宿主細胞により回収された耐虫性タンパク質。
- 請求項9記載の植物細胞により回収された耐虫性タンパク質。
- 請求項10又は11に記載の形質転換体若しくは請求項12又は13に記載の形質転換植物体により回収された耐虫性タンパク質。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐虫性タンパク質を有効成分とする耐虫剤。
- 請求項4又は5に記載の耐虫性遺伝子を有効成分とする耐虫剤。
- 請求項15〜17のいずれか1項に記載の耐虫性タンパク質を有効成分とする耐虫剤。
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