JP5835727B2 - 耐虫性タンパク質及び該耐虫性タンパク質をコードする耐虫性遺伝子 - Google Patents

耐虫性タンパク質及び該耐虫性タンパク質をコードする耐虫性遺伝子 Download PDF

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Description

本発明は、耐虫性タンパク質、該耐虫性タンパク質をコードする耐虫性遺伝子、該耐虫性遺伝子を組み換えた組換えDNA、これらを含有する組換えベクター、組換えベクターが導入された宿主細胞及び植物細胞、宿主細胞を含む形質変換体及びその子孫又はクローンである形質変換体、植物細胞を含む形質変換植物体及びその子孫又はクローンである形質変換植物体、形質変換植物体の繁殖材料、これらにより回収された回収タンパク質、並びに、これらを有効成分とする耐虫剤に関する。
耐虫性を有するタンパク質(以下「耐虫性タンパク質」という。)は、植物に耐虫性の遺伝子を導入し、耐虫性植物の遺伝育種を行う上で必要不可欠な素材である。
また、微生物、培養細胞、多細胞動植物個体に発現させ回収した耐虫性タンパク質を散布することにより新規の農薬等の耐虫剤として用いることも可能である。
現在、産業上広く用いられている耐虫性タンパク質としてはグラム陽性細菌であるBacillus thuringiensisが生産するBt毒素(タンパク質)が挙げられる。かかるBt毒素は低濃度(1ppm程度)で殺虫・耐虫性活性を示すことが知られている(例えば、非特許文献1又は2参照)。
ところが、上記Bt毒素は、バクテリア由来であり、遺伝子組み換え作業等、組換え体の遺伝子資源として使用するのに根強い抵抗感がある。
また、Bt毒素に対しては、耐性・抵抗性を持つ昆虫出現の出現が危惧・報告されており、実際コナガ・アワのメイガ等で抵抗性昆虫が出現している。これらのことから、植物由来の耐虫性タンパク質の発見が望まれている。
これに対し、植物由来の耐虫性タンパク質としては、ササゲ由来のプロテアーゼインヒビター(例えば、特許文献1又は非特許文献3参照)や、インゲン由来のアミラーゼインヒビター(例えば、非特許文献4参照)や、スノードロップ由来のレクチン(例えば、特許文献2又は非特許文献5参照)が知られている。
また、本発明者等は、クワ由来の耐虫性タンパク質であるMLX56を発明し、特許出願している(例えば、特許文献3参照)。
米国特許第4640836号公報 米国特許第5545820号公報 特開2008−245640号公報
Canadian Journal of Microbiology 51, 988-995(2005) Journal of Pesticide Reform 14, 13-20 (1994) Pest Management Science 57, 57-65(2001) Plant Physiology 107,1233-1239(1995) Journal of InsectPhysiology 43, 727-739(1997)
しかしながら、特許文献1又は非特許文献3に記載のプロテアーゼインヒビター、非特許文献4に記載のアミラーゼインヒビター)、特許文献2又は非特許文献5に記載のレクチンは、いずれも耐虫性活性が弱いという欠点がある。すなわち、プロテアーゼインヒビターは、総タンパク質の2%にも達する高濃度で加えても蛾の幼虫の成長を2週間で半分にした程度にしか耐虫性活性を発揮しない。アミラーゼインヒビターは、エンドウに発現させた場合で豆の総可溶性タンパク質の2〜3%と多量に発現させてやっと7割のマメゾウムシが途中で死ぬが、3割は正常に育ってしまう。また、1%だと8割以上が正常に成虫まで成育してしまう。レクチンは、人工飼料に総タンパク質量の2%濃度と多量に加えた餌を蛾幼虫に一月食べさせても体重が20〜50%軽くなる程度にしか耐虫性活性を発揮しない。
一方で、多量(%オーダー)の耐虫性タンパク質を植物に発現させることは、植物にとって負担であり、該植物の成長に悪影響を与えかねない。
また、バクテリア等に発現させたものを散布する場合でも、多量の耐虫性タンパク質を散布しなければならない欠点があり、散布による耐虫性の効果も緩慢であり害虫防除上問題がある。
なお、本発明者等は、クワ由来の耐虫性タンパク質であるMLX56を発明しているが、いずれ耐性・抵抗性を持つ昆虫等が出現する可能性があることを考慮すると、別の種類の新たな耐虫性タンパク質を発明することが求められている。
本発明は、少量であっても虫に対して十分な耐虫性を示す耐虫性タンパク質、該耐虫性タンパク質をコードする耐虫性遺伝子、該耐虫性遺伝子を組み換えた組換えDNA、これらを含有する組換えベクター、組換えベクターが導入された宿主細胞及び植物細胞、組換えベクターを宿主に導入した形質変換体、これらにより回収された回収タンパク質、並びに、これらを有効成分とする耐虫剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、トウガン葉が他のウリ科植物葉に比べてエリサンに対して顕著な耐虫性(毒性・成長阻害活性)を示し、その耐虫性が滲出液に含まれる高分子因子(タンパク質)に起因することを見出した。なお、滲出液とは、植物の傷口より滲み出てくる液体を意味し、例えば、乳液や篩管滲出液等が挙げられる。
そして、他種植物由来のタンパク質性の耐虫性因子を新たに特定するためにトウガンの滲出液中のタンパク質を分画したところ、所定のアミノ酸配列を有するタンパク質が上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、(1)植物由来の耐虫性タンパク質であって、配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列に対する相同性が95%以上である耐虫性タンパク質に存する。
本発明は、(2)植物由来の耐虫性タンパク質であって、配列表の配列番号2に示される第1部分アミノ酸配列と95%以上の相同性を有するアミノ酸配列及び配列表の配列番号3に示される第2部分アミノ酸配列と95%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなる群より選ばれる少なくとも1つのアミノ酸配列を2以上含む耐虫性タンパク質に存する。
本発明は、(3)植物がウリ科植物であり、該ウリ科植物の滲出液から抽出される上記(1)又は(2)に記載の耐虫性タンパク質に存する。
本発明は、(4)上記(1)〜()のいずれか1つに記載の耐虫性タンパク質をコードする耐虫性遺伝子に存する。
本発明は、(5)植物由来の耐虫性遺伝子であって、配列表の配列番号4に示される塩基配列に対する相同性が95%以上である耐虫性遺伝子に存する。
本発明は、(6)上記(4)又は(5)に記載の耐虫性遺伝子を組み換えた組換えDNAに存する。
本発明は、(7)上記(4)又は(5)に記載の耐虫性遺伝子又は上記(6)記載の組換えDNAを含有する組換えベクターに存する。
本発明は、(8)上記(7)記載の組換えベクターが導入された宿主細胞に存する。
本発明は、(9)上記(7)記載の組換えベクターが導入された植物細胞に存する。
本発明は、(10)上記(8)記載の宿主細胞を含む形質転換体に存する。
本発明は、(11)上記(10)記載の形質転換体の子孫又はクローンである形質転換体に存する。
本発明は、(12)上記(9)記載の植物細胞を含む形質転換植物体に存する。
本発明は、(13)上記(12)記載の形質転換植物体の子孫又はクローンである形質転換植物体に存する。
本発明は、(14)上記(12)又は(13)に記載の形質転換植物体から得られる繁殖材料に存する。
本発明は、(15)上記(8)記載の宿主細胞により回収された耐虫性タンパク質に存する。
本発明は、(16)上記(9)記載の植物細胞により回収された耐虫性タンパク質に存する。
本発明は、(17)上記(10)又は(11)に記載の形質転換体若しくは上記(12)又は(13)に記載の形質転換植物体により回収された耐虫性タンパク質に存する。
本発明は、(18)上記(1)〜(3)のいずれか1つに記載の耐虫性タンパク質を有効成分とする耐虫剤に存する。
本発明は、(19)上記(4)又は(5)に記載の耐虫性遺伝子を有効成分とする耐虫剤に存する。
本発明は、(20)上記(15)(17)のいずれか1つに記載の耐虫性タンパク質を有効成分とする耐虫剤に存する。
本発明の耐虫性タンパク質によれば、篩部レクチン(Phloem lectin)と60%以上の相同性を有するものとすることで、極めて低濃度(例えば、人工飼料の湿体あたり0.01%)であっても、十分な耐虫性を発揮することができる。
本発明の耐虫性タンパク質によれば、配列表の配列番号2に示される第1部分アミノ酸配列と60%以上の相同性を有するアミノ酸配列及び配列表の配列番号3に示される第2部分アミノ酸配列と60%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなる群より選ばれる少なくとも1つのアミノ酸配列を2以上含むものとすることで、上記同様、極めて低濃度であっても、十分な耐虫性を発揮することができる。
本発明の耐虫性タンパク質によれば、配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列に対する相同性が60%以上である耐虫性タンパク質とすることで、少量であっても虫に対してより十分な耐虫性を示す。
本発明の耐虫性タンパク質は、植物がウリ科植物であり、該ウリ科植物の滲出液から抽出されるものであると、該篩管液中の主要成分として含まれるので、精製が比較的容易となる。
本発明の耐虫性遺伝子は上述した耐虫性タンパク質をコードしたものである。例えば、配列表の配列番号4に示される塩基配列に対する相同性が60%以上である耐虫性遺伝子によれば、植物、微生物、培養細胞、多細胞動植物、昆虫等の生物に遺伝子導入を行い遺伝子耐虫性植物の遺伝育種を行うことにより、得られる遺伝子耐虫性生物は、十分な耐虫性を発揮するものとなる。なお、耐虫性遺伝子を組み換えた組換えDNA、及び、配列表の配列番号4に示される塩基配列を含む第1DNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズされている第2DNA、又は、該第2DNAと相補的な塩基配列を有する第3DNA、を含む耐虫性遺伝子、も同様の効果を奏する。
本発明の組換えベクターは、異種の宿主に、上記耐虫性遺伝子又は組換えDNAを運ぶ機能を発揮する。これにより、耐虫性遺伝子又は組換えDNAを他の遺伝子に組み込むことができる。
例えば、組換えベクターを宿主細胞や植物細胞に導入することができる。
本発明の形質変換体は、宿主細胞を含む。また、その子孫又はクローンを含む。例えば、耐虫性遺伝子又は組換えDNAにより形質変換された大腸菌に、耐虫性を発現させることが可能である。
本発明の形質変換植物体は、植物細胞を含む。また、その子孫又はクローンを含む。例えば、耐虫性遺伝子又は組換えDNAにより形質変換された植物には、煩雑な農薬散布の作業を省けると共に、茎等の植物組織内部に潜み、駆除しにくい害虫に対しても、容易に効果を発揮することができる。
なお、宿主細胞、植物細胞、形質変換体又は形質変換植物体により回収された回収タンパク質においても、十分な耐虫性を発揮する。
本発明の繁殖材料は、形質変換植物体から得られるので、十分な耐虫性を発揮する。
本発明の耐虫剤によれば、人体に被害をもたらす虫や植物の成長を阻害する虫等を簡便に取り除くことができる。
上記耐虫性タンパク質、上記耐虫性遺伝子又は上記回収タンパク質は、耐虫剤の有効成分として好適に用いられる。
図1は、本発明の実施例で得られた非吸着画分及び吸着画分の成長阻害活性を示すグラフである。 図2は、本発明の実施例で得られた非吸着画分の中のゲル濾過活性画分の成長阻害活性を示すグラフである。 図3は、本発明の実施例におけるゲル濾過活性画分のNative−PAGE電気泳動の結果を示した図である。 図4は、本発明の実施例における耐虫性試験の結果を示したグラフである。
本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
(耐虫性タンパク質)
本発明の耐虫性タンパク質は、配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する。なお、該アミノ酸配列と60%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは95%以上の相同性を有するものが本発明に含まれる。
ここで、本発明において、「耐虫性」とは、殺虫性又は虫の成長を阻害する特性(成長阻害性)を意味する。
また、「アミノ酸配列と60%以上の相同性」とは、アミノ酸配列において、60%以上のアミノ酸が同じ配列になっていることを意味する。すなわち、アミノ酸配列において、60%未満の1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入により変換されていてもよいことを意味する。
アミノ酸配列の相同性は、カーリン及びアルチュールによるアルゴリズムBLAST(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264-2268, 1990、Proc Natl Acad Sci USA 90: 5873, 1993)を用いて決定できる。ちなみに、BLASTのアルゴリズムに基づいたBLASTNやBLASTXと呼ばれるプログラムが開発されている(Altschul SF, et al: J Mol Biol 215: 403, 1990)。
BLASTXを用いてアミノ酸配列を解析する場合、パラメーターは、例えばscore=50、wordlength=3とする。
BLASTとGapped BLASTプログラムを用いる場合は、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる。なお、これらの解析方法の具体的な手法は公知である(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)。
本発明の耐虫性タンパク質は、配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列の8残基目から155残基目及び156残基目から303残基目で、篩部レクチン(Phloem lectin)と60%以上の相同性を有する。すなわち、本発明の耐虫性タンパク質は、アミノ酸配列に、篩部レクチンとしてのモチーフが略保存されていることから、篩部レクチンファミリーに属するタンパク質であるといえる。
配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列(以下「第1部分アミノ酸配列」という。)は、配列番号1に示されるアミノ酸配列の8残基目から155残基目であり、配列表の配列番号3に示されるアミノ酸配列(以下「第2部分アミノ酸配列」という。)は、配列番号1に示されるアミノ酸配列の156残基目から303残基目である。
したがって、上記耐虫性タンパク質は、篩部レクチンと60%以上の相同性を有する第1部分アミノ酸配列及び第2部分アミノ酸配列を有するものである。なお、本発明においては、第1部分アミノ酸配列と60%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは95%以上の相同性を有していればよく、第2部分アミノ酸配列と60%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは95%以上の相同性を有していればよい。
ここで、本発明の耐虫性タンパク質においては、第1部分アミノ酸配列と60%以上の相同性を有するアミノ酸配列及び第2部分アミノ酸配列と60%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなる群より選ばれる少なくとも1つのアミノ酸配列を2以上含んでいればよい。すなわち、第1部分アミノ酸配列のみが複数含まれていてもよく、第2部分アミノ酸配列のみが複数含まれていてもよく、第1部分アミノ酸配列及び第2部分アミノ酸配列が含まれていてもよい。この場合、極めて低濃度であっても、十分な耐虫性を発揮することができる。
なお、第1部分アミノ酸配列及び第2部分アミノ酸配列は、システイン残基が存在しないという特徴を有している。ちなみに、既知の篩部レクチンは、ジスルフィド結合によって他の分子との相互作用をしていると考えられるため、システイン残基を有している。このため、上記耐虫性タンパク質は、新規の作用機構で耐虫性を発現しているものと考えられる。例えば、昆虫消化管内に存在する囲食膜の主要構成成分の一つがキチンであることから、囲食膜が耐虫活性に関係しているとも考えられる。
本発明の耐虫性タンパク質は、植物由来のタンパク質であることが好ましい。この場合、バクテリア由来に比べて、消費者に抵抗性が少ない。
この植物としては、特に限定されないが、滲出液を出す植物であることが好ましい。
具体例としては、ウリ科、キク科、キキョウ科、ヒルガオ科、クワ科、トウダイグサ科、ガガイモ科、キョウチクトウ科、バショウ科、ケシ科、ウルシ科、オトギリソウ科、マメ科、サボテン科、ユリ科等の植物が挙げられる。
これらの中でも、上記植物がウリ科植物であることが好ましい。すなわち、上記耐虫性タンパク質は、ウリ科植物の滲出液から抽出されたものであることがより好ましい。
ウリ科植物の中でも、耐虫性タンパク質は、トウガン葉のトウガンBenincasa hispida滲出液から抽出されたものであることが更に好ましい。この場合、耐虫性タンパク質は滲出液の主要成分であるので、精製が比較的容易となる。
上記耐虫性タンパク質によれば、極めて低濃度であっても、十分な耐虫性を発揮する。なお、上記耐虫性タンパク質が耐虫性活性を示す虫としては、例えば、鞘翅目、鱗翅目、双翅目、膜翅目、半翅目、直翅目、蜻翅目等の種類の昆虫、ダニ等の節足動物が挙げられる。
上記耐虫性タンパク質は、殺虫剤、農薬、耐虫用餌等の耐虫剤として好適に用いられる。
ここで、耐虫用餌とは、餌中に耐虫性物質を含有させ、虫に食べさせることにより、耐虫性を発揮させる餌を意味する。すなわち、上記耐虫性タンパク質は、耐虫性餌として用いられると、人体に被害をもたらす虫や植物の成長を阻害する虫等がそれを食べることにより、虫の成長が阻害され、又は、虫が死滅されることになるので、虫を簡便に取り除くことができる。
上記耐虫性タンパク質においては、配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列の両末端に、別のアミノ酸が接続されていてもよい。
この場合、優れた耐虫性を発揮させる観点から、上記別のアミノ酸を含むタンパク質の総量の0.1質量%以上が上記アミノ酸配列になるようにすることが好ましく、0.2質量%以上が上記アミノ酸配列になるようにすることがより好ましい。
本発明の耐虫性タンパク質には、配列番号1に示されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする変異体、誘導体、アレル、バリアント及びホモログ等も含まれる。
このようなアミノ酸配列に係るDNAを調製するための方法としては、例えば、site−directed mutagenesis法(Kramer, W. & Fritz, H.-J. (1987) Oligonucleotide-directed construction of mutagenesis via gapped duplex DNA. Methods in Enzymology, 154: 350-367)等が挙げられる。
本発明の耐虫性タンパク質は、固相法や液相法、生物的な合成方法により合成することができる。
ここで、固相法とは、表面をアミノ基で修飾した直径0.1mm程度のポリスチレン高分子ゲルのビーズ等を固相として用い、ここから脱水反応によって1つずつアミノ酸鎖を伸長していき、目的とするアミノ酸配列ができあがったら固相表面から切り出し、目的の物質を得る方法である。
また、液相法とは、合成しようするタンパク質を固相に固定せず、液相で合成を行うものであり、アミノ酸残基を1つ伸長するたびに精製を行う方法である。
生物的な合成方法とは、大量発現にふさわしいプロモーターの支配下に合成しようとするタンパク質の遺伝暗号をもつ翻訳領域を結合させた人工的なDNAを構築し、大腸菌、酵母、昆虫もしくは脊椎動物の培養細胞に合成させる方法である。なお、必ずしも生きた細胞を用いるとは限らず、遺伝子の転写及び翻訳に関わる因子を全て含む細胞抽出物を用いた無細胞転写翻訳系を用いる場合を含む。
本発明の耐虫性タンパク質は、以下のようにして精製される。
まず、ウリ科植物のトウガン滲出液を抽出し、これを上清と粒子層とに分離する。この分離手段としては、特に限定されないが、遠心分離、ろ過等が挙げられる。
分離手段として、遠心分離を行う場合、遠心力は、15000〜20000Gとすることが好ましく、1〜60分間回転させることが好ましい。そうすると、所望のタンパク質が少なくとも5%(体積(ml)に対する質量(g)の割合)以上含まれる上清が得られる。なお、得られた上清は、遠心分離後、孔径0.1〜0.8μmのフィルターでろ過することが好ましい。これにより、コンタミ等の不純物を確実に除去できる。
次いで、得られた上清から本発明の耐虫性タンパク質を抽出する。かかる抽出手段としては、ゲル濾過クロマトグラフィー、電気泳動、イオン交換クロマトグラフィー等が挙げられる。
これらの中でも、イオン交換クロマトグラフィーを用いることが好ましく、本発明の場合は陰イオン交換クロマトグラフィーを用いることがより好ましい。
そして、得られた画分を、半透膜を用いて脱塩し、濃縮することにより、耐虫性タンパク質を含む活性画分が得られる。なお、陰イオン交換クロマトグラフィーによる分画、脱塩、濃縮は、必要に応じて繰り返して行ってもよい。
(耐虫性遺伝子)
本発明の耐虫性遺伝子は、上述した耐虫性タンパク質の配列番号1に示されるアミノ酸配列をコードしたものである。すなわち、本発明の耐虫性遺伝子は、植物由来であり、配列表の配列番号4に示される塩基配列を有する。なお、該塩基配列と60%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは95%以上の相同性を有するものが本発明に含まれる。
ここで、「耐虫性遺伝子」とは、耐虫性の遺伝形質を規定する因子をいう。通常、染色体上に一定の順序に配列している。
また、「塩基配列と60%以上の相同性」とは、塩基配列において、60%以上の塩基配列が同じ配列になっていることを意味する。すなわち、塩基配列において、60%未満の1若しくは複数の塩基が置換、欠失、付加及び/又は挿入により変換されていてもよいことを意味する。
なお、塩基配列の相同性は、カーリン及びアルチュールによるアルゴリズムBLAST(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264-2268, 1990、Proc Natl Acad Sci USA 90: 5873, 1993)を用いて決定できる。
BLASTXを用いて塩基配列を解析する場合、パラメーターは、例えばscore=100、wordlength=12とする。BLASTとGapped BLASTプログラムを用いる場合は、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる。
上記耐虫性遺伝子において、配列表の配列番号4に示される塩基配列は、トウガン葉柄組織由来全RNAを鋳型にして、逆転写反応を行い、得られたcDNAを用い、精製タンパク質より同定したN末端アミノ酸配列より設計したdegenerate primerを利用したPCRにより同定される。
上記耐虫性遺伝子によれば、植物、微生物、培養細胞、多細胞動植物、昆虫等の生物に遺伝子導入を行い遺伝子耐虫性生物の遺伝育種を行うことにより、得られる遺伝子耐虫性生物は、十分な耐虫性を発揮するものとなる。
上記耐虫性遺伝子は、殺虫剤、農薬、耐虫用餌等の耐虫剤として好適に用いられる。なお、耐虫用餌とは、上述したものと同義である。
本発明の耐虫性遺伝子には、配列番号4に示される塩基配列において1若しくは複数の塩基が置換、欠失、付加及び/又は挿入された塩基配列からなる変異体、誘導体、アレル、バリアント及びホモログ等も含まれる。
また、このような塩基配列に係るDNAを調製するための当業者によく知られた方法としては、例えば、site−directed mutagenesis法(Kramer, W.& Fritz,H.-J. (1987) Oligonucleotide-directed construction of mutagenesis via gapped duplex DNA.Methods in Enzymology, 154:350-367)等がある。
上記耐虫性遺伝子は、配列表の配列番号4に示される塩基配列を含むDNA(以下便宜的に「第1DNA」という。)とストリンジェントな条件下でハイブリダイズされているDNA(以下便宜的に「第2DNA」という。)、又は、該第2DNAと相補的な塩基配列を有するものも含む。すなわち、配列番号4に示される塩基配列からなるDNAをプローブとし、配列番号4に示される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAをプライマーとして、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることにより、配列番号4に示される塩基配列と高い相同性を有する塩基配列からなるDNAを単離することができる。なお、本発明において、「DNA」には、ゲノムDNA、cDNA、及び化学合成DNAが含まれる。また、ゲノムDNA及びcDNAの調製は、公知の方法で行えばよい。
ここで、「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズ」とは、6M尿素、0.4%SDS、0.5xSSCの条件又はこれと同等のストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件を意味する。なお、よりストリンジェンシーの高い条件、例えば、6M尿素、0.4%SDS、0.1xSSCの条件とすることにより、より相同性の高いDNAの単離が可能となる。さらに、それぞれの条件において、温度は約40℃以上とすればよく、よりストリンジェンシーの高い条件が必要であれば、温度は約50℃、さらに約65℃とすればよい。
なお、ハイブリダイゼーションするハイブリダイゼーション技術(Southern, E.M. (1975) Journal of Molecular Biology, 98, 503)の代わりに、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術(Saiki, R. K. et al. (1985) Science, 230, 1350-1354、Saiki, R. K. et al. (1988) Science, 239, 487-491)を用いてもよい。
(組換えDNA)
本発明の組換えDNAは、上述した耐虫性遺伝子を組み換えたものであり、遺伝子工学的手法により得られた本発明の遺伝子を含有したDNAである。
例えば、配列表の配列番号1に示される塩基配列からなるDNA分子の中のある部分が切断と再結合により他のDNA分子の一部と混ぜ合わされたものである。
(組換えベクター)
本発明の組換えベクターは、上述した耐虫性遺伝子又は上述した組換えDNAを含有する。
本発明の組換えベクターは、異種の宿主に、上記耐虫性遺伝子又は組換えDNAを運ぶ機能を発揮する。これにより、耐虫性遺伝子又は組換えDNAを他の耐虫性遺伝子に組み込むことができる。
上記組換えベクターには、E.coli−Agrobacteriumシャトルベクター等が用いられる。
(宿主細胞)
本発明の宿主細胞には、上記組換えベクターが導入されている。
宿主細胞としては、組換えタンパク質の発現に適した細胞であれば特に制限はなく、大腸菌の他、例えば、酵母、種々の動物細胞、昆虫細胞等が挙げられる。
宿主細胞への組換えベクターの導入には、公知の方法を用いればよい。
例えば、大腸菌への導入には、カルシウムイオンを利用した導入方法(Mandel, M. & Higa, A. (1970) Journal of Molecular Biology, 53, 158-162、Hanahan, D. (1983) Journal of Molecular Biology, 166, 557-580)等が挙げられる。例えば、昆虫(カイコ)の場合、piggyBacをもとに作製した組換えベクターを田村らの方法(Nat.Biotechnol.18,81-84,2000)を利用して形質変換すればよい。
(植物細胞)
本発明の植物細胞には、上記組換えベクターが導入されている。
植物細胞としては、単子葉植物や双子葉植物の細胞が含まれる。
単子葉植物としては、イネ科植物、ユリ科植物等が挙げられる。
イネ科植物としては、イネ、コムギ、オオムギ、トウモロコシ、エンバク、ソルガム、ライムギ、アワ、サトウキビ等が挙げられる。
ユリ科植物としては、ネギ、アスパラガス等が挙げられる。
双子葉植物としては、アブラナ科植物、マメ科植物、ナス科植物、ウリ科植物、ヒルガオ科植物、バラ科植物、クワ科植物、アオイ科植物等が挙げられる。
アブラナ科植物としては、シロイヌナズナ、ハクサイ、ナタネ、キャベツ、カリフラワー等が挙げられる。
マメ科植物としては、ダイズ、アズキ、インゲンマメ、ササゲ等が挙げられる。
ナス科植物としては、トマト、ナス、ジャガイモ、タバコ、トウガラシ等が挙げられる。
ウリ科植物としては、マクワウリ、キュウリ、メロン、スイカ等が挙げられる。
ヒルガオ科植物としては、アサガオ、カンショ、ヒルガオ等が挙げられる。
バラ科植物としては、バラ、イチゴ、リンゴ等が挙げられる。
クワ科植物としては、クワ、イチジク、ゴムノキ等が挙げられる。
アオイ科植物としては、ワタ、ケナフ等が挙げられる。
また、本発明の植物細胞には、培養細胞の他、植物体中の細胞も含まれる。また、プロトプラスト、苗条原基、多芽体、毛状根も含まれる。
植物細胞への組換えベクターの導入には、公知の方法を用いればよい。
例えば、ポリエチレングリコール法、エレクトロポーレーション、アグロバクテリウムを介する方法、パーティクルガン法等が挙げられる。
(形質変換体)
本発明の形質変換体は、宿主細胞を含み、上述した組換えベクターを宿主に導入することにより得られる。すなわち、形質変換体は、耐虫性遺伝子又は組換えDNAにより形質変換されたものである。
ゲノム内に本発明の耐虫性遺伝子又は組換えDNA、或いは、これらの遺伝子の発現を抑制するDNAが導入された形質変換体が得られれば、形質変換体から有性生殖又は無性生殖により子孫又はクローンを得ることが可能となる。
(形質変換植物体)
形質変換植物体は、植物細胞を含み、植物の種類に応じて公知の方法で作製される。なお、かかる植物としては、上述した単子葉植物や双子葉植物が用いられる。
形質変換植物体は、煩雑な農薬散布の作業を省けると共に、茎等の植物組織内部に潜み駆除しにくい害虫に対しても、容易に耐虫性の効果を発揮することが可能となる。
例えば、形質変換植物体を得る方法としては、ポリエチレングリコールによりプロトプラストへ耐虫性遺伝子又は組換えDNAを導入し、植物体を再生させる方法(Datta,S.K. (1995) In Gene Transfer ToPlants(Potrykus I and Spangenberg Eds.) pp66-74)、電気パルスによりプロトプラストへ耐虫性遺伝子又は組換えDNAを導入し、植物体を再生させる方法(Toki et al. (1992) Plant Physiol. 100, 1503-1507)、減圧処理又は加圧処理とエレクトロポーレーションとにより細胞又は組織へ耐虫性遺伝子又は組換えDNAを導入し、植物体を再生させる方法(減圧処理/加圧処理の使用を含むエレクトロポーレーション方法(特許第4273231号))、パーティクルガン法により細胞へ耐虫性遺伝子又は組換えDNAを直接導入し、植物体を再生させる方法(Christou et al. (1991) Bio/technology, 9:957-962.)及びアグロバクテリウムを介して耐虫性遺伝子又は組換えDNAを導入し、植物体を再生させる方法(超迅速単子葉形質転換法(特許第3141084号))等が挙げられる。
形質変換された植物細胞は、再分化させることにより植物体を再生させることが可能である。なお、再分化の方法としては、植物細胞の種類により異なるが、例えば、シロイヌナズナであればAkama等(Plant Cell Reports12:7-11 (1992))の方法が挙げられ、イネであればFujimura等(Plant Tissue Culture Lett. 2:74 (1995))の方法が挙げられる。
ゲノム内に本発明の耐虫性遺伝子又は組換えDNA、或いは、これらの遺伝子の発現を抑制するDNAが導入された形質変換植物体が得られれば、形質変換植物体から有性生殖又は無性生殖により子孫又はクローンを得ることが可能となる。なお、上記形質変換植物には、耐虫性遺伝子が導入された植物のみならず、耐虫性タンパク質の調製のために耐虫性遺伝子が導入されたものも含まれる。
(繁殖材料)
形質変換植物体やその子孫あるいはクローンから繁殖材料(例えば、種子、果実、切穂、塊茎、塊根、株、カルス、プロトプラスト等)を得ることができる。かかる繁殖材料によれば、形質変換植物を量産することも可能となる。
(回収タンパク質)
本発明の回収タンパク質は、上記宿主細胞、上記植物細胞、上記形質変換体、上記形質変換植物体から回収される。
例えば、宿主細胞内で発現させた組換えタンパク質は、宿主細胞又はその培養上清から、公知の方法により精製し、タンパク質を回収することが可能である。なお、組換えたタンパク質を上記のマルトース結合タンパク質等との融合タンパク質として発現させた場合には、容易にアフィニティー精製を行うことが可能である。
本発明の耐虫性遺伝子が導入された形質変換体である微生物、培養細胞、多細胞動植物、昆虫等を作製し、該形質変換体に発現させ回収タンパク質を回収できる。
かかる回収タンパク質は、殺虫剤、農薬、耐虫用餌等の耐虫剤として好適に用いられる。なお、耐虫用餌とは、上述したものと同義である。
(耐虫剤)
本発明の耐虫剤は、上述した耐虫性タンパク質、上述した耐虫性遺伝子、又は、上述した回収タンパク質、を有効成分とする。
上記耐虫性タンパク質を耐虫剤の有効成分として用いる場合、耐虫性タンパク質を含む微生物、植物、動物等の生物を粗精製又は精製したもの、また、該生物に耐虫性タンパク質を発現させたものから生化学的手法で耐虫性タンパク質を粗精製又は精製したものが用いられる。なお、これらの粗精製又は精製したものを、精製耐虫性タンパク質という。
精製耐虫性タンパク質の形態は、液状、粉状、顆粒状、錠剤等で用いられる。なお、これらの耐虫剤には、増量剤、展着剤等を適宜加えてもよい。
耐虫剤に含まれる精製耐虫性タンパク質の含有割合は、耐虫剤全量に対して、0.01質量%以上であればよく、確実性の観点から0.02質量%以上であることが好ましい。
上記耐虫性遺伝子を耐虫剤の有効成分として用いる場合、耐虫性遺伝子を含む微生物、植物、動物等の生物を粗精製又は精製したもの、また、該生物に耐虫性遺伝子を発現させたものから生化学的手法で耐虫性遺伝子を粗精製又は精製したものが用いられる。
上記回収タンパク質を耐虫剤の有効成分として用いる場合、宿主細胞、植物細胞、形質変換体、形質変換植物体から回収された回収タンパク質を粗精製又は精製したものが用いられる。なお、これらの粗精製又は精製したものを、精製回収タンパク質という。
精製回収タンパク質の形態は、液状、粉状、顆粒状、錠剤等で用いられる。なお、これらの耐虫剤には、増量剤、展着剤等を適宜加えてもよい
これらの耐虫剤によれば、人体に被害をもたらす虫や植物の成長を阻害する虫等を簡便に取り除くことができる。
以下、本発明を実施例で具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(耐虫性タンパク質の精製)
20mMのトリス塩酸緩衝液(pH8.2)、5mMのEDTA、及び、10mMのジチオスレイトールからなる混合液に、500μlのウリ科植物のトウガン葉のトウガンBenincasa hispida滲出液を加え、1mlの滲出液を得た。
この滲出液を遠心分離(製品名:KUBOTAインバーターマイクロ冷却遠心機1920、クボタ社製)で遠心分離した。なお、遠心分離の条件は、回転速度8000rps、4℃、15分間とした。
そして、分離された上清を取出し、0.45μmのフィルターでろ過した。
次に、上清を陰イオン交換クロマトグラフィー(製品名:HiTrap DEAE-FF、GEヘルスケアジャパン社製)を用いて、非吸着画分及び吸着画分を得た。
そして、得られた非吸着画分及び吸着画分を脱塩、濃縮して精製タンパク質とした。
(バイオアッセイ)
得られた精製タンパク質に対しバイオアッセイを行った。すなわち、精製タンパク質を、乾燥粉末1に対して水2.5を加えて蒸した広食性昆虫用人工飼料(商品名:L4M、日本農産工業社製)に対し、0、3.5、7.0、14μg/100mgの濃度で添加混合して耐虫用餌とし、該耐虫用餌をエリサン(ヤママユガ科の広食性の鱗翅目昆虫)孵化幼虫に摂食させ、2日後に体重を測定した。
精製タンパク質の濃度に応じて、エリサンの体重が減ったものは、成長阻害活性があるといえる。
図1に、得られた非吸着画分及び吸着画分の成長阻害活性を示す。
図1に示すように、トウガン滲出液の精製タンパク質からは、成長阻害活性を示す非吸着画分Aと、吸着画分B,Cが認められた。
次に、非吸着画分Aを分取、濃縮し、さらに、該非吸着画分Aをゲル濾過クロマトグラフィー(製品名:Superdex 75G、GEヘルスケアジャパン社製)を用いて、活性画分(以下便宜的に「ゲル濾過活性画分」という。)Dを単離した。得られたゲル濾過活性画分Dを脱塩、濃縮した後、上記同様、バイオアッセイを行った。得られた非吸着画分の中のゲル濾過活性画分の成長阻害活性を図2に示す。
なお、耐虫性タンパク質であるゲル濾過活性画分Dは、トウガン篩管液1mlから約3.82μg精製された。このように、本発明の耐虫性タンパク質は、比較的多く含まれていることから、精製が容易である。
(電気泳動)
次に、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)を行った。電気泳動は、400μlのゲル濾過活性画分Dを等量のNative−PAGE緩衝液と混ぜ、さらに、12.5%(体積に対する質量の割合)となるようにポリアミドゲルを投入し、非変性条件(室温(25℃)、pH6.8〜8.8)でNative−PAGE電気泳動を行った。得られた結果を図3に示す。なお、図3の各レーンは左から、サイズマーカー、トウガン篩管液、DEAE−FF非吸着画分A、ゲル濾過活性画分D(還元剤ジチオスレイトール−)、ゲル過活性画分D(50mMジチオスレイトール+)である。
図3に示すように、ゲル濾過活性画分Dの挙動から、このゲル濾過活性画分Dの分子量は約35kDa程度と考えられ、還元剤(ジチオスレイトール)存在下でもSDS−PAGEの挙動に変化はみられなかったので、モノマーのタンパク質であると考えられる。
(構造解析)
次に、上記ゲル濾過活性画分Dのタンパク質の構造を、内部アミノ酸配列解析及びその結果を元にデザインしたプライマーを用いたcDNAクローニングによって全一次構造を解析した。
明らかになった一次構造(配列番号1)は、Blast検索の結果、ウリ科植物のPhloem lectinと相同性を持っていたが、上述したように、演繹アミノ酸配列から予測される分子量は約35kDaで2量体ではなく単量体であること、Phloem lectinと相同性を示すがシステイン残基を持たないこと、同様の配列が2度繰り返されていること等の特徴を示した。この成分が、Phloem lectinで確認されるようなN−アセチルグルコサミンとの結合といったphloem lectinとしての機能を持つと考えられる。
(耐虫性試験1)
上記ゲル濾過活性画分Dを、上記広食性昆虫用人工飼料(以下単に「人工飼料」という。)に添加してエリサンに摂食させ、エリサンの体重増加量を調査した。得られた結果を図4に示す。
図4に示すように、本発明の耐虫性タンパク質は、人工飼料中に20%という低濃度(タンパク質量として0.01%)であっても顕著な成長阻害・耐虫性効果を示した。
また、この効果は2日後にも顕著に現れ、2日後でも体重増加が半分程度になるなど短時間で顕著な成長阻害効果を示すことがわかった。
(耐虫性試験2)
従来のレクチン、プロテアーゼインヒビター、アミラーゼインヒビター、MLX56、本発明の耐虫性タンパク質を上記人工飼料に添加してエリサンに摂食させ、エリサンの体重増加量を調査した。エリサンに対するそれぞれの作用濃度を表1に示す。
(表1)
Figure 0005835727
本発明の耐虫性タンパク質は、人工飼料100mg中に7μg(0.007%)程度存在するだけでエリサンに対して成長阻害活性を示すことがわかった。この効果は現在農業上の実用化(遺伝子導入による耐虫性植物育成)にむけて世界的に研究が進んでいるスノードロップレクチンをはじめとする他の植物由来の耐虫性タンパク質より10〜100倍効果が高く、以前本発明者が発明したMLX56と同程度の効果を示した。
なお、陰イオン交換クロマトグラフィーで得られた吸着画分に含まれる活性因子においても、そのうちの1つを単離した。この成分はSDS−PAGEの結果から約35kDa程度と考えられる。成長阻害活性については、少量で先の因子と同程度の活性を示した。本成分の構造は、現在N末端および内部アミノ酸配列を解析中であり、今後得られた情報をもとにcDNAクローニングによって一次構造を明らかにする予定である。
本発明の耐虫性タンパク質は、特に農業において耐虫性遺伝子組み換え植物の遺伝子素材として利用できる。すなわち、本発明の耐虫性遺伝子を導入・発現させることにより耐虫性植物を作成することが可能になる。
ちなみに、日本やヨーロッパ諸国ではまだそれほど一般的ではないが、新大陸・アフリカ・中国などなどを中心に世界的に耐虫性遺伝子転換植物の栽培は増えている。
しかし、耐虫性遺伝子組み換え植物に用いられているタンパク質は、バクテリア由来のBt毒素に偏重しており、抵抗性害虫の出現を考えると他の植物由来のタンパク質の発見が待たれるが、低濃度で耐虫性を示す有効な耐虫性タンパク質は少ない。このため、本発明の耐虫性タンパク質は将来的に国際的に広く利用される可能性を有している。
本発明の耐虫性タンパク質は、Btタンパク質に比べると耐虫活性が低いが、消費者に抵抗感があるバクテリア由来毒素に比べて、消費者に抵抗性が少ない植物由来の耐虫性タンパクとしてBt毒素と差別化可能である。
本発明の耐虫性タンパク質は、0.01%程度の(他の耐虫性タンパク質に比べても)少量の発現で顕著な耐虫性・昆虫成長阻害活性を示す。この量を植物に発現するのは現在の技術でも十分に可能であり、耐虫性植物の遺伝子育種に利用できる。
また、本タンパク質は(微生物由来でなく)栽培植物由来(一部の国では実や葉に食経験がある)であるため消費者の心理的抵抗感が少ないという利点がある。
A・・・非吸着画分
B,C・・・吸着画分
D・・・ゲル濾過活性画分

Claims (20)

  1. 植物由来の耐虫性タンパク質であって、
    配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列に対する相同性が95%以上である耐虫性タンパク質。
  2. 植物由来の耐虫性タンパク質であって、
    配列表の配列番号2に示される第1部分アミノ酸配列と95%以上の相同性を有するアミノ酸配列及び配列表の配列番号3に示される第2部分アミノ酸配列と95%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなる群より選ばれる少なくとも1つのアミノ酸配列を2以上含む耐虫性タンパク質。
  3. 前記植物がウリ科植物であり、該ウリ科植物の滲出液から抽出される請求項1又は2に記載の耐虫性タンパク質。
  4. 請求項1〜のいずれか1項に記載の耐虫性タンパク質をコードする耐虫性遺伝子。
  5. 植物由来の耐虫性遺伝子であって、
    配列表の配列番号4に示される塩基配列に対する相同性が95%以上である耐虫性遺伝子。
  6. 請求項4又は5に記載の耐虫性遺伝子を組み換えた組換えDNA。
  7. 請求項4又は5に記載の耐虫性遺伝子又は請求項記載の組換えDNAを含有する組換えベクター。
  8. 請求項記載の組換えベクターが導入された宿主細胞。
  9. 請求項記載の組換えベクターが導入された植物細胞。
  10. 請求項記載の宿主細胞を含む形質転換体
  11. 請求項10記載の形質転換体の子孫又はクローンである形質転換体
  12. 請求項記載の植物細胞を含む形質転換植物体
  13. 請求項12記載の形質転換植物体の子孫又はクローンである形質転換植物体
  14. 請求項12又は13に記載の形質転換植物体から得られる繁殖材料。
  15. 請求項記載の宿主細胞により回収された耐虫性タンパク質。
  16. 請求項9記載の植物細胞により回収された耐虫性タンパク質。
  17. 請求項10又は11に記載の形質転換体若しくは請求項12又は13に記載の形質転換植物体により回収された耐虫性タンパク質。
  18. 請求項1〜のいずれか1項に記載の耐虫性タンパク質を有効成分とする耐虫剤。
  19. 請求項4又は5に記載の耐虫性遺伝子を有効成分とする耐虫剤。
  20. 請求項15〜17のいずれか1項に記載の耐虫性タンパク質を有効成分とする耐虫剤。
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