JP5835625B2 - ポリオレフィン被覆uoe鋼管及びその製造方法 - Google Patents
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(A)ポリオレフィン被覆UOE鋼管の化学組成、
(B)ポリオレフィン被覆UOE鋼管の母材となる鋼板の製造時における熱間圧延条件及び冷却条件、及び
(C)ポリオレフィン被覆UOE鋼管の母材である鋼管を製管した後におけるポリオレフィンコーティングを160℃以下で行うとともに、ポリオレフィン樹脂層の積層時の鋼管温度を90〜150℃とすること
という条件A〜Cを全て満足することによって、実質的にフェライトと島状マルテンサイトとベイナイトからなる金属組織を有し、軸方向引張強度が625MPa以上であり、軸方向降伏比が85%以下であるとともに、軸方向引張試験における応力歪み線図の形状がラウンドカーブ型である機械特性を有するポリオレフィン被覆UOE鋼管を得られ、このポリオレフィン被覆UOE鋼管は、母材のみならず溶接部の靭性の低下が防止され、L方向変形性能に優れることから寒冷地の永久凍土や地震発生地域に敷設されるパイプラインに好適に用いることができる優れた耐震性能を有することを知見し、さらに検討を重ねて、本発明を完成した。
(1)C:0.03〜0.07%(本明細書では特に断りがない限り化学組成に関する「%」は「質量%」を意味する)、Si:0.05〜0.50%、Mn:1.4〜2.2%、P:0.020%以下、S:0.003%以下、Cu:0.15〜0.60%、Ni:0.15〜0.80%、Nb:0.005〜0.045%、Ti:0.005〜0.030%、N:0.0070%以下、Al:0.005〜0.060%、残部Fe及び不純物からなり、下記(1)式により規定される焼き入れ性指数Pcmが0.22%以下である化学組成を有する鋼材を1000〜1250℃に加熱し、未再結晶温度域の圧下率が50%以上、かつ圧延終了温度が(Ar 3 −100℃)〜Ar 3 の熱間圧延を行い、その後10℃/秒以上の冷却速度で、300℃以下まで加速冷却を行った後、冷間成形により鋼管形状とし、突き合せ部を溶接し、拡管率が0.5〜1.5%で拡管してUOE鋼管とし、当該UOE鋼管の外周面に、下から順に、エポキシプライマー層、変性ポリオレフィン接着樹脂層、およびポリオレフィン樹脂層を形成するポリオレフィンコーティングを160℃以下で行うとともに、前記ポリオレフィン樹脂層の積層時の鋼管温度を90〜150℃とすることを特徴とする
実質的にフェライト、島状マルテンサイトおよびベイナイトからなる金属組織を有し、
軸方向引張強度が625MPa以上であり、軸方向降伏比が85%以下であるとともに、軸方向引張試験における応力歪み線図の形状がラウンドカーブ型である機械特性を有するとともに、
外周面に、下から順に、エポキシプライマー層、変性ポリオレフィン接着樹脂層、およびポリオレフィン樹脂層を有するL方向変形性能に優れるポリオレフィン被覆UOE鋼管の製造方法。
・・・・・(1)
なお、(1)式中の記号は鋼材中の各元素の質量%を示す。
1.化学組成
パイプラインの耐震性の向上のためには、パイプラインを構成するポリオレフィン被覆UOE鋼管の化学組成及び製造方法の両面からのアプローチが可能であるが、本発明において耐震性とともに改善しようとする溶接熱影響部の低温靭性は、ほぼ化学組成により決定される。そこで、溶接熱影響部の−40℃での低温靱性に対する各構成元素の影響を考慮して、本実施の形態に係るUOE鋼管の組成を限定する。以下、組成を限定する理由を説明する。
Cは、強度の上昇に有効な元素であり、API規格X70グレード以上の強度を有するために0.03%以上含有する。一方、C含有量が増加し特に0.07%を超えると溶接熱影響部の著しい硬度上昇を引き起こし、これに伴って靭性の低下が著しくなる。そこで、C含有量は0.03%以上0.07%以下とする。C含有量は好ましくは0.03%以上0.06%以下である。
Siは、脱酸剤として、また鋼を強化する成分として有効である。Si含有量が0.05%未満では脱酸が不十分となり、一方Si含有量が0.50%を越えると溶接熱影響部に島状マルテンサイトが多く生成し、靭性を極度に劣化させ、UOE鋼管の機械的性質の低下につながる。そこで、Si含有量は0.05%以上0.50%以下とする。Si含有量はポリオレフィン被覆UOE鋼管の素材である鋼板の板厚とのバランスを考慮して決定することが好ましい。
Mnは、鋼を強化するとともに強靭化する基本元素であるが、溶接熱影響部の靭性を確保するためにC含有量を抑制することから、強度を確保するため、Mn含有量は1.4%以上とする。しかし、Mn含有量が2.2%を超えると、溶接部の靭性が劣化する。そこで、Mn含有量は、1.4%以上2.2%以下とする。Mn含有量は1.7%以上2.0%以下であることが好ましい。
Pは、偏析が顕著な元素であり、Pの偏析によりポリオレフィン被覆UOE鋼管の母材の靭性が劣化するため、P含有量は0.020%以下とする。
Sは、鋼中に存在するとMnSを形成し、多量に存在するとポリオレフィン被覆UOE鋼管の母材の靭性を著しく劣化させるおそれがある。そこで、S含有量は0.003%以下とする。
Cuは、固溶強化と焼入れ性増大効果による組織変化とを通して、靭性を大きく損なうことなくポリオレフィン被覆UOE鋼管の強化を図ることができる。Cuを0.15%以上含有することによりポリオレフィン被覆UOE鋼管の軸方向の降伏強度480MPa以上を確保できる。一方、Cu含有量が0.60%を超えると、スラブの表面疵に有害なCuチェッキングが発生し、スラブを低温加熱することとなり、製造条件が制限される。そこで、Cu含有量は0.15%以上0.60%以下とする。
Niは、Cuと同様に、固溶強化と焼入れ性増大効果による組織変化とを通して、靭性を大きく損なうことなく、ポリオレフィン被覆UOE鋼管の強化を図ることができる。同時に熱間での曲げ加工後の母材及び溶接熱影響部の靭性の劣化を抑制することができるが、Niを0.15%以上含有しないとポリオレフィン被覆UOE鋼管の軸方向の降伏強度480MPa以上を確保できない。一方、Ni含有量が0.80%を超えるとコストが嵩み、実用的ではない。そこで、Ni含有量は0.15%以上0.80%以下とする。
Nb含有量を0.045%以下と抑制する理由は、(i)固溶Nbは、焼き入れ性が高く溶接熱影響部の強度の上昇をもたらし、強度と反比例する靭性の劣化を招くと考えられること、及び(ii)Nbは、析出強化元素としても効果があり、析出強化により降伏強度を上昇させ、これにより、降伏強度/引張り強度として規定される降伏比を上昇させるため、低降伏比化を目的とする本発明では、Nb含有量を抑制する。しかし、Nbの固溶強化を全く利用しないと、具体的にはNb含有量が0.005%未満であると、API規格X80グレード以上の高強度を安価に確保することが困難になる。
Tiは、TiNを生成して溶接熱影響部の粒成長を抑制し、その靭性を向上するため、このような効果を得るために0.005%以上含有する。一方、Ti含有量が0.030%を超えると溶存N量が増加し、溶接熱影響部の靭性が劣化する。そこで、Ti含有量は0.005%以上0.030%以下とする。
Nは、VやTi等と窒化物を形成し高温強度の向上に効果をもたらすが、N含有量が0.0070%を超えるとNb、V、Tiと炭窒化物を形成して母材及び溶接熱影響部の靭性の低下を引き起こす。このため、N含有量は0.0070%以下とする。ただし、溶接熱影響部の靱性をより高めたい場合には、N含有量は0.0050%以下とすることが好ましい。
Alは、Siと同様に、0.005%以上含有することにより脱酸材としての作用を奏するが、0.060%含有すればその効果は十分に得られ、これを超えて含有してもコストが嵩むだけとなる。そこで、Al含有量は、0.005%以上0.060%以下と限定する。
Crは、本発明では必要に応じて含有する任意元素であり、CuやNiと同様に、固溶強化と焼入れ性増大効果による組織変化とを通して、靭性を大きく損なうことなく、強化を図ることができるが、−40℃での低温靭性を確保するために、Cr含有量は0.60%以下であることが好ましい。
Vは、析出強化によりUOE鋼管の母材の降伏強度、すなわち降伏比を上昇させるとともに、固溶強化により溶接熱影響部の靭性を低下する。このため、Vは含有しないことが好ましい。しかしながら、Vは、このような問題を実質的に生じない程度の微量であれば含有してもよく、このような範囲として0.050%以下が例示される。
(焼き入れ性指数Pcm:0.22%以下)
焼き入れ性指数Pcmは、溶接性を評価するために用いられる一般的な指標である。溶接熱影響部での靭性および現地周溶接性を考慮すると、上記(1)式:Pcm=C+(Si/30)+(Ni/60)+{(Cr+Mn+Cu)/20}+(V/10)により規定される焼き入れ性指数Pcmを極力低減することが好ましい。焼き入れ性指数Pcmが0.22%を超えると現地周溶接性が劣化することが一般的であるため、本発明においても焼き入れ性指数Pcmは0.22%以下とする。
2.機械特性
ポリオレフィン被覆UOE鋼管は、軸方向引張強度:625MPa以上、軸方向降伏比:85%以下、軸方向引張試験における応力歪み線図の形状:ラウンドカーブ型の機械特性を有する。
引張試験のStress−Strainチャートにおいて、上降伏点および下降伏点が見られない形状であることを定義とする。
であることを意味する。
次に、本発明に係るポリオレフィン被覆UOE鋼管の製造方法を説明する。
製鋼段階で最適な介在物制御がなされた後に、特に全巾冷却等の偏析低減を考慮した条件を適用した連続鋳造を行うことにより、上記化学組成を有する鋳片(スラブ)を700℃以下に冷却した後に、1000℃以上1250℃以下に再加熱する。
その後、所定の肉厚および板幅にスラブに熱間圧延を行う。熱間圧延は、2段階に分けて行うことが好ましい。
API規格X80グレードの高強度を有するとともに、軸方向の降伏比:85%以下,、溶接熱影響部でのシャルピー吸収エネルギー:−40℃で40J以上の耐震性能を有するために、熱間圧延後に水冷を行う。
上記方法によって製造された厚鋼板は、製管後において高い変形能を有する必要があり、そのために最適な金属組織を有さなければならない。水冷後の厚鋼板は、実質的にフェライト+ベイナイトおよび島状マルテンサイト(以下「MA」という)からなる金属組織を有することが好ましい。
この厚鋼板を冷間成形によりオープンパイプとし、突き合せ部を溶接し、拡管率が0.5%以上1.5%以下で拡管してUOE鋼管とする。
製造されたUOE鋼管の外周面に、ポリオレフィンコーティングを行う。ポリオレフィンコーティング層は、鋼管の外周面に、下から順にエポキシプライマー層、変性ポリオレフィン接着樹脂層、およびポリオレフィン樹脂被覆層の3層を有し、好ましくはプライマー層の下にさらに下地処理層、特に好ましくはクロメート皮膜層を有するように被覆を行う。
低温環境で良好な密着性および靭性を確保するために好ましい。
種々の化学組成を有する溶鋼を、厚さ250〜300mm、幅1300〜2300mmの垂直曲げ型スラブ連続鋳造機を用いて0.7〜1.1m/minの鋳造速度で連続鋳造し、表1に示す化学組成を有する試料No.1〜10のスラブを得た。
Claims (5)
- 質量%で、C:0.03〜0.07%、Si:0.05〜0.50%、Mn:1.4〜2.2%、P:0.020%以下、S:0.003%以下、Cu:0.15〜0.60%、Ni:0.15〜0.80%、Nb:0.005〜0.045%、Ti:0.005〜0.030%、N:0.0070%以下、Al:0.005〜0.060%、残部Fe及び不純物からなり、下記(1)式により規定される焼き入れ性指数Pcmが0.22%以下である化学組成を有する鋼材を1000〜1250℃に加熱し、未再結晶温度域の圧下率が50%以上、かつ圧延終了温度が(Ar3 −100℃)〜Ar3の熱間圧延を行い、その後10℃/秒以上の冷却速度で、300℃以下まで加速冷却を行った後、冷間成形により鋼管形状とし、突き合せ部を溶接し、拡管率が0.5〜1.5%で拡管してUOE鋼管とし、当該UOE鋼管の外周面に、下から順に、エポキシプライマー層、変性ポリオレフィン接着樹脂層、およびポリオレフィン樹脂層を形成するポリオレフィンコーティングを160℃以下で行うとともに、前記ポリオレフィン樹脂層の積層時の鋼管温度を90〜150℃とすることを特徴とする
実質的にフェライト、島状マルテンサイトおよびベイナイトからなる金属組織を有し、
軸方向引張強度が625MPa以上であり、軸方向降伏比が85%以下であるとともに、軸方向引張試験における応力歪み線図の形状がラウンドカーブ型である機械特性を有するとともに、
外周面に、下から順に、エポキシプライマー層、変性ポリオレフィン接着樹脂層、およびポリオレフィン樹脂層を有するL方向変形性能に優れるポリオレフィン被覆UOE鋼管の製造方法。
焼き入れ性指数Pcm=C+(Si/30)+(Ni/60)+{(Cr+Mn+Cu)/20}+(V/10)・・・・・(1)
なお、(1)式中の記号は鋼材中の各元素の質量%を示す。 - 前記化学組成は、質量%で、Cr:0.60%以下、またはV:0.050%以下の1種または2種を有する請求項1に記載されたポリオレフィン被覆UOE鋼管の製造方法。
- 前記プライマー層は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂40〜60重量部、ノボラック型エポキシ樹脂0〜30重量部、フェニルグリシジルエーテル15〜35重量部、硬化剤10〜40重量部、および反応促進剤1.5〜4重量部を含有するプライマー組成物から形成されたエポキシ系プライマー層である請求項1または請求項2に記載されたポリオレフィン被覆UOE鋼管の製造方法。
- 前記ポリオレフィン樹脂層がポリエチレン樹脂層であり、前記変性ポリオレフィン接着層が、低温脆化温度−50℃以下、変性率0.2%以上の変性ポリエチレン樹脂層であり、前記プライマー層の硬化剤がアミン系硬化剤であり、前記プライマー層のガラス転移温度が60〜80℃である請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載されたポリオレフィン被覆UOE鋼管の製造方法。
- 前記プライマー層の下層に下地処理層を有する請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載されたポリオレフィン被覆UOE鋼管の製造方法。
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