JP5835268B2 - トラック・バス燃料タンク用めっき鋼板及び燃料タンク - Google Patents

トラック・バス燃料タンク用めっき鋼板及び燃料タンク Download PDF

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Description

本発明は、トラック・バス燃料タンク用めっき鋼板及び燃料タンクに関する。
自動車の燃料タンクは車体のデザインに合わせて最後に設計されることが多く、その形状は複雑になる傾向にある。自動車燃料タンク材料に要求される特性は、深絞り成形性、成形後の耐衝撃性、耐燃料耐食性、塩害耐食性、シーム溶接性、スポット溶接性等が要求される。これに対応するための材料開発が行われ、多数の技術が開示されている。
これに対してトラックやバスの燃料タンクへの要求特性は少し異なる。まず基本的に成形形状が単純形状であるために、複雑な形状への成形性は必要とされない。トラックやバスの燃料である軽油は比較的酸化劣化し難く、耐燃料耐食性としてもガソリンタンクよりは緩やかとなる。より重要になるのは、燃料タンクの生産効率、つまり低コストで燃料タンクを製造できるような材料が要求されている。このときの生産効率とは、主として溶接性であり、シーム溶接、スポット溶接性に優れた材料が希求されている。
これまで自動車の燃料タンク材として特許文献1、2に示すようなAlめっき鋼板、Sn−Znめっき鋼板が適用されてきた。しかしAl、Snは共に溶接の電極材質であるCuと反応しやすい特性を持ち、一般にシーム溶接性、スポット溶接性には劣る傾向にある。
更に、最近コモンレール方式と呼ばれる燃料噴射技術が適用されているが、この技術においては、非常に微細な燃料を噴出させるため、噴射孔の目詰まりが問題となる。この目詰まりの原因として一種の金属石鹸が影響するとされている。例えば特許文献3には、脂肪酸亜鉛が原因となり得ることが記載されている。つまり、燃料タンク材として亜鉛を含むめっき材を用いると、この金属石鹸が生成する可能性がある。つまりZnめっきは勿論、Sn−Znめっきも望ましくなく、Alめっき鋼板の適用が好ましい。
特開平10−72641号公報 国際公開第2007/004671号公報 特開2006−306018号公報
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、トラック・バス燃料タンク用のめっき鋼板として、シーム溶接性、スポット溶接性を向上させ、なおかつ耐燃料、塩害環境での耐食性も確保できるめっき鋼板及びその製造方法の提供を課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究した結果、シーム溶接性、スポット溶接性を従来より飛躍的に高め、耐燃料、塩害環境における耐食性も確保するためには、鋼板の表裏のめっき付着量を変えることが顕著な効果を有することを見出し、本発明を完成させた。
Alめっき鋼板をシーム溶接する際の課題は幾つかあるが、主として2つの課題がある。1つは、シーム溶接時のブローホール欠陥である。この欠陥の発生原因は以下と考えられる。上下の電極輪を用いたシーム溶接において、熱により電極とめっきとが反応し、反応生成物が電極とめっきとの界面に生成する。そうすると反応生成物を介して電極と鋼板との間に密着力が働き、電極輪が鋼板から離れる際に鋼板が電極側に引張られ、その影響でこのような欠陥が生じる。
もう一つの課題は、電極表面にめっきと電極との反応生成物が生成し、これが欠落することで溶接品位が低下することである。
これらの課題はいずれも、電極とめっき中のAlとの反応が原因であるため、めっき付着量を低下させることが有効と考えられる。
更に本発明者らは、鋼中のPによりシーム溶接性が向上するとの知見を得た。特にめっき付着量が低い時にPによるシーム溶接性の向上が顕著であった。鋼中のPが合金層に拡散し、表面でAlPを形成してCuとの反応を抑制しているものと推定している。
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、その要旨は、以下の通りである。
(1) 質量%で、C:0.0005〜0.08%、Si:0.003〜0.5%、Mn:0.05〜0.8%、P:0.005〜0.05%、S:0.1%以下を含有し、残部Fe及び不可避的不純部物からなる鋼板の一方の面及び他方の面に、Al−Fe−Si合金層とAl−Si層とを有する溶融Alめっき層が備えられ、前記一方の面と前記他方の面のめっき付着量がそれぞれ異なり、前記一方の面のめっき付着量が30〜60g/mの範囲であり、燃料タンクの外面となる前記他方の面のめっき付着量が5〜30g/mの範囲であることを特徴とするトラック・バス燃料タンク用めっき鋼板。
(2) 質量%で、C:0.0005〜0.08%、Si:0.003〜0.5%、Mn:0.05〜0.8%、P:0.005〜0.05%、S:0.1%以下を含有し、残部Fe及び不可避的不純部物からなる鋼板の一方の面に、Al−Fe−Si合金層とAl−Si層とを有し、めっき付着量が30〜60g/mである溶融Alめっき層が備えられ、燃料タンクの外面となる前記鋼板の他方の面には、Al−Fe−Si合金層からなり、めっき付着量が5〜30g/mである溶融Alめっき層が備えられていることを特徴とするトラック・バス燃料タンク用めっき鋼板。
(3) 前記鋼板が更に、質量%で、Ti:0.001〜0.1%、Nb:0.001〜0.05%またはB:0.0003%〜0.01%の1種又は2種以上を含むことを特徴とする(1)または(2)に記載のトラック・バス燃料タンク用めっき鋼板。
(4) 前記溶融Alめっき層の表面に、Cr、Zr、Ti、Si、Vの1種または2種以上の化合物を含有する皮膜が片面当たり50〜1000mg/mの付着量で形成されていることを特徴とする(1)〜(3)の何れか一項に記載のトラック・バス燃料タンク用めっき鋼板。
(5) (1)〜(4)の何れか一項に記載のトラック・バス燃料タンク用めっき鋼板によって製造され、めっき付着量の少ない面が外面側とされていることを特徴とするトラック・バス用燃料タンク。
本発明によれば、コモンレール方式等を用いた場合にも噴射孔目詰まりを起こすことが無く、特にシーム溶接、スポット溶接等の生産性に優れたトラック・バス燃料タンク用めっき鋼板を提供できる。また、本発明に係るトラック・バス燃料タンク用めっき鋼板によれば、ユーザーにおける燃料タンクの生産性が向上するため、廉価なタンクを市場に供給できることが期待される。
図1は、本発明の実施形態であるトラック・バス燃料タンク用めっき鋼板の断面の光学顕微鏡写真である。
本発明の実施形態であるトラック・バス燃料タンク用めっき鋼板は、鋼板と、鋼板の一方の面及び他方の面に形成された溶融Alめっき層とからなる溶融Alめっき鋼板である。本実施形態のトラック・バス燃料タンク用めっき鋼板では、一方の面と他方の面のめっき付着量の範囲が異なっており、一方の面に付着量が比較的大きな溶融Alめっき層が形成され、他方の面に付着量が比較的小さな溶融Alめっき層が形成される。
以下、本発明の限定要件について説明する。まず、鋼の成分組成を限定する理由について説明する。なお、成分組成に係る%は、質量%を意味する。
鋼板のP含有量は0.005〜0.05%とする。Pは固溶強化元素で、比較的安価に鋼板の強度を高めることができるが、粒界に偏析し易いために、鋼板の強度が高い場合に低温脆化を引き起こす元素である。本発明において、Pがめっき付着量が少ない場合にシーム溶接性の向上に寄与することを見出した。この効果を得るためには鋼板中のPが0.005%以上であることが必要である。一方、鋼板中のP量を増大させると鋼板の靭性が低下するため望ましくない。このため上限を0.05%とする。
Cは、鋼板の強度を決める元素である。トラック・バスの燃料タンクは先述したように特に複雑な形状に成型される訳ではない。しかし部位によっては延性を要求されることもあり得るため、鋼板中のC量は0.0005〜0.08%程度が好ましい。更に好ましくは0.001〜0.05%である。
Siも鋼板の強度を高める元素であり、必要に応じて0.003%以上を添加する。Si量が0.5%を超えるとめっき性が劣化するので、Si量は0.003〜0.5%が好ましい。
Mnも鋼板の強度を上げる働きがある。また、Mnは、熱延工程時においてSに起因する熱間脆性の抑制にも有効であり、0.05%以上の添加が望ましい。一方で過剰に添加すると鋼板の加工性を低下させるため0.8%以下が好ましい。
Sは、熱間加工性を劣化させる元素であり、また、鋼板の加工性を劣化させる元素である。本発明において、S量は限定しないが、0.1%以下が好ましい。また、Sは少ない方が好ましいが、0.001%未満とすることは、脱硫コストの上昇を招くので、0.001%以上が好ましい。
鋼板は、上記の元素以外に不可避的不純物及び残部鉄からなる。不可避的不純物として例えばAlやNを含有しうる。Alは、通常、脱酸のために添加する元素である。本発明においてAl量は限定しないが、0.005%未満の鋼板は、製鋼工程において脱酸が不十分であり、その結果、鋼板中に酸化物が多量に残存して局部変形能の劣化を招く場合がある。従って、Alを0.005%以上含有する鋼板が好ましい。一方、鋼板中のAlが0.08%を超えると、鋼板中にアルミナを主体とする酸化物が多量に残存して、局部変形能の劣化を招くので、0.08%以下が好ましい。
Nは不可避的不純物であり、少ないほど好ましい元素である。本発明において、N量は限定しないが、N量を0.001%未満に低減することは、精錬コストの上昇を招くので、N量は0.001%以上が好ましい。一方、N量が0.005%を超える鋼板には析出物が生成し、焼入れ後の靭性が劣化するので、N量は0.005%以下が好ましい。
本発明においては、上記の元素以外にTi、Nb、Bの1種または2種以上を鋼板に含有させることができる。以下、添加理由と添加量について述べる。
Ti及びNbは、微細な炭化物を形成させて鋼板の加工性を向上させることができる。このためにはそれぞれ、0.001%以上の添加が好ましいが、過度の添加は、添加効果が飽和し、製造コストが上昇する。従って、Tiの添加量は0.1%以下、Nbの添加量は0.05%以下とすることが好ましい。
Bは、鋼板の二次加工性を向上させる元素である。この効果を得るためにはBを0.0003%以上とすることが好ましい。一方、Bの過剰添加は鋼板の加工性を阻害するため、0.01%以下とすることが好ましい。
なお、本発明に係る鋼板は、製鋼段階においてスクラップ等から混入するCu、Cr、Sn、Ni等を、本発明の効果を損なわない範囲で含有してもよい。また、脱酸元素として使用したCaや、Ce等を含むREMを、本発明の効果を損なわない範囲で含有してもよい。
上記の鋼板は、鋼スラブを熱間圧延することにより製造される。また、本発明に係る鋼板を得るために、熱間圧延後に、冷間圧延及び焼鈍を行ってもよい。
熱間圧延に供する鋼スラブを製造する方法は、連続鋳造方法に限定されるものではない。通常の連続鋳造方法や、厚さ100mm以下の薄スラブを鋳造する方法を採用することができる。
熱間圧延条件は特に規定するものでない。例えば加熱温度は1400℃以下とし、好ましくは1250℃以下とする。また、最終圧延終了温度はAr3点以上が好ましく、巻き取り温度は600〜750℃が好ましい。
冷間圧延、焼鈍、及び、めっきの各条件は、特に規定されるものではなく、通常の条件でよい。冷間圧延は、通常の冷延圧下率の範囲、例えば、40〜80%で実施すればよい。めっきは、熱間圧延後、冷間圧延後、又は、再結晶焼鈍後に実施するが、加熱条件や冷却条件は、特に規定されるものではない。
熱間圧延後または冷間圧延後に、Alめっきを付与するものとする。先述したように、コモンレール方式のエンジンにおいてZnを含有するめっきは使用が制限されるので、工業的にはAlめっきが最も有利である。Alめっきは通常5〜15%のSiを添加したAlめっき浴を用いて溶融めっき法で行われるが、本発明は溶融めっき法に限定するものでなく、溶融塩電解法、蒸着法等も適用することができる。これらの方法の中で工業的に最も安価に製造できるのは溶融めっき法であり、本発明でもこの方法を適用することが望ましい。
溶融Alめっき法で溶融Alめっき鋼板を製造する際に、Alめっき浴のAl及びSiと鋼板のFeとが反応して、溶融Alめっき層と鋼板との界面に、金属間化合物からなるAl−Fe−Si合金層が形成される。このAl−Fe−Si合金層の上に、Alめっき浴とほぼ同一組成のAl―Si層が形成される。
Alめっき浴は、Alを85%以上含有することが望ましく、また、Siを5〜15%含有することが好ましい。Si量が5%未満ではめっき後にAl−Fe−Si合金層が成長し過ぎて加工性を低下させ、Siが15%超含有させるような場合にはAlめっきの耐食性が低下するため好ましくない。更に好ましいSi量は6〜12%である。
Al−Fe−Si合金層の厚みは通常2〜5μmであるが、浴温、浴組成、侵入板温、冷却速度及びラインスピードにより変化する。一般に板厚が薄い時にはラインスピードを上昇させることができ、合金層厚みは薄くなる傾向となる。本発明においてAl−Fe−Si合金層の厚みは規定しないが、この層は硬質で脆いために、厚過ぎると鋼板の加工性を阻害する。このためAl−Fe−Si合金層は4μm以下とすることが望ましい。
なお、Al−Si層とAl−Fe−Si合金層については、断面検鏡より確認するものとする。図1に断面組織の写真の一例を示す。Al−Si層とAl−Fe−Si合金層とは、図1に示すように光学顕微鏡で明確に区別できる。当然SEM−EDS、EPMA等の元素分析によっても確認可能である。
本発明では、めっき付着量を一方の面と他方の面とで異なる値となるよう制御し、一方の面のめっき付着量を30〜60g/mとし、他方の面のめっき付着量を5〜30g/mとすることが好ましい。
燃料タンクの外面となる他方の面は、良好なシーム溶接性、スポット溶接性を得るために、めっき付着量を少なくすることが望ましい。特に鋼板のP量を制御することでより良好な溶接性が得られる。その一方で、溶融Alめっき層は合金層を含むため、めっき付着量の下限には限度があり、事実上5g/m未満とすることは不可能である。このため下限を5g/mとする。めっき付着量が増大すると塩害環境の外面環境における耐食性は増大するが、溶接性が低下する。めっき付着量が30g/mを超えるとシーム溶接性及びスポット溶接性が低下するため、上限を30g/mとする。
なおめっき付着量の測定方法については、通常の方法でよい。すなわち重量法でめっき付着量を測定し、蛍光X線強度との間に検量線を作成して蛍光X線で付着量を測定することが望ましい。
燃料タンクの内面となる一方の面は、燃料タンクの内面環境、すなわち軽油やガソリンに対する耐食性、あるいはこれらが酸化劣化した際に生成する有機酸(蟻酸、酢酸等)に対する耐食性を確保する必要がある。一方の面のめっき付着量が30g/m未満では十分な耐燃料耐食性が得られない。また本発明は鋼板の一方の面と他方の面とで差厚めっきとするものであるが、溶融めっき法の場合は、鋼板の両面でめっき付着量に差を持たせるには限度があり、他方の面のめっき付着量が30g/mのときに、一方の面のめっき付着量を60g/m超とすることは困難なために、上限を60g/mとする。
溶融めっき法において、めっき付着量を制御するために、通常はガスワイピング法が用いられる。めっき付着量の制御因子として、一般的にガス圧、ラインスピード、鋼板−ノズル間距離、ノズルギャップ、ノズル形状等がある。本発明は鋼板の表裏面のめっき付着量を異ならせるものであり、このため表裏面でガス圧、鋼板−ノズル間距離、ノズルギャップ等を変えることが有効である。鋼板の表裏面でめっき付着量が同一の品種と、鋼板の表裏面でめっき付着量が異なる品種とを、同一のめっき製造ラインで製造することを考慮すると、鋼板−ノズル間距離を変化させることや、ガス圧を表裏で可変とすることでめっき付着量を調整することが望ましい。
熱延鋼板、冷延鋼板、焼鈍鋼板、及び、めっき鋼板の調質圧延は、形状を適切に調整するために、適宜実施すればよい。
また、めっき後の溶融Alめっき層の表面に、化成処理皮膜を形成してもよい。化成処理皮膜は、シーム溶接性やスポット溶接性を更に向上させる効果があり、また、塗料膜との密着性を向上させる効果もある。化成処理皮膜としては、Cr、Zr、Ti、Si、Vの1種または2種以上の化合物を含有する皮膜がよい。化成処理皮膜の付着量は片面当たり皮膜として50〜1000mg/mが望ましい。付着量が50mg/m以下ではシーム溶接性及びスポット溶接性の向上効果が十分でなく、一方、付着量を多くしすぎても鋼板の表面抵抗が大きくなりすぎてシーム溶接性やスポット溶接性が低下する。このため付着量は片面当たり50〜1000mg/mが望ましい。これら化成処理皮膜の付着量測定についても、原則はめっき付着量と同様で、重量法で測定した皮膜量と蛍光X線強度との間に検量線を作成し、蛍光X線で測定するものとする。
本発明では、鋼板の一方の面及び他方の面のそれぞれの溶融Alめっき層に、Al−Fe−Si層とAl−Si層とが形成される場合と、一方の面の溶融Alめっき層にAl−Fe−Si層とAl−Si層とが形成され、他方の面の溶融Alめっき層にAl−Fe−Si層のみが形成される場合とがある。すなわち、本発明の一実施形態として、他方の面にAl−Si層が無く、全てAl−Fe−Si層となっている場合がある。このような場合には、シーム、スポット溶接性が極めて向上することに加えて外面塗装との密着性も改善する。Al−Si層を確実になくすためには、めっき後に溶融Alめっき層を再加熱する必要がある。あるいはめっき付着量をできるだけ小さくしてめっき浴の浴温を高目にしておき、めっき浴の予熱でAl−SiとFeとの反応を促進する方法を採用してもよい。
本実施形態のトラック・バスの燃料タンクは、例えば以下の手順で製造される。まず、本実施形態に係るめっき鋼板に曲げ加工を施して四角筒とし、この四角筒の両端開口部に鏡板を突合せ溶接してタンク本体を製造する。四角筒を製造する際は、めっき付着量が小さな他方の面を外面側とする。また、タンク内部に燃料の流通孔を複数有する複数の仕切板を配置し、仕切板とタンク本体とをスポット溶接してタンク本体の内部を複数の分割室に仕切る。更に、タンク本体の上面に給油口を設ける。燃料タンクの内面(一方の面)は通常無塗装とし、めっき付着量が小さな外面(他方の面)は塗装することが多い。外面の塗装種、塗装膜厚については特に限定されない。例えばメラミン系の水溶性樹脂を適用し、膜厚10〜100μm程度が望ましい。当然膜厚が厚い方が外面の防錆性は優れるがコストも増大するので、燃料タンク材が置かれる車体の位置等によって適正な膜厚を選定することとなる。
次に、本発明の実施例について説明するが、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
(実施例1)
表1に示す成分組成の溶鋼を転炉から出鋼し、スラブとした後、加熱温度:1220℃、仕上げ温度:870℃、巻取温度:630℃で熱間圧延した。熱延鋼板を冷延率70%で厚さ1mmになるように冷間圧延し、その後、連続溶融めっきラインにて焼鈍、Alめっきした。このときの焼鈍温度は780℃、めっき浴温660℃、めっき浴組成はAl−9%Siとし、更にめっき浴には鋼帯等から溶解したFeが約2.5%混入していた。めっき後、めっき付着量の調整をガスワイピング法にて行った。表裏面のガスワイピング条件を独立に制御して、それぞれの付着量を調整した。
こうして製造したAlめっき鋼板のシーム溶接性、スポット溶接性を評価した。シーム溶接については、100×500mmの試験片を2枚合わせ、このときめっき付着量の少ない面を外面側とした。電極径は250mm、電極先端Rは8mm、加圧力は500kgf、溶接電流は15kA、2on−1offとし(60Hz)、溶接速度は4m/分とした。連続的に1000枚溶接し、1000枚目のナゲット形成状況を観察した。電極と鋼板との反応が激しい場合には、電極と鋼板が溶着気味となり、鋼板を引き剥がす力が生じる。この力のためブローホールが生成したものを×とし、ブローホールのないものを○としてシーム溶接性を評価した。
またスポット溶接性についても評価した。230×320mmの試験片2枚合わせて、めっき付着量の少ない面を外面側とした。先端6φ−40RのDR電極を用いて、加圧力250kgf、通電12サイクル(60Hz)、溶接電流8kAで1000点溶接し、1000点目のナゲット形成状況を観察した。ナゲット径が4mm以上あるものを○、4mm未満であるものを×としてスポット溶接性を評価した。
また内面側の評価として、有機酸を含有する燃料に対する耐食性を評価した。ガソリンをJIS K2287に従って酸化劣化させた。この劣化ガソリンと通常のガソリンの混合物に対して水を10体積%混合し、水中の蟻酸約100ppm、酢酸約200ppmとなるように調整した。この腐食液500mL中に30×40mmに剪断し、端面シールした試験片を浸漬させ、45℃で1000時間腐食試験し、試験後の腐食深さを測定した。最大腐食深さが0.2mmよりも大きいものは×、0.2mm未満を○とした。
表2に、鋼成分と、内面側及び外面側のめっき付着量と、シーム溶接性と、スポット溶接性と、耐食性とを示す。
表2に示す試験例の内面側及び外面側のめっき層は、いずれも、Fe−Si−Al合金層上Si−Al合金層があるめっき層であった。
番号4では、外面側のめっき付着量が多いため、シーム溶接性、スポット溶接性が低下した。
また番号9は内面側のめっき付着量を大きくしたものであるが、このときには外面側もある程度めっき付着量が大きくなり、やはり溶接性に劣った。
番号5は内面側のめっき付着量が少ない場合で、内面環境における耐食性が低下した。
番号12は鋼板中のP量が低い場合であり、この場合にも溶接性の低下が認められた。
番号15については、シーム溶接及びスポット溶接のナゲット断面において割れが認められた。これは、鋼板中のP量が高いためと考えられ、このようなナゲットは望ましくない。
一方、本発明例では、鋼成分と内面側、外面側のめっき付着量を適正化することで良好な溶接性、内面耐食性が達成されることが確認された。
(実施例2)
表1の鋼B(板厚1mm)を用いて溶融Alめっきした。付着量は厚目付側で40g/m、薄目付側で19g/mとした。溶融Alめっき後、表3に示す薬液を両面に塗布し、80℃で焼き付けた。このようにして製造したAlめっき鋼板のスポット溶接性を評価した。評価方法は実施例1とほぼ同じであるが、打点数は1500点とし、1500点後のナゲット形成状況を断面観察し、4mm以上を○、4mm未満を△とした。
表3にスポット溶接性の評価結果を示す。皮膜の無い例が番号33であり、皮膜が厚い場合が番号32であり、番号24〜31はいずれも皮膜を適正量付与した例である。皮膜を適正量付与することで、スポット溶接の連続打点は1500点以上になることが示された。番号32、33はここでの評価は△であるが、実施例1の評価では○となっていた。
(実施例3)
表1の鋼F(板厚1.6mm)を用いて溶融Alめっきした。付着量は厚目付側で33g/mとし、薄目付側で8g/mとした。浴温を690℃とし、めっき後の冷却装置を使用せず、空冷としたところ、薄目付側の面ではAl−Si層がなくなり、外観は黒色を呈するようになった。このようにして製造したAlめっき鋼板のスポット溶接性を評価した。評価方法は実施例1とほぼ同じであるが、打点数は2000点とし、2000点後のナゲット形成状況を断面観察し、5.1mm以上を○、5.1mm未満を△としたところ、○の評価となった。すなわち、Al−Si層が無くなることで連続打点は2000点以上となることが示された。
前述したように、本発明によれば、シーム溶接性、スポット溶接性に優れためっき鋼板を提供するもので、本鋼板を適用することでこれら溶接を高生産で実行することが可能となる。これにより低廉なトラック・バス用燃料タンクを供給することが可能となり、産業上の利用可能性が高いものである。

Claims (5)

  1. 質量%で、C:0.0005〜0.08%、Si:0.003〜0.5%、Mn:0.05〜0.8%、P:0.005〜0.05%、S:0.1%以下を含有し、残部Fe及び不可避的不純部物からなる鋼板の一方の面及び他方の面に、Al−Fe−Si合金層とAl−Si層とを有する溶融Alめっき層が備えられ、前記一方の面と前記他方の面のめっき付着量がそれぞれ異なり、前記一方の面のめっき付着量が30〜60g/mの範囲であり、燃料タンクの外面となる前記他方の面のめっき付着量が5〜30g/mの範囲であることを特徴とするトラック・バス燃料タンク用めっき鋼板。
  2. 質量%で、C:0.0005〜0.08%、Si:0.003〜0.5%、Mn:0.05〜0.8%、P:0.005〜0.05%、S:0.1%以下を含有し、残部Fe及び不可避的不純部物からなる鋼板の一方の面に、Al−Fe−Si合金層とAl−Si層とを有し、めっき付着量が30〜60g/mである溶融Alめっき層が備えられ、燃料タンクの外面となる前記鋼板の他方の面には、Al−Fe−Si合金層からなり、めっき付着量が5〜30g/mである溶融Alめっき層が備えられていることを特徴とするトラック・バス燃料タンク用めっき鋼板。
  3. 前記鋼板が更に、質量%で、Ti:0.001〜0.1%、Nb:0.001〜0.05%またはB:0.0003%〜0.01%の1種又は2種以上を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のトラック・バス燃料タンク用めっき鋼板。
  4. 前記溶融Alめっき層の表面に、Cr、Zr、Ti、Si、Vの1種または2種以上の化合物を含有する皮膜が片面当たり50〜1000mg/mの付着量で形成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のトラック・バス燃料タンク用めっき鋼板。
  5. 請求項1〜4の何れか一項に記載のトラック・バス燃料タンク用めっき鋼板によって製造され、めっき付着量の少ない面が外面側とされていることを特徴とするトラック・バス用燃料タンク。
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