JP6146482B2 - 熱間プレス成形体およびその製造方法、ならびに熱間プレス成形体用めっき鋼板 - Google Patents

熱間プレス成形体およびその製造方法、ならびに熱間プレス成形体用めっき鋼板 Download PDF

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Description

本発明は、抵抗スポット溶接性に優れた熱間プレス成形体およびその製造方法、ならびに熱間プレス成形体用めっき鋼板に関するものである。
近年、地球環境保全の観点から、自動車車体の軽量化が熱望され、自動車車体に使用される鋼板を高強度化して、その板厚を低減する努力が続けられている。しかしながら、鋼板の高強度化に伴ってプレス成形性が低下するため、鋼板を所望の部材形状に加工することが困難になる場合が多くなっている。
上記を受けて、高強度鋼板のような難プレス成形材料をプレス加工する技術として、成形すべき材料を予め加熱して成形する方法がある。
特許文献1には、プレス加工が容易になるように成形すべき材料(鋼板)を予め加熱して軟化させた後、ダイとパンチからなる金型を用いて加熱された鋼板を成形すると同時に急冷を行い(以下、加熱した後、成形すると同時に冷却する工程を熱間プレス成形と称す)、成形の容易化と高強度化の両立を可能にした成形技術が開示されている。しかし、この成形技術では、成形前に鋼板をAc3点以上の高い温度に加熱することがプレス成形後に高い強度を得るために必要となる。このため鋼板表面にはスケール(鉄酸化物)が生成し、そのスケールが熱間プレス成形時に剥離して、金型を損傷させる、または熱間プレス成形後の成形体表面を損傷させるという問題がある。また、成形体表面に残ったスケールは、外観不良や塗装密着性の低下の原因になるだけでなく、電気抵抗が高いために、車体の組み立てにおいて主に用いられる抵抗スポット溶接が困難になるという問題がある。このため、通常は酸洗やショットブラストなどの処理を行って成形体表面のスケールは除去されるが、これは製造工程を複雑にし、生産性の低下を招く。
このような問題に対して、成形前の加熱時にスケールの生成を抑制し、酸洗やショットブラストなどの処理なしで、熱間プレス成形後の成形体の塗装性や耐食性を向上させることができ、かつ、抵抗スポット溶接が可能な熱間プレス用鋼板が要望され、そのための表面にめっき層などの被膜を設けた鋼板が従来より提案されている。
従来の熱間プレス用めっき鋼板としては、例えば、特許文献2に記載があるように、Al系めっき鋼板が多く用いられてきた。Al系めっき層の場合、オーステナイト域での加熱時にFeが急速にめっき層中に拡散してAlとFeとの合金層が形成され、酸洗やショットブラストなどの処理を行わずに抵抗スポット溶接が可能となる。しかし、このAl−Fe合金層は硬くて脆いため、加工時に剥離して加工生産性を低下させたり、金型寿命を短くしたりするという問題があった。
Al系めっき鋼板以外には、Zn系の熱間プレス用めっき鋼板も提案されている。例えば、特許文献3には、ZnまたはZnベース合金を被覆した鋼板を熱間プレス成形体とする際に、加熱時に、腐食や脱炭を防止するとともに、潤滑機能を有するZn−Feベースの化合物やZn−Fe−Alベースの化合物などの合金化合物を鋼板表面に生成させる方法が開示されている。この方法で製造された部材、特に、Zn−50〜55質量%Alの被覆された鋼板を用いた部材では、優れた腐食防止効果を得られることが示されている。
さらに、特許文献4には、合金化溶融Znめっき鋼板を用い、熱間プレス後の部材表面にFe−Zn固溶相を含むめっき層が形成された熱間プレス部材が開示されている。この熱間プレス部材では、優れた熱間プレス加工性(めっき層の密着性)、耐食性、溶接性が得られることが示されている。
英国特許第1490535号公報 特開2003−82436号公報 特許第3663145号公報 特許第4039548号公報
しかしながら、特許文献3および4に記載のZn系めっきが施されたZnめっき鋼板を熱間プレス成形に適用した場合、以下の問題がある。すなわち、熱間プレス成形では鋼板のAc3点以上に加熱しなければならない。この加熱処理中に、電気抵抗の高い酸化物(ZnO)がめっき表面に形成されるため、抵抗スポット溶接は可能ではあるものの、局部的に過熱された鋼板の一部が溶融飛散する現象である散りが発生しやすく、適正な溶接条件範囲が狭いという問題がある。そのため、ショットブラスト等により酸化物を除去する工程がスポット溶接前に必要になる。
本発明は、かかる事情に鑑み、ショットブラスト等により酸化物を除去する工程を必要としない抵抗スポット溶接性に優れた熱間プレス成形体およびその製造方法ならびに熱間プレス用めっき鋼板を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた。その結果、以下の知見を得た。
熱間プレス成形する際の加熱処理において、めっき表面に電気抵抗の高い酸化物層が表面に緻密に形成されている場合は、抵抗スポット溶接において無通電となるか、あるいは、散りが発生しやすく、適正電流範囲が狭いか、あるいは適正電流範囲が得られないことがわかった。これに対して、酸化物層が凹凸形状を示し、かつ、その下に熱間プレス成形時の加熱処理温度よりも融点の低いめっき層を有している場合は、抵抗スポット溶接において広い適正電流範囲が得られることを知見した。
本発明は、以上の知見に基づきなされたものであり、その要旨は以下の通りである。
[1] めっき鋼板を該めっき鋼板のAc3変態点以上の温度に加熱した後、金型を用いて成形すると同時に冷却することで得られる、めっき付きの熱間プレス成形体であって、
前記めっきの表面には、平均粗さRaが2μm以上であり、厚さの平均値が3μm以下である網目状の凹凸を持つ酸化物層があり、かつ、該酸化物層の下には、融点が前記加熱温度以下であるめっき層を有していることを特徴とする熱間プレス成形体。
[2]前記成形および冷却前のめっき層の密度が前記成形および冷却後にめっき層の表面に形成される酸化物層の密度より高いことを特徴とする上記[1]に記載の熱間プレス成形体。
なお、めっき層の密度とはめっき層を構成する主たる成分の密度で評価する。主たる成分とは重量%で50%を超える成分をいう。酸化物層の密度とは、めっき層を構成する主たる成分から形成される酸化物の密度をいう。
[3]鋼板表面にめっき層を有し、該めっき層の密度がめっき層を構成する主たる成分から形成される酸化物の密度より高いことを特徴とする熱間プレス成形体用めっき鋼板。
[4]上記[3]に記載の熱間プレス成形体用めっき鋼板を、該めっき鋼板のAc3変態点以上の温度で加熱後、金型を用いて成形すると同時に冷却することを特徴とする熱間プレス成形体の製造方法。
[5]前記加熱は、50℃/s以上の平均昇温速度で行うことを特徴とする上記[4]に記載の熱間プレス成形体の製造方法。
[6]前記加熱は、100℃/s以上の平均昇温速度で行うことを特徴とする上記[4]に記載の熱間プレス成形体の製造方法。
[7]前記加熱は、110℃/s以上の平均昇温速度で行うことを特徴とする上記[4]に記載の熱間プレス成形体の製造方法。
なお、本発明においては、熱間プレス成形体に用いられるめっき層を有する鋼板を総称して、熱間プレス成形体用めっき鋼板と呼称する。したがって、めっき処理後に合金化処理を施す、施さないにかかわらず、めっき層を有していれば本発明の熱間プレス成形体用めっき鋼板である。すなわち、本発明における熱間プレス成形体用めっき鋼板とは、熱間プレス成形に用いられる、合金化処理を施していない溶融亜鉛めっき鋼板、合金化処理を施した合金化溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板、溶融亜鉛−アルミニウム合金めっき鋼板、アルミニウムめっき鋼板などを含むものである。
また、成分の含有量を表す「%」は、特に断らない限り「質量%」を意味する。
本発明によれば、ショットブラスト等により酸化物を除去する工程を必要としない抵抗スポット溶接性に優れた熱間プレス成形体が得られる。
本発明の熱間プレス成形体用めっき鋼板を用いて熱間プレス成形を行うことにより、鋼板のかじりや破断が発生することなく加工が可能となり、ショットブラストなどのスケール除去を行う必要がないためコスト低減が可能となる。
図1は、Zn系めっき鋼板を用いて、不適切な加熱温度にて熱間プレスを行った熱間プレス成形体のめっき層の断面図である。 図2は、Zn系めっき鋼板を用いた熱間プレス成形体のめっき層の断面図である。 図3は、Al系めっき鋼板を用いた熱間プレス成形体のめっき層の断面図である。 図4は、プレス成形方法を説明するために用いる図である。
本発明の抵抗スポット溶接性に優れた熱間プレス成形体は、めっき鋼板をめっき鋼板のAc3変態点以上の温度に加熱した後、金型を用いて成形すると同時に冷却することで得られる、めっき付き熱間プレス成形体である。また、めっきの表面には、網目状の凹凸を持つ酸化物層があり、かつ、酸化物層の下には、融点が熱間プレス成形時の加熱温度以下であるめっき層を有してしていることを特徴とする。このような特徴を有することで、本発明の熱間プレス成形体は、抵抗スポット溶接において広い適正電流範囲が得られ抵抗スポット溶接性に優れることになる。
網目状の凹凸を持つ酸化物層
熱間プレス成形ではめっき鋼板をめっき鋼板のAc点以上(通常800℃〜1000℃)に加熱しなければならず、めっき表面にはめっきの酸化物が形成される。特にZn系のめっきの場合においては、電気抵抗値の高いZnOが表面に厚く形成され、これが原因となり、得られた熱間プレス成形体を抵抗スポット溶接した場合には散りが発生しやすく、抵抗スポット溶接の適正電流範囲が狭い場合がある。例えば、Zn−Niめっき鋼板を840℃まで3分かけて大気雰囲気中で加熱し、直後に金型で焼き入れた熱間プレス材においては、Zn‐Niめっきの融点よりも加熱温度が低いために、めっき表面に平坦なZnO層が形成されており(図1)、この熱間プレス材同士を2枚重ね合わせた板組に抵抗スポット溶接を行おうとしても、ZnO層が鋼板間の通電経路形成を阻害し、無通電となる場合がある。
一方、熱間プレス成形体のめっき表面に形成される酸化物が高い電気抵抗を示す酸化物であっても、めっき表面の酸化物が網目状の凹凸を形成している場合、抵抗スポット溶接が可能となる。これは、以下の理由による。重ね合わせた2枚以上の鋼板の少なくとも1枚に、めっき表面の酸化物が網目状の凹凸を形成している熱間プレス成形体を重ね合わせた板組みを一対の電極によって挟み、加圧力を加えながら抵抗スポット溶接を行う。この場合、電極加圧力が加えられた位置において、凹凸を持った酸化物層が崩壊することで通電経路が形成され、抵抗スポット溶接が可能となる。以上より、本発明では、めっきの表面には、網目状の凹凸を持つ酸化物層を有することとする。
さらに、網目状の凹凸を持つ酸化物層は、平均粗さRaが2μm以上であり、かつ、厚さの平均値を3μm以下とする。Raが2μm未満では、凹凸が小さく、電極により加圧されても酸化物層が十分には崩れないため、通電経路を確保することが困難となる。さらに好ましいRaは3μm以上である。また、酸化物層の厚さの平均が3μm超えでは、Raが2μm以上の凹凸があったとしても、酸化物層の厚さが厚すぎるために、酸化物層が崩壊しても通電経路を確保することが困難となる。
網目状の凹凸を持つ酸化物層は、めっき鋼板を加熱中にめっきの表面に形成される。この加熱処理中に形成される酸化物層は、その後に続く成形によって高い荷重が加えられる。酸化物層表面に凹凸が存在する場合は、この荷重によって、一部、凹凸が崩壊し不連続な酸化物層となり、抵抗スポット溶接時の通電経路が確保される。その結果、散りが発生しにくくなり、広い適正電流範囲を得ることが可能となり、より抵抗スポット溶接性に優れることになる。よって、めっきの表面には、不連続な酸化物層があることが好ましい。
このような網目状の凹凸を持つ酸化物層は、例えば、めっき層を構成する主たる成分の密度がめっき層を構成する主たる成分から形成される酸化物の密度よりも高いめっきを用い、かつ、熱間プレスの加熱温度が、めっき層の融点よりも高い温度に加熱することで形成させることができる。
これは、酸化物が形成される時、すなわち加熱時に、酸化物の密度がめっき層よりも低いと体積膨張が生じる。そして、酸化物層の下のめっき層が溶融すると、酸化物層の体積膨張を吸収するために大きく変形し、網目状の凹凸が形成されるのである。例えば、Zn系のめっきの場合には、Znの密度は7.14 g/cm3(室温)、600℃の溶融状態でも6.81g/cm3、ZnOの密度は5.61 g/cm3(室温)である。この場合、Zn系めっき表面がZnOとなる時、体積膨張が起こり、めっき層の融点よりも高温で加熱した場合は、図2に示されるように、めっき表面にZnOの網目状の凹凸が形成される。
一方、Al系のめっきの場合はAlの密度は2.70 g/cm3(室温)、Alの密度は3.95 g/cm3(室温)であり、図3に示されるよう、Al系のめっきではZn系のような網目状の凹凸は形成されない。
融点が熱間プレス成形時の加熱温度以下であるめっき層
融点が加熱温度よりも低いめっき層を、加熱処理中の酸化や鋼板への拡散等によってなくならずに酸化物層の下に有している場合は、抵抗スポット溶接の通電初期に、めっき層が溶融することで、めっき層上に形成されている電気抵抗の高い酸化物層が崩壊し、さらに溶融しためっきとともに加圧部分から崩壊した酸化物層が吐き出されて安定した広い通電経路が形成される。その結果、散りが発生しにくくなり、広い適正電流範囲を得ることが可能となる。このように、散りが発生しにくく、広い適正電流範囲を得るためには、酸化物層の下に融点が熱間プレス成形の際の加熱温度以下であるめっき層を有していることが必要である。なお、めっき層を有しているとは、任意の10視野のめっき層の断面をSEMの反射電子像で500倍で観察し、酸化物層を除く鋼板表面の50%以上にめっき層が存在していることとする。
前述したように、めっき層を構成する主たる成分の密度がめっき層を構成する主たる成分から形成される酸化物の密度よりも高いめっきを用いることで、凹凸をもつ酸化物層を形成することができる。この点から、めっきとしては、Zn系のめっきが好ましい。Zn系のめっきの場合、ZnのFeに対する犠牲防食性により優れた耐食性も持つことができる。めっき層のZn以外の残部に、例えばAl、Mgなどの成分が含まれる場合は、Al、Mgなどの密度はAl、Mgなどの酸化物の密度よりも低く、Al、Mgなどのイオン化傾向がZnよりも大きく酸化しやすいため、Al、Mgなどの成分が先に酸化され、めっき表面に凹凸を形成するうえで不利に働く。そのため、Al、Mgなどの成分はめっき相中に存在する量は少ない方が好ましい。例えば、Alは10%以下が好ましい。さらに好ましくは、Alは0.1%以下である。不可避的不純物としては、Mg:1.0 %未満、Si:1.0%未満であれば許容できる。このように、Mg:1.0%未満、Si:1.0%未満とすることによりドロスの付着が少なくなるとともに、熱間プレス成形時のめっき層の亀裂の発生が少なくなって、加工性が優れるという利点がある。
好適に用いることができるめっきとしては、質量%でAl:10%以下、Fe:20%以下を含有し、残部がZnおよび不可避的不純物からなるからなるめっきである。
また、好適に用いることができるその他のめっきとしては、Ni:10〜25%を含有し、残部がZnおよび不可避的不純物からなるめっきがある。付着量は10〜90g/m2が好ましい。Zn以外の残部に含有される成分に、イオン化傾向がZnよりも低くめっき層表面の凹凸の形成を阻害しないNiを含有することで、NiZn11、ZiZn、ZiZn21のいずれかの結晶構造を有する融点が最大881℃ときわめて高いγ相が形成される。これにより加熱過程におけるめっき層表面での過剰な酸化亜鉛形成を抑制することができる。亜鉛酸化層はたとえ凹凸が形成されていても抵抗スポット溶接における通電経路確保を阻害するものであるため、亜鉛酸化層は薄い方が好ましく、過剰な酸化亜鉛形成の抑制により通電経路がより効果的に確保される。さらに、熱間プレス成形完了後にも、めっき層はγ相として残存するため、Znの犠牲防食効果により優れた穴あき耐食性を発揮するとともに、抵抗スポット溶接の通電初期にγ相が溶融し、通電経路の拡大、安定化に寄与する。なお、Ni量が10〜25%におけるγ相の形成は、Ni-Zn合金の平衡状態図とは必ずしも一致しないが、これは電気めっき法などで行われるめっき層の形成反応が非平衡で進行するためと考えられる。
さらに好ましくは、鋼板表面から順に、60%以上のNiを含み、残部がZnおよび不可避的不純物からなり、付着量が0.01〜5g/m2のめっき層Iと、10〜25%のNiを含み、残部がZnおよび不可避的不純物からなり、付着量が10〜90g/m2のめっき層IIとを有するめっき層の構成とすることが好ましい。めっき層IのNi量が60%未満ではめっき層のZnが下地鋼板に拡散することを十分には抑制できないために、優れた穴あき耐食性が得られない場合がある。めっき層IのNi量が60%以上では、めっき層のZnの下地鋼板への拡散が抑制され、熱間プレス成形後も多くのγ相が残存し、抵抗スポット溶接の適正電流範囲拡大に寄与する。めっき層IのNi量は100%であることが好ましい。100%未満の場合は、残部は犠牲防食効果を有するZnおよび不可避的不純物とする。
また、めっき層Iの片面当たりの付着量は、0.01g/m2未満ではZnの下地鋼板への拡散を抑制する効果が十分に発揮されない。5g/m2を超えるとその効果が飽和し、コストアップを招く。よって、0.01〜5g/m2とする。
めっき層IIは、10〜25%のNiを含み、残部がZnおよび不可避的不純物からなるめっき層である。めっき層IIのNi量を10〜25%とすることにより、Ni2Zn11、NiZn3、Ni5Zn21のいずれかの結晶構造を有する融点が881℃と高いγ相が形成されるので、加熱過程におけるめっき層表面の過剰な酸化亜鉛形成を抑制することができる。亜鉛酸化層はたとえ凹凸が形成されていても抵抗スポット溶接における通電経路確保を阻害するものであるため、亜鉛酸化層は薄い方が好ましく、過剰な酸化亜鉛形成の抑制により通電経路がより効果的に確保される。さらに、熱間プレス成形完了後にも、めっき層IIはγ相として残存するため、Znの犠牲防食効果により優れた穴あき耐食性を発揮する。なお、Ni量が10〜25質量%におけるγ相の形成は、Ni-Zn合金の平衡状態図とは必ずしも一致しない。これは電気めっき法などで行われるめっき層の形成反応が非平衡で進行するためと考えられる。
めっき層IIの片面当たりの付着量は、10g/m2未満ではZnの犠牲防食効果が十分に発揮されない。90g/m2を超えるとその効果が飽和し、コストアップを招く。よって、10〜90g/m2とする。
こうしためっき層Iやめっき層IIの形成方法は特に限定されるものではない。公知の電気めっき法が好適である。
Ni2Zn11、NiZn3、Ni5Zn21のγ相は、X線回折法やTEM(Transmission Electron Microscopy)を用いた電子線回折法により確認できる。また、めっき層IIのNi量を10〜25質量%とすることにより上述のとおりγ相が形成されるが、電気めっきの条件等によっては多少のη相が混在することがある。このとき、加熱過程におけるめっき層表面での酸化亜鉛形成反応を最小限に抑制するために、η相の量は5質量%以下であることが好ましい。η相の量は、めっき層IIの全質量に対するη相の質量比で定義され、例えばアノード溶解法などにより定量することができる。
次に、めっき層の下地鋼板である熱間プレス成形体用めっき鋼板について説明する。
本発明の熱間プレス成形体用めっき鋼板は、鋼板表面にめっき層を有し、めっき層の密度がめっき層を構成する主たる成分から形成される酸化物の密度より高いことが好ましい。
また、前述したように、めっき層は、質量%で、Al:10%以下、Fe:20%以下を含有し、残部がZnおよび不可避的不純物からなることが好ましい。
また、Ni:10〜25%を含有し、残部がZnおよび不可避的不純物からなり、付着量が10〜90g/m2であることが好ましい。
また、めっき層が、鋼板表面から順に、質量%で、Ni:60%以上を含有し、残部がZnおよび不可避的不純物からなり、付着量が0.01〜5g/m2のめっき層Iと、質量%で、Ni:10〜25%を含有し、残部がZnおよび不可避的不純物からなり、付着量が10〜90g/m2のめっき層IIとを有することが好ましい。
熱間プレス成形体用めっき鋼板としては、熱延鋼板や冷延鋼板を用いることができる。
成分組成は、質量%で、C:0.15〜0.5%、Si:0.05〜2.0%、Mn:0.5〜3%、P:0.1%以下、S:0.05%以下、Al:0.1%以下、N:0.01%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる。好ましくは、質量%で、Cr:0.01〜1%、Ti:0.2%以下、B:0.0005〜0.08%のうちから選ばれた少なくとも一種や、質量%で、Sb:0.003〜0.03%を含有する。このような成分組成とすることで、熱間プレス成形体に980MPa以上の引張強度(以下、TSと称することもある)を付与することができる。
各成分元素の好適範囲の限定理由を、以下に説明する。
C:0.15〜0.5%
Cは、鋼の強度を向上させる元素であり、熱間プレス成形体のTSを980MPa以上にするには、C量を0.15%以上とする必要がある。一方、C量が0.5%を超えると、素材の鋼板のブランキング加工性が著しく低下する。したがって、C量は0.15〜0.5%とする。
Si:0.05〜2.0%
Siは、Cと同様、鋼の強度を向上させる元素であり、熱間プレス成形体のTSを980MPa以上にするには、Si量を0.05%以上とする必要がある。一方、Si量が2.0%を超えると、熱間圧延時に赤スケールと呼ばれる表面欠陥の発生が著しく増大するとともに、圧延荷重が増大し、熱延鋼板の延性の劣化を招く。さらに、Si量が2.0%を超えると、ZnやAlを主体としためっき皮膜を鋼板表面に形成するめっき処理を施す際に、めっき処理性に悪影響を及ぼす場合がある。したがって、Si量は0.05〜2.0%とする。
Mn:0.5〜3.0%
Mnは、フェライト変態を抑制して焼入れ性を向上させるのに効果的な元素である。また、Ac3変態点を低下させるので、熱間プレス前の加熱温度を低下するにも有効な元素である。このような効果の発現のためには、Mn量を0.5%以上とする必要がある。一方、Mn量が3.0%を超えると、偏析して素材の鋼板および熱間プレス成形体の特性の均一性が低下する。したがって、Mn量は0.5〜3.0%とする。
P:0.1%以下
P量が0.1%を超えると、偏析して鋼板および熱間プレス成形体の機械的特性の均一性が低下するとともに、靭性も著しく低下する。したがって、P量は0.1%以下とする。さらに好ましくは、抵抗スポット溶接部の十字引張強さを向上させるために、P量は0.02%以下である。
S:0.05%以下
S量が0.05%を超えると、熱間プレス成形体の靭性が低下する。したがって、S量は0.05%以下とする。
Al:0.1%以下
Al量が0.1%を超えると、鋼板のブランキング加工性や焼入れ性を低下させる。したがって、Al量は0.1%以下とする。
N:0.01%以下
N量が0.01%を超えると、熱間圧延時や熱間プレス前の加熱時にAlNの窒化物を形成し、素材の鋼板のブランキング加工性や焼入れ性を低下させる。したがって、N量は0.01%以下とする。
残部はFeおよび不可避的不純物である。
必要に応じて、適宜、下記目的により以下の元素を含有することができる。
Cr:0.01〜1%、Ti:0.2%以下、B:0.0005〜0.08%のうちから選ばれた少なくとも一種 および/またはSb:0.003〜0.03%
Cr:0.01〜1%
Crは、鋼を強化するとともに、焼入れ性を向上させるのに有効な元素である。このような効果を発現するためには、Cr量を0.01%以上とすることが好ましい。一方、Cr量が1%を超えると著しいコスト高を招くため、Cr量の上限は1%とすることが好ましい。
Ti:0.2%以下
Tiは、鋼を強化するとともに、細粒化により靭性を向上させるのに有効な元素である。また、Bよりも優先して窒化物を形成して、固溶Bによる焼入れ性の向上効果を発揮させるのに有効な元素でもある。しかし、Ti量が0.2%を超えると、熱間圧延時の圧延荷重が極端に増大し、また、熱間プレス成形体の靭性が低下するので、Ti量の上限は0.2%とすることが好ましい。
B:0.0005〜0.08%
Bは、熱間プレス時の焼入れ性や熱間プレス後の靭性向上に有効な元素である。こうした効果の発現のためには、B量を0.0005%以上とすることが好ましい。一方、B量が0.08%を超えると、熱間圧延時の圧延荷重が極端に増大し、また、熱間圧延後にマルテンサイト相やベイナイト相が生じて鋼板の割れなどが生じるので、B量の上限は0.08%とすることが好ましい。
Sb:0.003〜0.03%
Sbは、鋼板を加熱してから熱間プレスの一連の処理によって鋼板を冷却するまでの間に鋼板表層部に生じる脱炭層を抑制する効果を有する。このような効果を発現するためにはSbの量を0.003%以上とすることが好ましい。一方、Sb量が0.03%を超えると、圧延荷重の増大を招き、生産性を低下させる。したがって、Sb量の上限は0.03%とすることが好ましい。
以上からなる熱間プレス成形体用めっき鋼板を、めっき鋼板のAc3変態点以上の温度で加熱後、金型を用いて成形すると同時に冷却することで抵抗スポット溶接性に優れためっき付き熱間プレス成形体が製造される。加熱は、50℃/s以上の平均昇温速度で行うことが好ましい。より好ましくは、100℃/s以上、さらに好ましくは、110℃/s以上の平均昇温速度である。なお、本発明において、平均昇温速度とは、室温(20℃)から加熱温度までの昇温速度の平均であり、((加熱温度)―室温(20℃))/(昇温時間)で求めることができる。
Ac3変態点以上に加熱するのは、熱間プレス時の急冷でマルテンサイト相などの硬質相を形成し、熱間プレス成形体の高強度化を図るためである。また、めっき層の融点以上に加熱するのは、めっき層を溶融させ、表面に形成されるめっき層の酸化物に凹凸を形成させるためである。一方、加熱温度が1000℃を超えるとめっき層表面において多量の酸化物層が形成し、さらに酸化物層に凹凸を形成したとしても、抵抗スポット溶接時に通電経路の形成を阻害するきわめて厚い酸化物層を形成する場合がある。よって、加熱温度の上限は1000℃が好ましい。なお、ここでいう加熱温度とは鋼板の最高到達温度のことをいう。
また、加熱時の平均昇温速度を50℃/s以上にすると、めっき層表面における厚い酸化物層の生成を抑制でき、抵抗スポット溶接性がより向上する。めっき層表面における酸化物層の生成は、鋼板が高温条件下に晒される高温滞留時間が長くなるほど増大するため、平均昇温速度が速いほど、高温滞留時間を短くすることができる。この結果、めっき層表面での酸化物層の生成を抑制できる。なお、最高到達板温における保持時間は特に限定されるものではない。酸化物層の生成を抑制するためには短時間とする方が好適であり、好ましくは300s以下、より好ましくは60s以下、さらに好ましくは10s以下である。
加熱方法としては、電気炉やガス炉などによる加熱、火炎加熱、通電加熱、高周波加熱、誘導加熱などを例示できる。特に、平均昇温速度を50℃/s以上にするには、通電加熱、高周波加熱、誘導加熱などが好適である。
また、熱間プレス成形後に、熱間プレス成形した成形体を金型より取り出し、液体または気体を用いて冷却することも可能である。
下地鋼板として、質量%で、C:0.23%、Si:0.25%、Mn:1.2%、P:0.01%、S:0.01%、Al:0.03%、N:0.005%、Cr:0.2%、Ti:0.02%、B:0.0022%、Sb:0.008%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、Ac3変態点が820℃で、板厚1.2mmの冷延鋼板を用いた。この冷延鋼板の表面に、表1に記載の7種類のめっき(合金化溶融Znめっき(GA)、溶融Znめっき(GI)、電気純Znめっき(EG)、電気Zn合金メッキ(Zn-Ni)、Zn-Alめっき(Zn-Al)、Zn-Al-Siめっき(Zn-Al-Si)、Al-Si めっき(Al-Si))を施し、熱間プレス成形処理後の抵抗スポット溶接時の適正電流範囲を調査した。なお、合金化溶融Znめっき(GA)の融点は主となるδ1相で約670℃、溶融Znめっき(GI)および電気純Znめっき(EG)の融点は約420℃、電気Zn合金メッキ(Zn-Ni)の融点は約800℃〜880℃、Zn-Alめっき(Zn-Al)の融点は約380℃〜400℃、Zn-Al-Siめっき(Zn-Al-Si)の融点は約570℃、Al-Si めっき(Al-Si)の融点は主たる成分のAlの融点が約660℃であるが、加熱中にFeと合金化するため1000℃以上となる。
上記鋼板に対して、900℃まで180秒かけて大気中にて加熱し、900℃で保持することなく、炉内から取り出し、大気中にて700℃まで空冷した後、直ちに図4に模式的に示したようなプレス成形方法で絞り加工し、熱間プレス成形体を作製した。なお、絞り加工を行うときのポンチ幅は70mm、加工高さは30mmとした。
次いで、上記により得られた熱間プレス成形体の頭部の平坦部から試料を採取し、めっき層表面の網目状の凹凸を持つ酸化層の有無、めっき表面の平均粗さ、酸化物層の厚み、酸化物層の下へのめっき層の残存を確認した。
めっき層表面の網目状の凹凸の有無は、表面をSEMにて観察し有無を判断した。凹凸がある場合を○、ない場合を×とした。
めっき層の平均粗さは、表面粗さ測定器を用いて、適切な10か所について測定した。平均粗さの平均が3μm以上を「〇」、2μm以上3μm未満を「△」、2μm未満を「×」とした。
酸化物層の厚みは、めっき層の断面SEM観察により求めた。SEMにて反射電子像を1500倍にて10視野撮影し、撮影した画像から最表面に形成されている酸化物層の厚さの平均値を求めた。3μm以下を「〇」、3μmを超える場合を「×」とした。また、同時に画像からめっき層の残存の有無を確認した。酸化物層を除く鋼板表面の50%以上にめっき層の残存が確認された物を「〇」、50%未満の場合を「×」とした。
上記により得られた熱間プレス成形体に対して、溶接試験を行った。溶接試験はインバータ直流抵抗スポット溶接機を用い、クロム銅製のDR形電極(電極先端径6mm)にて、加圧力450kgf、通電時間340msecで溶接を行い、ナゲット径が4√t(t:板厚(mm))となる電流値から散り発生までで定義する適正電流範囲を求めた。適正電流範囲が1kA以上を溶接性良好とし「○」、1.5kA以上をさらに溶接性良好とし「◎」と表記した。適正電流範囲1kA未満は「×」と表記した。
以上により得られた結果を、条件と併せて表1に示す。
表1より、No.1〜5の本発明例では適正電流範囲が1kA以上確保されている。特に、Alを含有しないNo.4は、平均粗さ(Ra)が3μm以上であり、適正溶接電流範囲も1.5kA以上とより優れた抵抗スポット溶接性を示している。
一方で、Al含有量が多いために網目状の凹凸が形成されなかった比較例のNo.6においては適正電流範囲を1kA確保できていない。現在最も多用されているNo.7のAl-Siめっきにおいては、網目状の凹凸は形成されていないが、1kA以上の適正電流範囲が得られている。これは加熱中にめっき層がAl-Fe合金層となり、Al酸化物の形成量は少なく、また、Znが含まれないために、抵抗の高いZnOが形成されないことによる。この場合、溶接性には優れるが、Znの犠牲防食作用が得られないため、耐食性に劣る欠点がある。
下地鋼板として、質量%で、C:0.23%、Si:0.25%、Mn:1.2%、P:0.01%、S:0.01%、Al:0.03%、N:0.005%、Cr:0.2%、Ti:0.02%、B:0.0022%、Sb:0.008%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、Ac3変態点が820℃で、板厚1.2mmの冷延鋼板を用いた。この冷延鋼板の表面に、200g/Lの硫酸ニッケル六水和物および0〜50g/Lの硫酸亜鉛七水和物を含有するpH3.0、温度50℃のめっき浴中で、電気めっき処理を施して、Ni含有量100%(質量%)で付着量0.05g/m2のめっき層Iを形成した。次に、200g/Lの硫酸ニッケル六水和物および10〜100g/Lの硫酸亜鉛七水和物を含有するpH1.5、温度50℃のめっき浴中で、電気めっき処理を施して、Ni含有量12%、付着量60 g/m2のめっき層IIを形成した。次いで、めっき鋼板は通電加熱または炉加熱にて表2に示す条件で加熱し、実施例1と同様の条件で成形および冷却を行い、熱間プレス成形体を作製した。
上記により得られた熱間プレス成形体に対して、実施例1と同様の方法、評価基準で、めっき層表面の網目状の凹凸の有無、めっき表面の平均粗さ、酸化物層の厚み、酸化物層の下へのめっき層の残存を確認した。
また、上記により得られた熱間プレス成形体に対して、実施例1と同様の条件で溶接試験を行った。評価基準は、適正電流範囲が1kA以上を溶接性良好とし「○」、1.5kA以上をさらに溶接性良好とし「◎」、2.0kA以上をより一層溶接性良好とし「◎◎」と表記した。適正電流範囲1kA未満は「×」と表記した。
実施例1と同様である。
得られた結果を条件と併せて表2に示す。

Claims (7)

  1. めっき鋼板を該めっき鋼板のAc3変態点以上の温度に加熱した後、金型を用いて成形すると同時に冷却することで得られる、めっき付きの熱間プレス成形体であって、
    前記めっきの表面には、平均粗さRaが2μm以上であり、厚さの平均値が3μm以下である網目状の凹凸を持つ酸化物層があり、かつ、該酸化物層の下には、融点が前記加熱温度以下で、片面あたりの付着量が60〜90g/m 2 あるめっき層を有していることを特徴とする熱間プレス成形体。
  2. 前記成形および冷却前のめっき層の密度が前記成形および冷却後にめっき層の表面に形成される酸化物層の密度より高いことを特徴とする請求項1に記載の熱間プレス成形体。
  3. 請求項1または2に記載の熱間プレス成形体用のめっき鋼板であって、鋼板表面にめっき層を有し、該めっき層の密度がめっき層を構成する主たる成分から形成される酸化物の密度より高いことを特徴とする熱間プレス成形体用めっき鋼板。
  4. 請求項1または2に記載の熱間プレス成形体の製造方法であって、鋼板表面にめっき層を有し、該めっき層の密度がめっき層を構成する主たる成分から形成される酸化物の密度より高い熱間プレス成形体用めっき鋼板を、該めっき鋼板のAc3変態点以上の温度で加熱後、金型を用いて成形すると同時に冷却することを特徴とする熱間プレス成形体の製造方法。
  5. 前記加熱は、50℃/s以上の平均昇温速度で行うことを特徴とする請求項4に記載の熱間プレス成形体の製造方法。
  6. 前記加熱は、100℃/s以上の平均昇温速度で行うことを特徴とする請求項4に記載の熱間プレス成形体の製造方法。
  7. 前記加熱は、110℃/s以上の平均昇温速度で行うことを特徴とする請求項4に記載の熱間プレス成形体の製造方法。
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