以下に添付図面を参照して、この発明に係る検査装置、画像形成装置および印刷物の検査方法の実施の形態を詳細に説明する。
<第1の実施形態>
図1は、本実施形態に係る検査装置100を含む印刷システムの概要を示す模式図である。印刷システムは、印刷物を生成する画像形成装置200と、画像形成装置200が生成した印刷物を検査する検査装置100と、検査装置100により欠陥無しと判定された印刷物に対して後処理を行う後処理装置300とを備える。
画像形成装置200は、元画像に基づいて、給紙トレイ210から給紙される記録媒体に画像を形成し、印刷物を生成する。画像形成プロセスの方式は、例えば、電子写真方式やインクジェット記録方式などである。電子写真方式の場合は、元画像に応じた書き込み光を感光体に照射して静電潜像を形成し、この静電潜像をトナーで現像してトナー像を生成する。このトナー像を直接、あるいは中間転写体を介して給紙トレイ210から給紙された記録媒体に転写し、定着器によりトナー像を記録媒体に定着させて印刷物を生成する。インクジェット方式の場合は、元画像に基づいて印字ヘッドを駆動してインク滴を吐出し、給紙トレイ210から給紙された記録媒体に印字ヘッドから吐出したインク滴を付着させて印刷物を生成する。
画像形成装置200により生成された印刷物は、検査装置100に供給される。画像形成装置200から検査装置100に供給される印刷物の搬送速度、つまり画像形成装置200による印刷物の排紙速度は、印刷システムに対して要求される生産性に応じて定まる。以下、印刷システムに対して要求される生産性に応じた規定の搬送速度を基準速度V0と表記する。
検査装置100は、画像形成装置200から供給される印刷物を下流側に搬送しながら印刷物の画像を読み取り、画像形成装置200が印刷物を生成する際に用いた元画像と、印刷物から読み取った読取画像とを比較することで、印刷物の欠陥有無を判定する。検査装置100は、欠陥有無の判定結果に応じて印刷物の排出経路を切り替える。欠陥有りと判定された印刷物は、欠陥排紙トレイ110に排出される。一方、欠陥無しと判定された印刷物は、後処理装置300に供給される。
後処理装置300は、検査装置100から供給された印刷物に対して、例えば、折り曲げ処理、ステープル処理、穴あけ処理など、指定された後処理を施す。後処理が施された印刷物は、印刷物排紙トレイ310に排出される。
以上のような印刷システムでは、画像形成装置200により生成された印刷物のうち、検査装置100によって欠陥無しと判定された印刷物のみに対して、後処理装置300による後処理が施されて印刷物排紙トレイ310に排出される。したがって、最終的に得られる印刷物の品質を維持することができる。
図2は、本実施形態に係る検査装置100の概略構成を示す構成図である。検査装置100は、読取前搬送部(第1の搬送手段)120と、読取部(読取手段)130と、読取後搬送部(第2の搬送手段)140と、切替部(切替手段)150と、制御部160とを備える。読取前搬送部120、読取部130、読取後搬送部140、および、切替部150は、印刷物の搬送経路の上流側から下流側に向かって、この順番で配置されている。
読取前搬送部120は、画像形成装置200から供給される印刷物を、読取部130の読取位置P1へと搬送する。読取前搬送部120は、例えば、第1搬送ローラ121と第2搬送ローラ122とを備える。第1搬送ローラ121および第2搬送ローラ122は、それぞれ駆動ローラと従動ローラとを組み合わせたローラ対である。第1搬送ローラ121は、印刷システムに対して要求される生産性に応じて画像形成装置200から基準速度V0で供給される印刷物を、そのままの基準速度V0で読取位置P1へと搬送する。一方、第2搬送ローラ122は、画像形成装置200から基準速度V0で供給される印刷物を、基準速度V0よりも速い増速搬送速度V1で読取位置P1へと搬送する。
読取前搬送部120は、後述する制御部160の読取前速度制御部162による制御に応じて、第1搬送ローラ121と第2搬送ローラ122とを選択的に使用して、画像形成装置200から供給される印刷物を読取位置P1へと搬送する。例えば、印刷物を基準速度V0で読取位置P1に搬送する場合は、読取前速度制御部162による制御に応じて、第2搬送ローラ122のローラ対を図示しないアクチュエータにより離間させ、第1搬送ローラ121により印刷物を搬送する。一方、印刷物を増速搬送速度V1で読取位置P1に搬送する場合は、読取前速度制御部162による制御に応じて、画像形成装置200から基準速度V0で供給される印刷物の先端が第2搬送ローラ122のローラ対に噛み合うタイミングで、第1搬送ローラ121のローラ対を図示しないアクチュエータにより離間させ、第2搬送ローラ122により印刷物を搬送する。印刷物の先端が第2搬送ローラ122のローラ対に噛み合うタイミングは、例えば、印刷物の先端を光学センサなどのセンサにより検知することで判定できる。また、第2搬送ローラ122の駆動ローラを回転駆動するモータの負荷を監視して、負荷が所定の値を超えタイミングを、印刷物の先端が第2搬送ローラ122のローラ対に噛み合うタイミングとして検出することもできる。
なお、本実施形態では、読取前搬送部120が第1搬送ローラ121と第2搬送ローラ122の2つの搬送ローラを用いて、読取位置P1への印刷物の搬送速度を基準速度V0と増速搬送速度V1とで切り替えられるようにしているが、速度可変モータの駆動制御により1つの搬送ローラの回転速度を切り替えることで、読取位置P1への印刷物の搬送速度を、基準速度V0と増速搬送速度V1とで切り替える構成とすることもできる。
読取部130は、読取前搬送部120により搬送される印刷物の画像を読み取る。読取部130は、例えば、印刷物の表面の画像を読み取るための表面読取センサ131と、印刷物の裏面の画像を読み取るための裏面読取センサ132とを備える。読取前搬送部120により搬送される印刷物は、読取位置P1を通過する際に、表面読取センサ131により表面の画像が読み取られ、裏面読取センサ132により裏面の画像が読み取られる。これら表面読取センサ131および裏面読取センサ132により読み取られた読取画像は、図示しない読取画像メモリに格納される。本実施形態では、この読取画像メモリの記憶容量は印刷物1枚分の容量である。つまり、読取部130による印刷物の画像の読み取りが行われるたびに、読取画像メモリに格納される読取画像が更新される。
読取後搬送部140は、読取部130による画像の読み取りが終了した印刷物を、切替部150の切替位置P2へと搬送する。読取後搬送部140は、例えば、搬送ローラ141を備える。搬送ローラ141は、駆動ローラと従動ローラとを組み合わせたローラ対である。搬送ローラ141は、読取部130による画像の読み取りが終了した印刷物を、基準速度V0で切替位置P2へと搬送する。つまり、本実施形態に係る検査装置100では、読取前搬送部120によって基準速度V0よりも速い増速搬送速度V1で印刷物が読取位置P1に搬送された場合でも、読取部130による画像の読み取りが終了すると(つまり印刷物の後端が読取部130の読取位置P1を通過すると)、その印刷物は読取後搬送部140により基準速度V0で切替位置P2へと搬送される。
切替部150は、後述する制御部160の欠陥判定部161による判定結果に応じて、切替位置P2に到達した印刷物の排出経路を切り替える。切替部150は、例えば、欠陥判定部161により動作制御されるガイド部材151を備える。ガイド部材151は、欠陥判定部161が欠陥無しと判定した印刷物を、切替位置P2から第1排出経路R1へと導き、欠陥判定部161が欠陥有りと判定した印刷物を、切替位置P2から第2排出経路R2へと導くように動作する。ガイド部材151によって第1排出経路R1に導かれた印刷物は、第1排出ローラ111により搬送されて後処理装置300に供給される。一方、ガイド部材151によって第2排出経路R2に導かれた印刷物は、第2排出ローラ112により搬送されて欠陥排紙トレイ110に排出される。
制御部160は、欠陥判定部(欠陥判定手段)161と、読取前速度制御部(第1の速度制御手段)162とを備える。これら欠陥判定部161や読取前速度制御部162は、例えば、制御部160がCPUやROM、RAM、入出力回路などを備えるマイクロコンピュータとして構成されている場合、このマイクロコンピュータで実行されるプログラム(ソフトウェア)により実現することができる。また、欠陥判定部161や読取前速度制御部162は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field-Programmable Gate Array)などの専用のハードウェアを用いて構成することもできる。
欠陥判定部161は、読取部130が印刷物から読み取った読取画像と、画像形成装置200が印刷物を生成する際に用いた元画像とを比較して、印刷物の欠陥有無を判定する。元画像は、画像形成装置200がこの元画像に基づいて記録媒体に画像を形成する際に、画像形成装置200から検査装置100へと送られて、図示しない元画像メモリに格納される。欠陥判定部161は、読取部130により印刷物から読み取られて読取画像メモリに格納された読取画像と、画像形成装置200から送られて元画像メモリに格納された元画像とを、画素単位あるいは複数画素の集合である画素ブロック単位で比較する。そして、欠陥判定部161は、比較の結果、例えば、読取画像と元画像との間に基準値を超える差分が検出されなければ欠陥無しと判定し、基準値を超える差分が検出された場合は欠陥有りと判定する。
読取前速度制御部162は、読取前搬送部120が印刷物を基準速度V0で読取部130へと搬送すると欠陥判定部161による判定が正常に行われない場合に、読取前搬送部120の搬送速度が増速搬送速度V1となるように、読取前搬送部120を制御する。具体的には、読取前速度制御部162は、上述したように、印刷物の先端が第2ローラ122のローラ対に噛み合うタイミングで第1ローラ121のローラ対を離間させ、第2ローラ122により印刷物を増速搬送速度V1で読取部130まで搬送させる。
ここで、欠陥判定部161による判定が正常に行われない場合とは、例えば、先行して搬送される印刷物(以下、先行印刷物という。)に対する欠陥有無の判定が終了する前に、先行印刷物に続いて搬送される印刷物(以下、後続印刷物という。)の先端が読取位置P1に到達し、後続印刷物に対する読取部130による画像の読み取りが開始される場合である。すなわち、欠陥判定部161は、上述したように、印刷物1枚分の記憶容量しか持たない読取画像メモリに格納された読取画像と、元画像メモリに格納された元画像とを比較して、印刷物の欠陥有無を判定する。ここで、先行印刷物に対する欠陥判定部161による判定が終了する前に、後続印刷物に対する読取部130による画像の読み取りが開始されると、読取画像メモリの内容が先行印刷物の読取画像から後続印刷物の読取画像に書き換えられてしまい、先行印刷物に対する欠陥判定部161による判定を正常に行うことができない。したがって、欠陥判定部161による判定を正常に行うためには、先行印刷物に対する画像の読み取りが終了してから後続印刷物に対する画像の読み取りが開始されるまでの間に、先行印刷物に対する欠陥有無の判定が終了していることが条件となる。以下、この条件を第1条件という。
また、第1条件を満足する場合であっても、先行印刷物と後続印刷物の双方とも、欠陥判定部161による判定が終了する前に切替位置P2を通過してしまうと、切替部150が欠陥判定部161の判定結果に応じて排出経路の切り替えを行うことができない。したがって、切替部150による排出経路の切り替えを適切に行うためには、画像の読み取りが終了した印刷物が切替え位置P2に到達するまでの間に、先行印刷物に対する欠陥有無の判定が終了することが条件となる。以下、この条件を第2条件という。つまり、印刷物の欠陥を検査する検査装置100に対しては、上記の第1条件と第2条件との双方を満足することが求められる。
図3は、先行印刷物および後続印刷物の搬送状態と、読取部130による画像読取の処理および欠陥判定部161による欠陥判定の処理との関係を示すタイミングチャートである。
先行印刷物の先端が読取位置P1に到達すると、先行印刷物に対する読取部130による画像の読み取りが開始される。その後、先行印刷物の後端が読取位置P1を通過したタイミングで、先行印刷物に対する読取部130による画像の読み取りが終了する。先行印刷物に対する画像の読み取りが終了すると、判定部161は、先行印刷物に対する欠陥有無の判定を開始することができる。この判定部161による欠陥有無の判定は、図3に示すように、先行印刷物が切替位置P2に到達するまでの間に終了する必要がある(第2条件)。
また、後続印刷物の先端が読取位置P1に到達すると、後続印刷物に対する読取部130による画像の読み取りが開始される。その後、後続印刷物の後端が読取位置P1を通過したタイミングで、後続印刷物に対する読取部130による画像の読み取りが終了する。後続印刷物に対する画像の読み取りが終了すると、判定部161は、後続印刷物に対する欠陥有無の判定を開始することができる。この判定部161による欠陥有無の判定は、先行印刷物に対する欠陥有無の判定と同様に、後続印刷物が切替位置P2に到達するまでの間に終了する必要がある(第2条件)。
また、先行印刷物に対する判定部161による欠陥有無の判定は、図3に示すように、後続印刷物の先端が読取位置P1に到達するまでの間に終了する必要がある(第1条件)。先行印刷物に対する判定部161による欠陥有無の判定が終了する前に後続印刷物の先端が読取位置P1に到達すると、読取画像メモリの内容が先行印刷物の読取画像から後続印刷物の読取画像に書き換えられてしまい、先行印刷物に対する欠陥有無の判定を正常に行えなくなるからである。同様に、後続印刷物に対する判定部161による欠陥有無の判定は、この後続印刷物にさらに後続する印刷物の先端が読取位置P1に到達する前に終了する必要がある。
本実施形態では、読取部130の読取位置P1から切替部150の切替位置P2までの距離が十分に長く、読取後搬送部140が、読取位置P1から切替位置P2まで基準速度V0で印刷物を搬送しても、印刷物が切替位置P2に到達する前に印刷物に対する欠陥有無の判定が終了するものとする。つまり、本実施形態では、上記の第2条件は満足することを前提とする。そして、印刷システムに対して要求される生産性の向上に伴い、上記の第1条件が満足できなくなることが想定される場合に、読取前速度制御部162による制御によって、読取前搬送部120が印刷物を増速搬送速度V1で読取位置P1へと搬送することで、第1条件を満足できるようにする。
図4は、本実施形態に係る検査装置100において、一連の搬送経路に沿って搬送される印刷物の搬送速度を説明する説明図である。本実施形態に係る検査装置100では、画像形成装置100により生成された印刷物は、基準速度V0[mm/s]で検査装置100に供給され、読取前搬送部120によって基準速度V0よりも速い増速搬送速度V1[mm/s]で読取部130へと搬送される。読取部130で画像の読み取りが終了した印刷物は、読取後搬送部140によって再び基準速度V0[mm/s]で切替部150へと搬送される。
本実施形態に係る検査装置100では、図4に示すように、読取部130による画像の読み取りが終了するまでの間、読取前搬送部120が印刷物を基準速度V0よりも速い増速搬送速度V1で搬送することにより、第1条件を満足させる。以下、具体的な例を挙げながら、第1の条件を満足させるための増速搬送速度V1について、さらに詳しく説明する。
図5は、印刷物の搬送経路における任意の点を先行印刷物が通過してから後続印刷物が到達するまでの時間を説明する説明図である。ここでは、印刷物の搬送経路における任意の点を、読取部130の読取位置P1とする。先行印刷物の先端が読取位置P1を通過してから後続印刷物の先端が読取位置P1に到達するまでの時間(以下、紙送りインターバル時間という。)T1[ms]は、印刷システムに対して要求される生産性に応じた紙送り周期により定まる。また、先行印刷物の後端が読取位置P1を通過してから後続印刷物の先端が読取位置P1に到達するまでの時間(以下、読取インターバル時間という。)T2[ms]は、紙送りインターバル時間T1と、印刷物が読取位置P1に到達するまでの搬送速度により定まる。本実施形態に係る検査装置100では、生産性の向上に伴って紙送りインターバル時間T1が短くなった場合でも、読取インターバル時間T2が、欠陥判定部161による欠陥有無の判定に要する時間(以下、判定所要時間という。)T3[ms]よりも長くなるように、読取前搬送部120が印刷物を基準速度V0よりも速い増速搬送速度V1で読取部130へと搬送する。
ここでは、生産性が90PPMの場合には読取前搬送部120が基準速度V0で印刷物を読取部130へと搬送しても第1条件を満足することができていたが、生産性が100PPMに高められることで、読取前搬送部120が基準速度V0で印刷物を読取部130へと搬送すると第1条件を満足することができなくなる場合を想定する。なお、印刷物のサイズはA4であり、印刷物はA4の短辺方向が搬送方向となるように搬送(A4横送り)されるものとする。また、生産性が90PPMの場合も100PPMの場合も画像形成装置200が記録媒体(印刷物)を搬送する速度は440mm/sであり、生産性に応じた基準速度V0は440mm/sで変化しないものとする。また、判定所要時間T3は最大で190msであるものとする。
生産性が90PPMの場合、画像形成装置200から1分間に90枚の印刷物が供給されるため、紙送りインターバル時間T1は670msとなる。ここで、印刷物の搬送速度が基準速度V0=440mm/sとすると、読取インターバル時間T2は193msとなる。したがって、生産性が90PPMの場合には、印刷物の搬送速度が基準速度V0=440mm/sであっても、読取インターバル時間T2が判定所要時間T3の最大値よりも長くなるため、第1条件を満足する。
一方、生産性が100PPMの場合、画像形成装置200から1分間に100枚の印刷物が供給されるため、紙送りインターバル時間T1は600msとなる。ここで、印刷物の搬送速度が基準速度V0=440mm/sとすると、読取インターバル時間T2は122msとなる。したがって、生産性が100PPMの場合には、読取位置P1までの印刷物の搬送速度が基準速度V0=440mm/sになっていると、読取インターバル時間T2が判定所要時間T3よりも短くなり、第1条件を満足することができない。
そこで、生産性が100PPMの場合でも、生産性が90PPMの場合と同等の読取インターバル時間T2を確保して第1条件を満足できるようにするために、読取位置P1までの印刷物の搬送速度を、基準速度V0から増速搬送速度V1に増速する。つまり、生産性が90PPMから100PPMに高められ、紙送りインターバル時間T1が670msから600msに短縮されても、読取インターバル時間T2が、生産性が90PPMの場合と同等の193msになるように、基準速度V0=440mm/sよりも速い増速搬送速度V1にて、印刷物を読取位置P1まで搬送する。ここで、A4横送りの場合、搬送方向における印刷物のサイズは210mmとなるため、読取インターバル時間T2を193msにする増速搬送速度V1は、210[mm]÷(600[ms]−193[ms])=515[mm/s]となる。
このように、生産性が90PPMから100PPMに高められ、印刷物を基準速度V0=440mm/sで読取位置P1に搬送すると第1条件を満足できなくなる場合には、印刷物を読取位置P1に搬送する搬送速度を、基準速度V0=440mm/sから増速搬送速度V1=515mm/sに増速することによって、判定所要時間T3の最大値=190msよりも長い読取インターバル時間T2=193msを確保することができ、第1条件を満足することができる。
以上、具体的な例を挙げながら詳細に説明したように、本実施形態に係る検査装置100は、印刷物を基準速度V0で読取位置P1に搬送すると読取インターバル時間T2が判定所要時間T3よりも短くなり、欠陥判定部161による欠陥有無の判定を正常に行われなくなる場合に、印刷物を読取位置P1まで増速搬送速度V1で搬送し、判定所要時間T3よりも長い読取インターバル時間T2を確保できるようにしている。このように、本実施形態に係る検査装置100は、従来技術のように印刷物の搬送速度を遅くするのではなく、印刷物の搬送速度を増速することで印刷物に対する欠陥有無の判定を正常に行えるようにしているので、生産性の低下を招くことなく、印刷物の検査を適切に行うことができる。
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、画像の読み取りが終了した先行印刷物を基準速度V0で切替位置P2に搬送すると、先行印刷物が読取位置P1を通過してから切替位置P2に到達するまでの時間(以下、読取後搬送時間という。)T4が、先行印刷物に対する判定所要時間T3よりも短くなり、上記の第2条件を満足できなくなる場合に、基準速度V0よりも遅い減速搬送速度V2で先行印刷物を切替位置P2に搬送し、第2条件を満足できるようにする。また、第2の実施形態では、先行印刷物を減速搬送速度V2で切替位置P2に搬送することで先行印刷物が切替位置P2に到達するタイミングが遅延する分、後続印刷物が読取位置P1に到達するタイミングを早めることで生産性が維持されるように、上記の第1条件が満足できる範囲で、後続印刷物を基準速度V0よりも速い増速搬送速度V1で読取位置P1に搬送する。以下、第1の実施形態と共通の構成については同一の符号を付して重複した説明を省略し、本実施形態に特徴的な部分についてのみ説明する。
図6は、第2の実施形態に係る検査装置100Aの概略構成を示す構成図である。検査装置100Aは、第1の実施形態の読取後搬送部140に代えて、読取後搬送部140Aを備える。また、検査装置100Aは、第1の実施形態の制御部160に代えて、制御部160Aを備える。
読取後搬送部140Aは、第1の実施形態の読取後搬送部140と同様、読取部130による画像の読み取りが終了した印刷物を切替部150の切替位置P2へと搬送する。本実施形態の読取後搬送部140Aは、例えば、第1搬送ローラ141Aと第2搬送ローラ142とを備える。第1搬送ローラ141Aおよび第2搬送ローラ142は、それぞれ駆動ローラと従動ローラとを組み合わせたローラ対である。第1搬送ローラ141Aは、読取部130による画像の読み取りが終了した印刷物を、基準速度V0で切替位置P2へと搬送する。一方、第2搬送ローラ142は、読取部130による画像の読み取りが終了した印刷物を、基準速度V0よりも遅い減速搬送速度V2で切替位置P2へと搬送する。
読取後搬送部140Aは、後述する制御部160Aの読取後速度制御部164による制御に応じて、第1搬送ローラ141Aと第2搬送ローラ142とを選択的に使用して、読取部130による画像の読み取りが終了した印刷物を切替位置P2へと搬送する。例えば、印刷物を基準速度V0で切替位置P2に搬送する場合は、読取後速度制御部164による制御に応じて、第2搬送ローラ142のローラ対を図示しないアクチュエータにより離間させ、第1搬送ローラ141Aにより印刷物を搬送する。一方、印刷物を減速搬送速度V2で切替位置P2に搬送する場合は、読取後速度制御部164による制御に応じて、読取部130による画像の読み取りが終了した印刷物の先端が第2搬送ローラ142のローラ対に噛み合うタイミングで、第1搬送ローラ141Aのローラ対を図示しないアクチュエータにより離間させ、第2搬送ローラ142により印刷物を搬送する。印刷物の先端が第2搬送ローラ142のローラ対に噛み合うタイミングは、例えば、印刷物の先端を光学センサなどのセンサにより検知することで判定できる。また、第2搬送ローラ142の駆動ローラを回転駆動するモータの負荷を監視して、負荷が所定の値を超えタイミングを、印刷物の先端が第2搬送ローラ142のローラ対に噛み合うタイミングとして検出することもできる。
なお、本実施形態では、読取後搬送部140Aが第1搬送ローラ141Aと第2搬送ローラ142の2つの搬送ローラを用いて、切替位置P2への印刷物の搬送速度を基準速度V0と減速搬送速度V2とで切り替えられるようにしているが、速度可変モータの駆動制御により1つの搬送ローラの回転速度を切り替えることで、切替位置P2への印刷物の搬送速度を、基準速度V0と減速搬送速度V2とで切り替える構成とすることもできる。
制御部160Aは、欠陥判定部161と、終了判定部(終了判定手段)163と、読取後速度制御部(第2の速度制御手段)164と、読取前速度制御部162Aとを備える。これら欠陥判定部161、終了判定部163、読取後速度制御部164、および読取前速度制御部162Aは、例えば、制御部160Aがマイクロコンピュータとして構成されている場合、このマイクロコンピュータで実行されるプログラム(ソフトウェア)により実現することができる。また、欠陥判定部161、終了判定部163、読取後速度制御部164、および読取前速度制御部162Aは、例えば、ASICやFPGAなどの専用のハードウェアを用いて構成することもできる。なお、欠陥判定部161は第1の実施形態と共通の構成である。
終了判定部163は、読取部130による画像の読み取りが終了した印刷物を基準速度V0で切替部150の切替位置P2へと搬送した場合に、印刷物が切替位置P2に到達するまでの間に欠陥判定部161による判定が終了するか否かを判定する。すなわち、終了判定部163は、読取後搬送部140Aが基準速度V0で印刷物を搬送した場合の読取後搬送時間T4が、判定所要時間T3よりも短くなるか否かを判定する。
判定所要時間T3は、例えば、読取部130により印刷物から読み取られた読取画像のデータ量に基づいて予測することができる。すなわち、欠陥判定部161が読取画像と元画像とを比較する際の演算量は読取画像のデータ量と相関があり、読取画像のデータ量が大きいほど欠陥判定部161での演算量が多くなり、判定所要時間T3が長くなる。また、読取後搬送部140Aが基準速度V0で印刷物を搬送した場合の読取後搬送時間T4は、読取位置P1から切替位置P2までの距離(固定値)と基準速度V0とから算出することができる。終了判定部163は、読取部130による画像の読み取りが終了した段階で、読取画像のデータ量に基づいて判定所要時間T3の予測値を算出し、この判定所要時間T3の予測値を予め求めておいた読取後搬送時間T4と比較することで、印刷物が切替位置P2に到達するまでの間に欠陥判定部161による判定が終了するか否かを判定することができる。
読取後速度制御部164は、終了判定部163によって、印刷物が切替位置P2に到達するまでの間に欠陥判定部161による判定が終了しないと判定された場合に、読取後搬送時間T4が判定所要時間T3以上となる搬送速度の減速率を算出する。そして、読取後速度制御部164は、読取後搬送部140Aの第2搬送ローラ142によって、画像の読み取りが終了した印刷物が読取位置P1から切替位置P2まで、算出した減速率に応じた減速搬送速度V2で搬送されるように、読取後搬送部140Aを制御する。
読取前速度制御部162Aは、先行印刷物が読取後搬送部140Aによって減速搬送速度V2で切替位置P2に搬送される場合に、先行印刷物が切替位置P2に到達するタイミングの遅延分を、後続印刷物が読取位置P1に到達するまでの搬送速度の増速によって相殺させるための増速率を算出する。そして、読取前速度制御部162Aは、読取前搬送部120の第2搬送ローラ122によって、画像形成装置200から基準速度V0で供給される後続印刷物が、算出した増速率に応じた増速搬送速度V1で読取位置P1まで搬送されるように、読取前搬送部120を制御する。
図7は、本実施形態に係る検査装置100Aにおいて順次搬送される印刷物の紙間距離を説明する説明図である。図中のD1,D2,D3は、順次搬送される印刷物を示しており、印刷物D1、印刷物D2、印刷物D3の順に搬送されるものとする。印刷物D2と印刷物D3との関係において、印刷物D1は先行印刷物、印刷物D2は後続印刷物となる。また、印刷システムに対して要求される生産性に応じた基準速度V0で印刷物D1,D2,D3を搬送した場合の紙間距離をL0とする。
本実施形態に係る検査装置100Aでは、印刷物D1,D2,D3を基準速度V0で搬送すると、印刷物D2の判定所要時間T3が読取後搬送時間T4よりも短くなる場合に、読取後速度制御部164により制御される読取後搬送部140Aによって、印刷物D2を読取位置P1から切替位置P2まで減速搬送速度V2で搬送する。これにより、印刷物D2と印刷物D1との間の紙間距離はL0からL1に拡大され、印刷物D2が切替位置P2に到達するタイミングが遅延する。
このとき、読取前速度制御部162Aにより制御される読取前搬送部120によって、印刷物D3を読取位置P1まで増速搬送速度V1で搬送することで、印刷物D2と印刷物D3との間の紙間距離をL0からL2に縮小させて、印刷物D1から印刷物D3までの距離が、基準速度V0で印刷物D1,D2,D3を搬送した場合と同等となるようにする。これにより、印刷物D2が切替位置P2に到達するタイミングの遅延分を、印刷物D3が読取位置P1に到達するタイミングを早めることで相殺することができ、印刷システムに対して要求される生産性を維持することができる。
なお、先行印刷物(図7の例では印刷物D2)が切替位置P2に到達するタイミングの遅延分を、1つの後続印刷物(図7の例では印刷物D3)が読取位置P1に到達するタイミングを早めることで相殺しようとすると、上記の第1条件を満たせなくなる場合がある。この場合は、先行印刷物が切替位置P2に到達するタイミングの遅延分を、複数の後続印刷物に均等に割り振り、第1条件を満足できる増速率の増速搬送速度で複数の後続印刷物を読取位置P1まで順次搬送することで、最終的に先行印刷物が切替位置P2に到達するタイミングの遅延分を相殺できるようにすればよい。
図8は、本実施形態の制御部160Aによる搬送速度の制御を説明するフローチャートである。この図8のフローチャートは、先行印刷物が読取位置P1を通過してから、先行印刷物が切替位置P2に到達し、且つ、後続印刷物が読取位置P1を通過するまでの間の制御部160Aによる搬送速度の制御を示している。
先行印刷物が読取位置P1を通過すると、ステップS101において、終了判定部163が、読取部130により読み取られた先行印刷物の読取画像のデータ量に基づいて、判定所要時間T3の予測値を算出する。
次に、終了判定部163は、ステップS102において、ステップS101で算出した判定所要時間T3の予測値と、読取後搬送部140Aが基準速度V0で印刷物を搬送した場合の読取後搬送時間T4とを比較して、先行印刷物が切替位置P2に到達するまでの間に欠陥判定部161による判定が終了するか否かを判定する。
終了判定部163が、先行印刷物が切替位置P2に到達するまでの間に欠陥判定部161による判定が終了すると判定した場合は(ステップS102:Yes)、そのまま図8のフローチャートで示す搬送速度の制御が終了する。一方、終了判定部163が、先行印刷物が切替位置P2に到達するまでの間に欠陥判定部161による判定が終了しないと判定した場合は(ステップS102:No)、読取後速度制御部164が、ステップS103において、読取後搬送時間T4が判定所要時間T3以上となる搬送速度の減速率を算出する。そして、読取後速度制御部164は、ステップS104において、ステップS103で算出した減速率に応じた減速搬送速度V2で先行印刷物が切替位置P2へと搬送されるように、読取後搬送部140Aを制御する。
その後、読取後速度制御部164は、ステップS105において、先行印刷物が切替位置P2に到達したか否かを判定し、先行印刷物が切替位置P2に到達するまで(ステップS105:No)、読取後搬送部140Aによる減速搬送速度V2での搬送を継続させる。そして、先行印刷物が切替位置P2に到達すると(ステップS105:Yes)、読取後速度制御部164は、ステップS106において、読取後搬送部140Aの搬送速度を基準速度V0に戻して、減速搬送速度V2での搬送を終了させる。
また、読取後速度制御部164によるステップS104〜S106の処理と並行して、読取前速度制御部162Aにより、ステップS107〜ステップS110の処理が行われる。すなわち、読取前制御部162Aは、ステップS107において、ステップS103で算出された減速率に応じた減速搬送速度V2で先行印刷物が切替位置P2まで搬送されることによる遅延分を相殺するための増速率を算出する。そして、読取前制御部162Aは、ステップS108において、ステップS107で算出した増速率に応じた増速搬送速度V1で後続印刷物が読取位置P1へと搬送されるように、読取前搬送部120を制御する。
その後、読取前速度制御部162Aは、ステップS109において、後続印刷物が読取位置P1を通過したか否かを判定し、後続印刷物が読取位置P1を通過するまで(ステップS109:No)、読取前搬送部120による増速搬送速度V1での搬送を継続させる。そして、後続印刷物が読取位置P1を通過すると(ステップS109:Yes)、読取前速度制御部162Aは、ステップS110において、読取前搬送部120の搬送速度を基準速度V0に戻して、増速搬送速度V1での搬送を終了させる。
以上説明したように、本実施形態に係る検査装置100Aは、先行印刷物を基準速度V0で切替位置P2まで搬送すると第2条件を満足できなくなる場合に、先行印刷物を減速搬送速度V2で切替位置P2に搬送することで第2条件を満足できるようにするとともに、第1条件を満足する範囲で、後続印刷物を増速搬送速度V1で読取位置P1へと搬送し、先行印刷物が切替位置P2に到達するタイミングの遅延分を相殺する。したがって、本実施形態に係る検査装置100Aによれば、生産性の低下を招くことなく、印刷物の検査を適切に行うことができる。
<第3の実施形態>
次に、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態では、第2の実施形態と同様に、先行印刷物を基準速度V0で切替位置P2に搬送すると第2条件を満足することができなくなる場合に、先行印刷物を減速搬送速度V2で切替位置P2に搬送するとともに、後続印刷物を増速搬送速度V1で読取位置P1に搬送する。ただし、本実施形態では、印刷物の欠陥有無の判定を、検査装置の装置本体に対して通信可能に接続された外部計算機において行う。以下、第1および第2の実施形態と共通の構成については同一の符号を付して重複した説明を省略し、本実施形態に特徴的な部分についてのみ説明する。
図9は、第3の実施形態に係る検査装置100Bの概略構成を示す構成図である。検査装置100Bは、装置本体に対して通信可能に接続された外部計算機180を備える。また、検査装置100Bの装置本体は、読取部130により読み取られた印刷物の読取画像を外部計算機180に転送する転送部170を備える。また、検査装置100Bの装置本体は、第2の実施形態の制御部160Aに代えて、制御部160Bを備える。
外部計算機180は、欠陥判定部181を備える。欠陥判定部181は、第1の実施形態の制御部160、第2の実施形態の制御部160Aが備える欠陥判定部161と同様に、読取部130が印刷物から読み取った読取画像と、画像形成装置200が印刷物を生成する際に用いた元画像とを比較して、印刷物の欠陥有無を判定する。この欠陥判定部181は、例えば、制御部180がマイクロコンピュータを備える場合、このマイクロコンピュータで実行されるプログラム(ソフトウェア)により実現することができる。また、欠陥判定部181は、例えば、外部計算機180に実装されたASICやFPGAなどの専用のハードウェアを用いて構成することもできる。
転送部170は、外部計算機180との間で所定の通信方式に従った無線あるいは有線によるデータ通信を行って、読取部130により読み取られた印刷物の読取画像を外部計算機180に転送する。
制御部160Bは、終了判定部163Bと、読取後速度制御部164と、読取前速度制御部162Aとを備える。これら終了判定部163B、読取後速度制御部164、および読取前速度制御部162Aは、例えば、制御部160Bがマイクロコンピュータとして構成されている場合、このマイクロコンピュータで実行されるプログラム(ソフトウェア)により実現することができる。また、終了判定部163B、読取後速度制御部164、および読取前速度制御部162Aは、例えば、ASICやFPGAなどの専用のハードウェアを用いて構成することもできる。なお、読取後速度制御部164および読取前速度制御部162Aは第2の実施形態と共通の構成である。
終了判定部163Bは、第2の実施形態の制御部160Aが備える終了判定部163と同様に、判定所要時間T3の予測値と読取後搬送時間T4と比較して、印刷物が切替位置P2に到達するまでの間に欠陥判定部181による判定が終了するか否かを判定する。ただし、本実施形態の制御部160Bが備える終了判定部163Bは、転送部170が印刷物の読取画像を外部計算機180に転送する転送時間を考慮して、判定所要時間T3の予測値を算出する。
本実施形態では、欠陥判定部181が外部計算機180に設けられているため、判定所要時間T3の予測値を算出するには、欠陥判定部181が読取画像と元画像とを比較する時間だけでなく、転送部170が読取画像を外部計算機180に転送する転送時間も予測する必要がある。ここで、転送部170が読取画像を外部計算機180に転送する転送時間は、読取画像のデータ量と、転送部170が利用する通信方式のデータ転送レートとに基づいて予測することができる。終了判定部163Bは、読取部130による画像の読み取りが終了した段階で、読取画像のデータ量と転送部170が利用する通信方式のデータ転送レートとに基づいて転送時間を予測するとともに、読取画像のデータ量に基づいて欠陥判定部181が読取画像と元画像とを比較する時間を予測し、判定所要時間T3の予測値を算出する。そして、終了判定部163Bは、この判定所要時間T3の予測値を予め求めておいた読取後搬送時間T4と比較することで、印刷物が切替位置P2に到達するまでの間に欠陥判定部181による判定が終了するか否かを判定することができる。
終了判定部163Bによって印刷物が切替位置P2に到達するまでの間に欠陥判定部161による判定が終了しないと判定された場合は、第2の実施形態と同様に、先行印刷物が読取後搬送部140Aにより減速搬送速度V2で切替位置P2へと搬送され、後続印刷物が読取前搬送部120により増速搬送速度V1で読取位置P1へと搬送される。基準速度V0に対する減速搬送速度V2の減速率は、第2の実施形態と同様に、読取後速度制御部164によって、上記の第2条件を満足する値が算出される。また、基準速度V0に対する増速搬送速度V1の増速率は、第2の実施形態と同様に、読取前速度制御部162Aによって、上記の第1条件を満足する範囲で、印刷システムに対して要求される生産性を維持できる値が算出される。
以上説明したように、本実施形態に係る検査装置100Bは、第2の実施形態に係る検査装置100Aと同様に、先行印刷物を基準速度V0で切替位置P2まで搬送すると第2条件を満足できなくなる場合に、先行印刷物を減速搬送速度V2で切替位置P2に搬送するとともに、後続印刷物を増速搬送速度V1で読取位置P1に搬送するようにしているので、生産性の低下を招くことなく、印刷物の検査を適切に行うことができる。また、本実施形態に係る検査装置100Bは、印刷物の欠陥有無の判定を外部計算機180で行うようにしているので、装置本体の制御部160Bの処理負荷を低減させることができる。
<第4の実施形態>
次に、第4の実施形態について説明する。第4の実施形態は、第3の実施形態と同様に、印刷物の欠陥有無の判定を外部計算機において行うが、印刷物の読取画像は圧縮した状態で外部計算機に転送する。また、第4の実施形態は、読取前搬送部120が印刷物の搬送を開始する前に、元画像の画素密度に基づいて判定所要時間T3の予測値を算出し、印刷物を基準速度V0で搬送すると上記の第2条件を満足することができない場合に、印刷物を増速搬送速度V1で読取位置P1まで搬送した後に減速搬送速度V2で切替位置P2まで搬送することで、生産性を維持しつつ第2条件を満足できるようにする。以下、第1乃至第3の実施形態と共通の構成については同一の符号を付して重複した説明を省略し、本実施形態に特徴的な部分についてのみ説明する。
図10は、第4の実施形態に係る検査装置100Cの概略構成を示す構成図である。検査装置100Cは、第3の実施形態の外部計算機180に代えて、外部計算機180Cを備える。また、検査装置100Cの装置本体は、読取部130により読み取られた印刷物の読取画像を圧縮する圧縮部190を備える。また、検査装置100Cの装置本体は、第3の実施形態の制御部160Bに代えて、制御部160Cを備える。
外部計算機180Cは、欠陥判定部181と、伸張部182とを備える。伸張部182は、装置本体に設けられた圧縮部190で圧縮された後に転送部170から外部計算機180Cに転送された印刷物の読取画像を、圧縮部190での圧縮方式に応じて伸張する。欠陥判定部181は第3の実施形態と共通の構成である。
圧縮部190は、読取部130により読み取られた印刷物の読取画像を所定の圧縮方式に従って圧縮し、圧縮後の読取画像のデータを転送部170に渡す。転送部170は、所定の通信方式に従って、圧縮部190により圧縮された読取画像を外部計算機180Cに転送する。
制御部160Cは、終了判定部163Cと、読取後速度制御部164と、読取前速度制御部162Cとを備える。これら終了判定部163C、読取後速度制御部164、および読取前速度制御部162Cは、例えば、制御部160Cがマイクロコンピュータとして構成されている場合、このマイクロコンピュータで実行されるプログラム(ソフトウェア)により実現することができる。また、終了判定部163C、読取後速度制御部164、および読取前速度制御部162Cは、例えば、ASICやFPGAなどの専用のハードウェアを用いて構成することもできる。なお、読取後速度制御部164は第2の実施形態および第3の実施形態と共通の構成である。
終了判定部163Cは、第3の実施形態の制御部160Bが備える終了判定部163Bと同様に、判定所要時間T3の予測値と読取後搬送時間T4と比較して、印刷物が切替位置P2に到達するまでの間に欠陥判定部181による判定が終了するか否かを判定する。ただし、本実施形態の制御部160Cが備える終了判定部163Cは、元画像の画素密度に基づいて、読取前搬送部120が印刷物の搬送を開始する前に、元画像の画素密度(画像の全領域に対する白以外の画素が存在する割合)に基づいて判定所要時間T3の予測値を算出し、印刷物が切替位置P2に到達するまでの間に欠陥判定部181による判定が終了するか否かを判定する。なお、元画像の画素密度は、画像形成装置200が元画像に基づいて記録媒体に画像を形成する際に画像形成装置200において算出され、元画像のデータとともに画像形成装置200から検査装置100Cへと送られて、制御部160C内部の所定のメモリに格納される。
本実施形態では、印刷物の読取画像を圧縮した状態で外部計算機180Cに転送し、外部計算機180Cの伸張部182で伸張した読取画像を元画像と比較して欠陥有無の判定を行うため、判定所要時間T3には、読取画像の圧縮・伸張時間と、圧縮した読取画像の転送時間と、読取画像を元画像と比較する時間とが含まれる。ここで、本実施形態では、読取前搬送部120が印刷物の搬送を開始する前に、この印刷物に対する判定所要時間T3の予測値を算出する必要があるため、読取画像のデータ量に基づいて転送時間や元画像との比較に要する時間を予測することができない。ただし、印刷物のサイズは予め分かっており、圧縮部190や伸張部182が用いる圧縮方式や、転送部170の通信方式も既知であるため、圧縮された読取画像の転送時間と、読取画像を元画像と比較する時間は、ある程度の精度で予測することができる。
また、一般的に知られている多くの画像の圧縮方式では、処理の対象となる画像の画素密度により圧縮・伸張時間が増減する。本実施形態においても、画像の画素密度により圧縮・伸張時間が増減する圧縮方式を採用する。このため、読取画像の圧縮・伸張時間は、画像形成装置200が元画像に基づいて記録媒体に画像を形成する際に画像形成装置200から送られる元画像の画素密度に基づいて予測することができる。終了判定部163Cは、読取前搬送部120が印刷物の搬送を開始する前に、元画像の画素密度に基づいて読取画像の圧縮・伸張時間を予測し、この圧縮・伸張時間と、印刷物のサイズや転送方式などから予測される転送時間や元画像との比較時間とに基づき、判定所要時間T3の予測値を算出する。そして、終了判定部163Cは、この判定所要時間T3の予測値を予め求めておいた読取後搬送時間T4と比較することで、印刷物が切替位置P2に到達するまでの間に欠陥判定部181による判定が終了するか否かを判定することができる。
終了判定部163Cによって印刷物が切替位置P2に到達するまでの間に欠陥判定部181による判定が終了しないと判定された場合、読取後速度制御部164は、読取後搬送時間T4が判定所要時間T3以上となる減速搬送速度V2の減速率を算出する。また、読取前速度制御部162Cは、印刷物が減速搬送速度V2で切替位置P2に搬送されることで切替位置P2に到達するタイミングが遅延する分、その前段の読取位置P1に到達するタイミングを早めて生産性が維持できるように、増速搬送速度V1の増速率を算出する。そして、読取前搬送部120が、読取前速度制御部162Cにより算出された増速率に応じた増速搬送速度V1で印刷物を読取位置P1まで搬送した後、読取後搬送部140Aが、読取後速度制御部164により算出された減速率に応じた減速搬送速度V2で印刷物を切替位置P2へと搬送する。
ここで、生産性を維持しつつ、読取後搬送時間T4を判定所要時間T3以上とするための増速搬送速度V1および減速搬送速度V2の具体例について説明する。ここでは、印刷システムに対して要求される生産性が90PPM、基準速度V0=440mm/sであり、読取位置P1までの搬送経路の長さが295.8mm、読取位置P1から切替位置P2までの搬送経路の長さも295.8mmとする。また、印刷物のサイズはA4であり、印刷物はA4の短辺方向が搬送方向となるように搬送(A4横送り)されるものとする。また、A4サイズの読取画像に対する欠陥判定部181の平均的な処理時間(読取画像と元画像とを比較する時間)は150ms、A4サイズの圧縮された読取画像の転送時間は15msであるものとする。また、読取画像の圧縮・伸張時間は、図11に示すように元画像の画素密度と相関があり、元画像の画素密度は50%であるものとする。図11は、圧縮部190および伸張部182が用いる圧縮方式に対応した読取画像の圧縮・伸張時間と元画像の画像密度との関係を示す特性図である。
本例の場合、元画像の画素密度が50%であるので、図11の特性図から、読取画像の圧縮・伸張時間は35msと予測される。また、読取画像の転送時間が15ms、欠陥判定部181の処理時間が150msであるため、判定所要時間T3の予測値は、35[ms]+15[ms]+150[ms]=200[ms]となる。
一方、読取位置P1から切替位置P2までの搬送経路の長さが295.8mm、搬送方向における印刷物のサイズは210mm、基準速度V0=440mm/sであるため、印刷物を読取位置P1から切替位置P2まで基準速度V0で搬送した場合の読取後搬送時間T4は、(295.8[mm]−210[mm])/440[mm/s]=195[ms]となる。したがって、本例の場合、読取後搬送手段140Aが印刷物を基準速度V0で搬送すると、読取後搬送時間T4が判定所要時間T3よりも短くなり、印刷物が切替位置P2に到達するまでの間に欠陥判定部181による判定を終了することができない。
本例の場合、判定所要時間T3に対する読取後搬送時間T4の不足分は5msであるため、読取後搬送時間T4を5ms延長させる減速搬送速度V2を求める。つまり、基準速度V0で印刷物を搬送した場合に195msとなる読取後搬送時間T4を、減速搬送速度V2で印刷物を搬送することで200msまで延長させる。読取後搬送時間T4を200msにする減速搬送速度V2は、(295.8[mm]−210[mm])/200[ms]=443.3[mm/s]となる。
一方、読取後搬送時間T4が5ms延長された分、生産性を維持するために、印刷物が読取位置P1を通過するまでの時間を、基準速度V0で印刷物を搬送した場合に対して5ms短縮させる必要がある。ここで、基準速度V0=440mm/sであり、読取位置P1までの搬送経路の長さは295.8mmであるため、印刷物が読取位置P1を通過するまでの時間を5ms短縮させる増速搬送速度V1は、295.8[mm]/{(295.8[mm]/440[mm/s])−5[ms]}=443.3[mm/s]となる。
図12は、本実施形態の制御部160Cによる搬送速度の制御を説明するフローチャートである。この図12のフローチャートは、1つの印刷物に対する制御部160Cによる搬送速度の制御を示している。
まずステップS201において、終了判定部163Cが、所定のメモリに格納されている元画像の画素密度を取得する。次に、終了判定部163Cは、ステップS202において、ステップS201で取得した元画像の画素密度に基づいて、判定所要時間T3の予測値を算出する。
次に、終了判定部163Cは、ステップS203において、ステップS202で算出した判定所要時間T3の予測値と、読取後搬送部140Aが基準速度V0で印刷物を搬送した場合の読取後搬送時間T4とを比較して、印刷物が切替位置P2に到達するまでの間に欠陥判定部181による判定が終了するか否かを判定する。
印刷物が切替位置P2に到達するまでの間に欠陥判定部181による判定が終了すると判定された場合は(ステップS203:Yes)、そのまま図12のフローチャートで示す搬送速度の制御が終了する。一方、印刷物が切替位置P2に到達するまでの間に欠陥判定部181による判定が終了しないと判定された場合は(ステップS203:No)、読取後速度制御部164が、ステップS204において、読取後搬送時間T4が判定所要時間T3以上となる減速搬送速度V2の減速率を算出する。
次に、読取前速度制御部162Cが、ステップS205において、印刷物がステップS204で算出された減速率に応じた減速搬送速度V2で切替位置P2まで搬送されることによる遅延分を相殺するための増速搬送速度V1の増速率を算出する。そして、読取前速度制御部162Cは、ステップS206において、ステップS205で算出した増速率に応じた増速搬送速度V1で印刷物が読取位置P1へと搬送されるように、読取前搬送部120を制御する。
その後、読取前速度制御部162Cは、ステップS207において、印刷物が読取位置P1に通過したか否かを判定し、印刷物が読取位置P1を通過するまで(ステップS207:No)、読取前搬送部120による増速搬送速度V1での搬送を継続させる。そして、印刷物が読取位置P1を通過すると(ステップS207:Yes)、読取前速度制御部162Cは、ステップS208において、読取前搬送部120の搬送速度を基準速度V0に戻して、増速搬送速度V1での搬送を終了させる。
次に、読取後制御部164が、ステップS209において、ステップS204で算出した減速率に応じた減速搬送速度V2で印刷物が切替位置P2へと搬送されるように、読取後搬送部140Aを制御する。
その後、読取後速度制御部164は、ステップS210において、印刷物が切替位置P2に到達したか否かを判定し、印刷物が切替位置P2に到達するまで(ステップS210:No)、読取後搬送部140Aによる減速搬送速度V2での搬送を継続させる。そして、印刷物が切替位置P2に到達すると(ステップS210:Yes)、読取後速度制御部164は、ステップS211において、読取後搬送部140Aの搬送速度を基準速度V0に戻して、減速搬送速度V2での搬送を終了させる。
以上、具体的な例を挙げながら詳細に説明したように、本実施形態に係る検査装置100Cは、印刷物を基準速度V0で切替位置P2まで搬送すると第2条件を満足できなくなる場合に、印刷物を増速搬送速度V1で読取位置P1に搬送した後、減速搬送速度V2で切替位置P2に搬送するようにしているので、生産性の低下を招くことなく、印刷物の検査を適切に行うことができる。また、本実施形態に係る検査装置100Cは、印刷物の欠陥有無の判定を外部計算機180で行うようにしているので、装置本体の制御部160Cの処理負荷を低減させることができる。さらに、本実施形態に係る検査装置100Cでは、読取前搬送部120による印刷物の搬送が開始される前に判定所要時間T3の予測値を算出するので、生産性を維持しつつ印刷物の検査を適切に行えるようにするための搬送速度の制御を、印刷物ごとに独立して実施することができ、制御が簡便になる。
以上、本発明の具体的な実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を加えながら具体化することができる。例えば、上述した各実施形態では、検査装置を画像形成装置とは別の装置として構成しているが、検査装置の機能を画像形成装置の一機能として実装するようにしてもよい。
また、上述した各実施形態は、適宜組み合わせて実施することができる。例えば、第1の実施形態と第2または第3の実施形態とを組み合わせて上記の第1条件および第2条件の双方を満足させる検査装置や、第1の実施形態と第4の実施形態とを組み合わせて第1条件および第2条件の双方を満足させる検査装置を実現することができる。