以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の評価方法は以下の各ステップを含む。
ステップ(1)誘電多層膜を含む誘電多層型赤外遮蔽フィルムの設置場所における、太陽光入射角と照射エネルギーとの関係を求める。
ステップ(2)前記ステップ(1)において最大となる照射エネルギーにおける入射角である中心入射角を求める。
ステップ(3)前記誘電多層型赤外遮蔽フィルムの前記中心入射角における分光光度曲線から、短波側のバンド上り波長λを求める。
ステップ(4)A=|λ−700nm|を数値指標として評価する。
本発明の評価方法は、赤外遮蔽効果が光の入射角に依存する誘電体型赤外遮蔽フィルムにおいて行うものであり、フィルムの設置場所において適切な遮蔽効果を得ることを目的とする。上記評価方法によれば、予め設置場所に最適なフィルムを選択することができ、あるいは、任意のフィルムが設置場所に適しているかどうかを判断することができる。
地域や用途によって、どの様な反射特性を有するフィルムが遮熱効果の点で有利であるかを判別することは、実際にフィルムを使用するシーンでは大変重要である。例えば、ある地域の一年にわたる太陽高度、太陽方位のデータ、窓が面する向き(南、東)、太陽照射の時間帯などから、フィルムの反射特性の有利、不利が出てくる。本発明の評価方法によれば、予めフィルム設置場所に最適なフィルムを選択することができ、設置場所において最適な遮熱効果が得られる。また、窓取り付け業者も最適なフィルムが容易に分かるし、消費者が享受する遮熱メリットは大きい。また、従来の規格では、分光反射率や透過率の測定は、垂直方向(入射角0〜5度)の光を用いており、実際の使用と規格値とが一致しない場合がある。したがって、本発明の評価方法は、実使用により近い評価方法であると言える。
(1)ステップ(1)
誘電多層膜を含む誘電多層型赤外遮蔽フィルムの設置場所における太陽光入射角と照射エネルギーとの関係は公知の種々の方法で計算で求めることできる。図1は、太陽光の入射角の変化と、窓の位置関係を示した図である。例えば、設置場所の緯度が判れば、各季節において太陽光の角度が計算される。東京であれば、冬の平均入射角は45度、夏の平均入射角は75度となる。さらに、各入射角における照射時間および照射強度を加味すると、図2に示すような照射エネルギーと入射角のグラフがかける。図2のグラフは、目的に応じて適宜作成することができる。夏場の外からの熱線を遮蔽することが目的であれば、例えば、夏の期間、例えば、7月1日〜9月30日と期間を定め、各日の時間と太陽光の照射エネルギー、時間と太陽光の入射角との関係を求め、次に入射角と照射エネルギーとの関係を求め、さらに、入射角と、各日の照射エネルギーの平均値とから、期間における入射角と照射エネルギーとの関係を求めることができる。逆に室内からの熱線を反射させたい場合には冬の期間を設定することができる。したがって、季節、時間帯、期間等を設定して太陽光入射角と照射エネルギーとの関係を求めることができる。太陽光をさえぎる場合が無い理想形であるが、設置現地の特性、例えば、ビルの影が掛かる等を加味すれば、影に応じて照射時間を減じることにより、設置場所に応じて入射角と照射エネルギーとの関係を求めることができる。
(2)ステップ(2)
本発明のステップ(2)においては、ステップ(1)において求めた入射角と照射エネルギーとの関係図において、最大の照射エネルギーを与える入射角を、中心入射角と定める。、例えば、図2においては50度となる。
(3)ステップ(3)
誘電多層型で近赤外反射の反射、または吸収バンドを形成する方法は、例えば「光学薄膜フィルターデザイン」(ISBN4−902312−19−0,平成18年,株式会社オプトロニクス社刊)の第3章誘電体ミラーに詳しい記載がある。これによれば、高屈折率層の屈折率をn1、物理膜厚をd1、光学膜厚をL1=n1×d1、低屈折率層の屈折率をn2、物理膜厚をd2、光学膜厚をL2=n2×d2とすれば、簡略化すると、所望の反射バンドの中心波長をλ0としたときの、光学膜厚はL1=L2=λ0/4、バンド巾はL1/L2、反射バンドの最大反射率は(L1/L2)2に比例する量で与えられる。以上は入射角0度の場合であるが、入射角θの場合は、光学膜厚にcosθを乗ずれば同様に計算される。これらのパラメータを適宜変化させてシミュレーションすれば、波長×反射率の関係が得られる(分光光度曲線)。この分光光度曲線から、短波側のバンドの立ち上がり波長λを求めることができる。
または、誘電多層型の赤外反射フィルムを予め準備し、中心入射角におけるフィルムの波長×反射率の関係を分光光度計を用いて分光光度曲線を求め、短波側のバンドの立ち上がり波長λを求めてもよい。
本発明におけるバンドの立ち上がり波長λは、設定波長λ0とした場合のλ0/4から導かれる主反射バンド、あるいは測定した分光光度曲線における主反射バンドの最大反射率の10%となる反射率に対応する短波側の波長、または、主反射バンドの短波側にリップルが重なる場合は、主反射バンドとリップルの間の谷の部分の最小反射率を与える波長と定義する。
(4)ステップ(4)
本発明の評価方法では、前記ステップ(3)で求めた短波側のバンドの立ち上がり波長λを基に、絶対値|λ−700nm|=Aを数値指標として評価する。通常、赤外遮蔽フィルムの遮熱特性は、可視光(380〜700nm)の透過をできるだけ大きくして、それ以上の波長域をできるだけカットする構成が優れているとされている。また、誘電多層型のフィルムは前記のように材料と膜厚の関係から波長と反射特性との関係がある程度設定されるため、反射率曲線の波形が予測しやすい。したがって、A値を遮熱特性の指標とすることができ、絶対値Aが0に近い程、可視光域が明るく、および/または遮熱特性が優れていると言える。本発明においては、0nm≦A≦100nmが好ましく、さらに0nm≦A≦50nmが好ましく、0nm≦A≦30nmであることがより好ましい。
本発明の評価方法によれば、例えば、複数のフィルムから最適なフィルムを選択したり、設置場所に適したフィルムを設計したり、任意のフィルムが設置場所に適しているかを評価したりすることができる。
以上、本発明の赤外遮蔽フィルムの評価方法を説明したが、本発明は、さらに、上記ステップ(1)〜(3)を用いたフィルムの製造方法を包含する。具体的には、誘電多層膜を含む誘電多層型赤外遮蔽フィルムの設置場所における、太陽光入射角と照射エネルギーとの関係を求めるステップ(1)と、前記ステップ(1)において最大となる照射エネルギーにおける入射角である中心入射角を求めるステップ(2)と、前記中心入射角における分光光度曲線から、短波側のバンド上り波長λを求めるステップ(3)と、前記ステップ(1)〜(3)に基づいて最適な光学膜厚を設計するステップ(4)と、を含む、誘電多層型赤外遮蔽フィルムの製造方法である。
好適な一実施形態について説明する。上記評価方法のステップ(3)において述べたように、設定波長、および屈折率層に用いられる材料の屈折率を基に、各種フィルムの分光光度曲線のシミュレーションを行うことができる。ここで、ステップ(1)および(2)で求めた中心入射角において、最適なフィルムを選択するために、上記シミュレーションを行い、短波側のバンドの立ち上がり波長λを求めるという作業を繰り返すことによって、設置場所において最大の遮熱効果が得られる光学膜厚を設計することができる。また、ここでは、膜厚が異なる複数の積層体を積層させたフィルムも設計することができる。例えば、一つの積層体をシミュレーションした結果、可視光領域に反射ピークが存在した場合には、他の積層体を想定してさらにシミュレーションを行い、該他の積層体の光学膜厚を設計することもできる。
そして、光学膜厚の設計の際には、上記A値を指標としてもよい。すなわち、シミュレーションを行い、絶対値Aが0に近くなるように、光学膜厚を設計することができる。可視光域が明るく、かつ遮熱特性が優れていると言えるので、フィルムのA値は、0nm≦A≦100nmが好ましく、0nm≦A≦50nmがより好ましく、0nm≦A≦30nmがさらに好ましい。
次に本発明の赤外遮蔽フィルム、及びその作製方法について説明する。
[誘電多層型赤外遮蔽フィルム]
本発明の評価方法に適しているフィルムは、誘電多層膜を含む誘電多層型の赤外遮蔽フィルムである。誘電多層型の赤外遮蔽フィルムの場合、前述したように遮蔽効果において入射光の角度依存性があるので、本発明の赤外遮蔽フィルムの評価方法、製造方法を用いることができる。当該誘電多層膜は、好ましくは屈折率の高い層(高屈折率層)と、屈折率の低い層(低屈折率層)との交互積層膜である。
(誘電多層膜材料)
誘電多層型赤外遮蔽フィルムは誘電多層膜を有する。誘電多層膜を形成する材料としては従来公知の材料を用いることができ、例えば、金属酸化物材料、ポリマー、およびこれらの組み合わせ等などが挙げられる。
金属酸化物材料には、高屈折率材料として、TiO2、ZrO2、Ta2O5等が挙げられ、低屈折率材料としてSiO2、MgF2等が挙げられ、中屈折率材料としてAl2O3等が挙げられる。これらの金属酸化物材料を、蒸着法、スパッタ、などのドライ製膜法によって製膜させることができる。
誘電多層膜に含まれるポリマーには特に制限はなく、誘電多層膜を形成できるポリマーであれば特に制限されない。
例えば、ポリマーとしては、特表2002−509279号公報に記載のポリマーを用いることができる。具体例としては、ポリエチレンナフタレート(PEN)およびその異性体(例えば、2,6-、1,4-、1,5-、2,7-および2,3-PEN)、ポリアルキレンテレフタレート(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、およびポリ-1,4-シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)、ポリイミド(例えば、ポリアクリルイミド)、ポリエーテルイミド、アタクチックポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメタクリレート(例えば、ポリイソブチルメタクリレート、ポリプロピルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、およびポリメチルメタクリレート)、ポリアクリレート(例えば、ポリブチルアクリレート、およびポリメチルアクリレート)、セルロース誘導体(例えば、エチルセルロース、アセチルセルロース、セルロースプロピオネート、アセチルセルロースブチレート、および硝酸セルロース)、ポリアルキレンポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリイソブチレン、およびポリ(4-メチル)ペンテン)、フッ素化ポリマー(例えば、パーフルオロアルコキシ樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化エチレンプロピレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン、およびポリクロロトリフルオロエチレン)、塩素化ポリマー(例えば、ポリ塩化ビニリデンおよびポリ塩化ビニル)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリエーテルアミド、アイオノマー樹脂、エラストマー(例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレンおよびネオプレン)、およびポリウレタンが挙げられる。コポリマー、例えば、PENのコポリマー[例えば、(a)テレフタル酸もしくはそのエステル、(b)イソフタル酸もしくはそのエステル、(c)フタル酸もしくはそのエステル、(d)アルカングリコール、(e)シクロアルカングリコール(例えば、シクロヘキサンジメタノールジオール)、(f)アルカンジカルボン酸、および/または(g)シクロアルカンジカルボン酸(例えば、シクロヘキサンジカルボン酸)と2,6-、1,4-、1,5-、2,7-、および/または2,3-ナフタレンジカルボン酸またはそれらのエステルとのコポリマー]、ポリアルキレンテレフタレートのコポリマー[例えば、(a)ナフタレンジカルボン酸もしくはそのエステル、(b)イソフタル酸もしくはそのエステル、(c)フタル酸もしくはそのエステル、(d)アルカングリコール、(e)シクロアルカングリコール(例えば、シクロヘキサンジメタノールジオール)、(f)アルカンジカルボン酸、および/または(g)シクロアルカンジカルボン酸(例えば、シクロヘキサンジカルボン酸)と、テレフタル酸もしくはそのエステルとのコポリマー]、並びにスチレンコポリマー(例えば、スチレン-ブタジエンコポリマー、およびスチレン-アクリロニトリルコポリマー)、4,4-ビ安息香酸およびエチレングリコールも適している。さらに、各層はそれぞれ、2種またはそれ以上の上記のポリマーまたはコポリマーのブレンド(例えば、SPSとアタクチックポリスチレンとのブレンド)を包含してよい。
上記ポリマーを、米国特許第6049419号に記載のように、ポリマーの溶融押出しおよび延伸により、誘電多層膜を形成することができる。本発明において、高屈折率層および低屈折率層を形成するポリマーの好ましい組み合わせとしては、PEN/PMMA、PEN/ポリフッ化ビニリデン、PEN/PETが挙げられる。
また、ポリマーとして、特開2010−184493号に記載のポリマーを用いてもよい。具体的には、ポリエステル(以下、ポリエステルAとする)と、エチレングリコール、スピログリコールおよびブチレングリコールの少なくとも3種のジオール由来の残基を含んでいるポリエステル(以下、ポリエステルBとする)とを、用いることができる。ポリエステルAは、ジカルボン酸成分とジオール成分とが重縮合して得られる構造を有するものであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンジフェニルレートなどが挙げられる。ポリエステルAは共重合体であってもよい。ここで、共重合ポリエステルとは、ジカルボン酸成分とジオール成分が合わせて少なくとも3種以上用いて重縮合して得られる構造を有する。ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、シクロヘキサンジカルボン酸とそれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。グリコール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタジオール、ジエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2−ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、イソソルベート、1,4−シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、およびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。ポリエステルAは、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートであることが好ましい。
上記ポリエステルBは、エチレングリコール、スピログリコールおよびブチレングリコールの少なくとも3種のジオール由来の残基を含んでいる。典型的な例としては、エチレングリコール、スピログリコールおよびブチレングリコールを用いて共重合して得られる構造を有した共重合ポリエステルや該3種のジオールを用いて重合して得られる構造を有したポリエステルをブレンドして得られるポリエステルがある。この構成だと成形加工がしやすくかつ層間剥離もしにくいために好ましい。また、ポリエステルBが、テレフタル酸/シクロヘキサンジカルボン酸の少なくとも2種のジカルボン酸由来の残基を含むポリエステルであることが好ましい。このようなポリエステルには、テレフタル酸/シクロヘキサンジカルボン酸を共重合したコポリエステル、またはテレフタル酸残基を含むポリエステルとシクロヘキサンジカルボン酸残基を含むポリエステルをブレンドして得られるものがある。シクロヘキサンジカルボン酸残基を含んだポリエステルは、A層の面内平均屈折率とB層の面内平均屈折率の差が大きくなり、高反射率なものが得られる。また、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートとのガラス転移温度差が小さいため、成形時に過延伸になることがなりにくく、かつ層間剥離もしにくいために好ましい。
その他、ポリマーとして水溶性高分子を用いることも好ましい。水溶性高分子は、有機溶剤を用いないため、環境負荷が少なく、また、柔軟性が高いため、屈曲時の膜の耐久性が向上するため好ましい。水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ポリアクリル酸、アクリル酸−アクリルニトリル共重合体、アクリル酸カリウム−アクリルニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、若しくはアクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などのアクリル系樹脂、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、若しくはスチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などのスチレンアクリル酸樹脂、スチレン−スチレンスルホン酸ナトリウム共重合体、スチレン−2−ヒドロキシエチルアクリレート共重合体、スチレン−2−ヒドロキシエチルアクリレート−スチレンスルホン酸カリウム共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体などの酢酸ビニル系共重合体及びそれらの塩などの合成水溶性高分子;ゼラチン、増粘多糖類などの天然水溶性高分子などが挙げられる。これらの中で、特に好ましい例としては、製造時のハンドリングと膜の柔軟性の点から、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン類及びそれを含有する共重合体、ゼラチン、増粘多糖類(特にセルロース類)が挙げられる。これらの水溶性高分子は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用して用いてもよい。
本発明で好ましく用いられるポリビニルアルコールには、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、変性ポリビニルアルコールも含まれる。変性ポリビニルアルコールとしては、カチオン変性ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、ノニオン変性ポリビニルアルコール、ビニルアルコール系ポリマーが挙げられる。
酢酸ビニルを加水分解して得られるポリビニルアルコールは、平均重合度が1,000以上のものが好ましく用いられ、特に平均重合度が1,500〜5,000のものが好ましく用いられる。また、ケン化度は、70〜100モル%のものが好ましく、80〜99.5モル%のものが特に好ましい。
カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開昭61−10483号に記載されているような、第一〜三級アミノ基や第四級アンモニウム基を上記ポリビニルアルコールの主鎖または側鎖中に有するポリビニルアルコールであり、カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体をケン化することにより得られる。
カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、トリメチル−(2−アクリルアミド−2,2−ジメチルエチル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ヒドロキシルエチルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチル−(2−メタクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、N−(1,1−ジメチル−3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド等が挙げられる。カチオン変性ポリビニルアルコールのカチオン変性基含有単量体の比率は、酢酸ビニルに対して0.1〜10モル%、好ましくは0.2〜5モル%である。
アニオン変性ポリビニルアルコールは、例えば、特開平1−206088号に記載されているようなアニオン性基を有するポリビニルアルコール、特開昭61−237681号および同63−307979号に記載されているような、ビニルアルコールと水溶性基を有するビニル化合物との共重合体及び特開平7−285265号に記載されているような水溶性基を有する変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
また、ノニオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開平7−9758号に記載されているようなポリアルキレンオキサイド基をビニルアルコールの一部に付加したポリビニルアルコール誘導体、特開平8−25795号に記載されている疎水性基を有するビニル化合物とビニルアルコールとのブロック共重合体、シラノール基を有するシラノール変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル基やカルボニル基、カルボキシル基などの反応性基を有する反応性基変性ポリビニルアルコール等が挙げられる。またビニルアルコール系ポリマーとして、エクセバール(商品名:(株)クラレ製)やニチゴーGポリマー(商品名:日本合成化学工業(株)製)などが挙げられる。ポリビニルアルコールは、重合度や変性の種類違いなど二種類以上を併用することもできる。
本発明に適用可能なゼラチンとしては、石灰処理ゼラチンのほか、酸処理ゼラチンを使用してもよく、さらにゼラチンの加水分解物、ゼラチンの酵素分解物を用いることもできる。
本発明で用いることのできる増粘多糖類としては、例えば、一般に知られている天然単純多糖類、天然複合多糖類、合成単純多糖類及び合成複合多糖類に挙げることができ、これら多糖類の詳細については、「生化学事典(第2版),東京化学同人出版」、「食品工業」第31巻(1988)21頁等を参照することができる。
本発明でいう増粘多糖類とは、糖類の重合体であり分子内に水素結合基を多数有するもので、温度により分子間の水素結合力の違いにより、低温時の粘度と高温時の粘度差が大きな特性を備えた多糖類であり、さらに金属酸化物微粒子を添加すると、低温時にその金属酸化物微粒子との水素結合によると思われる粘度上昇を起こすものであり、その粘度上昇幅は、添加することにより40℃における粘度が1.0mPa・s以上の上昇を生じる多糖類であり、好ましくは5.0mPa・s以上であり、更に好ましくは10.0mPa・s以上の粘度上昇能を備えた多糖類である。
本発明に適用可能な増粘多糖類としては、例えば、β1−4グルカン(例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース等)、ガラクタン(例えば、アガロース、アガロペクチン等)、ガラクトマンノグリカン(例えば、ローカストビーンガム、グアラン等)、キシログルカン(例えば、タマリンドガム等)、グルコマンノグリカン(例えば、蒟蒻マンナン、木材由来グルコマンナン、キサンタンガム等)、ガラクトグルコマンノグリカン(例えば、針葉樹材由来グリカン)、アラビノガラクトグリカン(例えば、大豆由来グリカン、微生物由来グリカン等)、グルコラムノグリカン(例えば、ジェランガム等)、グリコサミノグリカン(例えば、ヒアルロン酸、ケラタン硫酸等)、アルギン酸及びアルギン酸塩、寒天、κ−カラギーナン、λ−カラギーナン、ι−カラギーナン、ファーセレラン等の紅藻類に由来する天然高分子多糖類等が挙げられる。特に後述するように金属酸化物粒子を含有する場合には、金属酸化微粒子の分散安定性を低下させない観点から、好ましくは、その構成単位がカルボン酸基やスルホン酸基を有しないものが好ましい。その様な多糖類としては、例えば、L−アラビトース、D−リボース、2−デオキシリボース、D−キシロースなどのペントース、D−グルコース、D−フルクトース、D−マンノース、D−ガラクトースなどのヘキソースのみからなる多糖類であることが好ましい。具体的には、主鎖がグルコースであり、側鎖がキシロースであるキシログルカンとして知られるタマリンドシードガムや、主鎖がマンノースで側鎖がガラクトースであるガラクトマンナンとして知られるグアーガム、ローカストビーンガム、タラガムや、主鎖がガラクトースで側鎖がアラビノースであるアラビノガラクタンを好ましく使用することができる。
本発明においては、さらには、二種類以上の増粘多糖類を併用することが好ましい。
水溶性高分子の重量平均分子量は、1,000以上200,000以下が好ましい。さらには、3,000以上40,000以下がより好ましい。本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて下記測定条件下で測定した値を採用する。
本発明においては、バインダーである水溶性高分子を硬化させるため、硬化剤を使用してもよい。
本発明に適用可能な硬化剤としては、水溶性高分子と硬化反応を起こすものであれば特に制限はないが、水溶性高分子がポリビニルアルコールの場合には、ホウ酸及びその塩が好ましいが、その他にも公知のものが使用でき、一般的には水溶性高分子と反応し得る基を有する化合物あるいは水溶性高分子が有する異なる基同士の反応を促進するような化合物であり、水溶性高分子の種類に応じて適宜選択して用いられる。硬化剤の具体例としては、例えば、エポキシ系硬化剤(ジグリシジルエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ジグリシジルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル等)、アルデヒド系硬化剤(ホルムアルデヒド、グリオキザール等)、活性ハロゲン系硬化剤(2,4−ジクロロ−4−ヒドロキシ−1,3,5−s−トリアジン等)、活性ビニル系化合物(1,3,5−トリス−アクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン、ビスビニルスルホニルメチルエーテル等)、アルミニウム明礬等が挙げられる。
水溶性高分子がゼラチンの場合には、例えば、ビニルスルホン化合物、尿素−ホルマリン縮合物、メラニン−ホルマリン縮合物、エポキシ系化合物、アジリジン系化合物、活性オレフィン類、イソシアネート系化合物などの有機硬膜剤、クロム、アルミニウム、ジルコニウムなどの無機多価金属塩類などを挙げることができる。
誘電多層膜の好適な形態は、大面積化が可能であり、コスト的に安価となること、また屈曲時や高温高湿時の膜の耐久性が向上することからポリマーを用いることが好ましく、誘電多層膜がポリマーのみで構成される形態か、誘電多層膜がポリマーと金属酸化物とを含む形態であることが好ましい。
ポリマーに加えて金属酸化物粒子を含有する形態について説明する。金属酸化物粒子を含有することにより、各屈折率層間の屈折率差を大きくでき、積層数が低減され、薄膜とすることができる。また、応力緩和が働き膜物性(屈曲時および高温高湿時の屈曲性)が向上する等の利点がある。金属酸化物粒子は、誘電多層膜を構成するいずれかの膜に含有させればよいが、好適な形態は、少なくとも高屈折率層が金属酸化物粒子を含み、より好適な形態は高屈折率層および低屈折率層のいずれもが金属酸化物粒子を含む形態である。
金属酸化物粒子としては、例えば、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、チタン酸鉛、鉛丹、黄鉛、亜鉛黄、酸化クロム、酸化第二鉄、鉄黒、酸化銅、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化イットリウム、酸化ニオブ、酸化ユーロピウム、酸化ランタン、ジルコン、酸化スズ、等を挙げることができる。
金属酸化粒子は、平均粒径が100nm以下であり、4〜50nm、より好ましくは4〜30nmであることが好ましい。金属酸化物粒子の平均粒径は、粒子そのものあるいは層の断面や表面に現れた粒子を電子顕微鏡で観察し、1,000個の任意の粒子の粒径を測定し、その単純平均値(個数平均)として求められる。ここで個々の粒子の粒径は、その投影面積に等しい円を仮定したときの直径で表したものである。
各屈折率層における金属酸化物粒子の含有量は、屈折率層の全質量に対して、20〜90質量%であることが好ましく、40〜75質量%であることがより好ましい。
金属酸化物粒子としては、二酸化チタン、二酸化ケイ素、及びアルミナから選ばれた固体微粒子を用いることが好ましい。
低屈折率層においては、金属酸化物粒子として二酸化ケイ素(シリカ)を用いることが好ましく、酸性のコロイダルシリカゾルを用いることが特に好ましい。
(二酸化ケイ素)
本発明で用いることのできる二酸化ケイ素(シリカ)としては、通常の湿式法で合成されたシリカ、コロイダルシリカ或いは気相法で合成されたシリカ等が好ましく用いられるが、本発明において特に好ましく用いられる微粒子シリカとしては、コロイダルシリカまたは気相法で合成された微粒子シリカが好ましい。
金属酸化物粒子は、カチオン性ポリマーと混合する前の微粒子分散液が一次粒子まで分散された状態であるのが好ましい。
例えば、上記気相法微粒子シリカの場合、一次粒子の状態で分散された金属酸化物微粒子の一次粒子の平均粒径(塗設前の分散液状態での粒径)は、100nm以下のものが好ましく、より好ましくは4〜50nm、最も好ましくは4〜20nmである。
最も好ましく用いられる、一次粒子の平均粒径が4〜20nmである気相法により合成されたシリカとしては、例えば、日本アエロジル社製のアエロジルが市販されている。この気相法微粒子シリカは、水中に、例えば、三田村理研工業株式会社製のジェットストリームインダクターミキサーなどにより、容易に吸引分散することで、比較的容易に一次粒子まで分散することができる。
該気相法シリカとして現在市販されているものとしては日本アエロジル社の各種のアエロジルが該当する。
本発明で好ましく用いられるコロイダルシリカは、珪酸ナトリウムの酸等による複分解やイオン交換樹脂層を通過させて得られるシリカゾルを加熱熟成して得られるものである。
コロイダルシリカの好ましい平均粒径は通常は5〜100nmであるが特に7〜30nmの平均粒子径が好ましい。
気相法により合成されたシリカ及びコロイダルシリカは、その表面をカチオン変成されたものであってもよく、また、Al、Ca、Mg及びBa等で処理された物であってもよい。
高屈折率層に含有される金属酸化物としては、TiO2、ZnO、ZrO2が好ましく、高屈折率層を形成するための後述の金属酸化物粒子含有組成物の安定性の観点ではTiO2(二酸化チタンゾル)がより好ましい。また、TiO2の中でも特にアナターゼ型よりルチル型の方が、触媒活性が低いために高屈折率層や隣接した層の耐候性が高くなり、さらに屈折率が高いことから好ましい。
(二酸化チタン)
二酸化チタンゾルの製造方法
ルチル型微粒子二酸化チタンの製造方法における第1の工程は、二酸化チタン水和物をアルカリ金属の水酸化物及びアルカリ土類金属の水酸化物からなる群から選択される少なくとも1種の塩基性化合物で処理する工程(工程1)である。
二酸化チタン水和物は、硫酸チタン、塩化チタン等の水溶性チタン化合物の加水分解によって得ることができる。加水分解の方法は特に限定されず、公知の方法を適用することができる。なかでも、硫酸チタンの熱加水分解によって得られたものであることが好ましい。
上記工程(1)は、例えば、上記二酸化チタン水和物の水性懸濁液に、上記塩基性化合物を添加し、所定温度の条件下において、所定時間処理する(反応させる)ことにより行うことができる。
上記二酸化チタン水和物を水性懸濁液とする方法は特に限定されず、水に上記二酸化チタン水和物を添加して攪拌することによって行うことができる。懸濁液の濃度は特に限定されないが、例えば、TiO2濃度が懸濁液中に30〜150g/Lとなる濃度であることが好ましい。上記範囲内とすることによって、反応(処理)を効率よく進行させることができる。
上記工程(1)において使用するアルカリ金属の水酸化物及びアルカリ土類金属の水酸化物からなる群から選択される少なくとも1種の塩基性化合物としては特に限定されず、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等を挙げることができる。上記工程(1)における上記塩基性化合物の添加量は、反応(処理)懸濁液中の塩基性化合物濃度で30〜300g/Lであることが好ましい。
上記工程(1)は、60〜120℃の反応(処理)温度で行うことが好ましい。反応(処理)時間は、反応(処理)温度によって異なるが、2〜10時間であることが好ましい。反応(処理)は、二酸化チタン水和物の懸濁液に、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムの水溶液を添加することによって行うことが好ましい。反応(処理)後、反応(処理)混合物を冷却し、必要に応じて塩酸等の無機酸で中和した後、濾過、水洗することによって微粒子二酸化チタン水和物を得ることができる。
また、第2の工程(工程(2))として、工程(1)によって得られた化合物をカルボン酸基含有化合物及び無機酸で処理してもよい。ルチル型微粒子二酸化チタンの製造において上記工程(1)によって得られた化合物を無機酸で処理する方法は公知の方法であるが、無機酸に加えてカルボン酸基含有化合物を使用して、粒子径を調整することができる。
上記カルボン酸基含有化合物は、−COOH基を有する有機化合物である。上記カルボン酸基含有化合物としては、2以上、より好ましくは2以上4以下のカルボン酸基を有するポリカルボン酸であることが好ましい。上記ポリカルボン酸は、金属原子への配位能を有することから、配位によって微粒子間の凝集を抑制し、これによって好適にルチル型微粒子二酸化チタンを得ることができるものと推測される。
上記カルボン酸基含有化合物としては特に限定されず、例えば、蓚酸、マロン酸、琥珀酸、グルタル酸、アジピン酸、プロピルマロン酸、マレイン酸等のジカルボン酸;リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等のヒドロキシ多価カルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、ヘミメリト酸、トリメリト酸等の芳香族ポリカルボン酸;エチレンジアミン四酢酸等を挙げることができる。これらのなかから、2種以上の化合物を同時に併用するものであってもよい。
なお、上記カルボン酸基含有化合物の全部又は一部は、−COOH基を有する有機化合物の中和物(例えば、−COONa基等を有する有機化合物)であってもよい。
上記無機酸としては特に限定されず、例えば、塩酸、硫酸、硝酸等を挙げることができる。上記無機酸は、反応(処理)用液中の濃度が0.5〜2.5モル/L、より好ましくは0.8〜1.4モル/Lになるように加えるとよい。
上記工程(2)は、上記工程(1)によって得られた化合物を純水中に懸濁させ、攪拌下、必要に応じて加熱して行うことが好ましい。カルボン酸基含有化合物及び無機酸の添加は同時であっても順次添加するものであってもよいが、順次添加することが好ましい。
添加は、カルボン酸基含有化合物添加後に無機酸を添加するものであっても、無機酸添加後にカルボン酸基含有化合物を添加するものであってもよい。
例えば、上記工程(1)によって得られた化合物の懸濁液中にカルボキシル基含有化合物を添加し、加熱を開始し、液温が60℃以上、好ましくは90℃以上になったところで無機酸を添加し、液温を維持しつつ、好ましくは15分〜5時間、より好ましくは2〜3時間攪拌する方法(方法1);上記工程(1)によって得られた化合物の懸濁液中を加熱し、液温が60℃以上、好ましくは90℃以上になったところで無機酸を添加し、無機酸添加から10〜15分後にカルボン酸基含有化合物を添加し、液温を維持しつつ、好ましくは15分〜5時間、より好ましくは2〜3時間攪拌する方法(方法2)等を挙げることができる。これらの方法によって行うことにより、好適な微粒子状のルチル型二酸化チタンを得ることができる。
上記工程(2)を上記方法1によって行う場合、上記カルボン酸基含有化合物は、TiO2100モル%に対し0.25〜1.5モル%使用するものであることが好ましく、0.4〜0.8モル%の割合で使用することがより好ましい。カルボン酸基含有化合物の添加量が0.25モル%より少ない場合は粒子成長が進んでしまい目的とする粒子サイズの粒子が得られないおそれがあり、カルボン酸基含有化合物の添加量が1.5モル%より多い場合は粒子のルチル化が進まずアナタースの粒子ができてしまうおそれがある。
上記工程(2)を上記方法2によって行う場合、上記カルボン酸基含有化合物は、TiO2100モル%に対し1.6〜4.0モル%使用するものであることが好ましく、2.0〜2.4モル%の割合で使用することがより好ましい。
カルボン酸基含有化合物の添加量が1.6モル%より少ない場合は粒子成長が進んでしまい目的とする粒子サイズの粒子が得られないおそれがあり、カルボン酸基含有化合物の添加量が4.0モル%より多い場合は粒子のルチル化が進まずアナタースの粒子ができてしまうおそれがあり、カルボン酸基含有化合物の添加量が4.0モル%を超えても効果は良好なものとならず、経済的に不利である。また、上記カルボン酸基含有化合物の添加を無機酸添加から10分未満で行うと、ルチル化が進まず、アナタース型の粒子ができてしまうおそれがあり、無機酸添加から15分を超えて行うと、粒子成長が進みすぎ、目的とする粒子サイズの粒子が得られない場合がある。
上記工程(2)においては、反応(処理)終了後冷却し、さらにpH5.0〜pH10.0になるように中和することが好ましい。上記中和は、水酸化ナトリウム水溶液やアンモニア水等のアルカリ性化合物によって行うことができる。中和後に濾過、水洗することによって目的のルチル型微粒子二酸化チタンを分離することができる。
また、二酸化チタン微粒子の製造方法として、「酸化チタン−物性と応用技術」(清野学 pp255〜258(2000年)技報堂出版株式会社)等に記載の公知の方法を用いることができる。
さらに、酸化チタン粒子を含めた金属酸化物粒子のその他の製造方法としては、特開2000−053421号公報(分散安定化剤としてアルキルシリケートを配合してなり、該アルキルシリケート中のケイ素をSiO2 に換算した量と酸化チタン中のチタンをTiO2 に換算した量との重量比(SiO2 /TiO2 )が0.7〜10である酸化チタンゾル)、特開2000−063119号公報(TiO2−ZrO2−SnO2の複合体コロイド粒子を核としてその表面を、WO3−SnO2−SiO2の複合酸化物コロイド粒子で被覆したゾル)等に記載された事項を参照することができる。
さらに、酸化チタン粒子を含ケイ素の水和酸化物で被覆してもよい。含ケイ素の水和化合物の被覆量は、3〜30質量%、好ましくは3〜10質量%、より好ましくは3〜8質量%である。被覆量が30質量%以下であると、高屈折率層の所望の屈折率化が得られ、被覆量が3%以上であると粒子を安定に形成することができるからである。
酸化チタン粒子を含ケイ素の水和酸化物で被覆する方法としては、従来公知の方法により製造することができ、例えば、特開平10−158015号公報(ルチル型酸化チタンへのSi/Al水和酸化物処理;チタン酸ケーキのアルカリ領域での解膠後酸化チタンの表面にケイ素及び/又はアルミニウムの含水酸化物を析出させて表面処理する酸化チタンゾルの製造方法)、特開2000−204301号公報(ルチル型酸化チタンにSiとZrおよび/またはAlの酸化物との複合酸化物を被覆したゾル。水熱処理。)、特開2007−246351号公報(含水酸化チタンを解膠して得られる酸化チタンのヒドロゾルへ、安定剤として式R1 nSiX4−n(式中R1はC1−C8アルキル基、グリシジルオキシ置換C1−C8アルキル基またはC2−C8アルケニル基、Xはアルコキシ基、nは1または2である。)のオルガノアルコキシシランまたは酸化チタンに対して錯化作用を有する化合物を添加、アルカリ領域でケイ酸ナトリウムまたはシリカゾルの溶液へ添加・pH調整・熟成することにより、ケイ素の含水酸化物で被覆された酸化チタンヒドロゾルを製造する方法)等に記載された事項を参照にすることができる。
酸化チタン粒子の体積平均粒径は、30nm以下であることが好ましく、1〜30nmであることがより好ましく、5〜15nmであるのがさらに好ましい。体積平均粒径が30nm以下であれば、ヘイズが少なく可視光透過性に優れる観点で好ましい。
ここでいう体積平均粒径とは、媒体中に分散された一次粒子または二次粒子の体積平均粒径であり、レーザー回折/散乱法、動的光散乱法等により測定できる。
具体的には、粒子そのものあるいは屈折率層の断面や表面に現れた粒子を電子顕微鏡で観察し、1,000個の任意の粒子の粒径を測定し、それぞれd1、d2・・・di・・・dkの粒径を持つ粒子がそれぞれn1、n2・・・ni・・・nk個存在する金属酸化物粒子の集団において、粒子1個当りの体積をviとした場合に、体積平均粒径mv={Σ(vi・di)}/{Σ(vi)}で表される体積で重み付けされた平均粒径を算出する。
また、本発明においては、コロイダルシリカ複合エマルジョンも低屈折率層において、金属酸化物として用いることができる。本発明に好ましく用いられるコロイダルシリカ複合エマルジョンは、粒子の中心部が重合体或いは共重合体等を主成分としてなり、特開昭59−71316号公報、特開昭60−127371号公報に記載されているコロイダルシリカの存在下でエチレン性不飽和結合を有するモノマーを従来公知の乳化重合法で重合して得られる。該複合体エマルジョンに適用されるコロイダルシリカの粒子径としては40nm未満のものが好ましい。
この複合エマルジョンの調製に用いられるコロイダルシリカとしては、通常2〜100nmの一次粒子のものが挙げられる。エチレン性モノマーとしては、例えば炭素数が1〜18個のアルキル基、アリール基、或いはアリル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、アクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、エチレン、ブタジエン等のラテックス業界で公知の材料が挙げられ、必要に応じて更にコロイダルシリカとの相溶性をより良くするためにビニルトリメトオキシシラン、ビニルトリエトオキシシラン、γ−メタクリロオキシプロピルトリメトオキシシラン等の如きビニルシランが、また、エマルジョンの分散安定に(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等のアニオン性モノマーが助剤的に使われる。なお、エチレン性モノマーは必要に応じて2種類以上を併用することができる。
また、乳化重合におけるエチレン性モノマー/コロイダルシリカの比率は固形分比率で100/1〜200であることが好ましい。
本発明に使用されるコロイダルシリカ複合体エマルジョンの中でより好ましいものとしては、ガラス転移点が−30〜30℃の範囲のものが挙げられる。
また、組成的に好ましいものとしては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等のエチレン性モノマーが挙げられ、特に好ましいものとしては(メタ)アクリル酸エステルとスチレンの共重合体、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと(メタ)アクリル酸アラルキルエステルの共重合体、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと(メタ)アクリル酸アリールエステル共重合体が挙げられる。
乳化重合で使われる乳化剤としては、例えばアルキルアリルポリエーテルスルホン酸ソーダ塩、ラウリルスルホン酸ソーダ塩、アルキルベンゼンスルホン酸ソーダ塩、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硝酸ソーダ塩、アルキルアリルスルホサクシネートソーダ塩、スルホプロピルマレイン酸モノアルキルエステルソーダ塩等が挙げられる。
(その他添加剤)
誘電多層膜を形成する各屈折率層には、必要に応じて各種の添加剤を含有させることが出来る。
具体的には、アニオン、カチオンまたはノニオンの各種界面活性剤;ポリカルボン酸アンモニウム塩、アリルエーテルコポリマー、ベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、グラフト化合物系分散剤、ポリエチレングリコール型ノニオン系分散剤などの分散剤;酢酸塩、プロピオン酸塩、またはクエン酸塩等の有機酸塩;一塩基性有機酸エステル、多塩基性有機酸エステル等の有機エステル可塑剤、有機リン酸可塑剤、有機亜リン酸可塑剤等のリン酸可塑剤等の可塑剤;特開昭57−74193号公報、同57−87988号公報及び同62−261476号公報に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号公報、同57−87989号公報、同60−72785号公報、同61−146591号公報、特開平1−95091号公報および同3−13376号公報等に記載されている退色防止剤;特開昭59−42993号公報、同59−52689号公報、同62−280069号公報、同61−242871号公報および特開平4−219266号公報等に記載されている蛍光増白剤;硫酸、リン酸、酢酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤;消泡剤;ジエチレングリコール等の潤滑剤;防腐剤;帯電防止剤;マット剤等の公知の各種添加剤を含有していてもよい。
(フィルム支持体)
本発明では必要によりフィルム支持体に上記誘電多層膜を積層させることができる。本発明に用いられるフィルム支持体としては、種々の樹脂フィルムを用いることができ、ポリオレフィンフィルム(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステルフィルム(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリ塩化ビニル、3酢酸セルロース等を用いることができ、好ましくはポリエステルフィルムである。ポリエステルフィルム(以降ポリエステルと称す)としては、特に限定されるものではないが、ジカルボン酸成分とジオール成分を主要な構成成分とするフィルム形成性を有するポリエステルであることが好ましい。主要な構成成分のジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルエタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルチオエーテルジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸などを挙げることができる。また、ジオール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビスフェノールフルオレンジヒドロキシエチルエーテル、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ハイドロキノン、シクロヘキサンジオールなどを挙げることができる。これらを主要な構成成分とするポリエステルの中でも透明性、機械的強度、寸法安定性などの点から、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸や2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジオール成分として、エチレングリコールや1,4−シクロヘキサンジメタノールを主要な構成成分とするポリエステルが好ましい。中でも、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートを主要な構成成分とするポリエステルや、テレフタル酸と2,6−ナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールからなる共重合ポリエステル、およびこれらのポリエステルの二種以上の混合物を主要な構成成分とするポリエステルが好ましい。
本発明に用いられるフィルム支持体の厚みは、10〜300μm、特に20〜150μmであることが好ましい。また、本発明のフィルム支持体は、2枚重ねたものであっても良く、この場合、その種類が同じでも異なってもよい。
(赤外遮蔽フィルムの構成)
本発明の赤外遮蔽フィルムは、高屈折率層と低屈折率層とからなるユニットを少なくとも1つ積層した構成(積層膜)であればよいが、高屈折率層および低屈折率層の総数の上限としては、100層以下、すなわち50ユニット以下であることが好ましい。より好ましくは40層(20ユニット)以下であり、さらに好ましくは20層(10ユニット)以下である。層数を減らすことで、生産性が向上し、積層界面での散乱による透明性の減少を抑制することができる。
また、本発明の赤外遮蔽フィルムは、上記ユニットを少なくとも1つ積層した構成であればよく、たとえば、積層膜の最表層や最下層のどちらも高屈折率層または低屈折率層となる積層膜であってもよい。
本発明の赤外遮蔽フィルムにおいて、高屈折率層の好ましい屈折率としては1.60〜2.40であり、より好ましくは1.80〜2.10である。また、本発明の低屈折率層は、屈折率が1.30〜1.50であることが好ましく、1.34〜1.50であるのがより好ましい。
赤外遮蔽フィルムにおいては、高屈折率層と低屈折率層の屈折率の差を大きく設計することが、少ない層数で赤外反射率を高くすることができる観点で好ましいが、本発明では、高屈折率層と低屈折率層から構成されるユニットの少なくとも1つにおいて、隣接する該高屈折率層と低屈折率層との屈折率差が0.1以上であることが好ましく、より好ましくは0.3以上であり、さらに好ましくは0.4以上である。
また、本発明の赤外遮蔽フィルムにおいては、隣接する高屈折率層と低屈折率層との屈折率差が0.1以上であることが好ましいが、高屈折率層と低屈折率層を上記のようにそれぞれ複数層有する場合には、全ての屈折率層が本発明で規定する要件を満たすことが好ましい。ただし、最表層や最下層に関しては、本発明で規定する要件外の構成であってもよい。
特定波長領域の反射率は、隣接する2層(高屈折率層と低屈折率層)の屈折率差と積層数で決まり、屈折率差が大きいほど、少ない層数で同じ反射率を得られる。この屈折率差と必要な層数については、市販の光学設計ソフトを用いて計算することができる。たとえば、赤外遮蔽率90%以上を得るためには、屈折率差が0.1より小さいと、100層を超える積層が必要になり、生産性が低下するだけでなく、積層界面での散乱が大きくなり、透明性が低下する。反射率の向上と層数を少なくする観点からは、屈折率差に上限はないが、実質的には1.40程度が限界である。
上記屈折率差は、高屈折率層、低屈折率層の屈折率を下記の方法に従って求め、両者の差分を屈折率差とする。
(必要により基材を用いて)各屈折率層を単層で作製し、このサンプルを10cm×10cmに断裁した後、下記の方法に従って屈折率を求める。分光光度計として、U−4000型(日立製作所社製)を用いて、各サンプルの測定面とは反対側の面(裏面)を粗面化処理した後、黒色のスプレーで光吸収処理を行って裏面での光の反射を防止して、5度正反射の条件にて可視光領域(400nm〜700nm)の反射率を25点測定して平均値を求め、その測定結果より平均屈折率を求める。
従来のポリマーのみを積層させて得られた赤外遮蔽フィルムと比較して、高屈折率層に金属酸化物粒子を含有するため、高屈折率層の屈折率を高くすることができ、高低屈折率層を積層したユニット数を減らして薄膜にしても高い赤外反射率を得ることが可能となる。
本発明の赤外遮蔽フィルムの全体の厚みは、好ましくは12μm〜315μm、より好ましくは15μm〜200μm、さらに好ましくは20μm〜100μmである。
なお、本明細書において、「高屈折率層」および「低屈折率層」なる用語は、隣接した2層の屈折率差を比較した場合に、屈折率が高い方の屈折率層を高屈折率層とし、低い方の屈折率層を低屈折率層とすることを意味する。したがって、「高屈折率層」および「低屈折率層」なる用語は、光学反射フィルムを構成する各屈折率層において、隣接する2つの屈折率層に着目した場合に、各屈折率層が同じ屈折率を有する形態以外のあらゆる形態を含むものである。
さらには、本発明の赤外遮蔽フィルムの光学特性として、JIS R3106−1998により測定される可視光領域の透過率が50%以上であり、かつ、波長900nm〜1400nmの領域に反射率50%を超える領域を有することが好ましい。
屈折率層の1層あたりの厚み(乾燥後の厚み)は、20〜1000nmであることが好ましく、50〜500nmであることがより好ましい。
(その他の機能性層)
本発明に係るフィルターにおいては、必要に応じて、さらなる機能の付加を目的として、機能性層を設けることが好ましい。また、機能性を設けることで屈曲時の耐久性が向上するという利点もある。機能性層としては、特に限定されるものではないが、導電性層、帯電防止層、ガスバリア層、易接着層(接着層)、防汚層、消臭層、流滴層、易滑層、ハードコート層、耐摩耗性層、反射防止層、電磁波シールド層、紫外線吸収層、赤外線吸収層、印刷層、蛍光発光層、ホログラム層、剥離層、粘着層、接着層、合わせガラスに利用される中間膜層、断熱層、熱線反射層、放熱層などが挙げられる。
紫外線吸収層に用いられる紫外線吸収剤としては、例えば、特開昭57−74193号公報、同57−87988号公報及び同62−261476号公報に記載の紫外線吸収剤を用いることができる。
(赤外光遮蔽手段)
本発明の赤外遮蔽フィルムにおいては、さらに、赤外光遮蔽手段を用いることができる。さらなる光遮蔽手段を組み合わせることで、赤外遮蔽効果がさらに向上する。
赤外光遮蔽手段としては、上記誘電多層膜以外の誘電多層膜(以下、単に「他の誘電多層膜」とも称する)を用いることができるし、誘電多層膜を用いる以外の手段として、光吸収/反射材料を含む層を設けることができる。光吸収や反射材料をバインダー中に担持してもよい。好ましいバインダーとしては、ポリビニルブチラール系樹脂、あるいはエチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂が挙げられる。具体的には可塑性ポリビニルブチラール〔積水化学工業社製、三菱モンサント社製等〕、エチレン−酢酸ビニル共重合体〔デュポン社製、武田薬品工業社製、デュラミン〕、変性エチレン−酢酸ビニル共重合体〔東ソー社製、メルセンG〕等である。また、光吸収、反射材料としては、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化カドミウム、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、フッ素ドープ酸化錫(FTO)、錫ドープ酸化インジウム(ITO)及びアルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)を好ましく用いることができ、特に好ましのは、ATO、ITOである。光吸収/反射材料の含有量は、層の全質量に対して1〜60%であることが好ましい。なお、光吸収/反射材料を含む層には紫外線吸収剤、抗酸化剤、帯電防止剤、熱安定剤、滑剤、充填剤、着色、接着調整剤等を適宜添加配合してもよい。
(ポリマーを用いた誘電多層型赤外遮蔽フィルムの製造方法)
好適な形態としては、(1)基材上に高屈折率層と低屈折率層とを交互に塗布、乾燥して積層体を形成する方法、(2)押し出しにより積層体を形成後、該積層体を延伸してフィルムを形成する方法が挙げられる。
上記(1)の方法は、具体的には以下の形態が挙げられる;(1)基材上に、高屈折率層塗布液を塗布し乾燥して高屈折率層を形成した後、低屈折率層塗布液を塗布し乾燥して低屈折率層を形成し、フィルムを形成する方法;(2)基材上に、低屈折率層塗布液を塗布し乾燥して低屈折率層を形成した後、高屈折率層塗布液を塗布し乾燥して高屈折率層を形成し、フィルムを形成する方法;(3)基材上に、高屈折率層塗布液と、低屈折率層塗布液とを交互に逐次重層塗布・乾燥して、高屈折率層、および低屈折率層を含むフィルムを形成する方法;(4)基材上に、高屈折率層塗布液と、低屈折率層塗布液とを同時重層塗布し、乾燥して、高屈折率層、および低屈折率層を含むフィルムを形成する方法;などが挙げられる。中でも、生産効率性の観点、すなわち、設置場所に応じて種々のラインアップを簡便にそろえることができるので(4)の同時重層塗布であることが好ましい。本発明に係る屈折率層においては、各層塗布液を調製して同時重層により積層を行うためのバインダーとしては、ポリビニルアルコール等の合成高分子、ゼラチン、増粘多糖類等の水溶性高分子を好適に用いることができる。
〔重層塗布の製造方法〕
特に水溶性高分子を有機ポリマーとして含有する場合に好適である。高屈折率層、および低屈折率層を含む複数の構成層を、公知の塗布方式から適宜選択して、支持体上に水系で同時重層塗布した後、セット、乾燥して製造することができる。塗布方式としては、例えば、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、カーテン塗布方法、あるいは米国特許第2,761,419号、同第2,761,791号公報に記載のホッパーを使用するスライドビード塗布方法、エクストルージョンコート法等が好ましく用いられる。
屈折率層が水溶性高分子および金属酸化物粒子を含有する場合、重層塗布により積層体を形成するため、各層塗布液において水溶性高分子と金属酸化物粒子の質量比(F/B)が0.3〜10の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.5〜5である。
また、同時重層塗布からゾルゲル転移してセットするまでの時間を5分以内、好ましくは2分以内にすることが好ましい。また、45秒以上の時間をとることが好ましい。
セット時間の調整は金属酸化物粒子の濃度や他の成分等により粘度を調整する、またバインダー質量比率を調整したり、ゼラチン、ペクチン、寒天、カラギーナン、ジェランガム等の各種公知のゲル化剤を添加、調整等により行うことができる。
ここでセットとは、例えば、冷風等を塗膜に当てて温度を下げるなどの手段により、塗膜組成物の粘度を高め、各層間及び各層内の物質流動性を低下させたり、またゲル化する工程のことを意味するが、具体的には、塗布からセットまでの時間は、5〜10℃の冷風を塗布膜に表面から当てて、表面に指を押し付けたときに指に何もつかなくなった時間を言うものとする。
冷風を用いる場合の温度条件としては、25℃以下が好ましく、10℃以下であることがさらに好ましい。また、塗布膜が冷風に晒される時間は、塗布搬送速度にもよるが、10秒以上120秒以下であることが好ましい。
同時重層塗布を行う際の各塗布液の粘度としては、スライドビード塗布方式を用いる場合には、5〜100mPa・sの範囲が好ましく、さらに好ましくは10〜50mPa・sの範囲である。また、カーテン塗布方式を用いる場合には、5〜1200mPa・sの範囲が好ましく、さらに好ましくは25〜500mPa・sの範囲である。
また、塗布液の15℃における粘度としては、100mPa・s以上が好ましく、100〜30,000mPa・sがより好ましく、さらに好ましくは3,000〜30,000mPa・sであり、最も好ましいのは10,000〜30,000mPa・sである。
塗布および乾燥方法としては、塗布液を30℃以上に加温して、塗布を行った後、形成した塗膜の温度を1〜15℃に一旦冷却し、10℃以上で乾燥することが好ましく、より好ましくは、乾燥条件として、湿球温度5〜50℃、膜面温度10〜50℃の範囲の条件で行うことである。また、塗布直後の冷却方式としては、形成された塗膜均一性の観点から、水平セット方式で行うことが好ましい。
上記(2)における押出し工程は、米国特許第6049419号に記載の方法を用いることができる。すなわち、高屈折率層材料のポリマーおよびその他の添加剤(高屈折率層形成用組成物)ならびに低屈折膜材料のポリマーおよびその他の添加剤(低屈折率層形成用組成物)を同時押出し法を用いて高屈折率層および低屈折率層を形成することができる。
一実施形態として、各屈折率層材料を85〜300℃で押出しに適当な粘度になるように溶融させ、必要に応じて各種添加剤を添加し、両方のポリマーを交互に二層になるように押出し機によって押し出すことができる。次に、押し出された積層膜を、冷却ドラム等により冷却固化し、積層体を得る。
その後、この積層体を加熱してから二方向に延伸し、狭帯域バンドフィルターを得ることができる。
延伸方法としては、前述の冷却ドラムから剥離され、得られた未延伸フィルムを複数のロール群および/または赤外線ヒーター等の加熱装置を介してガラス転移温度(Tg)−50℃からTg+100℃の範囲内に加熱し、フィルム搬送方向(長手方向ともいう)に、一段または多段縦延伸することが好ましい。次に、上記のようにして得られた延伸されたフィルムを、フィルム搬送方向に直交する方向(幅手方向ともいう)に延伸することも好ましい。フィルムを幅手方向に延伸するには、テンター装置を用いることが好ましい。
フィルム搬送方向またはフィルム搬送方向に直交する方向に延伸する場合は、フィルムの複屈折性制御の点から、1.1〜4倍の倍率で延伸することが好ましく、より好ましくは1.5〜2.5倍の範囲である。
また、延伸に引き続き熱加工することもできる。熱加工は、Tg−100℃〜Tg+50℃の範囲内で通常0.5〜300秒間搬送しながら行うことが好ましい。
熱加工手段は特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行うことができるが、簡便さの点で、熱風で行うことが好ましい。フィルムの加熱は段階的に高くしていくことが好ましい。
熱加工されたフィルムは通常Tg以下まで冷却され、フィルム両端のクリップ把持部分をカットし巻き取られる。また冷却は、最終熱加工温度からTgまでを、毎秒100℃以下の冷却速度で徐冷することが好ましい。
冷却する手段は特に限定はなく、従来公知の手段で行えるが、特に複数の温度領域で順次冷却しながらこれらの処理を行うことがフィルムの寸法安定性向上の点で好ましい。尚、冷却速度は、最終熱加工温度をT1、フィルムが最終熱加工温度からTgに達するまでの時間をtとしたとき、(T1−Tg)/tで求めた値である。
〔赤外遮蔽フィルムの応用:赤外反射体〕
本発明の赤外反射フィルムは、幅広い分野に応用することができる。例えば、建物の屋外の窓や自動車窓等長期間太陽光に晒らされる設備(基体)に貼り合せ、熱線反射効果を付与する熱線反射フィルム等の窓貼用フィルム、農業用ビニールハウス用フィルム等として、主として耐候性を高める目的で用いられる。特に、本発明に係る遮蔽フィルムが直接もしくは接着剤を介してガラスもしくはガラス代替樹脂等の基体に貼合されている積層体は好適である。
接着剤は、窓ガラスなどに貼り合わせたとき、光学反射フィルムが日光(熱線)入射面側にあるように設置する。また光学反射フィルムを窓ガラスと基材との間に挟持すると、水分等周囲ガスから封止でき耐久性に好ましい。本発明の光学反射フィルムを屋外や車の外側(外貼り用)に設置しても環境耐久性があって好ましい。
本発明に適用可能な接着剤としては、光硬化性もしくは熱硬化性の樹脂を主成分とする接着剤を用いることができる。
接着剤は紫外線に対して耐久性を有するものが好ましく、アクリル系粘着剤またはシリコーン系粘着剤が好ましい。更に粘着特性やコストの観点から、アクリル系粘着剤が好ましい。特に剥離強さの制御が容易なことから、アクリル系粘着剤において、溶剤系及びエマルジョン系の中で溶剤系が好ましい。アクリル溶剤系粘着剤として溶液重合ポリマーを使用する場合、そのモノマーとしては公知のものを使用できる。
また、合わせガラスの中間層として用いられるポリビニルブチラール系樹脂、あるいはエチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂を用いてもよい。具体的には可塑性ポリビニルブチラール〔積水化学工業社製、三菱モンサント社製等〕、エチレン−酢酸ビニル共重合体〔デュポン社製、武田薬品工業社製、デュラミン〕、変性エチレン−酢酸ビニル共重合体〔東ソー社製、メルセンG〕等である。なお、接着層には紫外線吸収剤、抗酸化剤、帯電防止剤、熱安定剤、滑剤、充填剤、着色、接着調整剤等を適宜添加配合してもよい。
[断熱性能、日射熱遮蔽性能]
赤外遮蔽フィルムまたは赤外反射体の断熱性能、日射熱遮蔽性能は、一般的にJIS R 3209(複層ガラス)、JIS R 3106:1998(板ガラス類の透過率・反射率・放射率・日射熱取得率の試験方法)、JIS R 3107:1998(板ガラス類の熱抵抗および建築における熱貫流率の算定方法)に準拠した方法により求めることができる。
日射透過率、日射反射率、放射率、可視光透過率の測定は、(1)波長(300〜2500nm)の分光測光器を用い、各種単板ガラスの分光透過率、分光反射率を測定する。また、波長5.5〜50μmの分光測定器を用いて放射率を測定する。なお、フロート板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、熱線吸収板ガラスの放射率は既定値を用いる。(2)日射透過率、日射反射率、日射吸収率、修正放射率の算出は、JIS R 3106:1998に従い、日射透過率、日射反射率、日射吸収率、垂直放射率を算出する。修正放射率に関しては、JIS R 3107:1998に示されている係数を、垂直放射率に乗ずることにより求める。断熱性、日射熱遮へい性の算出は、(1)厚さの測定値、修正放射率を用いJIS R 3209:1998に従って複層ガラスの熱抵抗を算出する。ただし中空層が2mmを超える場合はJIS R 3107:1998に従って中空層の気体熱コンダクタンスを求める。(2)断熱性は、複層ガラスの熱抵抗に熱伝達抵抗を加えて熱貫流抵抗で求める。(3)日射熱遮蔽性はJIS R 3106:1998により日射熱取得率を求め、1から差し引いて算出する。
本発明の入射角依存の反射率、透過率の測定は、市販の分光測光器(例えば、日本分光株式会社 紫外可視光分光光度計V−670)を用いて、周知の方法で行うことができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが本発明はこれにより限定されるものではない。
実施例1
(試料1)
30cm×30cmサイズで50μm厚みのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(A4300:両面易接着層、東洋紡株式会社製)上に、公知のスパッタ法を用いて、高屈折率層としてTa2O5,低屈折率層としてSiO2を、表1に示す物理膜厚と層構成で重ねて試料1を作製した。
(試料2)
試料1の物理膜厚を表1に示す物理膜厚に変更した以外は同様にして試料2を作製した。
(試料3)
ポリビニルアルコール(PVA217、株式会社クラレ製)の5.0質量%水溶液をスピンコートにて塗布し、その後、水を乾燥してポリビルアルコールの膜を設けて低屈折率層を形成したこと以外は試料2と同様にして、試料3を作製した。
(試料4)
米国特許第6049419号に記載の溶融押し出し方法に従い、ポリエチレンナフタレート(PEN)とポリメチルメタクリレート(PMMA)を積層した後、縦2倍、横2倍に延伸し、熱固定、冷却を行って、表1に示す物理膜厚、層構成の試料4を作製した。
(試料5)
試料4のPMMAをポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.65、融点255℃、東レ社製F20S)、PENをポリエチレンテレフタレート共重合体(固有粘度0.72、シクロヘキサンジカルボン酸成分29mol%、スピログリコール成分20mol%の共重合)とPBT(トレコン1401−X06、東レ社製)(ポリエチレンテレフタレート共重合体:PBT=1:0.2(質量比))にし、物理膜厚を表1に示す構成にしたこと以外は試料4と同様にして、試料5を作製した。
(試料6)
(低屈折率層用塗布液の調製)
純水500質量部に、撹拌しながら水溶性樹脂PVA224(株式会社クラレ製、ケン化度88%、重合度1000)10.0質量部を添加し、さらに水溶性樹脂R1130(クラレ株式会社製、シラノール変性ポリビニルアルコール)5.0質量部、次いで水溶性樹脂ニチゴーGポリマーAZF8035W(日本合成化学工業株式会社製)2.0質量部を添加し、混合しながら70℃に昇温溶解することで、水溶性樹脂の水溶液を得た。
次いで、平均粒径が5nmのシリカ微粒子を含む10質量%酸性シリカゾル(スノーテックス(登録商標)OXS、日産化学工業株式会社製)350質量部中に上記水溶性樹脂水溶液の全量を加え混合した。さらにアニオン系活性剤として、ラピゾールA30(日本油脂株式会社製)を0.3質量部添加し、1時間撹拌後、純水で1000.0gに仕上げることで低屈折率層用塗布液を調製した。
<酸化チタンゾル水系分散液の調製>
酸化チタン水和物を水に懸濁させた水性懸濁液(TiO2濃度 100g/L)10Lに、水酸化ナトリウム水溶液(濃度10モル/L)を30L撹拌下で添加し、90℃に昇温し、5時間熟成した後、塩酸で中和し、濾過・水洗した。なお、上記反応(処理)において、酸化チタン水和物は公知の手法に従い、硫酸チタン水溶液を熱加水分解して得られたものを用いた。
塩基で処理した酸化チタン水和物を、TiO2濃度が20g/Lになるよう純水に懸濁させ、撹拌下、クエン酸をTiO2量に対し0.4モル%加え昇温した。液温が95℃になったところで、濃塩酸を塩酸濃度30g/Lになるように加え、液温を維持しつつ3時間撹拌した。
得られた酸化チタンゾル液のpHおよびゼータ電位を測定したところ、pHは1.4、ゼータ電位は+40mVであった。さらに、マルバーン社製ゼータサイザーナノにより粒径測定を行ったところ、平均粒径は35nm、単分散度は16%であった。また、酸化チタンゾル液を105℃で3時間乾燥させて粒子紛体を得て、日本電子データム株式会社製、JDX−3530型を用いてX線回折の測定を行い、ルチル型粒子であることを確認した。また、体積平均粒径は10nmであった。
この体積平均粒径が10nmであるルチル型酸化チタン微粒子を含む20.0質量%二酸化チタンゾル水系分散液1kgに、純水1kgを添加し、10.0質量%酸化チタンゾル水系分散液を得た。
<ケイ酸水溶液の調製>
SiO2濃度が2.0質量%であるケイ酸水溶液を調製した。
<シリカ変性酸化チタンゾル水系分散液の調製>
上記の10.0質量%酸化チタンゾル水系分散液0.5kgに純水2kgを加えた後、90℃に加熱した。次いで、上記ケイ酸水溶液1.3kgを徐々に添加し、オートクレーブ中、175℃で18時間加熱処理を行った。その後、さらに濃縮することにより、ルチル型構造を有する二酸化チタンであり被覆層がSiO2であるシリカ変性二酸化チタンゾルを20.0質量%の濃度で含む、シリカ変性二酸化チタンゾル水系分散液を得た。
(高屈折率層用塗布液の調製)
上記で得られた20.0質量%のシリカ変性酸化チタン粒子ゾル水系分散液289質量部、1.92質量%のクエン酸水溶液105質量部、10質量%のアリルエーテルコポリマー(AKM−0531、日油株式会社製)水溶液20質量部、および3質量%のホウ酸水溶液90質量部を混合して、シリカ変性酸化チタンゾル分散液を調製した。
次いで、シリカ変性酸化チタンゾル分散液を撹拌しながら、純水20質量部、およびポリビニルアルコール(PVA217、株式会社クラレ製)の5.0質量%水溶液335質量部を添加した。さらに、アニオン性界面活性剤(ラピゾールA30、日油株式会社製)の1質量%水溶液を20質量部添加し、最後に純水で全量を1000質量部とし、高屈折率層用塗布液H2を調製した。
(光学フィルムの形成)
塗布装置は、21層同時塗布可能なスライドホッパー塗布装置を用いた。30cm×30cmサイズで50μm厚みのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(A4300:両面易接着層、東洋紡株式会社製)上に、上記で調製した低屈折率層用塗布液および高屈折率層用塗布液H2を、45℃に保温しながら、物理膜厚と層構成が表1となる様に同時重層塗布した。その直後、膜面が15℃以下となる条件で冷風を1分間吹き付けてセットさせた後、80℃の温風を吹き付けて乾燥させて、試料6を作製した。
(試料7〜8)
試料6と同様にし、物理膜厚を表1に示す構成に変更した以外は同様にして、試料7〜8を作製した。
(試料9)
試料6の誘電多層膜が形成されている面とは反対側のPETフィルム上に、以下のハードコート層を設けた。メチルエチルケトン溶媒 90質量部にUV硬化型ハードコート材(UV−7600B、日本合成化学工業株式会社製)7.5質量部を添加し、次いで光重合開始剤(イルガキュア(登録商標)184、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)0.5質量部を添加し、撹拌混合した。次いで、ATO粉末(超微粒子ATO、住友金属鉱山株式会社製)2質量部を添加し、ホモジナイザーで高速撹拌することで、ハードコート層用塗布液を作製した。
試料6のPETフィルムの誘電多層膜がある側とは逆側のPETフィルム表面に、上記ハードコート層用塗布液を乾燥膜厚3μmになるる様にワイヤーバーにより塗布し、70℃で3分間熱風乾燥した。その後、大気下で、アイグラフィックス社製のUV硬化装置(高圧水銀ランプ使用)にて、400mJ/cm2の照射量で硬化を行うことにより、赤外光遮断性のハードコート層を形成し、試料9を作製した。
(各層の屈折率の測定)
基材上に屈折率を測定する対象層(高屈折率層、低屈折率層)をそれぞれ単層で塗設したサンプルを作製し、下記の方法に従って、各高屈折率層および低屈折率層の屈折率を求めた。
分光光度計として、U−4000型(日立製作所社製)を用いた。各サンプルの測定側の裏面を粗面化処理した後、黒色のスプレーで光吸収処理を行って裏面での光の反射を防止して、5度正反射の条件にて可視光領域(400nm〜700nm)の反射率の測定結果より、屈折率を求めた。
(反射スペクトル、透過スペクトル、日射取得率の測定)
分光光度計(日本分光製、V−670)を用い、各赤外遮蔽フィルムの300nm〜2500nmの領域における5nmおきの透過率・反射率を測定した。次にJIS R3106:1998に記載の方法に従い、該測定値と日射反射重価係数との演算処理を行って日射反射率、日射透過率、可視光透過率を求め、さらに日射熱取得率(TTS)を求めた。入射角依存の反射スペクトル、透過スペクトルも前記分光光度計にて通常の方法で測定し、得られたスペクトルに対して、JIS R3106:1998に記載の方法と同様の演算処理をして日射熱取得率を求めた。ここで、可視光透過率としては、70%以上であることが好ましく、75%以上であることがより好ましい。また、日射取得率としては、80%以下であることが好ましく、75%以下であることがより好ましい。
表2に入射角に対するA値、可視光透過率、日射熱取得率を示す。本発明の構成材料を用いて、任意の入射角に対して遮熱性能を有する赤外遮蔽フィルムを設計、作製可能なことが判る。なお、下記表1の層構成において、例えば、(L/H)9とあるのは、低屈折率層(=L)および高屈折率層(=H)のユニットが9つあるという意味である。
実施例2
(ガラス積層体1の作製)
(粘着層の形成)
酢酸エチル60質量部とトルエン20質量部とを混合し、さらにアクリル系粘着剤(アロンタックM−300、東亞合成株式会社製)を20g添加し、撹拌混合することで粘着剤塗布液を作製した。
実施例1の試料9の誘電多層膜を形成した表面に、粘着剤塗布液をワイヤーバーにより塗布し、80℃、2分間乾燥することで粘着層付きフィルムを作製した。
この粘着層付きフィルムの粘着層表面を、厚さ3mmのフローとガラス(3mm)の表面へ貼合機により貼合しし、ガラス積層体1を作製した。
(ガラス積層体2の作製)
厚さ2mmの透明なフロートガラス、0.38mmのポリビニルブチラールシート、実施例1の試料9、0.38mmのポリビニルブチラールシート、厚さ2mmの透明なフロートガラスをこの順に重ね、真空袋に入れて、真空ポンプをを用いて、この袋の中を排気した。この排気済みの真空袋を、オートクレーブ中で30分間、90度に加熱し、その後、真空袋から取り出し、合わせガラス構造のガラス積層体2を作製した。
他の試料1〜8も同様にしてガラス積層体1、ガラス積層体2を作製し、実施例1と同様用の評価を行ったところ、実施例1と同じ結果を得た。