以下、本発明による通信装置について、実施の形態を用いて説明する。なお、以下の実施の形態において、同じ符号を付した構成要素及びステップは同一または相当するものであり、再度の説明を省略することがある。
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1による通信装置について、図面を参照しながら説明する。本実施の形態による通信装置は、プリコーディングで用いる重みの一部を伝搬路情報から算出し、残りを推定することによって、その重みの生成の処理負荷を低減することができるものである。
図1は、本実施の形態による通信装置1の構成を示すブロック図である。本実施の形態による通信装置1は、複数のアンテナに接続されており、伝搬路推定を行う領域である伝搬路推定領域における離散単位ごとにプリコーディングを行う。伝搬路推定領域とは、例えば、時間領域であってもよく、マルチキャリア伝送方式の搬送波に関する周波数領域であってもよく、伝搬路に関する空間領域であってもよく、あるいは、それらの任意の2以上の組み合わせであってもよい。通常、伝搬路推定値は時間の経過に応じて変化するため、h(t1)、h(t2)…のように時間依存の値となる。また、その時間t1,t2…は、離散的な値である。したがって、伝搬路推定領域が時間領域である場合には、離散単位は、その伝搬路推定値の時間単位となる。また、マルチキャリア伝送方式の場合には、複数の周波数に応じた搬送波が用いられるが、通常、伝搬路推定値は搬送波の周波数に応じて変化するため、hF1、hF2…のように周波数依存の値となる。また、その周波数F1、F2…は、離散的な値である。したがって、伝搬路推定領域が周波数領域である場合には、離散単位は、その伝搬路推定値の周波数単位となる。また、MIMO通信のような複数アンテナを介した通信の場合には、通常、伝搬路推定値は伝搬路(送信アンテナと受信アンテナとの組)に応じて変化するため、h11、h12…のように、伝搬路依存(アンテナの組に依存)の値となる。例えば、h11は、第1の送信アンテナと第1の受信アンテナとの組に応じた伝搬路推定値であり、h12は、第1の送信アンテナと第2の受信アンテナとの組に応じた伝搬路推定値である。また、その伝搬路は、離散的である。したがって、伝搬路推定値が空間領域である場合には、離散単位は、その伝搬路単位(送信アンテナと受信アンテナとの組の単位)となる。本実施の形態では、伝搬路推定領域に時間領域と周波数領域と空間領域とが含まれる場合について主に説明する。なお、本実施の形態では、通信装置1が複数のアンテナを介してMIMO−OFDM通信を行う場合について主に説明するが、通信装置1は、複数のアンテナを介した、プリコーディング後の信号の送信を行うものであれば、それに限定されるものではない。また、本実施の形態では、通信装置1が基地局(BS:Base Station)であり、通信装置1の通信相手の装置が移動局(UE:User Equipment)である場合について主に説明するが、そうでなくてもよい。また、通信装置1の通信相手の装置の個数は問わない。例えば、通信相手の装置が2個以上である場合には、マルチユーザMIMO通信が行われてもよく、通信相手の装置が1個である場合には、シングルユーザMIMO通信が行われてもよい。また、本実施の形態では、通信装置1が2個のアンテナ3,4を介して通信を行う場合について説明するが、そうでなくてもよい。通信装置1は、3個以上のアンテナを介して通信を行ってもよい。図1で示されるように、本実施の形態による通信装置1は、アンテナ3,4に接続されており、受付部11と、算出部12と、推定部13と、制御部14と、プリコーダ15と、送信部16とを備える。
受付部11は、離散単位についての伝搬路推定値に関する情報である伝搬路情報を受け付ける。なお、本実施の形態では、その受け付けが受信である場合、すなわち、受付部11が、離散単位についての伝搬路情報を、通信装置1の通信相手の装置から受信する場合について主に説明する。その伝搬路情報は、プリコーディングの重み算出に用いられるものである。ここで、伝搬路情報は、伝搬路推定値に関する情報であり、プリコーディングの重み算出に用いることができる情報であれば、その内容を問わない。例えば、伝搬路情報は、伝搬路推定値そのものであってもよく、MMSE空間フィルタリングによる重み算出を行う場合には、伝搬路推定値とノイズの分散とであってもよく、固有ビーム空間分割多重による重み算出を行う、シングルユーザMIMOである場合には、伝搬路推定値が各要素である伝搬路マトリックスを固有値分解した結果のユニタリ行列であってもよく、あるいは、プリコーディングの重み算出に用いるその他の情報であってもよい。次に、離散単位ごとの伝搬路情報について説明する。離散単位が時間単位である場合には、離散単位ごとの伝搬路情報とは、離散的な時間ごとの伝搬路情報h(t1)、h(t2)等である。その伝搬路情報は、例えば、1msごとなどの情報であってもよい。また、離散単位が周波数単位である場合には、離散単位ごとの伝搬路情報とは、離散的な周波数ごとの伝搬路情報hF1、hF2等である。その伝搬路情報は、例えば、マルチキャリア伝送方式におけるサブキャリアの周波数ごとの情報であってもよい。また、離散単位が伝搬路単位である場合には、離散単位ごとの伝搬路情報とは、伝搬路(送信側と受信側とのアンテナの組)ごとの伝搬路情報h11、h12等である。その伝搬路情報は、例えば、送信側のアンテナが2個であり、受信側のアンテナが2個である場合には、4個の情報であってもよい。また、伝搬路推定領域が時間領域と周波数領域と空間領域とを含む場合には、それらの離散単位ごとの伝搬路情報は、時間単位ごと、周波数単位ごと、伝搬路単位ごとの伝搬路情報hF1 11(t1)、hF1 11(t2)、hF2 11(t1)、hF2 11(t2)、hF1 12(t1)、hF1 12(t2)等となる。なお、上記説明では伝搬路情報が伝搬路推定値そのものである場合について説明したが、前述のように、伝搬路情報は伝搬路推定値でなくてもよいことは言うまでもない。
次に、受付部11が受け付ける離散単位についての伝搬路情報に関して説明する。その説明に先立って、まず、プリコーディングの重みについて説明する。後述するように、プリコーディングの重みには、算出対象の重みと、推定対象の重みとが存在する。算出対象の重みは、算出部12によって伝搬路情報を用いて算出され、推定対象の重みは、算出された重みを用いて推定部13によって推定される。したがって、離散単位ごとのすべての伝搬路情報のうち、重みの算出で用いられる伝搬路情報、すなわち重み算出用の伝搬路情報は、一部のものとなる。そのため、受付部11が受け付ける離散単位についての伝搬路情報は、離散単位ごとのプリコーディングのすべての重みに対応する伝搬路情報であってもよく、あるいは、離散単位ごとのプリコーディングのすべての重みに対応する伝搬路情報のうち、一部であってもよい。後者の場合には、例えば、受付部11は、推定対象の重みに対応する伝搬路情報のうち、少なくとも一部を受け付けなくてもよい。すなわち、受付部11は、プリコーディングの重み算出で用いる以外の伝搬路情報のうち、すべてを受け付けなくてもよく、あるいは、その一部を受け付けなくてもよい。受付部11が、推定対象の重みに対応する伝搬路情報のうち、少なくとも一部を受け付けない場合には、その伝搬路情報を送信する装置において、その伝搬路情報の生成や送信等の処理を行わなくてもよいことになり、それに応じて処理負荷が軽減されることになる。
なお、受付部11は、伝搬路情報を受信する以外の処理を行ってもよい。例えば、伝搬路情報以外の情報を通信先の装置から受信してもよい。また、受付部11による受信は、OFDM通信のようにマルチキャリア伝送方式による受信であってもよく、あるいは、そうでなくてもよい。OFDMの送信信号を受信する場合における受付部11の詳細な構成は、図2(a)に示される通りである。図2(a)において、受付部11は、低雑音増幅部31と、局部発振部32と、周波数変換部33と、AD変換部34と、フーリエ変換部35と、等化器36と、復調部37と、P/S(パラレル/シリアル)変換部38とを備える。なお、図2(a)では、一の受信処理系列のみを示しているが、受付部11は、通信装置1の有するアンテナの個数に応じた受信処理系列を有してもよい。また、その場合には、P/S変換部38の後段等において、MIMOに関してアンテナごとの信号を抽出する処理部が存在してもよく(例えば、シングルユーザMIMOの場合等)、あるいは、存在しなくてもよい(例えば、プリコーディングの場合等)。
低雑音増幅部31は、アンテナ3,4で受信された受信信号を受信し、その受信した受信信号を増幅する。局部発振部32は、周波数変換のための信号を生成する。周波数変換部33は、局部発振部32によって生成された信号を用いて、受信信号を周波数変換し、AD変換部34で変換できる等価ベースバンド帯域受信信号に変換する。AD変換部34は、等価ベースバンド帯域受信信号であるアナログ信号をデジタル信号に変換する。なお、このデジタル信号は、複数のサブキャリアに応じた複数の並列した信号となる。フーリエ変換部35は、AD変換後のデジタル信号を受け付け、ガードインターバルを除去した上で、それらの複数の信号を並列して高速フーリエ変換することによって、時間領域の信号を周波数領域の信号に変換する。等化器36は、遅延プロファイルをフーリエ変換した周波数領域のチャネル推定値を用いて等化処理を行う。復調部37は、等化処理後の信号を復調する。P/S変換部38は、サブキャリアごとの並列配列の信号を直列配列に変換する。その結果、受付部11は、送信元の装置が送信した信号そのものを得ることができる。
なお、受付部11の構成は、これに限定されるものではなく、他の構成であってもよい。例えば、高速フーリエ変換に代えて、離散フーリエ変換を用いてもよい。このように、受付部11の構成には任意性が存在する。また、受付部11は、OFDM以外による受信を行ってもよい。すなわち、受付部11は、OFDM以外による受信を行うことができる構成を有していてもよい。受付部11は、ハードウェアによって実現されてもよく、あるいは、ソフトウェアにより実現可能な部分については、受信デバイスを駆動するドライバ等のソフトウェアによって実現されてもよい。
算出部12は、受付部11が受信した伝搬路情報を用いて、伝搬路推定領域における伝搬路情報のうち、重みの算出用の伝搬路情報に対応するプリコーディングの重みを算出する。前述のように、この算出部12で算出するのは、プリコーディングの重みのうち、算出対象の重みについてである。なお、本実施の形態では、時間領域と周波数領域とについては、算出部12が、プリコーディングの重みに対応するすべての伝搬路情報のうち、一部の伝搬路情報を用いて、プリコーディングの重み算出を行う場合について説明する。一方、空間領域については、算出部12は、プリコーディングの重みに対応するすべての伝搬路情報を用いて、プリコーディングの重み算出を行う場合について説明する。すなわち、空間領域における伝搬路情報については、プリコーディングの重みに対応するすべての伝搬路情報が重みの算出対象となり、算出部12が、そのすべての伝搬路情報を用いてプリコーディングの重み算出を行う場合について説明する。なお、時間領域と周波数領域との各領域について、重みを算出するかどうかは独立して設定されていてもよい。ただし、周波数領域においてある周波数に対応する重みを算出しない場合には、時間領域において、その周波数に対応する重みはすべて算出も推定も行わないようにしてもよい。また、時間領域において、プリコーディングの一部の重みのみを算出する場合には、算出しない重みに対応する周波数が、時間の経過に応じて変化するようにしてもよい。
推定部13は、算出部12が算出した重みを用いて、重みの算出対象でない伝搬路情報に対応する重みを推定する。すなわち、推定部13は、プリコーディングの重みのうち、算出部12が算出しなかった重みについて、算出部12が算出した重みを用いた推定を行う。なお、その推定は、内挿であってもよく、あるいは、外挿であってもよい。例えば、時間領域における推定の場合には、推定部13は、時間領域における重みの推定を外挿(補外)によって行ってもよい。時間領域における推定においては、内挿(補間)を行うことができないからである。また、周波数領域における推定の場合には、推定部13は、周波数領域における重みの推定を内挿と外挿との少なくとも一方によって行ってもよい。推定部13による推定方法は、例えば、0次推定(0次補外や0次補間)であってもよく、1次推定(1次補外や1次補間)であってもよく、2次推定(2次補外や2次補間)であってもよく、多項式推定(多項式補外や多項式補間)であってもよく、スプライン推定(スプライン補外やスプライン補間)であってもよく、あるいは、その他の推定であってもよい。なお、この推定部13による推定の処理は、推定対象の重みを伝搬路情報から算出する処理よりも軽い処理であることが好適である。重みの算出に代えて重みの推定を行うことによって、全体として重み生成の処理負荷を低減することができるようにするためである。したがって、推定部13による推定方法は問わないが、例えば、1次推定のように軽い処理であることが好適である。なお、推定部13が重みの推定を行うことによって、プリコーディングで用いられるすべての重みがそろうことになる。したがって、推定部13は、プリコーディングで用いられるすべての重みのうち、算出されなかったすべての重みを推定することになる。ある重みが算出されなかった場合に、推定部13は、その重みを時間領域で推定してもよく、あるいは、周波数領域で推定してもよい。なお、どちらで推定を行うのかについては、通常、設定されているものとする。また、推定部13が推定で用いる算出された重みの数は問わない。その重みの数は、あらかじめ決まっていてもよく、あるいは、適応的に変化してもよい。また、推定部13は、例えば、推定結果の重みも用いて推定を行ってもよく、あるいは、そうでなくてもよい。前者の場合としては、例えば、時間領域で推定された重みを用いて周波数領域の推定を行う場合がある。
制御部14は、伝搬路推定領域ごとに、プリコーディングの重みのうち、算出対象とする重みがどれであるかと、推定対象とする重みがどれであるかとを管理しているものとする。すなわち、制御部14は、時間領域と周波数領域とのそれぞれにおいて、各重みを算出するのか、あるいは、推定するのかを管理しているものとする。また、推定の場合には、その推定対象の重みを時間領域で推定するのか、あるいは、周波数領域で推定するのかも管理されているものとする。そして、制御部14は、ある伝搬路推定領域において、算出対象の重みを推定可能であると判断した場合には、その算出対象の重みを推定対象の重みに変更し、ある伝搬路推定領域において、推定対象の重みを推定可能でないと判断した場合には、その推定対象の重みを算出対象の重みに変更する。この変更は、管理している情報を変更することによって行われてもよい。また、制御部14は、変更結果に応じた重みの算出や推定が行われるように、算出部12や推定部13を制御してもよい。このような変更によって、算出対象の重みと、推定対象の重みとの割合が適応的に変更されることになる。なお、本実施の形態では、この変更は、時間領域と周波数領域とについて行われるものとする。本実施の形態では、空間領域については、すべての重みを算出対象としているからである。また、その判断で用いる推定方法は、推定部13が用いる推定方法と同じであることが好適である。すなわち、推定部13が1次推定を行っている場合には、制御部14も、1次推定により、その判断を行うことが好適である。また、制御部14は、例えば、算出対象の重みについて、重みの算出と、他の算出対象の重みを用いた重みの推定とを行い、算出された重みと推定された重みとの差の絶対値がしきい値より小さい場合に、その算出対象の重みを推定可能であると判断し、推定対象の重みに変更してもよい。また、制御部14は、例えば、推定対象の重みについて、重みの推定と、重みの算出とを行い、推定された重みと算出された重みとの差の絶対値がしきい値より大きい場合に、その算出対象の重みを推定可能でないと判断し、算出対象の重みに変更してもよい。なお、両重みの差の絶対値がしきい値と等しい場合には、推定対象と算出対象との変更を行わなくてもよい。また、この制御部14による判断は、重みについて行われてもよく、あるいは、伝搬路情報について行われてもよい。重みは伝搬路情報から生成されるため、適切なしきい値を設定することにより、伝搬路情報について判断することによって、重みについての判断と同様の判断を行うことができるからである。なお、伝搬路情報について判断する場合には、算出された重みに代えて、受信された伝搬路情報を用い、推定された重みに代えて、受信された伝搬路情報を用いて推定された伝搬路情報を用いるものとする。その伝搬路情報の推定方法も、推定部13による推定方法と同じであることが好適である。なお、伝搬路情報が、各伝搬路推定値を要素とする伝搬路マトリックスである場合には、伝搬路情報の差の絶対値は、例えば、伝搬路情報である伝搬路マトリックスの各要素の差の絶対値であってもよく、その絶対値の和であってもよい。前者の場合には、その要素ごとにしきい値との判断が行われ、すべての要素についてしきい値より小さい(大きい)場合に、伝搬路情報の差の絶対値がしきい値より小さい(大きい)と判断されてもよい。また、制御部14が、判断を重みのレベルではなく、伝搬路情報のレベルで行うことによって、この判断における伝搬路情報から重みを算出する処理が不要となり、その判断に関する処理が軽減されることになる。また、制御部14が重みのレベルで判断する場合には、例えば、重みの算出を算出部12で行い、重みの推定を推定部13で行うようにしてもよい。
なお、周波数領域における算出対象と推定対象との設定は、時間方向に変化しなくてもよく、あるいは、変化してもよい。前者の場合には、推定対象の重みに対応する周波数が変化しないで一定となり、後者の場合には、推定対象の重みに対応する周波数が時間の経過と共に変化することになる。また、時間領域における算出対象と推定対象との設定は、周波数方向に変化しなくてもよく、あるいは、変化してもよい。前者の場合には、推定対象の重みに対応する時間が周波数に応じて変化しないで一定となり、後者の場合には、推定対象の重みに対応する時間が周波数に応じて変化することになる。なお、重み算出処理を軽減するために重みを推定する趣旨からすると、時間領域における算出対象と推定対象との設定が周波数方向に変化し、時間領域における重みの推定の割合が時間の経過に応じてあまり変化しないようにすることが好適である。
プリコーダ15は、算出部12が算出した重みと、推定部13が推定した重みとを用いて、送信信号のプリコーディングを行う。各伝搬路推定領域において、算出された重みと、推定された重みとによって、プリコーディングのすべての重みがそろうことになる。したがって、プリコーダ15は、その重みを用いてプリコーディングを行うことができる。時間領域において、プリコーダ15は、送信信号に対して、繰り返してプリコーディングを行う。また、周波数領域において、プリコーダ15は、搬送波の周波数ごとにプリコーディングを行う。また、空間領域において、プリコーダ15は、プリコーディング重み行列と送信信号のベクトル(そのベクトルの各要素は各アンテナに対応している)とを掛けることによって、複数のアンテナに対応するプリコーディングを行う。なお、そのプリコーディングにおいて、例えば、摂動ベクトルを加えたベクトル摂動プリコーディング(「modulo vector precoding」とも呼ばれる)を行ってもよく、あるいは、そうでなくてもよい。このように、プリコーディングを行う方法は問わない。このプリコーダ15の処理は、重みの一部が推定されたものとなった以外、従来のプリコーダと同様のものであり、その詳細な説明を省略する。
送信部16は、プリコーディング後の送信信号を複数のアンテナ3,4を介して送信する。その結果、プリコーディングの重み行列が伝搬路マトリックスの逆行列等である場合には、受信側において、アンテナ3,4間の干渉の除去を行わなくてもよいことになる。また、例えば、ブロック対角化によるプレコーディングの重み生成を行った場合には、マルチユーザMIMOの移動局間の干渉を除去することができ、各移動局において干渉を除去できるようになる。また、送信部16は、制御部14による重みの算出と重みの推定との変更結果に応じて、送信対象となる伝搬路情報を示す送信対象情報を、伝搬路情報の送信元に送信する。この送信対象情報によって、通信装置1の通信相手である装置が送信しなくてはならない伝搬路情報を指定することができる。なお、送信対象情報によって送信対象として示される伝搬路情報は、通信装置1において重みの算出に用いられる伝搬路情報である。なお、送信対象情報は、結果として送信対象の伝搬路情報を示すことができるのであれば、どのような情報であってもよい。例えば、送信対象情報は、送信対象でない伝搬路情報を示す情報であってもよい。また、例えば、送信対象情報は、制御部14によって、送信対象から不送信対象に変更された伝搬路情報を示す情報や、不送信対象から送信対象に変更された伝搬路情報を示す情報、すなわち、差分の情報であってもよい。なお、送信部16による送信は、OFDM通信のようにマルチキャリア伝送方式による送信であってもよく、あるいは、そうでなくてもよい。OFDMの送信信号を送信する場合における送信部16の詳細な構成は、図2(b)に示される通りである。図2(b)において、送信部16は、S/P(シリアル/パラレル)変換部41と、変調部42と、逆フーリエ変換部43と、DA変換部44と、局部発振部45と、周波数変換部46と、電力増幅部47とを備える。なお、図2(b)では、一の送信処理系列のみを示しているが、送信部16は、通信装置1の有するアンテナの個数に応じた送信処理系列を有してもよい。S/P変換部41は、送信信号を、OFDMの複数のサブキャリアに対応する複数の並列配列の信号に変換する。変調部42は、並列配列の各信号をデジタル変調する。本実施の形態では、送信信号に対してプリコーディングが行われるため、変調部42でデジタル変調された送信信号(シンボル系列)がプリコーダ15に渡され、プリコーディングされるものとする。そして、プリコーディング後の送信信号(シンボル系列)が、後段の逆フーリエ変換部43に渡される。逆フーリエ変換部43は、プリコーディング後の並列配列の信号に対して、逆高速フーリエ変換を行い、時間領域の信号にする。また、逆フーリエ変換部43は、逆高速フーリエ変換後の直列配列のデジタル信号にガードインターバルを挿入する。DA変換部44は、ガードインターバルの挿入された直列配列のデジタル信号を受け付け、そのデジタル信号をアナログ信号に変換する。局部発振部45は、周波数変換のための信号を生成する。周波数変換部46は、局部発振部45が生成した周波数変換のための信号を用いて、DA変換部44で生成された等価ベースバンド帯域送信信号を、送信周波数帯に変換する。電力増幅部47は、周波数変換部46により周波数変換された送信信号を、所望の電力まで増幅する。その送信信号が、アンテナ3,4を介して送信される。
なお、送信部16の構成は、これに限定されるものではなく、MIMOによる送信を行うことができるのであれば、他の構成であってもよい。例えば、逆高速フーリエ変換に代えて、逆離散フーリエ変換を用いてもよい。このように、送信部16の構成には任意性が存在する。また、送信部16は、OFDM以外による送信を行うことができる構成を有していてもよい。例えば、送信対象情報等は、OFDM以外の方式によって送信されてもよい。また、送信部16は、ハードウェアによって実現されてもよく、あるいは、ソフトウェアにより実現可能な部分については、送信デバイスを駆動するドライバ等のソフトウェアによって実現されてもよい。
また、通信装置1において、送信時の周波数変換と、受信時の周波数変換で用いられる局部発振部は、送信の構成と、受信の構成とにおいて共用されてもよい。また、例えば、局部発振部32,45が生成する周波数が2.4GHzであり、周波数変換部46による周波数変換後の送信信号の周波数と、アンテナ3,4で受信された受信信号の周波数とが2.4GHzであり、等価ベースバンド帯域の送信信号、受信信号の周波数が0GHzであってもよい。なお、これらの周波数は一例であり、これらに限定されないことは言うまでもない。
ここで、通信装置1の送信相手の装置について簡単に説明する。その装置は、例えば、シングルユーザMIMOや、マルチユーザMIMOの通信を行う移動局であってもよく、あるいは、その他の通信を行う装置であってもよい。また、その装置は、通信装置1との間の各伝搬路について伝搬路推定を行い、その推定結果に応じた伝搬路情報を通信装置1に送信する。なお、その伝搬路推定は、各伝搬路推定領域において行われることになる。また、その装置が通信装置1に送信する伝搬路情報は、基本的に送信対象情報で示されるものであるが、そうでない伝搬路情報をその装置が送信してもよい。例えば、通信装置1の制御部14が推定対象の重みと算出対象の重みとの変更に関する判断を行うことができるように、所定のタイミングで、すべての伝搬路情報を通信装置1に送信してもよい。その所定のタイミングは、例えば、定期的であってもよく、あるいは、所定のイベントの発生に応じたタイミングであってもよい。その所定のイベントは、例えば、伝搬路の品質が低下したことであってもよく、あるいは、その他のイベントであってもよい。
次に、本実施の形態による通信装置1による周波数領域におけるプリコーディングの重みの算出と推定とについて、図3を用いて簡単に説明する。図3において、重みの算出対象である、周波数F4の伝搬路情報や周波数F6の伝搬路情報等が受付部11によって受信されているものとする。なお、周波数F5の伝搬路情報は、受付部11で受信されていてもよく、あるいは、受信されていなくてもよい。算出部12は、周波数F4の伝搬路情報及び周波数F6の伝搬路情報から、それぞれ重みを算出する。また、推定部13は、算出された重みを用いて、周波数F5の伝搬路情報に応じた重みを推定する。その後、プリコーダ15は、算出された重みと、推定された重みとを用いて送信信号に対してプリコーディングを行い、そのプリコーディング後の送信信号がOFDM変調(逆フーリエ変換部43の処理に対応)されて送信されることになる。なお、重みの推定で用いる重みの個数が2個に限定されないことは言うまでもない。
次に、通信装置1の動作について図4のフローチャートを用いて説明する。
(ステップS101)受付部11は、伝搬路情報を受け付けたかどうか判断する。そして、伝搬路情報を受け付けた場合には、ステップS102に進み、そうでない場合には、伝搬路情報を受信するまでステップS101の処理を繰り返す。なお、複数の装置から伝搬路情報を受信する場合には、すべての装置から伝搬路情報を受信した時点で、ステップS102に進んでもよい。また、受け付けた伝搬路情報は、図示しない記録媒体で記憶されてもよい。
(ステップS102)算出部12は、受付部11が受け付けた伝搬路情報のうち、重み算出用の伝搬路情報を用いて、算出対象の重みを算出する。算出された重みは、図示しない記録媒体で記憶されてもよい。
(ステップS103)推定部13は、算出部12が算出した重みを用いて、推定対象の重みを推定する。時間領域における推定と、周波数領域における推定とを行う場合には、推定部13は、例えば、時間領域における推定を行い、その後に、周波数領域における推定を行ってもよい。その周波数領域における推定において、時間領域における推定結果を用いてもよく、あるいは、そうでなくてもよい。なお、推定された重みは、図示しない記録媒体で記憶されてもよい。
(ステップS104)制御部14は、算出対象の重みや、推定対象の重みに関する変更の判断を行うかどうか判断する。そして、その変更の判断を行う場合には、ステップS108に進み、そうでない場合には、ステップS105に進む。なお、例えば、受付部11がすべての伝搬路情報を受け付けた場合には、制御部14は、変更の判断を行うと判断し、そうでない場合には、変更の判断を行わないと判断してもよい。
(ステップS105)送信部16のS/P変換部41は、送信信号に対してS/P変換を行い、変調部42は、S/P変換後の送信信号に対してデジタル変調を行う。
(ステップS106)プリコーダ15は、デジタル変調後の送信信号に対して、算出部12が算出した重みと、推定部13が推定した重みとを用いたプリコーディングを行う。
(ステップS107)プリコーディング後の送信信号に対して、逆フーリエ変換部43による逆高速フーリエ変換が行われることなどによって、送信部16による送信信号の送信が行われる。そして、ステップS101に戻る。
(ステップS108)制御部14は、時間領域における判断等の処理を行う。この処理の詳細については、図5のフローチャートを用いて後述する。
(ステップS109)制御部14は、周波数領域における判断等の処理を行う。この処理の詳細については、図6のフローチャートを用いて後述する。
(ステップS110)制御部14は、算出対象の重みと、推定対象の重みとに変更があったかどうか判断する。そして、変更があった場合には、ステップS111に進み、そうでない場合には、ステップS105に進む。
(ステップS111)制御部14は、送信対象情報を生成する。そして、その送信対象情報が通信先の各装置に送信されるようにする。そして、ステップS105に進む。したがって、ステップS111からステップS105に進んだ場合には、送信対象情報を含む送信信号についてデジタル変調の処理が行われるものとする。
なお、図4のフローチャートにおいて、電源オフや処理終了の割り込みにより処理は終了する。
図5は、図4のフローチャートにおける時間領域における処理(ステップS108)の詳細を示すフローチャートである。なお、図5のフローチャートの処理は一例であり、これ以外の方法によって時間領域における重みに関する判断を行ってもよい。
(ステップS201)制御部14は、カウンタiを1に設定する。
(ステップS202)制御部14は、i番目の重みを時間領域において推定できるか、あるいは、算出すべきかを判断する。その判断は、前述のように、時間領域において推定したi番目の重み(あるいは、そのi番目の重みに対応する時間領域において推定した伝搬路情報)と、算出したi番目の重み(あるいは、そのi番目の重みに対応する受信された伝搬路情報)との差の絶対値をしきい値と比較することによって行ってもよい。制御部14は、その絶対値がしきい値よりも小さければ推定できると判断し、しきい値より大きければ算出すべきと判断してもよい。なお、i番目の重みは、周波数領域、及び/または、空間領域におけるi番目の重みである。
(ステップS203)制御部14は、ステップS202における判断結果が、i番目の重みに関する設定を変更することになるかどうか判断する。そして、変更することになる場合には、ステップS204に進み、そうでない場合には、ステップS205に進む。なお、例えば、i番目の重みが推定対象に設定されているにもかかわらず、ステップS202において算出対象と判断した場合や、i番目の重みが算出対象に設定されているにもかかわらず、ステップS202において推定対象と判断した場合に、制御部14は、i番目の重みに関する設定を変更すると判断してもよい。
(ステップS204)制御部14は、i番目の重みの設定を、ステップS202の判断結果に応じて変更する。その設定は、図示しない記録媒体で記憶されてもよい。
(ステップS205)制御部14は、カウンタiを1だけインクリメントする。
(ステップS206)制御部14は、i番目の重みが存在するかどうか判断する。そして、i番目の重みが存在する場合には、ステップS202に戻り、そうでない場合には、図4のフローチャートに戻る。
図6は、図4のフローチャートにおける周波数領域における処理(ステップS109)の詳細を示すフローチャートである。なお、図6のフローチャートにおいて、周波数領域における重みを、周波数に応じて複数の範囲に分けているものとする。例えば、低い方から10個の周波数に対応する10個の重みが1個目の範囲に属し、次に低い方から10個の周波数に対応する10個の重みが2個目の範囲に属する、と言うようになっていてもよい。そして、その範囲ごとに、周波数領域における推定が行われ、推定対象の重みを増減させる処理を行うものとする。また、図6のフローチャートの処理は一例であり、これ以外の方法によって周波数領域における重みに関する判断を行ってもよい。
(ステップS301)制御部14は、カウンタiを1に設定する。
(ステップS302)制御部14は、i番目の範囲における重みの推定は、適切であるかどうか判断する。そして、その重みの推定が適切である場合には、ステップS304に進み、そうでない場合には、ステップS303に進む。なお、制御部14は、i番目の範囲において推定対象である重み(あるいは、その推定対象の重みに対応する、周波数領域において推定した伝搬路情報)と、算出した重み(あるいは、その重みに対応する受信された伝搬路情報)との差の絶対値をしきい値と比較することによって行ってもよい。なお、制御部14は、その絶対値がしきい値以下であれば推定が適切であり、しきい値より大きければ推定が不適切であると判断してもよい。また、i番目の範囲において、推定対象の重みが複数存在する場合には、各推定対象の重みについて、その判断を行い、いずれかの重みについて推定が適切でないと判断された場合には、ステップS303に進むようにしてもよい。
(ステップS303)制御部14は、適切でないと判断された推定対象の重みを、算出対象の重みに変更する。その変更後の設定は、図示しない記録媒体で記憶されてもよい。
(ステップS304)制御部14は、i番目の範囲において、算出対象の重みを推定対象の重みに変更できるかどうか判断する。そして、算出対象の重みを推定対象の重みに変更できる場合には、ステップS305に進み、そうでない場合には、ステップS306に進む。なお、制御部14は、i番目の範囲において算出対象である重み(あるいは、その算出対象の重みに対応する受信された伝搬路情報)と、i番目の範囲において、その算出対象以外の算出対象である重みを用いて推定した重み(あるいは、その重みに対応する、周波数領域において推定した伝搬路情報)との差の絶対値をしきい値と比較することによって行ってもよい。なお、その判断対象となる算出対象の重みは、例えば、i番目の範囲における周波数領域の中央付近の重みであってもよく、i番目の範囲においてランダムに選択された重みであってもよく、あるいは、その他の方法で選択されたi番目の範囲の重みであってもよい。
(ステップS305)制御部14は、変更可能であると判断された算出対象の重みを、推定対象の重みに変更する。その変更後の設定は、図示しない記録媒体で記憶されてもよい。
(ステップS306)制御部14は、カウンタiを1だけインクリメントする。
(ステップS307)制御部14は、i番目の範囲が存在するかどうか判断する。そして、i番目の範囲が存在する場合には、ステップS302に戻り、そうでない場合には、図4のフローチャートに戻る。
なお、図5のフローチャートにおけるステップS204や、図6のフローチャートにおけるステップS303,S305において、重みの設定を変更した場合には、変更フラグを「1」に設定してもよい。なお、変更フラグの初期値は「0」であるとする。そして、図4のフローチャートにおけるステップS110において、変更フラグが「1」である場合には、変更が行われたと判断してもよい。なお、その判断の後に、変更フラグはクリアされ、「0」に設定されるものとする。
次に、本実施の形態による通信装置1の動作について、具体例を用いて説明する。この具体例において、図7Aで示される設定情報が図示しない記録媒体で記憶されているものとする。その設定情報は、時間領域と周波数領域とにおける算出対象の重みと、推定対象の重みとを示すものである。図7Aの設定情報において、周波数と、重み算出フラグとが対応付けられている。重み算出フラグは、時間領域と、周波数領域とのそれぞれについて、重みを算出するか推定するかを示すフラグである。フラグが「1」であれば重みを算出し、フラグが「0」であれば重みを推定するものとする。時間領域における「時間1」から「時間5」は、時間領域における離散単位ごとの隣接した5個の時間を示すものであり、その時間ごとに重み算出フラグが設定されている。「時間5」の次は、「時間1」に戻るものとする。また、周波数領域における周波数「F1」、「F2」…は、その順番で大きくなる隣接した周波数であるとする。そして、10個の周波数で1個の周波数の範囲が構成されるものとする。すなわち、周波数「F1」〜「F10」が1番目の周波数の範囲であり、周波数「F11」〜「F20」が2番目の周波数の範囲であるとする。周波数領域における推定は、その周波数の範囲内の重みを用いて行われるものとする。すなわち、周波数F1〜F10のいずれかに対応する重みを推定する場合には、周波数F1〜F10の範囲において算出された重みを用いて推定されることになる。図7Aの設定情報により、例えば、周波数F3に対応する重みは、時間領域における時間1では推定され、それ以外では算出されることになる。その推定(外挿)では、時間領域における直前の4個の算出された重みが用いられるものとする。図7Aで示されるように、時間領域における外挿を行うタイミングを周波数に応じて変更することによって、一度に行われる外挿の処理数を均等にすることができ、その結果、時間領域の全体にわたって重み算出の処理を軽減することができるようになる。また、図7Aの設定情報により、例えば、周波数「F5」に対応する重みは、周波数領域において内挿されることになる。その内挿において、同じ周波数の範囲に含まれる他の重みが用いられるものとする。また、周波数F5に対応する重みは、周波数領域で推定されることになる。したがって、周波数F5に対応する時間領域における算出の要否は設定されていない。
図8は、周波数領域と、時間領域とにおいて、各重みが算出されたか推定されたかを示すテーブルである。図8において、T101,T102…が、時間領域であり、F1,F2…が周波数領域である。また、○は、重みが算出されたことを示し、△1は、重みが時間領域で外挿されたことを示し、△2は、重みが周波数領域で内挿されたことを示すものとする。また、T101が、図7Aの時間1に対応するものとする。
また、この具体例では、伝搬路情報の5回の送信ごとに全周波数に対応する伝搬路情報が送信され、制御部14は、その伝搬路情報を用いて、推定対象の重みの範囲を適応的に変化させるものとする。また、この具体例では、通信装置1が2個のアンテナ3,4を用いて送信し、受信側も2個のアンテナを用いて受信するものとする。したがって、伝搬路は2×2=4個あるものとする。また、この具体例では、伝搬路情報が伝搬路推定値であるとする。
通信装置1は、通信先の装置から順次、伝搬路情報を受信しながらプリコーディングを行い、MIMO−OFDM通信を行っているとする。そして、受付部11が、時間T101に対応する各伝搬路情報を受信したとする(ステップS101)。その受信された伝搬路情報には、周波数F3に対応する伝搬路情報と、周波数F5に対応する伝搬路情報は含まれていないものとする。そして、算出部12は、図7Aの時間領域における「時間1」に対応する重み算出フラグと、周波数領域に対応する重み算出フラグとのAND演算を行い、その結果が重みを算出することを示す「1」である周波数に対応する伝搬路情報を用いてプリコーディングの重みを算出し、図示しない記録媒体に蓄積する(ステップS102)。そのプリコーディングの重みの算出は、例えば、2×2行列である伝搬路マトリックスの逆行列を算出することによって行われる。
次に、推定部13は、まず、図7Aの時間領域における「時間1」に対応する重み算出フラグが、重みを時間領域で推定することを示す「0」である周波数「F3」に対応する重みを、それ以前の4個の重み、すなわち、時間T97、T98、T99、T100に対応する周波数F3の4個の重みを用いて外挿により推定し、図示しない記録媒体に蓄積する。なお、この具体例では4個の伝搬路に応じた4個の重みが存在するため、厳密には、T101に対応する4個の重みがそれぞれ外挿によって推定されることになる。また、他の周波数についても、時間領域における推定が行われるものとする。その後、推定部13は、図7Aの周波数領域に対応する重み算出フラグが、重みを周波数領域で推定することを示す「0」である周波数「F5」に対応する重みを、同じ周波数の範囲に含まれる他の周波数に対応する重み、すなわち、周波数F1〜F4,F6〜F10に対応する時間T101の重みを用いて内挿により推定し、図示しない記録媒体に蓄積する。その際に、推定された周波数F3に対応する重みも用いるものとする。また、この場合にも、厳密には、4個の重みのそれぞれについて補間による推定が行われることになる。また、他の周波数の範囲についても、周波数領域における推定が行われるものとする(ステップS103)。その後、制御部14は、すべての周波数に対応する伝搬路情報が受信されているのではないため、判断のタイミングではないと判断する(ステップS104)。そして、受付部11のS/P変換部41でS/P変換が行われ、そのS/P変換後の信号に対して変調部42によるデジタル変調が行われてプリコーダ15に渡される(ステップS105)。プリコーダ15は、算出部12が算出した重みと、推定部13が推定した重みとを用いて、デジタル変調後のシンボル系列に対してプリコーディングを行い、逆フーリエ変換部43に渡す(ステップS106)。その後、逆フーリエ変換部43等において逆高速フーリエ変換等の処理が行われた上で、送信信号がアンテナ3,4を介して送信される(ステップS107)。このような処理が繰り返されることにより、算出された重みと、推定された重みとを用いたプリコーディングや、そのプリコーディング後の送信信号の送信等が行われることになる。
次に、時間T105において、全周波数に対応する伝搬路情報が送信され、受付部11によって受信された後の処理について説明する。その場合にも、算出部12と、推定部13とにおいて、前述したように、図7Aの設定情報における時間5に対応する重み算出フラグ等に応じた重みの算出と、重みの推定とが行われる(ステップS101〜S103)。その後、制御部14は、全伝搬路情報が受信されたため、判断を行うタイミングであると判断する(ステップS104)。そして、制御部14は、まず、時間領域における処理を行う(ステップS108)。具体的には、制御部14は、周波数F1に対応する受信されたT105の伝搬路情報と、周波数F1に対応する時間T101〜T104の伝搬路情報から外挿したT105の伝搬路情報との差の絶対値がしきい値より小さいかどうか判断する。この具体例では、伝搬路が4個あるため、受信されたT105の伝搬路情報、及び外挿されたT105の伝搬路情報は、それぞれ4個の伝搬路推定値となる。したがって、制御部14は、4個のすべての伝搬路推定値について、受信されたものと推定されたものとの差の絶対値がしきい値より小さい場合に、受信された伝搬路情報と、推定された伝搬路情報との差の絶対値がしきい値より小さいと判断する。なお、複数の伝搬路が存在する場合に、通常、各伝搬路の推定値と、各伝搬路に対応する重みとは一対一の関係にはない。例えば、伝搬路マトリックスの逆行列がプリコーディング行列だからである。したがって、複数の伝搬路に関する重みの推定の適否を、伝搬路情報を用いて判断する場合には、通常、その複数の伝搬路について一括して判断することになる。ここでは、4個のすべての伝搬路推定値が、その条件をみたしていたとする(ステップS201,S202)。すると、制御部14は、図7Aを参照し、現在の設定では周波数F1に対応する伝搬路情報が時間領域における推定の対象となっていないため(すべての重み算出フラグが1であるため)、設定の変更が必要であると判断し(ステップS203)、周波数F1に対応する時間領域の重み算出フラグの一つを「0」に変更する(ステップS204)。その際に、制御部14は、周波数F1が属する周波数の範囲において、時間1〜5における推定の頻度が偏らないように、設定を変更するものとする。この具体例では、制御部14が、時間1に対応する重み算出フラグを「0」に変更したとする。また、制御部14は、設定情報を変更したため、図示しない記録媒体で記憶されている変更フラグを「0」から「1」に変更する。ここで、変更フラグ「1」は、設定情報が変更されたことを示すものである。その後、制御部14は、他の周波数に対応する伝搬路情報についても同様の判断を行い、その判断結果に応じて適宜、設定が変更される(ステップS202〜S206)。
その後、制御部14は、周波数領域における処理を行う(ステップS109)。具体的には、制御部14は、1番目の周波数の範囲である周波数F1〜F10の範囲において、推定対象の重みに対応する、受信された周波数F5の伝搬路情報と、その範囲に含まれる他の伝搬路情報から推定した周波数F5の伝搬路情報との差の絶対値がしきい値より小さいかどうか判断する。この具体例では、伝搬路が4個であるため、制御部14は、周波数F5に対応する4個のすべての伝搬路推定値について、受信されたものと、推定されたものとの差の絶対値がしきい値より小さい場合に、受信された伝搬路情報と、推定された伝搬路情報との差の絶対値がしきい値より小さいと判断する。ここでは、4個のすべての伝搬路推定値が、その条件をみたしていたとする(ステップS301,S302)。すると、制御部14は、その周波数F5に隣接する周波数F6について、受信された伝搬路情報と、他の伝搬路情報から推定した伝搬路情報との差の絶対値がしきい値より小さいかどうか判断する。そして、この場合にも、その条件がみたされていたとすると(ステップS304)、制御部14は、周波数領域における周波数F6に対応する重み算出フラグを「1」から「0」に変更する(ステップS305)。なお、この時点ですでに変更フラグが「1」に設定されているため、変更フラグの変更は行われない。その後、制御部14は、他の周波数の範囲についても同様に、その範囲における推定が問題ないかどうかや、その範囲において新たな推定を行えるかどうかなどを判断し、その判断結果に応じて適宜、設定情報を変更する。
その後、制御部14は、変更フラグが「1」であるかどうか判断する。この場合には、「1」であるため(ステップS110)、制御部14は、図7Bで示される変更後の設定情報である送信対象情報を送信対象の情報に含める(ステップS111)。その後、その送信対象情報を含む送信対象の情報についてS/P変換やデジタル変調、プリコーディングが行われ、送信される処理(ステップS105〜S107)は、前述の通りである。なお、その制御部14による変更フラグに関する判断の後に、変更フラグは「0」にリセットされるものとする。受信側の装置では、受信した送信対象情報を用いて、重み算出フラグ「1」に対応する伝搬路情報を通信装置1にフィードバックするものとする。例えば、図7Bの送信対象情報に応じて、受信側は、時間T106(時間1に対応)には、周波数F1,F3,F5,F6の伝搬路情報を送信しないことになる。また、受信側は、時間T107(時間2に対応)には、周波数F4〜F6の伝搬路情報を送信しないことになる。その結果、通信装置1における重みの算出や推定は、図8で示されるようになる。
なお、この具体例では、伝搬路情報を用いて推定の適否を判断する場合について説明したが、そうでなくてもよい。前述のように、プリコーディングの重みを用いて推定の適否を判断してもよい。
また、この具体例では、10個の周波数が1個の範囲に対応する場合について説明したが、そうでなくてもよい。また、制御部14が算出対象の重みと推定対象の重みとを変更する方法は、上記具体例の方法に限定されないことは言うまでもない。
また、この具体例では、推定の適否を一括して判断する場合について説明したが、そうでなくてもよい。一括して判断する場合には、一時に処理が集中するため、推定の適否を分散して判断するようにしてもよい。例えば、上述の具体例の場合に、伝搬路情報の受信ごとに、上述の判断処理の1/5ずつを行い、その5回の処理によって上述した1回分の処理が実現されるようにしてもよい。
以上のように、本実施の形態による通信装置1によれば、プリコーディングの重みをすべて伝搬路情報から算出する場合と比較して、重みの生成に関する処理負荷を低減させることができる。特にOFDMのサブキャリア数が多い場合には有効である。また、推定対象の重みを適応的に変更することによって、周波数領域や時間領域において、重みの変化が大きい場合には、推定対象の重みを減らし、周波数領域や時間領域において、重みの変化が小さい場合には、推定対象の重みを増やすことができる。その結果、適切なプリコーディングを行うことができるようになる。
なお、本実施の形態では、受付部11が、伝搬路情報を受信する場合について主に説明したが、そうでなくてもよい。例えば、アップリンクとダウンリンクとに同じ伝搬路が用いられる場合には、伝搬路推定を通信装置1において行うことができる。その場合には、受付部11は、通信装置1において生成された伝搬路情報を、その伝搬路情報を生成した構成要素から受け付けるものであってもよい。その場合には、通信装置1は、伝搬路推定結果に応じて伝搬路情報を生成する図示しない生成部を備えてもよい。
また、本実施の形態では、送信部16が送信対象情報を送信する場合について説明したが、そうでなくてもよい。例えば、前述のように、通信装置1において伝搬路推定を行っている場合には、送信部16による送信対象情報の送信を行わなくてもよい。
また、本実施の形態では、制御部14によって、推定対象の重みと、算出対象の重みとを適宜、切り替える場合について説明したが、そうでなくてもよい。例えば、通信状況にあまり変化のないところで通信を行う場合には、あらかじめ決められた設定情報に応じた重みの算出と推定とが行われてもよい。
また、本実施の形態では、受付部11が、推定対象の重みに対応する伝搬路情報の全部または一部を受け付けない場合について主に説明したが、そうでなくてもよい。受付部11はすべての伝搬路情報を受け付け、算出部12は、その一部の伝搬路情報を用いてプリコーディングの重みを算出してもよい。
また、本実施の形態では、時間領域と周波数領域との両方において内挿や外挿による重みの推定を行う場合について説明したが、そうでなくてもよい。例えば、時間領域のみにおいて重みの推定を行ってもよく、周波数領域のみにおいて重みの推定を行ってもよい。
また、MIMOは通常、OFDMにより行われるため、OFDMによる通信が行われる場合について主に説明したが、OFDMではないMIMOによる通信が行われてもよいことは言うまでもない。また、複数のアンテナを介したプリコーディングをともなう送信であれば、MIMOに限定されない。
また、上記実施の形態において、各処理または各機能は、単一の装置または単一のシステムによって集中処理されることによって実現されてもよく、あるいは、複数の装置または複数のシステムによって分散処理されることによって実現されてもよい。
また、上記実施の形態において、各構成要素間で行われる情報の受け渡しは、例えば、その情報の受け渡しを行う2個の構成要素が物理的に異なるものである場合には、一方の構成要素による情報の出力と、他方の構成要素による情報の受け付けとによって行われてもよく、あるいは、その情報の受け渡しを行う2個の構成要素が物理的に同じものである場合には、一方の構成要素に対応する処理のフェーズから、他方の構成要素に対応する処理のフェーズに移ることによって行われてもよい。
また、上記実施の形態において、各構成要素が実行する処理に関係する情報、例えば、各構成要素が受け付けたり、取得したり、選択したり、生成したり、送信したり、受信したりした情報や、各構成要素が処理で用いるしきい値や数式、アドレス等の情報等は、上記説明で明記していない場合であっても、図示しない記録媒体において、一時的に、あるいは長期にわたって保持されていてもよい。また、その図示しない記録媒体への情報の蓄積を、各構成要素、あるいは、図示しない蓄積部が行ってもよい。また、その図示しない記録媒体からの情報の読み出しを、各構成要素、あるいは、図示しない読み出し部が行ってもよい。
また、上記実施の形態において、各構成要素等で用いられる情報、例えば、各構成要素が処理で用いるしきい値やアドレス、各種の設定値等の情報がユーザによって変更されてもよい場合には、上記説明で明記していない場合であっても、ユーザが適宜、それらの情報を変更できるようにしてもよく、あるいは、そうでなくてもよい。それらの情報をユーザが変更可能な場合には、その変更は、例えば、ユーザからの変更指示を受け付ける図示しない受付部と、その変更指示に応じて情報を変更する図示しない変更部とによって実現されてもよい。その図示しない受付部による変更指示の受け付けは、例えば、入力デバイスからの受け付けでもよく、通信回線を介して送信された情報の受信でもよく、所定の記録媒体から読み出された情報の受け付けでもよい。
また、上記実施の形態において、通信装置1に含まれる2以上の構成要素が通信デバイスや入力デバイス等を有する場合に、2以上の構成要素が物理的に単一のデバイスを有してもよく、あるいは、別々のデバイスを有してもよい。
また、上記実施の形態において、各構成要素は専用のハードウェアにより構成されてもよく、あるいは、ソフトウェアにより実現可能な構成要素については、プログラムを実行することによって実現されてもよい。例えば、ハードディスクや半導体メモリ等の記録媒体に記録されたソフトウェア・プログラムをCPU等のプログラム実行部が読み出して実行することによって、各構成要素が実現され得る。その実行時に、プログラム実行部は、記憶部や記録媒体にアクセスしながらプログラムを実行してもよい。なお、上記実施の形態における通信装置1を実現するソフトウェアは、以下のようなプログラムである。つまり、このプログラムは、コンピュータを、複数のアンテナに接続され、伝搬路推定を行う領域である伝搬路推定領域における離散単位ごとにプリコーディングを行う通信装置における処理を実行させるためのプログラムであって、受け付けられた、離散単位についての伝搬路推定値に関する情報である伝搬路情報を用いて、伝搬路推定領域における伝搬路情報のうち、重みの算出用の伝搬路情報に対応するプリコーディングの重みを算出する算出部、算出部が算出した重みを用いて、算出対象でないプリコーディングの重みを推定する推定部として機能させ、算出部が算出した重みと、推定部が推定した重みとは、送信信号のプリコーディングに用いられる、プログラムである。
なお、上記プログラムにおいて、上記プログラムが実現する機能には、ハードウェアでしか実現できない機能は含まれない。例えば、情報を取得する構成要素や、情報を出力する構成要素などにおけるモデムやインターフェースカードなどのハードウェアでしか実現できない機能は、上記プログラムが実現する機能には少なくとも含まれない。
また、このプログラムは、サーバなどからダウンロードされることによって実行されてもよく、所定の記録媒体(例えば、CD−ROMなどの光ディスクや磁気ディスク、半導体メモリなど)に記録されたプログラムが読み出されることによって実行されてもよい。また、このプログラムは、プログラムプロダクトを構成するプログラムとして用いられてもよい。
また、このプログラムを実行するコンピュータは、単数であってもよく、複数であってもよい。すなわち、集中処理を行ってもよく、あるいは分散処理を行ってもよい。
図9は、上記プログラムを実行して、上記実施の形態による通信装置1を実現するコンピュータの外観の一例を示す模式図である。上記実施の形態は、コンピュータハードウェア及びその上で実行されるコンピュータプログラムによって実現されうる。
図9において、コンピュータシステム900は、CD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)ドライブ905、FD(Floppy(登録商標) Disk)ドライブ906を含むコンピュータ901と、キーボード902と、マウス903と、モニタ904とを備える。
図10は、コンピュータシステム900の内部構成を示す図である。図10において、コンピュータ901は、CD−ROMドライブ905、FDドライブ906に加えて、MPU(Micro Processing Unit)911と、ブートアッププログラム等のプログラムを記憶するためのROM912と、MPU911に接続され、アプリケーションプログラムの命令を一時的に記憶すると共に、一時記憶空間を提供するRAM(Random Access Memory)913と、アプリケーションプログラム、システムプログラム、及びデータを記憶するハードディスク914と、MPU911、ROM912等を相互に接続するバス915とを備える。なお、コンピュータ901は、前述の送信や受信の処理を行うためのハードウェア、例えば、DA変換器やAD変換器、変調器や復調器等を含んでいてもよく、あるいは、それらのハードウェアに接続されていてもよい。また、コンピュータ901は、LANへの接続を提供する図示しないネットワークカードを含んでいてもよい。
コンピュータシステム900に、上記実施の形態による通信装置1の機能を実行させるプログラムは、CD−ROM921、またはFD922に記憶されて、CD−ROMドライブ905、またはFDドライブ906に挿入され、ハードディスク914に転送されてもよい。これに代えて、そのプログラムは、図示しないネットワークを介してコンピュータ901に送信され、ハードディスク914に記憶されてもよい。プログラムは実行の際にRAM913にロードされる。なお、プログラムは、CD−ROM921やFD922、またはネットワークから直接、ロードされてもよい。
プログラムは、コンピュータ901に、上記実施の形態による通信装置1の機能を実行させるオペレーティングシステム(OS)、またはサードパーティプログラム等を必ずしも含んでいなくてもよい。プログラムは、制御された態様で適切な機能(モジュール)を呼び出し、所望の結果が得られるようにする命令の部分のみを含んでいてもよい。コンピュータシステム900がどのように動作するのかについては周知であり、詳細な説明は省略する。
また、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。