JP5828013B2 - 内容物付着防止蓋材の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、主として食品類の包装用容器に適用されるヒートシール蓋材、更に具体的には、ヨーグルト、ゼリー、プリン、ジャム等の包装用のカップ状容器に適用される内容物付着防止性を備えた蓋材およびその製造方法に関する。
この種の熱封緘用の蓋材は、一般に基材フィルムとアルミニウム箔との積層からなる基材層のアルミ箔面側に、中間樹脂層を介してヒートシール層、即ち熱封緘層を設けたものとなされ、ヨーグルト等の被包装物を充填したカップ状の容器本体の上面開口に被せて、周縁部を容器本体の上縁フランジ部上に熱融着することによって密封包装物を形成する。
従って、かかる蓋材においては、良好なヒートシール性、密封性と、開封時のための適当な易剥離性が求められるのと同時に、内容物の非付着性、即ち容器の内面側の蓋材裏面に内容物が付着するのを防止しうるものであることが望まれる。蓋材の裏面に内容物が付着すると、開封時に手指や衣服、あるいは周辺を汚すおそれがあると共に、内容物の棄損による無駄を生じ、あるいは付着物を剥がし取る手間がかかり、更には不潔感を催す等の不利益を生じるためである。
そこで、従来、内容物付着防止性能を備えた蓋材について、下記特許文献1〜6に示されるような種々の提案がなされてきた。
特開2002−37310号公報 特開2007−153385号公報 特開2008−100736号公報 特開2009−73523号公報 特開2009−241943号公報 特許第4348401号公報
上記特許文献1〜3に示す先行技術は、基材の片面の熱封緘層に、付着防止効果を有する非イオン界面活性剤又は疎水性添加物、あるいはワックス等を添加するものであり、熱封緘層そのものに付着防止性能を付与しようとするものであるが、いずれも未だ所期する内容物付着防止効果の点で不満足なものでしかなかった。
また、特許文献4〜5の先行技術は、熱封緘層の外面(容器側の面)に、別途内容物付着防止層を付加形成するというものであり、該付着防止層をワックスと、その中に分散された固体微粒子充填剤との組成物で構成するものである。これらの先行技術は、前記特許文献1〜3の先行技術に比べると内容物付着防止効果は一段と改善されるが、それでも未だ十分とはいえないのに加えて、ワックス中に充填剤を分散させているものであるため、熱封緘層のヒートシール性に悪影響を及ぼして密封性が不安定なものになりやすい懸念があった。
更に、特許文献6に示される先行技術は、熱封緘層の外面に、内容物付着防止層として、微細な疎水性シリカ等の疎水性酸化物微粒子による三次元網目状構造の多孔質層を形成するというものである。この付着防止層の形成は、一次粒子平均径が3〜100nmの極めて微細な酸化物微粒子を用い、これをエタノール等の分散媒中に分散させたコート液をグラビアコート方式、あるいはバーコート方式等の塗工手段で塗布したのち、乾燥させることにより、乾燥後の上記微粒子の付着量が0.01〜10g/m、好ましくは0.2〜1.5g/m、最適には0.3〜1g/mで、厚みが0.1〜0.5μm、好ましくは0.2〜2.5μmの多孔質層とするというものである。
この先行提案技術は、内容物付着防止効果の点では非常に優れた効果を奏し得る。
ところが反面、蓋材の容器本体に対するヒートシール部において、無機微粒子による多孔質層が夾雑物となってヒートシール性を阻害する。このため、概してシール強度が低下し、良好な密封性、所要の耐剥離強度を保持し難いものとなり易い難点があった。
このような難点を払拭するための1つの手段として、熱封緘層自体のシール強度をその組成面で高めに設計し、疎水性微粒子層の介在によるシール強度の低下を補うようにすることが考慮される。しかしながら、このような手段によれば、塗工時に生じることの多い疎水性微粒子の塗布量のばらつきにも起因して、特に塗布量の少ない部分でシール強度が大きくなり過ぎて易剥離性が損なわれるおそれが大である。
一方、塗布量を少なくすることでシール強度の低下を抑制することも当然考慮される。しかしながら、この場合、疎水性微粒子の分散濃度の低い分散液を用いることになるため、乾燥後の微粒子分布において均一に塗布することが困難であり、結果として、内容物付着防止効果にバラツキが生じたり、全周に安定した均一な封止強度、耐剥離強度を得難く、シール強度の弱い部分から不本意に内容物が漏出するおそれがあるとか、逆にシール強度の過度に強い部分で蓋材を強く引っ張って開けようとした場合に、内容物が飛び散るおそれがあるなどの問題を生じる。
本発明は、従来技術における上記のような諸問題に鑑み、それらの更なる改善をはかること、具体的には、安定した良好なヒートシール性能を維持しつつ、内容物の付着防止性能に優れ、しかも該付着防止効果を発現する疎水性微粒子の熱封緘層に対する安定付着性を高めて上記内容物付着防止効果の安定持続性を担保しうる新たな改善技術を提供することを目的とする。
本発明は、上記の目的を達成する手段として、先ず内容物付着防止蓋材の製造方法について次の[1]〜[9]項の手段を提示する。
[1]少なくとも基材層と熱封緘層とを有する蓋材の前記熱封緘層の外面に、有機溶媒に疎水性微粒子を分散した分散液を塗布し、乾燥したのち、乾燥した疎水性微粒子層の表面を拭き取り部材で拭き取ることにより少なくとも遊離微粒子を除去し、残存微粒子により前記熱封緘層上に該微粒子分布の均一な薄い付着防止層を形成することを特徴とする内容物付着防止蓋材の製造方法。
[2]前記分散液の塗布工程における塗布量を、疎水性微粒子の乾燥後重量において0.4g/m以上に設定する前記[1]に記載の内容物付着防止蓋材の製造方法。
[3]前記付着防止層は、拭き取りによる疎水性微粒子の残存付着量を、0.05〜0.3g/mの範囲に制御する前記[1]または[2]に記載の内容物付着防止蓋材の製造方法。
[4]拭き取りによる疎水性微粒子の残存付着量を0.1〜0.2g/mの範囲に制御する前記[3]に記載の内容物付着防止蓋材の製造方法。
[5]前記拭き取り部材として不織布またはパイル布帛を用いる前記[1]〜[4]のいずれか1項に記載の内容物付着防止蓋材の製造方法。
[6]前記拭き取り工程は、拭き取り部材に有機溶媒を含浸させて行う、前記[1]〜[5]のいずれか1項に記載の内容物付着防止蓋材の製造方法。
[7]前記疎水性微粒子は、平均粒径1nm〜5,000nmである前記[1]〜[6]のいずれか1項に記載の内容物付着防止蓋材の製造方法。
[8]前記疎水性微粒子が疎水性シリカである前記[1]〜[7]のいずれか1項に記載の内容物付着防止蓋材の製造方法。
[9]前記熱封緘層が、ワックス、及びエチレン−不飽和エステル共重合体を主成分として含むホットメルト樹脂組成物からなる前記[1]〜[8]のいずれか1項に記載の内容物付着防止蓋材の製造方法。
本発明はまた、上記内容物付着防止蓋材の構成について、下記[10]〜[15]項の手段を提示する。
[10]少なくとも基材層と熱封緘層とを有する蓋材において、
前記熱封緘層の外面に付着防止層を有し、
該付着防止層は疎水性微粒子からなり、その付着量が0.05〜0.3g/mの範囲に設定されていることを特徴とする内容物付着防止蓋材。
[11]疎水性微粒子の付着量が0.1〜0.2g/mの範囲に設定されている前記[10]に記載の内容物付着防止蓋材。
[12]前記付着防止層が、前記[1]〜[9]のいずれか1項に記載の方法により形成されたものである前記[10]または[11]に記載の内容物付着防止蓋材。
[13]前記疎水性微粒子は、平均粒径1nm〜5,000nmである前記[10]〜[12]のいずれか1項に記載の内容物付着防止蓋材。
[14]前記疎水性微粒子が、疎水性シリカである前記[10]〜[13]のいずれか1項に記載の内容物付着防止蓋材。
[15]前記熱封緘層が、ワックス、及びエチレン−不飽和エステル共重合体を主成分として含むホットメルト樹脂組成物からなる前記[10]〜[14]のいずれか1項に記載の内容物付着防止蓋材。
本発明は、前記[1]項に記載の製造方法において、熱封緘層の外面に、乾燥後重量において十分な量の疎水性微粒子を塗工し、乾燥後の拭き取りによって遊離微粒子を除去し、必要量の疎水性微粒子を付着残存微粒子として残して所期する付着防止層を形成するものであるから、付着防止層を形成する疎水性微粒子の残存量を任意にコントロールすることが可能であり、所要の内容物付着防止効果の発現を担保しうる範囲内で、疎水性微粒子
の残存付着量を大幅に減少することができる。同時にその分布の均一化をはかることが容易である。従って、ヒートシール部に疎水性微粒子層が夾雑物となって介在するにもかかわらず、ヒートシール性を大きく阻害することがなく、シール強度、密封性を良好に維持しうると共に、該シール強度を全周に亘って均一なものとすることができ、ひいては開封時のための安定した易剥離性をも向上しうる。一方、付着防止層は、少ない量の疎水性微粒子群で構成されるにも拘わらず、後掲の実施例と比較例との対比によっても判るように、単に塗布と乾燥によって形成した場合のように極端な塗布ムラを生じることがなく、全体に亘って疎水性微粒子が均一に分布したものとなるので、全面に安定した必要かつ十分な程度の内容物付着防止効果を発現せしめ得る。しかも、付着防止層を形成する疎水性微粒子は、拭き取りによっても除去されずに残存した付着粒子であるから、蓋材の取扱い時及び使用中における不本意な微粒子の脱落や剥落、あるいは外部の干渉物との摩擦による白化痕の発生等を防止し得て、長期に亘り安定した内容物付着防止効果を維持しうると共に遜色ない外観を維持しうる。
また、前記[2]項に記載の方法では、分散液の塗布工程における塗布量を、乾燥後重量において0.4g/m以上に設定することにより、乾燥後の拭き取りによっても確実に、所要の残存付着量を残しつつ、全体の残存付着量にばらつきの少ない、即ち微粒子分布の均一な付着防止層を形成することができる。
また、前記[3]項に記載のように残存付着量を0.05〜0.3g/mの範囲に制御することにより、シール強度の低下を、付着防止層を有しない蓋材に較べて10%以下に抑制しながら、必要かつ十分な内容物付着防止効果を達成しうるものとなしうる。
更に、前記[4]項に記載のように、上記残存付着量を0.1〜0.2g/mの範囲に制御することにより、上記[3]項による効果を一層良好にかつ確実に達成することができる。
また、前記[5]に記載のように、拭き取り部材として不織布またはパイル布帛を用いることにより、疎水性微粒子の乾燥塗層中から遊離微粒子を含む余剰微粒子を過不足なく拭き取る操作を容易に行うことができると共に、除去した疎水性微粒子を繊維間に捕捉保持しうるので、作業環境を著しく汚損することもなく好都合である。
また、前記[6]項に記載のように、拭き取り部材に有機溶媒を含浸させた状態で拭き取りを行うことにより、拭き取り作業効率を一層向上しうると共に、拭き取りにより除去した微粒子の拭き取り部材中への保持作用をも向上しうる。
また、請求項[7]項に記載のように、平均粒径1nm〜5,000nmの疎水性微粒子を用いることにより、市場から入手しやすい比較的安価な材料を用いて、前記のような内容付着防止効果に優れた蓋材を製造することができる。
更にまた、前記[8]項に記載のように、疎水性微粒子に疎水性シリカを選択使用するときは、愈々市場から入手しやすい比較的安価な材料をもって、優れた内容物付着防止効果を有する蓋材を得ることができる。
また、前記[9]項に記載のように、熱封緘層にワックス及びエチレン−不飽和ステル共重合体を主成分として含むホットメルト樹脂組成物からなるものとする場合、前記[1]〜[8]項に記載の方法による作用効果を確実に達成できる。
また、前記[10]項に記載の構成を有する蓋材にあっては、極少量でしかも分布の均一な疎水性微粒子による付着防止層の形成により、シール強度の低下が少なく、しかも内容物の付着防止効果が良好であるという、両要請を同時にバランス良く調和させた蓋材を提供することができる。
また、前記[11]項に記載の構成とするときは、前記[10]項の効果を一層良好にかつ確実に達成できる。
また、前記[12]項に記載の構成では、前記[10]項及び[11]項に記載の優れた効果を有する蓋材を、安易な製法によって簡単かつ確実に得ることができる。
また、前記[13]項に記載の構成では、市場から入手しやすい比較的安価な疎水性微粒子材料を用いて、内容物付着防止効果に優れたものとすることができる。
また、前記[14]項に記載のように疎水性微粒子に疎水性シリカと選択使用するときは、愈々市場から入手しやすい安価な材料を用いて、内容物付着防止効果に優れたものとすることができる。
更にまた、前記[15]項に記載のように、ホットメルト樹脂組成物からなる、熱封緘層を有する蓋材に前記[10]〜[14]項に記載の構成を適用することにより、当該[10]〜[14]項による作用効果を一層良好に、確実に達成しうる。
図1は本発明による内容物付着防止蓋材の積層構成の概要を示す断面図である。 図2は、疎水性微粒子の分散液を塗工した後、乾燥したときの塗工微粒子層を模式的に示した断面図である。 図3は、乾燥後の疎水性微粒子層の表面を拭き取り部材で拭き取ることにより、遊離微粒子を含む過剰な微粒子を除去したあとの残存微粒子による付着防止層の形態を模式的に示した断面図である。
図1は、本発明に係る内容物付着防止蓋材の積層構成の一例を示す。該蓋材は、基材フィルム層(2)と金属箔層(3)との積層からなる基材層(1)と、該基材層(1)の金属箔(3)側の外面、即ち施蓋使用時に容器本体の内部に向く側の面に中間樹脂層(4)を介して熱封緘層(5)が設けられている。上記の積層構成は従来の蓋材のそれと同様であり、基材層(1)と熱封緘層(5)とを含む積層体をここでは「蓋材本体」と呼称することとする。
本発明に係る内容物付着防止蓋材は、上記蓋材本体の熱封緘層(5)の外面に、更に付加的に付着防止層(6)を有する。
基材フィルム層(2)は、包装容器の表側に配置されるもので、その材料としては、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、セルロースアセテート、セロハンなどの単層または複合フィルム、あるいはこれらのフィルムを紙などにラミネートしたものなどを例示することができる。基材フィルム層(2)は通常適宜印刷(7)が施されて意匠性が付与される。
金属箔層(3)は、ガスバリヤ性、遮光性などを付与するものであり、多くはアルミニウム箔が用いられる。特にヨーグルトの容器用の蓋材にあっては、遮光性、軽量性を満足するものとして厚さ5〜50μm程度のアルミニウム箔が好適に用いられる。また、基材フィルム層(2)との積層接着には一般的な接着剤が用いられる。
なお、基材層(1)として、金属箔層(3)を使用せずに、シリカやアルミナ等の金属を基材フィルム層(2)に蒸着した金属蒸着フィルムを使用することも可能である。
中間樹脂層(4)は、基材層(1)と熱封緘層(5)との間に介在して、蓋材に所定の剛性やヒートシール時のクッション性を付与するものであり、適宜必要に応じて設けられる。一般的には厚さ5〜40μmのポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のオレフィン樹脂、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル等が用いられる。
熱封緘層(5)は、中間層樹脂層(4)および容器側との接着性が良好なものであれば、その材料は、特に限定されない。例えば、ホットメルト接着剤のほか、ラッカータイプ接着剤あるいは公知のシーラントフィルムを用いることもできる。特にヨーグルト包装用容器の蓋材にあっては、ホットメルト接着剤を用いるのが一般的であり、なかでもワックスと、エチレン−不飽和エステル共重合体とを主成分として含み、上記エチレン−不飽和エステル共重合体を30重量%以上の割合で含むホットメルト樹脂組成物からなるものを用いるのが好適である。その理由は、後述の方法による付着防止層の形成において、疎水性微粒子の付着安定性を良好なものとなし得て、熱封緘層(5)に対する付着防止層(6)の密着性を良好なものとなし得ることによる。また、熱封緘層の厚みは特に限定されるものではないが、コスト、密封性、生産性等の点から、厚さ3〜100μm程度とするのが一般的であり、好適には、10〜50μmの範囲とするのが良い。
ところで、本発明の主要構成要素をなす付着防止層(6)は、図3に示すように、疎水性微粒子(10)が重なり合った多孔質構造の層からなるものであり、熱封緘層(5)側において該微粒子(10)の一部が熱封緘層(5)に埋入した状態で、あるいは当接した状態で該熱封緘層(5)に付着している。また、該付着防止層(6)は、厚みにおいて極めて薄くかつ微粒子分布の均一なものである。具体的には、付着防止層(6)における疎水性微粒子(10)の付着量(塗布量)が0.05〜0.30g/mの範囲、好ましくは0.1〜0.2g/mの範囲に設定されているものである。疎水性微粒子(10)の付着量の範囲が上記の下限値0.05g/m未満であると、良好な内容物付着防止効果を得ることができない。逆に上限値の0.30g/mを超えるときは、内容物付着防止効果に優れるものの、付着防止層(6)が熱封緘層(5)のヒートシール性を阻害し、具体的には付着防止層(6)を有しない場合に較べてシール強度(耐剥離強度)が20%以
上も低下し、安定した良好な容器の封止性が損なわれるおそれがある。
上記の付着防止層(6)を構成する疎水性微粒子は、蓋材の内容物付着防止性能の支配的役割を担うものであり、20mN/m以上の表面エネルギーを有する疎水性物質からなるものであればその材料は特に限定されない。具体的に例示すれば、疎水性のシリカ、アルミナ、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、ケイ酸カルシウム等を挙げることができる。なかでも、疎水性能、コスト、超微粒子材料の市場からの入手のし易さ等の観点から、疎水性シリカやアルミナの使用が好適である。
疎水性微粒子の一次粒子における平均粒径は、1〜5,000nmの範囲のものを用いるべきである。平均粒径1nmの未満の超微粒子は、市場からの入手が困難であり、またコストの面からも不利である。他方、平均粒径5,000nmを超えるものでは、ヒートシール性を阻害するおそれが増大すると共に、付着防止効果が低下するおそれがあるため不適である。好ましい平均直径は3〜3000nm、特に好ましくは3〜1000nmの範囲である。
本発明に係る蓋材の製造において、上記付着防止層(6)の形成方法もまた、蓋材の内容物付着防止性能、及びヒートシール性に重大な影響をもつ。
本発明による蓋材の製造方法において、付着防止層(6)の形成は、熱封緘層(5)の外面への疎水性微粒子(10)の過剰量の塗工(塗布)、乾燥、拭き取り部材による過剰な疎水性微粒子の拭き取り除去、必要に応じての仕上げ乾燥の各工程の順次実施によって行われるものである。
次に、これらの各工程の詳細について説明する。
[疎水性微粒子の塗工]
先ず、有機溶媒中に所定濃度に疎水性微粒子を分散した分散液を調製し、これを蓋材本体における熱封緘層(5)の外面に塗布する。
分散液の調製に用いる溶媒は、下地の熱封緘層(5)に対する疎水性微粒子の定着性、付着性を確保するために有機溶媒を用いるべきであり、特に極性基を有する有機溶媒を用いるのが好ましい。なかでもアルコール類の使用が好適であり、特にコスト、安全性、撥水性の発現効果等の面からエタノールやメタノールの使用が好適である。
分散液中の微粒子の分散濃度は、疎水性微粒子の塗布量との関係を考慮して任意に設定しうるが、2%未満(微粒子2g:溶媒100mL)では十分な量の疎水性微粒子の均一
塗布が困難であり、10%を超える高濃度では、塗布量が過剰になり易い。好適な分散濃度は概ね3〜6%程度である。
分散液の塗工手段は、公知の任意の方法を採用しうる。例えばグラビアコート法、吹き付け、バーコート法等を任意に採用しうる。
ここに重要なことは、分散液の実質的な塗布量である。即ち、塗布後の疎水性微粒子の乾燥後重量が0.4g/m以上となるように、それ以上の充分な量を塗布すべきである。上記乾燥後重量が0.4g/m未満となる塗布量では、後の拭き取り工程による疎水性微粒子の残存付着量を本発明の規定する所定の範囲におさめることが困難になる場合がある。だからと言って、2g/mを超えるような過剰な量の塗布は無益である。むしろ材料の無駄を生じ経済的損失の方が大きい。好ましい塗布量は、疎水性微粒子の乾燥後重量において概ね0.5〜1.0g/mの範囲である。
[乾燥]
上記の塗工工程後、蓋材本体を乾燥工程に供し、分散液中の有機溶媒を揮散させて乾燥した疎水性微粒子(10)が比較的厚く推積した塗工微粒子層(6a)を形成する(図2参照)この乾燥は自然乾燥で行っても良いが、作業効率及び疎水性微粒子(10)の定着性の向上のためには強制的な加熱乾燥で行うことが望ましい。このときの加熱条件は特に限定されるものではないが、温度60〜140℃、好ましくは80〜120℃、時間5〜30秒、好ましくは10〜20秒程度に設定すべきである。温度が上記下限値60℃より低いと乾燥工程に時間がかかり、時間が5秒未満では乾燥が不十分なものとなり、その後の取扱いにおいて付着防止層の部分的剥離や脱落を生じ易い。反面、乾燥温度を140℃を超える高い温度に設定したり、あるいは時間を30秒を超える時間に設定すると、殊に疎水性微粒子に疎水性シリカを用いている場合、それがもつ疎水性、撥水性が損なわれるおそれがある。
塗布後乾燥したままの上記塗工微粒子層(6a)は、図2に模式的に示すように、熱封緘層(5)上に比較的多くの量の疎水性微粒子が多孔質構造をなして推積しており、熱封
緘層側の下層部分に位置する微粒子(10a)は、その一部が熱封緘層(5)内に食い込み状態になって、あるいは当接状態になってそれぞれ該熱封緘層(5)に付着一体化した定着微粒子(10a)となっており、それ以外の上層部分に存する微粒子群(10b)は、上記定着微粒子(10a)に直接または間接的に絡まり合うことで一応定位置に安定した遊離微粒子(10b)として存在する。
[拭き取り]
次に、上記の塗工微粒子層(6a)の表面を、図2に模式的に示すように、拭き取り部材(11)で軽く拭うようにして拭き取ることにより、少なくとも前記遊離微粒子(10b)を含む余剰の微粒子を除去し、前記定着微粒子(10a)を含む残存微粒子により、図3に示すように微粒子が重なり合った薄い多孔質構造の付着防止層(6)を形成する。
特に、この拭き取りの操作は、拭き取り後の付着防止層(6)における疎水性微粒子の残存付着量が0.05〜0.3g/m、より好ましくは0.1〜0.2g/mの範囲となるように拭き取り量を制御して行うことが肝要である。付着防止層(6)における微粒子分布は、拭き取りによって均一化されたものとなり、格別の操作を必要としないが、付着量の範囲が上記0.05〜0.3g/mの範囲を逸脱すると、前述したように、内容物付着防止効果とシール強度の両者に同時に十分な満足を得ることができない。
拭き取りに用いる拭き取り部材の材料は、特に限定されるものではないが、柔軟で弾褥性に富んだ繊度の比較的小さい繊維からなる綿状不織布、表面に密度の高い繊維パイル層を有するパイル布帛、あるいは脱脂綿等を用いるのが好適である。これらの繊維拭き取り具を用いることにより、疎水性微粒子の残存付着量を全面に亘って均一化させ易い。かつ除去した疎水性微粒子を繊維間に捕捉保持して、周りの作業環境の汚損防止にも貢献しうる。もとより、上記材料に限定されるものではなく、通常の編織布、合成樹脂発泡体、ゴム発泡体等を使用することもできる。
拭き取り作業は、上記拭き取り部材(11)を装着した手動式の払拭具を用いて手作業で行うことも可能であるが、工業的には、上記拭き取り部材を捲き付け装着した払拭ローラを準備し、拭き取り対象であるシート状の蓋材本体の移送過程の中で上記ローラを所定の接触圧と摺擦速度で接触させるものとすることにより好適に実施することができる。いずれの手法による場合にあっても、拭き取り部材の押さえ圧(接触圧)、摺擦速度、摺擦回数等を調整することで、疎水性微粒子の拭き取り量を調節しうる。
また、上記の拭き取りには、拭き取り部材(11)に溶剤、とくにエタノール、メタノール等の極性基を有する有機溶媒を滲み込ませ、含浸させたものとして作業することが好ましい。溶剤を含浸させた拭き取り部材を用いることにより、拭き取り作業効率、即ち疎水性微粒子の除去効率を一層向上させることができると共に、除去した微粒子の捕捉保持効果にも一段と優れたものとなしうる。
[仕上げ乾燥]
拭き取り後の乾燥は、必須工程ではなく、必要に応じて行われるものである。
特に、拭き取り部材に溶媒を含浸させて拭き取りを行うときは、作業能率上、すぐさま強制乾燥を行うことが好ましい。この場合の好ましい乾燥温度や時間は前述の乾燥工程の場合と同様である。
次に、本発明の効果を確認するために、その各種の実施例を比較例との対比において示す。
(蓋材本体の作製)
基材フィルム(2)として厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、その片面に厚さ30μmのアルミニウム箔(3)をポリウレタン系ドライラミネート接着剤により貼合わせ、基材層(1)とした。
次に、上記基材層(1)のアルミニウム箔(3)側の表面に上記同様の接着剤により、厚さ20μmのポリエチレンフィルムを積層接着して中間樹脂層(4)を形成し、更にその外側にグラビアコート法により熱封緘層(5)を形成した。これによって得られた基材層(1)/中間樹脂層(4)/熱封緘層(5)の積層体をもって蓋材本体とした。
ここに、上記熱封緘層(5)としては、ワックス:40重量部、エチレン-酢酸ビニル
共重合体:54重量部、ロジン:5重量部、シリコンオイル:1重量部、からなる組成のホットメルト樹脂組成物を用い、塗布量18g/mの割合でグラビアコート法により塗工したホットメルト型のものとした。
(疎水性微粒子の塗工)
疎水性微粒子として、下記A,Bの2種類を用意した。
A:疎水性シリカ 一次粒子平均粒径 7nm
(商品名:アロエジルR812S)
B:疎水性シリカ 平均粒径 3000nm
(商品名:サイロホービック100)
そして、上記A,Bの各疎水性シリカを、エタノール溶媒及びメタノール溶媒の各有機溶媒中に表1に示す分散濃度で分散させて各種の分散液を調製した。
次いで、これらの各種分散液を、蓋材本体の前記熱封緘層(5)の外面にグラビアコート法により表1に示す各種の塗布量のもとに塗布した。表1に示す塗布量は、いずれも乾燥後の疎水性微粒子の重量で示すものである。
(一次乾燥)
次いで、上記の分散液を塗布した各試料を、表1に示す乾燥条件で強制乾燥し、熱封緘層(5)上に図2に示すような過剰付着量の乾燥した塗工微粒子層(6a)を形成した。
(拭き取り)
次いで、本発明の実施例及び比較例の試料6,12につき、上記の乾燥した塗工微粒子層(6a)の表面を、該表面に拭き取り部材(11)を軽く押し当てて1〜数回摺擦することにより、遊離微粒子を含む表面側近傍の余剰微粒子を拭き取って除去し、残った付着残存微粒子により、熱封緘層(5)上に残存付着量を異にした各種の、図3に示すような内容物付着防止層(6)を形成した。
上記の拭き取り部材(11)には、綿状不織布(繊度2デニール、目付200g/mのポリエステル不織布)を用い、これに有機溶剤としてのエタノールまたはメタノールを滲み込ませた状態で拭き取りを行った。
本発明の実施例と対比すべき比較例7〜9及び13については、いずれもこの拭き取りを行わずに、前記塗工及び乾燥後の疎水性微粒子層をもってそのまま内容物付着防止層とした。
尚、拭き取り後の残存微粒子量の測定は、付着防止層(6)を形成した蓋材から切り取った10cm×10cmの大きさの試料片を使用し、その付着防止層(6)側の表面を、アルコールを滲み込ませた脱脂綿で撥水性が消失するまで拭き取り、その前後の試料片の重量差から求められるものである。
(仕上げ乾燥)
本発明の実施例及び比較例の6,12の各試料においては、拭き取りを上記のように有機溶媒を含浸させた拭き取り部材を用いて行ったことにより、拭き取り直後の内容物付着防止層(6)は表面が僅かに溶剤で濡れた状態のものとなった。そこで、これらのものについては、表1に示す仕上げ乾燥条件で強制加熱乾燥を行った。
以上により、表1に示す実施例及び比較例の各種試料を得た。そして、各試料について下記の評価試験を行った。結果を図1に併記する。
(評価試験)
(1)付着防止性能
各試料No.1〜15の蓋材の裏面、即ち付着防止層の外面上に、アロエヨーグルト(森永乳業株式会社製 商標「森永アロエヨーグルト」)を約0.5ccの液滴として滴下し、試料をゆっくりと傾けたときに上記液滴が「転がりはじめたときの傾斜角度」を測定して、次の基準で判定評価した。
◎・・・30度以下
○・・・31度以上60度以下
△・・・61度以上90度以下
×・・・90度以上
(2)シール性
試料No.1〜15の蓋材を、120〜180℃×0.2MPa×1.0secの熱圧
シール条件で容器本体(紙/ポリエチレン製容器、但し試料No.15の蓋材についてはポリスチレン製容器)のフランジ面上にヒートシールした。
そして、付着防止層を設けていない蓋材本体のままの蓋材におけるシール強度(蓋材の耐剥離強度・密封性)を基準値として、シール強度の低下率を下記の基準で判定評価した。
◎・・・付着防止層なしのものとほぼ同等
○・・・強度低下20%未満
×・・・強度低下20%以上
(3)密着性
試料No.1〜15の各蓋材の付着防止層の面に、黒い布を巻き付けた重り(500g)を垂直に載せ、ゆっくりと長さ200mm擦り、布に付着したシリカを目視で確認した。
そして、黒い布における疎水性微粒子及び付着防止層の転移付着量(剥離量)を目視検査し、下記の評価基準で評価した。
◎・・・ほとんど付着なし
○・・・許容範囲と認められる程度の僅かな付着あり
△・・・明らかに付着あり
×・・・多くの付着あり
上記(1)〜(3)の各評価試験の結果を、表1に併記して示す。
Figure 0005828013
表1の「付着防止の性能」試験の結果に示すように、本発明による内容物付着防止蓋材においては、試料を僅かに傾けるだけでヨーグルト液滴が転がり移動を始める。このことは、ヨーグルト、プリン、ゼリー等の粘稠な液体成分を含むような内容物に対し、蓋材裏面への該内容物の付着防止効果に優れたものであることを示す。しかも「シール性」試験
の結果に示すように、付着防止層の存在によってヒートシール性がほとんど損なわれることなく、良好な密封性を維持しつつ、上記付着防止性能を付与しうる。加えて、「密着性」試験の結果に見られるように、疎水性粒子からなる付着防止層の密着性が良好で、不本意な疎水性微粒子の分離脱落、付着防止層の部分剥離等のおそれがなく、長期に亘って内容物付着防止性能を安定に維持しうると共に、容器内への異物混入のおそれもない。
1・・・基材層
2・・・基材フィルム層
3・・・金属箔層
4・・・中間樹脂層
5・・・熱封緘層
6・・・付着防止層

Claims (4)

  1. 少なくとも基材層と熱封緘層とを有する蓋材の前記熱封緘層の外面に疎水性微粒子からなる付着防止層を形成するに際し、
    前記熱封緘層の外面に、有機溶媒に疎水性微粒子を分散した分散液を塗布し乾燥することにより、該疎水性微粒子の塗布量を乾燥後重量において0.4g/m以上の過剰量に設定した塗工微粒子層を形成したのち、
    該塗工微粒子層の表面側の遊離微粒子を含む余剰微粒子を除去することにより、残存微粒子をもって前記熱封緘層上に疎水性微粒子の残存付着量を0.05〜0.3g/mの範囲に制御した微粒子分布の均一な薄い付着防止層を形成することを特徴とする内容物付着防止蓋材の製造方法。
  2. 前記疎水性微粒子の残存付着量を0.1〜0.2g/mの範囲に制御する請求項1に記載の内容物付着防止蓋材の製造方法。
  3. 前記疎水性微粒子は、平均粒径1nm〜5,000nmである請求項1または2に記載の内容物付着防止蓋材の製造方法。
  4. 前記疎水性微粒子が疎水性シリカである請求項1〜3のいずれか1項に記載の内容物付着防止蓋材の製造方法。
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