JP5937371B2 - 内容物付着防止蓋材 - Google Patents

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Description

本発明は、主として食品類の包装用容器に適用されるヒートシール蓋材、更に具体的には、ヨーグルト、ゼリー、プリン、ジャム等の包装用のカップ状容器に適用される内容物付着防止性を備えた蓋材に関し、特に容器にヒートシールする前に単位蓋片に打抜き成形して使用される蓋材に関する。
この種の熱封緘用の蓋材は、一般に基材フィルムとアルミニウム箔との積層からなる基材層のアルミ箔面側に、中間樹脂層を介してヒートシール層、即ち熱封緘層を設けたものとなされ、ヨーグルト等の被包装物を充填したカップ状の容器本体の上面開口に被せて、周縁部を容器本体の上縁フランジ部上に熱融着することによって密封包装物を形成するものとなされている。
従って、かかる蓋材においては、良好なヒートシール性、密封性と、開封のための適当な易剥離性が求められるのと同時に、内容物の非付着性、即ち容器の内面側の蓋材裏面に内容物が付着するのを防止しうるものであることが望まれる。蓋材の裏面に内容物が付着すると、開封時に手指や衣服、あるいは周辺を汚すおそれがあると共に、内容物の棄損による無駄を生じ、あるいは付着物を剥がし取る手間がかかり、更には不潔感を催す等の不利益を生じるためである。
このような要請に対し、従来、内容物付着防止性能の付与ないし向上手段として下記特許文献1(特許第4348401号公報)に示されるような提案がなされている。
この先行提案に係る公知技術は、熱封緘層の外面に、内容物付着防止層として極めて微細な疎水性乾式シリカ等の疎水性酸化物微粒子による三次元網目状構造の多孔質層を形成するというものであり、内容物付着防止効果の点では優れた効果を奏し得ることが知られている。
ところが、この疎水性酸化物微粒子による付着防止層を形成した蓋材にあっては、容器にヒートシールする前に単位蓋片に打抜き加工して使用される蓋材である場合、個々の単位蓋片の印刷位置と打抜き位置との間にずれを生じ易く、打抜き加工用の蓋材としての使用に好適しない難点があった。即ち、打ち抜きタイプの蓋材は、個々の単位蓋片の表示印刷が施された広幅の蓋材を原反ロールから繰出しつつ、表示印刷列を打抜き加工機に合わせて1〜3列毎にスリットしたのち、打抜き加工機にかけて個々の上記表示印刷に合致する単位蓋片に打抜き加工される。そして、エアー搬送機などで充填シール機のスタッカーに送り込まれたのち、1枚づつの蓋片として取出され、内容物が充填されたカップ状の容器の開口部に被せられてヒートシールされる。従って、かかる打抜きタイプの蓋材にあっては、上記の打抜き加工時においてその打抜き位置が単位蓋片の表示印刷位置に完全に一致することが求められる。ところが、疎水性酸化物微粒子による付着防止層を形成した蓋材にあっては、往々にして打抜き位置が表示印刷ピッチに対して徐々に合わなくなり、成形不良の蓋片を生じ易い。このため、上記の付着防止性蓋材は、その優れた機能性が認められつつも打抜きタイプの蓋材にあっては、今なお実際の採用が阻まれていたのが現状である。
また、従来の上記付着防止性蓋材は、概して、付着防止層が熱安定性(耐熱性)に劣り、好ましくない熱履歴を受けた場合に付着防止効果が損なわれ易いという難点があった。即ち、疎水性酸化物微粒子として、合成シリカ、なかでも特に乾式法で製造されるシリカ微粒子を代表例とする一次粒子平均径が3〜100nmというような超微細な疎水性酸化物微粒子を用いるものであり、これを最も一般的なラッカータイプやホットメルトタイプの熱封緘層を備えた蓋材の内容物付着防止層に適用した場合、付着防止層の形成工程における微粒子分散液の塗工後の乾燥時において、加熱温度が高すぎたり乾燥時間が長くなると、内容物付着防止効果が著しく損なわれる。また微粒子分散液の塗布ムラにより乾燥状態に差が生じることに基因して、塗布量の多いところが乾燥するまでの間に塗布量の少ない領域部分が過度に熱せられることになり、その部分の内容物付着防止効果が部分的に損なわれる惧れがあった。
更にまた、ヨーグルト、ゼリー、プリン等の容器への充填後のシール時においても、待機中あるいはヒートシール中に蓋材が熱板から受けるいささか過酷な熱影響によって内容物付着防止効果が損なわれる恐れがあり、特にヒートシール部周辺、即ち容器のフランジ部近傍領域において内容物付着防止効果が他の部分に較べて相対的に著しく低下してしまうことが懸念され、このために蓋材の製造時及びヒートシール時の工程管理がいささか厄介であり、取扱いが困難であるという難点もあった。
一方、上記のような特許文献1による先行技術の特に熱安定性の問題に対して、この問題の解決をはかりつつ更に一段と優れた非付着性の確保をも可能とする改善技術として、本発明者らは先に特許文献2(特許第4668352号公報)に記載の発明を提案した。
この先行提案技術は、付着防止層の形成材料として、従来公知の疎水性乾式シリカの使用に代えて、疎水性の湿式シリカ粒子を用いることを主たる特徴点とするものであり、上記特許文献2の段落[0023]および[0037]に記載されているような機序によって、熱安定性(耐熱性)の改善をはかりながら同時に内容物付着防止効果の向上をもはかり得るものである。
しかしながら、一方で、湿式シリカ粒子はその粒径がミクロンサイズの比較的大きいものであるために、隣接する熱封緘層に対する接点が少なく、超微細な一次粒子の凝集体からなる乾式シリカ粒子を使用する場合に較べて相対的に熱封緘層に対する密着性が劣るという難点があり、実用化のためには更にこの点の改善が強く求められるところであった。
また、この疎水性湿式シリカ粒子を付着防止層に用いた蓋材にあっても、ヒートシールする前に蓋状に打抜き成形する場合においては、印刷位置と打抜き部分がずれ易く、安定した打抜き加工ができないという難点を払拭しうるものではなかった。
特許第4348401号公報 特許第4668352号公報
本発明は、上記のような従来技術の問題点に対して、内容物付着防止性能に優れた疎水性無機微粒子による付着防止層を有する蓋材でありながら、打抜き加工時にピッチずれなどが生じない、安定した打抜き加工性を発揮しうるものとすることを主たる解決課題とし、併せて、熱封緘層が一時溶融するような高温にさらされても上記付着防止性能がき損されない良好な熱安定性(耐熱性)の確保をはかり、かつ、該付着防止効果を発現する疎水性粒子の熱封緘層に対する密着性ないし固着性を高めて上記内容物付着防止効果の安定持続性を向上しうる改善技術を提供することを目的とする。
本発明者らは、先ず上記の打抜き加工性の問題点に対しその改善をはかることを目的として種々実験と研究を重ねたところ、打抜き位置にずれを起こす主たる要因は、疎水性無機微粒子による付着防止層を形成した蓋材にあっては、その表面の摩擦力が増大し、滑り性が低下するため、原反ロールからの蓋材の繰出し、および打抜き加工ステーションに送り込むときの蓋材の移送のスムーズさが低下してしまうことによるものであることを突き止め得た。そこで更にこの知見から、表面摩擦力の低減手段について試行錯誤を繰返したところ、第1には付着防止層で被覆されるその下地の熱封緘層の外面を多数の微細突起による凹凸粗面に形成すること、そして第2には上記熱封緘層を構成する樹脂組成物に特定組成のホットメルト組成物を採用することが、打抜き加工時のピッチずれの問題点の解消に有効であり、併せて付着防止用の粒子被覆層に特定構成を付与することにより、前記従来技術の他の問題点も一挙に解決しうることを見出すに至り、このような独自の知見に基づいて本発明を完成し得たものである。
そこで、本発明は、上記の目的達成のための具体的な技術手段として、下記[1]〜[12]に記載の内容物付着防止蓋材を提示する。なお、本発明において、「静摩擦係数」は、JIS K7125に準拠(相手材料としてステンレス板を使用)する測定によって求められるものであり、また、「軟化点」は、環球法(JIS K6863 に準拠)により求め、「融点」はDSC法(JIS K7121 に準拠)により求めたものである。
[1] 少なくとも基材層と熱封緘層とを有し、該熱封緘層の外面に疎水性無機微粒子を主成分として含む内容物付着防止用の粒子被覆層が設けられた蓋材において、
該粒子被覆層側の表面の静摩擦係数が0.65以下に設定されてなることを特徴とする内容物付着防止蓋材。
[2]前記蓋材は、容器にヒートシールする前に該容器の開口部形状に対応する単位蓋片に打抜いて用いられるものである前項[1]に記載の内容物付着防止蓋材。
[3]前記熱封緘層の外面に、高さ0.01〜0.5mmの微小突起が300〜800個/cmの分布密度に形成されていることを特徴とする前項[1]または[2]に記載の内容物付着防止蓋材。
[4]前記熱封緘層が、軟化点90℃以上、160℃における溶融粘度5000mPa・s以下の樹脂組成物からなることを特徴とする前項[1]〜[3]のいずれか1項に記載の内容物付着防止蓋材。
[5]前記疎水性無機微粒子が疎水性湿式シリカ粒子からなり、
前記粒子被覆層の前記熱封緘層側の一部に、疎水性湿式シリカ粒子の粒子間間隙に前記熱封緘層の溶融成分が入り込んだ含浸密着強化層が形成され、同粒子被覆層の最外表面側に、前記疎水性湿式シリカ粒子の表面が露出した付着防止層が残存形成されてなることを特徴とする前項[1]〜[4]に記載の内容物付着防止蓋材。
[6]前記疎水性無機微粒子が、疎水性湿式シリカ粒子と疎水性乾式シリカ粒子との混合組成物からなり、
前記粒子被覆層の前記熱封緘層側の一部に、前記湿式および乾式シリカ粒子の粒子間間隙に前記熱封緘層の溶融成分が入り込んだ含浸密着強化層が形成され、同粒子被覆層の最外表面側に、少なくとも前記湿式シリカ粒子の表面が露出した付着防止層が残存形成されてなることを特徴とする前項[1]〜[4]に記載の内容物付着防止蓋材。
[7] 前記熱封緘層が、エチレン−不飽和エステル共重合体、ワックス、および粘着付与剤を必須成分として含む樹脂組成物からなることを特徴とする前項[1]〜[6]に記載の内容物付着防止蓋材。
[8] 前記樹脂組成物のワックスおよび粘着付与剤の軟化点または融点が80℃以上であることを特徴とする前項[7]に記載の内容物付着防止蓋材。
[9] 前記樹脂組成物は、前記エチレン−不飽和エステル共重合体が20〜80wt%、ワックスが20〜60wt%、粘着付与剤が1〜40wt%の組成を有することを特徴とする前項[7]または[8]に記載の内容物付着防止蓋材。
[10] 前記疎水性無機微粒子は、平均粒径1nm〜5,000nmである前項[1]〜[9]のいずれか1項に記載の内容物付着防止蓋材。
[11]前記シリカ粒子の混合組成物は、疎水性湿式シリカ粒子を50重量%以上99重量%未満含み、残りが疎水性乾式シリカ粒子からなる前項[6]〜[10]のいずれか1項に記載の内容物付着防止蓋材。
[12]前記湿式シリカ粒子は、平均粒径が0.5〜7.0μmであり、乾式シリカ粒子はその一次粒子の平均粒径が3〜50nmである前項[6]〜[11]のいずれか1項に記載の内容物付着防止蓋材。
本発明は、前記[1]項の構成による蓋材において、熱封緘層の外面に疎水性シリカ等の疎水性無機微粒子による内容物付着防止用の粒子被覆層を形成したものであることにより、それ自体が前記特許文献1、2に記載されているような固有の優れた内容物付着防止性能を有する。しかも、付着防止用の粒子被覆層の外面側が特定の静摩擦係数を有する低摩擦力表面に形成されていることで、安定した滑り性、原反ロールからの繰り出し性を有し、ヒートシール部への蓋材の安定したスムーズな給送を行うことを可能にし、蓋片の供給ミスによる工程トラブルの発生を減少しうるのはもとより、ヒートシールする前の一連の工程中で個々の蓋片の表示印刷に合わせて単位蓋片に打抜いて使用する打抜きタイプの蓋材に用いる場合にあっても、印刷位置と打抜き位置とのピッチずれを起こすことがなく、安定した良好な単位蓋片の打抜き成形を行うことができる。
従って、前記[2]項に記載のような打抜き加工タイプの蓋材としても好適に使用可能なものとすることができる。
また、前記[3]項のように、熱封緘層の外面に、高さ0.01〜0.5mm、分布密度300〜800個/cmの多数の微小突起を形成したものとすることにより、該熱封緘層上に付着防止用の粒子被覆層を形成した後でも、その固有の付着防止性能を何ら損なうことなく表面の静摩擦係数を0.65以下、好ましくは0.60以下の充分に低い値に制御したものとすることが容易にでき、ひいてはより確実に前記の良好な打抜き加工性を得ることができる。
また、前記[4]項のように、該粒子被覆層の下面側に位置する熱封緘層が、軟化点90℃以上、160℃における溶融粘度が5000mPa・s以下である樹脂組成物で構成されることにより、打抜き加工適性の向上に寄与しながら、熱封緘層の溶融粘度の上昇を低く抑えることで夾雑シール性を向上しうると共に、付着防止性能の熱安定性を向上し得て、容器本体への封緘使用後においても上記の優れた内容物付着防止効果を良好に維持しうる。
このような付着防止性能の熱安定性の向上効果は、本発明者らの考察によれば、次のような現象によって達成されているものと考えられる。即ち熱封緘層の外面に付加して設けられた内容物付着防止層が疎水性シリカ等の疎水性無機微粒子の層によって形成されているものであることとの関係において、該微粒子分散液の塗工後の乾燥時の加熱、あるいは内容物充填後の容器シール時の待機中に受ける熱板からの輻射熱、更にはヒートシール時に直接熱板から受ける熱影響等によっても、樹脂組成物中の低融点成分が早期かつ過度に溶融して高い流動性を発現するのを抑制ないし防止しうる。即ち、樹脂組成物の軟化点が高いことで、その溶融を遅らせることができ、また抑制することができる。その結果、付着防止層の疎水性無機微粒子が、不本意に熱封緘層中に沈み込んだり、あるいは微粒子間の隙間に熱封緘層の溶融成分が毛細管現象で入り込んで上記隙間を埋めてしまうのを防止しうる。従って、上記微粒子の疎水性表面の露出面積の極端な減少を防いで、良好な内容物付着防止効果を維持しうるものと考えられる。
さらに、疎水性無機微粒子が容器本体と蓋材の熱封緘層との間に介在する夾雑物となることに対し、熱封緘層の軟化点を上げつつも溶融粘度の上昇を低く抑えるものとしたことにより、具体的にはヒートシール温度を考慮した160℃における溶融粘度を5000mPa・s以下に抑えるものとしたことにより、ヒートシール時において熱封緘層の溶融後に疎水性無機微粒子が該熱封緘層内に容易かつ迅速に入り込む。即ち、熱封緘層内に無機微粒子を取り込み易い。従って、夾雑シール性に優れ、さほどシール時の温度を上げる必要なくシールできる。つまり低温シール性を阻害しない。
なお、上記のような諸効果は、樹脂組成物の軟化点を100℃以上、160℃における溶融粘度が2000〜4000mPa・sのものに設定することにより、一層確実かつ良好に享受することができる。
前記[5]項のように、付着防止用の粒子被覆層を疎水性湿式シリカ粒子で構成することにより、該粒子被覆層表面の静摩擦係数を0.65以下の低い値に制御し易い利点を享受しうると共に、該粒子被覆層による付着防止効果の熱安定性の向上効果を得ることができる。加えて、例えば一定の条件下において加熱処理を施すことによって前記粒子被覆層の一部に含浸密着強化層を形成していることにより、粒子内部の間隙および粒子相互間の間隙に入り込んで固化した熱封緘層の構成成分、殊に低粘度、低分子量成分によって愈々強固にシリカ粒子を拘束固定しながら、粒子被覆層のそれ自体をアンカー効果によって熱封緘層に密着させることができる。しかも外表面側に疎水性湿式シリカ粒子が露出した付着防止層が残存形成されることで、疎水性湿式シリカ粒子のもつ固有の良好な撥水性に加えて、粒子被覆層の外表面に形成される当該湿式シリカ粒子の配列によるやや粗い凹凸構造及び多孔質の当該湿式シリカ粒子自体がもつ表面の微細な凹凸構造、更には熱封緘層の微小突起から反映される表面凹凸とも相俟って、愈々優れた付着防止性能を発現する。
さらに前記[6]項によれば、内容物付着防止のための粒子被覆層が、湿式シリカ粒子に疎水性を付与した疎水性湿式シリカ粒子と、乾式シリカ粒子に疎水性を付与した疎水性乾式シリカ粒子との混合組成物によって構成されたものとなされている。従って、互いの粒子のもつ固有の長所を生かしつつ他方の粒子で短所を補って、結果的により優れた付着防止性能の確保はもとより、熱安定性の向上、粒子層の熱封緘層に対する密着性ないし付着安定性に優れた蓋材を得ることができる。即ち、疎水性湿式シリカ粒子は前述の特許文献2に記載されているように、あるいはまた後述するように、疎水性乾式シリカ粒子に較べて相対的に優れた内容物付着防止性能を有すると共に、熱安定性にも優れる反面、粒子径が大きいことに基因して下地の熱封緘層に対する密着性の点では相対的に劣る。これに対し、乾式シリカ粒子は、その一次粒子が数ナノ〜数10ナノレベルの超微細なものであることから、それ自体の凝集力が大きく、塗工工程で分散媒を除去すると多孔質の凝集層を形成するという特徴を有しており、かつ熱封緘層との接点も多くなるため、該熱封緘層に対する密着力ないし結合力に優れる反面、熱影響を受けた際の付着防止性能の安定維持性つまり熱安定性ないし耐熱性に劣る。
そこで、疎水性湿式シリカ粒子と、疎水性乾式シリカ粒子を併用することで、主として前者の疎水性湿式シリカ粒子によって所要の付着防止性能と熱安定性を良好に確保しながら、乾式シリカ粒子によって上記湿式シリカ粒子を拘束し、かつ熱封緘層に対する密着力を補うことができ、ひいては前述のように付着防止性能、熱安定性、密着力のいずれにもより一層優れた付着防止用粒子被覆層を備えた蓋材を得ることができる。
前記[7]項の記載のように、前記熱封緘層が、エチレン−不飽和エステル共重合体、ワックス、および粘着付与剤を必須成分として含む樹脂組成物からなるものであることにより、好ましい融点、軟化点、溶融粘度を保有しながら、粒子被覆層の表面の静摩擦係数を特定の低い値に確実かつ良好に制御することができる。
また、前記[8]項に記載のように、前記樹脂組成物が、エチレン−不飽和エステル共重合体と、融点が80℃以上のワックスおよび粘着付与剤とを含む樹脂組成物からなるものであることにより、付着防止層の耐熱性を向上し、その付着防止性能の熱安定性を顕著に向上し得て、容器本体への封緘使用後においても上記の優れた内容物付着防止効果を良好に維持しうる。
前記[9]項に記載のように、熱封緘層を構成する樹脂組成物を、エチレン−不飽和エステル共重合体が20〜80wt%、ワックスが20〜60wt%、粘着付与剤が1〜40wt%の組成を有するものとすることで、熱封緘層の高軟化点化をはかりながら溶融粘度を低く抑えて、160℃における溶融粘度を5000mPa・s以下に設定することが可能となり、良好なヒートシール性、密封性、開封時のための適当な易剥離性と内容物付着防止効果の熱安定性の向上を達成できる。
前記[10]項に記載のような平均粒径を有する疎水性無機微粒子を用いることにより、市場から入手しやすい比較的安価な材料を用いて、前記のような内容物付着防止効果を一層確実に実現することができる。
前記[11]項及び[12]項に記載の配合比率及び平均粒径のシリカ粒子の選択により、粒子被覆層の表面の静摩擦係数を所定の低い値に制御することを可能にしながら、前記[6]項の効果を奏する蓋材を得ることができる。
図1は本発明による内容物付着防止蓋材の積層構成の一例の概要を示す断面図である。 図2は、熱封緘層の外面に微小突起を形成するグラビアコート方式による熱封緘層の塗工形成工程を示す模式断面図である。 図3は、熱封緘層の外面に形成する微小突起の代表的な形態の一例を示す断面図である。 図4は本発明による付着防止用の粒子被覆層の構成を模式的に示す模式断面図であり、図1に対し上下を反転して示している。
図1は、本発明に係る内容物付着防止蓋材の積層構成の一例を示す。該蓋材は、基材フィルム層(2)と金属箔層(3)との積層からなる基材層(1)と、該基材層(1)の金属箔(3)側の外面、即ち施蓋使用時に容器本体の内部に向く側の面に中間樹脂層(4)を介して熱封緘層(5)が設けられている。上記の積層構成は従来の蓋材のそれと同様であり、基材層(1)と熱封緘層(5)とを含む積層体をここでは「蓋材本体」と呼称することとする。
本発明に係る内容物付着防止蓋材は、上記蓋材本体の熱封緘層(5)の外面に、更に付加的に疎水性無機微粒子を主成分として含む付着防止用の粒子被覆層(6)を有するものである。
基材フィルム層(2)は、包装容器の表側に配置されるもので、その材料としては、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、セルロースアセテート、セロハンなどの単層または複合フィルム、あるいはこれらのフィルムを紙などにラミネートしたものなどを例示することができる。打抜き加工用の蓋材の場合、基材フィルム層(2)の裏面には、容器の開口部形状に対応した単位蓋片の表示印刷(7)が所定ピッチで縦横規則的配列に施され意匠性が付与されたものとなされる。
金属箔層(3)は、ガスバリヤ性、遮光性などを付与するものであり、多くはアルミニウム箔が用いられる。特にヨーグルトの容器用の蓋材にあっては、遮光性、軽量性を満足するものとして厚さ5〜50μm程度のアルミニウム箔が好適に用いられる。また、基材フィルム層(2)との積層接着には一般的な接着剤が用いられる。
なお、基材層(1)として、金属箔層(3)を使用せずに、シリカやアルミナ等の金属を基材フィルム層(2)に蒸着した金属蒸着フィルムを使用することも可能である。
中間樹脂層(4)は、基材層(1)と熱封緘層(5)との間に介在して、蓋材に所定の剛性やヒートシール時のクッション性を付与するものであり、適宜必要に応じて設けられる。一般的には厚さ5〜40μmのポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のオレフィン樹脂、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル等が用いられる。
熱封緘層(5)は、中間層樹脂層(4)および容器側との接着性が良好なものでなくてはならない。本発明において該熱封緘層は、軟化点90℃以上、160℃における溶融粘度が5000mPa・s以下である樹脂組成物からなる。この樹脂組成物の具体的な組成は特に限定されるものではないが、好ましくは、エチレン−不飽和エステル共重合体、ワックス、および粘着付与剤を必須成分として含有し、必要に応じて更にブロッキング防止剤や酸化防止剤等の添加剤を任意成分として含む樹脂組成物からなる。
かかる成分による樹脂組成物を熱封緘層として用いること自体は、従来公知であるが、従来一般に汎用されている当該樹脂組成物は、比較的低軟化点のものが用いられていた。例えば、最も一般的には軟化点65℃〜75℃程度の樹脂組成物が用いられていた。また、高軟化点のものは高粘度であった。
このような技術的背景下において、本発明では、上記樹脂組成物の軟化点として、特に90℃以上、好ましくは100℃以上、更に好ましくは110℃以上のものを用い、160℃での溶融粘度が5000mPa・s以下、好ましくは2000〜4000mPa・s、さらに好ましくは2000〜3500mPa・sのものを用いることが推奨される。このような比較的高軟化点でかつ一定の溶融粘度を有する樹脂組成物を熱封緘層に用いることにより、熱封緘層の外面側に付加形成される疎水性無機微粒子による付着防止用粒子被覆層(6)の外面の摩擦力を低減し、その静摩擦係数μsを0.65以下の値により確実に制御することが可能になる。その理由、機序は必ずしも明確ではないが、実験結果から得られた知見によれば、熱封緘層(5)に低軟化点の樹脂組成物を用いる場合には、粒子被覆層(6)側の表面の静摩擦係数が高くなり、蓋材を打抜き工程に供する場合にピッチずれを起し易い。
また、上記のような高軟化点、低溶融粘度の樹脂組成物の使用は、付着防止用粒子被覆層(6)の撥水性、ひいては付着防止性の熱安定性を顕著に向上しうる。しかしながら、あまりに軟化点の高すぎる樹脂組成物の使用は、熱封緘層の低温ヒートシール性、夾雑シール性を阻害するおそれがあるため、軟化点140℃以下のものを使用すべきである。好ましくは融点130℃以下、更に好ましくは120℃以下のものを用いることが望ましい。
熱封緘層に用いる樹脂組成物の上記のような軟化点の設定及び溶融粘度の設定は、当該組成物を生成する各成分の後述するような融点または軟化点の選択と組合せによることのほか、各成分の配合組成比の調整により容易に行うことができる。特に、樹脂組成物の高軟化点化をはかりながら、溶融粘度を可及的低く抑えるという、技術常識的にはジレンマを伴う要請に対して、ワックス及び粘着付与剤に比較的高い融点または軟化点を有するものを選択使用しつつ、それらの配合量を接着成分であるオレフィン系等の樹脂成分の配合量との関係で、一般的な配合比率より多目に設定することで容易に対応することができる。
熱封緘層に用いる前記の好ましい樹脂組成物において、その必須成分であるエチレン−不飽和エステル共重合体は、その不飽和エステル単量体として、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル等の不飽和カルボン酸エステル、酢酸ビニルのようなビニルエステル等を用いることができるが、なかでも特に酢酸ビニル、メタクリル酸メチルの採用が好適である。不飽和エステル含有量や分子量の異なるものを適宜選択して、2種類以上組合わせて利用できる。

また、上記エチレン−不飽和エステル共重合体は、融点が70〜100℃の範囲のものを用いることが好ましい。これが70℃未満のものでは、熱封緘層のシール温度が低すぎるために付着防止層の付着防止効果の熱安定性が低下するおそれがある。逆に、100℃を超えるものでは、低温ヒートシール性が阻害され、シール速度が遅くなって実際の内容物充填シール時の作業能率が低下する。最も好ましくは、融点75〜95℃の範囲である。
また、前記樹脂組成物中の必須成分であるワックスとしては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、モンタンワックス、フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、カルナバワックス、変性ワックス等が挙げられるが、さらに好ましくはポリエチレンワックスである。
さらに、粘着付与剤としては、ロジン、ロジン誘導体(水素化ロジン、付近化ロジン、ロジンエステル)、脂環族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、共重合系石油樹脂あるいはそれらの水添付加されたもの、テルペン樹脂(α−ピネン、β−ピネン)等が挙げられるが、好ましくは芳香族系石油樹脂の水添付加されたものを用いるのが最適である。
ワックスおよび粘着付与剤の軟化点または融点は80℃以上、好ましくは90℃以上、さらに好ましくは100℃以上のものを用いることが望ましい。
また、樹脂組成物の必須成分の配合組成比は、該樹脂組成物に求める軟化点、溶融粘度を考慮して設定する必要があるが、好ましくは、エチレン−不飽和エステル共重合体を20〜80wt%、好ましくは30〜60wt%、ワックスを20〜60wt%、好ましくは30〜50wt%、粘着付与剤を1〜40wt%、好ましくは5〜30wt%に設定することで、蓋材表面の静摩擦係数の低減化を可能にしながら、蓋材の良好な低温ヒートシール性、夾雑シール性、密封性、開封時のための適当な易剥離性と内容物付着防止効果の熱安定性の向上を達成できる。即ち、エチレン−不飽和エステル共重合体の配合量が20wt%未満の樹脂組成物では、十分なシール強度が得られない。逆に80wt%を超えると、シール強度が大きくなりすぎてシール蓋の易開封性が損なわれる。またワックスの配合量が20wt%未満では、樹脂組成物のコーティング適性(加工適性)が損なわれると共に、易開封性が損なわれる。一方、60wt%を超えると、十分なシール強度が得られない。また、粘着付与剤は、その配合量が1wt%未満では十分なシール強度を得ることが困難であり、逆に40wt%を超えて過多に含有すると、付着防止層の付着防止効果が低下するおそれがある。
これらのワックス、粘着付与剤、エチレン−不飽和エステル共重合体はそれぞれ複数の種類を適宜選択し組合わせて使用しても良い。
熱封緘層の厚みは特に限定されるものではないが、コスト、密封性、生産性等の点から、厚さ3〜100μm程度とするのが一般的であり、好適には、10〜50μmの範囲とするのが良い。
上記の熱封緘層(5)上に形成される付着防止用の粒子被覆層(6)は、疎水性無機微粒子を主成分として含むものであり、疎水性のシリカ、アルミナ、酸化カルシウムなどの使用が可能であるが、本発明においては特に疎水性湿式シリカ粒子(A)、疎水性乾式シリカ粒子(B)、又は疎水性湿式シリカ粒子(A)と疎水性乾式シリカ粒子(B)との混合組成物からなるものとすることが望ましい。
上記混合組成物における疎水性湿式シリカ粒子(A)と疎水性乾式シリカ粒子(B)の配合割合は、粒子被覆層(6)表面に良好な撥水性、非付着性を確保するためには、湿式シリカ粒子の方を相対的に多く含むものとなされる。即ち、湿式シリカ粒子(A)の配合量を50重量%以上99重量%未満とし、乾式シリカ粒子の配合量を残りの1重量%以上50重量%未満に設定される。特に好ましくは、前者の疎水性湿式シリカ粒子の配合割合を60重量%以上〜80重量%未満とし、残りの20重量%以上40重量%未満程度を後者の乾式シリカ粒子によるものとすることが望ましい。疎水性湿式シリカ粒子(A)の配合量が50重量%未満では、付着防止性能およびその熱安定性が低下する。一方、99重量%を超えると、相対的に乾式シリカ粒子の配合量が過少なものとなるため、それによる粒子被覆層(6)の密着性の向上効果を得ることができない。
上記の疎水性湿式シリカ微粒子(A)は、湿式法によって製造される合成非晶質シリカである湿式シリカ粒子の表面の水酸基に有機ケイ素化合物を化学的に反応させて疎水性を付与した粒子を好適に使用できる。
湿式シリカは、乾式シリカと比較して、表面シラノール基が多く、ひいては表面をシラン類やシリコーン類で疎水化処理した後の疎水性粒子においても、乾式シリカに較べて優れた撥水性、疎水性を示す。また、前述のように細孔のない一次粒子の凝集体である一次凝集粒子を最小単位とする乾式シリカ粒子に較べ、湿式シリカ粒子は、粒子径が大きいだけでなく、粒子径に対しての比表面積が大きく、細孔容積、吸油量も大きい。これらのこともまた、付着防止層の性能の向上に大きく寄与するものと考えられる。
疎水性湿式シリカ粒子の粒径は、製造段階で種々の大きさのものを製造することが可能であるが、本発明の適用においては、平均粒径が0.5〜7.0μmの範囲のものを用いるべきである。
平均粒径が0.5μm未満の微粒子を用いるときは、概して、ヒートシール性に悪影響を及ぼさないような少ない塗布量、付着量の範囲において良好な内容物付着防止効果を得ることができない。逆に7.0μmを超えるような粗大な粒子を用いるときは、熱封緘層(5)との密着性が悪いものとなるのみならず、ヒートシール性を阻害する。好ましくは、平均粒径が1.0〜5.0μm、更に好ましくは2.0〜5.0μmの範囲のものを用いるのが良い。
一方、疎水性乾式シリカ粒子(B)は、火炎法等により極微細な一次粒子の凝集体として製造される粒子に疎水性を付与したものであり、その一次粒子の平均粒径が3〜50nmのものを好適に使用しうる。平均粒径が3nm未満の超微粒子は、市場からの入手が困難であり、またコスト面からも不利である。他方、一次粒子の平均粒径が50nmを超える粗い乾式シリカでは、粒子被覆層(6)の密着性の向上効果に乏しい。特に好ましくは一次粒子の平均粒径が5〜30nmの乾式シリカ粒子である。
粒子被覆層(6)の形成は、液体分散媒中に疎水性湿式シリカ粒子(A)または疎水性乾式シリカ粒子(B)、あるいはそれらの混合組成物の所定量を均一に分散させて分散液を調製し、これを蓋材本体の熱封緘層(5)の外面に塗布し、乾燥させることによって好適に行うことができる。
分散液の調製は、上記シリカ粒子またはその混合組成物を水または有機液体分散媒を用いて分散させて所定濃度のコロイド溶液とするものであるが、分散媒には特に極性基を有する有機分散媒を用いるのが好ましい。なかでもアルコール類の使用が好適であり、特にコスト、安全性、撥水性の発現効果等の面からメタノール又はエタノールの使用が好適である。
分散液の塗工は、公知の任意の方法を採用しうる。例えば、グラビアコート法、吹き付け、バーコート法等を任意に採用しうる。
分散液の塗布量は、粒子被覆層(6)の所要の厚みに応じて設定すればよいが、乾燥後重量で0.3〜3.0g/m程度が好ましく、0.5〜1.2g/mがより好ましい。
塗布後の乾燥はもとより自然乾燥させても良いが、生産性、熱封緘層との密着性を高めるためには加熱乾燥することが望ましい。その場合の乾燥条件としては、温度80〜140℃、時間5〜30秒の範囲に設定することが望ましい。
上記のような塗工、即ち塗布および乾燥工程によって形成された粒子被覆層(6)は、それ自体で既に優れた表面撥水性を有し、所期される付着防止性能を有することはもちろん、熱安定性および密着性にも優れたものとなる。
即ち、疎水性湿式シリカ粒子(A)、疎水性乾式シリカ粒子(B)の単独使用でもよいが、好ましくは、主成分として疎水性の湿式シリカ粒子(A)を多く含む混合物を使用することにより、該疎水性湿式シリカ粒子のもつ固有の良好な撥水性に加えて、図4に見られるように、粒径の大きな該湿式シリカ粒子(A)が粒子被覆層(6)の表面に突出して形成される粗い凹凸構造と、多孔質の湿式シリカ粒子自体のもつその表面の微細な凹凸構造によって優れた非付着性、付着防止効果が確保される。
そしてまた、この内容物付着防止性能は、熱安定性に優れ、高温にさらされることがあっても高い付着防止性能を良好に維持しうる。この理由は、次のように考えられる。即ち、湿式シリカ粒子は、粒径がミクロンサイズで大きく、なかでも本発明では平均粒径が0.5〜7.0μmのものが用いられることにより、熱封緘層が溶融しても、疎水性湿式シリカ粒子が接着剤層内に沈み込みにくい。加えて、湿式法シリカ粒子は乾式シリカの場合と違って元来それ自体が多孔質であり、比表面積が高く、細孔容積や吸油量が大きい。このため、熱封緘層が溶融したときにそれに含まれるワックスやロジンのような低融点、低分子量成分を湿式シリカ粒子自体が急速に吸着し、粒子間の隙間が溶融ホットメルト接着剤で埋まってしまうのを防止する。従って、上記粒子間の隙間が維持され、ひいては該粒子の疎水性表面の露出面積の極端な減少を防いで良好な内容物付着防止効果を維持することによるものと考えられる。
一方、上記粒子被覆層(6)の好ましい形成態様として、上述のように所定量の疎水性乾式シリカ粒子(B)が含まれたものとなされる。乾式シリカ粒子(B)は、製造段階で一次粒子がランダムに融着結合した一次凝集体粒子においてもその粒径はせいぜい300nm程度以下の微小な粒子である。従って、粒子の分散液を塗布したのち、乾燥する工程で分散媒が揮散除去されるにしたがって、粒径の小さい乾式シリカ粒子(B)はそれ自体のもつ強い凝集力とも相俟って熱封緘層(5)の表面上に多孔質の凝集層を形成する。その結果、該凝集層は、熱封緘層(5)に対して多くの接点で結合し、良好な密着力を示す一方、粒径の比較的大きな疎水性湿式シリカ粒子(A)の特に熱封緘層(5)側に近い部分が上記凝集層中に一部埋まり込んだ状態となる。このため、湿式シリカ粒子(A)はその一部をとり囲まれる乾式シリカ粒子(B)によって拘束固定され、結果的に湿式および乾式シリカ粒子(A)(B)の混合組成物からなる粒子付着層(6)のそれ自体、熱封緘層(5)に対して良好な密着力をもつものとなる。
更に、本発明の最良の実施形態においては、上記による粒子被覆層(6)の形成後、所定の加熱処理を施すことにより、図4の模式断面図に示すように、該粒子被覆層(6)の前記熱封緘層(5)側の一部に、少なくとも前記湿式および乾式シリカ粒子(A)(B)の粒子相互間の間隙に前記熱封緘層(5)の溶融成分が入り込んだ含浸密着強化層(6a)が形成され、同粒子被覆層の最外表面側に、少なくとも前記湿式シリカ粒子の表面が露出した付着防止層(6a)が残存形成されたものとなされる。
粒子被覆層(6)の塗工形成後、積層体を熱封緘層(5)の溶融開始温度以上の温度で加熱すると、熱封緘層(5)中の特に低融点成分、低粘度成分、低分子量成分が流動化し、微細な多孔質構造をなす乾式シリカ粒子(B)の凝集層の空隙内および湿式シリカ粒子(A)との間の空隙内に入り込む一方、これに伴って多孔質の湿式シリカ粒子(A)のそれ自体の内部にも入り込んで固化し、含浸密着強化層(6a)を形成する。従って、粒子被覆層(6)は、上記含浸密着強化層(6a)によって熱封緘層(5)と一体的に結合され、その密着力を強固なものにする。
ただ、上記の加熱処理による密着強化層(6a)の形成は、粒子被覆層(6)の最外表面部に、乾式シリカ粒子(B)または少なくとも疎水性湿式シリカ粒子(A)の表面が上記溶融成分によって覆われることなく露出した付着防止層(6b)の部分を残存形成せしめうる条件下で行われなければならない。
しかも、この付着防止層(6b)を形成する残存粒子量は、0.1〜1.2g/mの範囲となるように、熱封緘層(5)の成分組成や粒子被覆層(6)の塗布量等との相関を考慮して熱処理条件が決められるべきである。付着防止層(6b)の残存粒子量が0.1g/m未満では、所期する良好な付着防止性能を発現させることができない。逆に1.2g/mを超えると、粒子被覆層(6)の密着性が悪くなり、シリカ粒子の脱落、剥離のおそれが増大する。好ましい残存粒子量の範囲は、概ね0.3〜1.0g/mである。
ここに、付着防止層(6b)を形成する上記の残存粒子量の測定は、所定面積に切り出した試料片の粒子被覆層(6)側の表面を、アルコールをしみ込ませた脱脂綿などで拭取り、拭取り前後の試料片の重量差から求めることができる。
上記加熱処理は、熱封緘層(5)に用いられている材料との関係を考慮して、少なくとも該熱封緘層(5)の溶融開始温度より高い温度、好ましくはそれより更に50℃以上高い温度で行うことが必要である。この加熱温度は、加熱時間とも相関するが、一般的に好ましい加熱処理条件は、温度85〜220℃、×時間3〜120秒であり、特に好ましくは温度100〜180℃、×時間10〜60秒である。
もっとも、粒子被覆層(6)の最外表面部分は、粒径の大きい隣接する湿式シリカ粒子(A)(A)間の間隔が大きいため、毛細管現象に似た浸透現象が生じにくく、ひいては付着防止層(6b)が形成され易い。このことは、加熱処理時の熱処理条件の緩和を可能にするので、当該加熱処理工程の管理を簡易化する。ひいてはまた、疎水性湿式シリカ粒子(A)と乾式シリカ粒子(B)の混合組成比率の変化によって、密着強化層(6a)と付着防止層(6b)のそれぞれの形成領域の範囲を容易に制御し調整することができる。
疎水性湿式シリカ粒子(A)と乾式シリカ粒子(B)の併用による粒子被覆層(6)に更に上記の通り熱封緘層成分が含浸した密着強化層(6a)部分を形成した蓋材にあっては、該層(6a)を形成しないものに較べて更に一段と優れた密着性の向上効果を享受しうる。
なお、含浸密着強化層(6a)の形成のために行う上記の加熱処理は、シリカ粒子の分散液の塗布、乾燥後に、独立した別工程として行うことにより、最も好ましい条件での工程管理を行い易いが、作業工程の簡素化をはかるために塗布後の乾燥工程と加熱処理工程を同時に、あるいはまた連続して行うものとしても良い。
ところで、本発明による蓋材は、容器にヒートシールする前に個々の単位蓋材に打抜き加工して使用される打抜きタイプの蓋材を主たる対象物とする。即ち、容器の開口部形状に対応する多数個の単位蓋材の表示印刷(7)が施された広幅の蓋材を原反ロールから繰出し、表示印刷列を打抜き機に合わせて1〜3列毎にスリットして帯状の打抜き用原反とし、次いでこれを打抜き機(プレス機)にかけて1個ずつの単位蓋片に打抜き加工したのち、充填シール機に移送し、内容物が充填された容器に一枚毎に供給されてヒートシールされるものである。
従って、上記の打抜き加工は、個々の単位蓋片に対応する表示印刷のピッチに合わせて実施される必要があり、そのためには原反蓋材の供給がスムーズに行われなければならない。原反の滑り性や繰出し性に問題があり、余計な張力等がかかると、印刷位置と打抜き位置とが合致しないピッチずれを生じ、不良蓋片を発生する。
そこで、本発明は、このような問題点に対処するための必須不可欠の特徴的構成事項として、上述した基材層(1)/熱封緘層(5)/疎水性無機微粒子による付着防止用粒子被覆層(6)の積層構成を有するヒートシール蓋材において、上記粒子被覆層(6)の外面の表面静摩擦係数μsを0.65以下、好ましくは0.60以下、更に好ましくは0.56以下の値に制御設定したものとなすことを規定する。
このような蓋材表面の摩擦力の制御は、粒子被覆層(6)の表面の撥水性ひいては付着防止性能を損なわない手段で行う必要がある。このような要請に対し、多くの実験結果から得た知見によれば、粒子被覆層(6)の下地面となる熱封緘層(5)の外面に、多数個の微小突起(8)(図1,2参照)を高密度分布に形成し、該面を実施上凹凸状の粗面に形成したものとすることが最も簡易かつ有効である。この微小突起(8)の具体的な形成手段ないし凹凸状の粗面化手段については、本発明において特に限定されるものではないが、熱封緘層(5)の樹脂組成物の塗布量の均一性を確保しながら、その表面に所定の微小突起(8)群を形成するための手法として、図2に模式図として示すように熱封緘層(5)の塗工形成に用いるグラビアロール(10)に高密度分布に対応形状の微小凹部(10a)を所定の規則的配列させたものを用い、熱封緘層(5)の形成と同時にその表面に上記微小凹部(10a)による多数個の微小突起(8)を形成せしめるものとするのが、設計的にもまた工程的にも有利である。
上記の微小突起(8)は、図3に示すように、高さ(H)において0.01〜0.5mm、分布密度において1cmあたり300〜800個の範囲に設定することが望ましい。この高さ(H)が0.01mm未満、あるいは分布密度が300個/cm未満であるときは、粒子被覆層(6)の表面静摩擦係数μsを0.65以下に制御することが困難になる。逆に、高さ(H)が0.5mmを超え、あるいは分布密度が800個/cmを超えるときは、グラビアロール(10)に目詰まりを生じ易く、均整な微小突起(8)の形成が困難になる。好ましい高さ(H)は、0.05〜0.3mmの範囲であり、同じく好ましい分布密度は400〜700個/cmの範囲である。
また、上記微小突起(8)の具体的形状は特に限定されるものではないが、底面の直径ないし相当直径(D)が0.3〜0.5mmの円錐台形状または4〜8角形の角錐台形状とするのが有利である。更にまた、微小突起(8)の上記分布密度を得るための好ましい配列ピッチ(P)は、概ね0.35〜0.56mmの範囲である。
熱封緘層(5)の外面に上記のような微小突起(8)を形成することにより、蓋材の粒子被覆層(6)側の表面の静摩擦係数μsを所期する0.65以下に下げることができるが、この突起形成に加えて、前述のように熱封緘層(5)を構成する樹脂組成物に高軟化点かつ低溶融粘度のものを使用することにより、より確実に上記静摩擦係数を0.65以下に制御することができる。
次に、本発明の効果を確認するために、その各種の実施例を比較例との対比において示す。
(蓋材本体の作製)
基材フィルムとして厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、その片面に厚さ30μmのアルミニウム箔をポリウレタン系ドライラミネート接着剤により貼合わせて基材層とした。
次に、上記基材層のアルミニウム箔側の表面にアンカーコート剤を塗布し、ポリエチレン樹脂を厚さ20μmとなるように押出しコートして中間樹脂層を形成し、更にその外側にグラビアコート法により表1に示すような組成のホットメルト樹脂組成物による塗布量18g/mの熱封緘層を形成した。これによって得られた基材層/中間樹脂層/熱封緘層の積層体をもって蓋材本体とした。
ここに、上記熱封緘層(5)としては、下記の材料による後記表1に示すような各種配合のホットメルト樹脂組成物を使用した。
ワックス(WX)
WX(I):融点115℃のポリエチレンワックス
WX(II):融点108℃のポリエチレンワックス
WX(III):融点94℃のマイクロワックス
WX(IV):融点75℃のパラフィンワックス
WX(V):融点67℃のパラフィンワックス
樹脂(EVA)
EVA(I):エチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含有量
26%)、融点76℃
EVA(II):エチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含有量20%)
融点82℃
粘着付与剤(TF)
TF(I)石油系水添樹脂 融点105℃
TF(II)石油系水添樹脂 融点115℃
TF(III)ロジン 軟化点68℃
(熱封緘層の外面の微小突起の形成)
グラビアコート法により上記熱封緘層を塗工形成するに際して、その塗工用のグラビアロールに表1に記載したような高さと分布密度の微小突起に対応するグラビア目を有するグラビアロールを使用し、これによって熱封緘層の塗工形成と同時にその表面に表1に示すような各種の微小突起を形成した。
(付着防止用粒子被覆層の形成)
付着防止用の粒子被覆層の材料として、下記の疎水性無機微粒子を用意した。
疎水性湿式シリカ粒子(A)
A(I):疎水性湿式シリカ 平均粒径 2.7μm
A(II):疎水性湿式シリカ 平均粒径 3.9μm
疎水性乾式シリカ(B)
B(I):疎水性乾式シリカ 一次粒子平均粒径 7nm、
BET法による比表面積 220m2/g
B(II):疎水性乾式シリカ 一次粒子平均粒径 12nm
BET法による比表面積 170m2/g
上記疎水性湿式シリカ粒子A(I)またはA(II)と、疎水性乾式シリカ粒子B(I)またはB(II)とを、表1に示す各種の配合比率のもとにエタノール中に均一に分散させて各種の分散液を作製した。
そして、これらの各種分散液を、蓋材本体(1)の前記熱封緘層(5)の外面にグラビアコート法により塗布し、かつ強制乾燥して付着防止用の粒子被覆層を形成した。なお、塗布量は、いずれも乾燥後重量において0.6g/m2に設定した。また、強制乾燥は、いずれも温度100℃×時間15秒の乾燥条件で行った。
(熱処理)
上記により得られた試料のうちNo.10の試料を除く他の試料については、粒子被覆層(6)に含浸密着強化層(6a)を形成するべく、表1に示す加熱条件で熱処理を施した。
(作製試料の種類)
上記により得た表1に示す各種蓋材の試料No.1〜19のうち、試料No.1〜4は、粒子被覆層(6)の形成のための粒子として、「疎水性湿式シリカ粒子A(I)」のみで構成したものであり、試料No.9、10は、「疎水性乾式シリカ粒子B(I)」のみで構成したものである。試料No.5〜8、11〜16は、粒子被覆層(6)の形成のための粒子を湿式シリカ粒子と乾式シリカ粒子の混合組成物としたもので、試料No.5〜7、12〜16は、「疎水性湿式シリカ粒子A(I)」と「疎水性乾式シリカ粒子B(I)」で構成したものであり、試料No.8は、「疎水性乾式シリカ粒子B(II)」、試料No.11は、「疎水性湿式シリカ粒子A(II)」を使用した。試料No.10は、熱処理による含浸密着強化層(6a)を形成しなかった場合の密着性等の性能の変化を調べたものである。更にまた、試料No.13〜19は、比較例として、静摩擦係数が不適正なものである場合の影響を調べたものである。
なお、試料No.17は、高さ0.12mm、900個/cm2の突起の形成を試みたが、ホットメルトがグラビアロールから基材へ十分に転写できず、グラビアロールの目詰まりが発生し、結果として期待した突起が形成できなかったため、静摩擦係数を測定しなかった。
(評価試験)
(1)打抜き加工性
上記により得られた幅645mmで、容器口径71mm用の単位蓋片に対応する表示印刷が横8列に設けられた各種蓋材を供試材として、ロール巻きされた当該蓋材を先ず幅155mmの帯状原反にスリットしたのち、これを打抜き加工機にかけて単位蓋片への打抜き加工を行い、打抜き加工時の打抜き位置と上記表示印刷との位置ずれの有無を調べた。
評価は、それぞれ供試材について蓋材原反の500mを打抜き加工し、得られた単位蓋片の抜き取り検査により、500枚の蓋片について打抜き加工ずれが1枚もなかった場合を合格品(◎印)とし、1枚以上にずれがあるものが含まれていた場合を不合格品(×印)として判定した。
(2)SEM観察
試料No.1〜19の各蓋材について、粒子被覆層の断面構造をFE−SEM画像によって観察したところ、試料No.1〜9、11〜13、17〜19の蓋材については、粒子被覆層(6)の熱封緘層(5)側に、所定厚み範囲に亘って、シリカ粒子間の間隙ないし隙間に熱封緘層成分が入り込んで固化したものと認められる層、即ち含浸密着強化層(6a)が形成され、その上にシリカ粒子が露出した厚さの薄い付着防止層(6b)部分が形成されていることを確認し得た。熱処理を行わない試料No.10の蓋材においては、上記のような明確な含浸密着強化層の形成は認められないものの、微細な乾式シリカ粒子が熱封緘層(6)に密着していることが観察された。
一方、封緘層(5)にワックスや粘着付与剤の融点、軟化点が好ましくない試料No.14〜16の蓋材については、付着防止層(6b)部分の残存形成が不十分であることが確認された。
(3)付着防止性能
(3)−1 製造後の蓋材の付着防止性能
各試料No.1〜19の蓋材の裏面、即ち付着防止層の外面上に、アロエヨーグルト(森永乳業株式会社製 商標「森永アロエヨーグルト」)を約0.5mlの液滴として滴下し、試料をゆっくりと傾けたときに上記液滴が「転がりはじめたときの傾斜角度」を測定して、次の基準で判定評価した。
◎・・・15度以下
○・・・16度以上30度以下
×・・・31度以上
(3)−2 耐熱試験後の付着防止性能
各試料No.1〜19の各蓋材について、第1の耐熱試験は「温度100℃×時間30秒」の加熱条件で、第2の耐熱試験は「温度100℃×時間10分」の加熱条件で、第3の耐熱試験は「温度100℃×時間15分」の加熱条件で、それぞれ各試料を加熱雰囲気中に保管後、常温まで冷却した各試料について前記(1)と同様の付着防止性能評価試験を行った。
(3)−3 容器シール後の付着防止性能
試料No.1〜19の各蓋材から得た蓋片を、紙/ポリエチレン袋容器(フランジ幅 3mm、外径71mm)との組み合わせで、該容器に85gのアロエヨーグルト(森永乳業株式会社製 商標「森永アロエヨーグルト」)を入れた後、150℃×882N×1.0秒のシール条件でフランジ面上にヒートシールした。一方、上記同様のシール条件では封緘強度が弱かった試料No.13については、160℃×882N×1.0秒のシール条件で蓋片をフランジ面上にヒートシールした。
次いでこれらの各試料を逆さにして12時間保存した後、開封して蓋片の裏面のヨーグルトの付着状態を目視観察し、下記の基準で評価した。
◎・・・ヨーグルトの付着なし
○・・・フランジ部周辺領域部分にわずかな付着が見られる
×・・・フランジ部周辺領域部分に付着がみられ。
(4)シール性
(4)−1 封緘強度
試料No.1〜19の各蓋材から得た蓋片を、150℃×882N×1.0秒のシール条件で容器本体(紙/ポリエチレン製容器)のフランジ面上にヒートシールした。
そして、「封緘強度」は、乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(昭和54年4月16日厚生省令第17号)の封緘強度試験法に準じて、封緘強度が13.3kPa以上であるものを合格(◎印)、13.3kPa未満のものを不合格(×印)として判定した。
(4)−2 開封強度
次に、「開封強度」は、容器にヒートシールした上記の蓋片を仰角45°、100mm/分の速度で引っ張り、開封時の最大荷重を開封強度(N)とした。そして最適な開封強度の範囲を8〜15Nとし、この範囲内のものを合格(◎印)、範囲外のものを不合格(×印)として評価した。
(4)−3 ヒートシール強度
試料No.1〜19の蓋材を15mm幅に切り出し、150℃×0.2MPa×1.0秒のシール条件で容器(紙/ポリエチレン製容器)から切り出した15mm幅の短冊にヒートシールした。次いで、この蓋材を180°の方向に100mm/分の速度で引っ張り、剥離時の最大荷重をヒートシール強度とした。
そして、付着防止層を設けていない蓋材本体のままの蓋材におけるヒートシール強度(蓋材の耐剥離強度・密封性)を基準値として、ヒートシール強度の低下率または増加率を下記の基準で判定評価した。
◎・・・強度低下又は増加10%未満
○・・・強度低下又は増加10%〜20%未満
×・・・強度低下又は増加20%以上
(5)密着性
試料No.1〜19の各蓋材の付着防止層の面に、黒い布を巻き付けた重り(500g)を垂直に載せ、ゆっくりと長さ200mm擦り、布の表面に付着した微粒子の有無を目視で検査した。
そして、黒い布へのシリカ粒子の転移付着量(剥離量)により下記の評価基準で評価した。
◎・・・ほとんど付着なし
○・・・許容範囲と認められる僅かな付着あり
×・・・明らかに多くの付着あり
上記(2)〜(5)の各評価試験の結果を、表2に示す。
Figure 0005937371
Figure 0005937371
表2の「付着防止性能」の試験結果に示すように、本発明による内容物付着防止蓋材においては、打抜き加工時のピッチずれの発生がなく、容器にヒートシールする前に打ち抜いて使用される打抜き加工タイプの蓋材として好適性を有するものであることを確認し得た。また、付着防止性能試験において、試料を僅かに傾けるだけでヨーグルト液滴が転がり移動を始める。このことは、「容器シール後の付着防止性能試験」で確認されているように、ヨーグルト、プリン、ゼリー等の粘稠な液体成分を含むような内容物を充填した容器に蓋材を熱封緘したのちにおいても該内容物に対し、蓋材裏面への該内容物の付着防止効果に優れたものであることを示す。しかも「シール性」試験の結果に示すように、付着防止層の存在によって、ヒートシール性(シール強度)が大きく損なわれることなく、適度な密封性を維持しつつ、上記付着防止性能を付与しうる。加えて、「密着性」試験の結果に見られるように、付着防止用粒子被覆層の密着性が良好で、不本意な分離脱落、部分剥離等のおそれがなく、長期に亘って内容物付着防止性能を安定に維持しうる。
1・・・基材
2・・・基材フィルム層
3・・・金属箔層
4・・・中間樹脂層
5・・・熱封緘層
6・・・付着防止用粒子被覆層
6a・・密着強化層
6b・・付着防止層
A・・・疎水性湿式シリカ粒子
B・・・疎水性乾式シリカ粒子

Claims (9)

  1. 少なくとも基材層と熱封緘層とを有し、該熱封緘層の外面に疎水性無機微粒子を主成分として含む内容物付着防止用の粒子被覆層が設けられた蓋材において、
    前記熱封緘層が、軟化点90℃以上、160℃における溶融粘度5000mPa・s以下の樹脂組成物からなり、
    かつ、該熱封緘層の外面に、高さ0.01〜0.5mmの微小突起が300〜800個/cm の分布密度に形成され、
    この突起を有する前記外面に前記粒子被覆層が設けられることにより、該粒子被覆層側の表面の静摩擦係数が0.65以下に設定されてなることを特徴とする内容物付着防止蓋材。
  2. 前記疎水性無機微粒子が疎水性湿式シリカ粒子からなり、
    前記粒子被覆層の前記熱封緘層側の一部に、疎水性湿式シリカ粒子の粒子間間隙に前記熱封緘層の溶融成分が入り込んだ含浸密着強化層が形成され、同粒子被覆層の最外表面側に、前記疎水性湿式シリカ粒子の表面が露出した付着防止層が残存形成されてなることを特徴とする請求項1に記載の内容物付着防止蓋材。
  3. 前記疎水性無機微粒子が、疎水性湿式シリカ粒子と疎水性乾式シリカ粒子との混合組成物からなり、
    前記粒子被覆層の前記熱封緘層側の一部に、前記湿式および乾式シリカ粒子の粒子間間隙に前記熱封緘層の溶融成分が入り込んだ含浸密着強化層が形成され、同粒子被覆層の最外表面側に、少なくとも前記湿式シリカ粒子の表面が露出した付着防止層が残存形成されてなることを特徴とする請求項1に記載の内容物付着防止蓋材。
  4. 前記熱封緘層が、エチレン−不飽和エステル共重合体、ワックス、および粘着付与剤を必須成分として含む樹脂組成物からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の内容物付着防止蓋材。
  5. 前記樹脂組成物のワックスおよび粘着付与剤の軟化点または融点が80℃以上であることを特徴とする請求項4に記載の内容物付着防止蓋材。
  6. 前記樹脂組成物は、前記エチレン−不飽和エステル共重合体が20〜80wt%、ワックスが20〜60wt%、粘着付与剤が1〜40wt%の組成を有することを特徴とする請求項4または5に記載の内容物付着防止蓋材。
  7. 前記疎水性無機微粒子は、平均粒径1nm〜5,000nmである請求項1〜6のいずれか1項に記載の内容物付着防止蓋材。
  8. 前記シリカ粒子の混合組成物は、疎水性湿式シリカ粒子を50重量%以上99重量%未満含み、残りが疎水性乾式シリカ粒子からなる請求項3に記載の内容物付着防止蓋材。
  9. 前記湿式シリカ粒子は、平均粒径が0.5〜7.0μmであり、乾式シリカ粒子はその一次粒子の平均粒径が3〜50nmである請求項3または8に記載の内容物付着防止蓋材。
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