JP5826661B2 - 静電塗装機用の回転霧化頭 - Google Patents

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Description

本発明は静電塗装機に関し、より詳しくは、静電塗装機に組み付けられる回転霧化頭に関する。
静電塗装機が普及した今日、例えば自動車ボディの塗装に回転霧化頭を備えた静電塗装機が多用され、この種の塗装機は回転霧化式の塗装機と呼ばれている。特許文献1〜8に見られるように、回転霧化頭は、霧化ヘッド本体と、この霧化ヘッド本体の中心部分に配設される機構部品とで構成される組立体である。塗料はフィードチューブを通じて回転霧化頭に供給され、高速回転する回転霧化頭によって塗料が微粒化される。このことから、回転霧化頭には高精度の回転バランスが要求される。
回転霧化頭の内部洗浄のために回転霧化頭の分解・再組立を容易化する技術が開発されている。特許文献1は霧化ヘッド本体の後方から機構部品をアクセスさせて、この機構部品を霧化ヘッド本体に装着する形式の回転霧化頭を開示している。この特許文献1は、霧化ヘッド本体に塗料吐出口が形成され、そして、回転霧化頭の塗料室つまりフィードチューブから供給される塗料を受け入れる部屋を霧化ヘッド本体と協働して形成する機構部品を霧化ヘッド本体の後方から装着することを提案している。
特許文献2以降の文献は、ハブ部材と呼ばれている機構部品を霧化ヘッド本体の前方からアクセスさせることによりハブ部材を霧化ヘッド本体に装着する形式の回転霧化頭を開示している。特許文献2は、霧化ヘッド本体の中央凹所に弾性リングを介してハブ部材を固定することを提案している。具体的には、特許文献2に開示の回転霧化頭は、霧化ヘッド本体の中央凹所の周囲壁面に円周溝(第1の円周溝)を有し、また、これと相補的に、ハブ部材の周面にも円周溝(第2の円周溝)を有し、そして、弾性リングをこれら第1、第2の円周溝に介在させることで、霧化ヘッド本体に対してハブ部材が脱着可能に固定される。
特許文献2の回転霧化頭によれば、霧化ヘッド本体から容易にハブ部材を取り外すことができ、また、洗浄後に容易にハブ部材を霧化ヘッド本体に組み付けることができる。
分解及び再組立が可能な回転霧化頭の他の先行例として特許文献3に開示の回転霧化頭を挙げることができる。この特許文献3に開示の回転霧化頭は、霧化ヘッド本体の中央凹所の周囲壁面における前方端部に段部が形成され、この段部に円板状のハブ部材を嵌合することを提案している。より具体的には、円板状のハブ部材はその形状や材料の特性に基づく弾性及び撓み性を有し、この特性を利用して霧化ヘッド本体の段部に嵌装される。そして、霧化ヘッド本体の段部には、その周面に抜け止めの円周凸条を形成する又は段部の周面を前方に向けて縮径するテーパー面で構成することにより、ハブ部材が霧化ヘッド本体の前方に抜け出すのを防止する策が施されている。また、特許文献3の回転霧化頭は、霧化ヘッド本体の中央凹所の底面にスプーンカット溝を有し、このスプーンカット溝に連なる壁面を前方に向かうに従って徐々に拡径した傾斜壁面で構成する技術を開示している。そして、上述した円板状のハブ部材には、その外周部分に複数の塗料吐出口が同心円上に形成されており、この塗料吐出口は、上述した傾斜壁面の接線方向に延びている。
特許文献4の発明は、円板状のハブ部材を受け入れる霧化ヘッド本体に永久磁石を設置することにより、円板状のハブ部材を霧化ヘッド本体に固定することを提案している。
特許文献5の発明は、円板状のハブ部材が数多くの脚を有し、この脚の自由端を霧化ヘッド本体の中央凹所の円周溝に係止することで霧化ヘッド本体に対してハブ部材を脱着可能に固定することを提案している。そして、その上で、特許文献5の発明は、円板状のハブ部材の外面と霧化ヘッド本体との間に隙間を形成し、この隙間を塗料通路として利用することを提案している。
特許文献2の回転霧化頭は、霧化ヘッド本体に対するハブ部材の固定に関し、専ら弾性リングの弾性力に基づく抵抗力に依存している。このことから、弾性リングの劣化に注意を払う必要がある。このことに加えて、ハブ部材の固定が弾性リングという弾性体に依存しているため、霧化ヘッド本体にハブ部材を装着するときに、ハブ部材が正規位置に位置決めされているか否かを確認するのが難しいという問題がある。また、回転霧化頭は高速回転することから、この高速回転によって弾性リングが変形してこの弾性リングによるシール性が低下するという問題を有している。
また、霧化ヘッド本体とハブ部材との間に弾性リングを介装するということは、換言すれば、霧化ヘッド本体とハブ部材との間のクリアランスが比較的大きく、このクリアランスから塗料が入り込むのを前提として、特許文献2が技術開示を行っていると言える。回転霧化頭は色替えのときに、回転霧化頭を分解することなく内部洗浄が実施されるが、この内部洗浄では、霧化ヘッド本体とハブ部材との間のクリアランスに入り込んだ塗料を取り除くのは難しいという問題を有している。このこともあって、特許文献2の発明は未だに実施されていない。
特許文献3は、霧化ヘッド本体の段部に円板状のハブ部材を嵌装すると共に霧化ヘッド本体の段部の周面に円周凸条を設ける又はこの段部の周面を前方に向かうに従って縮径させるテーパー面で構成することにより円板状のハブ部材が抜け出すのを防止することを提案しているが、この発明も未だに実施されていない。
特許文献4は、その実施例では、円板状のハブ部材と霧化ヘッド本体とを永久磁石の吸着力で固定することを提案しているため、円板状のハブ部材及び霧化ヘッド本体の材料が非磁性の材料(アルミニウム)に制限されるという欠点がある。
特許文献5は、霧化ヘッド本体の中央凹所の周囲壁面に形成した円周溝とハブ部材の脚との係合によって円板状のハブ部材を固定すると共に、円板状ハブ部材の外面と中央凹所の周囲壁面との間の隙間であって且つ隣接する脚の間を塗料吐出口としている。このことから、回転霧化頭に洗浄液を供給して回転霧化頭を洗浄しようとしても円周溝や脚に付着した塗料が洗浄されずに残ってしまうという問題がある。このこともあって、特許文献5には、ハブ部材を霧化ヘッド本体から取り外して分解掃除するやり方が詳しく説明されている。
JP特開2005−118710号公報 JP特開平9−234393号公報 JP特開2001−104841号公報 JP特開2009−119402号公報 JP特開2002−224593号公報 US 6,189,804 B1 US 6,360,962 B2 US 7,017,835 B2
本願発明の目的は、静電塗装機用の回転霧化頭を分解して洗浄できるだけでなく、回転霧化頭を分解することなく内部洗浄によって色替えが可能な回転霧化頭を提供することにある。
本願発明の更なる目的は、機構部品の位置決めを確かなものにしつつ内部洗浄の際の塗料残りの問題を低減することのできる回転霧化頭を提供することにある。
本発明の更なる目的は、被塗物の塗装面に気泡が混じるのを抑制することのできる静電塗装機用の回転霧化頭を提供することにある。
上記の技術的課題は、本発明によれば、
前方に向けて開放した中央凹所(6)を備えたベル型の霧化ヘッド本体(2)と、
塗料フィードチューブから供給される塗料を受け入れる塗料空間(S)を形成する合成樹脂製の機構部品(4)とを備え、
該機構部品(4)を前記霧化ヘッド本体の中央凹所(6)に脱着自在に嵌合することにより、これら機構部品(4)と霧化ヘッド本体(2)とが一体化される回転霧化頭(1)であって、
前記機構部品(4)が、周方向に連続する側壁(22)と、該側壁(22)の後端から後方に向けて延び且つ周方向に離間して配設された複数の脚(30)と、
該脚(30)の自由端に設けられ、前記霧化ヘッド本体の中央凹所(6)の周囲壁面(6a)に形成された円周溝(32)に係合する爪(30a)とを有し、
前記霧化ヘッド本体の中央凹所の周囲壁面(6a)が、前方に向かうに従って徐々に拡径する傾斜した面で構成され、
前記機構部品(4)の前記周方向に連続する側壁(22)の外面(22a)が前記中央凹所の周囲壁面(6a)と相補的な形状に形作られて、該機構部品(4)の側壁(22)の外面(22a)と前記中央凹所(6)の周囲壁面(6a)とが実質的に接しており、
前記霧化ヘッド本体(2)は、前記機構部品(4)の後面と対向し且つ該機構部品(4)の後面との間にシールされた隙間(46)を形成する底壁(8)を更に有し、
該底壁(8)に圧力抜き孔(18)が形成され
該圧力抜き孔(18)を通じて、前記シールされた隙間(46)が大気に開放していることを特徴とする回転霧化頭を提供することにより達成される。
機構部品(4)の外面(22a)がその前後方向の全域に亘って中央凹所(6)の周囲壁面(6a)に実質的に接していることから、塗料が機構部品(4)の外面(22a)に回り込み難い。また、機構部品(4)の外面(22a)及び中央凹所(6)の周囲壁面(6a)が前方に向けて徐々に拡径した形状を有しているため、遠心力により機構部品(4)と中央凹所(6)の周囲壁面(6a)との間に塗料が侵入するのを抑制することができる。したがって、機構部品(4)の外面(22a)と中央凹所(6)の周囲壁面(6a)との間に塗料が回り込むのを防止することができるため、特許文献2に開示の弾性リングを必要としない。
また、塗料フィードチューブから供給される塗料を受け入れる回転霧化頭(1)の塗料空間(S)は、機構部品(4)と霧化ヘッド本体(2)とで画成される。この機構部品(4)で囲まれた塗料空間(S)を囲む壁面を、連続した面一の滑らかな面で構成するのが容易である。これにより塗料空間(S)を囲む壁面に塗料が残留して固着してしまうのを防止しつつ塗料空間Sの全域を洗浄液で塗料残り無しに且つ効率良く洗浄することができる。
機構部品(4)の脚(30)の自由端つまり先端部に形成された爪(30a)を使って機構部品(4)を霧化ヘッド本体(2)に脱着可能に固定することに伴って発生する可能性のある、作業中に機構部品(4)が脱落してしまう虞に関して、前記霧化ヘッド本体(2)の底壁(8)に圧力抜き孔(18)を形成するのがよい。機構部品(4)と底壁(8)との間に塗料が侵入しても、この塗料を圧力抜き孔(18)で外部に放出することで、機構部品(4)の不用意な脱落を防止することができる。
本発明の他の目的、作用効果は以下の本発明の好ましい実施形態の詳細な説明から明らかになろう。
実施例の回転霧化頭の断面図である。 図1の回転霧化頭の要部の分解図である。 変形例の回転霧化頭を示す図であり、図1に対応する断面図である。 機構部品を後方から見た図である。 機構部品を側方から見た部分図である。
以下に、添付の図面に基づいて本発明の好ましい実施例を説明する。
図1は、回転霧化式の静電塗装機から取り外した回転霧化頭を示す。図示の回転霧化頭1は、例えば特許文献2(JP特開平9−234393号公報)と同様に、霧化ヘッド本体2と、この霧化ヘッド本体2の中心部分に配設される機構部品4との組立体であり、機構部品4は霧化ヘッド本体2に対して脱着可能である。
霧化ヘッド本体2の後端部には、例えば特許文献1、2と同様に、エアモータの回転軸(図示せず)が螺合する雌ネジ部2aが形成されている。そして、この雌ネジ部2aの中心軸線は回転霧化頭1の回転軸線Aと共通であり、回転霧化頭1は従来と同様にエアモータによって回転駆動される。
特許文献2に詳細に開示されているように、エアモータの回転軸は中空軸で構成され、この回転軸の中に塗料フィードチューブが挿入されている。塗料フィードチューブを通じて回転霧化頭1の中心部分に塗料が供給される。また、塗料フィードチューブの外面と回転軸の内面との間の空間は、洗浄液(典型的にはシンナー)の通路として利用され、この洗浄液通路を通じて供給される洗浄液によって回転霧化頭1の洗浄が行われる。塗料及び洗浄液の供給に関して特許文献3に詳しい説明があるので、この特許文献3をここに援用することにより、その説明を省略する。
図2は回転霧化頭1の分解図であり、回転霧化頭1の構成要素を説明するための図である。図2を参照して、回転霧化頭1の構成部品である霧化ヘッド本体2は、導電性材料、例えばアルミニウム合金、ステンレス合金、硬質な樹脂材料からなる成型品であり、従来と同様にベルの形状に成形されている。霧化ヘッド本体2に対して高電圧を印加することで塗料を帯電させることが可能である。
霧化ヘッド本体2の前面3は、その外周部分の延展面5と、中心部分の中央凹所6とで構成され、外周部分の延展面5によって塗料は薄く拡げられながら外周縁2bに誘導される。
中央凹所6は、前方に向けて開放した有底の略円筒形状を有し(図2)、この中央凹所6は、前方に向けて徐々に直径が拡大する周囲壁面6aによって規定されている。より詳しく説明すると、中央凹所6は、その断面形状において、回転霧化頭1の回転軸線Aと平行なラインLに関して中央凹所6の周囲壁面6aが角度θ、傾斜しており、中央凹所6は前方に向けて徐々に直径が拡大した筒状の形状を有している。
中央凹所6は底壁8を有し、この底壁8は、中央凹所6と前述した雌ネジ部2aとの間の仕切壁を構成している。底壁8の中心部分には第1の円形開口10が形成されている。この円形開口10は塗料フィードチューブ(図示せず)を受け入れるための貫通孔であり、回転霧化頭1(霧化ヘッド本体2)の回転軸線Aと同軸である。中央凹所6の底壁8は、前方に向けて突出した比較的短い円筒部分12を有し、この円筒部分12の内面によって上述した第1の円形開口10の一部が構成されている。円筒部分12の外面には、径方向内方に向けて窪んだ円周凹部14が形成され、この円周凹部14によって円筒部分12の外面に段部16が形成されている。
上記中央凹所6の底壁8は、また、その外周部分に圧力抜き孔18を有し、この圧力抜き孔18は、回転霧化頭1の回転軸線Aと平行に延びて雌ネジ部2aを介して大気に開放している。変形例を示す図3を参照して、圧力抜き孔18を回転霧化頭1の回転軸線Aに対して傾斜した通路で構成するのが好ましい。具体的には、中央凹所6の底壁8を前後に貫通する圧力抜き孔18を、中央凹所6とは反対側の底面70に向かうに従って徐々に径方向外方に傾斜した通路形状(図3)にするのが好ましい。この傾斜した構成を採用することにより、回転霧化頭1を高速で回転する際に、ポンピング効果により、中央凹所6の底壁8から、中央凹所6とは反対側の底面70に向けて噴射する力が発生することになる。この作用を利用して、回転霧化頭1を洗浄する際に、中央凹所6とは反対側の底面70側から洗浄剤が中央凹所6に侵入するのを防止することができる。
引き続き図2を参照して、機構部品4は、例えばPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂のような合成樹脂からなる成型品であり、比較的堅い部材である。
機構部品4は、正面視したときに円板状の前方壁20を有し、この前方壁20は従来のハブ部材の機能を具備した部位を構成している。機構部品4は、この前方壁20の外周部から後方に向けて延びる側壁22を更に有し、この側壁22は周方向に連続している。側壁22は、外面22aと内面22bとを有し、外面22aは、前述した中央凹所6の周囲壁面6aと実質的に相補的な形状を有し、前方に向かうに従って直径が拡大する基本形状を有している。好ましい形態として、図2から最もよく分かるように、機構部品4の外面22aは段付きの形状を有し、これにより外面22aは部分的に中央凹所6の周囲壁面6aの対応する部位の直径よりも大きな直径を有している。機構部品4の外面22aを段付き形状にすることで、合成樹脂からなる機構部品4の弾性変形によって外面22aを部分的に中央凹所6の周囲壁面6aに圧力下で密着させることができ、これにより部品4の外面22aと中央凹所6の周囲壁面6aとの間に塗装機1の前方から塗料が侵入するのを防止することができる。
図4は機構部品4を後方から見た図である。機構部品4は、その後端面の外周部分から後方に向けて延びる複数の脚30を有し、この複数の脚30は周方向に等間隔に配置されている。脚30はその後端つまり自由端に径方向外方に向けて突出した爪30aを有する。霧化ヘッド本体2の中央凹所6に機構部品4を装着するときに、脚30の弾性変形によって中央凹所6の前方から機構部品4を挿入することができる。そして、機構部品4が正規位置に位置すると、脚30の爪30aが、中央凹所6の周囲壁面の後端部に形成されている円周溝32(図2)に入り込んで円周溝32の側壁と係合する。これにより機構部品4が霧化ヘッド本体2の内部に脱着可能に固定される(図1)。
図4、図5を参照して、脚30の幅寸法W1は、隣接する2つの脚30、30の間の隙間の幅寸法W2よりも大きい(W1>W2)。このように幅寸法W1を相対的に大きな値に設定することで脚30の根元の剛性を高めることができ、脚30が根元で折れてしまうのを抑制することができる。
前述したように霧化ヘッド本体2の中央凹所6の底壁8の中心部分に第1の円形開口10が形成され、この円形開口10の前方部分は、中央凹所6の底壁8から前方に向けて突出した円筒部分12によって規定されている(図2)。この円筒部分12には、その外面に機構部品4が嵌合されている。すなわち、機構部品4の底部は、その中心部分に第2の円形開口34を有し、この第2の円形開口34に上述した円筒部分12が嵌合される。より詳しく説明すると、機構部品4は、上記第2の円形開口34を規定する内周面36を有し、この内周面36が前記円筒部分12に当接することにより、円筒部分12の前方端面12aと機構部品4の内面22bとが面一の状態になる。好ましくは、機構部品4の内周面36を、前方に向けて縮径する傾斜面で構成するのがよく、この傾斜した内周面36の前方端が前記円筒部分12に当接される。機構部品4の傾斜した内周面36の後端部分は前記円筒部分12から離間し、この円筒部分12の基端部と、機構部品4の内周面36の後端部分との間にシールリング40が配置されている(図2)。
最も好ましい態様として、円筒部分12の基端部分に前述した円周方向に連続して延びる凹部14を形成し、この凹部14にシールリング40を位置決めするのがよい。
引き続き図2を参照して、合成樹脂で構成された機構部品4の後端面、つまり霧化ヘッド本体2の中央凹所6の底壁8と対向する面には、機構部品4の傾斜した内周面36に隣接して、後方に向けて突出した円周リブ44が形成されている。より詳しくは、機構部品4の傾斜した内面32は、後方に向けて突出した円周リブ44に連続し、この円周リブ44は、弾性変形を伴って霧化ヘッド本体2の底壁8に圧接すると共に、この円周リブ44によって機構部品4の後端面(円周リブ44を除く)が霧化ヘッド本体2の底壁8から離間した状態に維持され、これにより機構部品4と底壁8との間に、円周リブ44によって液体の流入が禁止された隙間46(図1)が形成される。つまり円周リブ44は液止め機能を有している。
機構部品4は、前方壁20の外周部分に複数の塗料吐出口50を有し、この複数の塗料吐出口50は、同一円周上において等間隔に配列されている。また、前方壁20の中心部分には、従来と同様に、後方に向けて突出した分液頂52を有し、この分液頂52を中心とした円周上に4つの洗浄孔54が等間隔に形成されている。
機構部品4の側壁22に関し、その内面22bは、前方に向かうに従って徐々に拡径した傾斜壁面で構成され、この内面22bの前端に連なるようにして上記塗料吐出口50が形成されている。すなわち、塗料吐出口50は機構部品4の側壁の内面22bに連続している。最も好ましくは、塗料吐出口50の軸線は、側壁22の内面22bの傾斜方向と同じ方向に指向される。
図1から分かるように、霧化ヘッド本体2と、その中央凹所6に霧化ヘッド本体2の前方からアクセスさせて霧化ヘッド本体2に嵌装される機構部品4の外面22aとの間にシール部材(シールリング)が介装されていない。その代わりに、中央凹所6の周囲壁面6a(図2)が前方に向けて拡径した傾斜壁で構成され、この周囲壁面6aと相補的な形状を有する機構部品4の外面22aは、その前後の全長に亘って中央凹所6の周囲壁面6aと実質的に接した状態にあり且つ外面22aの前述した段付き形状(図2)によって、外面22aはその円周方向に連続して延びる帯状の部分が中央凹所6の周囲壁面6aと密着した状態となる。更に、機構部品4の前方壁20の外周部分に塗料吐出口50が形成されている。
上記の構成を採用することにより、塗料吐出口50から流出した塗料は、遠心力によって、機構部品4の前方壁20の外周縁部を伝って半径方向外方に流れ、次いで、霧化ヘッド本体2の前面3の延展面5を伝って外周縁2bから放出されるのは言うまでもないことであるが、機構部品4が、その前後の全長に亘って中央凹所6の周囲壁面6aと実質的に接した状態にあることから、塗料が機構部品4と中央凹所6との間に侵入する可能性が小さい。
塗料の色替えのために回転霧化頭1を洗浄するときには、前述したように回転霧化頭1に洗浄液(典型的にはシンナー)が供給される。シンナーは、機構部品4の周方向に連続した側壁22で囲まれた空間内を流動することで機構部品4及び霧化ヘッド本体2の円形開口10の周辺が洗浄され、そして、洗浄孔54及び塗料吐出口50を通じて外部に流出して、機構部品4の前方壁20の前面及びヘッド本体の延展面5の洗浄が行われる。
塗料フィードチューブから供給される塗料を受け入れる回転霧化頭1内の塗料空間Sは、機構部品4と霧化ヘッド本体2とで画成される。この機構部品4で囲まれた塗料空間S(図1)において、この塗料空間Sを囲む壁面が、連続した面一の滑らかな面で構成されており、換言すると、この塗料空間Sの壁面に塗料が固着し易い段差などの部位が無いため、塗料空間Sを囲む壁面に塗料が残留して固着してしまうのを防止しつつ塗料空間Sの全域を洗浄液で塗料残り無しに且つ効率良く洗浄することができる。
再び図1を参照して、回転霧化頭1は、延展面5よりも内周側に、円周方向に連続して延びる段部60を備えるのがよい。実施例では、機構部品4に段部60が形成されているが、機構部品4を霧化ヘッド本体2に装着した状態のとき、機構部品4と霧化ヘッド本体2の延展面5との間に段部60ができるように、霧化ヘッド本体2の中央凹所6の深さ寸法と機構部品4の厚み寸法を設定してもよい。実施例では、段部60は1段であるが、変形例として回転霧化頭1は階段状に複数の段部60を備えていてもよい。
この段部60をダム部と呼ぶと、フィードチューブ(図示せず)から供給された塗料は、前方壁20の外周部分に形成された塗料吐出口50から出て径方向外方に広がるが、この塗料は段部60で一旦受け止められる。つまり段部60はダム機能を奏し、そして、この段部60のダム機能によって塗料に含まれる気泡が消失することが実験より実証できた。換言すると、上記段部60を備えた回転霧化頭1を使って塗装した被塗物は気泡の無い平滑性に優れた塗装面であった。
図1を参照して、実施例の回転霧化頭1は、霧化ヘッド本体2の前面3の外周部分を構成する延展面5と、霧化ヘッド本体2の背面62とが交差した外周縁2bを有している。この回転霧化頭1の典型的な適用例を説明すると、霧化ヘッド本体2の背面62に向けてシェーピングエアが吹き付けられる。また、最も好ましい適用例では、シェーピングエア吐出口が霧化ヘッド本体2の背面62に差し向けられると共に、回転霧化頭1の回転方向とは逆方向にシェーピングエア吐出口が指向されている。このシェーピングエア吐出口の具体的な構成は、JP特開2008−93521号公報に詳しく説明されていることから、この特開2008−93521号公報の全文を援用することにより、その説明を省略する。
回転霧化頭1が延展面5と背面62とが交差した外周縁2bを備えると共に、回転霧化頭1の背面62に対して回転霧化頭1の回転方向とは逆方向に差し向けられたシェーピングエアを当てることにより、塗装パターンを拡大し且つ塗料を一層微細化できることが判明した。外周縁2bは、シャープな形状を有していてもよいし、面取りした形状を有していてもよい。
実施例の回転霧化頭1によれば、機構部品4が嵌挿される霧化ヘッド本体2に圧力抜き孔18を設けたことから、塗装作業の最中に機構部品4と霧化ヘッド本体2の底壁8との隙間46(図1)に塗料が侵入しても、これらの部品2、4間の隙間46の圧力上昇を抑制することができる。これにより、塗装作業中に霧化ヘッド本体2から機構部品4が脱落又は霧化ヘッド本体2に対する機構部品4の正規位置から機構部品4が変位するのを防止することができる。
機構部品4の後面に円周リブ44を設け、この円周リブ44を霧化ヘッド本体2の底壁8に圧接させることで、機構部品4の後面と霧化ヘッド本体2の底壁8との隙間46に塗料が侵入するのを防止することができる。この隙間46への塗料の侵入防止は、機構部品4と霧化ヘッド本体2との間に配設したシールリング40によって一層確実なものにすることができる。
本発明は、回転霧化式の静電塗装機に好適に適用できる。
1 回転霧化頭
2 霧化ヘッド本体
2b 霧化ヘッド本体の外周縁
3 霧化ヘッド本体の前面
4 機構部品
5 霧化ヘッド本体の前面の延展面
6 霧化ヘッド本体の中央凹所
6a 中央凹所の周囲壁面
8 中央凹所の底壁
10 中央凹所の底壁の中心部分に形成された第1の円形開口
12 底壁の円筒部分
14 円筒部分の円周凹部
16 円周凹部によって形成された段部
18 圧力抜き孔
20 機構部品の前方壁
22 機構部品の側壁
30 機構部品の脚
30a 脚の爪
32 円周溝
34 機構部品の底部の第2の円形開口
36 円形開口を形成する内周面
40 シールリング
44 円周リブ(液止めリブ)
46 機構部品4と底壁8との間の隙間
50 塗料吐出口
60 段部(ダム)
62 霧化ヘッド本体2の背面
70 中央凹所とは反対側の底面

Claims (7)

  1. 前方に向けて開放した中央凹所を備えたベル型の霧化ヘッド本体と、
    塗料フィードチューブから供給される塗料を受け入れる塗料空間を形成する合成樹脂製の機構部品とを備え、
    該機構部品を前記霧化ヘッド本体の中央凹所に脱着自在に嵌合することにより、これら機構部品と霧化ヘッド本体とが一体化される回転霧化頭であって、
    前記機構部品が、周方向に連続する側壁と、該側壁の後端から後方に向けて延び且つ周方向に離間して配設された複数の脚と、
    該脚の自由端に設けられ、前記霧化ヘッド本体の中央凹所の周囲壁面に形成された円周溝に係合する爪とを有し、
    前記霧化ヘッド本体の中央凹所の周囲壁面が、前方に向かうに従って徐々に拡径する傾斜した面で構成され、
    前記機構部品の前記周方向に連続する側壁の外面が前記中央凹所の周囲壁面と相補的な形状に形作られて、該機構部品の側壁の外面と前記中央凹所の周囲壁面とが実質的に接しており、
    前記霧化ヘッド本体は、前記機構部品の後面と対向し且つ該機構部品の後面との間にシールされた隙間を形成する底壁を更に有し、
    該底壁に圧力抜き孔が形成され
    該圧力抜き孔を通じて、前記シールされた隙間が大気に開放していることを特徴とする回転霧化頭。
  2. 前記圧力抜き孔が、前記中央凹所から、その反対側の底面に向かうに従って徐々に径方向外方に傾斜した通路形状を有する、請求項1に記載の回転霧化頭。
  3. 前記機構部品の後面に後方に向けて突出し且つ周方向に連続した液止めリブを有している、請求項1又は2に記載の回転霧化頭。
  4. 前記霧化ヘッド本体の底壁の中央部分に第1の円形開口を有し、
    第1の円形開口の一部が前記霧化ヘッド本体の底壁から前方に向けて突出した円筒部分によって規定され、
    前記機構部品は、前記霧化ヘッド本体の前記円筒部分に嵌合される第2の円形開口を有し、
    前記円筒部分と前記機構部品との間にシールリングが配設されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の回転霧化頭。
  5. 前記回転霧化頭は、その前面に沿って拡がる塗料を一旦受け止める段部を有し、
    該段部が円周方向に連続して延びている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の回転霧化頭。
  6. 前記回転霧化頭が、前記霧化ヘッド本体の前面の外周部分を構成する延展面と、霧化ヘッド本体の背面とが交差した外周縁を備えている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の回転霧化頭。
  7. 前記機構部品の前記側壁の外面が段付き形状を有し、
    該機構部品の外面が前記中央凹所の周囲壁面に対して部分的に圧接している、請求項1〜6のいずれか一項に記載の回転霧化頭。
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