JP5826092B2 - 固体酸化物形燃料電池 - Google Patents

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Description

本発明は、水素源を燃料とする燃料ガスにより動作する固体酸化物形燃料電池に関し、詳しくは前記燃料ガスを改質せず直接燃料極に供給する固体酸化物形燃料電池に関する。
一般に、固体酸化物形燃料電池は固体酸化物形燃料電池セルと、固体酸化物形燃料電池セルを格納する反応器と、から構成される。前記固体酸化物形燃料電池セルは、一般に固体酸化物電解質の一面に形成された燃料極と、前記燃料極と離間して設置される空気極とから構成される。発電時には、空気極側には空気が、燃料極側には水素が供給され、各電極上において800〜1000℃程度で以下の反応が進行する(反応式1)。
Figure 0005826092
空気極で生成した酸素イオンは、固体酸化物電解質中を空気極側から燃料極側に移動する。同時に、電気負荷に電子が燃料極側から空気極側へ流れることで発電が達成される。
燃料電池に供給される燃料は主に水素であるが、実際には、メタンやメタノールをはじめとする炭化水素系ガスや、アンモニア、ヒドラジンなどの含水素ガスを改質器によって改質し、得られた水素を使用するのが一般的である。このような含水素ガスの改質反応は吸熱反応であるため、十分な改質性能を得るためには改質器を加熱する必要がある。
炭化水素系ガスを燃料ガスに用いる場合においては、燃料極上などに改質層を設置することで、燃料ガスをセルに直接供給しても発電できる燃料電池が特許文献1および2に提案されている。このような改質層においては、炭化水素系ガスの(i)部分酸化、(ii)自己熱改質、(iii)水蒸気改質を進行させることで、同時に水素を得る。ここで、(i)および(ii)は発熱反応であり、(iii)は吸熱反応である。これらの反応を、必要となる熱量の変化に応じてコントロールすることで、起動時から定常運転時まで高い改質性能を実現している。
メタンを燃料に用いた場合に、改質層および燃料極において進行する各反応の式を以下に示す(反応式2)。
Figure 0005826092
一方、アンモニアを直接燃料に用いて発電する方式の固体燃料電池が特許文献3および特許文献4に示されている。アンモニアを燃料ガスとして用いる場合には、炭化水素系ガスとは異なり、下記のように燃料極中において改質反応と電極反応の両方が進行する(反応式3)。
Figure 0005826092
上記改質反応も吸熱反応であり、500℃以上で進行するため、起動時には外部から熱供給が必要となるほか、定常発電運転中にも電極反応による発熱だけでは賄えず、吸熱反応による温度低下が起こる問題がある。
特許文献4には、このような吸熱による温度低下を抑制するため、燃料極排ガスの一部を燃焼させ、得られた熱を空気極に供給することでセルを加熱し、起動させる方法が示されている。
特開2008−257890号公報 特開2003−132906号公報 特開2011−204416号公報 特開2011−204418号公報
しかしながら、炭化水素系ガスを直接燃料に用いた固体酸化物形燃料電池は、特に低S/C比での燃料極におけるカーボン析出の問題を根本的に解決することができない上、運転中に温室効果ガスである二酸化炭素が排出されるため、環境問題を考慮した場合に必ずしも最良の解決策と言えない。
一方、アンモニアを燃料に用いる場合においても、オフガスを燃焼させる方法では、起動時と定常運転時に空気極に投入するガスを変化させるため、装置が複雑化する可能性がある。また、燃料の一部を酸化させることにより改質層に熱を供給する方式については、該当する研究はほとんどなされていない。さらに、上記の如く、炭化水素系ガスを燃料に用いた場合とアンモニアを燃料に用いた場合とでは、燃料極や改質器で進行する反応が異なり、例えばアンモニアを燃料に用いた場合に部分酸化反応によって発熱と同時に水素を得ることはできない。従って、炭化水素系ガスを燃料に用いた場合の装置構成をそのままアンモニアの系に適用することは困難である。
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、水素源を燃料とする燃料ガスを直接燃料に用いる固体酸化物形燃料電池において、従来よりも単純な装置構成で起動・定常運転できる固体酸化物形燃料電池を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、上記した目的を達成すべく鋭意研究した結果、水素源を含む燃料ガス(以下、燃料ガスと略すこともある)を燃料とする固体酸化物形燃料電池において、燃料ガスの一部を燃料極に供給される前に酸化させることによって上記目的が達成できることを見出し、発明を完成するに至った。
すなわち、本発明に係る固体酸化物形燃料電池は、例えば図1に示すように、燃料ガス6と酸化剤ガス7とを導入するためのガスラインを備える反応器8と、反応器8内に設置された固体酸化物形燃料電池セル1と、燃料ガス6の流れに対して燃料極2よりも上流側に設置された酸化触媒とを備えている。前記固体酸化物形燃料電池セル1は、少なくとも固体酸化物電解質3と、固体酸化物電解質3の少なくとも1面に設置された燃料極2と、固体酸化物電解質3の少なくとも1面に燃料極2と離間して設置される空気極4と、を備えている。
酸化触媒の配置方法は、種々の方法があり、例えば、燃料ガス6を供給するためのガス供給ライン上に酸化触媒5´を設置することができるが、好ましくは、燃料極2の表面に酸化触媒を含む酸化触媒層5を形成することができる。
本発明の固体酸化物形燃料電池は、燃料とする固体酸化物形燃料電池セルにおいて、供給される燃料の一部を燃料極に到達する前に酸化触媒により酸化させ、得られた熱によって燃料極およびセルを加温することで、電極触媒活性を損なうことなく燃料の改質性能や固体酸化物電解質の導電率を向上させることができ、ひいては、固体酸化物形燃料電池セルの出力を向上することができる。
また、改質反応による温度低下を抑制することができ、サーマルクラックの原因となる温度分布の形成を抑制できる。
さらに、低温起動時に燃料ガスとともに酸化剤ガスを導入することにより、起動時から高い改質性能を実現できるようになり、起動時間の短縮が達成される。
本発明の一実施例のうち、2室型固体酸化物形燃料電池において燃料極の表面に酸化触媒層を形成した例の図である。 本発明の一実施例のうち、2室型固体酸化物形燃料電池において燃料ガス供給ライン上に酸化触媒を配設した例の図である。 本発明の一実施例のうち、単室型固体酸化物形燃料電池において燃料極の表面に酸化触媒層を形成した例の図である。 本発明の一実施例のうち、単室型固体酸化物形燃料電池において燃料ガス供給ライン上に酸化触媒を配設した例の図である。
以下に本発明の実施形態を説明するが、本発明の効果を奏するものであれば以下の記載に限定されるものではない。
(第一実施形態)
本発明に係る固体酸化物形燃料電池の第一実施形態について図1を参照しつつ説明する。図1における固体酸化物燃料電池は、燃料ガス6と酸化剤ガス7とを導入するためのガスラインを備える反応器8と、当該反応器内に設置された固体酸化物形燃料電池セル1と、燃料極2上に設置された酸化触媒層5からなる。前記固体酸化物形燃料電池セル1は、固体酸化物電解質3と、この固体酸化物電解質3の一方の面に設置された燃料極2と、固体酸化物電解質3を挟んで燃料極2と反対側の面に設置される空気極4と、を備える。
第一の実施形態においては、運転中、燃料極2側には燃料ガス6のみを導入してもよいし、燃料ガス6と同時に酸化剤ガス7を導入してもよい。アンモニアを燃料ガスに用いた場合を例に取ると、前者の場合には上記酸化反応(B)のみが進行し、後者の場合には、反応式4における酸化反応(A)および(B)が進行する。
Figure 0005826092
(第二実施形態)
本発明に係る固体酸化物形燃料電池の第二実施形態について図2を参照しつつ説明する。本実施形態が第一実施形態と異なるのは、酸化触媒層5の代わりに酸化触媒5´を燃料ガス供給ライン上に設置した点であるので、その他の構成については説明を省略する。
第二の実施形態においては、アンモニアを燃料ガスに用いた場合を例に取ると、燃料極2側に燃料ガス6と酸化剤ガス7を同時に導入し、酸化触媒5´上で反応式4における酸化反応(A)が進行する。
(第三実施形態)
本発明に係る固体酸化物形燃料電池の第三実施形態について図3を参照しつつ説明する。図3における固体酸化物燃料電池は、燃料ガス6と酸化剤ガス7とを導入する為のガスラインを備える反応器8と、当該反応器内に設置された固体酸化物形燃料電池セル1と、燃料極2上に設置された酸化触媒層5からなり、一般に単室型と呼ばれる形の反応器の形態をとる。前記固体酸化物形燃料電池セル1は、固体酸化物電解質3と、この固体酸化物電解質3の一方の面に設置された燃料極2と、燃料極2と同一の面に離間して設置される空気極4と、を備える。
第三の実施形態においては、アンモニアを燃料ガスに用いた場合を例に取ると、燃料極2側に燃料ガス6と酸化剤ガス7を同時に導入することにより、反応式4における酸化反応(A)および(B)が進行する。
(第四実施形態)
本発明に係る固体酸化物形燃料電池の第四実施形態について図4を参照しつつ説明する。本実施形態は第三実施形態のうち、酸化触媒層5の代わりに酸化触媒5´を燃料ガス供給ライン上に設置した点のみが異なるため、その他の構成については説明を省略する。
第四の実施形態においては、アンモニアを燃料ガスに用いた場合を例に取ると、燃料極側に燃料ガス6と酸化剤ガス7を同時に導入することにより、酸化触媒5´上で反応式4における酸化反応(A)が進行する。
いずれの実施形態においても、上記酸化反応によって得られた熱が燃料極2および固体酸化物電解質3に供給され、燃料極2中において進行する改質反応を有利に進行させ、かつ固体酸化物電解質3のイオン導電性を向上させることができる。合わせて、改質反応による吸熱で生じるセル中の温度分布形成を抑制でき、サーマルクラックの問題を解決できる。また、低温起動時には酸化反応(A)が進行するよう燃料ガスとともに酸化剤ガスを導入することにより、初期から高い改質性能を実現できるようになり、起動時間の短縮が達成される。
以下に上記燃料電池を構成する要素について説明する。
(固体酸化物電解質)
本発明における固体酸化物電解質3は、燃料極2および空気極4が設置されている固体酸化物電解質であり、空気極4で生成した酸素イオンが燃料極2に移動する際に通過する部分を指す。
固体酸化物電解質3の材料としては、SOFCの固体酸化物電解質として公知のものを使用することができ、例えば、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、ScSZ(スカンジア安定化ジルコニア)、これらのジルコニアにさらにCe、Al等をドープしたジルコニア系粉末、SDC(サマリアドープドセリア)、GDC(ガドリアドープドセリア)等のドープセリア系粉末、LSGM(ランタンガレート)系粉末、酸化ビスマス系粉末などの酸素イオン伝導性セラミックス材料を用いることができる。これらの固体酸化物電解質は、必要ならば、2種類以上を混合して使用してもよい。
固体酸化物電解質3の形状はセルの形状に依存するが、特に規定されない。セルの形状は、一般に平板型セル、円筒型セル、セグメント型セルなどが挙げられ、前記固体酸化物電解質3は各々の形状に合わせて直接形成されるか、支持体上にスクリーン印刷法、スピンコート法などのシート、薄膜、フィルム等の形成に慣用されている任意の技法を用いて形成される。例えばグリーンシートプロセスを使用して形成する場合、上記固体酸化物電解質の材料のペーストを所定のパターンで塗布し、乾燥してグリーンシートを形成した後、そのグリーンシートを高温で焼成することによって平板型の固体酸化物電解質を容易に形成することができる。ペーストの塗布には、例えば、スクリーン印刷法などの印刷法を有利に使用することができる。具体的には、平板状の仮支持体の片面に固体酸化物電解質材料のペーストを所定のパターンで印刷し、乾燥及び焼成することによって膜状の固体酸化物電解質を形成することができる。焼成温度は、使用する固体酸化物電解質材料の特徴などに応じて広い範囲で変更することができるけれども、通常、約1200〜1500℃の範囲である。
固体酸化物電解質3の厚さは一般的に5〜500μmの範囲であり、電解質支持型セル(ESC)の場合は50〜500μm、好ましくは100〜400μm、燃料極支持型セル(ASC)や空気極支持型セル(CSC)の場合は5〜100μm、好ましくは10〜50μmである。
(燃料極)
燃料極は、燃料ガスと、空気極で生じて固体酸化物電解質を介して燃料極へ移動してきた酸素イオンとを反応させる極であり、反応後には燃料排ガス6aを排出する。
本発明における燃料極2は、燃料ガスに用いる固体酸化物形燃料電池で通常使用される燃料極材料を用いることができ、一般的には燃料極電極触媒と固体電解質粒子により形成される。
燃料極電極触媒は、燃料極中において前記改質反応と前記燃料極電極反応を進行させる機能を有する触媒である。
燃料極電極触媒の材料は、本発明の実施において特に限定されるものではなく、燃料ガスに用いる固体酸化物形燃料電池に一般的に使用されている電極触媒を使用できる。具体的には、Ni、Coといった金属、あるいはそれらの合金が選択される。
燃料極2中に含まれる固体電解質粒子は、固体酸化物電解質中を移動してきた酸素イオンを燃料極中に拡散させるものである。その材質は、特に限定されるものではなく、例えば、固体酸化物電解質3で用いることができる材料が使用される。固体電解質粒子は、必要ならば、2種類以上を混合して使用してもよい。
前記固体電解質粒子は、その比表面積が1〜20m/gの範囲のものが燃料極の気孔形成に好ましく、3〜15m/gの範囲のものが特に好ましい。比表面積が1m/gを下回ると燃料極中に大きな気孔が局所的にできやすくなり、燃料ガスの流配が不均一になる不具合が発生しやすく、反対に比表面積が20m/gを上回ると焼結性が大きくなるため気孔量が少なくなり、燃料ガスの流配が不十分になる不具合が発生しやすくなる。
前記燃料極電極触媒と前記固体電解質粒子の燃料極2中における形態は特に問わないが、導電性確保の観点からサーメット状となっていることが一般的である。
燃料極2の厚さは、いろいろに変更することができるけれども、通常、ESCやCSCおよび単室型の場合は約20〜200μmであり、好ましくは約30〜120μmである。一方、ASCの場合のように燃料極支持基板と燃料極活性層とを1つの燃料極と見なす場合は、通常その厚さは200〜2000μmであり、好ましくは300〜1000μmである。燃料極が薄すぎると、燃料極本来の機能を得ることができなくなる。また、燃料極が厚すぎると、ガスの拡散が不十分となりセルの性能が低下する。
(空気極)
空気極は、空気の他、酸素を含むガスが導入される極であり、当該極において酸素は酸素イオンとなり、固体酸化物電解質を介して燃料極に移動する。
本発明における空気極4は、空気極における前記電極反応を進行させるための電極である。その材料としては、通常固体酸化物形燃料電池に用いられる空気極材料を用いることができ、一般的には空気極電極触媒と固体電解質粒子により形成される。
空気極電極触媒としては公知のものを用いることができ、例えばマンガン系、フェライト系、コバルト系やニッケル系ペロブスカイト型構造の酸化物が好ましく、例えば、ストロンチウム(Sr)等の周期律表第2族元素が添加されたランタンストロンチウムマンガナイト(LaXSr1−XMnO)、ランストロンチウムコバルタイト(LaXSr1−XCoO)、ランストロンチウムコバルトフェライト(LaXSr1−XCoYFe1−YO)、ランタンニッケルフェライト(LaNiYFe1−YO)などが挙げられる。
空気極4中に含有される固体電解質粒子は、燃料極2で用いることのできる固体電解質粒子と同様の材料を使用できる。
空気極4の厚さは、いろいろに変更することができるけれども、通常、約20〜200μmであり、好ましくは約30〜120μmである。空気極が薄すぎると、空気極本来の機能を得ることができなくなり、空気極反応が不十分となり出力が低下する。
(酸化触媒層5)
酸化触媒層5は、燃料ガスを酸化燃焼させるための酸化触媒を含む層であり、触媒活性成分と固体電解質粒子により形成され、必要に応じて担体を含んでも良い。
触媒活性成分は、燃料ガスを酸化燃焼させる触媒成分である。触媒活性成分には、例えばMn、Fe、Ru、Co、Rh、Ni、Pt、Pd、Cu、Agといった金属、あるいはそれらの合金、あるいはそれらの酸化物を用いることができる。また、必要に応じてAl、SiO、ZrO、TiOなどの担体を含んでも良い。前記触媒活性成分と前記担体は、単なる混合物として存在してもよいし、触媒活性成分が担体上に担持された状態でもよい。担持型触媒とすることで、高温でも酸化性能を維持することが容易となる。
酸化触媒層5に含有される固体電解質粒子は、固体酸化物電解質3や燃料極2を移動してきた酸素イオンを酸化触媒層5中に拡散させるものである。固体電解質粒子の材料は特に限定されないが、例えば燃料極2で用いることのできる固体電解質粒子と同様の材料を使用できる。
酸化触媒層5に含まれる固体電解質粒子は、その比表面積が1〜20m/gの範囲のものが燃料極の気孔形成に好ましく、3〜15m/gの範囲のものが特に好ましい。比表面積が1m/gを下回ると燃料極中に大きな気孔が局所的にできやすくなり、燃料ガスの流配が不均一になる不具合が発生しやすく、反対に比表面積が20m/gを上回ると焼結性が大きくなるため気孔量が少なくなり、燃料ガスの流配が不十分になる不具合が発生しやすくなる。
酸化触媒層5における触媒活性成分の量(金属換算)は、固体電解質粒子と触媒活性成分と担体を合わせた部分の重量を100質量%とした場合に0.1〜50質量%、好ましくは0.2〜30質量%、更に好ましくは0.3〜10.0質量%である。
酸化触媒層5の厚さは、いろいろに変更することができるけれども、通常、約20〜200μmであり、好ましくは約30〜120μmである。酸化触媒層が薄すぎると、本発明の機能を得ることができなくなり、酸化触媒層が厚すぎると、燃料極での反応が十分進行せず出力が低下する。
酸化触媒層5の持つ燃料ガス分解作用、燃料ガス燃焼作用については、各反応速度が下記の条件を有するものが好ましい。酸素による燃料ガス燃焼反応など発熱反応による燃料ガス消費速度をr mol・g−1・s−1、燃料ガスを水素含有ガスに分解する反応などの吸熱反応における燃料ガス消費速度をr mol・g−1・s−1で表す。このとき、反応温度700℃、燃料ガスおよび酸素の分圧をそれぞれ40kPa、4kPaとした場合のr/rが0.2以上であること好ましく、0.5以上であることがさらに好ましい。r/rがこれより小さいと、発熱によりセルを温めることが不可能となる。また、低温から燃料電池を起動させるに当たって、低温でもある程度の燃料ガス燃焼活性があることが好ましく、同ガス条件下、反応温度200℃におけるrが2.5×10−8mol・g−1・s−1以上であることが好ましく、さらに好ましくは5.0×10−8mol・g−1・s−1以上である。
(酸化触媒5´)
酸化触媒5´は、燃料ガスを酸化燃焼させるための酸化触媒を含む成形体であり、触媒活性成分と担体により形成される。
触媒活性成分および担体は、上記酸化触媒層5で用いることができるものを使用できる。
触媒活性成分と担体の形態は特に問わず、混合物として存在していても良いし、担体の上に触媒活性成分の原料を含浸担持させた担持型触媒の形となっていても良い。
酸化触媒5´における触媒活性成分の量(金属換算)は、担体と触媒活性成分を合わせた部分の重量を100質量%とした場合に0.1〜50質量%、好ましくは0.2〜30質量%、更に好ましくは0.3〜10.0質量%である。
酸化触媒5´の形態としては、燃料ガス供給ライン上に設置でき、燃料ガスを酸化できれば特に問わないが、例えばペレット触媒、成形触媒などとして用いることができる。また、コージェライト、SUS、SiCなどの材料からなるハニカム担体にコーティングして用いることもできる。これらのハニカムへのコート方法は公知の方法を用いることができ、例えば前記触媒活性成分と担体を含むスラリーを含浸担持させる方法などがある。
酸化触媒5´の持つ燃料ガス分解作用、燃料ガス燃焼作用については、各反応速度が下記の条件を有するものが好ましい。酸素による燃料ガス燃焼反応など発熱反応による燃料ガス消費速度をr mol・g−1・s−1、燃料ガスを水素含有ガスに分解する反応などの吸熱反応における燃料ガス消費速度をr mol・g−1・s−1で表す。このとき、反応温度700℃、燃料ガスおよび酸素の分圧をそれぞれ40kPa、4kPaとした場合のr/rが0.2以上であること好ましく、0.5以上であることがさらに好ましい。r/rがこれより小さいと、発熱によりセルを温めることが不可能となる。また、低温から燃料電池を起動させるに当たって、低温でもある程度の燃料ガス燃焼活性があることが好ましく、同ガス条件下、反応温度200℃におけるrが2.5×10−8mol・g−1・s−1以上であることが好ましく、さらに好ましくは5.0×10−8mol・g−1・s−1以上である。
(燃料ガス分解反応と当該反応による燃料ガス消費速度r
燃料ガス分解反応とは、炭化水素系燃料ガスにおける水蒸気改質反応や、アンモニアを燃料ガスとした場合の改質反応のように、燃料ガスを水素含有ガスに分解する反応のうち、吸熱反応であるものを表す。燃料ガス分解反応により消費される燃料の消費速度rは、酸化触媒1g当たり、1秒間に水素含有ガスへの分解反応によって消費される燃料ガスのモル数により定義する。
の測定方法としては、例えば酸化触媒層5で使用する固体酸化物粒子と酸化触媒を混合・成形してペレット化したものや、酸化触媒5´と同組成の粉体を成形してペレット化したものなどについて、酸素を加えずに燃料ガスの分解反応だけを行い、燃料ガスの分解率から求めることができる。その際、高SV条件下かつ燃料ガス消費率を10%未満で測定することが好ましい。また、触媒を石英砂等の不活性物質で希釈するなどして吸熱反応による触媒層温度低下を分散・平均化し、触媒層温度を均一化することが好ましい。
(燃料ガス燃焼反応と当該反応による燃料ガス消費速度r
燃料ガス燃焼反応とは、炭化水素系燃料ガスにおける部分酸化反応や自己熱改質反応、アンモニアを燃料とした場合に進行する反応式4で表される反応であり、燃料ガスを酸素により燃焼させる発熱反応である。
ここで、酸化反応(A)が進行するのは酸化触媒層5もしくは酸化触媒5´に燃料ガス6と酸化剤ガス7が共に供給される場合であり、酸化反応(B)が進行するのは固体酸化物電解質3中を移動してきた酸素イオンを使用して酸化触媒層5上で酸化反応が進行する場合である。
燃料ガス燃焼反応による発熱が少ないと、前記燃料ガス分解作用が促進されず、本発明よる効果を十分に得ることができない。
燃料ガス燃焼反応により消費される燃料の消費速度rは、酸化触媒1g当たり、1秒間に燃焼反応によって消費される燃料ガスのモル数により定義する。
の測定方法としては、例えば燃料極で使用する固体酸化物粒子と酸化触媒を混合・成形してペレット化したものについて、燃料ガスと酸素を混合して触媒に供給した場合の燃料ガスの消費率から求めることができる。その際、高SVかつ燃料ガス消費率10%未満の条件下で測定することが好ましい。また触媒を石英砂等の不活性物質で希釈するなどして反応による触媒層温度の上昇を分散・平均化し、触媒層温度を均一化することが好ましい。
この方法で求めた燃料ガスの消費速度には、燃料ガス分解反応による燃料ガス消費が含まれている可能性があるので、それを差し引きする必要がある。すなわち、燃料ガスと酸素を混合して触媒に供給した場合の燃料ガスの消費率から、燃料ガスの分解と燃焼を合わせた燃料ガスの消費速度rDAを求め、別に測定した燃料ガスの分解速度rを用いてr=rDA−r としてrを求めることができる。
(固体酸化物形燃料電池セルの形成)
本発明による固体酸化物形燃料電池セル1は、従来の一般的な燃料電池と同様、固体酸化物電解質3と、固体酸化物電解質3の一方の面に形成された燃料極2と、固体酸化物電解質3を挟んで燃料極2と反対の面に形成された空気極4とを含むセルとして構成される。
セルの形状は、平板型セル、円筒型セル、セグメント型セルなど一般的に用いられる形状であればよい。例えば、平板型セルとしてはESC、ASC、CSCが挙げられる。また、燃料極と空気極が固体酸化物電解質を挟んで形成される二室型燃料電池であってもよいし、燃料極と空気極のどちらもが固体酸化物電解質の一方の面に形成されている単室型燃料電池であってもよい。単室型のセルとして構成する場合には、固体酸化物電解質の少なくとも一方の面に燃料極と空気極の組が1組以上形成されたセルとして構成される。円筒型セルとしては、円筒縦縞型セルと円筒横縞型セルが挙げられ、さらにその中に円筒平板型セルを含むことができる。要するに、本発明の実施において、固体酸化物形燃料電池は、刊行物等で公知な構造及び現在実施されている構造を含めたいろいろな構造を有することができる。
酸化触媒層5、燃料極2および空気極4は、薄膜、フィルム等の形成に慣用されている任意の技法を使用して形成することができる。例えば、すでに形成してある固体酸化物電解質の表面に電極または触媒層の材料を含むペーストを所定のパターンで塗布し、乾燥後に焼成することによって容易に形成することができる。ペーストの塗布には、例えば、スクリーン印刷法などの印刷法を有利に使用することができる。焼成温度は、使用する材料の特徴などに応じて広い範囲で変更することができるけれども、通常、約900〜1500℃の範囲である。もちろん、必要ならば、その他の手法を使用して形成してもよい。
酸化触媒層5、燃料極2および空気極4は、内部に燃料ガスが充分に拡散でき、かつ充分な電気伝導性を維持できる程度に、多孔質に形成される。その気孔率は、いろいろに変更することができるけれども、通常、約10〜60%であることが好ましい。
また、燃料極2および/または空気極4と固体酸化物電解質3との間には、バリア層などの中間層を設置してもよい。
(発電方法)
当該電池セル1を成形し、燃料極2に燃料ガス6を導入し、空気極4に酸化剤ガスを導入する。燃料電池としての発電自体は反応式1で進行する。本発明は、吸熱反応等を伴い反応式1を生じることに不利な燃料であっても、2燃料極に対して燃料ガス供給ラインの上流側に酸化触媒5を設置することで熱を得ることができるので、単に燃料を電池セルに導入するだけで導電率等を向上させることにより、電池セルの発電効率を向上させることができる。
(燃料ガス)
燃料ガス6には本発明にかかる燃料電池に燃料として用いることができるガスであれば何れのガスであっても良いが、好ましくは水素、水素を含む化合物ガスであり、更に好ましくはアンモニア、ヒドラジンである。当該燃料ガスは単体もしくは適宜混合して使用することができる。また、燃料ガス6には発電効率が落ちない程度に窒素や希ガスなどの不活性ガスや水蒸気を含んでいてもよい。
本発明で燃料とするアンモニアは、アンモニアガス、液化アンモニアガス、し尿や生ゴミ等を発酵処理、或いは豚糞及び牛糞等畜産廃棄物の高効率嫌気性消化槽から発生するバイオガスなどであるが、本発明ではアンモニア濃度が30%以上、好ましくは50%以上のアンモニアガス、液化アンモニアガス、し尿や生ゴミ等を発酵処理或いは豚糞及び牛糞等畜産廃棄物の高効率嫌気性消化槽から発生するバイオガスが好適に使用される。特に、アンモニアガス、液化アンモニアガスが好適である。
(酸化剤ガス)
酸化剤ガス7としては燃料ガスを酸化する能力を有するものであれば特に問わないが、空気を主に含有するガスのほか、酸素などを用いることができる。
以下に実施例と比較例により本発明を詳細に説明するが、本発明の趣旨に反しない限り以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
(酸化触媒層材料)
触媒活性成分の原料として、市販のジニトロジアンミン白金溶液(田中貴金属製)、固体電解質粒子として、市販の10モル%スカンジア1モル%セリア安定化ジルコニア粒子(第一稀元素化学工業社製;製品名:10Sc1CeSZ、平均粒子径:0.6μm、比表面積:10.8m/g)を、白金2重量%(金属換算)と安定化ジルコニア粒子98重量%となるよう攪拌混合して混合物とし、300℃で1時間焼成して酸化触媒層材料を調製した。
本材料をさらに950℃で焼成したものについて、700℃における酸化触媒成分質量基準のr、rを測定したところ、r=1.4×10−3mol・g−1・s−1、r=3.0×10−4mol・g−1・s−1であった。また、200℃におけるrは7.3×10−7mol・g−1・s−1であった。
(燃料極材料)
電極触媒として、市販の酸化ニッケル粉末(正同化学社製:製品名:Green、平均粒子径:0.7μm、比表面積:3.5m/g)および、固体電解質粒子として、市販の10モル%スカンジア1モル%安定化ジルコニア粒子(第一稀元素化学工業社製;製品名:10Sc1CeSZ、平均粒子径:0.6μm、比表面積:10.8m/g)を、当該酸化ニッケル粉末55体積%と安定化ジルコニア粒子45体積%とを攪拌混合して混合物とし、燃料極材料を調製した。
(空気極用材料)
市販の酸化ランタン、炭酸ストロンチウム、酸化コバルトおよび酸化鉄粉末から固相法で合成したランタンストロンチウムコバルトフェライト粉末La0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8(平均粒子径:0.7μm、比表面積:3.5m/g)80質量%と、市販の酸化サマリウムおよび酸化セリア粉末から固相法で合成した30モル%サマリアドープセリア(平均粒子径:1.9μm、比表面積:2.4m/g)20質量%とを攪拌混合して空気極材料とした。
(セルの作製)
電解質支持型燃料電池用セルの燃料極は、ドクターブレード法を用いて作成した10モル%スカンジア1モル%安定化ジルコニアシート(直径:120mm、厚さ300μm)の一方に面に、上記の燃料極材料にバインダー(ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、n−パラフィン、テレピン油、セルロース系樹脂)を加えた後混練して調製した燃料極ペーストをスクリーン印刷法で塗布し、乾燥後、1300℃で2時間焼成して形成した。なお、燃料極の厚さは40μmで気孔率は35%であった。
次いで、上記安定化ジルコニアシートの他方の面に、上記の空気極材料とバインダーを用い、同様にして空気極ペーストを調製し、950℃で焼成した以外は同様にして空気極を形成し、電極有効面積が95cmの固体酸化物形燃料電池用セルを作製した。
さらに、燃料極の上部に、上記の酸化触媒層材料にバインダー(ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、n−パラフィン、テレピン油、セルロース系樹脂)を加えた後混練して調製した酸化触媒層ペーストをスクリーン印刷法で塗布し、乾燥後、900℃で2時間焼成して形成した。なお、酸化触媒層の厚さは20μmで気孔率は41%であった。
(比較例1)
実施例1において、酸化触媒層を形成しなかった以外は、実施例1と全く同様にして、セルを作製した。
(発電試験と排気ガス中のアンモニア量の測定)
上記実施例1と比較例1で得たセルを用い、電気炉設定温度600℃および700℃で 発電試験を行った。まず当該セルの燃料極側にニッケル網(80メッシュ)を、空気極側に白金網(80メッシュ)によりセル挟持し、さらに当該ニッケル網と白金網の両側に金属マニホルドを設け、燃料ガスとしてボンベのアンモニア(流量100cc/min)、酸化剤ガスとして酸素(流量100cc/min)を供給した。
測定に当たっては、電流測定器としてアドバンテスト社製の型番「TR6845」、電流電圧発生器としては高砂製作所社製の型番「GP016−20R」を使用し、定常運転になってから10時間後に0.65Vの負荷を与えた際に出力される電流密度を測定した。また、燃料極から1mm離間した位置に熱電対を設置し、燃料極付近の温度Tを測定した。
結果を表1に示す。
Figure 0005826092
表1からも明らかなように、燃料極より上流に酸化触媒を設置した実施例1のセルでは、電気炉設定温度600℃および700℃での電流密度が大きく、酸化触媒を燃料極よりも上流に設置することによって低温での燃料電池の発電効率が向上していることが判る。また、燃料極付近の温度も上昇しており、本発明における酸化触媒が所望の効果を奏していることが判る。
本発明による固体酸化物形燃料電池は、水素源を含む燃料ガスを、改質せず直接燃料として用いた場合にも、発電効率に優れ、低コストでの運転が可能であり、いろいろな分野において有利に製造することができる。例えば、本発明の燃料電池は、自動車用発電や業務用発電、家庭用発電などの分野で有利に利用することができる。また、小型化することで、例えばLEDの点灯、LCDの表示、携帯ラジオ、携帯情報機器などの駆動にも有利に利用することができる。
1:固体酸化物形燃料電池セル
2:燃料極
3:固体酸化物電解質
4:空気極
5:酸化触媒層
5´:酸化触媒
6:燃料ガス
6a:燃料排ガス
7:酸化剤ガス
7a:酸化剤排ガス
8:反応器
9:電気負荷

Claims (5)

  1. 水素源を含むガスを燃料とする固体酸化物形燃料電池であって、当該水素源を含むガスがアンモニアまたはヒドラジンの少なくとも1種を含み、かつ当該固体酸化物燃料電池の燃料極に対して燃料ガス供給ラインの上流側に、燃料ガスを酸化する能力を有する酸化触媒が配設されていることを特徴とする固体酸化物形燃料電池。
  2. 前記酸化触媒が、前記固体酸化物形燃料電池の燃料極の上部に形成されていることを特徴とする請求項1記載の固体酸化物形燃料電池。
  3. 前記酸化触媒が、前記固体酸化物形燃料電池の燃料ガス供給ライン上に配設されていることを特徴とする請求項1または2に記載の固体酸化物形燃料電池。
  4. 前記酸化触媒の反応温度700℃におけるrA/rDが0.2以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の固体酸化物形燃料電池。
    (なお、燃料ガス、酸素の分圧をそれぞれ40kPa、4kPaとした場合、吸熱反応による燃料の消費速度をrD、発熱反応による燃料の消費速度をrAで示す。)
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の電池を用いて電気を得る方法。
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