JP5823178B2 - X線ct装置 - Google Patents

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Description

この発明の実施形態は、X線CT装置に関する。
医療用の診断や工業用の非破壊検査に、体内・内部の様子を可視化するX線CT(computed tomography)装置が近年用いられてきている。診断用のX線CT装置では、スキャン中に低い管電圧(例えば、80[kV])と高い管電圧(例えば、140[kV])を高速に切り替えるデュアルエナジースキャンを実行し、異なったエネルギー分布をもつX線ビームによるデュアルエナジー画像を取得することができる。
X線CT装置を用いて、デュアルエナジースキャンによって得られたデュアルエナジー画像を解析することによって、石灰化した組織部と造影剤による血管の像を分離しようという試みがある。X線の高電圧電源の出力電圧を切り替える方法としては、管電圧を設定する手段を2つ設け、データ収集装置(DAS:data acquisition system)とタイミングを合わせて低い管電圧と高い管電圧の設定信号を切り替えることで、高電圧電源の出力電圧を変化させるものがある。
特開2004−363109号公報
従来技術によるデュアルエナジースキャンでは、管電圧に従って高電圧電源の出力電圧を変化させるため、低い管電圧と高い管電圧との切り替えに時間がかかり、かつ、その変化も連続的なものとなるため、1ビュー毎の管電圧の切り替えではその波形が三角波のようになってしまう。よって、X線ビームのエネルギー分布もそれに応じて連続的に変化するため、デュアルエナジー画像からの目的とする組織の分離が不完全なものになる。
また、通常はX線管の陰極が1つであり、かつ、その1つの陰極の管電流によって加熱を制御しているため、管電流の高速な切り替えはできず、管電圧を切り替えると、X線管のエミッション特性に応じて管電流が決まってしまう。よって、高い管電圧の場合に、低い管電圧のときよりも大きな管電流が流れることになるが、管電圧の切り替えに対して、管電流の切り替えが必ずしも適切に行われるとは限らない。この実施形態は、デュアルエナジースキャンの撮影精度を向上することを目的とする。
実施形態の1つにかかるX線CT装置は、X線管と、被検体を透過した前記X線を検出する検出器と、前記X線管を前記検出器に対向した状態で一体として保持する保持手段と、前記保持手段を前記被検体の周りを回転させ、前記被検体に対する前記保持手段の回転中心軸方向に沿った相対移動を制御する制御手段と、を備えたX線CT装置であって、前記X線管は、互いに異なる管電圧に設定され、離間して配置され、かつ異なる方向に電子を照射する第1の陰極および第2の陰極と、前記第1の陰極から電子が照射される第1の照射面と前記第2の陰極から電子が照射される第2の照射面とを前記回転中心軸方向に沿って並べて有し、それぞれの照射面から被検体に向けてX線を照射する陽極と、を備え、前記制御手段は、特定の位置において一方の陰極による撮影をさせ、前記保持手段を前記回転中心軸方向に沿って前記第1の照射面と前記第2の照射面の間の長さに相当する距離を相対移動させて、前記特定の位置において他方の陰極による撮影をさせる。
実施形態の1つにかかるX線CT装置は、互いに、異なる管電圧に設定され、離間して配置され、かつ異なる方向に電子を照射する第1の陰極及び第2の陰極と、前記第1の陰極と前記第2の陰極の間に配置されるとともに、前記第1の陰極からの電子を第1の角度で受ける第1の照射面と前記第2の陰極からの電子を前記第1の角度と異なる第2の角度で受ける第2の照射面とを有し、前記第1の照射面及び前記第2の照射面から被検体に向けてX線を照射する陽極と、を有し、前記第1の照射面と前記第2の照射面との距離、前記第1の角度及び前記第2の角度は、少なくとも前記第1の照射面からのX線の照射野と前記第2の照射面からのX線の照射野とは異なるように形成されるX線管と、前記被検体を透過した前記X線を検出する検出器と、を備えた。
本実施形態のX線CT装置のブロック図。 本実施形態のX線発生器のブロック図。 本実施形態のX線管の概略図。 本実施形態のX線管と検出器の概略図。 異なるターゲット角度を有する陽極の詳細拡大図。 本実施形態のX線管からのX線照射の概要を説明する図。 X線照射位置と天板の同期移動制御を説明する概要図。
本発明に係るX線CT装置の実施形態について、添付図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態のX線CT装置のブロック図である。図1に示すX線CT装置1は、スキャナ装置11及び画像処理装置12から構成される。X線CT装置1のスキャナ装置11は、通常は検査室に設置され、被検体(人体)Oの撮影部位に関するX線の透過データを生成するために構成される。一方、画像処理装置12は、通常は検査室に隣接する制御室に設置され、透過データを基に投影データを生成して再構成画像の生成・表示を行なうために構成される。
X線CT装置1のスキャナ装置11は、X線発生器21、検出器22、絞り23、DAS(data acquisition system)24、回転部25、コントローラ26、絞り駆動装置27、回転駆動装置28、天板29、及び天板駆動装置(寝台装置)30を有している。
X線発生器21は、大きくは、X線管31、高電圧電源ユニット32、及びFHC(filament heating circuit)ユニット34(図2に図示)によって構成される。X線管31は、高電圧電源ユニット32から供給された管電圧に応じてX線を検出器22に向かって照射する。X線管31から照射されるX線によって、ファンビームX線やコーンビームX線が形成される。高電圧電源ユニット32は、コントローラ26による制御によって、X線の照射に必要な電力をX線管31に供給する。
検出器22は、チャンネル方向に複数行、スライス方向(列方向)に1列のX線検出素子を有する1次元アレイ型のX線検出器である。又は、検出器22は、マトリクス状、すなわち、チャンネル方向に複数行、スライス方向に複数列のX線検出素子を有する2次元アレイ型の検出器22(マルチスライス型検出器ともいう。)である。検出器22は、X線発生器21のX線管31から照射され、被検体をOを透過したX線を検出する。
絞り23は、絞り駆動装置27によって、X線管31から照射されるX線のスライス方向の照射範囲を調整する。すなわち、絞り駆動装置27によって絞り23の開口を調整することによって、スライス方向のX線照射範囲を変更できる。
DAS24は、検出器22の各X線検出素子が検出する透過データの信号を増幅してデジタル信号に変換する。DAS24の出力データは、画像処理装置12に供給される。
回転部25は、スキャナ装置11の架台(図示しない)に収容され、X線発生器21のX線管31、検出器22、絞り23及びDAS24を一体として保持する。回転部25は、X線管31と検出器22とを対向させた状態で、X線管31、検出器22、絞り23及びDAS24を一体として被検体Oの周りに回転できるように構成されている。このように回転部25は、X線管31を検出器22に対向した状態で一体として保持し、被検体の周りを回転させる。
コントローラ26は、CPU(central processing unit)、及びメモリによって構成される。コントローラ26は、画像処理装置12から入力された制御信号に基づいて、X線発生器21、DAS24、絞り駆動装置27、回転駆動装置28、及び天板駆動装置30等の制御を行なって、エネルギー分布の異なるX線を切り替えながら行なうデュアルエナジースキャン等のスキャンを実行させる。
絞り駆動装置27は、コントローラ26による制御によって、絞り23におけるX線のスライス方向の照射範囲を調整する。回転駆動装置28は、コントローラ26による制御によって、回転部25がその位置関係を維持した状態で空洞部の周りを回転するように回転部25を回転させる。天板29は、被検体Oを載置可能である。
天板駆動装置30は、コントローラ26による制御によって、天板29をz軸方向に沿って移動させる。回転部25の中央部分は開口を有し、その開口部の天板29に載置された被検体Oが挿入される。なお、回転部25の回転中心軸と平行な方向をz軸方向、そのz軸方向に直交する平面をx軸方向、y軸方向で定義する。
被検体Oの各断面はz軸に沿って撮影されるが、このためには回転部25と天板29を相対移動する。上述のように天板駆動装置30により、回転部25をz軸方向には停止させる一方、天板29の移動によりこの相対移動をすることができる。一方で、天板29をz軸方向に静止させ、これに対して回転部25をz軸方向に移動させることにより相対移動をすることもできる。この回転部25のz軸方向の移動は、回転駆動装置28によって実行される。したがって、回転駆動装置28または天板駆動装置30が、回転部25と天板29の間の相対移動を制御する。なお、回転駆動装置28により回転部25を、天板駆動装置30により天板29を、ともに移動させて相対移動させても良い。
X線CT装置1の画像処理装置12は、コンピュータをベースとして構成されており、病院基幹のLAN(local area network)等のネットワークNと相互通信可能である。画像処理装置12は、図示しないが、CPU、メモリ、HDD(hard disc drive)、入力装置、及び表示装置等の基本的なハードウェアから構成される。
画像処理装置12は、スキャナ装置11のDAS24から入力された生データに対して対数変換処理や、感度補正等の補正処理(前処理)を行なって投影データを生成する。また、画像処理装置12は、前処理された投影データに対して散乱線の除去処理を行なう。画像処理装置12は、X線照射範囲内の投影データの値に基づいて散乱線の除去を行なうものであり、散乱線補正を行なう対象の投影データ又はその隣接投影データの値の大きさから推定された散乱線を、対象となる投影データから減じて散乱線補正を行なう。画像処理装置12は、補正された投影データを基に再構成画像を生成する。すなわち、画像処理装置12は、検出器22によって検出されたX線に基づく投影データから、それぞれ画像を再構成する再構成部としての機能を有する。
本実施形態のX線CT装置には、X線管31と検出器22とが一体として被検体の周囲を回転する回転/回転(ROTATE/ROTATE)タイプと、リング状に多数の検出素子がアレイされ、X線管のみが被検体の周囲を回転する固定/回転(STATIONARY/ROTATE)タイプ等様々なタイプがあり、いずれのタイプでも適用可能である。ここでは回転/回転タイプとして説明した。
また、入射X線を電荷に変換するメカニズムは、シンチレータ等の蛍光体でX線を光に変換し更にその光をフォトダイオード等の光電変換素子で電荷に変換する間接変換形と、X線による半導体内の電子正孔対の生成及びその電極への移動すなわち光導電現象を利用した直接変換形とが主流である。
加えて、近年では、X線管31と検出器22との複数のペアを回転リングに搭載したいわゆる多管球型のX線CT装置の製品化が進み、その周辺技術の開発が進んでいる。本実施形態のX線CT装置では、従来からの一管球型のX線CT装置であっても、多管球型のX線CT装置であってもいずれにも適用可能である。ここでは、一管球型のX線CT装置として説明した。
図2は、本実施形態のX線発生器のブロック図である。図2に示すように、X線発生器21のX線管31は、内部が高真空に保持されたX線管外囲器(インサートバルブ)41を有する。インサートバルブ41の素材としては、金属、ガラス、及びセラミック等が挙げられる。X線管31は、インサートバルブ41内に、陽極(アノード)42、陰極(カソード)ユニット43、を封入する。陰極ユニット43は、2つの陰極43a,43bを備える。
陰極ユニット43の陰極43aに真空中で電流を流すと、陰極43aは加熱され、熱電子を放出させる。このとき、陰極43aを基準にして陽極42側に正電圧を与えると、陰極43aから放出された熱電子は正電荷に引かれ陽極42に向かって飛ぶ。その結果、陰極43aから陽極42に向けて電子の流れが生じる。すなわち、陽極42から陰極43aに向かって電流が流れることになる。陰極ユニット43の陰極43bについても陰極43aと同様に作用する。
このように、陰極43aは、第1の管電圧に設定されて熱電子を照射する。陰極43bは、陰極43aに対向する方向に、第1の管電圧と異なる第2の管電圧に設定されて熱電子を照射する。対向する方向とは、陰極43aからの熱電子の放射方向と陰極43bからの熱電子の放射方向が逆向きであるということであり、ベクトルの向きが逆ということを含む。しかし、この2つの方向が逆である以外完全に同じという場合に限定されるわけではなく、相互に接近しあう方向を向いているを意味する。
一方、陽極42は、陰極43aと陰極43bの間に配置されている。そして、放射された両方向からの電子流は、陽極42にそれぞれ衝突する。その衝突により陽極42は、被検体に向けてX線を照射する。
FHCユニット34は、陰極43aに対応するFHC34aと、陰極43bに対応するFHC34bとを備える。FHC34aは、図示しない加熱トランスを備えており、その加熱トランスの2次側が陰極43aの両端と電気的に接続され、FHC34bは、図示しない加熱トランスを備えており、その加熱トランスの2次側が陰極43bの両端と電気的に接続される。なお、FHC34aとFHC34bに交流電源を用いる場合について説明したが、直流電源を用いてもよい。コントローラ26は、FHC34a,34bを介して、所要の管電流を陰極43a,43bにそれぞれ供給して陰極43a,43bをそれぞれ加熱させる。
高電圧電源ユニット32は、2つの高電圧電源32a,32bを備える。デュアルエナジースキャンにおける低い管電圧(管電圧は、陽極と陰極間の電位差を示す。以下同じ)をVLとし、高い管電圧をVHとすると、高電圧電源32aは、電圧VLを出力可能であり、高電圧電源32bは、電圧VH−VLを出力可能である。例えば、デュアルエナジースキャンにおける低い管電圧を80[kV]とし、高い管電圧を140[kV]とする。図2では陽極側を接地しているため、陰極側に高電圧電源32aによって−80[kV]が出力され、高電圧電源32a,32bによって−140[kV]が出力される。
高電圧電源32aのマイナス側出力と、高電圧電源32bのプラス側出力とは電気的に接続され、この接続点が出力端子となり、X線管31の陰極43aに接続される。高電圧電源32aのプラス側出力は、X線管31の陽極42に電気的に接続されると共に、接地される。高電圧電源32bのマイナス側出力は、X線管31の陰極43bに電気的に接続される。X線発生器21では、X線管31の陰極43aには高電圧電源32aから−80[kV]が、陰極43bには高電圧電源32a,32bから−140[kV]がそれぞれ出力される。このように、陽極42、陰極43a、43bには、陽極42と陰極43a、陽極42と陰極43bとの間に独立した別々の管電圧をの印加が可能である。
ここで、X線発生器21によると、スキャナ装置11によるデュアルエナジースキャンにおいて、1ビュー毎に、コントローラ26による制御の下、2つのフィラメントから同時に熱電子を放出し、異なった電圧をかけることができる。その場合、1ビュー毎に、低い管電圧による低いエネルギー分布を有するX線と、高い管電圧による高いエネルギー分布を有するX線を同時に陽極42から発生させることができる。
また、X線発生器21によると、コントローラ26による制御の下、2つのFHC34a,34bを介して2つの陰極43a,43bの各管電流をそれぞれ独立に制御することで、陰極43aの管電流と、陰極43bの管電流とを別々に設定することができる。そこで、図2に示すように、陰極43aの管電圧(80[kV])が、陰極43bの管電圧(140[kV])より低い場合、コントローラ26による制御の下、FHC34aは、陰極43bの管電流より大きくなるように陰極43aの管電流を設定する。
X線発生器21に対するコントローラ26の制御信号(切替信号)は、DAS24にも送られる。画像処理装置12では、異なったエネルギーにより被検体Oを透過したX線を検出したデータから、被検体Oの構成元素の違いを映像化し、例えば、石灰化した組織部と造影剤による血管の像をある程度分離することができる。
図3は、本実施形態のX線管の概略図である。図3は、対向配置された陰極43aと陰極43bの間に陽極42を配置した場合の構成を示す。陽極42は接地されている。陽極42を挟んで互いに対向する陰極43aおよび43bから、それぞれ熱電子が陽極42に放出される。それにより陰極43aおよび43bをそれぞれ向く陽極42の照射面42a、42bに熱電子が照射され、それぞれ照射野130、140の範囲のX線が被検体に向けて照射される。
照射面42aと照射面42bの間は焦点位置差Dにより隔てられる。焦点位置差Dは、熱電子が照射面42a上で照射される位置(焦点位置)と、熱電子が照射面42b上で照射される位置(焦点位置)との間の長さである。焦点位置差Dは、電子流方向における陽極42の幅である。
照射面42aと照射面42bはそれぞれ電子流方向に対して垂直ではなく、X線照射方向を向いて傾いて形成されている。この照射面42aと照射面42bの電子流方向からの傾きがターゲット角度である。照射面42aと照射面42bのX線発生位置はこの焦点位置差Dの分だけ離れ、発生後は図示したようにそれぞれ照射野が広がる。発生したX線は、絞り23を経てX線管31から照射される。
X線は、照射面42aと照射面42bから交互に発生させてそれぞれ検出され、各タイミングの検出結果に基づく画像を生成することによりデュアルエナジースキャンを実現することができるが、両者のタイミングは交互ではなく同時とすることもできる。同時もしくはそれに近いタイミングで撮影をすることにより、デュアルエナジーサブトラクションを実現するときに、その精度を高めることができる。
陽極42に対して、陰極43aと陰極43bにそれぞれ異なる管電圧を与えることができるので、1つのX線管31から異なるエネルギーのX線を出力し、検出することができる。2つの異なった条件のX線を同時に曝射することが可能となるので、デュアルエナジースキャンを実現することができる。また、2つのエネルギーのX線を同時に出力することにより、検出器22で検出した2つのエネルギーのX線からデュアルエナジーサブストラクションが可能となる。
通常のデュアルエナジースキャンでは、陽極、陰極とも単一のものを用いる代わりに、切り替えタイミングで管電圧、管電流を変えなければならないので制御が難しいのに対し、上述の構成により、ディアルエナジーサブストラクションの2つのX線条件を、1つのX線管31で同時に曝射、検出することが可能となる。上述の構成でデュアルエナジースキャンを実現することにより、被検体の構成元素の違いを映像化し、例えば、石灰化した組織部と造影剤による血管の像を十分に分離することができる。
また、管電圧を変化させても照射するX線の量を一定に保つことができるので、十分な診断画質を得ながら被検体のX線被曝を低減することが可能である。このような構成により、X線CT装置は、十分な診断画質を得ながら被検体のX線被曝を低減できる。
図4は、異なるターゲット角度を有する場合のX線管の概略図である。図3の場合と同様に、陽極42は、陰極43aから熱電子が照射される照射面42aと陰極43bから熱電子が照射される照射面42bを有する。照射面42aは、陰極43aからの熱電子の照射に対して第1のターゲット角度を有し、照射面42bが陰極43bからの熱電子の照射に対して第1のターゲット角度と異なる第2のターゲット角度を有する。
つまり、照射面42a側を第1のターゲット角度とする。第1のターゲット角度は、陰極43aからの熱電子の照射方向(熱電子の進行方向)に直交する面と照射面42aにより形成される。一方、照射面42b側を第2のターゲット角度とする。第2のターゲット角度は、陰極43bからの熱電子の照射方向(熱電子の進行方向)に直交する面と照射面42bにより形成される。
照射面42aと照射面42bは、それぞれ加速された熱電子の進行方向を向いているが、その向きは完全に一致しているわけではなく、X線の照射方向にわずかに傾いている。この傾きがターゲット角度(アングル)である。言い換えると、各照射面のターゲット角度は、熱電子の進行方向に垂直な面と、各照射面のなす角に等しい。
ターゲット角度が異なるので、同じ焦点寸法でも最大照射野や最大X線出力が異なり使い分けることが可能となる。したがって、用途によりX線の照射野を変更することができる。また、それぞれのX線を検出する検出器を配置することで、異なった条件のX線を検出が可能となる。また、グリットを置くことでさらに精度よくエネルギーの異なるそれぞれのX線を同時に検出することができる。
図5は、異なるターゲット角度を有する陽極の詳細拡大図である。左側からは照射面42aに熱電子が入射する。照射面42aへの入射によりX線が発生し照射野130が形成され、被検体へと照射される。一方で右側からは照射面42bに熱電子が入射する。照射面42bへの入射によりX線が発生し照射野140が形成され、被検体へと照射される。
ここで、図5に示したように、照射面42aに形成されるターゲット角度をθ1とし、照射面42bに形成されるターゲット角度をθ2とする。第1のターゲット角度θ1と第2のターゲット角度θ2は異なる。具体的には陽極42の形状を、第1のターゲット角度θ1が第2のターゲット角度θ2よりも大きく、たとえばθ1=12度、θ2=8度となるようにすることができる。第1のターゲット角度θ1および第2のターゲット角度θ2は、それぞれ8度〜12度の間で形成される。逆に、陽極42を第1のターゲット角度θ1よりも第2のターゲット角度θ2が大きい形状とすることもできる。
このように非対称形状とすることで、デュアルエナジースキャンの一方のスキャン、たとえば高エネルギーの熱電子を、小さいターゲット角度のターゲット面に照射する一方で、もう一方の低エネルギーの熱電子を大きいターゲット角度のターゲット面に照射することができる。
電子流が衝突してX線を発生させる部分がターゲットの焦点である。この焦点は小さいほど半影が小さくなり、X線撮影画像の解像度が高くなる。焦点サイズを決定する要因の1つはターゲット角度である。陽極の角度が小さくなればなるほど実効焦点サイズの1辺を小さくすることができる。その一方で、焦点が小さくなるほどX線の発生に伴い、焦点の単位面積当たりの発熱量が多くなるので、焦点は適切な大きさとすることが求められる。一方のターゲット角度を小さくする一方で、他方のターゲット角度を比較的大きくすることにより、両者のバランスをとることができる。
図6は本実施形態のX線管からのX線照射の概要を説明する説明図である。図3〜5を用いて説明したように、陽極42の照射面42a、42bからそれぞれX線が照射される。照射野130、140の範囲のX線はそれぞれ被検体Oに向かう。そしてそれぞれ被検体Oを透過し、検出器22で検出される。
図示したように、ターゲット角度の大きな照射面から照射されたX線の照射野130は、ターゲット角度の小さな照射面から照射されたX線の照射野140に比べて大きく形成される。大きい照射野130のX線は強度が小さくなり、逆に小さい照射野140のX線は強度が大きくなる。ターゲット角度が小さい方が強いX線の出力が可能であるのに対し、ターゲット角度が大きいことで照射野が広く取れる。この場合非対称形状になるので、デュアルエナジーサブストラクションとして使用しなくても、用途によって片方の照射面だけを使用することも可能である。
照射面42a、42bに形成されるターゲット角度の違いは、図5に示したように比較的大きなものとはならない。しかし図6に示したように、双方から照射されたX線が被検体Oを透過して検出器22に到達する時点では、照射野130と照射野140の広がりの違いに差が生じる。よって、検出器22によって検出されるX線の範囲はそれぞれ違ったものとなる。このように両者の照射野が異なるとともにX線強度も異なるので、照射面42a、42bからのそれぞれのX線を異なる用途に用いることができる。
図7は、X線照射位置と天板の同期移動制御を説明する概要図である。すでに単一の陽極を用いたX線CT装置によるデュアルエナジースキャンについて説明した。ここで、デュアルエナジースキャンの精度を向上させるために、2つの照射面からの照射タイミングと照射位置を同期させる構成について以下の通り説明する。ここでは2つの照射面のターゲット角度を同一とした場合について説明する。
ヘリカルスキャンに際し、図1を用いて説明したように、回転部25と天板29を体軸に沿って相対移動させる。回転部25は相対的に図7の左方向に、天板29は相対的に図7の右方向に移動する。相対移動は回転部25と天板29のどちらの移動により行ってもよいが、いずれにしても両者の間で相対移動するものとして説明する。移動の前後関係を示すために、参照符号としてvとwを付加しているが、両者は位置が移動した以外は同じである。
まず、ヘリカルスキャン中のあるタイミングで、回転部25vと天板29vの配置の被検体Oに対して、陽極42vからX線210が照射される。そして、照射されたX線210に基づき画像が生成される。そして次のタイミングまで相対移動し、回転部25wと天板29wの配置となる。この配置で、被検体Oに対して陽極42wからX線220が照射される。そして、照射されたX線220に基づき画像が生成される。
ここで、X線210とX線220は同一の陽極42から照射されているが、図3に関して説明したように、焦点位置差Dだけ離れた別の位置から照射されている。図3を参照すると、X線210は例えば照射面42aから、X線220は例えば照射面42bから照射される。照射面42aと照射面42bの位置は、図3について説明したように焦点位置差Dだけ異なる。照射面42aと照射面42bは異なる位置にあるので、発生するX線の位置もその分ずれる。したがって、この距離の分だけ被検体Oの照射位置がずれる。こうしたずれを補正すべく、上述のように回転部25と天板29を相対移動させる。すなわち、回転部25と天板29の相対位置をこの焦点位置差Dだけ移動させる。
回転駆動装置28または天板駆動装置30は、相対移動の速度を制御することにより、このX線210の照射タイミングからX線220の照射タイミングまでの間に、この焦点位置差Dだけ相対位置を移動させる。つまり、X線210が照射されてからX線220が照射されるまでの時間をtとすると、この時間tの間に回転部25と天板29を焦点位置差Dの距離だけ相対移動させる。つまり、相対移動の速度はD/tとなる。それにより、陽極42vからのX線210の照射位置と、陽極42wからのX線220の照射位置が相対的に一致する。すなわち、X線210とX線220により被検体Oの同じ位置が照射される。
このように、回転部25は、上述の回転動作の他、回転中心軸方向に、天板に対するX線管31と検出器22の組の相対移動を制御する。そしてこの相対移動により、回転部25は、連続撮影するときの一方の陰極による撮影から他方の陰極による撮影までの撮影間隔の間の相対移動の距離を、照射面42aと照射面42bの間の長さに一致させる。
上述の同期処理は、2つのX線により同じ位置を照射するための処理なので、別の移動距離により、同じ目的を達成しても良い、例えば、上述の例では、時間tの間の相対移動距離をDとしたが、これをD/2としてもよい。相対移動距離は、0、D/2、D、3D/2…となっていく。このうち、相対移動距離が0とDのもの、D/2と3D/2のものをそれぞれ組み合わせることにより、各X線の間の距離がDとなり、焦点位置差Dと一致して、同期を実現することができる。相対移動距離をDからD/2にして説明したが、D/3、D/4…としても同様である。
このように、回転部25は、連続撮影するときの一方の陰極による撮影から他方の陰極による撮影までの撮影間隔の間の相対移動の距離の整数倍を、照射面42aと照射面42bの間の長さに一致させることもできる。
特にデュアルエナジーサブトラクションの場合、差分をとる両画像に違いがあると、解像度の低下を招くことになるが、上述のように同期を取ることにより、撮影位置をより正確に一致させることができる。それにより、デュアルエナジーサブトラクションの場合の撮影解像度を向上させることができる。すなわち、焦点位置のズレ幅をヘリカルスキャンのピッチ幅に合わせて相対移動するので、解像度を向上させることができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載されたその均等の範囲に含まれる。
12 画像処理装置
21 X線発生器
24 DAS
31 X線管
32 高電圧電源ユニット
32a,32b,32c,32d 高電圧電源
34 FHCユニット
34a,34b FHC
41 インサートバルブ
42 陽極
42a,42b 照射面
43 陰極ユニット
43a,43b 陰極
130,140 照射野

Claims (7)

  1. X線管と、被検体を透過した前記X線を検出する検出器と、前記X線管を前記検出器に対向した状態で一体として保持する保持手段と、前記保持手段を前記被検体の周りを回転させ、前記被検体に対する前記保持手段の回転中心軸方向に沿った相対移動を制御する制御手段と、を備えたX線CT装置であって、
    前記X線管は、
    互いに異なる管電圧に設定され、離間して配置され、かつ異なる方向に電子を照射する第1の陰極および第2の陰極と、前記第1の陰極から電子が照射される第1の照射面と前記第2の陰極から電子が照射される第2の照射面とを前記回転中心軸方向に沿って並べて有し、それぞれの照射面から被検体に向けてX線を照射する陽極と、を備え、
    前記制御手段は、
    特定の位置において一方の陰極による撮影をさせ、前記保持手段を前記回転中心軸方向に沿って前記第1の照射面と前記第2の照射面の間の長さに相当する距離を相対移動させて、前記特定の位置において他方の陰極による撮影をさせることを特徴とするX線CT装置。
  2. 前記制御手段は、
    前記保持手段を前記回転中心軸方向に沿って前記第1の照射面と前記第2の照射面の間の長さを整数で除算した距離ずつ、順次、相対移動させることを特徴とする請求項1に記載のX線CT装置。
  3. 互いに、異なる管電圧に設定され、離間して配置され、かつ異なる方向に電子を照射する第1の陰極及び第2の陰極と、前記第1の陰極と前記第2の陰極の間に配置されるとともに、前記第1の陰極からの電子を第1の角度で受ける第1の照射面と前記第2の陰極からの電子を前記第1の角度と異なる第2の角度で受ける第2の照射面とを有し、前記第1の照射面及び前記第2の照射面から被検体に向けてX線を照射する陽極と、を有し、前記第1の照射面と前記第2の照射面との距離、前記第1の角度及び前記第2の角度は、少なくとも前記第1の照射面からのX線の照射野と前記第2の照射面からのX線の照射野とは異なるように形成されるX線管と、
    前記被検体を透過した前記X線を検出する検出器と、
    を備えたことを特徴とするX線CT装置。
  4. 前記第1の陰極と第2の陰極とを結ぶ線上に前記第1の照射面および第2の照射面が配置されており、
    前記第1の角度は、前記線に直交する面と前記第1の照射面により形成される角度であり、前記第2の角度は、前記線に直交する面と前記第2の照射面により形成される角度である、ことを特徴とする請求項3に記載のX線CT装置。
  5. 前記第1の度および前記第2の度は、それぞれ8度〜12度の間にあって、互いに異なることを特徴とする請求項3又は4に記載のX線CT装置。
  6. 前記検出器によって検出されたX線に基づく投影データから、それぞれ画像を再構成する再構成手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のX線CT装置。
  7. 前記異なる管電圧は同時に印加可能にされており、前記第1の陰極による撮影と前記第2の陰極による撮影が同時に行われることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のX線CT装置。
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