JP5822268B2 - 膝装具 - Google Patents

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Description

本発明の実施形態は、歩行など膝の曲げ伸ばしにおける膝関節痛を緩和するための膝関節用の膝装具に関する。
膝関節は、年齢を重ねると、大腿骨の内側顆及び外側顆と、脛骨の内側顆及び外側顆、並びにこれらの間の半月が磨耗し、膝の曲げ伸ばしの際に膝関節痛が生じることがある。このような場合、痛い方の膝をかばいながら歩くなどにより、骨格に変形をきたすことにもなりかねない。また痛みを和らげるために体重を偏らせることによって全身のバランスが崩れ、その他の関節にも負担がかかる。
膝関節の痛みを緩和するために、膝に掛かる体重の負担を軽減するように工夫された膝用の関節保護具(特許文献1)、膝痛防止ベルト(特許文献2)、簡易膝関節免荷具(特許文献3)等、様々なものが知られている。
特許文献1に記載された間接保護具の場合、膝関節を伸展させる方向に上部金具と下部金具が伸ばされると、付勢スプリングが上部金具と下部金具を引き離すように作用する。これによって、上部金具が取り付けられた大腿部と下部金具が取り付けられた下腿部とを引き離し、関節部分が擦れて痛むのを防止しようとしている。
特許文献2に記載された膝痛防止ベルトの場合、大腿部と下腿部とにそれぞれ取り付けられるコルセットの間に棒状のばねを装着し、コルセットの両端に引っ張ったゴムテープを掛け渡している。
特許文献3に記載された簡易膝関節免荷具の場合、大腿部と下腿部に巻かれる帯を膝関節の内側および外側にパイプ状の弾性体で連結している。
実開昭63−38511号公報 実用新案登録第3138802号公報 特開2001−314431号公報
しかしながら、膝関節において、屈曲及び伸展させるときの回動中心となる軸は、1か所に定まらず、前後、上下に移動するのみならず、回旋もする。したがって、大腿部と下腿部を一つの軸を中心として回動するヒンジで連結するような構造の補助具では、膝関節の動きと合わないため、快適な位置にあわせることが難しく歩きづらいとともに、大腿部と下腿部に固定した補助具がずれたりすることもある。そのため、膝関節に掛かる体重を軽減する機能が十分に発揮されない。
膝関節の動きを補助するために、特許文献1に記載された関節保護具や特許文献2に記載された膝痛防止ベルトではコイルスプリングや棒状のバネが採用され、特許文献3に記載された簡易膝関節免荷具ではパイプ状の弾性体が採用されている。しかし、歩行運動において膝関節に係る体重を軽減できる程度に剛性を有したバネあるいは弾性体は、膝関節の屈伸動作の妨げとなり、非力な高齢者にとってはわずらわしいだけである。
また、複雑なリンク機構を用いて膝関節の動きをできるだけ再現しようとする装具も存在する。しかし、この種の装具は、膝関節の靭帯を損傷した場合などのように、膝を屈伸させるときの本来の関節の動きからずれないように拘束することを目的としており、各個人に合わせた特別注文であることが多く、高価なものになってしまう。
そこで、本発明は、歩行中に膝関節に加わる体重を簡単な構造で軽減する膝装具を提供する。
本発明に係る膝装具は、上部支持体と上部ステイと第1のベルトと下部支持体と下部ステイと第2のベルトと弾性体と緩衝材とを備える。上部支持体は、大腿部に添えられる。上部ステイは、上部支持体に固定され、膝関節の側部に向かって延びている。第1のベルトは、上部支持体を大腿部に保持する。下部支持体は、下腿部に添えられる。下部ステイは、下部支持体に固定され、膝関節の側部に向かって延びている。第2のベルトは、下部支持体を下腿部に保持する。弾性体は、膝関節の側部に配置され、後方で折り返され側面U字形に形成された湾曲部を有し、上部ステイの下端および下部ステイの上端を連結する。緩衝材は、膝関節の前方寄りに配置され、上部ステイおよび下部ステイが直線状に並ぶ状態で弾性体の間に挟まれる。
本発明に係る膝装具によれば、上部支持体が装着された大腿部と下部支持体が装着された下腿部との相対距離が上部ステイと下部ステイと弾性体とによって保持され、かつ、膝関節がほぼ真っ直ぐに伸ばされた状態で緩衝材が弾性体の間に挟まれることで、膝関節に加わる利用者の体重を軽減することができる。緩衝材は、膝関節が曲げられている間は、上部ステイ側または下部ステイ側の弾性体に取り付いており、利用者が膝関節を曲げる動作を妨げることはない。弾性体は、膝関節の側部に配置され、後方で折り返された湾曲部を有しており、上部ステイおよび下部ステイを連結する。この弾性体は、膝関節の曲げ伸ばしの動作の妨げにならない程度に十分な柔軟性を有しており、したがって、膝関節の複雑な動きにも柔軟に追随し得る。
また、上部ステイおよび下部ステイが直線状に並ぶ方向に緩衝材の寸法を調整できる発明に係る膝装具、または、弾性体の湾曲部から緩衝材までの距離を変える調整機構をさらに備える発明に係る膝装具によれば、利用者の体形および膝関節の動作に合わせて好ましい状態にセッティングすることが容易である。
さらに、上部支持体、上部ステイ、下部支持体、下部ステイ、弾性体を膝関節の内側部および外側部の両側に配置し、緩衝材は、少なくとも内側部の弾性体に取り付けるか、内側部および外側部の両側の弾性体に取り付ける発明に係る膝装具によれば、膝関節の横方向の負荷を緩和することができる。特に、膝関節の内側顆が磨耗しやすいので、緩衝材を少なくとも内側部の弾性体に取り付けることで、膝関節に生じる痛みの大半を解消することができる。したがって、内側部の緩衝材を外側部の緩衝材よりも寸法を大きくしたり硬くしたりすることは、膝関節の痛みを解消する効果を促進する。
本発明に係る第1の実施形態の膝装具として右脚用のものを示す斜視図。 図1に示した膝装具の内側用および外側用を左右に並べて示す平面図。 図1に示した膝装具を着用した右脚を内側から示す側面図。 図3中のF4−F4線に沿う膝装具の断面図。 本発明に係る第2の実施形態の膝装具の調整機構の周辺を示す断面図。 図5に示した調整機構の分解斜視図。 本発明に係る第3の実施形態の膝装具として右脚用のものを示す側面図。 本発明に係る第4の実施形態の膝装具として右脚用のものを示す側面図。 図8に示した膝装具を正面から見たときの断面図。
本発明に係る第1の実施形態の膝装具1について、図1から図4を参照して説明する。なお、説明の便宜上、膝装具1が利用者に着用された状態で、空間における方向について利用者を基準に、「右」、「左」、「前」、「後」、「上」、「下」、「内側」、「外側」をそれぞれ定義する。図1に示す膝装具1は、右脚Mの膝関節M1を中心に、大腿部M2から下腿部M3にかけて装着される。左脚に装着される左脚用の膝装具は、図1に示す右脚M用の膝装具1と左右対称に作られる。この膝装具1は、上部支持体11と、上部ステイ12と、第1のベルト13と、下部支持体14と、下部ステイ15と、第2のベルト16と、弾性体17と、緩衝材18とを備える。
上部支持体11は、大腿部M2の内側および外側にそれぞれ1つずつ添えられる。内側および外側の上部支持体11は、大腿部M2の外形に沿う曲面にそれぞれ形成されている。この上部支持体11は、熱可塑性の樹脂で形成され、ヒータなどで加熱することで簡単に利用者の大腿部M2にフィットさせることができる。上部支持体11は、大腿部M2に接する内面に低反発素材などのスポンジ111が貼り付けられている。
なお、上部支持体11およびその内面に貼り付けられるスポンジ111は、肌に直接触れる、あるいは、衣類の上から、長時間に亘って装着されることを考慮して、通気性、抗菌性に優れた材質のものを採用するだけでなく、アレルギーなどに配慮された材質を選択することが好ましい。通気性を良くするために、強度を低下させない範囲で上部支持体11に多数の孔を設けてもよい。
上部ステイ12は、各図に示すように、上部支持体11に2本ずつ取り付けられ、膝関節M1の側部に向かって上部支持体11の下縁よりも下方に延びている。上部ステイ12は、軽量な金属、例えばアルミニウム合金やチタニウム合金で作られる以外に、繊維強化プラスチック(FRP)などで作られていてもよい。
第1のベルト13は、上部支持体11の縁に形成された上下2段のスロット112にそれぞれ通され、上部支持体11を大腿部M2に保持する。第1のベルト13は、伸縮性の有る素材で造られ、長さを調節できるように端部13aや中間部13bに取り付けられる面ファスナ131によって固定される。例えば、図2に示すように膝装具1の内側用ユニット1Aおよび外側用ユニット1Bが脚Mの後側でつながった状態となるように第1のベルト13を通し、図1に示すように脚Mの前側で端部13aを重ね合わせて留めている。
また、図4に示すように、膝装具1の内側用ユニット1Aおよび外側用ユニット1Bを脚Mの前側と後側とにおいて、別々に、第1のベルト13で繋ぎ合わせてもよい。前側と後側とで第1のベルト13を分けていると、脚Mに膝装具1を装着する場合に、前側の第1のベルト13の締り具合と、後側の第1のベルト13の締り具合を微調整しやすく、また、一度設定したのちは、後側の第1のベルト13を外すことなく前側の第1のベルト13を操作するだけで、膝装具1の装着と取り外しを容易に行なえる。
第1のベルト13を上部支持体11に留める、あるいは第1のベルト13どうしを留めるための面ファスナ131の代わりに、ホックやスナップ、ボタン、バックル、クイックファスナなど、またはこれらを併用してもよい。さらにベルトの代わりに紐を掛け渡してもよい。
下部支持体14は、下腿部M3の内側および外側にそれぞれ1つずつ添えられる。内側および外側の下部支持体14は、下腿部M3の外形に沿う曲面にそれぞれ形成されている。下部支持体14は、上部支持体11と同様に、熱可塑性の樹脂で形成され、ヒータなどで加熱することで簡単に利用者の下腿部M3にフィットさせることができる。この下部支持体14は、下腿部M3に接する内面に低反発素材などのスポンジ141が貼り付けられている。下部支持体14およびその内面に貼り付けられるスポンジ141は、上部支持体11と同様に、肌に直接触れる、あるいは、衣類の上から、長時間に亘って装着されることを考慮して、通気性、抗菌性に優れた材質のものを採用するとともに、アレルギーなどに配慮された材質を選択することが好ましい。また、通気性を良くするために、強度を低下させない範囲で下部支持体14に多数の孔を設けてもよい。
下部ステイ15は、各図に示すように2本ずつ下部支持体14に取り付けられ、膝関節M1の側部に向かって下部支持体14の上縁よりも上方に延びている。下部ステイ15は、上部ステイ12と同様に、軽量な材料によって作られている。なお、上部支持体11と上部ステイ12、下部支持体14と下部ステイ15は、それぞれFRPによって一体成形されていてもよい。
第2のベルト16は、下部支持体14の縁に形成された上下2段のスロット142にそれぞれ通され、下部支持体14を下腿部M3に保持する。第1のベルト13と同様に、第2のベルト16も伸縮性の有る素材で造られ、端部16aや中間部16bに取り付けられる面ファスナ161によって固定される。第2のベルト16もまた、図2に示すように膝装具1の内側用ユニット1Aおよび外側用ユニット1Bが脚Mの後側でつながった状態となるように通され、図1に示すように脚Mの前側で端部16aを重ね合わせて留められる。そして、図4に示した第1のベルト13と同様に、膝装具1の内側用ユニット1Aおよび外側用ユニット1Bを脚Mの前側と後側とで別々に繋ぐように、第2のベルト16を設けてもよい。第2のベルト16を2つに分けていることによって、脚Mに膝装具1を装着する場合に、微調整がしやすくまた、装着と取り外しの際の操作性が向上する。
弾性体17は、図1および図3に示すように膝関節M1の側部に配置され、後方で折り返された湾曲部17aを有しており、上部ステイ12の下端および下部ステイ15の上端を互いに連結する。具体的には、弾性体17は、図2および図3に示すように膝関節M1の後方側で折り返されたU字形に形成され、前方に向かって開いた状態である。弾性体17は、金属製のバネ材を採用してもよいし、繰り返し曲げに優れた樹脂製の材料を採用してもよい。この弾性体17は、膝関節M1の曲げ伸ばしの妨げにならない程度に十分な柔軟性を有しており、したがって、面内方向の曲げ以外に、面外方向の曲げや捩れなど、膝関節M1を屈伸させるときの複雑な動きにも柔軟に追随して変形する。
緩衝材18は、膝関節M1の側部の前方寄りに配置されている。本実施形態では、U字形に折り曲げられた弾性体17の間で、湾曲部17aから離れた下部支持体14側の端部17bに固定されている。この緩衝材18は、図3に示すように、上部ステイ12および下部ステイ15が直線状に並ぶ状態、すなわち膝装具1が脚Mに装着されて膝関節M1が伸ばされた状態で弾性体17の端部17b間に挟まれる。
そして、緩衝材18の取付位置は、膝関節M1を伸ばしたときに上部支持体11と下部支持体14とが離間するように、すなわち、大腿部M2と下腿部M3とを離間させるように作用する位置に設定される。大腿部M2と下腿部M3が実際に離間しなくても、脚Mを伸ばしたときに膝関節M1に加わる荷重を少しでも軽減するように作用すればよい。
この緩衝材18は、弾力性を有した合成ゴムやウレタンなどの材料で作られ、弾性体17の端部17bによって挟まれた場合に、弾性体17の端部17bがそれ以上接近しない程度の十分な硬さを有している。緩衝材18の大きさや硬さなどは、利用者の体重や膝関節M1の状態に合わせて最適なものが選択される。
以上のように構成された膝装具1は、図1に示すように、上部支持体11と上部ステイ12と下部支持体14と下部ステイ15と弾性体17と緩衝材18とで構成される内側用ユニット1Aおよび外側用ユニット1Bが、膝関節M1に対して内側部および外側部の両側に装着され、上部支持体11どうしは第1のベルト13で大腿部M2に、下部支持体14どうしは第2のベルト16で下腿部M3に、それぞれ固定される。
図3に示すように脚Mを真っ直ぐに伸ばして立った姿勢になった場合、利用者の体重は、上部支持体11および上部ステイ12から弾性体17および緩衝材18を介して下部ステイ15および下部支持体14へと膝装具1によって分散されるので、膝関節M1に加わる荷重を軽減することができる。
膝関節M1における大腿骨および脛骨の内側顆および外側顆や半月などの磨耗は、外側顆側よりも内側顆側のほうが顕著に生じる傾向が分かっている。内側顆に負荷が掛かり続けることによって変形を伴うようになると、内反膝と呼ばれる、いわゆる「O脚」になってしまい、膝関節M1の可動域が狭まり、歩行も困難になる。したがって、内側顆側に加わる関節面の圧力を軽減することで、内反膝になることを予防することが重要である。
そこで、本実施形態の膝装具1は、少なくとも膝関節M1の内側に緩衝材18を配置する。また、外側顆に加わる荷重よりも内側顆に加わる荷重を積極的に軽減するために、上部ステイ12及び下部ステイ15が直線状に並ぶ方向、すなわち弾性体17の端部17bによって挟まれる方向に、内側部に配置される緩衝材18の寸法は、外側部に配置される緩衝材18の寸法よりも大きくする。膝関節M1を真っ直ぐに伸展させた場合、内側部に配置された緩衝材18によって上部支持体11と下部支持体14を離間させる方向に反力を受ける。その結果、内側用ユニット1Aにより多くの体重が伝達し、つまり、内側顆にかかる負担が軽減されることとなる。
膝関節M1の内側部に配置される緩衝材18の寸法を外側部に配置される緩衝材18よりも大きくする代わりに、内側部の緩衝材18を外側部の緩衝材18よりも硬くしてもよい。内側部の緩衝材18のほうが硬いことによって、体重が緩衝材18に加わったときの緩衝材18の扁平量が小さくなるので、内側部の緩衝材18の寸法を大きくしたときと同様の効果を得られる。
本発明に係る第2の実施形態の膝装具1について、図5および図6を参照して説明する。各図中において第1の実施形態の膝装具1と同じ機能を有する構成は、第1の実施形態の膝装具1の構成と同じ符号を付し、その説明は、第1の実施形態の対応する記載を参酌することとする。また、第2の実施形態において説明されない膝装具1の全体の構成は、第1の実施形態の膝装具1と同じであるので、対応する記載および図面を参酌することとする。
第2の実施形態の膝装具1は、図5に示すように、上部ステイ12と弾性体17、弾性体17と下部ステイ15のそれぞれ接合部分の構造、並びに、弾性体17の端部17bに配置される緩衝材18の位置を微調整するための調整機構19を有している点が、第1の実施形態の膝装具1と異なる。
膝装具1の弾性体17の周辺部分を図5に示す。上部ステイ12の下端は、弾性体17の端部17bに外挿する上部鞘121に溶接固定されている。溶接する代わりに上部鞘121に連結片を取り付け、この連結片に上部ステイ12の下端をボルトやピンなどで連結してもよい。上部鞘121は、弾性体17の端部17bに対して止めネジ122によって固定される。
下部ステイ15の上端は、上部ステイ12の下端と同様に、弾性体17の端部17bに外挿する下部鞘151に溶接固定されている。溶接する代わりに下部鞘151に連結片を取り付け、この連結辺に下部ステイ15の上端をボルトやピンなどで連結してもよい。下部鞘151は、弾性体17の端部17bに対して止めネジ152によって固定される。
第2の実施形態の膝装具1は、上部鞘121および下部鞘151を弾性体17の端部17bに対して端部17bの延びる方向にスライドさせることで、弾性体17の湾曲部17aに対して上部ステイ12の下端および下部ステイ15の上端の相対位置を変化させることができる。大腿部M2や下腿部M3の太さや膝関節M1との相対位置に応じて上部鞘121および下部鞘151を弾性体17に対して移動させることで、膝装具1の見かけ上の回動中心位置を調整する。
調整機構19は、図5および図6に示すように、ブラケット191とアンカープレート192と中間固定ボルト193とロックナット194とを備える。ブラケット191は、図6に示すように下部鞘151の上部に隙間を空けてビスで取り付けられており、弾性体17の端部17bの延びる方向、すなわち前後方向に沿うスロット191aを有している。アンカープレート192は、下部鞘151の上面とブラケット191との間に挿入される。中間固定ボルト193は、ブラケット191のスロット191aよりも大きい直径のディスク部193aと、そこから上下に延びるネジ部193bを有している。ディスク部193aから下方に延びるネジ部193bは、ブラケット191のスロット191aを通してアンカープレート192ネジ穴と締結される。
中間固定ボルト193のディスク部193aから上方へ延びるネジ部193bは、緩衝材18の底部に埋設されたナットと螺合する。ロックナット194は、緩衝材18とディスク部193aとの間に螺合されている。ディスク部193aから緩衝材18までの距離は、ネジ部193bと螺合する量で調整し、その位置を維持するためにロックナット194によって固定する。
上記の構成の調整機構19を備える膝装具1において、スロット191aの長さの範囲内において、中間固定ボルト193とアンカープレート192との締結位置を変えることで、調整機構19は、弾性体17の湾曲部17aから緩衝材18までの距離を調整する。また、中間固定ボルト193のネジ部193bに対する螺合量を変えることで、調整機構19は、緩衝材18の高さ、すなわち上部鞘121が緩衝材18に当接する位置を調整する。
このように、調整機構19を備える膝装具1は、上部ステイ12および下部ステイ15が直線状に並ぶ方向、すなわち緩衝材18を弾性体17の端部17bで挟む寸法、および、弾性体17の端部17bの延びる方向、すなわち弾性体17の湾曲部17aから緩衝材18までの距離のそれぞれについて、緩衝材18の位置を微調整することができる。
したがって、膝装具1の上部支持体11および下部支持体14を脚Mに固定した後で、緩衝材18の位置を調整することができる。また、上部ステイ12および下部ステイ15に対して弾性体17が上部鞘121および下部鞘151を介して連結されているので、弾性体17の湾曲部17aの位置も調整できる。
膝装具1は、利用者が自ら脚Mに装着したり外したりするのであるから、位置や角度のずれは必ず生じ、毎回同じように装着できるとは限らない。この膝装具1は、弾性体17の湾曲部17aおよび緩衝材18の位置をそれぞれ微調整できる。したがって、脚Mに装着した膝装具1の位置が多少ずれていても、膝装具1を装着した後で湾曲部17aや緩衝材18の位置を微調整することで、膝関節M1に対して理想的な状態に簡単にあわせることができる。
本発明に係る第3の実施形態の膝装具1について、図7を参照して説明する。図7において第1の実施形態の膝装具1と同じ機能を有する構成には第1の実施形態の膝装具1の構成と同じ符号を付し、その説明は、第1の実施形態の対応する記載を参酌することとする。第3の実施形態の膝装具1において、内側用ユニット1Aと外側用ユニット1Bとは、脚Mを中心に左右対称に配置されている点を除いて同じ構成である。
図7に示す膝装具1は、右脚Mの大腿部M2から踵部M4までの範囲に装着されている。左脚に装着される左脚用の膝装具は、図7に示す右脚M用の膝装具1と左右対称に作られる。図7は、右脚Mに装着された膝装具1の内側用ユニット1Aを示している。膝装具1は、上部支持体11と、上部ステイ12と、第1のベルト13と、下部ステイ15と、弾性体17と、緩衝材18と、底部支持体20とを備える。この膝装具1は、下部支持体14と第2のベルト16を有していない代わりに、底部支持体20を備えている。
底部支持体20は、踵部M4に添えられるカップ201と、カップ201の下を回って脚Mの踝部M5を超える高さまで延びた受部材202とを備えている。内側に延びた受部材202の連結部202Aは、内側用ユニット1Aの下部ステイ15の下端に回動可能に連結され、外側に延びた受部材202の連結部202Bは、外側用ユニット1Bの下部ステイ15の下端に回動可能に連結されている。この底部支持体20によって、内側用ユニット1Aと外側用ユニット1Bとが接続される。
第3の実施形態の膝装具1は、底部支持体20を備えるので、大腿部M2に掛かる利用者の体重の少なくとも一部を上部支持体11、上部ステイ12、弾性体17、緩衝材18、下部ステイ15、底部支持体20を介して、地面へ伝える。つまり、その分だけ膝関節M1に加わる荷重が軽減される。そして、膝関節M1が真っ直ぐに伸ばされた場合、第1の実施形態と同様に緩衝材18が弾性体17の端部17bに挟まれた状態になることで、利用者の体重が直線上に並んだ上部ステイ12から下部ステイ15を介して底部支持体20に伝わる。
この膝装具1は、図7に示すように構成する部品点数が少なく簡素であるため、底部支持体20のカップ201が入る大きさの靴を履くこともできるし、膝装具1を装着した上からズボンPをはくこともできる。なお、脚Mを曲げ伸ばしする際に下部ステイ15が下腿部M3に対して安定しないようであれば、第1の実施形態のように下部支持体14と第2のベルト16を取り付けて下腿部M3に固定すればよい。
本発明に係る第4の実施形態の膝装具1について、図8および図9を参照して説明する。図8および図9において第1および第3の実施形態の膝装具1と同じ機能を有する構成には第1および第3の実施形態の膝装具1の構成と同じ符号を付し、その説明は、第1および第3の実施形態の対応する記載を参酌することとする。
第4の実施形態の膝装具1は、上部支持体11と、上部ステイ12と、第1のベルト13と、下部支持体14と、下部ステイ15と、第2のベルト16と、弾性体17と、緩衝材18と、底部支持体20と、中間回動ヒンジ21とを備えている。
上部支持体11は、弾性体17からの距離を調整できるように上部ステイ12に対して取り付けられている。この実施形態では、図8に示すように上部ステイ12に長孔125を形成し、図9に示すようにこの長孔125に通されるスタッドボルト115を上部支持体11に配置している。長孔を上部支持体11に設け、内側から長孔に通されたボルトを上部ステイ12に固定してもよい。
下部支持体14は、上部支持体11と同様に弾性体17からの距離を調整できるように下部ステイ15に対して取り付けられている。また下部ステイ15は、弾性体17から底部支持体20までの間の距離を調整できるように途中で連結されている。この実施形態では、図8に示すように下部ステイ15に長孔155を形成し、この長孔155に通されるスタッドボルト145を下部支持体14に配置している。
また、図9に示すように、第4の実施形態の膝装具1は、下部ステイ15が下腿部M3の外形に沿うのではなく、弾性体17から踝部M5の位置までほぼ真っ直ぐに、内側用ユニット1Aの下部ステイ15と外側用ユニット1Bの下部ステイ15とが平行に配置されるように形成される。これに伴い、下部支持体14は、脚Mの外径に合わせて形成された把持部14aから下部ステイ15に届くように膨出させた取付座14bを有している。この実施形態において、内側用ユニット1Aおよび外側用ユニット1Bのそれぞれ下部支持体14は、膝関節M1の裏側を回るように配置される第3のベルト16Aで連結されている。この第3のベルト16Aは、脚Mを伸ばしたときに、膝装具1がずれないようにするために取り付けられる。
さらに、第4の実施形態の膝装具1は、図8および図9に示すように、下部ステイ15と弾性体17との間に中間回動ヒンジ21を有している。中間回動ヒンジ21は、弾性体17から下方に延びるプレート211と、このプレート211に取り付けられたボス212と、下部ステイ15の上端に設けられてボス212に嵌合する軸受213とを備える。この中間回動ヒンジ21は、弾性体17の変形を伴わずに上部ステイ12と下部ステイ15との相対的な回動動作を可能にする。また、中間回動ヒンジ21は、膝関節M1が真っ直ぐに伸ばされたときにそれ以上回らないように、図8に示すようにプレート211と軸受213の間に回動を規制する係止部214が設けられている。
第4の実施形態の膝装具1において底部支持体20は、図8および図9に示すように、カップ201と受部材202とが一体に形成されている。そして、連結部202A,202Bは、それぞれ下部ステイ15の下端に連結されるために踝部M5から離れた位置に張り出している。底部支持体20が一体に形成されることによって底部支持体20の剛性が高まるので、内側用ユニット1Aおよび外側用ユニット1Bのそれぞれから伝わる荷重に対して底部支持体20が捻れるのを防止できる。そして底部支持体20が十分な剛性を有していることによって、内側用ユニット1Aおよび外側用ユニット1Bの中間回動ヒンジ21の位置が相対的にずれ難いので、中間回動ヒンジ21の動作も円滑な状態に維持される。
以上のように構成された第4の実施形態の膝装具1は、下部ステイ15が真っ直ぐに延びているので、大腿部M2に掛かる利用者の体重が内側用ユニット1Aおよび外側用ユニット1Bを介して底部支持体20にダイレクトに伝わりやすい。また、第4の実施形態の膝装具1は、中間回動ヒンジ21を備えているので、弾性体17のばね剛性にに抗って脚Mを曲げる必要がなくなり、利用者の筋力的な負担が軽減される。
第4の実施形態の膝装具1は、脚Mがほぼまっすぐに伸ばされると、中間回動ヒンジ21がそれ以上回動するのが係止部214によって規制され、膝関節M1を中心とする上部支持体11と下部支持体14の相対的な回動が弾性体17によって引き継がれる。そして、上部支持体11と下部支持体14がほぼ真っ直ぐに並ぶと、緩衝材18が弾性体17の端部17bに挟まれる。その結果、大腿部M2に掛かる体重は、内側用ユニット1Aおよび外側用ユニット1Bを介して底部支持体20へ掛かる。また、第1の実施形態と同様に緩衝材18が取り付けられていることによって、上部支持体11と下部支持体14の相対距離が引き離される。したがって、この膝装具1は、膝関節M1に圧縮荷重が加わるのを軽減することができる。
第1から第4の実施形態のいずれの膝装具1であっても、構造が簡素であり、装着した状態でもあまりかさばらない。したがって、膝装具1を脚Mに装着した上からズボンPをはくことも可能である。また、この膝装具1は、膝関節M1の「ずれ」や「ゆるみ」に対する保持力も兼ね備える。したがって、膝関節M1の靭帯を痛めている場合にもこの膝装具1を装着することによって、膝関節M1のずれを防止することができる。
上述の各実施形態において示した膝装具1を構成する各部材は、上述したものに限定されない。新たな材料が開発される中で、各部材の機能を満たすものであれば、採用することが可能である。
1…膝装具、1A…内側ユニット、1B…外側ユニット、11…上部支持体、12…上部ステイ、13…第1のベルト、14…下部支持体、15…下部ステイ、16…第2のベルト、17…弾性体、17a…湾局部、17b…端部、18…緩衝材、19…調整機構、20…底部支持体、21…中間回動ヒンジ、M…(右)脚、M1…膝関節、M2…大腿部、M3…下腿部、M4…踵部、M5…踝部。

Claims (10)

  1. 大腿部に添えられる上部支持体と、
    前記上部支持体に固定され膝関節の側部に向かって延びた上部ステイと、
    前記上部支持体を大腿部に保持する第1のベルトと、
    下腿部に添えられる下部支持体と、
    前記下部支持体に固定され前記膝関節の側部に向かって延びた下部ステイと、
    前記下部支持体を下腿部に保持する第2のベルトと、
    前記膝関節の側部に配置され後方で折り返された湾曲部を有し前記上部ステイの下端および前記下部ステイの上端を連結する側面U字形に形成されている弾性体と、
    前記膝関節の前方寄りに配置されて前記上部ステイおよび前記下部ステイが直線状に並ぶ状態で前記弾性体の端部の間に挟まれる緩衝材と
    を備えることを特徴とする膝装具。
  2. 前記緩衝材は、前記上部ステイおよび前記下部ステイが直線状に並ぶ方向に寸法を調整可能である
    ことを特徴とする請求項1に記載された膝装具。
  3. 前記弾性体の前記湾曲部から前記緩衝材までの距離を変える調整機構をさらに備える
    ことを特徴とする請求項1に記載された膝装具。
  4. 前記上部支持体と前記上部ステイと前記下部支持体と前記下部ステイと前記弾性体とは、前記膝関節に対して内側部および外側部の両側に配置され、
    前記緩衝材は、前記膝関節の少なくとも内側部に配置される前記弾性体に装着される
    ことを特徴とする請求項1に記載された膝装具。
  5. 前記上部支持体と前記上部ステイと前記下部支持体と前記下部ステイと前記弾性体と前記緩衝材は、前記膝関節の内側部および外側部の両側に配置される
    ことを特徴とする請求項1に記載された膝装具。
  6. 前記膝関節の内側部に配置される前記緩衝材は、前記上部ステイおよび前記下部ステイが直線状に並ぶ方向に、前記膝関節の外側部に配置される前記緩衝材よりも寸法が大きい
    ことを特徴とする請求項5に記載された膝装具。
  7. 前記膝関節の内側部に配置される前記緩衝材は、前記膝関節の外側部に配置される前記緩衝材よりも硬い
    ことを特徴とする請求項5に記載された膝装具。
  8. 大腿部に添えられる上部支持体と、
    前記上部支持体に固定され膝関節の側部に向かって延びた上部ステイと、
    前記上部支持体を大腿部に保持する第1のベルトと、
    下腿部の側部に沿って配置され前記膝関節の側部から踝部まで延びた下部ステイと、
    前記膝関節の側部に配置され後方で折り返された湾曲部を有し前記上部ステイの下端および前記下部ステイの上端を連結する側面U字形に形成されている弾性体と、
    前記膝関節の前方寄りに配置されて前記上部ステイおよび前記下部ステイが直線状に並ぶ状態で前記弾性体の端部の間に挟まれる緩衝材と、
    前記下部ステイの下端に連結されて踵部の下に回される底部支持体と
    を備えることを特徴とする膝装具。
  9. 前記下腿部に添えられ前記下部ステイが固定される下部支持体と、
    前記下部支持体を前記下腿部に保持する第2のベルトと
    をさらに備えることを特徴とする請求項8に記載された膝装具。
  10. 前記下部ステイと前記弾性体との間に配置され、前記弾性体の変形を伴わずに前記上部ステイと前記下部ステイとの相対的な回動動作を可能にする中間回動ヒンジ
    をさらに備えることを特徴とする請求項8または請求項9に記載された膝装具。
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