JP5822257B2 - 清掃用シート - Google Patents

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本発明は、拭き取り効果の高い極細繊維を使用した清掃用シートであって、極細繊維であるが故に生じる被清掃面との摩擦抵抗による滑りの悪さを改善することによって、その実用性、使用性を高め、使用感を良好なものにした清掃用シートに関する。
ドライタイプの清掃用シートとしては、様々な形状、材質のものが知られているが、こびりついた汚れや手垢等の油分を含んだ汚れは、通常の繊維径を有する不織布ではきれいに拭き取ることはできなかった。このような汚れに対しては、通常、汚れ除去に適した処方の洗浄液を含浸させたウエットタイプの清掃用シートが使用され、レーヨン又はコットンの不織布に洗浄剤成分として界面活性剤及び親水性溶剤と防曇成分及び/又はアルカノールアミン及びアルカリ金属から選ばれる1種が含浸されたガラス用洗浄シート(特許文献1)や 、スパンレース不織布に界面活性剤、水溶性溶剤及びアルカリ剤を含浸させた清掃用不織布(特許文献2)等が知られている。しかし、ウエットタイプのシートの場合、こびりついた汚れや油分を含んだ汚れに対する効果が認められるものの、窓ガラスや網戸などの広域面を拭き取った場合には、一度拭き取った汚れを含んだ洗浄液が被清掃面に押し出されて拭きすじが残り、何度拭いても汚れが拭き取れない、あるいは、きれいな清掃用シート等を使用して二度拭きする必要があるという問題があった。
一方、ドライタイプであっても、極細繊維を含んだ不織布を使用することにより、通常の繊維径の不織布では拭き取れないこびりついた汚れや油分を含んだ汚れもきれいに拭き取ることが出来る。しかしながら、極細繊維を使用した場合には、拭き取り効果が高い反面、その接触面積の多さ故に、通常の繊維径の不織布よりも摩擦抵抗が大きく、滑りが悪くなり、非常に拭きにくいという使用性の欠点があった。
極細繊維を使用した清掃用シートにおいて、滑りを良くし、拭きやすくする発明としては、多角断面極細繊維を含んだ不織布の拭き取り面に複数の突部を設けた拭布が知られている(特許文献3)。しかしながら、この方法は、清掃用シートの接触面積を低下させて摩擦を減じ、拭きやすくするという方法であり、逆に、本来の目的である拭き取り効果を低下させる惧れがある。
また、清掃時における必要な強度とダスト類の捕集性能に必要な繊維自由度とを共に満足させることのできる方法として、網状シートに極細繊維を絡合したシートからなり、5N/30mm荷重時の伸度が20%以下であることを特徴とした清掃用シートが、主にフロア用として提案されている(特許文献4)。この特許文献4には、0.9デニール以下の極細繊維を含む網状シートに油性成分を含浸させた構成をとっているが、使用できる油性成分をとくに限定している訳ではなく、さらに使用時のシートの滑り性については全く記載されていない。
このように、拭き取り効率を低下させずに、極細繊維の滑りを良くし、拭きやすくするという発明は、これまでなかった。
特開2002−80899号公報 特開2003−180593号公報 特許3482414号公報 特許3190614号公報
本発明は、拭き取り効果の高い極細繊維を使用した清掃用シートであって、極細繊維であるが故に生じる被清掃面との摩擦抵抗による滑りの悪さを改善することによって、その実用性、使用性を高め、使用感を良好なものにした清掃用シートを提供することを目的とする。
本発明は、上記の目的を達成するため、以下の構成が上記目的を達成するために優れた効果を奏することを見出したものである。
(1)極細繊維を含む不織布に、沸点範囲が230〜320℃の間であるナフテン系炭化水素を30質量%以上含有する油剤を含浸させた清掃用シートであって、17×21cmの前記シートを、底面の大きさが9.5×14cmであるスポンジの底面に巻きつけ、ガラスの上に置き、スポンジの上面に10kgの重りのせ、直径1cmのプローブをつけたプッシュプルスケールで、スポンジの側面を30cm幅で押した際の圧力が、2.8〜3.3kg/cm2である清掃用シート
(2)極細繊維がポリエステル、ナイロン及びアクリルから選ばれた1種又は2種以上である(1)に記載の清掃用シート。
(3)被清掃面がガラス及び網戸である(1)又は(2)に記載の清掃用シート。
本発明では極細繊維を含む不織布に沸点が320℃以下のナフテン系炭化水素を含有する油剤を含浸させることにより、極細繊維の高い拭き取り効果を維持しながら、かつ、被清掃面との摩擦抵抗による滑りの悪さを改善することによって、その実用性、使用性を高め、使用感を良好なものにした清掃用シートとなることを見出したものである。また、本発明の清掃用シートは、そのままもしくは、アプリケーターに装着して使用することができ、特にガラス及び網戸用として有用性が高い。
滑り試験(1)の方法を示したものである。
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明する。
本発明で使用される極細繊維の不織布は特に限定されるものではないが、繊度が1dtex未満、好ましくは0.5dtex未満の、例えばポリエステル、ナイロン及びアクリル等から選ばれた1種又は2種以上の分割繊維を10〜100質量%の割合で含有する不織布が好適に使用される。太さの相違する2種の繊維が混在すると、汚れの掻き取り効果の増大が期待されることから、繊維径の比較的大きな非分割型繊維と極細繊維が混在することが好ましい。
このような不織布は、分割されて繊度0.01〜1dtexの極細繊維を生成する易分割型複合繊維10〜100重量%と、繊度1〜10dtexの非分割型繊維90〜0重量%を混合し、スパンレース法、スパンボンド法又はニードルパンチ法等で製造できる。
汚れの拭き取り効果の観点から、極細繊維を30質量%以上含んでいることがより好ましい。
ここで使用される極細繊維は、直接紡糸して得られる繊維の他、分割して極細化し得る繊維や複合繊維の一部を抽出して極細繊維を得るタイプの繊維、スパンボンド法やメルトブロー法等により得られる極細繊維等が挙げられ、より詳しくは、「繊維便覧」(第3版、繊維学会編、丸善株式会社、2004年12月15日発行)に記載されている。
極細繊維を構成するポリマーとしては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系繊維、ナイロン66、ナイロン6などのポリアミド系繊維、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン系繊維などが挙げられ、複合繊維の形態として、芯鞘型、偏心芯鞘型、多層貼合型、サイドバイサイド型、ランダム複合型、放射状貼合型等が挙げられる。該複合繊維のポリマーの組み合わせとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン、ポリプロピレン/ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート/ポリプロピレン、ポリプロピレン/エチレン−プロピレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート/エチレン−プロピレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート/共重合ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート/エチレン−酢酸ビニル系共重合体、共重合ポリエステル/エチレン−酢酸ビニル系共重合体等がある。
また、非分割型繊維としては、乾式不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、湿式不織布あるいはこれらの製造時に使用されるウェブ、またはこれらの混合物や積層物などが用いられ、素材としては、PE、PP、PET、ナイロン、アクリルなどの合成樹脂繊維、コットン、レーヨン、パルプなどの親水性繊維等を単独あるいは組み合わせて使用できる。
本発明の不織布は表面に杉綾状、並列斜線状、格子状、スクエア状等の凹凸部を有しても良く、また、不織布の表面毛羽立ち、繊維脱落を抑制するために、水流絡合等にて繊維を分割絡合した後、不織布にバインダー樹脂等を塗布して接着領域を形成させても良い、更に、熱融着可能な合成樹脂繊維を含んでいる場合には、熱エンボス加工によって、圧縮、加熱等のエンボス加工を行っても良い。
本発明は、上記不織布に含浸させる油剤中に、沸点320℃以下のナフテン系炭化水素を含有することを特徴とする。本発明で使用されるナフテン系炭化水素は、分子中に環状構造を持つ飽和炭化水素で、シクロパラフィン系炭化水素とも呼ばれ、オレフィン系炭化水素と同一の分子式 CnH2n
を有し、その分子量、構造式に応じて、固有の沸点や粘度を有する。一般に汎用されているナフテン系炭化水素は、ナフテン系炭化水素化合物の混合物であり、およそ160℃以上の沸点を有し、その沸点範囲によって識別される。本発明においては、320℃より高沸点のナフテン系炭化水素では粘性が高く滑り性が悪くなるため、沸点320℃以下のナフテン系炭化水素が使用される。沸点範囲が230〜320℃の間であるナフテン系炭化水素は更に好ましい。ナフテン系炭化水素の油剤中の含有量は、拭き取り時の滑り性の観点から、10質量%以上で90質量%以下が好ましく、さらに30質量%以上であることがより好ましい。
なお、油剤中には、ナフテン系炭化水素以外に、パラフィン系炭化水素、芳香族炭化水素等の鉱物油、アルキルベンゼン油、ポリオレフィン油、ポリグリコール油等の合成油、あるいは動物油及び植物油等が配合されてもよい。
本発明の清掃用シートの含浸油剤には本発明の特徴を損なわない範囲で、適宜、シリコーンオイル、合成油、動物油及び植物油等の油性溶剤、グリコールエーテルなどの水溶性溶剤、界面活性剤、帯電防止剤、殺菌剤、防腐剤、除菌剤、虫よけ剤、殺虫剤、消臭剤、香料等を配合することができ、グラビア塗工、浸漬、コーティング、スプレー法等で不織布に含浸させることができる。
次に具体的な実施例に基づき、本発明の清掃用シートについて、更に詳細に説明する。
表1、表2に示す組成の実施例及び比較例を調製し、極細アクリル繊維不織布(サンモアNA93030 目付:30g/m 三和製紙株式会社製)に1m当たり6gになるよう含浸させ、17×21cmの清掃用シートを作製した。
また、表3に示す各種不織布に、実施例4の含浸油剤を、不織布の質量に対して20質量%となるように含浸させ、17×21cmの清掃用シートを作製した。
<滑り試験(1)>
図1のように清掃用シート1を9.5×14cmのスポンジ(エバーライトTQ−JP 株式会社ブリジストン製)2に巻きつけ、ガラス3の上に置き、上に10kgの重り4をのせる。直径1cmのプローブをつけたプッシュプルスケール5で、30cm幅を押したときの圧力を測定した。
<滑り試験(2)>
シート(17×21cm)をスポンジ(9.5×14cm)に巻きつけ、実際にガラスを拭き、そのときの滑り性を以下の評価基準で評価した。
○:滑りが良く拭きやすい。
△:少し抵抗を感じるが問題ないレベル。
×:滑りが悪く拭きにくい。
<洗浄力試験>
あらかじめ分光色差計(NF333 日本電色工業株式会社)で反射率(560nm)を測定しておいた白色タイル上に、汚れ希釈液をホールピペットで1ml量り、均一に塗布し、50℃で30分間乾燥して汚染板を作製した。(汚れ希釈液:サラダ油 1g、オイルレッド 0.05gをメスフラスコ100mlに量り取り、アセトンで定容とした。)
清掃用シート(17×21cm)をスポンジ(9.5×14cm)に巻きつけ、上記の汚染板を、円を描くように20回拭いた。
拭き取り前後の反射率(560nm)の差から、洗浄率を算出した。

洗浄率(%)=(拭き取り後の反射率 − 拭き取り前の反射率)/
(汚れ塗布前の反射率 − 拭き取り前の反射率)×100

表1はナフテン系炭化水素の比較であるが、本発明品の実施例1乃至4のように沸点が160〜320℃のナフテン系炭化水素を含んだものは滑り試験(1)の押し圧力が4.0kg/cm以下であった。実施例に示す、押し圧力が4.0kg/cm以下のシートで実際にガラスやフロアに適用しても抵抗を感じず、全く問題がなく、さらに実施例3又は4のように沸点範囲が230〜320℃であるものは滑り試験(1)で押し圧力が3.5kg/cm未満となり、さらに滑りが良く拭きやすくなった。
一方、比較例1のように沸点が320℃よりも高いものは、滑り試験(1)の押し圧力が5.0kg/cm以上となり、実際にガラスやフロアを拭くと、特にガラスの場合、滑りが悪く、拭きにくい作業性の悪いものであった。

表2のイソパラフィンのみの比較例2や320℃を超える沸点範囲のナフテン系炭化水素を配合した比較例3では、滑り試験(1)の押し圧力はどちらも4.5kg/cm以上を示し、実際にガラスを拭くと、滑りが悪く、拭きにくいものであったのに対し、沸点160〜320℃のナフテン系炭化水素を配合した実施例5乃至9では、押し圧力が低下し、実際にガラスを拭いても問題はなかった。
表3の実施例10乃至13のように、極細繊維を含んでいる不織布を用いたものは、90%以上の高い洗浄率が得られた。一方、極細繊維を含んでいない不織布を用いた比較例4の洗浄力は、69.8%であり、その差は明らかである。
<実地試験>
複合分割繊維(ポリエステル/ナイロン)とレーヨンが50:50の極細繊維不織布(目付:50g/m)を17×21cmに切断し、不織布の質量に対して20質量%の含浸油剤(実施例8)を含浸させ、実際の汚れた窓ガラスを用いて実地試験を行った結果、極細繊維特有の抵抗感もなくスムーズに拭き取ることができ、汚れもきれいに落とすことができた。
本発明の清掃用シートは極細繊維の高い拭き取り効果を保ちながら、問題点である被清掃面との摩擦抵抗による滑りの悪さが改善され、非常に有用である。
1 清掃用シート
2 スポンジ
3 ガラス
4 重り
5 プッシュプルスケール

Claims (3)

  1. 極細繊維を含む不織布に、沸点範囲が230〜320℃の間であるナフテン系炭化水素を30質量%以上含有する油剤を含浸させた清掃用シートであって、17×21cmの前記シートを、底面の大きさが9.5×14cmであるスポンジの底面に巻きつけ、ガラスの上に置き、スポンジの上面に10kgの重りのせ、直径1cmのプローブをつけたプッシュプルスケールで、スポンジの側面を30cm幅で押した際の圧力が、2.8〜3.3kg/cm2である清掃用シート
  2. 極細繊維がポリエステル、ナイロン及びアクリルから選ばれた1種又は2種以上である請求項1に記載の清掃用シート。
  3. 被清掃面がガラス及び網戸である請求項1又は2に記載の清掃用シート。
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