JP5821977B2 - モリブデンを含有する触媒を備えた固定床式反応器を用いた不飽和脂肪族アルデヒド、不飽和炭化水素及び不飽和脂肪酸からなる群から選ばれる少なくとも一種の反応物を製造する製造方法 - Google Patents

モリブデンを含有する触媒を備えた固定床式反応器を用いた不飽和脂肪族アルデヒド、不飽和炭化水素及び不飽和脂肪酸からなる群から選ばれる少なくとも一種の反応物を製造する製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、モリブデンを含有する触媒を備えた固定床式反応器を使用して、反応原料ガスを、水蒸気の存在下で、酸素含有ガスと接触気相酸化させて、反応物を製造する製造方法に関する。
メタクリル酸及びアクリル酸、並びにメタクロレイン及びアクロレインは、触媒の存在下でプロピレン、プロパン、イソブチレン、またはメタクロレイン若しくはアクロレインと分子状酸素とを接触させる接触気相酸化反応を用いた方法により製造される。ブタジエンは触媒の存在下でブテンと分子状酸素とを接触させる酸化脱水素反応を用いた方法により製造される。そして、これらの接触気相酸化反応を用いた方法には、多管式反応器、又はプレート式触媒層反応器(例えば、特許文献1及び特許文献2)等の触媒を備えた固定床式反応器が用いられる。
プロピレン、プロパン、イソブチレン、メタクロレイン、アクロレイン、又はブテン等の可燃性の反応原料ガスを酸素存在下で安全に接触気相酸化させる為には、反応原料ガスの爆発範囲を回避する必要がある。当該爆発範囲を回避する為に用いられる希釈剤として、窒素、二酸化炭素、及びアルゴン等と同様に水蒸気が使用される。
一方、上記プロピレン等を接触気相酸化してアクロレインおよびアクリル酸等を製造する方法およびブテンを酸化脱水素にてブタジエンを製造する方法においては、通常、モリブデンを含有する複合酸化物触媒が用いられている。
当該複合酸化物触媒を用いた接触気相酸化反応においては、触媒の酸化状態に影響を与える気相中の酸素量が重要であり、通常反応の化学量論量より過剰の酸素を存在させる。しかしながら、過剰の酸素は副反応を促進し、副生成物やさらに重質の炭素含有割合の高いカーボンの生成を引き起こし、最終的には触媒層のコーキングを引き起こす。一方、水蒸気に含まれる水分子は酸素、反応原料の濃度を下げ、触媒上の吸着物の脱着も促進するので、副反応を抑制し、副生成物やカーボンの生成を抑制する事が出来る。例えば、特許文献3では、モリブデンを含有する触媒において、反応転化率と選択率の面から水蒸気がもっとも望ましい希釈剤であるとされている。
しかしながら、モリブデンを含有する複合酸化物触媒は、反応系に水蒸気が存在する場合、触媒を構成するモリブデン成分が昇華しやすい。複合酸化物触媒において、触媒を構成するモリブデン成分が昇華した場合、触媒が劣化し反応物の収率等の低下を生じる。この問題に対し、特許文献4では、Fe/(Co+Ni)比を一定にして、CoとNiの量
を変化させた複数種類のモリブデン−ビスマス−鉄系複合酸化物触媒を使用し、固定床式反応器の原料ガス入口側から出口側に向かって、複数種類の複合酸化物触媒のCo/(Co+Ni)の量比が小さくなるように充填することにより、反応器内を2層以上の反応帯域に分割して、プロピレンの酸化反応を行う方法が提案されている。
特開2004−167448号公報 特開2004−202430号公報 米国特許第3475488号明細書 特開2003−146920号公報
本発明は、上記実情を鑑みてなされたものであり、その課題は、モリブデンを含有する触媒を備えた固定床式反応器を使用して、反応原料ガスを、酸素含有ガスを用いて接触気相酸化させて、反応物を製造する製造方法において、反応原料の過剰反応に起因する触媒劣化と、水蒸気の存在下での触媒を構成するモリブデン成分の昇華とを抑制し、目的反応物の収率及び選択率等を低下させない新規な製造方法を提供することにある。
[1] モリブデンを含有する触媒を備えた固定床式反応器を使用して、炭素数3及び4の炭化水素、並びにターシャリーブタノールからなる群から選ばれる反応原料ガスの少なくとも1種、または、炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒドからなる群から選ばれる反応原料ガスの少なくとも1種を、水蒸気の存在下で、酸素含有ガスを用いて接触気相酸化させて、炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒド、不飽和炭化水素並びに炭素数3及び4の不飽和脂肪酸からなる群から選ばれる少なくとも一種の反応物を製造する製造方法において、前記反応器をスタートアップするときに、前記反応器に供給される全ガス中の水蒸気分圧が2.0kPa以上となるように水蒸気の供給を開始した後に、前記反応原料ガスの供給を開始することを特徴とする、炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒド、不飽和炭化水素並びに炭素数3及び4の不飽和脂肪酸からなる群から選ばれる少なくとも一種の反応物を製造する製造方法。
[2] 前記反応器をスタートアップするときに、前記反応器に供給される全ガス中の水蒸気分圧が2.0kPa以上となるように水蒸気の供給を開始した後、5時間未満に前記反応原料ガスの供給を開始することを特徴とする、[1]に記載の製造方法。
[3] 前記スタートアップをするときが、前記反応器をスタートアップして前記反応物を一定期間製造して、前記反応器をシャットダウンした後に、前記反応器を再スタートアップするときであることを特徴とする、[1]又は[2]に記載の製造方法。
[4] 前記炭素数3及び4の炭化水素、並びにターシャリーブタノールからなる群から選ばれる反応原料ガスの少なくとも1種を、水蒸気の存在下で、酸素含有ガスを用いて接触気相酸化させるときの触媒が、下記一般式(1)で表される金属酸化物からなることを特徴とする、[1]から[3]のいずれか一に記載の製造方法。
Mo(a)Bi(b)Co(c)Ni(d)Fe(e)X(f)Y(g)Z(h)Q(i)Si(j)O(k)・・・式(1)
(上記式(1)中、Moはモリブデン、Biはビスマス、Coはコバルト、Niはニッケル、Feは鉄、Xはナトリウム、カリウム、ルビジュウム、セシウム及びタリウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素、Yはほう素、りん、砒素及びタングステンからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素、Zはマグネシウム、カルシウム、亜鉛、セリウム及びサマリウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素、Qはハロゲン元素、Siはシリカ、Oは酸素を表す。また、a、b、c、d、e、f、g、h、i、j及びkは、それぞれMo、Bi、Co、Ni、Fe、X、Y、Z、Q、Si及びOの原子比を表し、モリブデン原子(Mo)が12のとき、0.5≦b≦7、0≦c≦10、0≦d≦10、1≦c+d≦10、0.05≦e≦3、0.0005≦f≦3、0≦g≦3、0≦h≦1、0≦i≦0.5、0≦j≦40であり、kは各元素の酸化状態によって決まる値である。)
[5] 前記炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒドからなる群から選ばれる反応原料ガスの少なくとも1種を、水蒸気の存在下で、酸素含有ガスを用いて接触気相酸化させるときの触媒が、下記一般式(2)で表される金属酸化物からなることを特徴とする、[1]から[3]のいずれか一に記載の製造方法。
Mo(12)V(a)X(b)Cu(c)Y(d)Sb(e)Z(f)Si(g)C(h)O(i)・・・式(2)
(上記式(2)中、XはNb及びWからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を示す
。YはMg、Ca、Sr、BaおよびZnからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を示す。ZはFe、Co、Ni、Bi、Alからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を示す。但し、Mo、V、Nb、Cu、W、Sb、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Fe、Co、Ni、Bi、Al、Si、CおよびOは元素記号である。
また、a、b、c、d、e、f、g、hおよびiは各元素の原子比を表し、モリブデン原子(Mo)12に対して、0<a≦12、0≦b≦12、0≦c≦12、0≦d≦8、0≦e≦500、0≦f≦500、0≦g≦500、0≦h≦500であり、iは前記各成分のうちCを除いた各成分の酸化度によって決まる値である。)
[6] 前記炭素数3の炭化水素が、プロピレン、又はプロパンであり、前記炭素数4の炭化水素が、イソブチレン、1−ブテン、イソブタン、又はブタンであり、前記炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒドが、アクロレイン、又はメタクロレインであり、前記不飽和炭化水素がブタジエンであり、前記炭素数3及び4の不飽和脂肪酸が、アクリル酸、又はメタクリル酸である、[1]から[5]のいずれか一に記載の製造方法。
[7] 前記固定床式反応器が、反応管を備えた多管式反応器であって、前記反応管の内径は10〜50mmである、[1]から[6]のいずれか一に記載の製造方法。
[8] 前記固定床式反応器が、伝熱プレートの間に形成された触媒層を備えたプレート式反応器であって、前記プレート式反応器は、触媒層の厚さが異なる複数の反応帯域に分割されており、前記複数の反応帯域には、独立して温度調整された熱媒体が供給されるプレート式反応器である、[1]から[6]のいずれか一に記載の製造方法。
本発明によれば、モリブデンを含有する触媒を備えた固定床式反応器を使用して、反応原料ガスを、酸素含有ガスを用いて接触気相酸化させて、反応物を製造する製造方法において、反応原料の過剰反応に起因する触媒劣化と、水蒸気の存在下での触媒を構成するモリブデン成分の昇華とを抑制し、目的反応物の選択率を低下させない新規な製造方法を提供することが可能である。
多管式反応器の概略断面図を示す シェルを中間管板で分割した多管式反応器の概略断面図を示す。 プレート式反応器の縦断面図を示す。 プレート式反応器の縦断面図を示す。 伝熱プレートの拡大図を示す。
モリブデンを含有する触媒を備えた固定床式反応器を使用して、プロピレン等の反応原料ガスを接触気相酸化させる工程のスタートアップでは、一般に、反応原料の爆発範囲を避けるように、酸素含有ガス(例えば、空気)及び窒素などの不活性ガス(希釈剤)の供給量を調整した上で、反応原料のプロピレン等の供給を開始する。ここで、当該工程のスタートアップ時は、酸素濃度のプロピレン濃度に対する比が設定より大きくなり、過剰反応を引き起こしやすくなる。
本願発明者らは、この過剰反応の抑制には、窒素、又は二酸化炭素等のような不活性ガスの使用では不十分であり、反応原料ガスの供給を開始する前に触媒の吸着物の脱着促進効果も有する特定条件の水蒸気を予め触媒に供給しておくことが重要であることを見出した。
一方、上述の如くモリブデンを含有する触媒は、反応系に水蒸気が存在する場合、触媒を構成するモリブデン成分が昇華しやすく、触媒を構成するモリブデン成分が昇華した場合、触媒が劣化し反応物の収率及び選択率等の低下を生じる。
この問題の解決策として、上記特開2003−146920号公報のように、複数種類
のモリブデン−ビスマス−鉄系複合酸化物触媒を使用し、反応器内を2層以上の反応帯域に分割する方法もある。しかしながら、当該方法は、複数種類の触媒を使用し、反応器内を2層以上の反応帯域に分割する方法であることから、触媒コストの上昇及び触媒の充填における手間等が存在する。したがって、より低コストで簡便な方法の開発が望まれていた。
これらに対して、本発明の製造方法は、モリブデンを含有する触媒を備えた固定床式反応器を使用して、炭素数3及び4の炭化水素、並びにターシャリーブタノールからなる群から選ばれる反応原料ガスの少なくとも1種、または、炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒドからなる群から選ばれる反応原料ガスの少なくとも1種を、水蒸気の存在下で、酸素含有ガスを用いて接触気相酸化させて、炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒド、不飽和炭化水素並びに炭素数3及び4の不飽和脂肪酸からなる群から選ばれる少なくとも一種の反応物を製造する製造方法において、前記反応器をスタートアップするときに、前記反応器に供給される全ガス中の水蒸気分圧が2.0kPa以上となるように水蒸気の供給を開始した後に、前記反応原料ガスの供給を開始することを特徴とする。
本願発明者らは、モリブデンの昇華速度は、供給ガス中の水蒸気濃度、水蒸気供給量だけでなく、水蒸気の分圧に大きく依存しているために、触媒を構成するモリブデン成分の昇華抑制には、反応器の運転圧力から決まる供給ガスにおける水蒸気の分圧が重要である事を見出した。
上記水蒸気分圧は、3.0kPa以上であることが好ましく、5.0kPa以上であることがより好ましい。一方、モリブデン昇華防止の観点より、上記水蒸気分圧は、50.0kPa以下であることが好ましい。
また、モリブデンの昇華量は昇華速度と水蒸気との接触時間に影響されるので、供給ガスにおける水蒸気分圧と反応原料ガスを供給するまでの時間を調節する事が特に好ましい。従って、本発明の製造方法は、モリブデンを含有する触媒を備えた固定床式反応器をスタートアップするときに、反応器に供給される全ガス中の水蒸気分圧が2.0kPa以上となるように水蒸気の供給を開始した後、5時間未満に反応原料ガスの供給を開始することが好適な態様である。
当該態様は、上記特開2003−146920号公報に記載の方法に比して、より低コストで簡便な方法であり、また、簡便に、触媒を構成するモリブデン成分の昇華を抑制する方法である。
上記触媒に含有されるモリブデンは必須の成分であり、モリブデンの昇華による触媒表面からのモリブデンの減少は、特に触媒の反応活性や反応選択性に大きな影響を及ぼす。また、水蒸気はモリブデンの昇華を促進すると考えられる。この知見に反する、反応原料ガスの供給開始前の水蒸気の供給は、触媒が水蒸気に曝される雰囲気を作り出すことから、一般的には実施しにくい。ここで、供給される水蒸気の濃度は、反応原料ガスの爆発範囲の回避などの観点を鑑みると、水蒸気の濃度は自由に設定できない。そこで、反応器のスタートアップ操作で短縮が可能な、反応原料ガスの供給開始前の水蒸気の供給時間に着目した。
上記反応器に水蒸気の供給を開始した後、反応原料ガスの供給を開始するまでの時間(上限値)は出来るかぎり短いほうが好ましいが、発明者らの検討によると、反応器に供給される全ガス中の水蒸気分圧が2.0kPa以上となるように水蒸気を供給開始した後、5時間未満(即ち4時間59分以内)が好ましく、4時間以内がより好ましく、2時間未満(即ち1時間59分以内)が特に好ましい。
一方、上記反応器に供給される全ガス中の水蒸気分圧が2.0kPa以上となるように水蒸気の供給を開始した後、反応原料ガスの供給を開始するまでの時間(下限値)は、使用される反応器が工業用装置であり、満遍なく水蒸気がいきわたるためにある程度の時間
が必要であること、及び、過剰反応の防止のために触媒に水分子を吸着させて表面のコンディショニングを行うための時間が必要であることなどから、反応器に供給される全ガス中の水蒸気分圧が2.0kPa以上となるように水蒸気の供給を開始した後、好ましくは5分以上、より好ましくは15分以上、更に好ましくは30分以上、最も好ましくは1時間以上である。
また、本発明の製造方法は、モリブデンを含有する触媒を備えた固定床式反応器をスタートアップして反応物を一定期間製造して、反応器をシャットダウンした後に、反応器を再スタートアップするときに、反応器に供給される全ガス中の水蒸気分圧が2.0kPa以上となるように水蒸気の供給を開始した後に、反応原料ガスの供給を開始する場合にも好適に適用できる。
なお、反応に使用した触媒は、触媒の表面の反応部位において、既にモリブデンが昇華によって失われていることが多く、再度使用時のスタートアップ操作は、特に重要であることが解った。
上記反応器に供給される全ガス中の水蒸気分圧が2.0kPa以上となるように水蒸気の供給を開始した後、反応原料ガスの供給を開始するまでの時間(上限値)は出来るかぎり短いほうが好ましいが、発明者らの検討によると、反応器に供給される全ガス中の水蒸気分圧が2.0kPa以上となるように水蒸気を供給開始した後、5時間未満(即ち4時間59分以内)が好ましく、4時間以内がより好ましく、2時間未満(即ち1時間59分以内)が特に好ましい。
一方、上記反応器に供給される全ガス中の水蒸気分圧が2.0kPa以上となるように水蒸気の供給を開始した後、反応原料ガスの供給を開始するまでの時間(下限値)は、使用される反応器が工業用装置であり、満遍なく水蒸気がいきわたるためにある程度の時間が必要であること、及び、過剰反応の防止のために触媒に水分子を吸着させて表面のコンディショニングを行うための時間が必要であることなどから、反応器に供給される全ガス中の水蒸気分圧が2.0kPa以上となるように水蒸気の供給を開始した後、好ましくは5分以上、より好ましくは15分以上、更に好ましくは30分以上、最も好ましくは1時間以上である。
また、上記一定期間とは、具体的には1日〜2年程度をいう。
本発明の製造方法に用いられる反応原料ガスは、炭素数3及び4の炭化水素、並びにターシャリーブタノールからなる群から選ばれる反応原料ガスの少なくとも1種、または、炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒドからなる群から選ばれる反応原料ガスの少なくとも1種である。
上記炭素数3の炭化水素としては、プロピレン、プロパンが挙げられる。
上記炭素数4の炭化水素としては、イソブチレンなどのブテン類、イソブタンなどのブタン類が挙げられる。
上記炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒドとしては、アクロレイン、メタクロレインが挙げられる。
また、上記反応物である炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒド、不飽和炭化水素、並びに炭素数3及び4の不飽和脂肪酸における、炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒドとしては、アクロレイン、メタクロレインが挙げられ、不飽和炭化水素としては、炭素
数4の不飽和炭化水素、特にブタジエンが挙げられ、炭素数3及び4の不飽和脂肪酸としては、アクリル酸、メタクリル酸が挙げられる。
上記反応原料ガスは、1種のみの構成としてもよく、また2種以上を混合した混合物としてもよい。上記反応原料ガスの組成は、目的に応じて適宜選択される。
本発明において、モリブデンを含有する触媒を備えた固定床式反応器をスタートアップするときには、空気などの酸素含有ガス、及び水蒸気、並びに必要に応じて窒素などの反
応に不活性なガス等を反応器に供給する。ここで、水蒸気、及び窒素などの反応に不活性なガス等の供給タイミングは、任意であり、空気などの酸素含有ガスと同時であってもよく、空気などの酸素含有ガスの供給開始後であっても構わない。また、これらの供給量及び組成は反応原料ガスの爆発範囲を避ける観点から選ばれる。ここで、水蒸気の供給とは、通常空気中に含まれる水蒸気より高い濃度の水蒸気を含む状態のガス(以下、水蒸気含有ガスともいい、水蒸気と酸素含有ガス及び不活性なガスの少なくとも一方とを含むガスを包含する概念である。)の供給を意味する。
そして、水蒸気或いは水蒸気含有ガスの供給を開始した後に、反応原料ガスの供給を開始する。好ましくは、水蒸気或いは水蒸気含有ガスの供給を開始した後、5時間未満に反応原料ガスの供給を開始する。
反応原料ガスの供給が開始された後、反応器には、これら反応原料ガス、酸素含有ガス、水蒸気及び必要に応じて窒素などの反応に不活性なガスを含む反応ガス混合物(以下、単に反応ガスともいう)が供給されることになるが、反応ガス混合物における各ガスの濃度は調整されることもある。ここで、上記反応原料ガスの、上記反応ガス混合物に対する含有量は、特に限定されないが、反応原料ガスの総量として、5〜13モル%であることが好ましい。また、上記酸素含有ガスに含まれる分子状酸素及び水蒸気の、上記反応ガス混合物に対する含有量は、それぞれ、反応原料ガスの総量の1〜3倍量及び0.1〜5倍量であることが好ましい。
上記不活性なガスの、上記反応ガス混合物に対する含有量は、上記反応ガス混合物全量から反応原料ガスの総量、分子状酸素の量及び水蒸気の量を除いた値となる。
なお、上記不活性なガスは、反応系から排出される排気ガスを再循環した不活性ガスを用いることが多い。また、スタートアップ過程において、反応に必要な水蒸気量を超える量の水蒸気は排気ガスで徐々に代替され、水蒸気濃度を下げる操作が行われることが多い。従って、反応原料ガスの供給開始前は、水蒸気濃度が最も高く、触媒に与える影響も大きいといえる。
本発明の製造方法では、モリブデンを含有する触媒を用いる。
本発明において、上記触媒の組成としては、モリブデンと、タングステン、ビスマスなどとを含む金属酸化物、または、モリブデンと、バナジウムなどとを含む金属酸化物が挙げられる。該組成の金属酸化物粉末を、球状、ペレット状、サドル状、またはリング状に成型し、高温で焼成して触媒として用いる。
また、触媒の形状は、公知の形状が採用でき、直径が1〜15mm(ミリメートル)の球状、または楕円形以外の形状で1〜15mmの相当直径を有するペレット状、あるいは円柱の円柱中心に穴の開いたリング状の形状のもので、円外径が3〜10mm、円内径が1〜3mm、高さが2〜10mmの形状が好適に用いられる。これら触媒の製造方法は公知の方法を用いることができる。
具体的には、上記炭素数3及び4の炭化水素、並びにターシャリーブタノールからなる群から選ばれる反応原料ガスの少なくとも1種を酸化するときの触媒は、下記一般式(1)で表される金属酸化物からなる触媒が好適に例示される。
Mo(a)Bi(b)Co(c)Ni(d)Fe(e)X(f)Y(g)Z(h)Q(i)Si(j)O(k)・・・式(1)
上記式(1)中、Moはモリブデン、Biはビスマス、Coはコバルト、Niはニッケル、Feは鉄、Xはナトリウム、カリウム、ルビジュウム、セシウム及びタリウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素、Yはほう素、りん、砒素及びタングステンからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素、Zはマグネシウム、カルシウム、亜鉛、セリウム及びサマリウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素、Qはハロゲン元素、Siはシリカ、Oは酸素を表す。また、a、b、c、d、e、f、g、h、i、j及びkは、それぞれMo、Bi、Co、Ni、Fe、X、Y、Z、Q、Si及びOの原子比を表し、モリブデン原子(Mo)が12のとき、0.5≦b≦7、0≦c≦10、0≦d≦1
0、1≦c+d≦10、0.05≦e≦3、0.0005≦f≦3、0≦g≦3、0≦h≦1、0≦i≦0.5、0≦j≦40であり、kは各元素の酸化状態によって決まる値である。
一方、上記炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒドからなる群から選ばれる反応原料ガスの少なくとも1種を酸化するときの触媒は、下記一般式(2)で表される金属酸化物からなる触媒が好適に例示される。
Mo(12)V(a)X(b)Cu(c)Y(d)Sb(e)Z(f)Si(g)C(h)O(i)・・・式(2)
上記式(2)中、XはNb及びWからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を示す。YはMg、Ca、Sr、BaおよびZnからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を示す。ZはFe、Co、Ni、Bi、Alからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を示す。但し、Mo、V、Nb、Cu、W、Sb、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Fe、Co、Ni、Bi、Al、Si、CおよびOは元素記号である。
a、b、c、d、e、f、g、hおよびiは各元素の原子比を表し、モリブデン原子(Mo)12に対して、0<a≦12、0≦b≦12、0≦c≦12、0≦d≦8、0≦e≦500、0≦f≦500、0≦g≦500、0≦h≦500であり、iは前記各成分のうちCを除いた各成分の酸化度によって決まる値である。
本発明の製造方法に用いられる固定床式反応器について説明する。
本発明の製造方法に用いられる固定床式反応器としては、特に限定されず、公知の多管式反応器、及びプレート式反応器が挙げられる。
上記多管式反応器の好適な例として、特開2005−336085号公報に記載された反応器を挙げることができる。
当該多管式反応器は、反応ガス供給口と反応物排出口とを有する円筒状反応器シェルと、該円筒状反応器シェルに熱媒体を導入または導出するための、円筒状反応器シェルの外周に配置される複数の環状導管と、該複数の環状導管を互いに接続する循環装置と、該反応器の複数の管板によって拘束され、かつ触媒を含有する複数の反応管と、該反応器シェルに導入された熱媒体の方向を変更するための複数の邪魔板とを該反応管の長手方向に有する多管式反応器である。上記反応管には、モリブデンを含有する触媒が充填されている。
上記多管式反応器の一つの実施態様を図1及び図2に従って説明する。
図1は、多管式反応器の一つの実施の形態を示すための概略断面図である。
多管式反応器のシェル(2)に、反応管(1b)、(1c)が管板(5a)、(5b)に固定され配置されている。反応ガスの入口である原料供給口、反応物の出口である反応物排出口は(4a)または(4b)である。反応ガスと熱媒体の流れは、向流でも並流でもよいが、向流が好ましい。また、反応ガスの流れ方向は、上昇流でも下降流でもかまわない。
図1においては、反応器シェル内の熱媒体の流れ方向が上昇流として矢印で記入されており、また、反応ガスと熱媒体の流れが向流となるように設計しているので、(4b)が原料供給口である。反応器シェルの外周には熱媒体を導入する環状導管(3a)が設置される。熱媒体の循環ポンプ(7)によって昇圧された熱媒体は、環状導管(3a)より反応器シェル内を上昇し、反応器シェルの中央部付近に開口部を有する穴あき邪魔板(6a)と、反応器シェルの外周部との間に開口部を有するように配置された穴あき邪魔板(6b)とを交互に複数配置することによって流れの方向が転換されて環状導管(3b)より循環ポンプに戻る。反応熱を吸収した熱媒体の一部は循環ポンプ7の上部に設けられた排出管より熱交換器(図には示されていない)によって冷却されて熱媒体供給ライン(8a)より、再度反応器へ導入される。熱媒体温度は、温度計(13)からフィードバックさ
れた信号を基に、熱媒体供給ライン(8a)から導入される還流熱媒体の温度または流量を制御することで調節される。
熱媒体の温度調節は、用いる触媒の性能にもよるが、熱媒体供給ライン(8a)と熱媒体抜き出しライン(8b)との熱媒体の温度差が1〜10℃、好ましくは2〜6℃となるように行われる。
また、反応器内に配置された反応管には温度計(11)が挿入され、反応器外まで信号が伝えられて、触媒層の反応器管軸方向の温度分布が記録される。反応管には複数本の温度計が挿入され、1本の温度計では管軸方向に5〜20点の温度が測定される。
図2は反応器のシェルを中間管板(9)で分割した場合の多管式反応器の概略断面図を示す。分割されたそれぞれの空間は別々の熱媒体が循環され、別々の温度に制御される。反応原料ガスは(4a)または(4b)のどちらから導入されても良いが、図2では、反応器シェル内の熱媒体の流れ方向が上昇流として矢印で記入されているので、反応ガスの流れが熱媒体の流れと向流となる(4b)が原料供給口である。原料供給口(4b)から導入された反応原料ガスが反応器の反応管内で逐次に反応する。
図2に示す多管式反応器は、中間管板(9)で区切られた反応器の上下のエリア(図2においてAエリア、Bエリア)で異なる温度の熱媒体が存在するため、反応管内は、1)同一触媒を全体に充填し、反応管の反応ガス入口と出口で温度を変えて反応させるケース、2)反応ガス入口部には触媒を充填し、反応生成物を急激に冷却するため出口部分には触媒を充填せず空筒あるいは反応活性の無い不活性物質を充填するケース、3)反応ガス入口部分と出口部分には異なる触媒が充填され、その間に反応生成物を急激に冷却するため触媒を充填せず空筒あるいは反応活性の無い不活性物質を充填するケースがある。
例えば、図2に示す多管式反応器に、炭素数3及び4の炭化水素、並びにターシャリーブタノールからなる群から選ばれる反応原料ガスの少なくとも1種を、原料供給口(4b)から導入し、まず前段反応用の1段目(反応管のAエリア)で炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒドからなる群から選ばれる反応原料ガスの少なくとも1種とし、さらに後段反応用の2段目(反応管のBエリア)で該炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒドからなる群から選ばれる反応原料ガスの少なくとも1種を酸化し炭素数3及び4の不飽和脂肪酸からなる群から選ばれる少なくとも一種を製造する。反応管の1段部分(以下、「前段部分」ともいう。)と2段部分(以下、「後段部分」ともいう。)には別の触媒が充填され、それぞれ異なった温度に制御されて最適な条件で反応が行われる。反応管の前段部分と後段部分の間の中間管板が存在する部分には反応には関与しない不活性物質が充填されることが好ましい。ここでは、前段部分と後段部分を1つの反応器に組み込んでいるが、前段部分を上記図1に示す構造を有する第1の反応器に組み込み、後段部分を第1の反応器とは別の上記図1に示す構造を有する第2の反応器に組み込んで反応物の製造を行うことも可能である。
上記多管式反応器に備わる反応管の内径は、反応管内の反応熱量と触媒粒径に影響されるが、10〜50mmが好ましく用いられ、より好ましくは20〜30mmである。反応管の内径が小さすぎると充填される触媒の量が減少し、必要な触媒量に対して反応管本数が多くなり反応器製作時の労力が大きくなることで多大な製作費用が必要となり工業的経済性が悪くなる。一方、反応管の内径が大きすぎると必要な触媒量に対して反応管表面積が小さくなり、反応熱の除熱のための伝熱面積を小さくしてしまう。また、反応管の長さは特に限定されない。
一方、プレート式反応器の第1の好適な例として、特開2004−167448号公報に記載された反応器を挙げることができる。
すなわち、2枚の伝熱プレートに挟まれた空間内に触媒を充填して反応帯域が形成され
、伝熱プレートの外側に熱媒体が供給される熱媒体流路を有するプレート式反応器が挙げられる。
上記プレート式反応器の反応帯域は複数の領域に分割することが可能であり、2枚の伝熱プレートの間隔を調整することで各反応帯域に充填された触媒層厚さを変化させることが可能である。特に、供給される反応ガスの入口から出口に向かって、反応帯域の各領域の触媒層厚さが増大する構造であることが好ましい。また、2枚の伝熱プレートの外側が複数の熱媒体流路に分割され、各々異なった温度を有する熱媒体を該流路に供給することが可能である。
通常の反応に於ける反応量は、反応ガスの入口部分が最も大きく、反応に伴う反応熱の発生は最大で、反応原料ガスの出口方向に減少する。2枚の伝熱プレートの間隔を調整して触媒層の厚さを変えることによって反応及び反応によって生じる熱をより精密に制御でき、触媒層温度の上昇に伴う、ホットスポットを防ぎ、触媒の損傷を防止することができる。
上記プレート式反応器に供給される反応ガスの方向は伝熱プレートに沿って流れ、熱媒体は伝熱プレートの外側に供給される。当該熱媒体の流れ方向は、特に制限は無いが、工業的規模での反応装置には通常、多量の触媒を収容する必要があり、多数の伝熱プレート対が設置されるので、反応ガスの流れと直角方向が都合よい。
図3に上記第1のプレート式反応器の具体例を示す。
熱媒体流路(15−1、15−2、及び15−3)と触媒層(12)とを隔離する薄板の伝熱プレート(10)は反応ガス入口(4b)から反応ガス出口(4a)への反応ガス流れに沿って、触媒層(12)の厚さを変えるために変形している。ここで、触媒層の厚さは反応ガスの流れ方向と直角方向に測ったプレート間の距離のことである。
2枚の伝熱プレート(10)の間に形成された触媒層(12)の厚さは、各熱媒体流路(15−1、15−2、及び15−3)に対応し、其々反応帯域(S1、S2、及びS3)を形成する。(16)は熱媒体供給口である。なお、上記において、反応帯域を3つとしているが、これは例示であり、反応帯域の数は限定されない。
また、伝熱プレート(10)は平板、凹凸を有するようにエンボス加工されたもの、または反応ガスの流れと直角方向に成形された波板の使用が可能である。反応ガスと熱媒体との伝熱効率を考慮すれば、凹凸板または波板形状が好適に用いられる。ここで、伝熱プレート(10)にエンボス加工、または波板が使用された場合の触媒層の厚さは以下に示す式で規定した。
(式)[触媒層の厚さ]=[触媒層の体積]÷[伝熱プレートの長さ(幅)(図3における紙面に垂直方向の長さ)]÷[伝熱プレートの反応ガスの流れ方向の長さ]
(ここで、[触媒層の体積]は、触媒層が形成される2枚の伝熱プレートを地面に対し垂直に保ち、かつ底(各反応帯域の最も下面)に蓋を設置して、2枚の伝熱プレートに挟まれた空間内に水などの液体又は直径1mm以下のガラスビーズを注ぎ入れたときに、該空間を満たすのに必要な水などの液体又は直径1mm以下のガラスビーズの体積とする。)
プレート式反応器の第2の好適な例として、特開2004−202430号公報に記載された反応器を挙げることができる。
すなわち、円弧、楕円弧或いは矩形に賦形された波板の2枚を対面させ、当該両波板の凸面部を互いに接合して複数の熱媒体流路を形成した伝熱プレートを、複数配列してなりかつ隣り合った伝熱プレートの波板凸面部と凹面部とが対面して所定間隔の触媒層を形成したプレート式反応器が挙げられる。
上記プレート式反応器において、波板に賦形された円弧、楕円弧或いは矩形の形状を変えることにより、触媒層に供給される反応ガスの入口から出口に向かって触媒層の厚さを変化させることが可能である。また、上記プレート式反応器は、反応帯域を複数の領域に分割することが可能であり、複数の領域に分割された反応帯域を上記触媒層の厚さの変化に対応させることが可能である。さらに、分割された複数の反応帯域には、独立して温度
調整された熱媒体が供給され、接触気相酸化反応により生じる熱を、伝熱プレートを隔てて除熱し、触媒層内の温度を独立して制御することが可能である。
上記プレート式反応器に供給される反応ガスの方向は伝熱プレートの外側に沿って流れ、熱媒体は伝熱プレートの内側に供給される。当該熱媒体の流れ方向は、反応ガスの流れに対して直角方向、即ち十字流の方向に流れる。
通常の反応に於ける反応量は、反応ガスの入口部分が最も大きく、反応に伴う反応熱の発生は最大で、反応ガスの出口方向に減少する。この反応熱の除熱を効率よくするために、伝熱プレートに使用される波板の凹凸形状を変え、2枚の伝熱プレートの間隙を調整して触媒層の厚さを変化させることが好ましい。触媒層の厚さを変化させることにより、反応をより精密に制御することができ、触媒層温度の上昇に伴う、ホットスポットを防ぎ、触媒の損傷を防止することができる。
図4に上記第2のプレート式反応器の具体例を示す。
図4に示されたように、伝熱プレート(10)は、円形、楕円形、矩形或いは多角形に賦形された波板の2枚を対面させ、当該両波板の凸面部を互いに接合して、複数の熱媒体流路(15−1、15−2、15−3)を形成する。また、隣り合った2枚の伝熱プレート(10)が互いに熱媒体流路の半分に相当する距離だけずれて向かい合い間隙を形成し、形成された間隙に触媒が充填され、触媒層(12)が形成される。さらに、隣り合った2枚の伝熱プレート(10)は、触媒層(12)へ反応ガスを導入する反応ガス入口(4b)と反応ガスを導出する反応ガス出口(4a)を具備する。
上記熱媒体流路は、図4のようにそれぞれ流路の断面形状(断面積)が異なっていてもよい。図4のように熱媒体流路(15−1)の幅がもっとも大きくなるように設計した場合、隣り合った上記伝熱プレート(10)の間隔は一定なので、隣り合った伝熱プレートの波板凸面部と凹面部とが対面して形成される間隔(A)(すなわち、触媒層(12)の層厚)はもっとも狭くなる。図4では、熱媒体流路(15−2)から(15−3)へと熱媒体流路の幅が、順次小さくなり、この熱媒体流路に対応する触媒層(12)の厚さは増大する。従って、熱媒体流路(15−1、15−2、及び15−3)に対応する触媒層(12)は、それぞれ触媒層の厚さが異なり、触媒層の厚さが異なる複数の反応帯域(S1、S2、及びS3)を形成することができる。ここで、触媒層の厚さとは、各反応帯域(S1、S2、及びS3)の各触媒層において、反応ガスの流れ方向と直角方向に測定された上記間隔(A)の平均値を意味する。本発明においては、以下に示す計算式を用いて規定した。
(式)[触媒層の厚さ]=[触媒層の体積]÷[伝熱プレートの長さ(幅)(図4における紙面に垂直方向の長さ)]÷[伝熱プレートの反応ガスの流れ方向の長さ]
(ここで、[触媒層の体積]は、触媒層が形成される2枚の伝熱プレートを地面に対し垂直に保ち、かつ底(各反応帯域の最も下面)に蓋を設置して、2枚の伝熱プレートに挟まれた空間内に水などの液体又は直径1mm以下のガラスビーズを注ぎ入れたときに、該空間を満たすのに必要な水などの液体又は直径1mm以下のガラスビーズの体積とする。)
なお、上記において、反応帯域を3つとしているが、これは例示であり、反応帯域の数は限定されない。
図5によって上記第2のプレート式反応器の具体例で用いられる伝熱プレート(10)の構成を更に詳しく説明する。図5は、円弧、楕円弧、矩形或いは多角形に変形された波板の2枚を対面させ、該両波板の凸部を互いに接合して、複数の熱媒体流路が形成された伝熱プレートを示す。
熱媒体流路の大きさ、及び触媒層の厚さは、波板の波の周期にあたる(L)と、波の高さ(H)で規定される。このとき、波の周期(L)は10〜100mmであることが好ましく、20〜50mmであることがより好ましい。一方、高さ(H)は、5〜50mmであることが好ましく、10〜30mmであることがより好ましい。
該伝熱プレートが2枚で平行、かつ互いに熱媒体流路の半分に相当する距離(L/2)だけずれて向かい合い間隙を形成し、その間隙に触媒が充填され、触媒層が形成される。
この平行な2枚の伝熱プレートの間隔(P)と熱媒体流路の周期(L)及び高さ(H)を変えることにより、触媒層の厚さが調節される。2枚の伝熱プレートの間隔Pは通常、10〜50mmである。
図5では、伝熱プレートの形状が円弧の一部で描かれているが、形状は楕円弧、矩形、三角形または多角形であってもよい。上記周期(L)と高さ(H)を変えることで触媒層厚さを精度良く制御できる。なお、触媒層厚さは、伝熱プレートの長さ(幅)方向(紙面に垂直な方向)において均一であることが好ましい。
また、上記触媒層の厚さは、図5に示す間隔(x)と相関し、当該間隔(x)は上記式で規定した触媒層の厚さの通常0.7〜0.9倍である。
上記プレート式反応器の伝熱プレート(10)の薄板の板厚は2mm以下、好適には1mm以下の鋼板が用いられる。
伝熱プレート(10)の反応ガス流れ方向の長さは通常2m(メートル)以下で、2m以上の時は2枚のプレートを接合するか、組み合わせて用いることもできる。
反応ガスの流れ方向と直角の方向(図3および図4では紙面に直角方向の奥行き)の長さは特に制限はなく、通常3から15メートルが用いられる。好ましくは6から10メートルである。伝熱プレート(10)は図5に示した配置と同様に積層され、積層される枚数には制限は無い。実際的には、反応に必要な触媒量から決定されるが、数十枚から数百枚である。
上記各反応帯域の触媒層の厚さは、特に限定されないが、4〜50mmであることが好ましい。
また、上記各反応帯域の触媒層の厚さは、反応原料ガスの負荷量及び触媒の形状(粒径など)によっても異なるが、図3に示すプレート式反応器においては、反応帯域(S1)の触媒層の厚さは4〜18mm(より好ましくは5〜13mm)であり、該反応帯域(S1)に続く反応帯域(S2)の触媒層の厚さは5〜23mm(より好ましくは7〜17mm)であり、該反応帯域(S2)に続く反応帯域(S3)の触媒層の厚さは8〜27mm(より好ましくは10〜22mm)であることが好ましく例示できる。
一方、図4に示すプレート式反応器においては、反応帯域(S1)の触媒層の厚さは5〜20mm(より好ましくは7〜15mm)であり、該反応帯域(S1)に続く反応帯域(S2)の触媒層の厚さは7〜25mm(より好ましくは10〜20mm)であり、該反応帯域(S2)に続く反応帯域(S3)の触媒層の厚さは12〜30mm(より好ましくは15〜25mm)であることが好ましく例示できる。
なお、該複数の反応帯域の触媒層の厚さは、反応ガスの入口から出口の方向に位置するに従って、順次増加することが好ましい。
上記触媒層の厚さの詳細は、反応量の変化によって異なるが、触媒層(12)の入口から出口まで連続的に変化させても良いし、段階的に変化させても良い。寧ろ、触媒を製造する際の反応活性の不揃いを考慮すれば、段階的に上記触媒層の厚さを変化させた方が自由度を確保できて良い。
また、上記反応帯域の分割数は2〜5が好ましく、反応ガスの入口から出口に向かって、各反応帯域の触媒層の厚さが増大することが好ましい。
さらに、各反応帯域における触媒層の反応ガスの流れ方向の長さは、反応原料ガスの転化率等を考慮して決定されるが、例えば、上記反応帯域が3つに分割された場合では、全触媒層長さに対して、反応帯域(S1)部分が10%〜55%、反応帯域(S2)部分が20%〜65%、反応帯域(S3)部分が25%〜70%の触媒層長さを適用することが好ましい。また、反応帯域(S3)部分の触媒層長さは反応原料ガスの転化率の達成度によって変化させることが好ましい。
上記反応において、反応原料ガスの転化率等を最適に保つためには、熱媒体の温度を調節することが挙げられる。熱媒体は、複数の反応帯域にそれぞれ最適な温度で供給されることが好ましい。このとき、熱媒体を流す方向は、反応ガスの流れ方向と直交させることが好ましい。
また、熱媒体の入口温度と出口温度の温度差は0.5〜10℃であることが好ましく、2〜5℃であることがより好ましい。
図4に示すプレート式反応器の場合は、熱媒体流路(15−1、15−2、15−3)のそれぞれにおいて、1〜複数の流路毎に、熱媒体の流量、温度、及び流す方向を変えることも可能である。また、一つの反応帯域においても、1〜複数の流路毎に、独立して同温の熱媒体を同じ方向に流す場合も、向流(カウンターフロー)方向に流す場合もある。また、ある反応帯域の熱媒体流路に供給され排出された熱媒体を同じあるいは別の反応帯域の熱媒体流路に供給することも可能である。
上記各反応器において、熱媒体流路に供給される熱媒体の温度は、反応原料ガスが、炭素数3及び4の炭化水素、並びにターシャリーブタノールからなる群から選ばれる反応原料ガスの少なくとも1種のときは、250〜450℃であることが好ましい。該反応原料ガスが、プロピレンの場合は、複数の反応帯域に供給される熱媒体の温度が250〜400℃であることが好ましい。
一方、反応原料ガスが、炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒドからなる群から選ばれる反応原料ガスの少なくとも1種のときは、200〜350℃であることが好ましい。該反応原料ガスがアクロレインの場合は、複数の反応帯域に供給される熱媒体の温度が200〜350℃であることが好ましい。
また、本発明の製造方法においては、当該熱媒体の温度を調節することで、反応原料ガスの転化率を最適に保つことが好ましい。各反応器の反応ガス出口での反応原料ガスの転化率は、90%以上であることが好ましく、より好ましくは95%以上であり、特に好ましくは97%以上である。
上記熱媒体としては、溶融塩(ナイター)が好適に例示できる。ナイターは、化学反応の温度コントロールに使用される熱媒体のうちで特に熱安定性に優れる。特に温度350〜550℃の高温において、最も優れた熱安定性を有する。
当該ナイターに使用される化合物としては、硝酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、硝酸カリウムがあり、これらを単独で又は2種以上を混合して使用することが出来る。
以下、実施例を用いて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。
本実施例において用いられる、反応原料ガス(プロピレン及びアクロレイン)の転化率、アクリル酸の選択率、及びアクリル酸の収率の計算方法を下記に記す。
<1>プロピレンの転化率[%] = 100−〔(反応器(B)出口のプロピレン体積流量)/(反応器(A)に供給されたプロピレン体積流量)×100
<2>アクロレインの転化率[%] = 100−〔(反応器(B)出口のアクロレイン体積流量)/(反応器(A)に供給されたプロピレン体積流量)×100
<3>アクリル酸の収率[%] = (反応器(B)出口のアクリル酸の体積流量)/(反応器(A)に供給されたプロピレン体積流量)×100
<4>アクリル酸の選択率[%] = (アクリル酸の収率)/(プロピレンの転化率)/(アクロレインの転化率)×100
また、本実施例で用いられる単位「NL」とは、標準状態(温度0℃、圧力101.325kPa)換算の体積(L)を意味する。
プロピレンを分子状酸素により接触気相酸化し、アクリル酸を製造するに当たり、プロピレンからアクロレインおよびアクリル酸に転換する前段用触媒としてMo(12)Bi(5)Co(3)Ni(2)Fe(0.4)Na(0.4)B(0.2)K(0.08)Si(24)O(x)の組成の金属酸化物粉末を調製し、これを成型して外径5mmφ、内径2mmφ、及び高さ3mmのリング形状の触媒(A)を得た。更にアクロレインをアクリル酸に転換する後段用触媒として、Mo(12)V(2.4)Ni(15)Nb(1)Cu(1)Sb(34)Si(7)O(x)の組成の金属酸化物粉末を調製し、この粉末を成型し、上記プロピレン酸化触媒と同じ形状の触媒(B)を得た。ここで、O(x)の(x)は各金属酸化物の酸化状態によって定まる値である。
<実施例1>
本実施例では、図1に示すものと同様の構造を有する多管式反応器を2器用いた。具体的には、反応管の長さが3,500mm、内径25mmのステンレス製反応管に反応管1本あたり上記触媒(A)を1リットル(L)充填したものを、反応器(A)とした。また、反応管の長さが3,500mm、内径25mmのステンレス製反応管に反応管1本あたり上記触媒(B)を1リットル(L)充填したものを、反応器(B)とした。また、触媒層の温度監視用の反応管には、外径4mmの多点式熱電対を設置した上で、他の反応管と同様に触媒を充填した。
先ず、反応器(A)の熱媒体温度を300℃、反応器(B)の熱媒温度を240℃に維持した。そして、反応器(A)の上部より、反応管1本あたり、露点がマイナス15℃より低い空気550NL/hr、露点がマイナス15℃より低い窒素310NL/hrを供給した後、水蒸気70NL/hrを供給し、ゲージ圧8kPaで運転した。このとき、反応器に供給される全ガス中の水蒸気濃度は7.5体積%、反応器に供給される全ガス中の水蒸気分圧は8.0kPaであった。次いで、水蒸気の供給開始から20分後にプロピレンの供給を開始して、1時間後にプロピレンの供給量を70NL/hrとし、ゲージ圧75kPaで運転を行った。また、得られた反応ガスと空気150NL/hr、窒素50NL/hrを混合し、反応器(B)上部より供給し、ゲージ圧45kPaで運転を行った。
なお、各反応器に供給される熱媒体は、プロピレンの転化率を98%、及びアクロレインの転化率を99%になるように、反応器(A)に供給される熱媒体の温度を315℃、反応器(B)に供給される熱媒体の温度を270℃に調整しながら運転を行った。
運転開始から1週間経過後に測定した、アクリル酸の選択率は88.1%であった。
運転開始から1週間経過後に、運転を一旦停止(シャットダウン)し、反応器を再スタートアップした。再スタートアップの手順は以下の通りである。
先ず、反応器(A)の上部より、露点がマイナス15℃より低い空気550NL/hr、露点がマイナス15℃より低い窒素310NL/hrを供給した後、水蒸気70NL/hrを供給し、ゲージ圧8kPaで運転した。このとき、反応器に供給される全ガス中の水蒸気濃度は7.5体積%、反応器に供給される全ガス中の水蒸気分圧は8.0kPaであった。水蒸気の供給開始から20分後にプロピレンの供給を開始して、1時間後にプロピレンの供給量を70NL/hrとし、ゲージ圧75kPaで運転を行った。また、得られた反応ガスと露点がマイナス15℃より低い空気150NL/hr、露点がマイナス15℃より低い窒素50NL/hrを混合し、反応器(B)上部より供給し、ゲージ圧45kPaで運転を行った。
なお、各反応器に供給される熱媒体は、プロピレンの転化率を98%、及びアクロレインの転化率を99%になるように、反応器(A)に供給される熱媒体の温度を317℃、反応器(B)に供給される熱媒体の温度を273℃に調整しながら運転を行った。結果、運転再開から1週間経過後に測定した、アクリル酸の選択率は88.9%であった。
<実施例2>
実施例1と同様の反応器を用い、同様の条件で運転した結果、運転開始から1週間経過後に測定した、アクリル酸の選択率は88.2%であった。次に、実施例1と同様、運転
開始から1週間経過後に、運転を一旦停止(シャットダウン)し、反応器を再スタートアップした。再スタートアップの手順及び運転条件は、水蒸気の供給開始から1時間50分後にプロピレンの供給を開始した以外、実施例1と同様の手順及び運転条件で運転を行った。結果、運転再開から1週間経過後に測定した、アクリル酸の選択率は88.9%であった。
<実施例3>
実施例1と同様の反応器を用い、同様の条件で運転した結果、運転開始から1週間経過後に測定した、アクリル酸の選択率は88.1%であった。次に、実施例1と同様、運転開始から1週間経過後に、運転を一旦停止(シャットダウン)し、反応器を再スタートアップした。再スタートアップの手順及び運転条件は、水蒸気の供給開始から4時間後にプロピレンの供給を開始した以外、実施例1と同様の手順及び運転条件で運転を行った。結果、運転再開から1週間経過後に測定した、アクリル酸の選択率は88.5%であった。
比較例3
実施例1と同様の反応器を用い、同様の条件で運転した結果、運転開始から1週間経過後に測定した、アクリル酸の選択率は88.0%であった。
次に、実施例1と同様、運転開始から1週間経過後に、運転を一旦停止(シャットダウン)し、反応器を再スタートアップした。再スタートアップの手順及び運転条件は、水蒸気の供給開始から5時間後にプロピレンの供給を開始した以外、実施例1と同様の手順及び運転条件で運転を行った。結果、運転再開から1週間経過後に測定した、アクリル酸の選択率は87.0%であった。
<比較例1>
実施例1と同様の反応器を用い、同様の条件で運転した結果、運転開始から1週間経過後に測定した、アクリル酸の選択率は88.1%であった。
次に、実施例1と同様、運転開始から1週間経過後に、運転を一旦停止(シャットダウン)し、反応器を再スタートアップした。再スタートアップの手順及び運転条件において、反応器(A)の上部より、大気中の空気をそのまま圧縮機で圧縮して得た空気550NL/hr、及び露点がマイナス15℃より低い窒素380NL/hrを供給した後、ゲージ圧8kPaで運転した。水蒸気は追加供給していないが、空気中に水蒸気が存在した為、反応器に供給される全ガス中の水蒸気分圧は1.7kPaであった。窒素の供給開始から20分後にプロピレンの供給を開始し、該プロピレンの供給に引き続きプロピレンと同量の水蒸気の供給を開始し、供給した水蒸気と窒素の合計の供給量が380NL/hrとなるように、窒素の量を低減した事以外は実施例1と同様の手順及び運転条件で再スタートアップを行った。結果、運転再開から1週間経過後に測定した、アクリル酸の選択率は86.9%であった。
<実施例5>
実施例1と同様の触媒を用い、プレート式反応器は図4に示す構造のものを用いた。波形形状の薄いステンレスプレート(板厚1mm)を2枚接合して反応温度調節用の熱媒体流路を形成した。図5に示す波形形状の周期(L)、高さ(H)及び波数を表1に示す。
該接合された波形伝熱プレートの一対に、表1の前段反応器には前記触媒(A)を、後段反応器には前記触媒(B)を、それぞれ充填して触媒層を形成した。前段反応器および後段反応器とも触媒層は波形形状の仕様によって、表1に示すように、反応ガスの流れ方向の上流から反応帯域(S1)、反応帯域(S2)及び反応帯域(S3)に分割した。1対の波形伝熱プレートは図4に示すように平行に設置し、その間隔(図5に示すP)を26mmに調整した。伝熱プレートの幅は114mmであった。
Figure 0005821977
表1に示す触媒量は各反応器を垂直にし、触媒層最下部に板を取り付けて上部より水を注いで測った体積測定の結果である。該触媒量を反応原料の負荷量の計算に用いた。
熱媒体には綜研テクニクス(株)社製のNeoSK−OIL(登録商標)1400を用いそれぞれ温度を調節した後、反応帯域(S1)〜反応帯域(S3)へ供給した。熱媒体の供給量は熱媒体の流速が毎秒0.7m以上となるようにした。
先ず、前段反応器の上部より、露点がマイナス15℃より低い空気3340NL/hr、露点がマイナス15℃より低い窒素970NL/hrを供給した後、水蒸気389NL/hrを供給し、ゲージ圧7kPaで運転した。このとき、反応器に供給される全ガス中の水蒸気濃度は8.3体積%、反応器に供給される全ガス中の水蒸気分圧は9.0kPaであった。空気、窒素、水蒸気の流量が安定している事を確認した上で、水蒸気の供給開始から1時間後にプロピレンの供給を開始して、徐々にプロピレンの供給量を増やし、水蒸気の供給開始から9時間後にプロピレンの供給量を433NL/hrとし、ゲージ圧69kPaで運転を行った。また、得られた反応ガスと露点がマイナス15℃より低い空気834NL/hr、露点がマイナス15℃より低い窒素357NL/hrを混合し、後段反応器上部より供給し、ゲージ圧43kPaで運転を行った。
各反応帯域(S1)、(S2)、及び(S3)へ供給された熱媒体の温度はそれぞれ339℃、332℃、及び332℃とした。
プロピレンの供給開始10時間後に前段反応器出口ガスをガスクロマトグラフィで分析したところ、プロピレンの転化率は97.0%、アクリル酸とアクロレインの合計選択率は92.4%であった。
プロピレン供給開始後12時間後に空気、窒素および水蒸気の供給は継続したまま、プロピレン原料の供給を一旦停止した。上記水蒸気供給開始から36時間後にプロピレンの供給を開始し、徐々に供給量を増やし、プロピレン供給再開後から8時間後にプロピレン流量を433NL/hrとした。
プロピレン供給再開後から10時間後に前段反応器出口ガスをガスクロマトグラフィで分析したところ、プロピレンの転化率は97.1%、アクリル酸とアクロレインの合計選択率は92.6%であった。
このとき各反応帯域(S1)、(S2)、及び(S3)へ供給された熱媒体の温度はそれぞれ344℃、332℃、及び332℃であった。
<比較例2>
実施例5において、プロピレン供給前には水蒸気の供給を行わず、水蒸気とプロピレンを同時に供給開始した以外は同じ条件で運転を開始した。
各反応帯域(S1)、(S2)、及び(S3)へ供給された熱媒体の温度はそれぞれ339℃、332℃、及び332℃とした。
プロピレンの供給開始10時間後に前段反応器出口ガスをガスクロマトグラフィで分析したところ、プロピレンの転化率は97.5%、アクリル酸とアクロレインの合計選択率は91.9%であった。
プロピレン供給開始後12時間後に空気、窒素および水蒸気の供給は継続したまま、プロピレン原料の供給を一旦停止した。上記水蒸気供給開始から36時間後にプロピレンの供給を開始し、徐々に供給量を増やし、プロピレン供給再開後から8時間後にプロピレン流量を433NL/hrとした。
プロピレン供給再開後から10時間後に前段反応器出口ガスをガスクロマトグラフィで分析したところ、プロピレンの転化率は97.6%、アクリル酸とアクロレインの合計選択率は91.8%であった。
このとき各反応帯域(S1)、(S2)、及び(S3)へ供給された熱媒体の温度はそれぞれ344℃、332℃、及び332℃であった。
1b、1c 反応管
2 反応器(シェル)
3a、3b 環状導管
3a’、3b’ 環状導管
4a 反応物排出口又は反応ガス出口
4b 原料供給口又は反応ガス入口
5a、5b 管板
6a、6b 穴あき邪魔板
6a’、6b’ 穴あき邪魔板
7 循環ポンプ
8a、8a’ 熱媒体供給ライン
8b、8b’ 熱媒体抜き出しライン
9 中間管板
10 伝熱プレート
11、13 温度計
12 触媒層
15−1 熱媒体流路
15−2 熱媒体流路
15−3 熱媒体流路
16 熱媒体供給口
P 一対の伝熱プレートの間隔
L 波の周期
H 波の高さ
x 間隔

Claims (7)

  1. モリブデンを含有する触媒を備えた固定床式反応器を使用して、プロピレン、プロパン、イソブチレン、イソブタン、及びターシャリーブタノールからなる群から選ばれる反応原料ガスの少なくとも1種を、水蒸気の存在下で、酸素含有ガスを用いて接触気相酸化させて、アクロレイン又はメタクロレインを生成する前段反応工程と、
    前記前段工程で使用したモリブデンを含有する触媒を備えた固定床式反応器、又は、前記前段工程で使用した固定床式反応器とは異なる、モリブデンを含有する触媒を備えた固定床式反応器を使用して、前記アクロレイン又はメタクロレインを、水蒸気の存在下で、酸素含有ガスを用いて接触気相酸化させて、アクリル酸又はメタクリル酸を生成する後段反応工程を含み、
    前記前段反応工程において、前記反応器をスタートアップするときに、昇温後、前記反応器に供給される全ガス中の水蒸気分圧が2.0kPa以上となるように水蒸気の供給を開始した後、5分以上、5時間未満に、前記反応原料ガスの供給を開始することを特徴とする、
    アクリル酸又はメタクリル酸を製造する製造方法。
  2. 前記反応器をスタートアップするときに、昇温後、一定温度で、前記反応器に供給される全ガス中の水蒸気分圧が2.0kPa以上となるように水蒸気の供給を開始することを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記スタートアップをするときが、前記反応器をスタートアップして前記反応物を一定期間製造して、前記反応器をシャットダウンした後に、前記反応器を再スタートアップするときであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 前記プロピレン、プロパン、イソブチレン、イソブタン及びターシャリーブタノールからなる群から選ばれる反応原料ガスの少なくとも1種を、水蒸気の存在下で、酸素含有ガスを用いて接触気相酸化させるときの触媒が、下記一般式(1)で表される金属酸化物からなることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の製造方法。
    Mo(a)Bi(b)Co(c)Ni(d)Fe(e)X(f)Y(g)Z(h)Q(i)Si(j)O(k)・・・式(1)
    (上記式(1)中、Moはモリブデン、Biはビスマス、Coはコバルト、Niはニッケル、Feは鉄、Xはナトリウム、カリウム、ルビジュウム、セシウム及びタリウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素、Yはほう素、りん、砒素及びタングステンから
    なる群から選ばれる少なくとも一種の元素、Zはマグネシウム、カルシウム、亜鉛、セリウム及びサマリウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素、Qはハロゲン元素、Siはシリカ、Oは酸素を表す。また、a、b、c、d、e、f、g、h、i、j及びkは、それぞれMo、Bi、Co、Ni、Fe、X、Y、Z、Q、Si及びOの原子比を表し、モリブデン原子(Mo)が12のとき、0.5≦b≦7、0≦c≦10、0≦d≦10、1≦c+d≦10、0.05≦e≦3、0.0005≦f≦3、0≦g≦3、0≦h≦1、0≦i≦0.5、0≦j≦40であり、kは各元素の酸化状態によって決まる値である。)
  5. 前記アクロレイン又はメタクロレインを、水蒸気の存在下で、酸素含有ガスを用いて接触気相酸化させるときの触媒が、下記一般式(2)で表される金属酸化物からなることを特徴とする、請求項1からのいずれか1項に記載の製造方法。
    Mo(12)V(a)X(b)Cu(c)Y(d)Sb(e)Z(f)Si(g)C(h)O(i)・・・式(2)
    (上記式(2)中、XはNb及びWからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を示す。YはMg、Ca、Sr、BaおよびZnからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を示す。ZはFe、Co、Ni、Bi、Alからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を示す。但し、Mo、V、Nb、Cu、W、Sb、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Fe、Co、Ni、Bi、Al、Si、CおよびOは元素記号である。また、a、b、c、d、e、f、g、hおよびiは各元素の原子比を表し、モリブデン原子(Mo)12に対して、0<a≦12、0≦b≦12、0≦c≦12、0≦d≦8、0≦e≦500、0≦f≦500、0≦g≦500、0≦h≦500であり、iは前記各成分のうちCを除いた各成分の酸化度によって決まる値である。)
  6. 前記固定床式反応器が、反応管を備えた多管式反応器であって、前記反応管の内径は10〜50mmである、請求項1からのいずれか1項に記載の製造方法。
  7. 前記固定床式反応器が、伝熱プレートの間に形成された触媒層を備えたプレート式反応器であって、前記プレート式反応器は、触媒層の厚さが異なる複数の反応帯域に分割されており、前記複数の反応帯域には、独立して温度調整された熱媒体が供給されるプレート式反応器である、請求項1からのいずれか1項に記載の製造方法。
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