JP5691152B2 - プレート式反応器を用いた反応生成物の製造方法 - Google Patents
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Description
上記方法では、反応管の入口から3分の1或いは4分の1の部分(反応管の前半部分)において反応が集中するにも拘わらず当該反応管は触媒量と伝熱面積が比例するため発生する反応熱を除去する能力が限界となって、当該部分の触媒温度が著しく上昇する(以下、ホットスポットともいう)。該触媒の一部の温度が、限界を超えた場合、触媒の一部が損傷し、触媒の耐用期間が短くなる。それゆえ、触媒温度を触媒の耐用温度以下に抑え得る温度に、供給される熱媒体の温度を設定しなければならず、反応管の前半部分以降に充填された触媒の生産性が極端に低下する。そのため、必要な触媒量、すなわち、多管式反応器が有する反応管の本数が増加し、結果、反応器の大型化を招くことになる。
また、特許文献2〜5では、多管式反応器のシェル側を分割して、異なる温度の熱媒体を供給し、さらに夫々の反応帯域に充填される触媒の仕様を変更する方法が提案されている。特に第一反応帯域の触媒を、更には第二反応帯域の触媒をも不活性物質で希釈し、触媒活性を調整した例が示されている。
[1] 伝熱プレートの間に形成された触媒層を備えたプレート式反応器に、反応原料を供給し、前記反応原料を反応させて反応生成物を製造する製造方法であって、
前記プレート式反応器は、複数の反応帯域、及び前記複数の反応帯域の各反応温度を制御するために用いられる熱媒体を供給するための熱媒体流路を備えたプレート式反応器であり、
前記複数の反応帯域のうち、前記反応原料の入口に最も近接する反応帯域S1におけるQ(1)/A(1)をX(1)とし、前記反応帯域S1に隣接し、反応原料の流れの下流に位置する反応帯域S2におけるQ(2)/A(2)をX(2)としたときに、前記X(2)のX(1)に対する比[X(2)/X(1)]が0.3以上1.5以下であることを特徴とする、反応生成物を製造する製造方法。
(前記Q(1)は反応帯域S1における単位時間当たりの反応熱量[kW]を、前記Q(2)は反応帯域S2における単位時間当たりの反応熱量[kW]を、前記A(1)は反応帯域S1の伝熱面積[m2]を、前記A(2)は反応帯域S2の伝熱面積[m2]をそれぞれ表す。)
[2] 前記プレート式反応器が3つ以上の反応帯域を有し、前記反応帯域S1に対して反応原料の流れの下流方向で前記反応帯域S1から数えてi番目(但し、iは3以上の整数)に位置する反応帯域S(i)におけるQ(i)/A(i)をX(i)とし、前記反応帯域S(i)に隣接し、反応原料の流れの上流に位置する反応帯域S(i−1)におけるQ(i−1)/A(i−1)をX(i−1)としたときに、前記X(i)のX(i−1)に対する比[X(i)/X(i−1)]が0.2以上1.0以下であることを特徴とする、[1]に記載の製造方法。
[3] 前記複数の反応帯域のうち、特定されない任意の反応帯域S(j)におけるV(j)/A(j)をY(j)とし、前記反応帯域S(j)に隣接し、反応原料の流れの下流に位置する反応帯域S(j+1)におけるV(j+1)/A(j+1)をY(j+1)としたときに、前記Y(j)とY(j+1)が、Y(j)<Y(j+1)、の関係を満たすことを特徴とする、[1]又は[2]に記載の製造方法。
(前記V(j)は反応帯域S(j)の体積[m3]を、前記V(j+1)は反応帯域S(j+1)の体積[m3]を、前記A(j)は反応帯域S(j)の伝熱面積[m2]を、前記A(j+1)は反応帯域S(j+1)の伝熱面積[m2]をそれぞれ表す。)
[4] 前記反応原料を反応させて反応生成物を製造するときの、前記反応原料の負荷量が、触媒1リットル当たり150リットル毎時[標準状態(温度0℃、101.325kPa)換算]以上であることを特徴とする、[1]から[3]のいずれか一に記載の製造方法。
[5] 前記複数の反応帯域の各反応温度を制御するために供給される各熱媒体の温度が同一でないことを特徴とする、[1]から[4]のいずれか一に記載の製造方法。
[6] 前記プレート式反応器が、円弧、楕円弧、矩形又は多角形の一部に賦形された波板の2枚を対面させ、前記両波板の凸面部を互いに接合して複数の熱媒体流路を形成した伝熱プレート、又は、円弧、楕円弧、矩形若しくは多角形の一部に賦形されたパターンが連続し、各パターンとパターンの間に連結部となる平面部が形成された2枚の波板を、前記平面部で互いに接合して複数の熱媒体流路を形成した伝熱プレート、を複数配列してなりかつ隣り合った伝熱プレートの波板凸面部と凹面部とが対面して所定間隔の触媒層を形成したプレート式反応器であることを特徴とする、[1]から[5]のいずれか一に記載の製造方法。
[7] 前記反応帯域の数が2以上10以下であることを特徴とする、[1]に記載の製造方法。
[8] 前記反応原料が、エチレン;炭素数3及び4の炭化水素、並びにターシャリーブタノールからなる群から選ばれる少なくとも1種、又は、炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒドからなる群から選ばれる少なくとも1種;炭素数4以上の脂肪族炭化水素又はベンゼン;キシレン又はナフタレン;オレフィン;カルボニル化合物;クメンハイドロパーオキサイド;ブテン;エチルベンゼンであり、前記反応原料に対応する前記反応生成物が、それぞれ、酸化エチレン;炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒド及び炭素数3及び4の不飽和脂肪酸の少なくとも一方;マレイン酸;フタル酸;パラフィン;アルコール;アセトン及びフェノール;ブタジエン;スチレンである、[1]から[7]のいずれか一に記載の製造方法。
[9] 前記反応原料が、炭素数3及び4の炭化水素、並びにターシャリーブタノールからなる群から選ばれる少なくとも1種、又は、炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒドからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、前記反応生成物が、炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒド及び炭素数3及び4の不飽和脂肪酸の少なくとも一方である、[8]に記載の製造方法。
(上記Q(1)は反応帯域S1における単位時間当たりの反応熱量[kW]を、上記Q(2)は反応帯域S2における単位時間当たりの反応熱量[kW]を、上記A(1)は反応帯域S1の伝熱面積[m2]を、上記A(2)は反応帯域S2の伝熱面積[m2]をそれぞれ表す。)
上記反応帯域の伝熱面積とは、反応帯域の表面積のうち、反応帯域の触媒層を囲み、熱媒体と接触して熱を交換することが可能な領域(熱媒体流路と触媒層の境界を形成するプレート部分)の面積[m2]を意味する。
上記反応帯域の体積とは、反応帯域の体積のうち、反応原料、及び触媒等が収容される反応帯域内の体積[m3]を意味する。
本発明に於いて、反応帯域における単位時間当たりの反応熱量[kW]の、当該反応帯域の伝熱面積[m2]に対する比をQ/A[単位:kW/m2]と標記する。一方、反応帯域の体積[m3]の当該反応帯域の伝熱面積[m2]に対する比をV/Aと標記する。
また、反応帯域とは、触媒条件(触媒活性、触媒形状、希釈率など)、熱媒体の温度条件、反応器構造などの異なることにより区別できる反応器の部分のことである。
例えば、反応帯域は、(1)[V/A]の値が同じ領域、(2)伝熱プレートの形状や間隔などの仕様が同じ領域、(3)反応帯域に供給される熱媒体の温度、反応帯域の圧力、反応帯域に供給される反応ガスの組成など反応条件が同じ領域、(4)充填される触媒の種類、混合される不活性物質の比率、活性、選択性など反応の特性、触媒の粒径などの形状やその分布などが同じ領域などの条件により区別できる。
上記複数の反応帯域を設定する方法としては、特に限定されないが、反応帯域の反応温度を制御するために用いられる熱媒体の温度や流量を変化させ、異なる制御が可能な反応帯域を複数設定する方法、反応帯域の体積や反応帯域の伝熱面積を変化させ反応帯域を複数にする方法、反応帯域に担持又は供給される触媒の量や単位体積当たりの触媒活性を変化させ反応帯域を複数にする方法、及びこれらを組合せる方法が挙げられる。
反応熱量の除去が制約となる反応においては、反応生成物の選択率や触媒の耐用温度が制約となるため、第1反応帯域で限界となることが一般的である。従って、第2反応帯域の反応量を増加すること、即ち上記[X(2)/X(1)]を大きくすることが重要である。すなわち、反応器の生産性向上には、上記[X(2)/X(1)]の最適化が重要である。
本発明の製造方法において、反応原料の入口に最も近接する反応帯域S1におけるQ(1)/A(1)をX(1)とし、反応帯域S1に隣接し、反応原料の流れの下流に位置する反応帯域S2におけるQ(2)/A(2)をX(2)としたときに、X(2)/X(1)が0.3以上1.5以下である。
上記[X(2)/X(1)]は、0.5以上1.3以下であることが好ましく、0.7以上1.1以下であることがより好ましい。
上記[X(2)/X(1)]が0.3以上1.5以下であることで、反応の副反応物の増加やホットスポット発生による触媒の劣化を防いで、反応器の生産性を最大限に向上させることができる。
上記[X(2)/X(1)]が、0.3未満の場合、単位触媒当たりの反応原料の処理負荷量を高めたときに、反応帯域(S1)での反応量が大きくなるため、反応によって生じる熱を適切に制御しホットスポットを防ぎつつ、反応生成物の収率を向上させることが困難となる。また、上記指標を用いない場合、反応によって生じる反応熱の授受に制限を加えざるを得ない状況に陥ることから反応器全体の設備が過剰かつ巨大化し、好ましくない。一方、上記[X(2)/X(1)]が、1.5を超える場合、第1反応帯域の低い生産性が原因で反応器全体の生産性が低下したり、第2反応帯域でのホットスポット現象により副反応生成物が増加し、反応選択率が低下したりする。
上記[X(i)/X(i−1)]が0.2以上1.0以下であることで、反応の副反応物の増加やホットスポット発生による触媒の劣化を防いで、反応器の生産性をより向上させることができる。
反応熱の減少に伴って、伝熱面積を減少させることが反応器の生産性向上には重要であるが、[X(i)/X(i−1)]が1.0を超えた場合、何らかの原因で、反応帯域S1から数えてi番目(但し、iは3以上の整数)に位置する反応帯域S(i)に隣接し、反応原料の流れの上流に位置する反応帯域(i−1)の反応転化率が低下した場合に、反応帯域S(i)には反応原料の流入が大きくなり、反応量が増加して触媒層温度が上昇し、反応選択率が低下すること(ホットスポット)がある。また、当該現象が急激で極端な場合には、反応帯域S(i)における反応温度の制御が困難となり暴走反応が観察されることがある。
上記反応帯域S(i)は元々反応転化率の高い領域で、反応熱量が小さい領域であるため、極端に伝熱面積A(i)を小さくして[X(i)/X(i−1)]を1.0より大きくすると、触媒層内で局部的に温度が上昇してホットスポット現象となり易く、触媒の劣化が促進され、反応選択率の低下により生産性が低下することがある。上記、「i」は3であることが好ましい。
(上記V(j)は反応帯域S(j)の体積[m3]を、上記V(j+1)は反応帯域S(j+1)の体積[m3]を、上記A(j)は反応帯域S(j)の伝熱面積[m2]を、上記A(j+1)は反応帯域S(j+1)の伝熱面積[m2]をそれぞれ表す。)
上記Y(j)<Y(j+1)、の関係を満たすことで、反応熱の制御が容易となり、反応帯域(j+1)におけるQ(j+1)/A(j+1)の、反応帯域(j)におけるQ(j)/A(j)に対する比[Q(j+1)/A(j+1)]/[Q(i)/A(i)]を高くすることができて、反応成績の低下や触媒劣化を防いで、反応器の生産性を高度に上げることが可能となる。
また、上記[X(2)/X(1)]は、(I)各反応帯域の各反応温度を制御するために用いられる熱媒体の温度、及び流量、(II)各反応帯域の体積、反応帯域の伝熱面積、(III)各反応帯域に担持又は供給される触媒の量、及び触媒の単位体積当たりの活性、を制御することで、上記範囲に調整することが可能である。上記(I)〜(III)は単独で適用することもできるが、組み合わせて適用した場合、上記範囲への調整が容易になることから好ましい。
また、上記特許文献1に記載されたような、反応管の内部を管軸方向に分割することにより複数個の反応帯域を設け、この各反応帯域にそれぞれに異なる温度の熱媒を供給して、反応帯域ごとに反応温度を制御し、特に第2反応帯域の反応温度を高めて触媒の生産性をアップし、反応器への反応ガスの処理量を増加する方法であっても、上記[X(2)/X(1)]は0.2程度で満足できるものではない。
上記特許文献2〜5には、多管式反応器のシェル側の熱媒体温度を分割し、かつ、第1反応帯域と第2反応帯域の触媒を不活性物質で希釈し、触媒活性を調整した方法が提案されている。しかしながら、触媒を不活性物質で希釈することによって、触媒層が長くなり、反応ガスの圧力損失が増加する、結果、折角に触媒の生産性が向上しても、反応器全体の生産性向上につながらない。
上記特許文献6には、第一反応帯域及び第二反応帯域に充填される触媒を不活性物質で希釈して、触媒層内の温度分布を調整し、共通の熱媒体温度を決定する反応器の運転方法が示されている。しかしながら、この方法は、トライアルで触媒の希釈率を決定しなければならないが、触媒層内の温度は一定と判断できないことが多く、温度計の挿入方法や位置(管中心か完璧近傍か)によって測定温度が異なり、測定値が安定しないため、温度分布の測定誤差が非常に大きく、正確に温度分布の面積が測定できない問題がある。
上記特許文献7及び8に記載された異径反応管を製作する方法は確立されておらず、製作コストの点からも、実用化は困難である。
上記特許文献9〜11には、向かい合った伝熱プレート間に触媒層が形成され、各反応帯域で向かい合う伝熱プレートの表面間の距離を変えることによって、触媒層厚さを変更できるプレート式反応器が記載されているが、複数の反応帯域を有する反応器において、反応帯域の単位時間当たりの反応熱量[kW]の該反応帯域の伝熱面積[m2]に対する比に着目するための示唆及びその効果については何ら言及されていない。
最適な反応帯域の数は反応の種類や特性によって異なり、反応熱の大きな反応や反応温度によって反応成績が影響される反応、或いは、用いられる触媒が反応温度によって劣化する傾向がある場合は反応帯域の数を大きくすることが好ましい。
しかし、反応帯域の数が大きすぎると、[Q/A]の調整が多すぎて操作が煩雑になるし、調整の効果にも限界がある。一方、反応帯域の数が少ないと、反応帯域の入口付近と出口付近で反応状態の差が大きくなりやすく、上記調整の効果が小さいことがある。例えば、反応帯域の数が2であって、特に反応器出口の反応転化率が高いときには、第1反応帯域と第2反応帯域との反応熱の差が大きいので、上記[X(2)/X(1)]を大きくすることが難しくなる傾向にある。
本発明の製造方法において、上記反応帯域(S1)における反応原料の転化率は、1%より大きく、80%以下であることが好ましく、30%より大きく、75%以下であることがより好ましく、50%より大きく、70%以下であることが特に好ましい。
ここで、反応原料の転化率[%]とは、(反応帯域出口で他物質に転化した反応原料のモル数)/(反応器に供給された反応原料のモル数)×100を意味する。
上記反応帯域(S1)における反応原料の転化率が、80%を超える場合、反応生成物の収率が低下する傾向にある。
また、上記反応帯域(S2)における反応原料の転化率は、30%以上100%以下であることが好ましく、40%以上95%以下であることがより好ましく、50%以上90%以下であることが特に好ましい。
上記反応帯域(S2)における反応原料の転化率が、上記範囲にある場合、反応生成物の収率低下を防止することが可能であるため、より好ましい。
さらに、上記反応帯域(S2)における反応原料の転化率を100%とし、当該反応帯域で、反応を押し切ることは可能であるが、反応生成物の種類によっては反応生成物の収率の低下をもたらすことがある。従って、上記反応帯域(S2)における反応原料の転化率を100%未満に設定し、当該反応帯域(S2)に隣接し、反応原料の流れの下流に位置する反応帯域を1つ以上設置することが特に好ましい。例えば、上記反応帯域(S2)における反応原料の転化率が100%未満の場合、当該反応帯域(S2)に隣接し、反応原料の流れの下流に位置する反応帯域(S3)、及び反応帯域(S3)に隣接する反応帯域(S4)を設置することが挙げられる。
(1)エチレンと酸素から酸化エチレンを生成する反応、(2)炭素数3及び4の炭化水素、並びにターシャリーブタノールからなる群から選ばれる反応原料の少なくとも1種、または、炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒドからなる群から選ばれる反応原料の少なくとも1種、並びに、分子状酸素を含む反応原料混合物から、反応原料を接触気相酸化し、炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒド、並びに炭素数3及び4の不飽和脂肪酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の反応生成物を生成する反応、(3)炭素数4以上の脂肪族炭化水素(例えば、n−ブタン、1−ブテン、2−ブテン、ブタジエン、イソブタン、イソブチレン)又はベンゼンと、酸素からマレイン酸 を生成する反応、(4)キシレン又はナフタレンと酸素からフタル酸を生成する反応、(5)オレフィンの水素化によりパラフィンを生成する反応、(6)カルボニル化合物の水素化によりアルコールを生成する反応、(7)クメンハイドロパーオキサイドの酸分解によりアセトンとフェノールを生成する反応、(8)ブテンの酸化脱水素によりブタジエンを生成する反応、(9)エチルベンゼンの酸化脱水素又は脱水素によりスチレンを生成する反応。
これらのうち、特に炭化水素類の酸化反応への適用が、高い反応熱の発生を伴い、気相反応で伝熱係数が小さく、反応熱の除熱が反応を制御する重要性が高いので、適用による効果が顕著であり、好ましい。
また、本発明の製造方法に用いられる反応原料は、上記反応に適用されうる反応原料であれば、特に限定されない。なお、上記反応生成物を得るための反応条件は、公知の反応条件を適用することが可能である。
上記反応は固定床気相反応で、反応熱が非常に大きく、反応の転化率が高いので反応器の生産性が非常に重要な例である。不飽和脂肪族アルデヒドであるアクロレインは典型的な規制物質で反応の中間物質として排出するには完全な無害化処理が必要な物質で、反応器では極力反応転化率を高く維持し、アクロレインの排出を少なくすることが要求される。
以下、上記(2)に係る反応、及び該反応に適用される反応原料の例を説明する。
上記炭素数3の炭化水素としては、プロピレン、プロパンが挙げられる。
上記炭素数4の炭化水素としては、イソブチレン、ブタンが挙げられる。
上記炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒドとしては、アクロレイン、メタクロレインが挙げられる。
また、上記反応生成物である炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒド、並びに炭素数3及び4の不飽和脂肪酸における、炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒドとしては、アクロレイン、メタクロレインが挙げられ、炭素数3及び4の不飽和脂肪酸としては、アクリル酸、メタクリル酸が挙げられる。上記反応は文献などでもしばしば指摘されているように、ホットスポットが発生しやすいので本発明の製造方法が好適に適用されうる。
また、近年、上記不飽和脂肪酸の製造は、大型化された反応器で、大量生産される生産設備が計画され、建設されている。従って、触媒の生産性をあげ、コンパクトな反応器を設計することは非常に重要である。
本発明の製造方法を用いることで、単位触媒当たりの反応原料の処理量が容易に増大させることが可能となる。これは、単位触媒当たりの反応原料の処理負荷量を高めたときであっても、反応の選択性及び触媒の寿命が損なわれることが無いからである。また、反応原料の出口に近い反応帯域において伝熱面積を小さく(例えば、図5において、Pが一定の場合、触媒は反応面から必要な量が決定される。一方、伝熱面積を小さくするためにはHを小さくするとよい。そうすると、触媒層厚さ(P−H)が大きくなり、結果的に触媒層長さが短くなる。)することもできるため、反応ガスの圧力損失を極力小さくすることができる効果も有する。
上記反応原料ガスは、1種のみの構成としてもよく、また2種以上を混合した混合物としてもよい。上記反応原料ガスの組成は、目的に応じて適宜選択される。
上記反応原料ガスの、上記反応ガス混合物に対する含有量は、特に限定されないが、反応原料ガスの総量として、5〜13モル%であることが好ましい。また、上記分子状酸素の、上記反応ガス混合物に対する含有量は、反応原料ガスの総量の1〜3倍量であることが好ましい。
上記不活性なガスの、上記反応ガス混合物に対する含有量は、上記反応ガス混合物全量から反応原料ガスの総量と分子状酸素量を除いた値となる。なお、上記不活性なガスは、反応系から排出される排気ガスを再循環した不活性ガスを用いてもよい。
例えば、上記(2)の反応における接触気相酸化に用いられる触媒の組成としては、モリブデン、タングステン、ビスマスなどを含む金属酸化物、または、バナジウムなどを含む金属酸化物が挙げられる。該組成の金属酸化物粉末を、球状、円柱状、ラシヒリング状、ペレット状、鞍状、星形状またはリング状に成型し、高温で焼成して触媒として用いる。
また、本発明の製造方法において、触媒の形状は、粒径(最長径)が1〜20mm(ミリメートル)であって、公知の形状のものが採用できる。さらに、触媒の嵩密度は、0.5〜2.0g/cm2であることが好ましい。
具体的には、直径が1〜20mm(より好ましくは1〜5mm)の球状、または楕円形以外の形状で1〜20mm(より好ましくは1〜5mm)の相当直径を有するペレット状、あるいは円柱の円柱中心に穴の開いたリング状の形状のもので、円外径が2〜10mm(より好ましくは1〜5mm)、円内径が1〜5mm、高さが2〜10mm(より好ましくは1〜5mm)の形状が好適に用いられる。
Mo(a)Bi(b)Co(c)Ni(d)Fe(e)X(f)Y(g)Z(h)Q(i)Si(j)O(k)・・・式(1)
上記式(1)中、Moはモリブデン、Biはビスマス、Coはコバルト、Niはニッケル、Feは鉄、Xはナトリウム、カリウム、ルビジュウム、セシウム及びタリウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素、Yはほう素、りん、砒素及びタングステンからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素、Zはマグネシウム、カルシウム、亜鉛、セリウム及びサマリウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素、Qはハロゲン元素、Siはシリカ、Oは酸素を表す。
また、a、b、c、d、e、f、g、h、i、j及びkは、それぞれMo、Bi、Co、Ni、Fe、X、Y、Z、Q、Si及びOの原子比を表し、モリブデン原子(Mo)が12のとき、0.5≦b≦7、0≦c≦10、0≦d≦10、1≦c+d≦10、0.05≦e≦3、0.0005≦f≦3、0≦g≦3、0≦h≦1、0≦i≦0.5、0≦j≦40であり、kは各元素の酸化状態によって決まる値である。
Mo(12)V(a)X(b)Cu(c)Y(d)Sb(e)Z(f)Si(g)C(h)O(i)・・・式(2)
上記式(2)中、XはNb及びWからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を示す。YはMg、Ca、Sr、BaおよびZnからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を示す。ZはFe、Co、Ni、Bi、Alからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を示す。但し、Mo、V、Nb、Cu、W、Sb、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Fe、Co、Ni、Bi、Al、Si、CおよびOは元素記号である。a、b、c、d、e、f、g、hおよびiは各元素の原子比を表し、モリブデン原子(Mo)12に対して、0<a≦12、0≦b≦12、0≦c≦12、0≦d≦8、0≦e≦500、0≦f≦500、0≦g≦500、0≦h≦500であり、iは前記各成分のうちCを除いた各成分の酸化度によって決まる値である。
また、反応器の形態は、反応帯域での反応状態に応じて、反応帯域に供給される熱媒体の温度、反応帯域の体積、反応帯域の伝熱面積、触媒活性などが変更可能な構造であれば、特に制限されないが、公知のプレート式反応器などが好適に例示できる。
すなわち、2枚の伝熱プレートに挟まれた空間内に触媒を充填して反応帯域が形成され、伝熱プレートの外側に熱媒体が供給される熱媒体流路を有するプレート式反応器が挙げられる。
上記プレート式反応器の反応帯域は、2枚の伝熱プレートの間隔及び反応原料の流れ方向の長さを調整し、当該間隔及び長さを変化させることで、本発明で規定する反応帯域の体積、及び、反応帯域の伝熱面積の異なる複数の反応帯域に分割することが可能である。また、2枚の伝熱プレートの外側が複数の熱媒体流路に分割され、各々に同じ又は異なった温度を有する熱媒体を該流路に供給することが可能である。
上記プレート式反応器に供給される反応原料の方向は伝熱プレートに沿って流れ、熱媒体は伝熱プレートの外側に供給される。当該熱媒体の流れ方向は、特に制限は無いが、工業的規模での反応装置には通常、多量の触媒を収容する必要があり、多数の伝熱プレート対が設置されるので、反応原料の流れと直角方向が都合よい。
熱媒体流路(15−1、15−2、及び15−3)と触媒層(12)とを隔離する薄板の伝熱プレート(10)は反応ガス入口(4b)から反応ガス出口(4a)への反応ガス流れに沿って、触媒層(12)の厚さを変えるために変形している。ここで、触媒層の厚さは反応ガスの流れ方向と直角方向に測ったプレート間の距離のことである。
2枚の伝熱プレート(10)の間に形成された触媒層(12)の厚さは、各熱媒体流路(15−1、15−2、及び15−3)に対応し、其々反応帯域(S1、S2、及びS3)を形成する。(16)は熱媒体供給口である。なお、上記において、反応帯域を3つとしているが、これは例示であり、反応帯域の数は限定されない。
また、伝熱プレート(10)は平板、凹凸を有するようにエンボス加工されたもの、または反応ガスの流れと直角方向に成形された波板の使用が可能である。反応原料と熱媒体との伝熱効率を考慮すれば、凹凸板または波板形状が好適に用いられる。
ここで、伝熱プレート(10)にエンボス加工、若しくは波板が使用された場合、又は伝熱プレート(10)の間隔が連続的に変化する場合の、本発明で規定する反応帯域の体積、及び、反応帯域の伝熱面積は以下に示す方法で算出できる。
反応帯域の体積は、触媒層が形成される2枚の伝熱プレートを地面に対し垂直に保ち、かつ底(各反応帯域の最も下面)に蓋を設置して、2枚の伝熱プレートに挟まれた空間内に水などの液体を注ぎ入れたときに、該空間を満たすのに必要な水などの液体の体積とする。
また、反応帯域の伝熱面積は、伝熱プレートの凹凸部の長さと熱媒体流路の長さから算出することができる。
一方、本発明で規定する、反応帯域における単位時間当たりの反応熱量[kW]は、反応帯域から排出される反応生成物を分析し、各反応生成物の量と反応熱を用いて算出したり、熱媒体流路入口と出口での熱媒体温度差と熱媒体流量から算出することが可能である。また、近年コンピューターによる反応シミュレーション技術が開発されており、これを用いて算出することも可能である。
すなわち、円弧、楕円弧、矩形或いは多角形の一部に賦形された波板の2枚を対面させ、当該両波板の凸面部を互いに接合して複数の熱媒体流路を形成した伝熱プレートを、複数配列してなりかつ隣り合った伝熱プレートの波板凸面部と凹面部とが対面して所定間隔の触媒層を形成したプレート式反応器(2−1)、又は、円弧、楕円弧、矩形或いは多角形の一部に賦形されたパターンが連続し、各パターンとパターンの間に連結部となる平面部が形成された2枚の波板を、当該平面部で互いに接合して複数の熱媒体流路を形成した伝熱プレートを、複数配列してなりかつ隣り合った伝熱プレートの波板凸面部と凹面部とが対面して所定間隔の触媒層を形成したプレート式反応器(2−2)が挙げられる。
ここで、上記「円弧、楕円弧、矩形或いは多角形の一部に賦形された波板」とは、波板の波の形状が円弧、楕円弧、矩形或いは多角形の一部の形状であることを意味する。
上記プレート式反応器において、波板に賦形された円弧、楕円弧、矩形或いは多角形の一部の形状を変えることにより、触媒層に供給される反応原料の入口から出口に向かって触媒層の厚さを変化させることが可能である。すなわち、上記プレート式反応器は、波板に賦形された円弧、楕円弧、矩形或いは多角形の一部の形状を変えることにより、反応器に供給される反応原料の入口から出口に向かって、本発明で規定する反応帯域の体積、及び、反応帯域の伝熱面積の異なる複数の反応帯域に分割することが可能である。また、分割された複数の反応帯域には、独立して熱媒体が供給され、各反応帯域の各反応温度を独立して制御することが可能である。
上記プレート式反応器に供給される反応原料の方向は伝熱プレートの外側に沿って流れ、熱媒体は伝熱プレートの内側に供給される。当該熱媒体の流れ方向は、反応原料の流れに対して直角方向、即ち十字流の方向に流れる。
図3に示されたように、伝熱プレート(10)は、円形、楕円形、矩形或いは多角形の一部に賦形された波板の2枚を対面させ、当該両波板の凸面部を互いに接合して、複数の熱媒体流路(15−1、15−2、15−3)を形成する。また、隣り合った2枚の伝熱プレート(10)が互いに熱媒体流路の半分に相当する距離だけずれて向かい合い間隙を形成し、形成された間隙に触媒が充填され、触媒層(12)が形成される(上記2−1)。(上記2−2の伝熱プレートであれば、円弧、楕円弧、矩形或いは多角形の一部に賦形されたパターンが連続し、各パターンとパターンの間に連結部となる平面部が形成された2枚の波板を、当該平面部で互いに接合して、複数の熱媒体流路を形成する。また、隣り合った2枚の伝熱プレートが互いに熱媒体流路及び連結部の半分に相当する距離だけずれて向かい合い間隙を形成し、形成された間隙に触媒が充填され、触媒層が形成される。)さらに、隣り合った2枚の伝熱プレート(10)は、触媒層(12)へ反応原料を導入する反応原料入口(4b)と反応原料を導出する反応原料出口(4a)を具備する。
上記熱媒体流路は、図3のようにそれぞれ流路の断面形状(断面積)が異なっていてもよい。図3のように熱媒体流路(15−1)の幅がもっとも大きくなるように設計した場合、隣り合った上記伝熱プレート(10)の間隔は一定なので、隣り合った伝熱プレートの波板凸面部と凹面部とが対面して形成される間隔(A)(すなわち、触媒層(12)の層厚)はもっとも狭くなる。図3では、熱媒体流路(15−2)から(15−3)へと熱媒体流路の幅が、順次小さくなり、この熱媒体流路に対応する触媒層(12)の厚さは増大する。従って、熱媒体流路(15−1、15−2、及び15−3)に対応する触媒層(12)は、それぞれ触媒層の厚さが異なり、触媒層の厚さが異なる複数の反応帯域(S1、S2、及びS3)を形成することができる。つまり、当該反応帯域(S1、S2、及びS3)は、本発明で規定する反応帯域の体積、及び、反応帯域の伝熱面積の異なる複数の反応帯域である。
ここで、上記反応帯域の体積、及び、反応帯域の伝熱面積は以下に示す方法で算出できる。
反応帯域の体積は、触媒層が形成される2枚の伝熱プレートを地面に対し垂直に保ち、かつ底(各反応帯域の最も下面)に蓋を設置して、2枚の伝熱プレートに挟まれた空間内に水などの液体を注ぎ入れたときに、該空間を満たすのに必要な水などの液体の体積とする。また、反応帯域の伝熱面積は、伝熱プレートの凹凸部の長さと熱媒体流路の長さから算出する。
一方、本発明で規定する、反応帯域における単位時間当たりの反応熱量[kW]は、熱媒体流路入口と出口での熱媒体温度差と熱媒体流量から算出することが可能である。
なお、上記において、反応帯域を3つとしているが、これは例示であり、反応帯域の数は限定されない。
ここで、反応帯域の体積及び反応帯域の伝熱面積は、波板の波の周期にあたる(L)、波の高さ(H)、及び伝熱プレートの間隔(P)(上記[2−1]の例)、又は、波板の波の周期にあたる(L)、波の高さ(H)、連結部の長さ(Z)及び伝熱プレートの間隔(P)(上記[2−2]の例)で規定される(図6参照;伝熱面積は図6の太線部分で連結部分は除く)。
このとき、波の周期(L)は10〜100mmであることが好ましく、20〜50mmであることがより好ましい。また、高さ(H)は、5〜50mmであることが好ましく、10〜30mmであることがより好ましい。一方、連結部長さ(Z)は0.05〜15mmである。15mmを超えると伝熱性能が低下し触媒層の除熱性能上好ましくない。
該伝熱プレートが2枚で平行、かつ互いに熱媒体流路の半分に相当する距離(L/2)、又は、互いに熱媒体流路及び連結部の長さの半分に相当する距離([L+Z]/2)だけずれて向かい合い間隙を形成し、その間隙に触媒が充填され、反応帯域が形成される。この平行な2枚の伝熱プレートの間隔(P)と熱媒体流路の周期(L)及び高さ(H)を変えることにより、反応帯域の体積、及び、反応帯域の伝熱面積が調節される。2枚の伝熱プレートの間隔Pは、図4に示す間隔(x)を3〜40mmとなるように設計するために、10から50mmであり、好ましくは、20〜35mmである。また、上記間隔Pを、熱媒体流路の波の高さ(H)の半値の和の1.1〜5倍の範囲に設定する手法を用いてもよい。
図4及び図5では、伝熱プレートの形状が円弧の一部で描かれているが、形状は楕円弧、矩形、三角形または多角形(例えば、三角形、四角形、五角形や六角形などで、多角形の角の部分が丸みを帯びた円弧或いは楕円弧である場合も含む)の一部及びこれらの組み合わせであってもよい。
同一反応帯域の触媒層において、上記触媒層厚さの均一性が満たされない場合、例えば、一部の触媒層厚みが他の部分に比べて大きい場合などは、当該部分の除熱が他の部分に比して劣り、当該部分の触媒層内温度が上昇し反応成績を低下させる可能性がある。
上記スペーサーは、触媒層全面に渡って触媒層厚さを均等に保つ観点から、伝熱プレートの長さ(幅)方向に5cm〜2mの間隔で設置することが好ましく、10cm〜1mの間隔で設置することがより好ましく、20cm〜50cmの間隔で設置することが特に好ましい。
伝熱プレートとスペーサーに囲まれた区画に、触媒が充填され触媒層が形成される。該区画に充填される触媒の容積は、1〜100Lであることが好ましく、1.5〜30Lであることがより好ましく、2〜15Lであることが特に好ましい。各区画に充填される触媒の容積は、同一でも異なっていても良い。しかしながら、触媒充填時の作業性の観点から、各区画に充填される触媒の容積は3種類以下であることが好ましく、同一であることがより好ましい。
上記スペーサーには、ステンレス鋼、カーボンスチール、ハステロイ、チタン、アルミニウム、エンジニアリングプラスチック及び銅製の板、角棒、丸棒、網、グラスウール、及びセラミック板が用いられる。
反応ガスの流れ方向と直角の方向(図2および図3では紙面に直角方向の奥行き;熱媒体の流れ方向)の長さは特に制限はなく、通常0.5〜20mが用いられる。好ましくは3〜15m、より好ましくは6〜10mである。伝熱プレート(10)は図4又は図5に示した配置と同様に積層され、積層される枚数には制限は無い。実際的には、反応に必要な触媒量から決定されるが、10枚〜300枚程度である。
一方、熱媒体を流す方向は、反応原料の流れ方向と直交させることが好ましい。また、熱媒体の各流路における入口温度と出口温度の温度差は0.5〜10℃であることが好ましく、2〜5℃であることがより好ましい。
上記熱媒体の流速や、各流路における入口温度と出口温度の温度差は、反応熱の除去、反応温度の均一性、及び触媒の劣化の観点からは、小さい方が好ましいが、小さすぎると熱媒体の流量及び圧力損失が増加するため、熱媒体供給用のポンプが大型化し、必要な動力も増加する。
図3に示すプレート式反応器の場合は、熱媒体流路(15−1、15−2、15−3)のそれぞれにおいて、1〜複数の流路毎に、熱媒体の流量、温度、及び流す方向を変えることも可能である。また、一つの反応帯域においても、1〜複数の流路毎に、独立して同温の熱媒体を同じ方向に流す場合も、向流(カウンターフロー)方向に流す場合もある。また、ある反応帯域の熱媒体流路に供給され排出された熱媒体を同じあるいは別の反応帯域の熱媒体流路に供給することも可能である。
一方、反応原料が、炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒドからなる群から選ばれる反応原料の少なくとも1種のときは、200〜350℃であることが好ましく、より好ましくは、250〜330℃である。該反応原料がアクロレインの場合は、複数の反応帯域に供給される熱媒体の温度が200〜350℃であることが好ましく、250〜320℃であることがより好ましい。
当該ナイターに使用される化合物としては、硝酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、硝酸カリウムがあり、これらを単独で又は2種以上を混合して使用することが出来る。
<1>反応原料(プロピレン、アクロレイン等)の転化率[%] =
(反応帯域出口で他物質に転化した反応原料のモル数)/(反応器に供給された反応原料のモル数)×100
<2>反応生成物の選択率[%] =
(反応帯域出口における反応生成物のモル数)/(反応帯域出口で他物質に転化した反応原料のモル数)×100
<3>反応生成物の収率[%] =
(反応帯域出口における反応生成物のモル数)/(反応器に供給された反応原料のモル数)×100
<4>反応原料の供給量[NL/時]は、反応原料の毎時供給量L[リットル][標準状態(0℃、101.325kPa)換算]を意味する。ここで、標準状態とは、温度0℃、101.325kPaにおかれた状態をいう。
<5>反応帯域における単位時間当たりの反応熱量(下記表3〜5における反応熱Q)[kW]は、反応帯域から排出されるガスをガスクロマトグラフにより分析して各生成物量を求め、各反応生成物の反応熱を掛け合わせ、更に各反応帯域の入口と出口のガス温度から反応ガスの熱容量を補正する事により算出した。
プロピレンを分子状酸素により接触気相酸化し、アクリル酸を製造するに当たり、プロピレンからアクロレインおよびアクリル酸に転換する前段用触媒を以下のように調製した。
パラモリブテン酸アンモン94質量部を純水400質量部に加熱溶解した。一方、硝酸第二鉄7.2質量部、硝酸コバルト25質量部及び硝酸ニッケル38質量部を純水60質量部に加熱溶解させた。これらの溶液を十分に攪拌しながら混合し、スラリー状の溶液を得た。次いで、純水40質量部にホウ砂0.85質量部及び硝酸カリウム0.36質量部を加熱下で溶解し、上記スラリーに加えた。更に粒状シリカ64質量部を加えて攪拌した。
得られたスラリーに、予めMgを0.8質量%複合した次炭酸ビスマス58質量部を加えて攪拌混合し、このスラリーを加熱乾燥した後、空気雰囲気で300℃、1時間熱処理し粒状固体を得た。得られた粒状固体を、成型機を用いて直径4mm、高さ3mmの錠剤に打錠成型した。得られた成型物を、500℃、4時間の焼成を行って触媒Aを得た。
得られた前段用触媒Aは、Mo(12)Bi(5)Ni(3)Co(2)Fe(0.4)Na(0.2)Mg(0.4)B(0.2)K(0.1)Si(24)O(x)[酸素の組成xは各金属の酸化状態によって定まる値である]の組成を有する複合酸化物であった。
硝酸ニッケル136gを温水90mlに溶解し、これにシリカ(商品名:カーブレックス#67)50g及び三酸化アンチモン150gを徐々に攪拌しながら加えた。このスラリー状液を加熱して濃縮し、90℃で乾燥した。ついで、これをマッフル炉にて800℃で3時間焼成し、得られた固体を粉砕して、60メッシュ篩を通過した粉末(Sb−Ni−Si−O粉末)を得た。
次に、純水540mlを80℃に加熱して、パラタングステン酸アンチモン8.1g、パラモリブテン酸アンチモン63.9g、メタバナジン酸アンチモン8.4gおよび塩化第一銅7.8gを攪拌しながら順次加えて溶解させた。次に、上記Sb−Ni−Si−O粉末をこの溶液に攪拌しながら徐々に加えて、十分に混合しスラリーを得た。得られたスラリーを80〜100℃に加熱濃縮し、乾燥した。この乾燥品を粉砕して、24メッシュ篩を通過させて得られる粉体に1.5質量%のグラファイトを添加混合し、小型打錠成型機にて直径5mm、高さ4mmの円柱状に成型した。得られた成型物をマッフル炉にて400℃で5時間焼成して後段用触媒Bを得た。
得られた後段用触媒BはMo(12)V(2.4)Ni(15)W(1)Cu(1)Sb(34)Si(27)O(x)[酸素の組成xは各金属の酸化状態によって定まる値である]の組成を有する複合酸化物であった。
下記実施例1以下で用いたプレート式反応器(表1の反応器A及び反応器B)は図3に示す構造のものを用いた。波形形状の薄いステンレスプレート(板厚1mm)を2枚接合して反応温度調節用の熱媒体流路を形成した。図4に示す波形形状の周期(L)、及び高さ(H)、並びに反応帯域の長さを表1に示す。
該接合された波形伝熱プレートの一対に、反応器Aには上記前段用触媒Aを、反応器Bには上記後段用触媒Bを、それぞれ充填して触媒層を形成した。反応器Aおよび反応器Bとも触媒層は波形形状の仕様によって、表1に示すように、反応ガスの流れ方向の上流から反応帯域(S1)、反応帯域(S2)及び反応帯域(S3)に分割した。1対の波形伝熱プレートは図3に示すように平行に設置し、その間隔(図4に示すP)を26mmに調整した。伝熱プレートの幅は114mmであった。
なお、下記表1に示す「反応帯域の体積」は各反応器を垂直にし、各反応帯域最下部に板を取り付けて上部より水を注いで測った体積測定の結果である。また、下記表1に示す「反応帯域の伝熱面積」は、波型形状の長さの測定結果と伝熱プレート幅を掛け合わせて算出した結果である。上記反応器A及び反応器Bに充填された触媒量は2.9Lであった。
下記実施例1及び2、並びに比較例1における、反応原料の供給量、反応器Aにおける差圧及び反応原料組成を表2に示す。
表1に示す反応器Aに上記前段用触媒Aを充填し、プロピレンの酸化反応を行った。熱媒体流路には熱媒体として、綜研テクニクス(株)社製のNeoSK−OIL(登録商標)1400を用い、それぞれ温度を調節した後、反応帯域(S1)〜反応帯域(S3)へ供給した。熱媒体の供給量は熱媒体の流速が毎秒0.7m以上となるようにした。
また、運転条件は、表2に示す組成の反応原料を、表2に示す供給量で反応器の入口に供給した。また、各反応帯域(S1)、(S2)、及び(S3)へ供給された熱媒体の温度はそれぞれ表3に示す温度とした。反応器入口の圧力は0.045MPaG(メガパスカルゲージ)であった。プロピレンの転化率等の結果を表3に示す。
表1に示す反応器Bに上記後段用触媒Bを充填し、アクロレインを酸化し、アクリル酸を製造した。酸化反応のための分子状酸素の供給源である、空気1,594リットル毎時[標準状態(温度0℃、101.325kPa)換算]と、窒素449リットル毎時と、実施例2で得られた反応器出口ガスとを、混合して上記反応器Bに供給した。
反応器Bの各反応帯域(S1)、(S2)、及び(S3)に供給された熱媒体の温度は、それぞれ表4に示す温度とした。アクロレインの転化率等の結果を表4に示す。
表1に示す反応器Bに上記後段用触媒Bを充填し、アクロレインを酸化し、アクリル酸を製造した。酸化反応のための分子状酸素の供給源である、空気1,859リットル毎時[標準状態(温度0℃、101.325kPa)換算]と、窒素524リットル毎時と、実施例1で得られた反応器出口ガスとを、混合して上記反応器Bに供給した。
反応器Bの各反応帯域(S1)、(S2)、及び(S3)に供給された熱媒体の温度は、それぞれ表5に示す温度とした。アクロレインの転化率等の結果を表5に示す。
なお、上記表3〜5中において、反応熱Qは、反応器の各反応帯域における単位時間当たりの反応熱量[kW]を意味する。
また、第i反応帯域におけるQ/A比は[X(i)/X(i−1)](iは2以上の整数)を意味する。
ここで、X(i)=Q(i)/A(i)
Q(i)は、反応器の第i反応帯域における単位時間当たりの反応熱量[kW]、
A(i)は、反応器の第i反応帯域の伝熱面積[m2]
X(i−1)=Q(i−1)/A(i−1)
Q(i−1)は、反応器の第(i−1)反応帯域における単位時間当たりの反応熱量[kW]、
A(i−1)は、反応器の第(i−1)反応帯域の伝熱面積[m2]
4b 原料供給口又は反応原料入口
10 伝熱プレート
12 触媒層
15−1 熱媒体流路
15−2 熱媒体流路
15−3 熱媒体流路
16 熱媒体供給口
P 一対の伝熱プレートの間隔
L 波の周期
H 波の高さ
Z 連結部の長さ
Claims (5)
- 伝熱プレートの間に形成された触媒層を備えたプレート式反応器に、反応原料を供給し、前記反応原料を反応させて反応生成物を製造する製造方法であって、
前記プレート式反応器は、複数の反応帯域、及び前記複数の反応帯域の各反応温度を制御するために用いられる熱媒体を供給するための熱媒体流路を備えたプレート式反応器であり、
前記複数の反応帯域の各反応温度を制御するために供給される各熱媒体の温度が同一でなく、
各反応帯域には、独立して熱媒体が供給され、各反応帯域の各反応温度は独立して制御され、
前記複数の反応帯域のうち、前記反応原料の入口に最も近接する反応帯域S1におけるQ(1)/A(1)をX(1)とし、前記反応帯域S1に隣接し、反応原料の流れの下流に位置する反応帯域S2におけるQ(2)/A(2)をX(2)としたときに、前記X(2)のX(1)に対する比[X(2)/X(1)]が0.3以上1.5以下であり、
前記反応原料が、炭素数3及び4の炭化水素、並びにターシャリーブタノールからなる群から選ばれる少なくとも1種、又は、炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒドからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、前記反応生成物が、炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒド及び炭素数3及び4の不飽和脂肪酸の少なくとも一方であり、
前記反応原料を反応させて反応生成物を製造するときの、前記反応原料の負荷量が、触媒1リットル当たり150リットル毎時[標準状態(温度0℃、101.325kPa)換算]以上であり、
熱媒体流路に供給される前記熱媒体の温度は、1)前記反応原料が、炭素数3及び4の炭化水素、並びにターシャリーブタノールからなる群から選ばれる少なくとも1種である場合には250〜450℃であり、2)前記反応原料が、炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒドからなる群から選ばれる少なくとも1種である場合には200〜350℃であり、
前記プレート式反応器の伝熱プレートの、反応ガス流れ方向の長さが、0.5m〜10mであり、かつ、反応ガス流れ方向と直角の方向の長さが、0.5m〜20mであり、
前記触媒は、モリブデン、タングステン、及びビスマスの少なくとも何れかを含む金属酸化物、又は、バナジウムを含む金属酸化物であって、該触媒の形状は、その最長径が1
mm〜20mmであることを特徴とする、反応生成物を製造する製造方法。
(上記Q(1)は反応帯域S1における単位時間当たりの反応熱量[kW]を、上記Q(2)は反応帯域S2における単位時間当たりの反応熱量[kW]を、上記A(1)は反応帯域S1の伝熱面積[m2]を、上記A(2)は反応帯域S2の伝熱面積[m2]をそれぞれ表す。) - 前記プレート式反応器が3つ以上の反応帯域を有し、前記反応帯域S1に対して反応原料の流れの下流方向で前記反応帯域S1から数えてi番目(但し、iは3以上の整数)に位置する反応帯域S(i)におけるQ(i)/A(i)をX(i)とし、前記反応帯域S(i)に隣接し、反応原料の流れの上流に位置する反応帯域S(i−1)におけるQ(i−1)/A(i−1)をX(i−1)としたときに、前記X(i)のX(i−1)に対する比[X(i)/X(i−1)]が0.2以上1.0以下であることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
- 前記複数の反応帯域のうち、特定されない任意の反応帯域S(j)におけるV(j)/A(j)をY(j)とし、前記反応帯域S(j)に隣接し、反応原料の流れの下流に位置する反応帯域S(j+1)におけるV(j+1)/A(j+1)をY(j+1)としたときに、前記Y(j)とY(j+1)が、Y(j)<Y(j+1)、の関係を満たすことを特徴とする、請求項1又は2に記載の製造方法。
(前記V(j)は反応帯域S(j)の体積[m3]を、前記V(j+1)は反応帯域S(
j+1)の体積[m3]を、前記A(j)は反応帯域S(j)の伝熱面積[m2]を、前記A(j+1)は反応帯域S(j+1)の伝熱面積[m2]をそれぞれ表す。) - 前記プレート式反応器が、円弧、楕円弧、矩形又は多角形の一部に賦形された波板の2枚を対面させ、前記両波板の凸面部を互いに接合して複数の熱媒体流路を形成した伝熱プレート、又は、円弧、楕円弧、矩形若しくは多角形の一部に賦形されたパターンが連続し、各パターンとパターンの間に連結部となる平面部が形成された2枚の波板を、前記平面部で互いに接合して複数の熱媒体流路を形成した伝熱プレート、を複数配列してなりかつ隣り合った伝熱プレートの波板凸面部と凹面部とが対面して所定間隔の触媒層を形成したプレート式反応器であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記反応帯域の数が2以上10以下であることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
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