本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
(実施形態1)
図1は、本実施形態に係るアクチュエータの構成図である。アクチュエータ100は、モータ1と、被駆動機構である駆動軸117と、駆動機構であるねじ軸107、円筒状のナット115、第1ギヤ103、第2ギヤ105、第3ギヤ106、伝達軸104と、を筒状のハウジング101内に含んでいる。
円筒状のハウジング101は、例えばアルミニウム製のハウジング本体101Aと、その端面に対してボルト等により組み付けられた樹脂製のカバー部材101Bと、ハウジング本体101Aには、アルミニウム等の金属で形成される位置決めプレート101Cとを含んでいる。ハウジング101は、ハウジング本体101Aと、樹脂製のカバー部材101BとをOリング120を介して固定することが好ましい。その結果、ハウジング101の防水性が高まる。また、ハウジング本体101Aの内部には、袋穴状のモータ室101aと貫通穴状のねじ軸室101bとが形成されている。モータ室101a内には、モータ1が配置され、モータ1が位置決めプレート101Cを介してハウジング本体101Aに取り付けられている。これにより、モータ1の回転軸102は、カバー部材101B側に配置される。モータ1の回転軸102は、周囲に凹凸を形成した樹脂製の第1ギヤ103に挿入され固定されており、回転軸102が回転すると第1ギヤ103も回転する。
位置決めプレート101Cは、位置決め孔101jを含み、モータ1の回転軸102と平行な方向に延出する伝達軸104を回転可能なように位置決め孔101jに位置決めする。伝達軸104は、ブッシュ等を介して樹脂製の第2ギヤ105を周囲に固定している。周囲に凹凸を形成した第2ギヤ105は、樹脂製のカバー部材101B内に回転自在に配置される。また、第1ギヤ103と第3ギヤ106とは、第2ギヤ105を介して互いに噛み合うように配置される。
ねじ軸室101b内には、ねじ軸107が配置され、ねじ軸107が位置決めプレート101Cに取り付けた玉軸受114により回転自在に支持されている。ねじ軸107は、外周面に雄ねじ溝107aを形成している。また、ねじ軸107は、ねじ軸室101b内の円筒状のナット115を貫通している。ナット115の内周面には、雄ねじ溝107aに対向して、雌ねじ溝115aが形成されている。雄ねじ溝107a及び雌ねじ溝115aによって形成される螺旋状の空間(転走路)には、多数のボール116が転動自在に配置されている。ナット115は、ねじ軸室101b内において、ねじ軸107の延長方向と平行な軸線方向に相対移動可能であり、かつねじ軸107の回転と同期してねじ軸107の周囲を回転しない回り止めが施されている。なお、軸線方向の移動要素であるナット115と、回転要素であるねじ軸107と、転動体であるボール116とでボールねじ機構を構成する。
ねじ軸107の端部は、丸軸状の駆動軸117に形成された袋孔117a内に侵入している。駆動軸117は、ナット115に対して同軸に嵌合しピン又はコッターで連結されて一体的に移動するようになっている。ハウジング本体101Aに対して、駆動軸117はブッシュ118により軸線方向に移動可能に支持されている。また、ブッシュ118の外部側にはシール119が配置されている。シール119は、ハウジング本体101Aと駆動軸117との間から水分や塵埃等の異物が侵入することを防止している。なお、ハウジング本体101Aから突出した駆動軸117の端部には、リンク部材に連結するための孔が形成されている。
樹脂製の第3ギヤ106は、ねじ軸107の端部に、セレーション結合で相対回転不能に取り付けられている。第3ギヤ106の一部を覆うようにして、支持部材108が位置決めプレート101Cに取り付けられている。また、第2ギヤ105と第3ギヤ106とは、互いに噛み合うように配置される。これにより、第1ギヤ103、第2ギヤ105、第3ギヤ106が動力伝達機構を構成する。この動力伝達機構は、第1ギヤ103、第2ギヤ105、第3ギヤ106の噛み合いにより、モータ1の回転が減速して、ねじ軸107の回転となる減速ギヤ機構となっている。
カバー部材101Bは、第1ギヤ103、第2ギヤ105、第3ギヤ106に異物が侵入しないように密閉するギヤカバーとして作用する。なお、第1ギヤ103、第2ギヤ105、第3ギヤ106は、噛合するギヤの樹脂素材を互いに異なるものにすると、摩滅を抑制できるので好ましい。
モータ1は、回転軸102を回転させる電動機である。上述した減速ギヤ機構は、モータ1の回転軸102の回転を減速させてボールねじ機構へ伝達し、上述したボールねじ機構は、回転軸102の回転を直線運動に変換し、被駆動機構である駆動軸117を移動させる。減速ギヤ機構及びボールねじ機構は、被駆動機構である駆動軸117の駆動機構となる。次に、図2及び図3を用いてモータ1の内部構造について説明する。図2は、本実施形態に係るモータのロータを説明する説明図である。図3は、本実施形態に係るモータのロータとステータとの関係を説明する説明図である。本実施形態に係るモータ1は、いわゆるブラシ付きモータであり、アーマチュア(電機子)コア21が回転するロータ20となり、永久磁石部材11N、11Sがステータ10となる。
図2に示すロータ20は、アーマチュアコア21と、整流子22と、回転軸102と、後述する励磁コイル及びブレーキコイルとを含んでいる。アーマチュアコア21は、図3に示すように、ステータ10の永久磁石部材11N、11S間に、回転軸102を中心に回転自在に配置されている。アーマチュアコア21は、外周に突出するコアスロット(磁極)A1〜A10が形成されている。アーマチュアコア21は、軟磁性材料で形成され、例えば純鉄、ケイ素鋼鈑等で形成されている。整流子22は、コアスロット(磁極)A1〜A10と同数の整流子セグメントC1〜C10が形成されている。整流子22は、ブラシ25A、25Bと接触し、モータ1外の直流電源より給電を受け、定期的に電流方向を変化させる導電部材である。
ステータ10は、モータケース12の内壁に、ロータ20を介して対向するように配置した永久磁石部材11N、11Sを含んでいる。永久磁石部材11Nは、ロータ20側がN極に着磁されており、永久磁石部材11Sは、ロータ20側がS極に着磁されている。モータケース12は軟磁性材料であることが好ましく、例えば純鉄で形成されている。これにより、モータ1は、永久磁石部材11N、11Sの漏洩磁界を低減できる。
図4は、本実施形態に係るモータの整流子とブラシとの関係を説明する説明図である。図5及び図6は、本実施形態に係るモータの動作を説明する説明図である。ここで、図2及び図3に示すアーマチュアコア21は、コアスロット(磁極)A1〜A10が形成されているが、動作原理を説明するためコアスロットが3つの場合について、図4から図6を用いて模式的に説明する。ロータ20に相当するロータ20Aは、コアスロット22a1、22a2、22a3と、整流子22aと、励磁コイル23b1、23b2、23b3と、ブレーキコイル24L1、24L2、24L3とを含んでいる。永久磁石部材11n、11sは、永久磁石部材11N、11Sに相当する。ブラシ25a、25bは、ブラシ25A、25Bに相当する。
図4に示すように、整流子22aは、電源Vにより給電されたブラシ25a、25bに接触する。図5に示す励磁コイル23b1、23b2、23b3は、銅等の導電体で形成され、コアスロット22a1、22a2、22a3のそれぞれを巻回する。励磁コイル23b1、23b2、23b3は、整流子22aに電気的に接続されている。また、コアスロット22a1、22a2、22a3のそれぞれには、銅等の導電体で形成され、環状に接続されたブレーキコイル24L1、24L2、24L3が巻回されている。ここで、電源Vの通電を開閉するスイッチSwを具備する外部回路に上述したブラシ25a、25bを接続する。スイッチSwにより、電源Vからの電流iがブラシ25a、25bから通電される。ブラシ25a、25bから整流子22aを介して通電された励磁コイル23b1、23b2は、コアスロット22a1、22a2を磁化する。磁化されたコアスロット22a1、22a2は、永久磁石部材11n、11sのそれぞれと反発、又は吸引し、回転力Frを生じさせる。
図6に示すスイッチSwにより、電源Vからの電流iを遮断する。励磁コイル23b1、23b2は、コアスロット22a1、22a2を磁化がなくなり、回転力Frは消滅するが、慣性力によりロータ20Aが回転し続ける。ブレーキコイル24L1、24L2、24L3は、永久磁石部材11n、11s間の磁界を順次通過する。永久磁石部材11n、11sの磁界は、ブレーキコイル24L1、24L2、24L3に電圧Eを生じさせる。ここで電圧Eは下記式(1)で示される誘起電圧の式で求めることができる。
ここで、pは磁極数、aは並列導体数、Zはブレーキコイルの巻数、Nはモータの回転数、φは永久磁石部材11n、11sの磁束である。これにより、慣性力によってロータ20Aが早く回転しているほど、ブレーキコイル24L1、24L2、24L3に電圧Eが生じる。その結果、ブレーキコイル24L1、24L2、24L3によって磁化されたコアスロット22a1、22a2、22a3のそれぞれには、慣性で回転している方向と逆回転方向の力Fbが生じる。つまり、ブレーキコイル24L1、24L2、24L3は、電磁ブレーキとなり、ロータ20Aの回転を抑制する。なお、モータ1の特性カーブはブレーキコイル24L1、24L2、24L3が無い場合のモータの特性に対して、ブレーキコイル24L1、24L2、24L3の電圧Eを電源電圧より差し引いた電圧が無負荷時の電圧になる。モータ拘束時は回転が無いのでブレーキコイル電圧はE=0で電源電圧時の拘束トルクとなる。なお、無負荷電流も同様にトルクが発生するので上昇する。ここで、モータ1のトルクTは、下記の式(2)で求めることができる。
モータ1のトルクは、ブレーキコイル24L1、24L2、24L3があることで、回転数Nとの比は低減するが、ブレーキコイル24L1、24L2、24L3の巻数が励磁コイル23b1、23b2、23b3の巻数よりも小さければ、ロータ20Aは回転できる。
コアスロットが3つの場合について、図4から図6を用いて模式的に説明してきたが、図2及び図3に示すアーマチュアコア21のコアスロットA1〜A10に、上述した励磁コイル23b1、23b2、23b3、及びブレーキコイル24L1、24L2、24L3に相当する励磁コイルB1〜B10及びブレーキコイルL1〜L10巻線について図7及び図8を用いて説明する。図7は、本実施形態に係るモータの励磁コイルの巻線を説明する説明図である。図8は、本実施形態に係るモータのブレーキコイルの巻線を説明する説明図である。
図7に示すコアスロットA1〜A10には、励磁コイルB1〜B10が巻回されている。励磁コイルB1〜B10の巻線は、励磁コイルB1、B2を代表して説明する。励磁コイルB1は、励磁コイルB1の端部が整流子セグメントC1に電気的に接続されている。励磁コイルB1は、整流子セグメントC1からコアスロットA10、A1の間を通過し、また、コアスロットA4、A5の間へ延びている。励磁コイルB1は、コアスロットA4、A5の間から整流子セグメントC2へ電気的に接続する。励磁コイルB2は、励磁コイルB2の端部が整流子セグメントC2に電気的に接続されている。その結果、励磁コイルB2は、励磁コイルB1と接続する。励磁コイルB2は、整流子セグメントC2からコアスロットA1、A2の間を通過し、また、コアスロットA5、A6の間へ延びている。励磁コイルB2は、コアスロットA5、A6の間から整流子セグメントC3へ電気的に接続する。励磁コイルB1、B2と同様に、励磁コイルB3〜B10が隣り合うコアスロットA1〜A10のいずれかの間を巻回し、整流子セグメントC1〜C10のいずれかと接続する。また、コアスロットA1〜A10には、励磁コイルB1〜B10のそれぞれが複数巻回されている。本実施形態の励磁コイルB1〜B10は、いわゆる重ね巻と呼ばれる鼓状巻のコイル巻線である。本実施形態の励磁コイルB1〜B10は、いわゆる波巻と呼ばれる鼓状巻のコイル巻線であってもよい。
図8に示すコアスロットA1〜A10には、ブレーキコイルL1〜L10が巻回されている。ブレーキコイルL1〜L10の巻線は、ブレーキコイルL1、L2を代表して説明する。ブレーキコイルL1は、ブレーキコイルL1の端部が整流子セグメントC1に電気的に接続されている。ブレーキコイルL1は、整流子セグメントC1からコアスロットA10、A1の間を通過し、また、コアスロットA4、A5の間へ延びている。ブレーキコイルL1は、コアスロットA4、A5の間から整流子セグメントC1へ電気的に接続する。その結果、ブレーキコイルL1はアーマチュアコア21に巻回され環状に接続される。ブレーキコイルL2は、ブレーキコイルL2の端部が整流子セグメントC2に電気的に接続されている。ブレーキコイルL2は、整流子セグメントC2からコアスロットA1、A2の間を通過し、また、コアスロットA5、A6の間へ延びている。ブレーキコイルL2は、コアスロットA5、A6の間から整流子セグメントC2へ電気的に接続する。その結果、ブレーキコイルL1はアーマチュアコア21に巻回され環状に接続される。ブレーキコイルL1、L2と同様に、ブレーキコイルL3〜L10が隣り合うコアスロットA1〜A10のいずれかの間を巻回し、整流子セグメントC3〜C10のいずれかとそれぞれ接続する。上述したように、コアスロットA1〜A10には、励磁コイルB1〜B10のそれぞれが複数巻回されているので、ブレーキコイルL1〜L10は、励磁コイルB1〜B10と重なり合いアーマチュアコア21に巻き付けられる。ブレーキコイルL1〜L10のそれぞれの巻数は、励磁コイルB1〜B10のそれぞれの巻数よりも少なくなっている。
図9は、本実施形態に係るモータの制御のブロック図である。図9に示すように、モータ制御装置9は、モータ1が制御装置40と接続されている。制御装置40は、モータ1をオープンループ制御することができる。また、制御装置40は、モータ1をフィードバック制御する場合は、モータ1の回転角を検知するレゾルバ等の回転角センサ又は、駆動軸117が与える荷重を検出する荷重センサ等のセンサ45が制御装置40に接続されていてもよい。センサ45が回転センサである場合、制御装置40は、センサ45の回転角の信号SAを取得する。制御装置40は、回転角信号SAに基づきモータ1のモータ制御信号SMを演算する。あるいは、センサ45が荷重センサである場合、制御装置40は、センサ45の荷重の信号SAを取得する。制御装置40は、信号SAに基づきモータ1のモータ制御信号SMを演算する。次に、制御装置40は、演算したモータ制御信号SMに基づいて、モータ1をフィードバック制御することができる。
制御装置40は、マイコン等のコンピュータシステムである。例えば、図9に示すように、入力インターフェース40aと、出力インターフェース40bと、CPU(Central Processing Unit)40cと、ROM(Read Only Memory)40dと、RAM(Random Access Memory)40eと、内部記憶装置40fと、を含んでいる。入力インターフェース40a、出力インターフェース40b、CPU40c、ROM40d、RAM40e及び内部記憶装置40fは、内部バスで接続されている。
入力インターフェース40aは、回転角センサ45からの回転角信号SAを受け取り、CPU40cに出力することができる。出力インターフェース40bは、CPU40cから指示信号を受け取り、モータ1にモータ制御信号SMを出力する。モータ制御信号SMは、例えば直流電源の出力である。
ROM40dには、BIOS等のプログラムが記憶されている。内部記憶装置40fは、例えばHDD(Hard disk drive)やフラッシュメモリ等であり、内部記憶装置40fはオペレーティングシステムプログラムやアプリケーションプログラムを記憶している。CPU40cは、RAM40eをワークエリアとして使用しながらROM40dや内部記憶装置40fに記憶されているプログラムを実行することにより、種々の機能を実現する。なお、内部記憶装置40f又はRAM40eは、記憶手段40Eとなる。
図10は、本実施形態に係るアクチュエータの動作を説明する説明図である。図10は、制御装置40がアクチュエータ100の駆動軸117に押圧させる指令荷重を横軸にとり、駆動軸117が実際に押圧する実荷重を縦軸にとり、指令荷重と実荷重との関係を示している。図10に示すように、指令荷重と実荷重とが一致していれば、指令荷重と実荷重との関係は理想荷重曲線Gtに沿う。
例えば、ブレーキコイルL1〜L10を含まないモータ1の場合、指令荷重P1で止めようとモータ1を駆動後停止しても慣性力の作用でアーマチュアコア21が回転し、矢印Fiの方向に実荷重が増加する。つまり、慣性によるロータ20の回転による駆動軸117の慣性荷重増加が生じている。同様に、指令荷重P2で止めようとモータ1を駆動後停止しても慣性力の作用でアーマチュアコア21が回転し、矢印Fiの方向に実荷重が増加する。指令荷重と実荷重との関係は実荷重曲線GPに沿うようになり、比例関係とならない。
ブレーキコイルL1〜L10を含む本実施形態のモータ1は、指令荷重P1で止めようとモータ1を駆動後停止すると、慣性力の作用でアーマチュアコア21が回転する。これにより、ブレーキコイルL1〜L10がアーマチュアコア21に回転方向と逆回転方向の力を与え、矢印Fiの方向に実荷重が増加することが抑制される。その結果、指令荷重と実荷重との乖離が抑制され、指令荷重と実荷重との関係は理想荷重曲線Gtに沿う傾向となる。
このため、アクチュエータ100は、モータ1の回転軸102の回転角を検出する回転角センサ又は駆動軸117が与える荷重を検出する荷重センサ等のセンサ45を不要とすることもできる。センサ45を不要とすると、アクチュエータ100のコストが低減する。また、制御装置40は、モータ1をオープンループ制御することができる。これにより、制御装置40の指令荷重と比例する実荷重を駆動軸117が実際に押圧することができる。
また、制御装置40は、モータ1をフィードバック制御する場合は、回転角信号SAに基づきモータ1のモータ制御信号SMを演算する。本実施形態のモータ1は、指令荷重と実荷重とのずれが少ないので、モータ1をフィードバック制御する偏差の演算が低減される。また、制御装置40の指令荷重と比例する実荷重を駆動軸117が実際に押圧することができる。
以上説明したように本実施形態に係るアクチュエータ100のモータ1は、アーマチュアコア21に巻回された励磁コイルB1〜B10及びブレーキコイルL1〜L10と、着磁された永久磁石部材11N、11Sと、アーマチュアコア21とともに回転する回転軸102とを含んでいる。励磁コイルB1〜B10の通電により回転するアーマチュアコア21は、ロータ20となり、永久磁石部材11N、11Sと相対的に位置が変化する。そして、永久磁石部材11N、11Sの磁界を通過するブレーキコイルL1〜L10は、アーマチュアコア21に巻回され環状に接続され、回転するアーマチュアコア21に慣性によりロータ20(回転軸102)が回転する回転方向と逆回転方向の力を与えることができる。
これにより、励磁コイルB1〜B10の通電をオフにした場合、慣性による回転軸102の回転が早期に抑制される。つまり、モータ1は、励磁コイルB1〜B10の通電のオフに追随して、回転軸102の回転が早期に停止する。また、いわゆるブラシ付きモータの慣性による回転軸の回転は、早期に抑制される。モータ1が高回転であっても、慣性で回転軸102が回転し続けることが抑制される。その結果、モータが高速回転で駆動されても制御しやすくなる。また、モータ1の回転の状態をフィードバックするためのセンサ45を不要とし、アクチュエータ100はセンサレスとすることもできる。その結果、部品点数が低減され、モータ1は信頼性が向上する。
アクチュエータ100は、被駆動機構である駆動軸117と、回転軸102から回転力を駆動軸117に伝達する駆動機構と、上述したモータ1と、を含む。これにより、駆動軸117が所望の指令荷重で駆動し、又は所望の位置で停止することができる。
また、駆動機構には、軸線方向の移動要素であるナット115と、回転要素であるねじ軸107と、転動体であるボール116とを含むボールねじ機構を含むことが好ましい。これにより、回転軸102の回転を被駆動機構である駆動軸117の直線運動に変換することができる。アクチュエータ100は、ボールねじ機構を備えているので、モータ1の小さな力(トルク)を大きな力である駆動軸117の推力へ変換することができる。アクチュエータ100は、ボールねじ機構のボールの転がりによって起動トルクが極めて少なくできるので、精密な微動送りにより、所定の駆動軸117の推力を与えることができる推力発生装置となる。
また、ボールねじ機構は、回転を直線運動に変換するとともに、大きな変位(回転)を小さな変位(直線運動)に変換する減速作用を有する。これにより、慣性によるロータ20の回転がねじ軸107の回転に伝達される比率を抑制できる。上述のように、モータ1は、ブレーキコイルL1〜L10により、励磁コイルB1〜B10の通電のオフに追随する回転軸102の回転が早期に停止する。また、停止するまでの慣性による回転軸102の回転がねじ軸107の回転に伝達されにくくなる。このため、アクチュエータ100は、励磁コイルB1〜B10の通電のオフの際に、駆動軸117を指令荷重以上で駆動するおそれがより低減される。あるいは、アクチュエータ100は、励磁コイルB1〜B10の通電のオフの際に、駆動軸117が惰走するおそれをより低減する。
駆動機構には、第1ギヤ103、第2ギヤ105、第3ギヤ106の噛み合いにより、モータ1の回転よりも減速させたねじ軸107の回転とする減速ギヤ機構を含むことが好ましい。これにより、モータ1が小型モータであっても高出力を取り出すことができる。また、モータ1とねじ軸107とが配置されるハウジング101内のレイアウトの自由度を高めることができる。
本実施形態のモータ制御装置9は、モータ1を制御する制御装置40を含み、制御装置40がモータ1をオープンループ制御することが好ましい。これにより、また、モータ1の回転をフィードバックするためのセンサ45を不要とすることもできる。その結果、部品点数が低減され、モータ1は信頼性が向上する。
(実施形態2)
図11は、本実施形態に係るモータのロータとステータとの関係を説明する説明図である。本実施形態では、上述したアクチュエータ100のモータ1をいわゆるブラシレスモータとしている。なお、上述した実施形態で説明したものと同じ部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
本実施形態では、図1に示す本実施形態のモータ1は、図11に示すロータ26と、ステータ15とを含んでいる。ロータ26は、モータ1の回転軸102とともに、ステータ15であるアーマチュアコア16内で回転自在に支持されている。ロータ26は、例えば4極に着磁されている永久磁石部材であり、N極の永久磁石部材26Nと、S極の永久磁石部材26Sとが隣り合うように交互に配置されている。ステータ15は、アーマチュアコア16と、励磁コイル17u、17v、17wと、ブレーキコイル18u1、18v1、18w1、18u2、18v2、18w2とを含んでいる。アーマチュアコア16は、純鉄、ケイ素鋼鈑等の軟磁性体で形成された円環状のコア部材である。例えば、アーマチュアコア16は、ロータ26側へ延びる磁極16u1、16v1、16w1、16u2、16v2、16w2が順に間隔をもってアーマチュアコア16の環状内側に配置されている。
励磁コイル17uは、磁極16u1と、16u2とに巻回されている。励磁コイル17vは、磁極16v1と、16v2とに巻回されている。励磁コイル17wは、磁極16w1と、16w2とに巻回されている。図12は、本実施形態に係るモータの励磁コイルの通電状態を説明する説明図である。図12に示すように、本実施形態の励磁コイル17u、17v、17wは、いわゆるY結線とされている。励磁コイル17u、17v、17wは、デルタ結線されてもよい。励磁コイル17u、17v、17wには、図12に示す6つのステップを順に繰り返すように、電流iが流れるように制御されている。例えば、第1ステップでは、電流iが励磁コイル17uから17wへ流れ、励磁コイル17u、17wを励磁する。次に、第2ステップでは、電流iが励磁コイル17vから17wへ流れ、励磁コイル17v、17wを励磁する。次に、第3ステップでは、電流iが励磁コイル17vから17uへ流れ、励磁コイル17v、17uを励磁する。次に、第4ステップでは、電流iが励磁コイル17wから17uへ流れ、励磁コイル17w、17uを励磁する。次に、第5ステップでは、電流iが励磁コイル17wから17vへ流れ、励磁コイル17w、17vを励磁する。次に、第6ステップでは、電流iが励磁コイル17uから17vへ流れ、励磁コイル17u、17vを励磁する。なお、ロータ26を逆回転する場合には、第1ステップから第6ステップを逆の順序に通電する。以上説明した励磁コイル17u、17v、17wの通電は、1つのステップで励磁コイル17u、17v、17wのうち2つが通電される2コイル通電であるが、1つのステップで励磁コイル17u、17v、17wのうち3つが通電される3コイル通電としてもよい。
図11に示すブレーキコイル18u1は、磁極16u1に巻回され、両端が接続され環状に接続されている。同様に、ブレーキコイル18v1、18w1、18u2、18v2、18w2は、磁極16u1、16v1、16w1、16u2、16v2、16w2の各々に巻回され、両端が接続され環状に接続されている。
次に、本実施形態のモータ1の動作について説明する。図13は、本実施形態に係るモータの制御のブロック図である。図14は、本実施形態に係るモータの励磁コイルの励磁状態を説明する説明図である。本実施形態のモータ1は、磁極16u1、16v1間、磁極16w1、16u2間、磁極16v2、16w2間に、回転角センサ61、62、63を配置する。例えば、回転角センサ61、62、63は、ホールIC等の磁気センサであり、永久磁石部材26Nと永久磁石部材26Sとから受ける磁界の変化を検出する。励磁コイル17u、17v、17wと、回転角センサ61、62、63とは、モータドライブユニット51に接続されている。
モータドライブユニット51は、ゲート信号制御回路52と、3相インバータ53とを含んでいる。ゲート信号制御回路52は、回転角センサ61、62、63と上述した制御装置40と、に接続されている。図14に示す回転角センサ61の信号61sと、回転角センサ62の信号62sと、回転角センサ63の信号63sとは、それぞれ位相がずれたパルス波形となっており、ゲート信号制御回路52は、パルス波形の組み合わせによりロータ26の回転角の位置を検出できる。ゲート信号制御回路52は、モータ制御信号SMの指令により、3相インバータ53へゲート信号を送出する。また、ゲート信号制御回路52は、回転角センサ61、62、63によりロータ26の回転角の位置を検出し、電流iと誘起電圧とが同位相となるようゲート信号を制御する。
制御装置40は、指令荷重をモータ制御信号SMに変換し、モータドライブユニット51へ送出する。モータドライブユニット51は、モータ制御信号SMの指令に応じたパルス波形の幅で、ゲート信号制御回路52がゲート信号を3相インバータ53へ送出する。3相インバータ53は、上述した第1ステップから第6ステップに沿った励磁コイル17u、17v、17wの励磁を行う。励磁コイル17u、17v、17wの励磁により、ロータ26が回転し、回転軸102が回転する。ここで、ゲート信号制御回路52は、回転角センサ61、62、63によりロータ26の回転角の位置を検出し、電流iと誘起電圧とが同位相となるようゲート信号を制御する。
ロータ26は、例えば、図11に示す回転力Fr2の矢印方向へ回転している。ここで、制御装置40は、図10に示す指令荷重P1で止めようとモータ1を停止しても慣性力の作用でロータ26が回転する。ロータ26の回転により、ブレーキコイル18u1、18v1、18w1、18u2、18v2、18w2には、式(1)に示した電圧Eが生じる。この電圧Eにより、磁極16u1、16v1、16w1、16u2、16v2、16w2が磁化され、ロータ26が慣性で回転する方向と逆回転方向の力Fb2を与える。その結果、ロータ26の回転にブレーキがかかり、早期に停止する。
以上説明したように本実施形態のモータ1は、アーマチュアコア16に巻回された励磁コイル17u、17v、17w及びブレーキコイル18v1、18w1、18u2、18v2、18w2と、着磁された永久磁石部材26N、26Sと、永久磁石部材26N、26Sと、ともに回転する回転軸102とを含んでいる。励磁コイル17u、17v、17wの通電により回転するロータ26となる永久磁石部材26N、26Sは、ロータ26となり、アーマチュアコア16と相対的に位置が変化する。回転する永久磁石部材26N、26Sの磁界を通過するブレーキコイル18u1、18v1、18w1、18u2、18v2、18w2は、アーマチュアコア16に巻回され環状に接続され、慣性により回転するロータ26(回転軸102)が回転する回転方向と逆回転方向の力Fb2を与えることができる。
これにより、励磁コイル17u、17v、17wの通電をオフにした場合、慣性による回転軸102の回転が早期に抑制される。つまり、モータ1は、励磁コイル17u、17v、17wの通電のオフに追随して、回転軸102の回転が早期に停止する。また、いわゆるブラシレスモータの慣性による回転軸102の回転は、早期に抑制される。モータ1が高回転であっても、慣性で回転軸102が回転し続けることが抑制される。その結果、モータが高速回転で駆動されても制御しやすくなる。また、モータ1の回転の状態をフィードバックするための回転角センサ61、62、63を不要とし、アクチュエータ100は、モータ1をセンサレスとすることもできる。その結果、部品点数が低減され、モータ1は信頼性が向上する。
以上説明した本実施形態のアクチュエータは、一般産業用電動機、自動車及び船舶等に使用されている電動式のアクチュエータに適している。