JP5621794B2 - 磁気変調式複軸モータ - Google Patents
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Description
また、界磁磁力を強めようとしてステータの寸法を薄くすると、今度はステータの巻線量が稼げず、起磁力が大きく出来ないため、界磁磁束との積で支配される作用トルクの大きさが目減りしてしまうというジレンマがあった。
本発明は、上記事情に基づいて成されたものであり、その目的は、上述した従来技術の問題点を解決し、高性能で損失が少なく、小型の磁気変調式複軸モータを提供することにある。
本発明の磁気変調式複軸モータは、周方向に所定の間隔を有して複数の磁気良導領域を有する磁気変調ロータと、この磁気変調ロータの外径側または内径側に対向して配置され、偶数であるm極の多相巻線を有するステータと、磁気変調ロータの軸方向の一方の端面に対向して配置され、偶数であるn極の界磁磁極を持つ界磁ロータとを有し、磁気変調ロータは、ステータと対向する径方向の対向面および界磁ロータと対向する軸方向の対向面に磁気良導領域を形成する軟磁性体を配置し、この軟磁性体が周方向に所定の間隔を有して配置される数をkとした時に、
k=(m+n)/2…………(1)
kは、上記(1)式によって求められることを特徴とする。
また、磁気変調ロータの径方向に対しステータが配置されない側に空間を確保できるので、この空間に軸受や変速装置等の付属物を収納したり、通風空間として利用することで冷却性向上を図ることができる。これにより、高性能化の面で好適な設計が可能となる。
請求項1に記載した磁気変調式複軸モータにおいて、周方向に所定の間隔を有してk箇所に配置される軟磁性体は、非磁性金属から成る支持体によって保持されていることを特徴とする。
本発明では、磁気良導領域を形成する軟磁性体を固定する上で、従来のように機械的強度が低い絶縁物に依らなくても、非磁性の金属部材で強固に保持できる。これにより、磁気変調ロータを堅固に構成できるので、耐久性が高まり、高速回転ができるようになるため、モータの出力能力が向上する。
請求項1または2に記載した磁気変調式複軸モータにおいて、軟磁性体は、複数枚の鋼板を軸方向に積層した第1の積層体と、複数枚の鋼板を周方向に積層した第2の積層体とを有し、ステータおよび界磁ロータと対向する磁気変調ロータの対向面側に第1の積層体が配置され、反対向面側に第2の積層体が配置され、且つ、第1の積層体と第2の積層体とが当接していることを特徴とする。
例えば、界磁磁束がステータに対して磁気変調ロータの軟磁性体を経由して行き来する際に、界磁ロータの回転による磁界の変化をより好適な積層方向(例えば周方向)で受け、軸方向に流してステータ側に供給できるため、磁束が通り易くなり、鉄損も少なくできる効果がある。
請求項1〜3に記載した何れか一つの磁気変調式複軸モータにおいて、界磁ロータは、回転不能に配置される界磁コイルと、この界磁コイルが発生する磁界により、互いに異なる極性に磁化される一組の爪状磁極とを備えるブラシレスロータとして構成されることを特徴とする。
この場合、界磁コイルが発生する磁界によって爪状磁極(界磁磁極)が磁化されるので、界磁コイルに通電する界磁電流の大きさを制御することにより、界磁磁極の強さを変えることができる。これにより、例えば、界磁ロータに連結される回転軸がエンジンやアクスルの状況都合により回転し続けることが必要であり、且つ、回転機としての動作を止めることが必要な場合には、界磁電流をオフにするだけで、界磁ロータが回転し続けることによる鉄損発生などの所謂フリクションロスの問題が解消される。
請求項1〜4に記載した何れか一つの磁気変調式複軸モータにおいて、
ステータが固定されるモータハウジングに対し界磁ロータの回転を拘束できる第1の停止装置、モータハウジングに対し磁気変調ロータの回転を拘束できる第2の停止装置、および界磁ロータと磁気変調ロータとの間を連結できる連結装置の少なくとも1つを備えることを特徴とする。
上記の構成によれば、本発明のモータをHV(ハイブリッド)車両用のトランスアクスル部分において、様々なモードで有効に作動させることができる。
実施例1に示す磁気変調式複軸モータ(以下、本モータ1と呼ぶ)は、図1に示す様に、車両のエンジン動力が伝達されて回転する第1の回転軸2と、車輪駆動系に連結される第2の回転軸3と、この第2の回転軸3に減速ギヤ装置4を介して連結される第3の回転軸5と、モータハウジング6に固定されるステータ7と、第1の回転軸2にロータアーム8を介して連結される界磁ロータ9と、第3の回転軸5にロータディスク10を介して連結される磁気変調ロータ11等より構成される。
第1の回転軸2と第2の回転軸3は、同一軸線上に配置され、それぞれ軸受12、13を介してモータハウジング6に支持されている。
第3の回転軸5は、軸方向の一端側(図示左側)が、第1の回転軸2に穿設された中空孔の内周に軸受14を介して相対回転自在に挿入され、軸方向の他端側が軸受15を介してモータハウジング6に支持されている。
ステータ7は、図2に示す様に、円環状のステータ鉄心7aと、このステータ鉄心7aに巻装される12極の三相巻線7b(図1参照)とで構成される。ステータ鉄心7aの内周側には、三相巻線7bを挿入する複数のスロット7cが周方向に等ピッチに形成されている。
磁気変調ロータ11は、ステータ7および界磁ロータ9の内径側に配置され、図2、図3に示す様に、ステータ7および界磁ロータ9と対向する対向面に磁気良導領域を形成する軟磁性体17と、この軟磁性体17を保持する非磁性金属から成るリング状の支持体18とで構成される。
支持体18は、例えば、ステンレス鋼によって形成され、16箇所に配置される軟磁性体17(第1の積層体17a+第2の積層体17b)を強固に保持している。
また、モータハウジング6と磁気変調ロータ11との間には、モータハウジング6に対し磁気変調ロータ11の回転を停止させた状態で拘束できる磁気変調ロータ停止装置20が配設されている。
さらに、界磁ロータ9と磁気変調ロータ11との間には、両ロータ9、11の間を連結できる連結装置21が配設されている。
また、連結装置21は、界磁ロータ9と磁気変調ロータ11との間を連結する連結モードと、連結モードを解除する解除モードとが設定され、図示しない制御装置により制御コイル21a(図1参照)への通電電流をオン/オフすることで連結モードと解除モードとを切り替えることができる。
なお、図1に示す界磁ロータ停止装置19、磁気変調ロータ停止装置20、および連結装置21は、その構成を簡略的に記載したものであり、図1に示される構成に限定されるものではない。
上記のように構成された本モータ1の磁気的な作動について説明する。
図4には、20個の磁石16を周方向に配列して構成される20極の界磁ロータ9と、三相巻線7b(同図では巻線を省略している)が12極となるピッチで巻線されたステータ7と、界磁ロータ9とステータ7との間に軟磁性体17を周方向に一定の間隔で16箇所に配列した磁気変調ロータ11とが示されており、図解の便宜上、直線状に展開した一部を図示している。
20極の界磁磁束分布は、一周当たり10回(=f1回)の交番磁界をステータ7へと発信するが、ステータ7との間には、16個の磁気的良導体である軟磁性体17と、同じく、16個の磁気的不導体である空間とが存在しているため、一周当たり16回(=f2回)の磁気遮蔽/導通サイクルを前記f1回の交番磁界に更に与える、すなわち、変調をかけることになる。
このように、磁界の進行方向が逆にできることは、あたかも遊星ギヤ4cの公転運動を固定した時に、サンギヤ4aとリングギヤ4bとが逆回転状態、すなわち、遊星作動機構での共線関係を成すことを意味している。
図5では、図解の便宜上、界磁ロータ9を2極、磁気変調ロータ11を4極、ステータ7を6極(図示矢印で示す)として構成している。また、磁気変調ロータ11は固定されているものとする。
まず、同図(a)の位置関係において、ステータ7に磁界が生じると、図中丸で囲んだ矢印で示す磁界の近傍に位置する磁気変調ロータ11の軟磁性体17がN極に磁気誘導される。すると、その近傍にあった界磁ロータ9のN極はそれに反発して反時計回りに回転力を受ける。
さらに、同図(c)の位置関係になると、界磁ロータ9のN極と対向していた軟磁性体17がN極に磁気誘導される関係となることから、界磁ロータ9は大きな反発力を受けて更に同方向(反時計回り)に回転する。
以上のように、ステータ7の磁界が時計回りに回ると、同図(a)〜(e)に示す様に、界磁ロータ9はそれとは逆回転方向、すなわち、反時計回りにより大きな角度で回転する関係となる。すなわち、遊星作動機構と同様の作用となる。
上述のステータ7と界磁ロータ9および磁気変調ロータ11から成る本モータ1は、車両のハイブリッドシステムにおいて有効に使うことができるという効果があるので、その要点について図6および図7を用いて説明する。
なお、以下の記述において、界磁ロータ9と磁気変調ロータ11を拘束する装置、および、両ロータ9、11を連結する装置は、図1に簡略的に示す界磁ロータ停止装置19、磁気変調ロータ停止装置20、連結装置21として表している部分である。
磁気変調ロータ11を拘束して、ステータ7から回転磁界を印加すると、磁気変調ロータ11の軟磁性体17が順次磁気誘導されて、回転磁界の方向とは逆方向に界磁ロータ9が回転する。すなわち、界磁ロータ9にエンジン軸を連結しておくと、エンジンスタータとして作動できる。
図6(b)は、HV走行の際に使えることを示す。
界磁ロータ9および磁気変調ロータ11を共に拘束せず、ステータ7で回転磁界を印加する。その際、エンジン軸に連結された界磁ロータ9と、減速ギヤ装置4を介してアクスルに繋がる磁気変調ロータ11との回転差に対応した回転磁界でステータ7の回転磁界を駆動すると、エンジン動力とステータ7を通した電動力とが磁気変調ロータ11に合い加わって、これと減速ギヤ装置4を介して連結されたアクスルの方に合計の動力が出力されることとなる。
EV走行では、エンジンが停止している。停止したエンジンを動かしてしまわないように、エンジン軸に連結された界磁ロータ9を拘束しておき、ステータ7から磁気変調ロータ11を順次磁気誘導すると、アクスルに連結された磁気変調ロータ11が回転するようになる。すなわち、電動力でアクスルを駆動するEV走行モードにおけるモータとしての作用をすることになる。
図7(d)は、回生および制動の際に使えることを示す。
この場合も、EV走行の時と同様に界磁ロータ9を拘束しておき、アクスルが車両の惰性運動すなわち運動エネルギで駆動されるのであるが、これによりアクスルと連結された磁気変調ロータ11が回転する。この磁気変調ロータ11が界磁ロータ9の極性に対して抵抗力を発生する位置関係になるように、ステータ7の回転磁界によって磁気変調ロータ11を磁気誘導すると、磁気変調ロータ11が回転することによる回生発電および制動力が生じることとなる。
また、磁気変調ロータ11の径方向に対しステータ7および界磁ロータ9が配置されない内径側に空間を確保できるので、この空間に第3の回転軸5および減速ギヤ装置4などを配置することができる。あるいは、通風空間として利用することで冷却性向上を図ることもできる。これにより、高性能化の面で好適な設計が可能となる。
この実施例2に示す本モータ1は、図8に示す様に、ステータ7のコイルエンドに対し界磁ロータ9を径方向にずらして配置した一例である。この配置構成によれば、実施例1と同様の効果が得られる上に、ステータ7のコイルエンドと界磁ロータ9とが干渉することはないので、ステータ7と界磁ロータ9とを軸方向に近接して配置できる。これにより、大きな界磁ロータ9であっても、本モータ1の全長を短くでき、且つ、界磁ロータ9との干渉を回避するためにステータ7のコイルエンドを無理に押し潰す必要もない。その結果、全体としてコンパクトでありながら、高性能で絶縁信頼性も確保される。
なお、図8に示す本モータ1は、磁気変調ロータ11が第2の回転軸3に連結されているが、実施例1と同様に、第3の回転軸5に連結し、その第3の回転軸5と第2の回転軸3とを減速ギヤ装置4を介して連結する構成でも良い。また、実施例1と同じ符号は、同一の構成を示すものである。
この実施例3に示す本モータ1は、本出願の請求項2に係る発明に対応するもので、図9に示す様に、界磁ロータ9を磁気変調ロータ11の軸方向の一方の端面に対向して配置した一例である。
磁気変調ロータ11は、ステータ7と対向する径方向の対向面および界磁ロータ9と対向する軸方向の対向面に磁気良導領域を形成する軟磁性体17を配置している。
この構成によれば、ステータ7と界磁ロータ9とが軸方向に干渉することはないので、軸方向寸法を更に短縮することが可能である。
なお、図9に示す本モータ1は、実施例2と同様に、磁気変調ロータ11が第2の回転軸3に連結されているが、実施例1と同様に、第3の回転軸5に連結し、その第3の回転軸5と第2の回転軸3とを減速ギヤ装置4を介して連結する構成でも良い。また、実施例1と同じ符号は、同一の構成を示すものである。
この実施例4に示す本モータ1は、界磁ロータ9をブラシレスロータとして構成した一例である。なお、界磁ロータ9以外の構成は、実施例1と同じである。
本実施例の界磁ロータ9は、図10に示す様に、モータハウジング6に固定された界磁鉄心9bと、その内部に巻回された界磁コイル9cと、この界磁コイル9cの内径側に対向して配置される一組の爪状磁極9d(界磁磁極)とで構成される。一組の爪状磁極9dは、互いに絶縁された状態で周方向に噛み合う様に配置され、例えばステンレス鋼で形成されたリング体22によって機械的に連結され、且つ、ロータアーム8を介して第1の回転軸2に連結されている。
従って、界磁コイル9cに通電する界磁電流の大きさを制御することで界磁磁極の強さを変えることができるので、例えば、第1の回転軸2がエンジンやアクスルの状況都合により回転し続けることが必要であり、且つ、回転機としての動作を止めることが必要な場合には、界磁電流をオフにするだけで、界磁ロータ9が回転し続けることによる鉄損発生などの所謂フリクションロスの問題が解消される。
実施例1に記載した本モータ1は、12極の三相巻線7bを有するステータ7と、20極の界磁磁極(磁石16)を有する界磁ロータ9と、16箇所の磁気良導領域(軟磁性体17)を有する磁気変調ロータ11とで構成されるが、ステータ7の極数、界磁ロータ9の極数、および、磁気変調ロータ11が有する磁気良導領域の数を限定するものではない。すなわち、ステータ7の極数をm、界磁ロータ9の極数をn、磁気変調ロータ11が有する磁気良導領域の数をkで表す時に、mとnは偶数であり、kは下記(1)式で求められる数に設定すれば良い。
k=(m+n)/2…………(1)
実施例1では、磁気変調ロータ11が連結される第3の回転軸5を有し、この第3の回転軸5が減速ギヤ装置4を介して第2の回転軸3に連結される構成であるが、第1の回転軸2と第3の回転軸5との間を減速ギヤ装置4によって連結する構成でも良い。
また、実施例1では、車両のエンジン動力が伝達されて回転する第1の回転軸2に界磁ロータ9を連結しているが、車輪駆動系に連結される第2の回転軸3に界磁ロータ9を連結する構成でも良い。
2 第1の回転軸
3 第2の回転軸
4 減速ギヤ装置(変速装置)
5 第3の回転軸
6 モータハウジング
7 ステータ
7b 三相巻線(多相巻線)
9 界磁ロータ
9c 界磁コイル
9d 爪状磁極(界磁磁極)
11 磁気変調ロータ
16 磁石(界磁磁極)
17 軟磁性体
17a 第1の積層体
17b 第2の積層体
18 軟磁性体を保持する支持体
19 界磁ロータ停止装置(第1の停止装置)
20 磁気変調ロータ停止装置(第2の停止装置)
21 連結装置
Claims (5)
- 周方向に所定の間隔を有して複数の磁気良導領域を有する磁気変調ロータと、
この磁気変調ロータの外径側または内径側に対向して配置され、偶数であるm極の多相巻線を有するステータと、
前記磁気変調ロータの軸方向の一方の端面に対向して配置され、偶数であるn極の界磁磁極を持つ界磁ロータとを有し、
前記磁気変調ロータは、前記ステータと対向する径方向の対向面および前記界磁ロータと対向する軸方向の対向面に前記磁気良導領域を形成する軟磁性体を配置し、この軟磁性体が周方向に所定の間隔を有して配置される数をkとした時に、
k=(m+n)/2…………(1)
前記kは、上記(1)式によって求められることを特徴とする磁気変調式複軸モータ。 - 請求項1に記載した磁気変調式複軸モータにおいて、
周方向に所定の間隔を有して前記k箇所に配置される前記軟磁性体は、非磁性金属から成る支持体によって保持されていることを特徴とする磁気変調式複軸モータ。 - 請求項1または2に記載した磁気変調式複軸モータにおいて、
前記軟磁性体は、複数枚の鋼板を軸方向に積層した第1の積層体と、複数枚の鋼板を周方向に積層した第2の積層体とを有し、
前記ステータおよび前記界磁ロータと対向する前記磁気変調ロータの対向面側に前記第1の積層体が配置され、反対向面側に前記第2の積層体が配置され、且つ、前記第1の積層体と前記第2の積層体とが当接していることを特徴とする磁気変調式複軸モータ。 - 請求項1〜3に記載した何れか一つの磁気変調式複軸モータにおいて、
前記界磁ロータは、回転不能に配置される界磁コイルと、この界磁コイルが発生する磁界により、互いに異なる極性に磁化される一組の爪状磁極とを備えるブラシレスロータとして構成されることを特徴とする磁気変調式複軸モータ。 - 請求項1〜4に記載した何れか一つの磁気変調式複軸モータにおいて、
前記ステータが固定されるモータハウジングに対し前記界磁ロータの回転を拘束できる第1の停止装置、前記モータハウジングに対し前記磁気変調ロータの回転を拘束できる第2の停止装置、および前記界磁ロータと前記磁気変調ロータとの間を連結できる連結装置の少なくとも1つを備えることを特徴とする磁気変調式複軸モータ。
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