JP5818473B2 - 鋼材の冷却制御方法及び連続圧延機 - Google Patents
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Description
巻取温度や巻取機に至るまでの温度履歴を制御する方法としては、以下の特許文献に開示されている。
特許文献2には、熱間圧延における鋼板の冷却制御方法が開示されている。特許文献2に開示の冷却制御方法は、仕上圧延機出口における鋼板の温度および断面寸法を一定の時間または距離間隔ごとにサンプリング測定をし、該サンプリング点を冷却帯全域に追跡し、以後のサンプリング時刻における該サンプリング点の冷却帯上の位置および温度を鋼材速度および各冷却装置の注水パターンの実績値とから算出する。その上で、この冷却制御方法は、該算出位置および温度により該サンプリング点の仕上圧延機出側からの経過時間に対する温度降下および巻取温度計に到達する時点の温度を予測し、該予測温度と目標温度履歴あるいは目標巻取温度とに差があれば、所定の注水順に従い、該サンプリング点の位置より下流側にある各冷却装置の注水パターンを変更するものである。
特許文献3には、熱延鋼板の冷却制御方法が開示されている。特許文献3に開示の冷却制御方法は、仕上圧延後の熱延鋼板を巻取装置までの間に多数配置された水冷装置よりなる冷却帯により冷却して巻取るに当り、前記冷却帯の前半部分において、予め熱延鋼板のγ→α変態が完了するまでの水冷および空冷パターンおよび各冷却時間を設定し、予測した材料速度を用いて前記冷却帯上での前記水冷および空冷区間の各冷却時間が確保されるのに必要な各水冷装置の開閉パターンを決定する。その上で、この冷却制御方法は、前記冷却帯の後半部分において、予測巻取温度が目標巻取温度となるような水冷および空冷パターンおよび各冷却時間を算出し、この水冷および空冷区間の各冷却時間が確保されるのに必要な各水冷装置の開閉パターンを決定し、これら決定した水冷および空冷パターンおよび各冷却時間に従った水冷装置の開閉パターンが実現されるように冷却装置の応答遅れを考慮して指令出力し、熱延鋼板のγ→α変態が完了するまでの温度履歴および巻取温度を一定に保つようにすることを特徴とする。
しかしながら、前述した特許文献1〜3に開示の技術は、いずれも巻き取り前の鋼材の温度に着目して温度履歴や巻取温度を制御するものであって、コイルとして巻き取られた後にその径内側及び径外側が異なる温度履歴を示す鋼材に対して、長手方向全体にわたって軟質化、少なくとも均一化するために必要な巻取温度を設定することができない。つまり、特許文献1〜3に開示された技術によっては、巻き取られた鋼材の先端部及び尾端部では硬い特性となり、中央部は軟らかい特性となるという問題を解決することはできない。
本発明に係る鋼材の冷却制御方法は、熱間圧延機によって圧延された鋼材を水冷した上でコイルへと巻き取る熱間圧延工程にて、コイルに巻き取る前の鋼材の温度である巻取温度を制御する冷却制御方法において、圧延後の鋼材の組織を長手方向に均一なものとするために、前記巻取温度を鋼材長手方向に沿って変更する巻取温度変更ステップを有することを特徴とする。
また、好ましくは、巻取温度変更ステップは、前記コイルの径内側の温度履歴と径外側との温度履歴が、コイルの径中央部の温度履歴と略同一の鋼材組織範囲を通過するように、前記鋼材の先端部分と尾端部分の巻取温度を変更するとよい。
なお、本発明にかかる鋼材の冷却制御方法の最も好ましい形態は、熱間圧延機によって圧延された鋼材を水冷した上でコイルへと巻き取る熱間圧延工程にて、コイルに巻き取る前の鋼材の温度である巻取温度を制御する冷却制御方法において、圧延後の鋼材の組織を長手方向に均一なものとするために、前記巻取温度を鋼材長手方向に沿って変更する巻取温度変更ステップを有しており、前記巻取温度変更ステップは、前記コイルの径内側の温度履歴と径外側との温度履歴が、コイルの径中央部の温度履歴と略同一の鋼材組織範囲を通過するように、前記鋼材の先端部分と尾端部分の巻取温度を変更するものであって、前記巻取温度変更ステップは、前記鋼材の巻取り後の板温度を計測して温度履歴を取得し、取得した温度履歴を前記鋼材の鋼種の連続冷却変態線図にプロットし、取得した温度履歴がプロットされた前記連続冷却変態線図において、巻取り後の温度履歴がフェライト組織の範囲からパーライト組織の範囲を通過するように、鋼材の長手方向に沿って前記巻取温度を変更することを特徴とする。
本発明にかかる鋼材の冷却制御方法の最も好ましい他の形態は、熱間圧延機によって圧延された鋼材を水冷した上でコイルへと巻き取る熱間圧延工程にて、コイルに巻き取る前の鋼材の温度である巻取温度を制御する冷却制御方法において、圧延後の鋼材の組織を長手方向に均一なものとするために、前記巻取温度を鋼材長手方向に沿って変更する巻取温度変更ステップを有しており、前記巻取温度変更ステップは、前記コイルの径内側の温度履歴と径外側との温度履歴が、コイルの径中央部の温度履歴と略同一の鋼材組織範囲を通過するように、前記鋼材の先端部分と尾端部分の巻取温度を変更するものであって、前記巻取温度変更ステップは、コイルの径内側、径中央部及び径外側の温度履歴を取得する「温度履歴取得ステップ」を有しており、前記温度履歴取得ステップで得られたコイルの径内側と径外側との温度履歴が、前記温度履歴取得ステップで得られたコイルの径中央部の温度履歴と略同じであって、前記鋼材の鋼種の連続冷却変態線図において、巻取り後の温度履歴がフェライト組織の範囲からパーライト組織の範囲を通過するように、前記温度履歴取得ステップで得られたコイルの径内側又は径外側の温度履歴の終端温度と、温度履歴取得ステップで得られたコイルの径中央部の温度履歴の終端温度との差を算出し、算出された温度差を、鋼材の先端部分又は尾端部分に対する巻取温度の変更量とすることを特徴とする。
ここで、本発明に係る鋼材の冷却制御方法及び連続圧延機は、鋼材を熱間圧延する圧延スタンドと、前記圧延スタンドの下流側に配備されて圧延された鋼材を水冷する冷却装置と、前記冷却装置で冷却された鋼材を巻き取る巻取り装置と、上述したいずれかの冷却制御方法を実施することで鋼材の巻取温度を変更する巻取温度変更部と、を備えることを特徴とする。
以下、本発明の実施形態による鋼材の冷却制御方法及び連続圧延機を、薄鋼板の熱間連続圧延機1を例示して説明する。
図1は、連続圧延機1の最終段に備えられた圧延スタンド2から冷却装置3、巻取装置4に至るまでの構成を示した図である。鋼材移送方向において、鋼材Wが移送されていく側(巻取装置4側)を下流側、その反対側(圧延スタンド2側)を上流側と呼ぶ。また、以下の説明において、連続圧延機1で圧延される帯状の鋼板(圧延材)を鋼材と呼び、この鋼材を巻き取ったものをコイルと呼ぶ。
圧延スタンド2の出側には、鋼材Wの温度である板温度を計測する出側板温度計(図示せず)が配置されている。この出側板温度計は、鋼材Wからの熱放射量を基に板温度を計測する放射温度計である。出側板温度計の下流側には、γ線厚み計からなる出側板厚計(図示せず)が設置されている。
冷却バンク7には、鋼材Wに向けて冷却水(冷却材)を吹き付ける冷却ノズルが複数備えられ、各冷却ノズルには冷却材の流量をオン・オフ制御可能なバルブが設けられている。このバルブを開状態にすると冷却材が冷却ノズルから噴出するため、開状態のバルブ数(開バルブ本数)を変更することで、冷却ノズルから鋼材Wに吹き付けられる冷却材の全量が変わり、板温度の温度降下量が変化する。
前述した出側板温度計及び出側板厚計からの実績値、すなわち圧延スタンド2出側の板温度及び板厚の各実績値は、冷却装置3を制御する制御部10に入力される。この制御部10には、巻取温度計8からの実績値、すなわち、鋼材Wの巻取温度も入力される。
巻取温度パターンデータベース11は、鋼材Wの長手方向に沿って前端部分から尾端部分にわたって巻取温度を変更する場合の変更パターン(巻取温度パターン)を、鋼種ごとに保持するものである。この巻取温度パターンは、制御部10の外に設けられた後述する巻取温度変更部14によって作成され、制御部10の巻取温度パターンデータベース11に格納される。
巻取温度パターンについては、後に詳しく説明する。
次に、バルブパターン決定部12は、冷却装置3によって冷却される鋼材Wの板温度を予測する温度予測モデルを備えている。バルブパターン決定部12は、温度予測モデルを用いて予測された鋼材Wの巻取温度と、鋼材Wに対して予め定められた目標巻取温度又は鋼材Wに対する巻取温度パターンとの差が所定の値以下となるように、各冷却バンク7における開バルブ本数の適切値を算出する処理を行う。
本実施形態において、制御部10はプロセスコンピュータで構成されており、バルブ開閉信号出力部13は、シーケンサやPLCなどで構成される。加えて、この制御部10には上位コンピュータ(図示せず)から各種データが転送可能となっている。
巻取温度変更部14は、鋼材Wの鋼種ごとの連続冷却変態線図を保持するデータベース(CCTデータベース)と、鋼材Wがコイル状に巻き取られた後にコイル径内側、径中央部、及び径外側での実測によって作成された温度履歴を鋼種ごとに保持するデータベース(温度履歴データベース)と、を有している。
図2に示される連続冷却変態線図は、鋼材Wに関してオーステナイト組織からの変態に及ぼす冷却速度の影響を示すものであって、予めオフラインで作成され、巻取温度変更部14のCCTデータベースに格納されている。図2の連続冷却変態線図は、鋼材Wの温度を縦軸とし、冷却時間に相当する圧延後の経過時間を横軸として示されていて、鋼材Wの長手方向中央部の温度履歴の曲線が重ねて示されている。
仕上圧延スタンド2を出た鋼材Wは、冷却装置3で冷却されて冷却速度が高くなり急速に板温度が低下する。冷却装置3での冷却中、温度履歴曲線の地点A1で、鋼材Wの組織がオーステナイト組織から軟らかい材質特性のフェライト組織(記号Fで表示)へと変態する。
ところで、図3に示すように鋼材Wがコイル状に巻き取られると、鋼材Wの先端部分がコイルの径方向内側(径内側)に、尾端部分がコイルの径方向外側(径外側)に位置し、鋼材Wの長手方向中央部は、コイルの径方向中央(径中央部)に位置することになる。
図4を参照しながら、コイルの径内側と径外側の温度履歴について説明する。鋼材Wは、長手方向に沿って先端部分から尾端部分まで巻取装置4の直前で目標巻取温度Taとなるように冷却されて、巻取装置4でコイル状に巻き取られる。ここまでは、鋼材Wの先端部分、中央部分、尾端部分のいずれにおいても、ほぼ同じ温度履歴であり、例えばバルブパターン決定部12の温度予測モデルなどから導くことができる。しかし、コイル状に巻き取られた後は、先端部分、中央部分、尾端部分のそれぞれは、異なる温度履歴を示すことになる。
図3に示すように、巻き取り後のコイルの一方の端面上で、コイルの径方向に沿って径内側から径外側にわたって数カ所(図3では5カ所)に熱電対を設けてコイルの温度を実測する。熱電対が設けられた場所毎に、巻き取り後からの経過時間と、その経過時間における計測温度とを記録する。この記録に、バルブパターン決定部12の温度予測モデルなどから導かれた仕上圧延スタンド2の出側温度から巻取温度までの温度変化の記録を付加して曲線を作成することで、例えば図2に示したような開始温度Tsから目標巻取温度Taを経て終端温度Ttに至る温度履歴を得ることができる(図8のステップS1、温度履歴取得ステップ)。
続いて、巻取温度変更部14は、鋼種ごとの温度履歴を温度履歴データベースから取り出し、巻取温度パターンを作成する。
図4及び図5を参照し、コイルの径内側及び径外側と径中央部とで、温度履歴の曲線形状が大きく異なる場合における巻取温度パターンの作成方法について説明する。
図5に示すように、巻取温度変更部14は、Bパターンを辿る温度履歴の終端温度TtBとAパターンを辿る鋼材Wの中央部分の温度履歴の終端温度TtAの温度差分だけ目標巻取温度Taを高くして、Bパターンを辿る部位に対する巻取温度Tbとして設定する。言い換えると、図4におけるBパターンの目標巻取温度Taから終端温度TtBまでの温度履歴の曲線を、終端温度TtBと終端温度TtAの温度差分だけ上方にシフトすることとも言える。この温度履歴のシフトによって、図5に示す変更後のBパターンの温度履歴が得られ、この変更後のBパターンの温度履歴から巻取温度Tbを求めることができる。いずれにおいても、終端温度TtAと終端温度TtBは同じ温度となり、変更後のBパターンの温度履歴もパーライト組織の範囲を通過する。
このように設定した巻取温度Tbのうち、例えば鋼材Wの最先端部に対する巻取温度Tbを鋼材Wの先端部分に適用すると共に、最尾端部に対する巻取温度Tbを鋼材Wの尾端部分に適用して、図6に示すような巻取温度パターンを作成することができる(図8のステップS4、巻取温度変更ステップ)。
図7は、巻取温度の変更を連続的に行う巻取温度パターンの一例であって、巻取温度Tbを、巻き取り後、空気に触れる鋼材Wの最先端部と最尾端部では約560℃と高くするが、鋼材Wの中央部分に近づくほど連続的に目標巻取温度Ta(約530℃)に近づけるようにしている。この巻取温度パターンに基づいて、鋼材Wに対する冷却制御を行ってもよい。
制御部10の巻取温度パターンデータベース11は、上述の手順で作成された巻取温度パターンを、鋼材Wの鋼種ごとに保持している。
制御部10は、冷却装置3で冷却される鋼材Wの鋼種に対応する巻取温度パターンを、巻取温度パターンデータベース11から取り出す。
バルブ開閉信号出力部13は、バルブパターン決定部12から通知された開バルブ本数の値に従って各冷却バンク7のバルブの開閉を行い、冷却装置3全体の冷却状態を変更する。
ところで、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、動作条件や測定条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
2 圧延スタンド
3 冷却装置
4 巻取装置
5 ワークロール
6 バックアップロール
7 冷却バンク
8 巻取温度計
10 制御部
11 巻取温度パターンデータベース
12 バルブパターン決定部
13 バルブ開閉信号出力部
14 巻取温度変更部
Claims (3)
- 熱間圧延機によって圧延された鋼材を水冷した上でコイルへと巻き取る熱間圧延工程にて、コイルに巻き取る前の鋼材の温度である巻取温度を制御する冷却制御方法において、
圧延後の鋼材の組織を長手方向に均一なものとするために、前記巻取温度を鋼材長手方向に沿って変更する巻取温度変更ステップを有しており、
前記巻取温度変更ステップは、前記コイルの径内側の温度履歴と径外側との温度履歴が、コイルの径中央部の温度履歴と略同一の鋼材組織範囲を通過するように、前記鋼材の先端部分と尾端部分の巻取温度を変更するものであって、
前記巻取温度変更ステップは、前記鋼材の巻取り後の板温度を計測して温度履歴を取得し、取得した温度履歴を前記鋼材の鋼種の連続冷却変態線図にプロットし、取得した温度履歴がプロットされた前記連続冷却変態線図において、巻取り後の温度履歴がフェライト組織の範囲からパーライト組織の範囲を通過するように、鋼材の長手方向に沿って前記巻取温度を変更する
ことを特徴とする鋼材の冷却制御方法。 - 熱間圧延機によって圧延された鋼材を水冷した上でコイルへと巻き取る熱間圧延工程にて、コイルに巻き取る前の鋼材の温度である巻取温度を制御する冷却制御方法において、
圧延後の鋼材の組織を長手方向に均一なものとするために、前記巻取温度を鋼材長手方向に沿って変更する巻取温度変更ステップを有しており、
前記巻取温度変更ステップは、前記コイルの径内側の温度履歴と径外側との温度履歴が、コイルの径中央部の温度履歴と略同一の鋼材組織範囲を通過するように、前記鋼材の先端部分と尾端部分の巻取温度を変更するものであって、
前記巻取温度変更ステップは、コイルの径内側、径中央部及び径外側の温度履歴を取得する「温度履歴取得ステップ」を有しており、前記温度履歴取得ステップで得られたコイルの径内側と径外側との温度履歴が、前記温度履歴取得ステップで得られたコイルの径中央部の温度履歴と略同じであって、前記鋼材の鋼種の連続冷却変態線図において、巻取り後の温度履歴がフェライト組織の範囲からパーライト組織の範囲を通過するように、前記温度履歴取得ステップで得られたコイルの径内側又は径外側の温度履歴の終端温度と、温度履歴取得ステップで得られたコイルの径中央部の温度履歴の終端温度との差を算出し、算出された温度差を、鋼材の先端部分又は尾端部分に対する巻取温度の変更量とする
ことを特徴とする鋼材の冷却制御方法。 - 鋼材を熱間圧延する圧延スタンドと、
前記圧延スタンドの下流側に配備されて圧延された鋼材を水冷する冷却装置と、
前記冷却装置で冷却された鋼材を巻き取る巻取り装置と、
請求項1又は2に記載の冷却制御方法を実施することで鋼材の巻取温度を変更する巻取温度変更部と、
を備えることを特徴とする連続圧延機。
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