JP5818005B2 - 抵抗溶接装置の検査方法及び偏磁電流計測器 - Google Patents
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Description
溶接ガン14は、ガン本体18とインバータ式溶接トランス20とを含み、図5に概略的に示される構成の、等価回路を有している。この等価回路は、制御装置12に接続された一次電線16から、高周波トランス22を介して二次側回路24に電力供給を受け、二次側回路24の整流部26(図示の例では、二次側回路24中に、四つのダイオードが並列に配置されて構成されている。)によって整流した電流を、ガン本体18の導電体28、30に保持された電極32、34へと供給するものである。そして、電極32、34によってワークWを挟持し、所定の圧力及び電流を付与することで、ワークWを溶融させ、スポット溶接を行うものである(例えば、特許文献1、2参照)。
一方、制御装置12における溶接電流制御の手法は、インバータ式溶接トランス20の一次電流を検出し、そのピーク値を一定にするよう制御する定電流制御が採用されることが一般的である。このため、一次電流にこの偏磁電流が発生すると、偏磁電流分を誤差分としてフィードバックしてしまい、インバータ式溶接トランス20の二次側回路24の溶接電流がその誤差分だけ低下してしまう。そして、溶接電流の低下が大きくなると、溶接不具合である、いわゆる溶接はなれを引き起こしてしまうこととなる。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、抵抗溶接装置の制御回路に発生する偏磁電流を、簡単かつ確実に検査することを可能とすることにある。
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
なお、電流センサを、一次電線の表面をなぞるように相対移動させる際には、適宜、電流センサを、一次電線の長手方向や周方向に向けて移動させることとする。
本項に記載の抵抗溶接装置の検査方法は、電流センサの出力信号の正負の、ピーク値を比較した値から、電流の偏磁状態の有無を判断することで、例えば、出力信号の正負の実行値を比較する場合よりも、判断誤差を少なくするものである。
本項に記載の抵抗溶接装置の検査方法は、電流センサの出力が所定の出力値以上のときに限り、一次電線における偏磁電流の有無を判断することで、偏磁電流の有無の判断精度を高めるものである。又、三本の単線が捩じられた内部構造を有する一次電線の、電流ゲインの変化を考慮し、電流ゲインの高い位置での検出結果を、電流検知に有効活用するものである。そして、所定の出力値は、上記趣旨を考慮して、適宜設定されるものである。
磁束の変化を検出する検知部と、該検知部からの出力信号のピークホールド機能を有する演算部と、前記検知部からの出力信号の正負のピーク値を比較した値を表示する電流表示部とを含み、
磁束の変化を検出する電流センサを、前記一次電線の表面をなぞるように相対移動させ、その間の磁束の変化を検出し、前記電流センサからの出力信号の正負の、ピーク値を比較した値に基づき、前記インバータ式溶接トランスにおける偏磁電流の有無を検知する偏磁電流計測器(請求項2)。
本項に記載の偏磁電流計測器は、磁束の変化を検出する検知部を、一次電線の表面をなぞるように相対移動させ、その間の磁束の変化を、インバータ式抵抗溶接制御装置に対して一次電線を着脱することなしに、検出するものである。又、電流センサにより、一次電線の表面をなぞるように相対移動させる間の、磁束の変化を検出することで、通常は三本の単線が捩じられた内部構造を有する一次電線の、電流ゲインの変化を考慮し、電流ゲインの高い位置での検出結果を、電流検知に有効活用するものである。そして、検知部からの出力信号のピークホールド機能を有する演算部において、計測された電流の正負のピーク値を比較し、該比較値を電流表示部に表示するものである。よって、電流表示部に表示された、検知部からの出力信号の正負のピーク値を比較した値に基づき、インバータ式溶接トランスにおける偏磁電流の有無の判断が、可能となる。
そして、電流センサの出力信号の正負の、ピーク値を比較した値から、電流の偏磁状態の有無を判断することで、例えば、出力信号の正負の実行値を比較する場合よりも、判断誤差を少なくするものである。
本項に記載の偏磁電流計測器は、演算部は、電流センサの出力が所定の出力値以上のときに限り、計測された電流の正負のピーク値を比較し、電流表示部に比較値を出力することで、インバータ式溶接トランスにおける偏磁電流の有無の判断誤差を少なくするものである。又、通常は三本の単線が捩じられた内部構造を有する一次電線の、電流ゲインの変化を考慮し、電流ゲインの高い位置での検出結果を、電流検知に有効活用するものである。そして、所定の出力値は、上記趣旨を考慮して、適宜設定されるものである。
本項に記載のインバータ式抵抗溶接制御装置は、磁束の変化を検出する検知部と、該検知部からの出力信号のピークホールド機能を有する演算部と、前記検知部からの出力信号の正負のピーク値を比較した値を表示する電流表示部とを含む偏磁電流計測器が組み込まれていることで、インバータ式溶接トランスにおける偏磁電流の有無を、自己診断するものである。この場合、例えば、インバータ式抵抗溶接制御装置の溶接タイマー内に、検知部、演算部を組み込むこととする。又、装置キャビネットに設けられた既存の表示板に、検知部からの出力信号の正負のピーク値を比較した値を表示する、電流表示部又は電流表示機能を持たせることとする。
ここで、検知部51は、一次電線16の表面に接触してなぞる操作に適した、平坦な接触面を有するケースの内部に、ホール素子、カレントトランス等の電流センサを格納したものである。又、演算部59は、本体60に内蔵された電気回路により構成されており、図1(c)に示されるように、波形整形部52、ゲイン調整部53、ピークホールド部54、A/Dコンバータ55、CPU56を備えている。ここで、波形整形部52は、検知部51によって検知される電流波形(図5(b)参照)から適宜ノイズを除去して整形する機能部である。又、ゲイン調整部53は、波形整形部52にて整形された電流波形を適宜増幅する機能部である。又、ピークホールド部54は、ゲイン調整部53にて増幅された電流波形の、正負のピーク値を記憶する機能部である。そして、CPU56は、ピークホールド部54に記憶された電流波形の正負のピーク値(図2(b)の符号α、β参照)が所定の値以上のときに限り、計測された電流の正負のピーク値を比較し、電流表示部57に比較値α/β(又はβ/α)を出力する機能部である。これらの各機能部は、本説明における所定の機能を果たす限り、任意のハードウェア又はソフトウェア、更にはその組み合わせにより実装することも可能である。
そして、検知部51は棒状の操作ハンドル62の先端部に固定されており、検知部51に接続された電気ケーブル64が、ハンドル62内を通過して本体60に接続されている。又、本体60、ハンドル62及び電気ケーブル64は、何れも、作業者の操作性、携帯性を考慮した寸法に構成されている。なお、必要に応じ、比較値α/βが所定値を上回った時に発報するアラームを、表示部57に設けることとしても良い。
又、図1の例では、本体60と、検知部51を備えるハンドル62とが、電気ケーブル64によって接続された別体構造を有しているが、適宜、本体60とハンドル62とを一体化させた構成とすることも可能である。
まず、本発明の実施の形態に係る抵抗溶接装置の検査方法は、偏磁電流計測器50の検知部51を、一次電線16の表面をなぞるように相対移動させることで、従来(図4参照)のように、インバータ式抵抗溶接制御装置12に対して一次電線16を着脱することなく、磁束の変化を検出することが可能である。ところで、図3(a)(b)に示されるように、一次電線16は、通常、パワー(+)線66、パワー(−)線68、アース線70といった三本の単線が捩じられ、介在物72と共に、紙テープ74、絶縁シース76によって被覆された内部構造を有するものである。又、各単線は(便宜上アース線70のみ示す)、導体70aが絶縁材70bで被覆された構成となっている。このため、検知部51を、図2(a)に矢印Xで示されるように、一次電線16の表面をなぞるように相対移動させ、その間の磁束の変化を検出すると、図3(c)に示されるように、測定位置によって電流出力が変化することとなる。
よって、本発明の実施の形態によれば、生産ラインの稼動中であっても、作業者の空き時間を利用して、簡単かつ確実に、制御装置12の偏磁電流の発生の有無を把握することが可能となり、測定工数の時間低減が可能となる。又、定期管理も少ない工数で済み、インバータ式溶接トランス20のダイオード(図5の整流部26参照)の途中劣化も事前に予知することも可能となり、計画的なダイオードの交換計画を立てることも可能となる。
Claims (3)
- インバータ式抵抗溶接制御装置に接続される三本の単線が捩じられた内部構造を有する一次電線から、高周波トランスを介して二次側回路に電力供給を受け、該二次側回路の整流部によって整流した電流を、溶接ガンの電極へと供給するインバータ式溶接トランスを備える、抵抗溶接装置の溶接電流計測方法であって、
磁束の変化を検出する電流センサを、前記一次電線の表面をなぞるように相対移動させ、その間の磁束の変化を検出し、
前記電流センサの出力が、前記一次電線の構造に起因する電流ゲインの変化を考慮した所定の出力値以上のときに限り、
前記電流センサからの出力信号の正負の、ピーク値を比較した値に基づき、前記インバータ式溶接トランスにおける偏磁電流の有無を検知し、前記二次側回路の整流部の途中劣化を予知することを特徴とする抵抗溶接装置の検査方法。 - インバータ式抵抗溶接制御装置に接続される一次電線から、高周波トランスを介して二次側回路に電力供給を受け、該二次側回路の整流部によって整流した電流を、溶接ガンの電極へと供給するインバータ式溶接トランスを備える、抵抗溶接装置の溶接電流計測方法に用いられる偏磁電流計測器であって、
磁束の変化を検出する検知部と、該検知部からの出力信号のピークホールド機能を有する演算部と、前記検知部からの出力信号の正負のピーク値を比較した値を表示する電流表示部とを含み、
磁束の変化を検出する電流センサを、前記一次電線の表面をなぞるように相対移動させ、その間の磁束の変化を検出し、前記電流センサからの出力信号の正負の、ピーク値を比較した値に基づき、前記インバータ式溶接トランスにおける偏磁電流の有無を検知することを特徴とする偏磁電流計測器。 - 前記演算部は、電流センサの出力が所定の出力値以上のときに限り、計測された電流の正負のピーク値を比較し、前記電流表示部に比較値を出力することを特徴する請求項2記載の偏磁電流計測器。
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