以下では、本発明の実施形態について図を参照しつつ説明する。
<装置構成>
先ず、本実施形態に係る車両の全体構成について、図1を参照して説明する。ここに図1は、本実施形態に係る車両の制御装置が搭載される車両の構成を示す概略構成図である。
図1において、本実施形態に係る車両は、バッテリ100と、インバータ200と、モータジェネレータ300と、コンデンサ400と、システムメインリレー510(SMR(1)500、制限抵抗502、SMR(2)504、SMR(3)506)と、ECU600とを備えて構成されている。なお、本実施形態において、車両はモータジェネレータ300からの駆動力のみにより走行する電気自動車であるとして説明するが、その他、ハイブリッド車や燃料電池車等であっても構わない。
バッテリ100は、複数のセルを直列に接続したモジュールをさらに複数直列に接続した組電池である。なお、バッテリ100に加えてキャパシタ700が備えられ、ともにそれぞれの特性に応じて、モータジェネレータ300に電力を供給する。バッテリ100の電圧は、電圧センサ105において検出され、ECU600へと出力される。
インバータ200は、6つのIGBTと、IGBTのエミッタ側からコレクタ側に電流を流すように、各IGBTにそれぞれ並列に接続された6つのダイオードとを含む。インバータ200は、ECU600からの制御信号に基づいて、モータジェネレータ300をモータまたはジェネレータとして機能させる。
インバータ200は、モータジェネレータ300をモータとして機能させる場合、バッテリ100やキャパシタ700から供給された直流電力を交流電力に変換し、モータジェネレータ300に供給する。インバータ200は、各IGBTのゲートをオン/オフ(通電/遮断)してモータジェネレータ300に供給する電力を制御することにより、モータジェネレータ300がECU600からの制御信号で要求される出力状態になるように制御する。
インバータ200は、モータジェネレータ300をジェネレータとして機能させる場合、モータジェネレータ300が発電した交流電力を直流電力に変換し、バッテリ100やキャパシタ700に充電する。インバータ200は、各IGBTのゲートをオン/オフ(通電/遮断)してモータジェネレータ300が発電する電力(回生電力)を制御することにより、ECU600からの制御信号で要求される回生制動力(回生トルク)が車両に作用するように制御する。
モータジェネレータ300は、本発明の「回転電機」の一例であり、三相交流モータであるとともに、車両の回生制動時に発電するジェネレータである。モータジェネレータ300の回転軸は、最終的には車両のドライブシャフト(図示せず)に接続される。車両は、モータジェネレータ300からの駆動力により走行する。
コンデンサ400は、インバータ200と並列に接続されている。コンデンサ400は、バッテリ100から供給された電力、またはインバータ200から供給された電力を平滑化するため、電荷を一旦蓄積する。平滑化された電力は、インバータ200またはバッテリ100に供給される。
システムメインリレー510は、正極側のSMR(1)500、SMR(2)504および負極側のSMR(3)506から構成される。SMR(1)500、SMR(2)504、SMR(3)506は、コイルに対して励磁電流を通電したときにオンする接点を閉じるリレーである。
SMR(1)500およびSMR(2)504は、バッテリ100の正極側に設けられている。
SMR(1)500とSMR(2)504とは、並列に接続されている。SMR(1)500には、制限抵抗502が直列に接続されている。SMR(1)500は、SMR(2)504が接続される前に接続され、インバータ200に突入電流が流れることを防止するプリチャージ用SMRである。
SMR(2)504は、SMR(1)500が接続され、プリチャージが終了した後に接続される正側SMRである。
S M R(3)506は、バッテリ100の負極側に設けられている負側SMRである。各SMRは、ECU600により制御される。
電源オン時(即ち、イグニッションスイッチのポジションがOFF位置からSTA位置に切換られる時)、ECU600は、先ず、SMR(3)506をオンし、次にSMR(1)500をオンしてプリチャージを実行する。SMR(1)500には制限抵抗502が接続されているので、SMR(1)500をオンしてもインバータ200にかかる電圧は緩やかに上昇し、突入電流の発生を防止することができる。プリチャージ実行後、ECU600は、SMR(2)504をオンにする。電源オフ時(イグニッションスイッチのポジションがSTA位置からOFF位置に切換られる時)、ECU600は、バッテリ100からの漏電防止などのため、SMR(1)500、SMR(2)504およびSMR(3)506をオフする。
ECU600は、CPU、ROM及びRAM等を備え、車両の各部の動作を制御可能に構成された電子制御ユニットであり、本発明の「車両の制御装置」の一例である。ECU100は、例えばROM等に格納された制御プログラムに従って、車両における各種制御を実行可能に構成されている。ECU600の具体的な構成については、後に詳述する。
車両には更に、上述したように、バッテリ100に加えて、キャパシタ700が搭載される。キャパシタ700は、インバータ200の入力側端子とコンデンサ400との間に接続される。キャパシタ700の電圧は、電圧センサ705により検出され、ECU600へと出力される。
キャパシタ700は、コイルに対して励磁電流を通電したときにオンする接点を閉じるリレー702およびリレー704をECU600が開閉制御して、インバータ200との間で電力を充放電する。電源オン時には、リレー702およびリレー704はオンされる。電源オフ時には、キャパシタ700からの漏電防止などのため、リレー702およびリレー704はオフされる。
キャパシタ700は、バッテリ100よりも定格充放電電力が大きく、瞬間的な高入出力に対応できる。キャパシタ700は、バッテリ100よりも蓄電容量が少なく回生エネルギの充電時には短時間で満充電状態となる。
また、この車両には、バッテリ100とインバータ200との間に、昇圧コンバータ800が設けられる。車両の加速時には、昇圧コンバータ800により、たとえばバッテリ100の定格電圧(200V程度)が、500V程度(モータジェネレータ300の定格電圧)まで昇圧されて、インバータ200に供給される。車両の回生制動時には、インバータ200で直流電圧に変換された500V程度の回生電圧が、バッテリ100の定格電圧に降圧されて、バッテリ100に供給される。昇圧コンバータ800は、2つのIGBTや電流変化を低減させるリアクトルから構成される。
さらに、この車両には、ECU600に接続されたブレーキ圧センサ2100及び車速センサ2200が設けられる。ブレーキ圧センサ2100は、運転者によるブレーキペダル(図示せず)の踏込み力に応じたブレーキ圧を検出し、ブレーキ圧を表わす信号をECU600に送信する。車速センサ2200は、車速を検出し、車速を表す信号をECUに送信する。
ECU600は、イグニッションスイッチ(図示せず)、アクセルペダルの踏込み量センサ(図示せず)、ブレーキ圧センサ2100などから送信される信号に基づいて、ROMに記憶されたプログラムを実行する。このプログラムにより、インバータ200、昇圧コンバータ800および各SMR等が制御されて、車両は所望の状態で走行するように制御される。
本実施形態において、バッテリ100およびキャパシタ700の充放電は、例えば昇圧コンバータ800の出力電圧(システム電圧)を変更することにより制御される。具体的には、モータジェネレータ300に電力を供給する場合、キャパシタ700の電圧よりも昇圧コンバータ800の出力電圧を低くすると、キャパシタ700から優先的に放電される。昇圧コンバータ800の出力電圧をキャパシタ700の電圧以上にすると、バッテリ100から優先的に放電される。
一方、回生制動時にモータジェネレータ300で発電された電力をバッテリ100又はキャパシタ700に充電する場合、昇圧コンバータ800の出力電圧をキャパシタ700の電圧以下にすると、バッテリ100が優先的に充電される。キャパシタ700の電圧よりも昇圧コンバータ800の出力電圧を高くすると、キャパシタ700が優先的に充電される。
また、ECU600は、バッテリ100の温度や充電状態などに基づいて、バッテリ充電電力制限値(バッテリ100に充電される電力の最大値)WIN(B)を算出する。同様に、ECU600は、キャパシタ700の温度や電圧に基づいて、キャパシタ充電電力制限値(キャパシタ700に充電される電力の最大値)WIN(C)を算出する。なお、充電電力制限値WIN(B)および充電電力制限値WIN(C)は、それぞれの定格充電電力値を超えないように算出される。
次に、本発明の「油圧制御手段」の一例である油圧ブレーキについて、図2及び図3を参照して説明する。ここに図2は、車両に設けられている油圧ブレーキの構成を示す概略構成図である。また図3は、ブレーキキャリパの内部を示す部分拡大図である。
図2に示すように、車両1には、左右の前輪2F及び左右の後輪2Rを制動する油圧ブレーキ40が設けられている。なお、以降において前輪2Fと後輪2Rとを区別する必要がない場合には単に車輪2と称する。
油圧ブレーキ40は、車輪2とともに回転するブレーキディスク41と、ブレーキディスク41を挟み込んで車輪2に制動力を付与するブレーキキャリパ42とを備えている。この図に示すように、これらブレーキディスク41及びブレーキキャリパ42は、各車輪2に設けられている。
図3に拡大して示すように、ブレーキキャリパ42は、ブレーキディスク41に押し付けられるブレーキパッド43と、ブレーキパッド43を駆動するシリンダ44とを備えている。各シリンダ44は、ブレーキ配管45を介してブレーキアクチュエータ46にそれぞれ接続されている。
ブレーキアクチュエータ46は、その内部に油圧ポンプ及び電磁バルブ等を有し、この油圧ポンプにてブレーキペダルBPにて操作されるマスタシリンダ47内のブレーキオイルを各シリンダ44に送出することにより各車輪に制動力を付与する。ブレーキアクチュエータ46は、その内部に設けられている電磁バルブの開閉によって各シリンダ44内の油圧をそれぞれ調整でき、これにより各車輪2に付与する制動力をそれぞれ別々に調節することができる。
次に、ECU600の具体的な構成について、図4を参照して説明する。ここに図4は、本実施形態に係るECUの構成を示すブロック図である。なお、図4では、説明の便宜上、ECU600が含み得る部位のうち、本実施形態と関わりの深いもののみを図示し、その他の部位については図示を省略している。
図4において、ECU600は、減速要求判定部610と、キャパシタ許容充電量算出部620と、減速時間設定部630と、減速後車速推定部640と、バッテリ分減速度算出部650と、キャパシタ充電量算出部660と、目標回生減速度設定部670と、目標回生減速度補正部671と、目標回生減速度更新判定部672と、回生トルク指令部680と、油圧指令部690とを備えて構成されている。
減速要求判定部610は、ブレーキ圧センサ2100等の検出値に基づいて、車両に対して減速が要求されているか否かを判定する。減速要求判定部610の判定結果は、キャパシタ許容充電量算出部620及び減速時間設定部630にそれぞれ出力可能とされている。
キャパシタ許容充電量算出部620は、キャパシタ700のOCV(Open Circuit Voltage)等に基づいて、車両に減速が要求された時点でのキャパシタ700の許容充電量を算出する。キャパシタ許容充電量算出部620の算出結果は、目標回生減速度設定部670に出力可能とされている。
減速時間設定部630は、後述する目標回生減速度を設定するために、本発明の「所定時間」の一例である減速時間tを設定する。減速時間設定部630には、予め減速時間tの初期値が設定されており、処理開始時には先ずこの初期値が減速時間tとして設定される。減速時間tは、目標回生減速度の設定処理において変動する。
減速後車速推定部640は、本発明の「減速後車速推定手段」の一例であり、減速時間設定部630で設定された減速時間tの減速が行われた後の車速を推定する。減速後車速推定部640で推定された減速後の車速は、バッテリ分減速度算出部650に出力可能とされている。
バッテリ分減速度算出部650は、減速後車速推定部640で推定された減速後の車速を用いて、バッテリ100の回生充電量に相当する減速度を算出する。バッテリ部減速度算出部650で算出されたバッテリ分減速度は、キャパシタ充電量算出部660へと出力可能とされている。
キャパシタ充電量算出部660は、本発明の「キャパシタ充電量算出手段」の一例であり、バッテリ部減速度算出部650で算出されたバッテリ分減速度を用いて、減速時間tの減速によるキャパシタ700の充電量を算出する。キャパシタ充電量算出部660で算出されたキャパシタ充電量は、目標回生減速度設定部670へと出力可能とされている。
目標回生減速度設定部670は、本発明の「目標回生減速度設定手段」の一例であり、キャパシタ許容充電量算出部620において算出されたキャパシタ許容充電量と、キャパシタ充電量算出部660において算出されたキャパシタ充電量とを比較して、目標回生減速度(即ち、モータジェネレータ300の回生によって実現されるべき減速度)を設定する。
目標回生減速度補正部671は、本発明の「目標回生減速度補正手段」の一例であり、減速時間設定部630において設定される減速時間tが所定の閾値より大きい場合に、目標回生減速度設定部670において設定される目標回生減速度を補正する。
目標回生減速度更新判定部672は、本発明の「目標回生減速度再設定手段」の一例であり、実回生減速度と目標回生減速度設定部670で設定された目標回生減速度とを比較し、その結果に応じて目標回生減速度を更新すべきか否かを判定する。目標回生減速度を更新すべきと判定された場合、目標回生減速度更新判定部672は、目標回生減速度設定部670に対して再度目標回生減速度を設定するように指令を出力する。
回生トルク指令部680は、目標回生減速度を実現するように、モータジェネレータ300の回生トルクを制御する。油圧指令部690は、要求制動力から目標回生減速度を差し引いた減速度を実現するように油圧を制御する。即ち、ここでの回生トルク指令部680及び油圧指令部690は、本発明の「制御手段」の一例である。
尚、ECU600は、上述した各部位を含んで構成された一体の電子制御ユニットであり、上記各部位に係る動作は、全てECU600によって実行されるように構成されている。但し、本発明に係る上記部位の物理的、機械的及び電気的な構成はこれに限定されるものではなく、例えばこれら各部位は、複数のECU、各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等として構成されていてもよい。
<目標回生減速度設定制御>
次に、上述したバッテリ100及びキャパシタ700を回生電力の充電手段として備える車両において発生し得る問題点について、図5を参照して説明する。ここに図5は、第1比較例に係る問題点を示すタイムチャートである。なお、図5は、車両に減速要求がなされてからの各パラメータの変動を示すチャートであり、時刻“0”において減速要求がなされたものとする。
図5において、ブレーキペダルの操作に対する目標減速度が−2m/s2であったとする。この場合、目標減速度は、油圧ブレーキによる油圧分と、モータジェネレータによる回生分(より具体的には、図中に示すように、回生電力のバッテリ100への充電量に相当するバッテリ分、及びキャパシティ700への充電量に相当するキャパシティ分)とで実現される。
ここで仮に、バッテリ分とキャパシティ分との配分を最適化せずに減速を行うと、キャパシタ700の許容充電量がバッテリ100より小さいため、キャパシタ700は減速終了前に満充電となってしまう。このため、図に示すように、キャパシタ分は時刻6秒を過ぎたあたりから低下し、限り無くゼロに近づいていく。このような減速を行うと、キャパシタ700のWINが制限された時点で回生トルクが一時的に低下し、その後バッテリWINの増加に伴い回生トルクも増加する。よって、回生減速度が上下する。
ここで、回生減速度の変動は、油圧ブレーキによって補償される。しかしながら、油圧ブレーキは、ブレーキパッドのμ変化や当たりの状態等に起因して指令に対する実減速度の誤差が大きい。このため、油圧ブレーキでは、回生減速度の変動を適切に補償することができず、結果として車両の実減速度が図に示すように変動する。このような減速度の変動は、車両の運転者に対して違和感を与える原因となるおそれがある。
本実施形態に係る車両の制御装置は、上述したような減速度の変動を防止しつつ、効率的に回生電力を回収することを目的としている。以下では、本実施形態に係る車両の制御装置の動作の流れについて、図6を参照して説明する。ここに図6は、本実施形態に係る車両の制御装置の動作の流れを示すフローチャートである。なお、図6では、説明の便宜上、ECU600が実行する各種処理のうち、本実施形態に特有の制動力制御と関連の深い処理のみを示し、その他の一般的な処理については適宜省略している。
図6において、本実施形態に係る車両の制御装置の動作時には、先ず減速要求判定部610においてブレーキ操作が開始されたか否かが判定される(ステップS101)。なお、ブレーキ操作が開始されていない場合は(ステップS101:NO)、ステップS102以降の処理は開始されない。
ブレーキ操作が開始された場合は(ステップS101:YES)、キャパシタ許容充電量算出部620によって、ブレーキ操作開始時点でのキャパシタ許容充電量が算出される(ステップS102)。キャパシタ許容充電量Ecapは、静電容量をCcap、キャパシタ上限電圧をVc_max、ブレーキ操作開始時のキャパシタOCV電圧をVc_iniとすると、以下の数式(1)を用いて算出することができる。
Ecap=1/2Ccap(Vc_max2−Vc_ini2) ・・・(1)
続いて、減速時間設定部630によって減速時間tが設定される(ステップS103)。ここで減速時間t(n)は、初期値として設定される場合を除き、直前の減速時間t(n−1)に微小時間dtを加算することで設定される。即ち、減速時間tは、微小時間dtだけカウントアップされていく。
設定された減速時間t(n)は、所定のブレーキ上限時間Tmaxより小さいか否かが判定される(ステップS104)。ここで、減速時間t(n)がブレーキ上限時間Tmax以上である場合には(ステップS104:NO)、目標回生減速度補正部671によって、後述する目標減速度の補正制御が実行される(ステップS105)。なお、ブレーキ上限時間Tmaxは、本発明の「所定の上限値」の一例であり、車両の減速動作が行われ得る最大値(例えば、運転者が連続してブレーキペダルを踏み続ける期間の最大値)に応じて予め設定されている。
他方、減速時間t(n)がブレーキ上限時間Tmaxより小さい場合には(ステップS104:YES)、減速後車速推定部640によって減速後の車速が推定され、バッテリ分減速度算出部650によってバッテリWin相当の回生減速度であるαbatt(t(n))が算出される(ステップS106)。ここで、バッテリ分回生減速度αbatt(t(n))は、バッテリ電力をWinb、ブレーキ操作開始時の車速をVel_ini、要求減速度をαtg、車体質量をMvとすると、以下の数式(2)を用いて算出することができる。
αbatt(t(n))=Winb/(Vel_ini−αtg×t(n)・Mv) ・・・(2)
なお、上記数式(2)における「Vel_ini−αtg×t(n)」が減速後の車速に相当する。
算出されたバッテリ分回生減速度αbatt(t(n))は、システム上の回生下限減速度αrg_limより大きいか否かが判定される(ステップS107)。なお、バッテリ分回生減速度αbatt(t(n))が回生下限減速度αrg_lim以下である場合には(ステップS107:NO)、後述するステップS108及びステップS109は省略される。
バッテリ分回生減速度αbatt(t(n))が回生下限減速度αrg_limより大きい場合には(ステップS107:YES)、減速時間t(n)における回生によってキャパシタ700に充電されるキャパシタ充電量Ecap_rgが算出される。キャパシタ充電量Ecap_rgは、バッテリ分回生減速度αbatt(t(n))を含む以下の数式(3)を用いて算出できる。
続いて、目標回生減速度設定部670において、キャパシタ許容充電量算出部620において算出されたキャパシタ許容充電量Ecapと、キャパシタ充電量算出部660において算出されたキャパシタ充電量Ecap_rg(n)とが互いに等しいか否かが判定される(ステップS109)。ここで、キャパシタ許容充電量Ecapとキャパシタ充電量Ecap_rg(n)とが互いに等しくない場合(ステップS109:NO)、ステップS103以降の処理が再度開始される。即ち、キャパシタ許容充電量Ecapとキャパシタ充電量Ecap_rg(n)とが等しくなるまで、ステップS103以降の処理が繰り返される。
なお、ステップS103以降の処理が繰り返されると、ステップS103において、減速時間tが徐々に増加される。よって、減速時間tを用いて算出されるバッテリ分回生減速度αbatt(t(n))、及びキャパシタ充電量Ecap_rgも、処理が繰り返される度に大きくなる。よって、キャパシタ充電量Ecap_rgは、徐々にキャパシタ許容充電量Ecapへ近づけられる。
キャパシタ許容充電量Ecapとキャパシタ充電量Ecap_rg(n)とが互いに等しい場合(ステップS109:YES)、その時点でのバッテリ分回生減速度αbatt(t(n))が、目標回生減速度αrgtとして設定される(ステップS110)。即ち、目標回生減速度αrgtは、減速時間t(n)の減速によって、キャパシタ700をちょうど満充電とするような減速度として設定されることになる。
以下では、上述した目標回生減速度αrgtが設定される場合の減速時のパラメータ変動について、図7を参照して説明する。ここに図7は、本実施形態に係る制御時の各パラメータを示すタイムチャートである。
図7において、減速時間tが約14秒で、目標回生減速度αrgtが−1m/s2に設定されたとする。この場合、キャパシタ700は、ブレーキ開始からの経過時間が減速時間tである時刻14秒の時点で満充電となり、時刻14秒以降はバッテリ100のみで回生電力が回収される。なお、減速によるキャパシタ充電量Ecap_rg(n)は、図中の網掛け部分の面積に相当する。
上述したように目標回生減速度を設定すれば、減速時間t(n)において一定の目標回生減速度αrgtが実現されるため、車両の減速度の変動を抑制することができる。即ち、図5で示したような減速度の変動を抑制できる。なお、回生減速度の変動は、油圧ブレーキによっても補償することができるが、油圧ブレーキは特性上、指令値に対する実減速度の誤差が大きくなり、適切な補償が行えないおそれがある。従って、回生減速度の変動を抑制できる本実施形態の効果は極めて有益である。
本実施形態では更に、減速時の回生電力により、キャパシタ700を満充電とすることができる。従って、キャパシタ700による回生電力の回収効率を最大限発揮させることができる。即ち、キャパシタ許容充電量Ecapに余裕があるにもかかわらず、キャパシタ700への充電が制限されてしまうことを防止できる。
<目標回生減速度補正制御>
次に、目標回生減速度αrgtの補正制御(即ち、図6におけるステップS105)について、具体的に説明する。
まず、目標回生減速度αrgtの補正制御を行わない場合に起こり得る問題点について、図8を参照して説明する。ここに図8は、第2比較例に係る問題点を示すタイムチャートである。
図8において、車両の減速は、例えば運転者が途中でブレーキペダルを離すことで中断され得る。具体的には、図に示す例では、時刻6秒付近でブレーキペダルの踏下量が減少し始め、時刻8秒の時点では減速が中断されている。このような場合、減速時間t(n)が十分に長くとれず、結果的にキャパシタ700への充電量が不十分となってしまうおそれがある。本実施形態に係る目標回生減速度αrgtの補正制御は、減速時間t(n)が短い場合であっても、回生電量の回生効率が低下してしまうことを抑制することを目的としている。
次に、目標回生減速度αrgtの補正制御の流れについて、図9を参照して具体的に説明する。ここに図9は、本実施形態に係る目標減速度の補正制御の流れを示すフローチャートである。
図9において、補正制御が開始されると(即ち、図6に示すステップS104で、減速時間t(n)がブレーキ上限時間Tmax以上であると判定された場合)、補正量を決定するための補正基準値mが、初期値として設定される場合を除き、インクリメントされる(ステップS201)。
続いて、減速時間t(n)がブレーキ上限時間Tmaxである場合の補正後回生減速度αrg_Tmaxが算出される(ステップS202)。補正後回生減速度αrg_Tmaxは、所定の減速度増加量をΔαとして、以下の数式(4)を用いて算出できる。
αrg_Tmax=αbatt(Tmax)+Δα・m ・・・(4)
上記数式(4)からも分かるように、補正後回生減速度αrg_Tmaxは、通常の設定制御において目標回生減速度として設定され得るαbatt(Tmax)に対して、Δα・mを加算した値である。
続いて、補正後回生減速度αrg_Tmaxを実現した場合にキャパシタ700に充電されるキャパシタ充電量Ecap_rg(m)が算出される(ステップS203)。キャパシタ充電量Ecap_rg(m)は、補正後回生減速度αrg_Tmaxを含む以下の数式(5)を用いて算出できる。
続いて、キャパシタ許容充電量算出部620において算出されたキャパシタ許容充電量Ecapと、補正後回生減速度αrg_Tmaxを実現した場合のキャパシタ充電量Ecap_rg(m)とが互いに等しいか否かが判定される(ステップS204)。ここで、キャパシタ許容充電量Ecapとキャパシタ充電量Ecap_rg(m)とが互いに等しくない場合(ステップS204:NO)、ステップS201以降の処理が再度開始される。即ち、キャパシタ許容充電量Ecapとキャパシタ充電量Ecap_rg(m)とが等しくなるまで、ステップS201以降の処理が繰り返される。
なお、ステップS201以降の処理が繰り返されると、ステップS201において、補正基準値mが1ずつ増加される。よって、補正基準値mを用いて算出される補正後回生減速度αrg_Tmax、及びキャパシタ充電量Ecap_rg(m)も、処理が繰り返される度に大きくなる。よって、キャパシタ充電量Ecap_rg(m)は、徐々にキャパシタ許容充電量Ecapへ近づけられる。
キャパシタ許容充電量Ecapとキャパシタ充電量Ecap_rg(m)とが互いに等しい場合(ステップS204:YES)、その時点での補正後回生減速度αrg_Tmaxが、目標回生減速度αrgtとして設定される(ステップS205)。即ち、目標回生減速度αrgtは、減速時間がTmaxに制限されている場合であっても、キャパシタ700をちょうど満充電とするような減速度として設定されることになる。
以下では、上述した目標回生減速度αrgtの補正制御が実行される場合の減速時のパラメータ変動について、図10を参照して説明する。ここに図10は、実施形態に係る目標減速度の補正制御時の各パラメータを示すタイムチャートである。
図10において、補正制御を実行した場合の目標回生減速度αrgtは、補正制御を実行しない場合と比べてわずかに増加している。具体的には、図8で示した目標回生減速度が−1m/s2であったのに対し、補正制御後の目標回生減速度αrgtは、約−1.2m/s2となっている。
このように目標回生減速度αrgtが大きくなるよう補正されることで、減速時間tに上限が設定されている場合であっても、キャパシタ充電量Ecap_rg(m)を増加させ、結果的に減速後のキャパシタ700を満充電とすることができる。
なお、目標回生減速度αrgtをシステム上の限界値としても、キャパシタ充電量Ecap_rg(m)がキャパシタ許容充電量Ecapに達しない場合も想定される。しかし、このような場合であっても、目標回生減速度αrgtが大きくなる分、確実にキャパシタ充電量Ecap_rg(m)がキャパシタ許容充電量Ecapに近づくため、相応に回生電力の回収効率を高めることができる。
<目標回生減速度更新制御>
次に、目標回生減速度αrgtの更新制御について説明する。
まず、目標回生減速度αrgtの更新制御を行わない場合に起こり得る問題点について、図11を参照して説明する。ここに図11は、第3比較例に係る問題点を示すタイムチャートである。
図11において、回生減速度のうちキャパシタ分の減速度は、キャパシタ700の状態によって適切な値とならない場合がある。具体的には、キャパシタ700の動作は、電圧、電流及びパワ等に応じて決定される。よって、仮にキャパシタ700に求められる減速度が、電圧、電流及びパワ等の上限値を超えるようなものであれば、実際のキャパシタ分の減速度は求められる減速度より小さい値となってしまう。
図で示す例では、時刻0秒におけるキャパシタOCVが約120Vであるため、キャパシタ電流が上限値の200Aとなり、目標回生減速度αrgtが実現できていない。具体的には、目標回生減速度αrgtが約−1.2m/s2とされているのに対し、時刻0秒時点では、約−0.8m/s2程度しか回生減速度が得られていない。このため、実減速度も一定とはならず、時刻0秒から2秒までの間は減少傾向となっている。本実施形態に係る目標回生減速度αrgtの更新制御は、このように目標回生減速度αrgtと実減速度とに違いが生じてしまった場合であっても、好適な充電制御を実現することを目的としている。
次に、目標回生減速度αrgtの更新制御の流れについて、図12を参照して具体的に説明する。ここに図12は、本実施形態に係る目標減速度の更新制御の流れを示すフローチャートである。
図12において、目標回生減速度αrgtの更新制御を行う場合には、まず目標回生減速度更新判定部672によって、目標回生減速度αrgtが実回生減速度αrg_act以下であるか否かが判定される(ステップS301)。即ち、目標回生減速度αrgtと実回生減速度αrg_actとの間に違いが生じているか否かが判定される。
ここで、目標回生減速度αrgtが実回生減速度αrg_act以下でない場合(ステップS301:NO)、目標回生減速度αrgtの更新制御は実行されない。即ち、目標回生減速度αrgtと実回生減速度αrg_actとの間に違いが生じていない場合には、目標回生減速度αrgtの更新制御は実行されない。
一方で、目標回生減速度αrgtが実回生減速度αrg_act以下である場合(ステップS301:YES)、目標回生減速度αrgtの更新制御が実行される。即ち、目標回生減速度αrgtと実回生減速度αrg_actとの間に違いが生じている場合には、目標回生減速度αrgtの更新制御が実行される。
目標回生減速度αrgtの更新制御が開始されると、図6で示したステップS102以降の処理が再び実行される。これにより、目標回生減速度αrgtと実回生減速度αrg_actとの間に違いが生じていると判定された時点での各パラメータを考慮して、目標回生減速度αrgtが再設定される。よって、目標回生減速度αrgtが実現されていない期間が存在していた場合でも、減速時間tの経過後にはキャパシタ700が満充電とされる。
以下では、上述した目標回生減速度αrgtの更新制御が実行される場合の減速時のパラメータ変動について、図13を参照して説明する。ここに図13は、実施形態に係る目標減速度の更新制御時の各パラメータを示すタイムチャートである。
図13において、時刻0秒から2秒までは、キャパシタ700の動作制限により、回生減速度が初期の目標回生減速度αrgtに達していない。よって、仮に回生減速度が初期の目標回生減速度αrgtに達する時刻2秒以降において初期の回生減速度αrgtを実現できたとしても、減速によるキャパシタ充電量Ecap_rg(m)には、時刻0秒から2秒の不足分だけ、キャパシタ許容充電量Ecapとの差が生じてしまう。
このため本実施形態では、回生減速度が初期の目標回生減速度αrgtに達していないと判定された時点で、目標回生減速度αrgtが更新される。更新後の目標回生減速度αrgtは、初期の回生減速度αrgtより大きい。このため、時刻0秒から2秒の不足分を、時刻2秒以降の充電で補うことが可能となる。よって、減速後のキャパシタ700を満充電とすることができる。
なお、図に示す例では、時刻4秒以降の回生減速度が常に目標回生減速度αrgtと等しくなっているため、その後の更新制御は行われない。ただし、目標回生減速度αrgtの更新後においても、再び回生減速度と目標回生減速度αrgtの間に差が生じてしまうような場合には、再度更新制御が行われても構わない。
以上説明したように、本実施形態に係る車両の制御装置によれば、車両の減速度の変動を抑制しつつ、効率よく回生電力を回収することが可能である。
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う車両の制御装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。