JP5815926B2 - スキャフォールド材料およびそれを用いた三次元構造体 - Google Patents

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Description

本発明は、スキャフォールド材料およびそれを用いた三次元構造体に関する。詳しくは、人工歯根、人工骨、細胞培養基盤、細胞フィルターなどの医用製品に用いられるスキャフォールド材料あるいは三次元構造体に関する。
医用の発達とともに様々な医用器具、医用製品が開発されており、それらに用いられる材料が注目されている。
なかでも生体適合性が高い、チタン、チタン合金などの金属、アパタイトなどのセラミックスが知られている。
特許文献1では、100μm未満のチタン繊維を絡合させて層状に形成した金属不織布からなる三次元構造体を開示している。この特許文献1には、その三次元構造体の立体構造が骨芽細胞の誘導を促進させ、着床し、材料と細胞とが一体となるオステオインテグレーションを形成すると記載されている。さらに、特許文献1には、この三次元構造体がインプラント材料、細胞培養増殖用リアクターなどに利用することができると記載されている。さらに、特許文献2、特許文献3にも金属不織布を用いた三次元構造体についての記載がある。
また、特許文献4には、繊維状の非生体分解吸収性合成高分子をコラーゲンからなるスポンジ中に存在させた細胞培養に用いる足場材料が開示されている。
一方、特許文献5には、人工歯根インプラントのネジ溝に線材を巻着固定したものが開示されている。これにより、表面積を拡大し、顎骨部への埋入を容易に、かつ、確実にしている。
国際公開公報WO2004/012781 特開2000−192108号公報 特開2004−018951号公報 特開2005−229871号公報 特開2006−314760号公報
しかし、特許文献1〜4のように金属繊維あるいは合成樹脂繊維を絡合して形成される三次元構造体では、不織布内の孔径が一定とならない。細胞には侵入に際して侵入に好む径があることが知られており、孔の広い部位には細胞が留まらず、孔の狭い部位には細胞が誘導されない。そのため、細胞が不織布内に播種されても成長しやすい領域が限られ、細胞の誘導効率にばらつきがでる。
また、特許文献5では、細胞が好む十分な三次元構造体が形成されない。
本発明は、細胞が好む径を有する隙間を全体に備えた三次元構造体およびそれを構成するスキャフォールド材料を提供することを目的としている。
本発明のスキャフォールド材料は、播種させた細胞を培養させてコンフレントの状態にしたとき、培養液が内部と連通可能な連通路を確保できる内腔や隙間を持つコイル形状を
有することを特徴としている。ここで「コイル」には、一巻き、あるいは、二巻き以上のもの、さらには、リング状のものが含まれる。
本発明のスキャフォールド材料の第2の態様は、藩種させた細胞を増殖することにより、見かけ上内外を遮断するような内腔や隙間を持つコイル形状を有することを特徴としている。
本発明の診断・評価材料・再生医療材料は、本発明のスキャフォールド材料からなる基材と、その基材に設けられた一層または多層構造の細胞層とからなることを特徴としている。ここで診断材料とは、例えば、生体の細胞を取得して基材に播種させ、培養した後、成長した細胞を用いて診断するものであり、生体の細胞を取得して薬剤の効果を確認するオーダーメイドの治療に用いる材料として好適に用いることができる。また、評価材料とは、例えば、生体の細胞を取得して基材に播種させ、培養した後、化粧品の開発や創薬に使うために薬剤の効果を成長した細胞に加えて検証するための材料である。このように薬剤のような化学的な刺激による反応を見るためのものだけでなく、力学的や電気的のような物理的刺激による反応をみるためのものでもある。
本発明の三次元構造体は、本発明のスキャフォールド材料を並べる、重ねる、1本以上を巻きつける、あるいは、1本以上を渦巻き状にすることにより形成されたことを特徴としている。
本発明の三次元構造体は、人工歯根、人工骨、細胞培養基盤、細胞フィルターなどに用いることができる。
(1)本発明のスキャフォールド材料は、播種させた細胞を培養させてコンフレントの状態にしたとき、培養液が内部と連通可能な連通路を確保できる内腔や隙間を持つコイル形状を有するため、細胞を培養する場合には、内部と外部とが連通路によって連通可能な状態でコンフレント状態まで成長するため、栄養等を内部にまでいきわたらせることができ、安定した状態で細胞を保持できる。一方、このスキャフォールド材料を体内に埋入して使う場合、生体内の細胞の足場となり、かつ細胞組織の他、必要な栄養等を運ぶ血管等も十分に入る隙間があるため、安定した組織の修復材料(再生医療材料)となる。また、細胞の種類に合わせてコイル形状の内腔を決めることにより、細胞の誘導、着床の促進、あるいは、複数の細胞層および細胞塊が形成されるように制御ができる。また生体内では、組織に応じた隙間を有する形状に変えることができ、かつ3次元的な曲げ応力や伸び収縮が伴う力が働くが、コイル構造で弾性を有しているため、柔軟に対応する。さらに、曲げや伸縮といった力に対して、コイル構造であるため、線状構造のものに比べて、応力集中が起こりにくく、耐疲労性が高い。さらに、適正な隙間に制御することで、効率よく細胞を液体から分離させることができるだけでなく、複数の細胞が混ざった血液などの細胞分離にも適用できる。
(2)(3)コイルを構成する線材の径が50nm〜1mmであり、コイルの内腔が10〜2000μmとなるように巻かれている場合、または、前記内腔が10〜500μmである場合、細胞の誘導、着床の促進が一層計れる。
(4)コイルを構成する線材間の隙間が0〜1000μmである場合、細胞の大きさに合わせて隙間を決めることにより、一層、細胞の誘導、着床の促進ができる。特に、その隙間が20〜300μmとなるものが好ましい。
(5)コイルを構成する線材が、複数本の素線を撚りあわせたもの、あるいは、複数本の素線を束にしたものであり、素線の径が5nm〜1mmである場合、コイル線の表面起伏が大きくなり濡れ性が向上し、表面積が増大するため、細胞付着性が向上する。
(6)(7)コイルを構成する線材が異なる隙間を備えるように巻かれている場合、あるいは、前記線材が異なる径を備えるように巻かれている場合、増殖形態を変えることができる。また、隙間の異なるゾーンを2つ以上つくることで、同じ状態で細胞に適した隙間
を一度に評価することができる。さらに、隙間の違いにより、必要な細胞を必要なところに誘導することができる。
(8)前記線材の表面が粗面化されている場合、線材の表面積を大きくすることができ、かつ細胞の接着性が変わることで、細胞の播種および成長を一層促進できる。
(9)藩種させた細胞を増殖することにより、見かけ上内外を遮断するような内腔や隙間を持つコイル形状を有するため、細胞単体では形成できなかった大きさを持つ中実の細胞塊を形成できる。また、周りは見かけ上細胞で内外を遮断しているが、内部には空間を残した状態の細胞塊も形成できる。
(10)コイルを構成する線材が金属製である場合、強度を向上させることができる。
(11)本発明の診断・評価材料は、本発明のスキャフォールド材料からなる基材と、その基材に設けられた一層または多層構造の細胞層とからなるため、複数の細胞と薬等との化学的刺激に対する関係および効果を確認することができる。また、力学的や電気的のような物理的刺激による反応をみることもできる。
さらに、本発明のスキャフォールド材料からなる基材と、その基材に設けられた一層または多層構造の細胞層を利用した体に埋入する組織修復材料(再生医療材料)として用いることもできる。
(12)本発明の三次元構造体は、本発明のスキャフォールド材料を並べる、重ねる、1本以上巻きつける、あるいは、1本以上を渦巻き状にすることにより形成しているため、様々な立体形状ができる。
(13)このような三次元構造体であって、異なる内腔または隙間を有するコイルからなるスキャフォールド材料を備えたものは、一つの三次元構造体で異なる細胞の培養ができる。
(14)(15)本発明の人工歯根、人工骨は、本発明の三次元構造体を用いているため、それぞれの組織に適した隙間を提供でき、組織の再生が安定、また促進されるため、生体内に安定して維持できる。
(16)本発明の細胞培養基盤は、本発明の三次元構造体を細胞培養足場として用いているため、細胞の生理活動を活性化し、より生体内に近い状態の細胞の増殖と産生が可能である。特に均一な構造とすることができ、効率よく培養を行うことができる。
(17)本発明の細胞フィルターは、本発明の三次元構造体を用いているため、必要に応じた隙間を提供でき、効率よく細胞を液体から分離させることができる。また、複数の細胞が混ざった血液などの分離にも適用できる。
図1a、bは本発明の医用コイルの一実施形態を示す側面図、正面図であり、図1c、d、e、fはそれぞれ本発明の三次元構造体の一実施形態を示す側面図、断面図、断面図、断面図である。 図2a、bは本発明の医用コイルの他の実施形態を示す正面図、側面図であり、図2cは本発明の医用コイルのさらに他の実施形態を示す側面図であり、図2d、eは本発明の医用コイルのさらに他の実施形態を示す正面図、側面図であり、図2f、gは本発明の医用コイルのさらに他の実施形態を示す側面図、正面図であり、図2h、i、j、k、lはそれぞれ本発明の三次元構造体の他の実施形態を示す断面図である。 図3a、bはそれぞれ本発明の医用コイルのさらに他の実施形態を示す側面図である。 図4a、bは本発明の人工歯根の一実施形態を示す平面図、側面図である。 図5aは本発明の細胞培養基盤の一実施形態を示す側面断面図であり、図5bは本発明の細胞フィルターの一実施形態を示す側面断面図であり、図5c、d、eは細胞培養基盤の他の実施形態を示す平面図である。 本発明の人工骨の一実施形態を示す側面断面図である。 本発明の医用コイルに細胞を成長させたものの顕微鏡写真図である。 本発明の医用コイルの一実施形態の表面を示す顕微鏡写真図である。 従来のスキャフォールド材料であるチタンウエブに細胞を成長させたものの顕微鏡写真図である。
次に本発明を図面を用いて説明する。図1a、bのコイル10は、径が5nm〜1mm、特に5μm〜100μmの線材11からなり隙間12が0〜1000μm、特に20〜300μmとなっている。また、コイルの内腔は10〜2000μm、好ましくは、10〜500μm、特に好ましく50〜300μmとなっている。コイルの隙間および内腔は、対象とする細胞の大きさと同じあるいは若干大きいものがよい。
また、コイルの内腔を線材の隙間より大きくしてもよい。この場合、長軸上に延びるコイル内腔に細胞が生きるための血管などを導入することができる。このとき細胞自身は、外部からコイル内腔までの侵入距離が短い隙間からコイル内腔へ侵入し、そしてコイル内腔内の細胞は、外部からコイル内腔までの侵入距離が短い隙間から栄養を受けることができる。
コイル10の巻き数は、1〜200巻き、1〜100巻きが特に好ましく、その長さは、線材径幅〜2cm、特に線材径幅〜1cmが使い勝手がよく好ましい。
線材の径が5nm〜1mmであるため、空隙率の高い三次元構造体を構成することができる。また、このような径の素線が構成する幾何学的空間は、細胞、特に骨芽細胞が好んで成育すること知られており、スキャフォールド材料として好ましい。
また、表面の起伏が大きな線材、あるいは、複数本の素線を撚り合わせた線材とすることにより、濡れ性が向上し、表面積が増大するため、細胞付着性が各段に向上する。
また、線材の表面に化学研磨したり、プラズマ処理をして粗面としてもよい。この場合、線材の表面積を大きくすることができ、細胞の接着性を変え、細胞の播種および成長を一層促進できる。
コイルの内腔が10〜2000μmであるため、コイル内の空間に細胞が好んで侵入してき、内腔を用いて細胞を誘導することができ、特に10〜500μmの場合顕著である。
隙間12が0〜1000μmであるため、細胞の大きさに合わせて、細胞の誘導、分離を選択的に行わせることができる。
コイル10の隙間とコイルの内腔の値は、実質的に同じ値としてもよい。さらに、複数のコイル間の隙間も、隙間12および内腔の値と実質的に同じ値とすることにより、コイルの線材同士の間が一定となる二次元あるいは三次元構造体を形成することができる。
この線材11として、生体親和性が高いものが好ましく、チタン(純チタン、6Al−4Vチタン、ベータチタンなど)、ステンレス、ニチノール、金、白金、それらの合金等の金属、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ乳酸等の合成樹脂、シリコンゴム、さらには、カーボン、カーボン繊維などが挙げられる。
また、金属製の線材11からなるコイル10では、三次元構造体を構成した後、焼結することによりその形状あるいは構造を固定することができる。合成樹脂等からなるコイル10では、溶融接着または接着剤接合により三次元構造体の形状を固定する。
本発明のコイル10の表面上に播種した細胞は、培養により増殖させることができる。
播種した細胞の種類によっては、培養し増殖することによりコイル上で塊状となって成長する。そして、コイル上で成長した複数層からなる細胞によって形成される細胞塊(スフェロイド)が、コイルに沿って形成される。さらに、コイルの内腔または隙間を制御することにより、成長した複数の細胞層からなる細胞塊によっても埋まらない内部と連通可能な連通路を備えるように成長させることができる。その場合、細胞塊のついたコイル10の内部と外部とは内腔によって連通可能な状態で成長するため、栄養等を十分に細胞へいきわたらせることができ、細胞の培養と保持が安定する。
さらに、コイルの内腔または隙間を制御することにより、単層の細胞層となるように、または、複数の細胞層が積層するように成長させることができる。このように細胞層を成長させることにより、診断・評価材料として用いることができる。また、体に埋入する組織修復材料(再生医療材料)として用いることもできる。
このコイル10には、生体を構成する任意の細胞を成長させることができる。そのような細胞として、例えば、上皮細胞、線維芽細胞、癌細胞、幹細胞、骨芽細胞、肝細胞、骨髄細胞、神経細胞、iPS細胞、ES細胞、角膜細胞などのヒトおよび動物由来の細胞が挙げられる。
また、同様にコイルの内腔または隙間を制御することにより、培養した細胞で見かけ上、コイル10の内外を遮断するように成長させることもできる。
コイル10を使い体内に埋入する場合は、生体内の細胞の足場となり、かつ細胞組織の他、必要な栄養等を運ぶ血管等も十分に入る隙間に制御でき、安定した組織の修復材料となる。
このコイル10から様々な三次元構造体が形成される。例えば、図1cのようにコイル10を並べた平板状の構造体10aとしてもよく、図1dのように複数の平板状の構造体10aの内腔方向を同じにして重ねた積層型の構造体10bとしてもよく、また、図1eのように上下に隣り合う平面状の構造体10aの内腔方向が垂直となるようにして重ねた積層型の構造体10cとしてもよい。三次元構造体の構成はこれらに限定されるものではなく、複数のコイル10をランダムに並べたり、ランダムに重なり合うように並べたり、1本のコイルをランダムに重ねたりしてもよい。
構造体10a〜cは焼結することにより強固なものにできる。
また、図1aの平板状の構造体10aを焼結し、その形状を固定した後、図1fのように、平面方向で切断したカット型の構造体10dとしてもよい。さらに、複数のコイル10を撚った構造体としてもよい。
このような構造体10a〜10dの空隙率は、15〜99%、特に50〜90%となるようにするのが好ましい。
図2a、bのコイル15aは、図1aのコイル10の一つ巻き部分のみからなるチップである。また、図2cのように円状のコイル15bとしてもよい。図2d、eのコイル15cは、コイル10の3巻きに相当するチップである。これらは、例えば、任意の形状の容器に複数のコイル15aおよび/またはコイル15bを充填し、焼結することにより構造体とすることができる。このときの構造体は、空隙率を図1の構造体10a〜10dと同様にするのが好ましい。これらのコイル15a、b、cの素線径、素線材料、内径(内腔)、隙間の長さは図1のコイル10と実質的に同じである。
さらに、図2f、gのコイル16は、コイル10をプレスによって扁平にした断面楕円形のものである。コイル16の扁平度は、任意に設定することができる。理論上素線径の2倍の厚みが最薄の状態だが、プレスにより素線が変形することがあり、これ以下とすることもできる。たとえば、図2h、iの構造体16a、16bのように、扁平にしたコイル16を並べたり、重ねたりすることにより平板状あるいは積層状に形成することができ
る。この場合も内腔の形状は一定となる。また、コイル16の内腔を利用し、空隙の配列方向を制御することができる。図2jの構造体16cは、異なる内腔を有するコイル15d、15eを並べたものである。この場合、異なる細胞に対応できる。さらに、図2kの構造体16dは、コイル10を渦巻き状にしたものであり、図2lの構造体16eはコイル10をランダムに並べたものである。
図3aのコイル15gは、線材間の隙間が異なる部分を連続させたものであり、3つの隙間P1(中)、P2(小)、P3(大)からなる部位X1、X2、X3が連続している。このように異なる隙間からなる部分を設けることにより、増殖形態を変えることができる。また、それぞれ異なる細胞が好む三次元構造を形成するため、同じ状態で細胞に適した隙間を一度に評価することができる。さらに、隙間の違いにより、必要な細胞を必要なところに誘導することができる。
図3bのコイル15hは、異なるコイル径D1、D2の部位Y1、Y2が連続したものである。この場合も、コイル径およびコイルの内腔を備えさせることにより、それぞれの部位Y1、Y2に異なる細胞を誘導させたり、隙間を変えたときと同様の効果を得ることができる。
前述のコイル10は、例えば三次元構造体として人工歯根、細胞培養基板、フィルター、人工歯根等の様々な医用製品へ利用することができる。
図4は、コイル10を利用した人工歯根20である。人工歯根20は、円柱状のロッド21と、そのロッドの外周にコイル10を密に巻いた導入層22とからなる。
ロッド21は、円柱体23と、その上端に形成された外方に向いたフランジ部24とからなり、円柱体23の下端23aは下方に突出するように湾曲しており、上面には人工歯と係合する係合部21aを有している。図4では円柱体のロッドを用いているが、角柱、円筒形であってもよい。
ロッド21としては、生体適合性の高い金属、例えば、チタン、チタン合金、ステンレススチール、コバルト合金、または、アルミナ、ジルコニア、窒化チタン、炭化チタンなどのセラミックスなどが用いられる。
導入層22は、フランジ部24の下から円柱体23を覆うように設けられている。導入層22は、コイル10を所定の隙間で巻いたものであるため、内腔および隙間が一定であり、骨細胞の侵入を促進し、かつ、骨細胞と絡むことにより骨細胞を定着させる。また、導入層22の外周は平滑で滑らかであり、素線の端部が突出したとげなどによる歯茎の損傷を防止することができる。このコイル10による導入層22は、本発明の三次元構造体に該当する。
また導入層22としては扁平なコイル16を用いて良い。また、あらかじめ所定の長さ、幅に形成した平板状の構造体10a、16aあるいはカット型10dをロッド21に巻きつけてもよく、さらに、積層型の構造体10b、10c、16bをロッド21に巻きつけてもよい。
ロッド21と導入層22のコイル10の材料として同じ金属、例えばチタンあるいはチタン合金等を用いることにより、人工歯根20を成形後、焼結すると、ロッド21と導入層22とを強固に固定することができる。
図5aは、図1aのコイル10を用いた細胞培養基盤25である。
細胞培養基盤25は、底部を有する円筒状の枠体26aと、その枠体内に積層状態で収容される平板状の構造体10aからなる培養層26bとを備えている。平板状の構造体10aは焼結されていてもよい。平板状の構造体10aの代わりに、積層型やカット型の構
造体10b、10c、10d、16a、16bを収容してもよい。またコイル10等は、図5cのように整列させて並べても良く、図5dのようにランダムに並べても良く、あるいは、図5eのように1本のコイルを渦巻き状にして並べても良い。ここでは、全ての実施形態に枠体26aを設けているが、枠体を用いず培養層26bのみ(たとえば、シャーレ上に培養層26bを配置させる)で形成させ、培養を行っても良い。
細胞を大量に培養する場合、A4サイズで実施する場合もあるが、細胞培養基盤は、径が5〜15mmの円盤状のものが好ましい。
この細胞培養基盤25は、上記コイル10あるいは構造体10aからなる培養層26bを形成し、枠体26aに挿入してもよく、また、枠体26a内に構造体を敷き詰めて培養層26bを形成してもよい。
焼結したコイルを円盤状に切り抜いて培養層26bを形成する場合、あるいは、コイルを図5cのように整列させて円盤の培養層26bを形成する場合、円周部位の配置されたコイルの長さが短くなるという問題がある。一方、培養層26bを1層で構成する場合、曲がりに対する強度が弱くなる場合がある。図5eのようにコイルを渦巻き状にして培養層を構成したものは曲げなどの外力に対しては安定した構造体となる。
枠体26aの材料としては、チタン、チタン合金、ステンレススチール、コバルト合金、または、アルミナ、ジルコニア、窒化チタン、炭化チタンなどのセラミックス、あるいは、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、フッ素樹脂、ポリスチレン、ポリウレタン、アクリル樹脂等の合成樹脂などが用いられる。
この培養層26bのコイル材料としては、図1のコイル10と同じものが挙げられるが、チタンあるいはチタン合金の金属素線を用いることが好ましい。これは、合成樹脂繊維やゴム繊維を用いると毛細血管などが入り込みにくい組織となる場合があり、栄養補給が得られにくくなることがある。また、初期は線維芽細胞間にコラーゲンが産出されるが、細胞血管の形成が少ないと栄養補給不足になりコラーゲンは減少し、線維芽細胞のみの組織となり、細胞の収縮が起こる。そして、スキャフォールド材料の強度が低ければ、その細胞の収縮に伴い基材収縮が起きる。そして、基材収縮を起こすと細胞はそれ以上成長できず、血管の成形もされず、栄養補給されない状態となり、瘢痕組織となる。強度の弱い合成樹脂繊維やゴム繊維は、この現象が起こりやすい。しかし、チタンあるいはチタン合金の金属素線を用いることにより、強固なスキャフォールド材料を実現できるため、この基材収縮を防止することができる。
図5bは、コイル10を用いた細胞フィルター27である。
細胞フィルター27は、図1cに示す三次元構造体10aからなる分離層28aと、その外周を保持するリング状ないし枠状の保持部材28bとからなる。このものも構造体10aの代わりに、他の構造体10b、10c、10d、10e、10fを用いても良い。
細胞フィルター27として用いる場合、細胞より若干小さい内径(内腔)および素線間の隙間と決めることにより、細胞の分離効率を上げることができる。また、細胞より内腔が大きくても、培養と循環とを交互に行うことにより、細胞の播種、成長が起こり、徐々に隙間は小さくなるため、目的は達成できる。
なお、保持部材28bの材料としては、チタン、チタン合金、ステンレススチール、コバルト合金などの金属、または、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン、窒化チタン、炭化チタンなどのセラミックス、あるいは、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、フッ素樹脂、ポリスチレン、ポリウレタン、アクリル樹脂等の合成樹脂などが挙げられる。
図6は、コイル10を用いた人工骨30である。
人工骨30は、支柱ロッド31と、その上下面に設けられるコイル10からなる導入層32とを有している。導入層32は、コイル10を密に設けたものであり、構造体10a等を密に設けてもよい。また、符号B1、B2は繋ぎ合わせる骨である。
支柱ロッド31の材料としては、チタン、チタン合金、ステンレススチール、コバルト合金などの金属、または、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン、窒化チタン、炭化チタンなどのセラミックス、あるいは、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、フッ素樹脂、ポリスチレン、ポリウレタン、アクリル樹脂等の合成樹脂などが用いられる。
この人工骨30は、当該骨の外形あるいは円筒となるように支柱ロッド31を形成し、そして、その支柱の上下面に導入層32を形成されているため、この人工骨30を繋ぎ合わせる骨B1、B2の間に、導入層32が骨B1、B2と接するように挿入する。これにより、骨芽細胞は導入層32に誘導され、着床し、さらに支柱ロッド31へと拡がり、支柱ロッド31と結合する。骨芽細胞と導入層32とが強固に結合することで早期治癒が可能となる。
初めに、外径が0.64mm、内径が0.47mmであり、隙間が0.05mmであり、40巻きのチタン製コイルを用意する。
次に、前記コイルを置いた24wellプレートに、10%の血清が入ったD-MEM培地を1.2ml入れる。次に、HEK293T細胞を1X104cells/cmの濃度となるように細胞懸濁液を滴下し、COインキュベーターに入れて培養を開始する。3日後、コンフレント状態が確認されたので、コイルを培地を入れた新しい24wellプレートに移した。移した後、さらに10日間培養した。図7にそのコイルに形成された細胞の顕微鏡写真図を示す。HEK293T細胞は、コイル全体を細胞塊として覆うとともに中心孔を残すように成長した。
TW(チタンウエブ)やチタンコイル上で培養された細胞は、細胞の複層化といった明らかに2次元(シャーレ上)の状態とは異なる3次元培養の特長的な形態を示している。細胞の複数層化に関しては、同じ培養日数でもTW上では部分的(図9参照)であるのに対し、チタンコイル上で培養された細胞は、図7に示されているように複数層からなる細胞の領域がTWと比較して広く、形成速度も速い。
コイルの方が短期間で高密度な複数細胞層が得られるので、診断材料に用いる等の場合、迅速な治療が容易になる。
チタン線を化学研磨剤で化学研磨を施した。そのチタン線を使いコイルを作製した。その顕微鏡写真を図8に示す。コイルの線材表面に細かい凹凸が形成されているのがわかる。このようなコイルは、線材の表面積が大きくなり、細胞の接着性がよくなる。
10 コイル
10a、b、c、d 構造体
11 素線
12 隙間
15a、b、c コイル
16 コイル
16a、b 構造体
20 人工歯根
21 ロッド
22 導入層
23 円柱体
23a 下端
24 フランジ部
25 細胞培養基盤
26a 枠体
26b 培養層
27 細胞フィルター
28a 分離層
28b 保持部材
30 人工骨
31 支柱ロッド
32 導入層
B1、B2 骨

Claims (2)

  1. コイルと、
    前記コイル上に培養によって形成された細胞塊とを有し、
    前記コイルは、前記コイルを構成する線材間の隙間が所定の隙間を有するように形成され、
    前記細胞塊は、コイルに沿って形成され、前記隙間に介在され、コイル全体を覆うとともに、前記コイルの内部と連通可能な連通路を備えるように成長されており、
    前記細胞塊の細胞と薬との化学的刺激に対する関係及び効果の確認、または、力学的若しくは電気的な物理的刺激による反応の確認のために用いられる
    診断・評価材料。
  2. コイルと、
    前記コイル上に培養によって形成された細胞塊とを有し、
    前記コイルは、前記コイルを構成する線材間の隙間が所定の隙間を有するように形成され、
    前記細胞塊は、コイルに沿って形成され、前記隙間に介在され、コイル全体を覆うとともに、前記コイルの内部と連通可能な連通路を備えるように成長されており、
    前記細胞塊の細胞への薬剤の効果を確認するための診断に用いられる
    診断材料。
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