(第一実施形態)
以下、本発明を具体化した第一実施形態における造形方法について図1〜図17を参照して説明する。まず、造形方法に用いられる造形システムについて説明する。図1は、造形システムの概略構成を示す図である。図1に示されるように、造形システム1は、コンピューター3と、造形装置5とで構成されている。コンピューター3は、立体7を複数の層状構造体からなる積層体として取り扱うために、立体7の形状を示すデータに基づいて各層状構造体の形状を示すデータを生成する。コンピューター3は、層状構造体の形状を示すデータである層形状データを造形装置5に出力する。造形装置5は、コンピューター3から出力される層形状データに基づいて該層形状データが示す形状の層状構造体を形成するとともに、層状構造体を順次積層することによって立体7を造形する。
次に、造形システム1を構成する造形装置5について図2を参照して説明する。図2は、造形装置の斜視構造を示す斜視図である。図2に示されるように、造形装置5は、基板搬送部10と、キャリッジ搬送部20と、露光部70と、転写部80とを有している。
基板搬送部10は、一つの方向に沿って延びる基台12を有している。基台12の上面12aには、基台12が延びる方向である搬送方向Xに沿って延びる一対のガイドレール13a,13bが敷設されている。一対のガイドレール13a,13bには、基板搬送モーター16(図8参照)の駆動軸に伝達機構を介して連結された搬送テーブル14が配設されている。そして基板搬送モーター16が駆動されると、ガイドレール13a,13bに沿って、転写部80と対向する転写エリアと該転写エリアとは反対側の待機エリアとの間で搬送テーブル14が移動する。
搬送テーブル14は、露光部70が出射する紫外光71(図7参照)に対して透過性を有した例えばガラスや石英などで構成されている。搬送テーブル14の上面14aには、矩形状の描画面15aを有した第1基板としての描画用基板15が載置されている。描画用基板15は、これもまた露光部70が出射する紫外光71(図7参照)に対して透過性を有した例えばガラスや石英などで構成されている。
キャリッジ搬送部20は、基台12が延びる方向と直交する方向であるヘッド移動方向Yにおける基台12の両側に立設された支柱21a,21bと、該支柱21a,21bに架設されたガイド部材22とを有している。なお、搬送方向X及びヘッド移動方向Yに直交する方向を鉛直方向Zという。ガイド部材22には、ガイド部材22が延びる方向に沿ってガイドレール23が配設されている。ガイドレール23には、キャリッジモーター27(図8参照)の駆動軸に伝達機構を介して連結されたキャリッジ24が配設されている。そしてキャリッジモーター27が駆動されると、ガイドレール23に沿ってキャリッジ24が移動する。このキャリッジ24には、ヘッドプレート25を介して液滴吐出ヘッド30が搭載されている。なお、本実施形態の造形装置5においては、搬送テーブル14が移動する経路のうち、液滴吐出ヘッド30が移動する経路と相対向する領域を描画エリアという。
次に、キャリッジ24に搭載される液滴吐出ヘッド30について図3〜図5を参照して説明する。図3は、キャリッジ24が移動する方向から見た液滴吐出ヘッドの側面図である。図4は、ノズル形成面の平面構造を示す平面図である。図5は、液滴吐出ヘッドの内部構造を示す側断面図である。
図3に示されるように、液滴吐出ヘッド30は、ヘッドプレート25に連結されるヘッド本体31と、ヘッド本体31の底部に設けられたノズルプレート32とを有している。ノズルプレート32は、液滴吐出ヘッド30と描画用基板15とが対向するときに、ノズル形成面32aと描画用基板15の描画面15aとが略平行になるように配置されている。そしてノズル形成面32aと描画面15aとが相対向するとき、液滴吐出ヘッド30は、これらの間に液滴55(図5参照)が飛行する空間を形成する。またノズルプレート32のノズル形成面32aは、ヘッド本体31と描画用基板15とが相対向している間、ノズル形成面32aと描画面15aとの距離であるプラテンギャップが所定の距離に維持される。ノズル形成面32aには、鉛直方向Zに沿ってノズルプレート32を貫通するノズル33が複数形成されている。
図4に示されるように、ノズルプレート32には、描画用基板15が移動する方向に沿ってピッチ寸法Pで配列された複数のノズル33からなる2本のノズル列34a,34bが液滴吐出ヘッド30の移動する方向に並設されている。このノズル列34a,34bを構成する複数のノズル33は、液滴吐出ヘッド30が移動する方向から見て、ノズル列34aにおけるノズル33の間を補うようにノズル列34bにおけるノズル33が配置されている。そして、これら2本のノズル列34a,34bによってノズル群35Kが構成されている。なお、ノズルプレート32には、ノズル群35Kと同様の構成からなるノズル群35C、ノズル群35M、ノズル群35Y、ノズル群35W、及びノズル群35Tが液滴吐出ヘッド30の移動する方向に併設されている。
図5に示されるように、ヘッド本体31は、ノズルプレート32に接合されるとともに、各ノズル33に連通した複数のキャビティ45を有したキャビティプレート41と、各キャビティ45を覆うようにキャビティプレート41に接合された振動板42とを有している。またヘッド本体31は、各キャビティ45に対向するように振動板42に接合された複数の圧電素子43を有している。このような構成からなる液滴吐出ヘッド30では、駆動電圧を受けた圧電素子43が鉛直方向Zに伸縮すると、各キャビティ45に収容された液状体50の一部が駆動電圧に応じたサイズや速度を有する液滴55としてノズル33から吐出された後に描画面15aに着弾する。そして描画面15aには、着弾した液滴55によって液点150a(図12参照)あるいは液状層58(図13参照)が描画される。なお、このような液滴吐出ヘッド30を用いて液点150aあるいは液状層58を描画する構成であれば、ディスペンサ法を用いて形成されたものよりも高精細な液点150aあるいは液状層58を描画することが可能である。
次に、ノズル33から液滴55として吐出される液状体50について説明する。本実施形態の液状体50は、紫外光によって硬化が進行する光硬化性を有した光硬化剤が樹脂材料に添加されてなる液状体である。こうした液状体50を構成する樹脂材料としては、例えば、アクリル系やエポキシ系の樹脂材料など採用することが可能である。また光硬化剤としては、例えば、ラジカル重合型の光重合開始剤や、カチオン重合型の光重合開始剤などが採用することが可能である。なお、ラジカル重合型の光重合開始剤としては、例えば、イソブチルベンゾインエーテルや、イソプロピルベンゾインエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインメチルエーテル、ベンジル、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ジエトキシアセトフェノン、クロロチオキサントン、イソプロピルチオキサントンなどが挙げられる。カチオン重合型の光重合開始剤としては、例えば、アリールスルホニウム塩誘導体や、アリルヨードニウム塩誘導体、ジアゾニウム塩誘導体、トリアジン系開始剤などが挙げられる。
上述した液状体50は、それに照射させる紫外光の強度及び照射時間に応じて、該液状体50の硬化の進行する度合いが異なる。例えば、液状体50に照射される紫外光の強度が一定ならば、紫外光の照射時間が長くなるほど、液状体50の硬化がより進行することになる。また、液状層に照射させる紫外光の照射時間が一定ならば、紫外光の強度が高くなるほど、液状体50の硬化がより進行することになる。それゆえに、液状体50に照射する紫外光の強度や照射時間を変えることによって、液状体50の硬化度合いを変えることが可能である。
また、上記構成の液状体50に顔料や染料等の色素や、親液性あるいは撥液性を示す表面改質材料などの機能性材料を添加することによって、固有の機能を有する液状体50を生成することも可能である。なお本実施形態の造形装置5には、液状体50として、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)及びホワイト(W)の各色で構成された5種類の液状体50Y,50M,50C,50K,50Wと、光透過性を有する樹脂材料で構成された液状体50Tとが用いられている。そしてノズル群35K,35C,35M,35Y,35W,35Tの各々には、それに対応する液状体50K,50C,50M,50Y,50W,50Tが供給される。
次に、液滴55が着弾する描画用基板15の描画面15aについて説明する。描画面15aには、液状体50に対して撥液性を示す材料がコーティングされている。描画面15aに撥液性を持たせることにより、描画面15aにおいて硬化した液状体50を該描画面15aから剥離させやすくすることができる。液状体50に対して撥液性を示す材料としては、例えば、フッ素やフッ素化合物を含有する材料が挙げられる。撥液性を示す材料をコーティングする方法としては、フッ素やフッ素化合物を含有するガス中に基板を曝す気相法、フッ素やフッ素化合物を含有する溶液中に基板を浸す浸液法、該溶液を基板に吹き付けるスプレー法、該溶液を基板の表面で伸ばすスピンコート法などによって形成される。また、フッ素やフッ素化合物を含有するガス中で基板をプラズマ処理することによっても形成される。本実施形態では、フッ素化合物の1つであるフルオロアルキルシラン化合物を含む材料が描画面15aにコーティングされている。
次に、液状層58の硬化を進行させる露光部70について図6及び図7を参照して説明する。図6は、露光部及び転写部の斜視構造を示す斜視図である。図7は、描画用基板15が移動する方向から見た露光部及び転写部の側面図である。
図6及び図7に示されるように、露光部70は、基台12が延びる方向における該基台12の一端部に設けられている。露光部70は、基台12におけるガイドレール13a,13b間に設けられた凹部12b内に配設されるとともに、該凹部12bの開口部に向けて所定の波長及び強度を有した紫外光71を光源73から出射する。凹部12bの開口部には、光源73から出射された紫外光71を透過する蓋板75が配設されている。紫外光71としては、描画面15aに形成されたコーティング膜が破壊されないように、200nmよりも長い波長の紫外光が好ましい。光源73としては、例えば、水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、エキシマランプ等を用いることができる。そして搬送テーブル14が転写エリアに位置しているときに光源73から紫外光71が出射されると、蓋板75、搬送テーブル14、及び描画用基板15を通過した紫外光71が描画面15aに描画された液点150aあるいは液状層58に到達する。
次に、転写部80について同じく図6及び図7を参照して説明する。図6及び図7に示されるように、転写部80は、液滴吐出ヘッド30が移動する方向における基台12の両側に立設された支柱81a,81bと、露光部70と相対向するように支柱81a,81bに架設された架設部材82とを有している。液滴吐出ヘッド30が移動する方向において架設部材82の中央部には、露光部70に向かって延びる支持部材83が鉛直方向Zに移動するように取り付けられている。この支持部材83の基端は、昇降モーター86の駆動軸に伝達機構を介して連結されるとともに、該昇降モーター86に駆動されて鉛直方向Zに移動する。また支持部材83の先端には、第2基板を構成する矩形状の転写用基板85が固定されている。転写用基板85は、描画用基板15の描画面15aに対して平行な造形面85aを有している。造形面85aは、搬送テーブル14が転写エリアに配置されているときに、描画用基板15の描画面15aにおける中心と該造形面85aにおける中心とが鉛直方向Zで一致するかたちで、描画用基板15の描画面15aと相対向する。ちなみに、転写用基板85の造形面85aは、描画用基板15の描画面15aよりも液状体50に対する撥液性が低くなるように構成されている。
次に、造形装置5の電気的構成について図8を参照して説明する。図8は、造形装置の電気的構成を示すブロック図である。図8に示されるように、造形装置5は、造形装置5を統括制御する制御部101を有している。制御部101は、CPU102と、駆動制御部103と、記憶部104とを有している。CPU102、駆動制御部103及び記憶部104は、バス111を介して互いに接続されている。
駆動制御部103は、モーター制御部131、位置検出制御部133、吐出制御部135、露光制御部137から構成されている。駆動制御部103の各構成部は、CPU102からの指令に基づいて、基板搬送部10、キャリッジ搬送部20、液滴吐出ヘッド30、露光部70、転写部80における駆動の態様を制御する。記憶部104は、RAMやROMなどで構成されて、造形装置5における各種制御プログラム105を記憶する領域や、各種のデータが一時的に展開された展開データを記憶するための領域を有する。
制御部101には、インターフェース113(以下では、I/F113とよぶ)を介して上記コンピューター3が接続されている。コンピューター3は、立体7を複数の層状構造体からなる積層体として取り扱うために、立体7の形状を示すデータに基づいて各層状構造体の形状を示すデータを生成して制御部101に出力する。
ここで、複数の層状構造体からなる積層体として立体7を取り扱う態様について図9を参照して説明する。図9は、造形システムによって造形される立体の積層構造の一例を示す図である。
図9に示されるように、コンピューター3は、立体7の形状を示すデータに基づいて、厚さtnを有した立体7を、膜厚tを有するn層(nは、2以上の整数)の層状構造体120に仮想的に分割する。コンピューター3は、層状構造体120の各々に対して、層状構造体120の大きさ、厚さ、形、位置、配色などを示す層形状データを生成する。
モーター制御部131は、CPU102からの指令に基づいて、基板搬送モーター16、キャリッジモーター27、及び昇降モーター86の各々を駆動する。位置検出制御部133は、CPU102からの指令に基づいて搬送テーブル14の位置、キャリッジ24の位置、及び転写用基板85の位置の各々を、テーブル位置検出装置141、キャリッジ位置検出装置143、及び転写用基板位置検出装置145に検出させる。位置検出制御部133は、テーブル位置検出装置141、キャリッジ位置検出装置143、及び転写用基板位置検出装置145の検出結果に基づいて搬送テーブル14の位置、キャリッジ24の位置、及び転写用基板85の位置を示す信号をCPU102に出力する。吐出制御部135は、CPU102からの指令に基づいて液滴吐出ヘッド30を駆動する。吐出制御部135は、データ展開部106に格納された液滴55を吐出するためのデータに基づいて、圧電素子43に駆動電圧を供給することでノズル33から液滴55を吐出させる。露光制御部137は、CPU102からの指令に基づいて、光源73への電力供給とその遮断とを実行する。
次に、上述した造形装置5を用いて実行される立体7の造形方法について図10を参照して説明する。図10は、造形方法について全体の手順を示すフローチャートである。
図10に示されるように、まず立体7を造形するための複数の層形状データがコンピューター3によって生成される層形状データ生成工程(ステップS10)が行われる。次いで、第1層目の層形状データに基づく液状層58が描画用基板15に描画される描画処理が実行される描画工程(ステップS20)が行われる。続いて、描画用基板15と転写用基板85とによって第1層目の液状層58が挟持された状態で液状体50を硬化させる硬化工程(ステップS30)と、転写用基板85側に層状構造体120を転写する転写工程(ステップS40)とが順に行われる。そして、全ての層状構造体120に対する転写が終了したか否かの判断がなされる(ステップS50)。全ての層状構造体120に対する転写が終了していない場合(ステップS50:NO)には、全ての層状構造体120に対する転写が終了するまで、後続する層状構造体の描画工程(ステップS20)、硬化工程(ステップS30)、転写工程(ステップS40)が繰り返される。
次に、上記描画工程(ステップS20)の手順について図11〜図13を参照して説明する。図11は、描画工程の手順を示すフローチャートである。図12は、点状構造体150の一例を模式的に示す平面図であって、詳しくは、層状構造体120を構成する点状構造体150を示す図である。図13は、液状層が描画された状態を模式的に示す図である。
図11に示されるように、描画工程(ステップS20)において、制御部101は、記憶部104に記憶された制御プログラムに従って、液点描画工程(ステップS21)と、液点硬化工程(ステップS22)と、液状層描画工程(ステップS25)とを順に行う。
まず液点描画工程(ステップS21)では、図12に示されるように、複数の液点150aの集合体である液点群155が描画面15aに描画される。液点群155とは、上記液状体50からなる半球形状の液点150aの集合体であって、以下に示される4つの条件を満たすものである。
(条件1)液点150aは、液状層58と同一の材料からなる。
(条件2)液点150aは、液状層58が形成される描画領域153内の全体にわたって互いに離間するように配置される。
(条件3)液点150aは、隣接する他の液点150aとの距離、例えば図12における離間距離Fx,Fyが、液点150aの直径の1.25倍以下である。
(条件4)液点150aの直径は、液状層58の厚さよりも小さい。
上述した構成からなる液点群155を描画する処理は、制御部101によって以下のようにして実行される。まず制御部101は、記憶部104に記憶された制御プログラムに従って、描画対象である液状層58に対応する層形状データを読み出した後、該層状構造体が形成される位置と該層状構造体の膜厚tとを該層形状データから把握する。次いで制御部101は、層状構造体120の膜厚tに基づいて、上記(条件4)を満たすような液点150aの直径を算出するとともに、上記(条件2)及び(条件3)が満たされるような液点150aの位置を決定する。続いて制御部101は、上記液点150aの直径や位置を示す液点描画データを生成した後、該液点描画データを記憶部104における所定の記憶領域に一旦格納する。そして制御部101は、待機エリアから描画エリアへ描画用基板15を搬送した後、液点描画データを用いて、液滴吐出ヘッド30と描画用基板15とを相対的に移動させながら、上記(条件4)を満たすサイズの液滴を上記(条件2)及び(条件3)を満たす位置へ液滴吐出ヘッド30に吐出させて描画面15aに液点群155を描画する。
液点硬化工程(ステップS22)は、液点描画工程(ステップS21)で描画された液点群155を硬化させる工程である。液点硬化工程(ステップS22)において制御部101は、液点群155が描画された描画用基板15を転写エリアに搬送したのち、光源73に電力を供給して液点群155に紫外光71を照射することで各液点150aが硬化されてなる点状構造体150を形成する。制御部101は、所定時間経過すると光源73への電力の供給を遮断する。この際の照射時間は、液状体50が完全に硬化されることによって立体7が形成されるとすると、液点150aにおける液状体50の硬化の進行が半分進行する(半硬化する)ような照射時間であってもよいし、完全に硬化する照射時間であってもよい。液状体50の硬化物における当該液状体50に対する撥液性は、液状体50の硬化度合いが進行するほど高くなる。そのため本実施形態では、液状層58と点状構造体との親液性を高めるべく、液状体50が半硬化する照射時間としている。
なお、液点150aの配置としては、層状構造体120のように外形が矩形状である場合には、上記(条件2)を満たすように、正方格子の各格子点に液点150aが配置される構成が好適である。この他、層状構造体120の外形が矩形状である場合には、直方格子の各格子点に液点150aが配置される構成、あるいは液点150aの外形や隙間の寸法を規定したうえで所定領域に該液点150aが最密充填されるように液点150aが配置される構成であってもよい。一方、層状構造体120の外形が互いに直交する2つの直線と該2つの直線に対して傾斜した斜線とによって構成される場合には、液点150aを千鳥状に配列したものが好適である。また層状構造体120の外形が直線だけでなく曲線で構成される場合には、フィボナッチ配列を利用した螺旋状の配列が好適である。こうした基本的な配列は記憶部104に予め記憶されるものであって、層状構造体120の外形に基づいて制御部101が好適な配列を選択するようになっている。
液状層描画工程(ステップS25)では、図13に示されるように、液点群155が描画された描画面15aに膜厚tの液状層58が描画される。この液状層58を描画する処理は、制御部101によって以下のようにして実行される。まず制御部101は、上記液点描画工程で把握された層状構造体の位置と該層状構造体の膜厚tとに基づいて、液状層58を描画するために必要とされる液滴の直径、数量、位置を決定する。次いで制御部101は、該液滴の直径、数量、位置を示す液状層描画データを生成した後、該液点描画データを記憶部104における所定の記憶領域に一旦格納する。そして制御部101は、待機エリアから描画エリアへ描画用基板15を再び搬送した後、液状層描画データを用いて、液滴吐出ヘッド30と描画用基板15とを相対的に移動させながら、液点群155を覆うような膜厚tからなる液状層58を描画領域153に描画する。
この際、液点150aが硬化されてなる点状構造体150が液状体50を硬化させたものであるため、点状構造体150と液状層58との親和性は、フッ素コーティングがなされた描画面15aと液状層58との親和性に比べてはるかに高い。そのため、液状層58を構成する液状体50の一部が点状構造体150に引き寄せられるとともに該液点150aに保持されることになる。また図12に示したように、隣接する点状構造体150における離間距離Fx,Fyが液滴55の外径の1.25倍以下となるような正方格子状に配置される。そのため、隣接する点状構造体150の隙間に着弾した液滴55が描画面15a上で濡れ広がったときに該液滴55を隣接する点状構造体150間で保持することが可能である。これにより、液状層58を構成する液状体50が描画面15a上で移動し難くなることから、描画領域153外への液状体50の流出を抑えることができる。その結果、液状層58の位置ずれや形状の変化といった不具合を抑えることができる。
次に、硬化工程(ステップS30)及び転写工程(ステップS40)について図14〜図17を参照して説明する。図14は、描画用基板15と転写用基板85とによって第1層目の液状層58が挟持された状態の一例を模式的に示す図である。図15は、描画用基板15から転写用基板85を遠ざけたときの様子を模式的に示す図である。図16は、描画用基板15と転写用基板85とによって第2層目の液状層58が挟持された状態の一例を模式的に示す図であって、層状構造体120と液状層58とが同じ幅を有する場合を示す図である。図17は、描画用基板15と転写用基板85とによって第k層目の液状層58が挟持された状態の一例を模式的に示す図であって、層状構造体120よりも幅広な液状層58である場合を示す図である。
まず、第1層目の液点描画データに基づいて、点状構造体150が形成された後、該点状構造体150によって規定された描画領域153内に液滴55を吐出して膜厚tの液状層58が形成される。次いで、図14に示されるように、描画面15aと造形面85aとの間の隙間が膜厚tと等しい距離となる降下位置まで転写用基板85を降下させて、描画用基板15と転写用基板85とによって液状層58を挟持する。この際、液状層58が転写用基板85の造形面85aに接触することによって、該液状層58を構成する液状体50の一部は、造形面85aに引き寄せられるものの、液点150aにも引き寄せられることになる。そのため、造形面85aに液状層58を接触させたときに、液点群155が形成されていない場合と比較して液状体50が液点150aに引き寄せられる分、液状体50が造形面85aで濡れ広がることを抑えることができる。つまり、液状層58の形状の変化を抑えた状態で該液状層58を硬化させることができる。それゆえに、第1層目の層状構造体120における形状の精度を高めることができる。
しかも、点状構造体150は、液状層58を構成する液状体50と同じ液状体50を用いて形成されていることから、液状体50に対する撥液性が描画面15aよりもはるかに低い。そのため、図15に示されるように、転写工程(ステップS40)において描画用基板15から転写用基板85を遠ざけると、点状構造体150と一体化したかたちで層状構造体120を描画用基板15から剥離させることができる。また、点状構造体150と層状構造体120とを同じ液状体50を用いて形成することによって、点状構造体150と層状構造体120との接着力を高めることができる。それゆえに、転写工程において、点状構造体150と層状構造体120とを一体化させた状態でこれらを描画用基板15から剥離させることがより確実なものとなる。
次に、図16に示されるように、第2層目の点形状データに基づいて点状構造体150が形成された後、該点状構造体150によって規定された描画領域153内に液滴55を吐出して、第1層目の層状構造体120と同じ幅を有する膜厚tの液状層58が形成される。そして、描画面15aと造形面85aとの間の隙間が距離(2×t)となる降下位置まで転写用基板85を降下させると、第1層目の層状構造体120を介して、液状層58が描画用基板15と転写用基板85とに挟持される。すなわち転写用基板85と第1層目の層状構造体120とによっての第2基板が構成される。この際、液状層58を構成する液状体50が第1層目の層状構造体120に引き寄せられることによって、その一部が層状構造体120の側面に濡れ広がろうとする。一方、液状層58を構成する液状体50は、それが覆う点状構造体150にも引き寄せられることになる。そのため、同じ幅を有する層状構造体120に液状層58を接触させたときには、点状構造体150が形成されていない場合と比較して、液状体50が液点150aに引き寄せられる分、層状構造体120の側面に液状体50が濡れ広がることを抑えることができる。それゆえに、第2層目の層状構造体120の形状の精度を向上できるとともに、第2層目の液状体50の濡れ広がりに起因した第1層目の層状構造体120の形状の変化を抑えることもできる。
やがて図17に示されるように、転写用基板85に第1層目から第(k−1)層目まで同じ幅を有する層状構造体120が積層される。このとき、転写用基板85と第1層目から第(k−1)層目までの層状構造体とによって第2基板が構成される。その後、第k層目の点形状データに基づいて点状構造体150が形成されたのち、該点状構造体150によって規定された描画領域153内に液滴55を吐出して、第(k−1)層目の層状構造体120よりも幅広である膜厚tの液状層58が形成される。そして、描画面15aと造形面85aとの間の隙間が距離(t×k)となる降下位置まで転写用基板85を降下させると、第1層目の層状構造体120から第k−1層目の層状構造体120を介して、液状層58が描画用基板15と転写用基板85とによって挟持される。この際、液状層58の形状が他の層状構造体120よりも幅広な部分、層状構造体120に接触しない部分の液状体50が層状構造体120に引き寄せられて側面に沿って濡れ広がりやすいが、点状構造体150にも引き寄せられる。そのため、描画面15aに点状構造体150が形成されていない場合に比べて液状体50が液点150aに引き寄せられる分、液状層58を構成する液状体50が層状構造体120の側面に沿って濡れ広がることを抑えることができる。それゆえに、第k層目の層状構造体120の形状の精度を高めることができるとともに、液状体50の濡れ広がりに起因する第(k−1)層目の層状構造体120の形状の変化を抑えることもできる。
以上説明したように、上記第一実施形態の造形方法によれば以下のような効果を得ることができる。
(1)液状層58が描画される前に、液状層58の描画領域153を示す点状構造体150を描画面15aに形成した。こうした構成によれば、液状層58を構成する液状体50が点状構造体150に引き寄せられることから、描画面15a上において液状層58を移動し難くすることができる。それゆえに、液状層58の位置ずれや形状の変化、層状構造体120の位置ずれや形状の変化を抑えることができる。ひいては層状構造体120の積層体である立体7の形状の精度を高めることが可能である。
(2)転写用基板85に積層された第(k−1)層目の層状構造体120を介して描画用基板15と転写用基板85とによって第k層目の液状層58が挟持されたときに、該液状層58を構成する液状体50が層状構造体120の側面に濡れ広がることが抑えることができる。それゆえに、第k層目の層状構造体120の形状の精度を高めることができるとともに、層状構造体120の側面に濡れ広がってしまった液状体50に起因する層状構造体120の形状の変化、特に造形面85aと平行な方向における寸法の変化を抑えることができる。
(3)液状層58と同じ液状体50を用いて点状構造体150が形成される。こうした構成によれば、液状体50の硬化物に対する親和性が当該液状体50よりも低い液状体を用いて点状構造体150を形成した場合に比べて、点状構造体150と層状構造体120との接着力を高めることができる。それゆえに、転写工程において、点状構造体150と層状構造体120とを一体化させた状態で描画用基板15から剥離させることが、より確実なものとなる。
(4)紫外光71によって硬化する光硬化性を有した液状体50が用いられている。こうした構成によれば、液状体50に照射される紫外光71の照射時間を変えることによって、液状体50における硬化の度合いを変えることができる。
(5)液滴吐出ヘッド30から液状体50の液滴55が吐出される液滴吐出法を用いて、描画面15aに点状構造体150を描画した。こうした構成によれば、微小な点状構造体150を描画面15aの任意の位置に形成することが可能であるため、点状構造体150の配置に関する自由度を大幅に拡張させることができる。それゆえに、液状層58の形状に応じて最適な配置を点状構造体150について採用することができ、ひいては、より高精細な層状構造体120を形成することが可能でもある。
(6)液状体50が半硬化した状態で点状構造体150が構成されるため、液状体50が完全に硬化した状態で点状構造体150が構成される場合に比べて、点状構造体150とそれを覆う液状層58との間に、より高い親和性を付与することが可能である。そのため、液状層58を構成する液状体50が点状構造体150に、より引き寄せられやすくなる結果、層状構造体120の形状の変化を、より確実に抑えることが可能である。
(第二実施形態)
次に、本発明を具体化した第二実施形態における造形方法について図18〜図20を参照して説明する。
図18は、第二実施形態の造形方法における描画工程の手順を示すフローチャートである。図19は、第二実施形態において、初期液状層が描画された状態を模式的に示す図である。図20は、第二実施形態において、液状膜が形成された状態を模式的に示す図である。
図18に示されるように、第二実施形態の描画工程(ステップS20)では、液点硬化工程(ステップS22)の後に、初期液状層描画工程(ステップS23)、初期液状層硬化工程(ステップS24)、液状層描画工程(ステップS25)が行われる。これら液点硬化工程の後に実施される各工程が第一実施形態と異なる。そのため、第二実施形態においては、その異なる点について詳細に説明し、第一実施形態と同じ構成については、同様の符号を付すことでその詳細な説明は省略する。
初期液状層描画工程(ステップS23)では、図19に示されるように、液状体50を用いて、層状構造体120の膜厚tよりも小さい膜厚tsであって、且つ、点状構造体150を覆うような初期液状層160が描画領域153に描画される。この初期液状層160を描画する処理は、制御部101によって以下のようにして実行される。まず制御部101は、上記液点描画工程で把握された層状構造体の位置と該層状構造体の膜厚tとに基づいて、その膜厚tの略半分に等しい膜厚tsからなる初期液状層160を描画するための液滴の直径、数量、位置を決定する。また制御部101は、該層状構造体の位置と該層状構造体の膜厚tとに基づいて、膜厚tから膜厚tsを差引いた厚さからなる液状層58を描画するための液滴の直径、数量、位置を決定する。次いで制御部101は、初期液状層160を描画するために必要とされる液滴の直径、数量、位置を示す初期液状層描画データ、及び液状層58を描画するために必要とされる液滴の直径、数量、位置を示す液状層描画データを生成する。そして制御部101は、転写エリアから描画エリアに描画用基板15を搬送した後、液滴吐出ヘッド30と描画用基板15とを相対的に移動させながら上記初期液状層描画データに基づいて液滴吐出ヘッド30から液滴55を吐出する。こうして液状層58を同じ液状体50からなる膜厚tsの初期液状層160が描画面15aに描画される。
初期液状層硬化工程(ステップS24)では、初期液状層描画工程(ステップS23)で描画された初期液状層160が硬化されることによって初期層が形成される。初期液状層硬化工程(ステップS24)において制御部101は、初期液状層160が描画された描画用基板15を転写エリアへ搬送した後、光源73に電力を供給して初期液状層160に紫外光71を照射することで初期液状層160を構成する液状体50を硬化させる。制御部101は、所定の照射時間が経過すると光源73への電力の供給を遮断する。この際の照射時間は、初期液状層160が半硬化する照射時間であってもよいし、完全に硬化する照射時間であってもよい。液状体50が硬化されてなる硬化物が当該液状体50に対して有する撥液性とは、液状体50の硬化の度合いが進行するほど高くなる。そのため第二実施形態では、初期液状層160の硬化物である初期層が液状層58に対して有する親液性を高めるべく、初期液状層160が半硬化するように照射時間が設定されている。
液状層描画工程(ステップS25)では、上記液状層描画データに基づいて、図20に示されるように、層状構造体120を構成する液状層58が上記初期液状層160上に描画される。液状層描画工程(ステップS25)において制御部101は、転写エリアに位置している描画用基板15を描画エリアへ搬送した後、液滴吐出ヘッド30と描画用基板15とを相対的に移動させながら上記液状層描画データに基づいて液滴吐出ヘッド30から液滴55を吐出させることで、硬化した初期液状層160に重なる液状層58を描画する。
ここで、点状構造体上に初期液状層160が描画される構成であれば、初期液状層160よりも厚い液状層58が点状構造体上に描画される構成と比較して、液状層が薄くなる分、液状体50が点状構造体に引き寄せられやすくなる。また、硬化した初期液状層160上に液状層58が描画される構成であれば、点状構造体上に液状層58が描画される構成と比較して、描画用基板15と転写用基板85とによって挟持される液状層58の膜厚が小さくなる。そのため、上述した転写工程(ステップS40)においては、層状構造体120の側面に濡れ広がる液状体50そのものの量が少なくもなる。それゆえに、描画用基板15と転写用基板85とによって液状層58が挟持されるときに、該液状層58の形状の変化がより一層抑えられる。その結果、第一実施形態に記載した(1)〜(6)と同様の効果が得られるだけでなく、(2)に記載した効果がより顕著なものとなる。
なお、上記第一及び第二実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、光硬化性を有する液状体50によって点状構造体が形成される。これを変更して、例えば熱硬化性を有する液状体によって点状構造体が形成される構成であってもよい。また例えば、光硬化性を有する液状体と熱硬化性を有する液状体とが混合されてなる液状体によって液状層が形成される構成であってもよい。この構成によれば、光硬化性に基づく硬化と熱硬化性に基づく硬化とを互いに異なるタイミングで進行させることが可能であるため、点状構造体の硬化状態の制御性、例えば点状構造体を半硬化状態にするという制御が容易にもなる。
・上記実施形態では、上記(条件1)が満たされるべく、液状層58を構成する液状体50によって点状構成物が形成される。これを変更して、液状層58を構成する液状体50とは異なる液状体によって点状構造体を形成するという構成であってもよい。つまり、上記(条件1)が満たされない構成であってもよく、点状構造体を形成する液状体は、エネルギーを受けて硬化すると共に、液状体50に対する親和性が描画面15aに対する親和性よりも高い液状体であればよい。例えば、液状体50が硬化されてなる硬化物に対して、該液状体50よりも親和性が低い液状体によって点状構造体を形成する構成であってもよい。この場合、点状構造体が有する液状体50の保持能力をさらに高めることができることから、層状構造体120の形状の精度をさらに高めることが可能である。
・上記実施第二形態では、液状層58を構成する液状体50によって初期層が形成される。これを変更して、液状層58を構成する液状体50とは異なる液状体によって初期層を形成するという構成であってもよい。初期層を形成する液状体は、エネルギーを受けて硬化すると共に、液状体50に対する親和性が描画面15aに対する親和性よりも高い液状体であればよい。例えば、液状体50が硬化されてなる硬化物に対して、該液状体50よりも親和性が低い液状体によって初期層を形成する構成であってもよい。この場合、初期層が有する液状体50の保持能力をさらに高めることができることから、層状構造体120の形状の精度をさらに高めることが可能である。
・上記実施形態のおける点状構造体150描画工程(ステップS21)では、液状体50を液滴55にして吐出する液滴吐出法を用いて液点群155を描画した。これに限らず、液点群155は、例えばディスペンサ法などを用いて形成してもよい。
・上記実施形態では、上記(条件2)が満たされるべく、点状構造体が描画領域153内の全体にわたって配置されている。これに限らず、上記(条件2)が満たされない構成、例えば描画領域153の輪郭を示す線上にのみ点状構造体150が配置される構成であってもよい。こうした構成であっても、描画領域153に点状構造体が予め形成される以上、液状体50が描画領域153から流出することを抑えることができる。そのため、層状構造体の位置ずれや形状の変化を抑えることが可能である。
・上記実施形態では、液点群155、液状層58、及び初期液状層160を硬化する工程が造形装置5において実施される。これを変更して、造形装置とは異なる露光装置において上記液点群155、液状層58、及び初期液状層160が硬化されるという構成であってもよい。
・上記実施形態の造形装置5では、圧電素子駆動方式の液滴吐出ヘッド30によって液滴55が吐出されている。これを変更して、液滴吐出ヘッドから液滴55を吐出するという観点からすれば、抵抗加熱方式や静電駆動方式の液滴吐出ヘッドによって液滴55が吐出されるという構成であってもよい。
・上記実施形態の造形装置5は、1つの液滴吐出ヘッド30によって液点群155や液状層58が描画されている。これを変更して、複数の液滴吐出ヘッド30によって液点群155や液状層58が描画されるという構成であってもよい。こうした構成であれば、描画工程における処理時間の短縮が見込まれる。
・上記実施形態では、光源73への電力の供給及び遮断によって紫外光71の照射の態様を制御している。これを変更して、光源73に電力を供給し続けるとともに、凹部12bの開口部を開閉するシャッターの開閉によって紫外光71の照射の態様を制御するようにしてもよい。こうした構成によれば、光源73から出射される光量の安定化を図ることが可能であるため、紫外光71の照射量の安定化、液点150aや液状層58における硬化の度合いの安定化を図ることが可能である。ひいては、立体7の形状の精度を、より高めることが可能である。