JP5806901B2 - パラメトリックスピーカ - Google Patents

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本発明は、特定の方向と距離で決まる位置に情報を伝えるパラメトリックスピーカに関する。
従来、指向性の強い超音波信号を使って、特定の方向と距離で決まる位置に情報を伝えるパラメトリックスピーカが実用化されている。これは、比較的高い音圧を持つ、変調超音波信号が、空気の非線形によって、空気中で可聴音に復調される自然現象を利用している。
このスピーカは、超音波を発生する超音波発音体を複数並べることにより、指向性と音圧を高めている。また各々の超音波発音体は、お互いの音圧を高めあうために、ほぼ同位相で振動するように制御されている。
このようなパラメトリックスピーカ用の超音波発音体は、金属板やプラスチック板の両面もしくは片面に圧電セラミックを貼り付けた振動板上に、軽量のアルミニウムもしくはアルミ合金で形成されたパラボラもしくは漏斗状の共振子を接着した構造を有している(特許文献1参照)。
図7に示す従来の超音波発音体の支持構造では、振動板512の両主面に圧電素子511a、511bが接着している。振動板512および圧電素子511a、511bには、電圧を印加するためのリード線513a〜513cが接続されている。また、圧電素子511aには共振子514が接着されている。そして、圧電素子511bには支持体515が接着されており、これにより超音波発音体510が支持されている。従来技術には、このような支持体515を端子板で固定しているものが知られている(特許文献2参照)。
特開昭60−167597号公報 特開昭62−296698号公報
しかし、上記のパラメトリックスピーカ向け超音波発音体には、各超音波発音体の振動が端子板を介して相互に伝わる。パラメトリックスピーカでは、多数の超音波発音体が密集して設けられているため、互いの振動が端子板に伝わると、これらが干渉し得られる音圧が低下する。
また、圧電振動子の振動が接着剤で拘束され、支持部付近に応力が発生する。そして、連続して高い音圧を出し続けていると、素子の温度が上昇して、破壊に至る不具合が発生することがある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、各々の超音波発音体から支持体に伝わる振動を低減することで、音圧低下の防止とともに圧電素子の破壊を防止できるパラメトリックスピーカを提供することを目的とする。
(1)上記の目的を達成するため、本発明のパラメトリックスピーカは、特定の方向と距離で決まる位置に情報を伝えるパラメトリックスピーカであって、交流電圧により圧電振動子を振動させて超音波を発生させる複数の超音波発音体と、前記複数の超音波発音体のそれぞれを、前記圧電振動子の振動の節となる円周上の位置で支持する支持体と、前記支持体を固定する基板と、を備えることを特徴としている。このように、圧電振動子の節の位置で超音波発音体が支持されているため、各々の超音波発音体の振動の相互の影響を防止できる。
(2)また、本発明のパラメトリックスピーカは、前記支持体が、厚み0.1mm以上の樹脂接着剤の凝固により形成された弾性樹脂層により前記複数の超音波発音体に接着されていることを特徴としている。このような弾性接着剤が支持体と超音波発音体との間に存在することで、製品の個体差、接着位置による、節のずれに対して、厳密な支持位置の調整なしで各々の超音波発音体からの振動の相互の影響を防止できる。
(3)また、本発明のパラメトリックスピーカは、前記支持体が、円筒形状に形成されていることを特徴としている。これにより、振動を伝えることなく安定して圧電振動子を支持できる。また、支持体の作製や支持体の圧電振動子への接着の工程も容易になる。
本発明によれば、各々の超音波発音体から支持体に伝わる振動を低減することで、音圧低下の防止とともに圧電素子の破壊を防止できる。
(a)、(b)それぞれ本発明のパラメトリックスピーカを示す正面図および側面図である。 (a)、(b)それぞれ第1の実施形態の超音波発音体および支持体を示す側面図および底面図である。 (a)〜(c)それぞれ第1の実施形態の超音波発音体の支持位置を模式的に示す平面図および側断面図である。 第1の実施形態の超音波発音体の動作の一場面を示す一部拡大断面図である。 パラメトリックスピーカの電気的構成を示すブロック図である。 (a)、(b)それぞれ第2の実施形態の超音波発音体を示す側面図および底面図である。 従来の超音波発音体を示す側面図である。
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
[第1の実施形態]
(パラメトリックスピーカの構成)
図1(a)、(b)は、それぞれパラメトリックスピーカ100を示す正面図および側面図である。パラメトリックスピーカ100は、変調された超音波を強力な音圧で発生させ、空気中を超音波が伝播する際の非線形特性により、可聴音を出現させる。このようにして方向や距離を特定し指向性を与えて音響情報を伝えることを可能にする。図1に示すように、パラメトリックスピーカ100は、複数の超音波発音体110が基板120上に設けられて構成されている。この超音波発音体110が、変調信号に基づいて超音波を発生させる。基板120は、支持体121を介して超音波発音体110を固定し支持している。なお、図1では、外観構成を示し、電気的構成は省略している。
(超音波発音体の構成)
図2は、超音波発音体110および支持体121を示す側面図である。超音波発音体110は、あらかじめ一定の共振周波数の振動で超音波を発生させるように設計されており、電圧の印加により変調超音波信号を発生させる。超音波発音体110は、圧電素子111、振動板112、リード線113a、113b、共振子114により構成されている。
圧電素子111は、円板状に形成され、厚み方向への電圧の印加により伸縮する。圧電素子111は、振動板112の一方の主面に接着されて設置されている。圧電素子111は、振動板112の他方の主面が振動面となっており、圧電素子111は、振動面を介し、共振子114により超音波を送信できる。圧電素子111の両主面には、それぞれ電極が形成されており、本体部分の圧電体は厚み方向に分極されている。
振動板112は、圧電素子111が一方の主面に接着され、圧電素子111とともにユニモルフ構造を形成している。振動板112は、円板状に形成されている。振動板112は、真鍮、SUS材または42アロイ材、アルミニウム等の金属により形成されていることが好ましい。
リード線113a、113bは、基板120上の回路に接続され、電圧の印加、検出が可能になっている。リード線113aは、振動板112を介して、圧電素子111の振動板112側の電極に接続されている。リード線113bは、圧電素子111の基板120側の電極に接続されている。このような構成により、電気信号を圧電素子111に伝達し、超音波を発生させることを可能にしている。
共振子114は、金属によりパラボラ形状に形成されている。共振子114は、振動板112の他方の主面に設けられ、振動板112の振動に共振して超音波を発生させる。振動板112上に共振子114を設けることで、発生する超音波の音圧を上昇させている。超音波発音体110は、上記のように振動板112に共振子114が接着されており、直接、圧電素子111に共振子114が接着されていないため、圧電素子111の破壊や、電極の欠損という不良を防止できる。共振子114は、図2に示すようにパラボラ状に形成されていることが好ましいが、漏斗状に形成されていてもよい。なお、共振子114は、アルミニウムやアルミニウム−マグネシウム合金等の軽い材料で形成されていることが好ましい。
なお、支持体121は、圧電素子111の基板120側に設けられ、たとえばシリコンゴムのような弾性体で形成されて、超音波発音体110を支持している。支持体121は、基板120の振動の節Nの位置に設けられている。これにより、超音波発音体110からの振動が基板120に伝わるのを防止しているので、各々の超音波発音体からの振動の相互の影響を防止できる。また、支持体121と圧電素子111とは、たとえばシリコン樹脂接着剤が凝固したような弾性樹脂層121aにより接着されている。
(支持位置)
超音波発音体110を、その振動を阻害しないように支持するためには、圧電振動子115を支持体121で支持する位置が重要となる。図3(a)〜(c)は、それぞれ超音波発音体110の支持位置を模式的に示す平面図および側断面図である。図3(a)に示す円状の破線の位置(図3(b)に示す△の先端位置)は、振動が発生しない節Nである。この位置は、振動板、セラミック、共振子等の寸法と重量と各々の素材の特性から決定される。例えば、9mm直径の42アロイ材を用いた場合、共振子の大きさにも拠るが、振動が発生しない部分の直径はおよそ4〜7mm程度になる。したがって、この位置に円筒形の支持体121を設ければ、基本的に振動はその下には伝わらない。
しかし、実際には、組み立て時のずれや重量の誤差等により、振動が発生しない位置についてコンマ1mm程度のずれは常に起こりうる。もしずれた位置で、硬い金属質のような支持体で支持していた場合、互いの超音波振動体の振動が伝わるようになる。その結果、音圧の発生効率を低下させ、超音波発音体110の発熱を誘発する。
図4は、超音波発音体110の動作の一場面を示す一部拡大断面図である。このような事態は、図4に示すように、ある程度厚みと幅を持たせた弾性樹脂層121aで支持体121と圧電振動子115とを接着することで、実質上防ぐことができる。このようにして振動しない位置のずれを、弾性樹脂層121aにより吸収できる。弾性樹脂層121aには、例えばシリコン樹脂接着剤を用いることができる。また、接着剤でブチルゴムの層の両面を支持体121および圧電振動子115に接着して弾性樹脂層121aとすることもできる。
この機能を充分に得るために、弾性樹脂層121aの厚みは0.1mm以上あることが望ましい。また、弾性樹脂層121aは、振動の節となる円の直径方向に沿って1mm以上の支持幅を有することが実用上好ましい。これにより、支持体121が圧電振動子115から剥がれるのを防止できる。このようにして、たとえば振動の節Nとなる円の円周上に、3点以上に点在する位置で支持体121を設けて圧電振動子115を保持できる。
上記のような弾性樹脂層121aが支持体121と超音波発音体110との間に存在することで、製品の個体差、接着位置による、節のずれに対して、厳密な支持位置の調整なしで各々の超音波発音体からの振動の相互の影響を防止できる。
(パラメトリックスピーカの電気的構成)
図5は、パラメトリックスピーカ100の電気的構成を示すブロック図である。図5に示すように、パラメトリックスピーカ100は、発振器101、変調器102、増幅器105および超音波発音体110を備え、これらを介して超音波を発生させる。発振器101は、超音波帯域の所定の周波数で信号を発振する。発振される周波数は、発振信号が超音波発音体110に伝達されたとき圧電素子111を駆動する駆動周波数であり、パラメトリックスピーカ100の用途に応じてあらかじめ決定されている。
変調器102は、音声信号で発振信号をAM変調する。変調は、AM変調に代えて、DSB変調、SSB変調、FM変調であってもよい。増幅器105は、変調された発振信号を増幅し、超音波発音体110に出力する。超音波発音体110は、増幅された発振信号を音波に変換する。
上記のように構成されたパラメトリックスピーカ100は、超音波帯域の周波数の信号を発振し、発振信号を所望の音声信号で変調し、変調信号を増幅して、超音波発音体110で音波に変換して放射する。このようにして、指向性の高い超音波を放射することができる。たとえば狭い範囲にいる人に選択的に案内を流すことができるため、美術館や水族館、博物館、アミューズメント施設等に利用できる。今後、交通案内等でも利用可能である。
[第2の実施形態]
上記の実施形態では、3本の柱状の支持体121により点の位置で圧電振動子115が支持されているが、円筒形状の支持体で節Nとなる円周全体が支持されていてもよい。図6(a)、(b)は、それぞれ円周全体で支持された超音波発音体110を示す側面図および底面図である。
図6(a)、(b)で示すように、それぞれの超音波発音体110は、円筒形状の支持体221により支持されている。支持体221は、弾性樹脂層221aにより振動の節Nとなる円周上で圧電素子111に接着されており、超音波発音体110の振動が基板120に伝わるのを防止している。これにより、振動を伝えることなく安定して圧電振動子115を支持できる。また、支持体221の作製や支持体221の圧電振動子115への接着の工程も容易になる。
100 パラメトリックスピーカ
101 発振器
102 変調器
105 増幅器
110 超音波発音体
111 圧電素子
112 振動板
113a、113b リード線
114 共振子
115 圧電振動子
120 基板
121 支持体
121a 弾性樹脂層
221 支持体
221a 弾性樹脂層
N 節

Claims (2)

  1. 特定の方向と距離で決まる位置に情報を伝えるパラメトリックスピーカであって、
    交流電圧により圧電振動子を振動させて超音波を発生させる複数の超音波発音体と、
    前記複数の超音波発音体のそれぞれを、前記圧電振動子の振動の節となる円周上の位置で支持する支持体と、
    前記支持体を固定する基板と、を備え、
    前記支持体は、厚み0.1mm以上のシリコン樹脂接着剤の凝固により弾性樹脂層として形成された、シリコン樹脂接着剤の層またはブチルゴムおよびシリコン樹脂接着剤の層により、前記圧電振動子の振動の節となる円の直径方向に沿って1mm以上の幅を持たせて前記複数の超音波発音体に接着されていることを特徴とするパラメトリックスピーカ。
  2. 前記支持体は、円筒形状に形成されていることを特徴とする請求項1記載のパラメトリックスピーカ。
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