JP5806384B2 - 誘電体共振器 - Google Patents
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Description
本発明は、例えば帯域通過フィルタを構成する部品として使用される誘電体共振器に関する。
例えば携帯電話回線網やWiFiネットワーク等の通信システムにおいては、人が持ち歩けるような小型軽量な携帯端末と、それぞれの携帯端末との通信を行う固定の基地局通信装置とが使用される。これらの多くの通信システムで使用される電波の多くは、携帯端末から送信されて基地局通信装置にて受信される基地局受信用の周波数帯と、基地局通信装置から送信されて携帯端末にて受信される基地局送信用の周波数帯とに分かれている。
携帯端末および基地局通信装置のいずれにおいても、装置の内部では、送信信号と受信信号とが干渉し合わないように電波を分離し、それぞれの電波に対して信号処理を行っている。この電波の分離に、帯域通過フィルタ(以降、単にフィルタともいう)が用いられる。携帯端末で使用されるフィルタは、人が携帯端末を持ち歩きやすいように軽量化および小型化が要求されている。一方、基地局通信装置は広い通信エリアを実現するために高出力の電波をアンテナから放射する必要があるため、基地局通信装置用のフィルタとしては、半導体装置等で増幅された大電力の電気信号を無駄なくアンテナに供給することができるよう、なるべく低損失であることが要求されている。
特許文献1には、基地局通信装置側に用いられる低損失な誘電体共振器の一例が挙げられている。図6は、従来の誘電体共振器の一実施形態である誘電体共振器100を示す図であり、図6(a)は概略斜視図、図6(b)は図6(a)に示す誘電体共振器100の一部を拡大して示す概略断面図である。図6に示す誘電体共振器100は、互いに反対側に位置する一対の主面(主面110Aおよび110B)を有する誘電体ブロック110と、一対の主面にそれぞれ開口を有して誘電体ブロックを貫通する貫通孔112と、貫通孔112の内周面の全体に被着した内導体120と、誘電体ブロック110の側面に内導体120を取り囲むように被着した外導体140とを備えている。内導体120は、貫通孔112の内周面の全体から主面110Aの一部まで連続して被着している。特許文献1に記載の誘電体共振器100は、内導体120とその周囲を囲むように配置された外導体140とによって、特定の周波数で共振する同軸共振器構造が形成されており、内導体120と電磁的に結合した信号取り出し用電極(図示せず)を介して、特定の周波数の電気信号を選択的に取り出すことができる。
ところで、この種の誘電体共振器の共振周波数は、誘電体ブロックを構成している誘電体材料の比誘電率(εr)などの材料に関するパラメータに応じて変化するとともに、誘電体ブロック110の外形寸法、貫通孔112の寸法や形状、貫通孔112の内部での内導体120の厚みばらつき等の形状に関するパラメータに応じても変化する。誘電体共振器の各種形状は、特定の周波数で共振することができるよう設計されている。
しかしながら実際の誘電体共振器では、製造時の環境変化等によってこれら形状に関するパラメータが、多少なりとも設計値からずれてしまう。この形状に関するパラメータのずれによって、誘電体共振器の共振周波数にも設計値からのずれが生じてしまう。このような誘電体共振器における共振周波数のずれを予め決められた規定範囲内に補正するため、従来より、作製した誘電体共振器の1つ1つについていわゆるチューニング作業と呼ばれる共振周波数の調整作業を行なっている。
この共振周波数の調整作業には、内導体120の一部を削って内導体120の大きさや形状を変化させる方法や、いわゆるチューニング棒を用いた方法等がある。内導体120の大きさや形状を変化させる方法では、例えばハンドグラインダー装置を用いて、回転する研削用砥石を内導体120の一部に当接させることで、この内導体120の一部を研削して除去する。
また図7(a)は、図6に示す誘電体共振器100について、チューニング棒200を用いて共振周波数を調整した状態を示す概略断面図である。チューニング棒200を用いた共振周波数の調整は、貫通孔112に金属製のチューニング棒200を挿入することで行う。金属製のチューニング棒200は、図7(a)に示すようにねじ状である。具体的には、誘電体共振器100の貫通孔112にチューニング棒200をねじ込むように挿入し、チューニング棒200の外周を内導体120に食い込ませて、チューニング棒200を貫通孔112にねじ留めする。チューニング棒200を用いた共振周波数の調整では、貫通孔112へのチューニング棒200の挿入量を調整することで共振周波数を調整することができる。チューニング棒200を用いた共振周波数の調整の後は、チューニング棒200を貫通孔112にねじ留めした状態で誘電体共振器として使用することができる。
これらのチューニング作業では以下に示すような課題があった。例えば内導体120の一部を削って内導体120の大きさや形状を変化させる方法では、ハンドグラインダー装置等を用いた機械加工に伴う比較的大きな力が内導体120や誘電体ブロック110にかかる。例えば図6(b)に示すような、貫通孔112の開口114の周縁部分に対応する角部Xの近傍は、このような機械加工に伴う力が集中し易い。このため、内導体120の一部を削って内導体120の大きさや形状を変化させるチューニング方法では、この集中した力によって角部Xの近傍で内導体120が誘電体ブロック110から剥離し易いといった課題があった。またこのような角部Xの近傍では、内導体120の厚みが比較的薄くなり易く、機械加工による力の集中に伴い、この角部Xの近傍の内導体120自体が破損し易いといった課題もあった。
また、チューニング棒200を用いた共振周波数の調整方法では 調整後の状態(チューニング状態)を長期間にわたって安定して維持するには、チューニング棒200がチューニング時に調整した位置でしっかりとねじ留めされていることが大切である。チューニング棒200をしっかりとねじ留めするには、チューニング棒200の外周が内導体120にしっかりと食い込むよう、チューニング棒200の外径と貫通孔112の内径との差が小さいことが好ましい。しかし、チューニング棒200の外径と貫通孔112の内径との差が小さい場合は、図7(a)に示す従来の誘電体共振器100では、チューニング棒200からの応力が集中し易い部分である角部Xが、チューニング棒200からの応力によって破損してしまうことがあった。この場合、誘電体ブロック110の形状が変化して周波数の微調整の実施が困難であるとともに、応力が集中していた部分でチューニング棒200にかかる力が緩むので、チューニング棒200が調整位置からずれ易くなり調整状態を長期間維持できないといった問題点があった。また、図7(b)に示すように、貫通孔112の開口114近傍に傾斜部130を設けてチューニング棒200からの応力の集中を緩和する手段も検討されているが、応力を緩和したことにより、チューニング棒200が貫通孔112内にしっかりと固定されなくなり、チューニング棒200が調整位置からずれ易く、調整状態を長期間維持できないといった問題点があった。本発明は、このような従来の技術における問題点を解決すべく案出されたものである。
本発明は、互いに反対側に位置する一対の主面を有する誘電体ブロックと、一対の前記主面にそれぞれ開口を有して前記誘電体ブロックを貫通する貫通孔と、該貫通孔の内周面の全体に被着した内導体と、前記誘電体ブロックの側面に前記内導体を取り囲むように被着した外導体とを備える誘電体共振器であって、前記貫通孔は、それぞれの前記開口を含む一対の端部と、一対の該端部の間に位置する、内周面が中心軸に平行な平行部とを備え、前記平行部の内径がそれぞれの前記開口の内径よりも小さく、一対の前記端部は、それぞれ前記平行部の内周面に連なる第1の面と、該第1の面および前記主面に連なる第2の面とを有し、前記中心軸を含む断面で見たときに、前記第1の面が前記平行部の内周面に対して略垂直であり、前記第1の面と前記第2の面との接続部が前記第2の面と前記主面との接続部に比べて前記中心軸に近く、前記内導体は、一対の前記端部それぞれに被着した部分において、厚みが前記中心軸に向かって厚くなっており、内周面が前記平行部に被着した部分の前記内導体の内周面に比べて前記中心軸に近いことを特徴とする誘電体共振器を提供する。
本発明はまた、互いに反対側に位置する一対の主面を有する誘電体ブロックと、一対の前記主面にそれぞれ開口を有して前記誘電体ブロックを貫通する貫通孔と、該貫通孔の内周面の全体に被着した内導体と、前記誘電体ブロックの側面に前記内導体を取り囲むように被着した外導体と、一対の前記主面のうち一方の主面の前記開口から前記貫通孔に挿入されたねじ状のチューニング棒とを備える誘電体共振器であって、前記貫通孔は、それぞれの前記開口を含む一対の端部と、一対の該端部の間に位置する、内周面が中心軸に平行な平行部とを備え、前記平行部の内径がそれぞれの前記開口の内径よりも小さく、一対の前記端部は、それぞれ前記平行部の内周面に連なる第1の面と、該第1の面および前記主面に連なる第2の面とを有し、前記中心軸を含む断面で見たときに、前記第1の面が前記平行部の内周面に対して略垂直であり、前記第1の面と前記第2の面との接続部が前記第2の面と前記主面との接続部に比べて前記中心軸に近く、少なくとも前記一方の主面の側の前記端部の近傍において、前記チューニング棒が、外周が前記内導体に食い込むことで前記貫通孔にねじ留めされていることを特徴とする誘電体共振器を併せて提供する。
誘電体ブロックの貫通孔の一対の端部が、それぞれ貫通孔の平行部の内周面に連なる第1の面と、第1の面および誘電体ブロックの主面に連なる第2の面とを有し、第1の面と第2の面との接続部が第2の面と主面との接続部に比べて貫通孔の中心軸に近く、貫通孔の内面に被着した内導体が、一対の端部それぞれに被着した部分において厚みが中心軸に向かって厚くなっているとともに、内周面が平行部に被着した部分の内導体の内周面に比べて中心軸に近いので、貫通孔にチューニング棒をねじ込んだ場合に、この端部近傍の肉厚な内導体にチューニング棒を食い込ませてねじ留めすることができるので、貫通孔内の所定位置にチューニング棒を長期間にわたって安定して固定することができる。また、貫通孔の端部近傍において、内導体と誘電体ブロックとの接合面積が比較的大きいので、内導体と誘電体ブロックとの接合強度が比較的強く、内導体の一部を削って内導体の大きさや形状を変化させるチューニングを行った場合でも、内導体が誘電体ブロックから剥離し易い。また、外部から印加された力に伴う応力が集中し易い、貫通孔の端部近傍における内導体の厚みが大きいので内導体自体も破損し難い。
以下、図面を参照して本発明の誘電体共振器の一実施形態について説明する。図1(a)は、本発明の誘電体共振器の一実施形態である、誘電体共振器10の概略斜視図である。図1(b)は誘電体共振器10の概略断面図である。図2は、図1に示す誘電体共振器10の一部を拡大して示す断面図である。図2では、複数の貫通孔4のうちの1つの構成について代表して示しているが、図1に示す誘電体共振器10の貫通孔4は、いずれも図2に示す構造と同様の構造を有している。また図3は、貫通孔4の端部14aの近傍をさらに拡大して示す断面図である。図においては符号を省略しているが、端部14bも端部14aと同様の構成を有している。図1(b)、図2、図3、および後述する図4、図5は、貫通孔4の中心軸Cを含む平面で切断した際の断面図である。
誘電体共振器10は、互いに反対側に位置する一対の主面2aおよび2bを有する誘電体ブロック2と、一対の主面2aおよび2bにそれぞれ開口4aおよび4bを有して誘電体ブロック2を貫通する貫通孔4と、貫通孔4の内周面の全体に被着した内導体6と、誘電体ブロック2の側面に内導体6を取り囲むように被着した外導体8とを備える誘電体共振器10であって、貫通孔4は、開口4aを含む端部14aおよび開口4bを含む14bと、一対の端部14aおよび14bの間に位置する、内周面が中心軸Cに平行な平行部16とを備え、平行部16の内径がそれぞれの開口4aおよび4bの内径よりも小さく、一対の端部14aおよび14bは、それぞれ平行部16の内周面に連なる第1の面23(図2、図3参照)と、第1の面23および主面2aに連なる第2の面25(図2、図3参照)とを有し、中心軸Cを含む断面で見たときに、第1の面23が平行部16の内周面に対して略垂直であり、第1の面23と第2の面25との接続部27(図2、図3参照)が第2の面25と主面2aとの接続部29(図2、図3参照)に比べて中心軸Cに近く、内導体6は、一対の端部14aおよび14bそれぞれに被着した部分において、厚みが中心軸Cに向かって厚くなっており、内周面6αが平行部16に被着した部分の内導体6の内周面6βに比べて中心軸Cに近い。第1の面23が平行部16の内周面に対して略垂直とは、第1の面23と平行部16とのなす角α(図3参照)が70°〜110°であることをいう。
以下、誘電体共振器10について、より詳細に説明する。図1に示す誘電体共振器10は、誘電体ブロック2が貫通孔4を複数備え、貫通孔4それぞれの内周面の全体に内導体6が被着している。内導体6は、貫通孔4の内周面の全体から一対の主面2aおよび2bのうちの少なくとも1つの主面(本実施形態では主面2a)の一部まで連続して被着している。
外導体8は、これら内導体6が被着された複数の貫通孔4の周囲を囲むように、誘電体ブロック2の側面全体に設けられている。また本実施形態では、誘電体ブロック2の他方の主面2b全体にも金属層7が設けられており、金属層7が内導体6および外導体8の双方に接続することで、金属層7を介して内導体6と外導体8とが電気的に接続されている。誘電体共振器10の使用時には、この金属層7の部分が外部の接地導体と当接した状態で使用される。
誘電体共振器10は、これら内導体6と外導体8とによって、各貫通孔4毎にそれぞれ特定の周波数で共振する複数の同軸共振器構造が構成されており、これら複数の同軸共振器構造が互いに電磁界結合するように配置されている。誘電体共振器10では、複数の貫通孔4それぞれにおいて、例えばいわゆるTEMモード型の共振構造が構成されている。すなわち、誘電体共振器10にマイクロ波帯の高周波が印加されると、複数の貫通孔4それぞれが、TEMモード型の共振器を構成して共振する。誘電体共振器10では、複数の同軸共振器構造が互いに電磁界結合するように配置されていることにより、特定の貫通孔4の内導体6と電磁的に結合した信号取り出し用電極(図示せず)を介して、特定の周波数の電気信号を選択的に取り出すことができる。例えば、各貫通孔4に対応する共振周波数の設定を、それぞれ例えば概ね2.139GHz、2.131GHz、2.130GHz、2.139GHzと異ならせ、共振器間の結合を調整することにより、通信帯域が概ね2.1〜2.2GHzの帯域通過フィルタを構成することができる。
誘電体ブロック2は例えばアルミナ等のセラミックスからなり、必要とする周波数等に応じて、例えば比誘電率が5〜70程度の材質を適宜選択すればよい。本実施形態では誘電体ブロック2の図1(b)中の上下方向に沿った高さは例えば約5〜15mm、貫通孔4の内径は例えば約2〜10mm程度である。内導体6、金属層7および外導体8は、Ag、Cu、Auなどの抵抗値の小さいものを主成分とすればよい。
端部14aは、平行部16の内周面に連なる第1の面23と、第1の面23および主面2aに連なる第2の面25と、第1の面23と第2の面25との接続部27と、第2の面25と主面2aとの接続部29とを有している。第1の面23の図3中左右方向の幅は約0.5〜5mm程度であり、第2の面25の図中上下方向の高さは約0.5〜5mm程度である。
図3に示すように、第1の面23は平行部16に対して垂直であり、第1の面23と第2の面25との接続部27が、第2の面25と主面2aとの接続部29に比べて中心軸Cに近くなっている。また内導体6は、端部14aに被着した部分において、厚みが中心軸Cに向かって厚くなっており、端部14aに被着した部分における内導体6の内周面6αが、平行部16に被着した部分の内導体6の内周面6βに比べて、中心軸Cに近くなっている。本実施形態では、端部14aに対応する部分における内導体6の内周面6αは、平行部16に対応する部分における内導体6の内周面6βに比べて、例えば0.01〜1mm程度中心軸Cに近くなっている。また本実施形態において、内導体6の平行部16に対応する部分の厚さは約0.005〜0.05mm程度である。
図4および図5は、誘電体共振器10について、いわゆるチューニング作業と呼ばれる共振周波数の調整作業を行なっている状態を示している。共振周波数の調整作業には、内導体6の一部を削って内導体6の大きさや形状を変化させることで共振周波数を調整する方法や、いわゆるチューニング棒50を用いて共振周波数を調整する方法とがある。
図4は、内導体6の大きさや形状を変化させることで共振周波数を調整する方法の一例について説明する概略断面図である。図4に示す例では、内蔵されたモータによって回転軸64を回転駆動させるハンドグラインダー装置62を用いて、内導体6の一部を研削して除去している。内導体6の除去形状や除去量に応じて、共振周波数は変化する。具体的には、ハンドグラインダー装置62の回転軸64に円板状の砥石60を取り付けて砥石60を回転させながら、回転する砥石60を一方の主面2aに被着した内導体6の一部に押し当てて、内導体6のうち研石60を押し付けた部分を研削して除去する。この際、内導体6には回転する砥石60が押し付けられるので、内導体6には比較的大きな力が加わる。砥石60を図4中の左右方向に移動させながら内導体6を研削して除去する場合など、内導体6のうち端部14aに被着した部分などには比較的大きな力が加わる。
本実施形態では端部14aは、平行部16の内周面に連なる第1の面23と、主面2aに連なる第2の面25と、第1の面23と第2の面25との接続部27と、第2の面25と主面2aとの接続部29とを有しており、第1の面23は平行部16に対して略垂直であり、第1の面23と第2の面25との接続部27が、第2の面25と主面2aとの接続部29に比べて中心軸Cに近くなっている。本実施形態では端部14aがこのような形状を有しているので、内導体6と端部14aとの接合面積が比較的大きい。このため、内導体6の端部14aに被着している部分に研削による力が集中して加わった場合でも、内導体6と誘電体ブロック2との接合強度が比較的強いので、誘電体ブロック2から内導体6が剥がれ難い。
また、内導体6は端部14aに被着した部分が比較的厚いので、応力が集中し易い端部14a近傍部分の剛性が高い。このため、内導体6の一部を削って内導体6の大きさや形状を変化させる際の力が、内導体6の端部14aに被着した部分に集中した場合でも、この端部14a自体が破損し難い。
図5は、チューニング棒50を用いた共振周波数の調整の状態を示す概略断面図である。チューニング棒50を用いたチューニング作業は、貫通孔4にステンレス等からなる金属製のチューニング棒50を挿入することで行われる。本実施形態のチューニング棒50は、図5に示すようにねじ状のものを用いている。具体的には、誘電体共振器10の貫通孔4にチューニング棒50をねじ込むように挿入し、チューニング棒50の外周を内導体6に食い込ませて、チューニング棒50を貫通孔4にねじ留めする。チューニング棒50を用いた共振周波数の調整では、貫通孔4へのチューニング棒50の挿入量を調整することで共振周波数を調整することができる。チューニング棒50を用いた共振周波数の調整の後は、チューニング棒50を貫通孔4にねじ留めした状態で誘電体共振器として使用することができる。
本実施形態では端部14aは、平行部16の内周面に連なる第1の面23と、主面2aに連なる第2の面25と、第1の面23と第2の面25との接続部27と、第2の面25と主面2aとの接続部29とを有しており、第1の面23は平行部16に対して略垂直であり、第1の面23と第2の面25との接続部27が、第2の面25と主面2aとの接続部29に比べて中心軸Cに近くなっている。本実施形態では端部14aがこのような形状を有しているので、チューニング棒50を貫通孔4の開口4aから挿入していった場合も、開口4aの近傍において誘電体ブロック2とチューニング棒50とが比較的大きく離れている。また、内導体6の端部14aに被着した部分は厚みが中心軸Cに向かって厚くなっており、端部14aに被着した部分の内導体6の内周面6αが、平行部16に被着した部分の内導体6の内周面6βに比べて中心軸Cに近くなっている。すなわち、貫通孔4の開口4a近傍には、比較的変形し易い金属からなる内導体6の層が、比較的大きな肉厚で設けられている。貫通孔4の開口4aから挿入されたチューニング棒50は、まずこの端部14aに被着した部分の内導体6の内周面6αに当接する。
このため、チューニング棒50を貫通孔4の開口4aから挿入する際に、比較的変形し易い金属からなる肉厚な内導体6によって、チューニング棒50からの衝撃が緩和されるので、誘電体ブロック2そのものに加わる衝撃力が抑制されて、誘電体ブロック2の破損等が発生し難い。
チューニング棒50をねじ込むように挿入していくと、この端部14aに被着された部分の肉厚な内導体6にチューニング棒50の外周面が食い込んでいき、端部14aに被着された肉厚な内導体6とチューニング棒50とが比較的強固に締結される。本実施形態では、この端部14a近傍の肉厚な内導体6にチューニング棒50を食い込むようにねじ留めすることができるので、貫通孔4内の所定位置にチューニング棒50を長期間にわたって安定して固定することができる。
チューニング棒50を用いた共振周波数の調整の後は、チューニング棒50を貫通孔4にねじ留めした状態で誘電体共振器10として使用することができる。すなわち、図5に示すように、互いに反対側に位置する一対の主面2aおよび2bを有する誘電体ブロック2と、一対の主面2aおよび2bにそれぞれ開口4aおよび4bを有して誘電体ブロック2を貫通する貫通孔4と、貫通孔4の内周面の全体に被着した内導体6と、誘電体ブロック2の側面に内導体6を取り囲むように被着した外導体8と、一対の主面2aおよび主面2bのうち一方の主面2aに設けられた開口4aから貫通孔4に挿入されたねじ状のチューニング棒50とを備える誘電体共振器10であって、一対の端部14aおよび14bは、それぞれ平行部16の内周面に連なる第1の面23と、第1の面23および主面2aに連なる第2の面25とを有し、中心軸Cを含む断面で見たときに、第1の面23が平行部16の内周面に対して略垂直であり、第1の面23と第2の面25との接続部27が第2の面25と主面2aとの接続部26に比べて中心軸Cに近く、少なくとも一方の主面2aの側の端部14aの近傍において、チューニング棒50の外周が内導体6に食い込むことでチューニング棒50が貫通孔4にねじ留めされている誘電体共振器10を、帯域通過フィルタとして使用することができる。本実施形態では、貫通孔4内の所定位置にチューニング棒50を長期間にわたって安定して固定することができるので、チューニング棒50が挿入された状態の誘電体共振器は、長期間にわたって安定した特性を維持することができる。
以下、誘電体共振器10の製造方法を説明する。まず、セラミックスからなる誘電体ブロック2を準備する。誘電体ブロック2の材質としては、必要とする周波数、大きさに応じて、比誘電率が5〜70程度の材質を選択することができる。また、誘電体ブロック2の形状等は、必要とする周波数に応じて設定すればよい。例えばアルミナからなる誘電体ブロック2を形成する場合は、まず、高純度のアルミナ粉末を水とともにボールミルにて混合、粉砕する。アルミナ粉末は、純度99質量%以上で、平均粒径が0.3〜1μmのものを用いることが好ましい。得られたスラリーに有機バインダーを添加し、噴霧乾燥して顆粒を作製する。次に、得られた顆粒をプレス成形して誘電体ブロック2に対応する形状の生成形体を得る。続いて、加工した生成形体を最高温度1400〜1600℃で焼成して、セラミックスからなる誘電体ブロック2を作製する。
次に、導電性の金属粉末を含むペーストを準備する。ペーストに含まれる金属の主成分は、Ag、Cu、Auなどの抵抗値の小さいものが望ましい。ペーストは、金属粉末、有機結合材、および有機性の液体からなる。このペーストを、誘電体共振器10における内導体6、外導体8および金属層7に対応する部分に塗布する。
誘電体ブロック2は、複数の貫通孔4それぞれの端部14aおよび端部14bに、第1の面23と第2の面25とを有している。この第1の面23と第2の面25とを有する端部14aおよび端部14bには、表面張力の作用によって貫通孔4の中心軸に向かって張り出すように厚くペーストを塗布することができる。特に、ペーストの粘度を10〜500Pa・sに設定した場合は、比較的多くのペーストを塗布しておくことができる。このようにペーストを塗布した誘電体ブロック2を、800〜900℃程度で熱処理した後に冷却すれば、誘電体ブロック2の表面に内導体6、外導体8および金属層7が形成された誘電体共振器10を製造することができる。本実施形態の製造方法では、貫通孔4の端部14aおよび端部14bに比較的多くのペーストを塗布することができるので、端部14aおよび端部14bに十分に厚い内導体6を被着させることができる。このような製造方法によると、外部から加わった衝撃等に起因する応力が比較的集中し易い貫通孔4の端部14近傍における内導体6の厚みを比較的容易に大きくすることができるので、内導体6自体も破損し難い。
以上、本発明の誘電体共振器の実施形態の例について説明したが、本発明は上記各実施形態に限定されない。誘電体ブロックの材質、内導体や外導体の材質、信号取り出し電極構造などは、本発明の実施形態の例に特に限定されない。また、上記の実施形態の例では、複数の貫通孔を有し、帯域通過フィルタとして用いる誘電体共振器について説明したが、1つの貫通孔を有しで1つの特定周波数で共振する誘電体共振器であってもよく、また、上記実施形態の例における4つよりもさらに複数の貫通孔や入出力端子構造を設けてもよい。本発明の誘電体共振器は、いわゆるデュプレクサやマルチプレクサとして用いることができる。本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良および変更を行ってもよいのはもちろんである。
2 誘電体ブロック
2a、2b 主面
4 貫通孔
4A、4B 開口
6 内導体
6α、6β 内周面
7 金属層
8 外導体
10 誘電体共振器
14a、14a 端部
16 平行部
23 第1の面
25 第2の面
27、29 接続部
50 チューニング棒
C 中心軸
2a、2b 主面
4 貫通孔
4A、4B 開口
6 内導体
6α、6β 内周面
7 金属層
8 外導体
10 誘電体共振器
14a、14a 端部
16 平行部
23 第1の面
25 第2の面
27、29 接続部
50 チューニング棒
C 中心軸
Claims (5)
- 互いに反対側に位置する一対の主面を有する誘電体ブロックと、
一対の前記主面にそれぞれ開口を有して前記誘電体ブロックを貫通する貫通孔と、
該貫通孔の内周面の全体に被着した内導体と、
前記誘電体ブロックの側面に前記内導体を取り囲むように被着した外導体とを備える誘電体共振器であって、
前記貫通孔は、それぞれの前記開口を含む一対の端部と、一対の該端部の間に位置する、内周面が中心軸に平行な平行部とを備え、前記平行部の内径がそれぞれの前記開口の内径よりも小さく、
一対の前記端部は、それぞれ前記平行部の内周面に連なる第1の面と、該第1の面および前記主面に連なる第2の面とを有し、前記中心軸を含む断面で見たときに、前記第1の面が前記平行部の内周面に対して略垂直であり、前記第1の面と前記第2の面との接続部が前記第2の面と前記主面との接続部に比べて前記中心軸に近く、
前記内導体は、一対の前記端部それぞれに被着した部分において、厚みが前記中心軸に向かって厚くなっており、内周面が前記平行部に被着した部分の前記内導体の内周面に比べて前記中心軸に近いことを特徴とする誘電体共振器。 - 前記内導体は、前記貫通孔の内周面の全体から一対の前記主面のうちの少なくとも1つの前記主面の一部まで連続して被着していることを特徴とする請求項1記載の誘電体共振器。
- 一対の前記主面のうちの少なくとも1つの前記主面の全体にも金属層が設けられており、該金属層が前記内導体および前記外導体の双方に接続することで、前記金属層を介して前記内導体と前記外導体とが電気的に接続されていることを特徴とする請求項1記載の誘電体共振器。
- 前記誘電体ブロックは前記貫通孔を複数備え、該貫通孔それぞれの前記内周面の全体に前記内導体が被着していることを特徴とする請求項1記載の誘電体共振器。
- 互いに反対側に位置する一対の主面を有する誘電体ブロックと、
一対の前記主面にそれぞれ開口を有して前記誘電体ブロックを貫通する貫通孔と、
該貫通孔の内周面の全体に被着した内導体と、
前記誘電体ブロックの側面に前記内導体を取り囲むように被着した外導体と、
一対の前記主面のうち一方の主面の前記開口から前記貫通孔に挿入されたねじ状のチューニング棒とを備える誘電体共振器であって、
前記貫通孔は、それぞれの前記開口を含む一対の端部と、一対の該端部の間に位置する、内周面が中心軸に平行な平行部とを備え、前記平行部の内径がそれぞれの前記開口の内径よりも小さく、
一対の前記端部は、それぞれ前記平行部の内周面に連なる第1の面と、該第1の面および前記主面に連なる第2の面とを有し、前記中心軸を含む断面で見たときに、前記第1の面が前記平行部の内周面に対して略垂直であり、前記第1の面と前記第2の面との接続部が前記第2の面と前記主面との接続部に比べて前記中心軸に近く、
少なくとも前記一方の主面の側の前記端部の近傍において、前記チューニング棒が、外周が前記内導体に食い込むことで前記貫通孔にねじ留めされていることを特徴とする誘電体共振器。
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