JP5805954B2 - 異種金属接合継手および異種金属の接合方法 - Google Patents
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例えば、従来の鋼板とアルミニウム合金板とのウェルドボンド接合方法として、アルミニウム合金板の一面に鋼板を、他面に鋼板の当て板を、それぞれ接着剤を用いて貼り付けて仮接合し、その後それらを電極で挟んで抵抗スポット溶接してなる方法がある(例えば、特許文献1参照)。
また、耐食性を向上させるために、亜鉛系めっき鋼板とアルミニウム合金板とをウェルドボンド接合して得られた異種金属接合継手に、亜鉛・コバルト合金めっきを施す場合、新たに亜鉛・コバルト合金めっきを施す工程を追加する必要があるため、生産性が低下してしまう。
一方の面の少なくとも一部が前記亜鉛系めっき層に対向して配置されたアルミニウム合金板と、前記亜鉛系めっき鋼板と前記アルミニウム合金板とがスポット溶接されてなる溶接部と、前記亜鉛系めっき鋼板と前記アルミニウム合金板との間の一部に配置された接着層とを有し、前記接着層が、エポキシ樹脂と、Mg、Ni、Cr、Coから選ばれる一種の元素またはMg、Ni、Cr、Co、Alから選ばれる二種以上の元素を合計で1質量%以上40質量%以下含有し、残部がZnおよび不可避不純物からなる一種または二種以上のZn合金粒子とを含有し、前記Zn合金粒子を体積分率で1%以上40%以下含有するものであることを特徴とする異種金属接合継手。
(3)前記接着層が、平面視で前記溶接部の周囲を囲むように配置されていることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の異種金属接合継手。
「異種金属接合継手」
図1は、本発明の異種金属接合継手の一部を拡大して示した断面図である。図1に示す異種金属接合継手1は、亜鉛系めっき鋼板2と、アルミニウム合金板3と、溶接部(不図示)と、接着層4とを有している。図1に示すように、アルミニウム合金板3は、一方の面(図1における下面)の一部が亜鉛系めっき鋼板2の亜鉛系めっき層2aと対向して配置されている。
亜鉛系めっき層2aの目付量は、特に限定されないが、例えば、亜鉛系めっき鋼板2が鋼板の両面に亜鉛系めっき層が形成されているものである場合、片面あたり100g/m2以下のものであることが望ましい。
亜鉛系めっき鋼板2の引張強さも、特に限定されるものではなく、例えば、自動車ボデーで用いられる270〜1470MPa級程度のものを用いることができる。
また、アルミニウム合金板3の板厚は、特に限定されるものではなく、例えば、自動車ボデー等で用いられる0.70〜2.0mm程度の厚さのものを用いることができる。
エポキシ樹脂5としては、グリシジルエーテル型、グリシジルエステル型等、ウェルドボンド接合の接着剤の硬化物に一般的に含まれるものが挙げられる。
このようなZn合金粒子6は、揮発法(蒸発凝固法)や、アトマイズ法(噴霧法)等の汎用の粉末製造方法で製造できる。
また、Zn合金粒子6における上記の元素の含有量が40質量%を超える場合、Zn合金粒子6が隙間液に溶解しにくいものとなるため、異種金属接合継手1の耐食性を充分に向上させることができない。
接着層4に含まれるZn合金粒子6の体積分率は、より一層耐食性および接合強度を向上させるために5%以上含有することが好ましく、より良好なナゲットが形成されるように30%以下含有することが好ましい。さらに好ましい範囲は10〜20%である。
なお、本発明において、Zn合金粒子6の粒径とは、光学顕微鏡を用いて観察した像を画像解析装置に取り込んで算出したZn合金粒子6の円相当径の平均値を意味する。
次に、本発明の異種金属の接合方法の一例として、図1に示す異種金属接合継手1の製造方法を例に挙げて説明する。
図1に示す異種金属接合継手1を製造するには、まず、一方の面または両面に亜鉛系めっき層2aが形成されている亜鉛系めっき鋼板2と、アルミニウム合金板3とを用意する。
本発明における接着剤の厚みは、亜鉛系めっき鋼板2とアルミニウム合金板3の一方に接着剤を塗布した場合は、その厚みであり、亜鉛系めっき鋼板2とアルミニウム合金板3の両方に接着剤を塗布した場合は、両者の合計の厚みである。接着剤の厚みは、良好な接着性を得るために、100μm以上300μm以下であることが好ましい。接着剤の厚みが上記範囲未満であっても上記範囲を超えても、接着性が低下する。
エポキシ樹脂を含む従来の接着剤としては、一液加熱硬化型接着剤や二液硬化型接着剤などを用いることができ、例えば、一液加熱硬化型接着剤であるIW2010(商品名;住友スリーエム株式会社製)、SW2214(商品名;住友スリーエム株式会社製)、X7416(商品名;住友スリーエム株式会社製)などを好ましく用いることができる。
スポット溶接の条件は、従来のスポット溶接と同様の条件で行うことができる。具体的には、例えば、溶接電流:12〜14kA、溶接時の電極加圧力:2〜5kN、通電時間:8〜12sycle、保持時間:0.08〜0.2msecとすることができる。
例えば、接着層4となる接着剤としてZn合金粒子6の含まれていないものを用いた場合、スポット溶接を行う際における通電性が悪くなり、抵抗発熱が不充分となったり、スポット溶接を行うことによる抵抗発熱が接着層に吸収されたりして、溶接部となる亜鉛系めっき鋼板2およびアルミニウム合金板3が溶融に至る充分な熱量が得られず、充分な接合強度が得られない場合がある。
表1、表2および下記に示す亜鉛系めっき鋼板と、アルミニウム合金板とを用意し、亜鉛系めっき鋼板に、アルミニウム合金板の一部を、以下に示す接着剤を介して対向して配置し、120℃で60分間加熱して接着剤を硬化させる硬化処理を行った。硬化後に得られた接着剤の厚みはほぼ100μmであった。
その後、以下に示す条件で、接着剤を介して重ねられた亜鉛系めっき鋼板とアルミニウム合金板とのスポット溶接を行い引張せん断強度および耐食性の評価用のNo.1〜57の試験体を得た。
また、アルミニウム合金板には、JIS H 4000に定められている厚み1mm、板幅30mm、長さ100mmのA5182P−O材を用いた。
接着剤としては、エポキシ樹脂を含む接着剤である一液エポキシ加熱硬化型接着剤スコッチウェルドIW2010(商品名;住友スリーエム株式会社製)に、表1および表2に示す組成および粒径のZn合金粒子を、表1および表2に示す体積分率となるように混合して分散させたものを用いた。
また、Zn合金粒子の粒径(平均サイズ)は、試験体の接着層の断面を光学顕微鏡で観察した像を画像解析装置に取り込んで、観察視野内のZn合金粒子の円相当径を算出し、その平均値を用いた。
また、Zn合金粒子の体積分率は、試験体の接着層の断面を光学顕微鏡で観察し、観察視野内の接着層におけるZn合金粒子の体積を算出した。
なお、接着層が、複数のZn合金粒子を含有する場合も同様に、試験体の接着層の断面を光学顕微鏡で観察してZn合金粒子の粒径の平均値および体積分率を算出した。
観察視野は、接着層厚み×2mmとして50倍で観察し、1試料につき20視野ずつ観察した。
スポット溶接は、電極としてDR形先端径6mm、先端曲率半径40mm(JIS C 9304)を用い、溶接電流13kA、溶接時の電極加圧力2.2kN、通電時間11sycle、保持時間0.1msecで行った。
また、耐食性は、自動車用外観腐食試験法のJASO M609−91試験を用いて行った。腐食の程度は継手をはがして、ナゲット周辺部を中心に目視で五段階評価(良い←1、2、3、4、5→悪い)し、評点3以上を良好とした。
また、No.1〜10の試験体は、Zn合金粒子の平均サイズおよび体積分率が好ましい範囲内であり、スポット溶接における初期の通電性が確保されたため、良好な引張せん断強度が得られた。
また、No.11〜31の試験体は、Zn合金粒子の平均サイズおよび体積分率が好ましい範囲内であり、スポット溶接における初期の通電性が確保されたため、良好な引張せん断強度が得られた。
また、No.32〜44の試験体は、Zn合金粒子の平均サイズおよび体積分率が好ましい範囲内であり、スポット溶接における初期の通電性が確保されたため、良好な引張せん断強度が得られた。
また、比較例であるNo.46、48、50、52、54、56の試験体は、Zn合金粒子の組成が本発明で規定された範囲よりも多いため、充分な耐食性が得られなかったケースである。
また、比較例であるNo.57の試験体は、接着剤としてZn合金粒子を含有していないものを用いたため、充分な耐食性が得られなかった。また、比較例であるNo.57の試験体は、スポット溶接における初期の通電性が不充分であったため、良好な引張せん断強度が得られなかった。
表4および下記に示す亜鉛系めっき鋼板と、アルミニウム合金板とを用意し、亜鉛系めっき鋼板に、アルミニウム合金板の一部を、以下に示す厚み100μmの接着剤を介して対向して配置し、120℃で60分間加熱して接着剤を硬化させる硬化処理を行った。
その後、実施例1と同じ条件で、接着剤を介して重ねられた亜鉛系めっき鋼板とアルミニウム合金板とのスポット溶接を行い引張せん断強度および耐食性の評価用の実施例1と同じ形状のNo.58〜66の試験体を得た。
また、アルミニウム合金板には、実施例1と同じものと、厚み1mm、板幅30mm、長さ100mmの国際合金規格AA6022−T4材とを用いた。
接着剤としては、実施例1と同じエポキシ樹脂を含む接着剤に、表4に示す組成および粒径のZn合金粒子を、表4に示す体積分率となるように混合して分散させたものを用いた。なお、Zn合金粒子の組成および体積分率は、実施例1と同様にして算出した。
また、No.58〜59、62〜63、66の試験体は、Zn合金粒子の平均サイズおよび体積分率が好ましい範囲内であり、スポット溶接における初期の通電性が確保されたため、良好な引張せん断強度が得られた。
また、No.61は、Zn合金粒子の平均サイズが大きく、接着層の接着性が損なわれたため、良好な引張せん断強度を得ることができなかった。
また、比較例であるNo.64は、体積分率が低いため、耐食性ならびに引張せん断強度ともに良好な値を得ることができなかった。
また、比較例であるNo.65は、Zn合金粒子の体積分率が高いため、接着層の接着性が損なわれ、良好な引張せん断強度を得ることができなかった。
Claims (5)
- 一方の面または両面に亜鉛系めっき層が形成されている亜鉛系めっき鋼板と、
一方の面の少なくとも一部が前記亜鉛系めっき層に対向して配置されたアルミニウム合金板と、
前記亜鉛系めっき鋼板と前記アルミニウム合金板とがスポット溶接されてなる溶接部と、
前記亜鉛系めっき鋼板と前記アルミニウム合金板との間の一部に配置された接着層とを有し、
前記接着層が、エポキシ樹脂と、Mg、Ni、Cr、Coから選ばれる一種の元素またはMg、Ni、Cr、Co、Alから選ばれる二種以上の元素を合計で1質量%以上40質量%以下含有し、残部がZnおよび不可避不純物からなる一種または二種以上のZn合金粒子とを含有し、前記Zn合金粒子を体積分率で1%以上40%以下含有するものであることを特徴とする異種金属接合継手。 - 前記Zn合金粒子の粒径が、50μm以上250μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の異種金属接合継手。
- 前記接着層が、平面視で前記溶接部の周囲を囲むように配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の異種金属接合継手。
- 一方の面または両面に亜鉛系めっき層が形成されている亜鉛系めっき鋼板の前記亜鉛系めっき層に、アルミニウム合金板の一方の面の少なくとも一部を、接着剤を介して対向して配置してスポット溶接を行う工程を備え、
前記接着剤として、エポキシ樹脂と、Mg、Ni、Cr、Coから選ばれる一種の元素またはMg、Ni、Cr、Co、Alから選ばれる二種以上の元素を合計で1質量%以上40質量%以下含有し、残部がZnおよび不可避不純物からなる一種または二種以上のZn合金粒子とを含有し、前記Zn合金粒子を体積分率で1%以上40%以下含有するものを用いることを特徴とする異種金属の接合方法。 - 前記接着剤の厚みを、100μm以上300μm以下とし、
前記Zn合金粒子の粒径を、50μm以上250μm以下とすることを特徴とする請求項4に記載の異種金属の接合方法。
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