JP5804381B2 - 舗装の補修方法 - Google Patents

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Description

本発明は、アスファルト舗装やコンクリート舗装の表面側に生じたポットホール、亀裂や陥没等の凹状の損傷箇所を補修することによって行う舗装の補修方法に関する。
従来、道路等のアスファルト舗装やコンクリート舗装の表面側には、ポットホール、亀裂や陥没等の凹状の損傷が発生することがある。かかる損傷は、特に梅雨時期や、冬期に発生することが多い。そして、かかる損傷が例えば道路に発生すると、交通事故等が引き起こされる可能性がある等、極めて危険であるため、かかる損傷が生じた舗装を補修する必要がある。
かかる舗装の補修方法としては、一般的に、損傷箇所に補修材を投入することによって該損傷箇所を補修する方法が採用されている。この方法によれば、損傷箇所に補修材を投入することによって、該損傷箇所が補修材で埋められて該損傷箇所が補修されることとなる。また、かかる補修方法は、一般的には、道路等をパトロールし、舗装の表面側に損傷箇所を発見した場合に実施することが多い。また、1回のパトロールで複数の損傷箇所を発見する場合が多く、かかる場合には、損傷箇所毎に順次損傷箇所の補修を行うこととなる。
この種の舗装の補修方法として、アスファルトと骨材とが予備混合されて収容袋等に収容されてなるアスファルト系常温合材を補修材として用い、該アスファルト系常温合材を損傷箇所に投入し、投入したアスファルト系常温合材をスコップ等で加圧して固める方法が、広く知られている。かかる補修方法によれば、補修の現場での施工時間を比較的短縮することが可能となる反面、補修後数時間で補修箇所が破損する場合が多いため、同じ損傷箇所を繰返し補修する必要が生じるおそれがある。
そこで、上記した舗装の補修方法として、例えば、急硬性セメントや早強性セメントといった超速硬系セメント(特許文献1、2参照)と骨材と水とを補修材として用い、これらを混合し、得られた混合物を損傷箇所に投入する方法が提案されている。かかる補修方法によれば、超速硬系セメントを用いることによって、補修材を比較的短時間で硬化させることができるため、補修材を投入してから該補修材が硬化するまでに要する時間を比較的短縮しつつ、補修箇所(投入された補修材)の耐久性を向上させることが可能となる。
特開2001−146458号公報 特許第4372275号
しかし、上記したような超速硬系セメントを多量に用いた場合、前記混合物が比較的短時間で硬化するため、該混合物を作製してから直ぐに補修箇所に投入する必要がある。このため、前記混合物を予め作り置きしておくことが困難となり、この場合には、現場毎に前記混合を行わなければならなくなって、現場での施工時間が比較的長くなるおそれがある。また、該混合物の硬化時間に追われて作業を行う必要が生じるおそれもある。
一方、前記混合物を作製してから損傷箇所に投入するまでの間、該混合物の硬化を防止する必要があるため、前記混合物中の超速硬系セメントの配合量を余り増やすことができない場合があり、このように超速硬系セメントが少ない場合には、前記混合物が硬化して強度を発現するまでに要する時間を十分に短くできないおそれもある。
このように、超速硬系セメントを用いた場合には、耐久性は十分であるが、作業性が低下するおそれがあり、また、強度の早期発現性を十分に短くできないおそれがある。
上記問題点に鑑み、本発明は、舗装の表面側に生じた損傷箇所に対して、作業性、強度の早期発現性及び耐久性に優れた舗装の補修方法を提供することを課題とする。
本発明の舗装の補修方法は、
舗装の表面側に生じた凹状の損傷箇所に補修材を投入することによって前記損傷箇所を補修する舗装の補修方法であって、
前記補修材として、セメントと骨材と水とを有するセメント組成物と、該セメント組成物を急結させる急結剤とを用い、
前記損傷箇所に前記セメント組成物を投入し、投入されたセメント組成物の上方から前記急結剤をさらに投入することを特徴とする。
ここで、「前記セメント組成物を急結させる」とは、前記急結剤と接触させたときの前記セメント組成物の硬化時間を、前記急結剤と接触させないときの前記セメント組成物の硬化時間よりも短くさせることをいう。
かかる構成によれば、補修材として、セメントと骨材と水とを有するセメント組成物と、該セメント組成物を急結させる急結剤とを用い、損傷箇所に、前記セメント組成物を投入し、投入されたセメント組成物の上方から、前記セメント組成物を急結させる急結剤をさらに投入することによって、前記損傷箇所に投入された前記補修材の表面側を、前記セメント組成物と前記急結剤との接触によって比較的短時間で硬化させ、その後、前記急結剤と接触していない前記補修材の底部側を硬化させて、補修材全体を硬化させることができる。
これにより、補修材の表面側において、比較的短時間で、例えば車輌の通過等に耐え得るような強度を発現させることができる。また、前記補修材の表面側が硬化した後、さらに前記補修材の残りの部分が硬化するため、補修材全体としての耐久性を向上させることができる。
加えて、前記急結剤と接触する前においては、前記セメント組成物が硬化するまでの時間を比較的長くすることができるため、例えば、現場と異なる別の場所にて予め前記セメント組成物を作り置きしておくこと等が可能となる。この場合、現場にて前記セメント組成物を作製する手間が省かれるため、現場での施工時間を短縮することができる。また、前記セメント組成物の硬化時間に追われることなく前記セメント組成物を作製することもできるため、作業が容易となる。また、一旦作製した前記セメント組成物を、複数の損傷箇所に用いることも可能となる。
一方、例えば、各現場にて前記セメント組成物を作製する場合であっても、上記と同様、前記セメント組成物の硬化時間に追われることなく前記セメント組成物を作製することができるため、作業が容易となる。
さらに、前記急結剤を投入する前においては、前記急結剤は前記セメント組成物の硬化時間に影響を及ぼさないため、前記急結剤の配合量を比較的増やすことが可能となる。これにより、補修材の表面側の強度の発現に要する時間を、比較的短縮することができる。
従って、前記舗装の補修方法は、舗装の表面側に生じた損傷箇所に対して、作業性、強度の発現性及び耐久性に優れる。
以上のように、本発明によれば、舗装の表面側に生じた損傷箇所に対して、作業性、強度の早期発現性及び耐久性に優れた舗装の補修方法を提供することができる。
舗装の表面側に損傷箇所が生じた状態を模式的に示す概略断面図 損傷箇所にセメント組成物が投入された状態を模式的に示す概略断面図 損傷箇所に急結剤が投入された状態を模式的に示す概略断面図
以下、本発明の一実施形態に係る舗装の補修方法について説明する。
本実施形態に係る舗装の補修方法は、舗装の表面側に生じた凹状の損傷箇所に補修材を投入することによって前記損傷箇所を補修する舗装の補修方法であって、前記補修材として、セメントと骨材と水とを有するセメント組成物と、該セメント組成物を急結させる急結剤とを用い、前記損傷箇所に前記セメント組成物を投入し、投入されたセメント組成物の上方から前記急結剤をさらに投入する。
舗装としては、例えば、道路、歩道、駐車場等のアスファルト舗装や、コンクリート舗装等が挙げられる。また、アスファルト舗装としては、例えば、図1に示すような、該アスファルト舗装1の主体をなす基層1bと、該基層1b上に積層された表層1aとを有するものが挙げられる。
前記凹状の損傷箇所としては、ポットホール、亀裂や陥没等が挙げられる。図1に示すようなアスファルト舗装1に生じた損傷箇所3としては、ポットホールが挙げられる。ポットホールは、一般に、以下のようにして生成される。すなわち、アスファルト舗装1の表層1a(表面側)に比較的小さな亀裂等が生じ、この亀裂に雨等の水が浸入し、該水が浸入した状態で亀裂の上を車輌等が通過することに起因して、亀裂を起点として表層1aが徐々に剥がされることによって生成される。また、このようなポットホールとして、例えば穴の直径が20〜30cm、深さが5cm程度のものが挙げられる。
前記補修材は、損傷箇所に投入されることによって、該損傷箇所を埋めて該損傷箇所を補修することが可能な材料である。
かかる補修材として、セメントと骨材と水とを有するセメント組成物と、該セメント組成物を急結させる急結剤とを用いる。
前記セメントは、該セメントと前記骨材と前記水とを混合して前記セメント組成物を作製したとき、該セメント組成物を硬化させ得るものである。
前記セメントとしては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメント、混合セメント、アルミナセメント、超速硬セメント等が挙げられる。
前記セメントは、前記セメント組成物を作製したとき、該セメント組成物のモルタルフローを、60分経過後に、120mm以上280mm以下、より好ましくは140mm以上250mm以下とさせ得るものであることが好ましい。かかるモルタルフローは、JIS R 5201「セメントの物理試験方法」によって測定されるものである。このように、前記セメントが、前記セメント組成物のモルタルフローを、60分経過後に、120mm以上280mm以下とさせ得るものである事によって、前記セメント組成物を作製してから損傷箇所に投入するまでの時間(可使時間)を、より長くすることができるため、例えば、セメント組成物を作り置きしておくことが可能となり、より作業性に優れる。
前記セメントは、前記セメント組成物と前記急結剤とを接触させたとき、これらの混合物の圧縮強度を、10分以内に3.5N/mm2以上とさせ得るものであることが好ましい。かかる圧縮強度は、JIS R 5201「セメントの物理試験方法」によって測定されるものである。また、後述する実施例に示すように、例えば、該圧縮強度と、舗装調査・試験法便覧B003に準じたゴルフボールの反発係数(GB係数)との相関関係を求め、GB係数の測定結果から上記圧縮強度を得る等、間接的に上記圧縮強度を測定してもよい。
このように、前記セメントが、前記セメント組成物と前記急結剤との混合物を10分以内に硬化させる得るものであることによって、前記補修材の表面側において、より短時間で強度を発現させることができる。例えば、後述するように交通規制を行った場合には、交通荷重に耐え得る強度を比較的早期に発現せることができ、比較的早期に交通規制を解除することが可能となる。
このようなセメントは、普通ポルトランドセメントであることが好ましい。前記セメントが普通ポルトランドセメントであることによって、前記可使時間をより長くすることができる。これにより、前記セメント組成物を予め練り置き等によって作製しておく場合には、より多量に作製しておくことが可能となるため、複数の損傷箇所での全体の補修時間をより短縮することが可能となる。
前記骨材としては、該骨材の最大粒径が5mm以下であることが好ましい。前記骨材の最大粒径が5mm以下であることによって、比較的底が浅いポットホールや比較的幅が小さいひび割れ等の損傷の補修に、より効果的に使用し得る、という利点がある。
また、上記骨材の最大粒径とは、重量で少なくとも95%が通るフルイのうち、最小寸法のフルイ目で示される骨材寸法を意味し、その最大粒径は、JIS A 1102「骨材のふるい分け試験方法」によって測定される。
前記セメント組成物と前記骨材との重量比は、100:30〜100:200であることが好ましく、100:50〜100:150であることがより好ましい。前記重量比が、100:30〜100:200であることによって、形成される硬化体(補修材)の強度をより高めることができる、という利点がある。
前記水の配合量については、前記セメントに対する水の重量比(水セメント比)が、20重量%〜60重量%であることが好ましく、30重量%〜50重量%であることがより好ましい。前記重量比が、20重量%〜60重量%であることによって、作業性と、強度発現性、特に早期の強度発現性との双方をより高めることができる、という利点がある。
前記急結剤は、該急結剤と接触させないときの前記セメント組成物の硬化時間よりも、前記急結剤と接触させたときの前記セメント組成物の硬化時間を短くさせ得るものである。
前記急結剤は、前記セメント組成物を急結させるものであれば、特に限定されるものではない。かかる急結剤としては、例えば、硫酸アルミニウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、塩化カルシウム、珪酸ナトリウム、硝酸塩、亜硝酸塩、仮焼ミョウバンを含むミョウバン、アルミン酸ナトリウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、カルシウムアルミネート類や、これらの水溶液等が挙げられる。また、前記急結剤は、これらのうち2種類以上が混合されたものであってもよい。
これらのうち、前記急結剤が、珪酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウムまたは水酸化アルミニウムであることが好ましい。前記急結剤が、珪酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウムまたは水酸化アルミニウムであることによって、比較的少量の添加で、前記補修材の表面側がより短時間でより高い強度を発現し得る、という利点がある。また、これにより、例えば、より短時間での交通開放が可能となる。
前記急結剤の投入量は、前記セメント組成物表面の単位面積当たり固形分換算で0.1kg/m2〜10kg/m2であることが好ましく、2kg/m2〜8kg/m2であることがより好ましい。かかる投入量が、前記セメント組成物表面の単位面積当たり固形分換算で0.1kg/m2〜10kg/m2であることによって、前記補修材の表面側がより短時間でより高い強度を発現し得る、という利点がある。また、これにより、例えば、より短時間での交通開放が可能となる。また前記急結剤を水溶液として投入する場合には、前記固形分換算での投入量を考慮して、前記水溶液の投入量を適宜設定することができる。
また、前記補修材は、前記セメント、前記骨材及び前記水の他に、AE剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤、流動化剤、水中不分離剤、増粘剤、遅延剤、促進剤、発泡剤、防錆剤、防水剤、収縮低減剤、膨張剤、防凍剤等を含有していてもよい。このように、前記補修材が、AE剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤、流動化剤、水中不分離剤、増粘剤、遅延剤、促進剤、発泡剤、防錆剤、防水剤、収縮低減剤、膨張剤、防凍剤を含有している場合には、前記セメント組成物または前記急結剤いずれか、または両方に混合させればよい。
本実施形態では、具体的には、例えばパトロールカー等の車輌によって舗装のパトロールを行い、舗装の表面側に生じた損傷箇所3(図1参照)を発見したとき、必要に応じて、損傷箇所3上を車輌が通過しないように、道路の交通を規制する。そして、前記補修材として、前記セメントと前記骨材と前記水とを用い、前記セメントと前記骨材とを混合した後、さらに前記水を加えて混合してセメント組成物を作製する。そして、作製したセメント組成物を、前記補修材10(図3参照)のうち、前記セメント組成物11を損傷箇所3に投入し(図2参照)、投入後直ちに、コテ等を用いて前記セメント組成物11の表面の粗仕上げを行う。粗仕上げが終了した直後、セメント組成物11の上方から急結剤12をさらに投入し(図3参照)、コテ等を用いて、前記セメント組成物11の表面側に急結剤を刷り込むようにして前記セメント組成物11の表面側と前記急結剤12とを混合して、最終的な仕上げを行う。このようにして、損傷箇所の補修を行う。また、上記のような交通規制を行った場合には、かかる補修終了後、交通規制を解除する。
前記急結剤を投入することによって、前記補修材の表面側が、前記セメント組成物と前記急結剤との接触によって比較的短時間で硬化し、その後、補修材の底部側(すなわち、前記急結剤と接触していない前記セメント組成物)が硬化して、前記補修材全体が硬化することとなる。
また、上記では、現場にて作成した前記セメント組成物を用いて損傷箇所の補修を行うような態様を示したが、本実施形態では、上記態様の他、例えば、現場と異なる別の場所にて予め前記セメントと前記骨材と前記水とを混合してセメント組成物を作製しておき、該セメント組成物を前記車輌に積載してパトロールを行い、損傷箇所を発見したとき、セメント組成物を補修箇所に投入するような態様を採用することもできる。また、その他、例えば、損傷箇所が複数である場合には、一の現場にて前記セメントと前記骨材と前記水とを混合し、得られたセメント組成物を該損傷箇所に投入し、その後、該セメント組成物を他の現場にて損傷箇所に投入するような態様を採用することもできる。
また、上記では、前記セメント組成物の上方から前記急結剤を投入した後、前記セメント組成物の表面側と前記急結剤とを混合する態様を採用したが、前記セメント組成物の表面側を前記急結剤との接触によって前記補修材の表面側を硬化させることが可能であれば、前記急結剤の投入後、前記セメント組成物の表面側と前記急結剤とを混合しないような態様を採用することもできる。
本実施形態の製造方法によれば、補修材として、セメントと骨材と水とを有するセメント組成物と、該セメント組成物を急結させる急結剤とを用い、損傷箇所に、前記セメント組成物を投入し、投入されたセメント組成物の上方から、前記セメント組成物を急結させる急結剤をさらに投入することによって、前記損傷箇所に投入された前記補修材の表面側を、前記セメント組成物と前記急結剤との接触によって比較的短時間で硬化させ、その後、前記急結剤と接触していない前記補修材の底部側を硬化させて、補修材全体を硬化させることができる。
これにより、補修材の表面側において、比較的短時間で、例えば車輌の通過等に耐え得るような強度を発現させることができる。また、前記補修材の表面側が硬化した後、さらに前記補修材の残りの部分が硬化するため、補修材全体としての耐久性を向上させることができる。
加えて、前記急結剤と接触する前においては、前記セメント組成物が硬化するまでの時間を比較的長くすることができるため、例えば、現場と異なる別の場所にて予め前記セメント組成物を作り置きしておくこと等が可能となる。この場合、現場にて前記セメント組成物を作製する手間が省かれるため、現場での施工時間を短縮することができる。また、前記セメント組成物の硬化時間に追われることなく前記セメント組成物を作製することもできるため、作業が容易となる。また、一旦作製した前記セメント組成物を、複数の損傷箇所に用いることも可能となる。
一方、例えば、各現場にて前記セメント組成物を作製する場合であっても、上記と同様、前記セメント組成物の硬化時間に追われることなく前記セメント組成物を作製することができるため、作業が容易となる。
さらに、前記急結剤を投入する前においては、前記急結剤は前記セメント組成物の硬化時間に影響を及ぼさないため、前記急結剤の配合量を比較的増やすことが可能となる。これにより、補修材の表面側の強度の発現に要する時間を、比較的短縮することができる。
従って、本実施形態の舗装の補修方法は、舗装の表面側に生じた損傷箇所に対して、作業性、強度の早期発現性及び耐久性に優れる。
また、上記のように補修材の表面側を硬化させることによって、該表面側において、車輌等の通過に耐え得る程度の強度を比較的早期に発現させることができるため、例えば、上記のように交通規制を行った場合には、比較的早期に交通規制を解除することができる。また、補修材の表面側で車輌の通過を可能としている間に、補修材の底面側の硬化を進行させることができるため、補修材全体が硬化した後には、該補修材全体で車輌等の通過に耐えることができ、補修材の耐久性を向上させることができる。
<実施例1>
補修材として、普通ポルトランドセメント、細骨材、水及び急結剤を用いて舗装の補修を行った。
具体的には、普通ポルトランドセメント(住友大阪セメント社製)と、細骨材(揖斐川産川砂)とを重量比1:1で混合し、前記普通ポルトランドセメントに対して40重量%(水セメント比40重量%)の水を加えてさらに混合して、前記セメント組成物としてのベース混練物を得た。この混練物を直径20〜30cm、深さ5cm程度のポットホールに投入し、コテを用いて粗仕上げ補修を行った。その後、直ちに、前記混練物の表面に、急結剤としての30重量%の珪酸ナトリウム水溶液を、混練物表面に対して10L/m2となるように(すなわち、混練物表面の単位面積当たり固形分換算で3kg/m2となるように)散布し、散布した急結剤を、コテを用いて前記混練物の表面側に刷り込ませて、仕上げ補修を行った。さらに、かかる仕上げ補修後、補修箇所をビニールシートで覆うことによって養生を行った。
上記養生は、次のようにして行った。すなわち、まず、舗装調査・試験法便覧B003に準じて測定したゴルフボールの反発係数(GB係数)と、JIS R 5201「セメントの物理試験方法」に準じて測定した圧縮強度との相関関係を予め調べ、圧縮強度が3.5N/mm2に相当するGB係数を求めた。その結果、GB係数が40%のとき、圧縮強度が3.5N/mm2に相当することがわかった。そして、上記した養生の開始後、舗装調査・試験法便覧B003に準じて、経時的にGB係数を測定し、GB係数が40%に達したとき、圧縮強度が3.5N/mm2に達したと判断して、養生を終了した。
このときの、前記普通ポルトランドセメントと前記細骨材と水との混合から仕上げ補修終了までに要した時間(現場施工時間)と、長期耐久性試験との結果を表1に示す。また、これら結果に加え、養生開始から補修材の上記した圧縮強度が3.5N/mm2に到達するまでの時間(養生時間)と、ベース混練物における上記した60分経過後のモルタルフロー(表1にフローとして表す。)との結果を、表2に示す。
なお、モルタルフローは、JIS R 5201「セメントの物理試験方法」によって測定した。
また、長期耐久性試験は、ラベリング試験用型枠(厚さ10cm×幅250cm×長辺300cm×短辺170cm)に、上記と同様にベース混練物を投入した後、急結剤を散布し、養生終了後、回転ラベリング試験機(回転スパイクチェーン型)による走行試験を行い、補修材破損までの回転数を測定する方法で行った。また、測定結果が、10000回転以上であった場合を◎、1000回転以上10000回転未満であった場合を○、1000回転未満であった場合を×と評価した。
また、上記細骨材の最大粒径を、JIS A 1102「骨材のふるい分け試験方法」によって測定したところ、5mmであった。
<比較例1>
補修材として、アスファルト常温合材を用いて舗装の補修を行った。
具体的には、上記と同程度の大きさのポットホールに対して、収容袋に収容されたアスファルト常温合材(製品名:タフストック、昭和瀝青工業社製)を、該収容袋から取り出して投入し、投入したアスファルト常温合材に対して上方からスコップで加圧することによって、該アスファルト常温合材を固めた。
このときの、アスファルト常温合材を収容袋から取り出してからスコップで固めるまでに要した時間(現場施工時間)と、養生時間と、長期耐久性試験の結果を表1に示す。
なお、長期耐久性試験は、実施例1と同様にして行った。
<比較例2>
補修材として、超速硬系セメント系補修材を用いて舗装の補修を行った。
具体的には、上記と同程度の大きさのポットホールに対して補修を行った。すなわち、超速硬系セメント(製品名:マイルドジェットスーパー、住友大阪セメント社製)と、実施例1で用いたのと同様の細骨材とを重量比1:1で混合し、この混合物に、超速硬セメントに対して40重量%の水を加えてさらに混合し(水セメント比40重量%)、混合後直ちに、混合物(ベース混練物)をポットホールに投入し、コテを用いて表面の仕上げを行った。さらに、かかる仕上げ補修後、補修箇所をビニールシートで覆うことによって養生を行った。
このときの、超速硬系セメントと細骨材と水との混合から仕上げ補修終了までに要した時間(現場施工時間)と、補修材の上記した養生時間と、長期耐久性試験との結果を表1に示す。
なお、長期耐久性試験は、実施例1と同様にして行った。
Figure 0005804381
表1に示すように、実施例1では、比較例1及び2と比較して、現場施工時間及び養生時間の短縮を図りつつ、補修材の強度の早期発現を図ることができ、さらに補修材の長期耐久性の向上をも図ることができた。すなわち、実施例1では、舗装の表面側に生じた損傷箇所に対して、作業性、強度の早期発現性及び耐久性に優れた補修を行うことができた。
<実施例2>
珪酸ナトリウムの添加量を表2に示すようにすること以外は実施例1と同様にして、補修を行った。そして、実施例1と同様にして、ベース混練物のモルタルフローと、現場施工時間と、養生時間と、長期耐久性試験とを調べた。結果を表2に示す。なお、表2には、実施例1の結果も併せて示す。
<実施例3、4>
表2に示すように、普通ポルトランドセメントに代えて超速硬系セメント(製品名:マイルドジェットスーパー、住友大阪セメント社製)を用い、急結剤としてアルミン酸ナトリウム(商品名P100、浅田化学工業社製)を用い、さらに、該アルミン酸ナトリウムを、表2に示すような添加量で粉体状のまま散布したこと以外は実施例1と同様にして、補修を行った。そして、実施例1と同様にして、ベース混練物のモルタルフローと、前記超速硬系セメントと前記細骨材と水との混合から仕上げ補修終了までに要した時間(現場施工時間)と、補修材の上記した養生時間と、長期耐久性試験とを調べた。結果を表2に示す。
<実施例5、6>
急結剤として、実施例3、4と同様のアルミン酸ナトリウムを用い、表2に示す添加量で粉体状のまま散布したこと以外は実施例1と同様にして、補修を行った。そして、実施例1と同様にして、ベース混練物のモルタルフローと、前記普通ポルトランドセメントと前記細骨材と水との混合から仕上げ補修終了までに要した時間(現場施工時間)と、補修材の上記した養生時間と、長期耐久性試験とを調べた。結果を表2に示す。
<実施例7、8>
急結剤として、水酸化アルミニウムを用い、表2に示す添加量で粉体状のまま散布したこと以外は実施例1と同様にして、補修を行った。そして、前記普通ポルトランドセメントと前記細骨材と水との混合から仕上げ補修終了までに要した時間(現場施工時間)と、補修材の上記した養生時間と、長期耐久性試験を調べた。結果を表2に示す。
Figure 0005804381

Claims (1)

  1. 舗装の表面側に生じた凹状の損傷箇所に補修材を投入することによって前記損傷箇所を補修する舗装の補修方法であって、
    前記補修材として、セメントと骨材と水とを有するセメント組成物と、該セメント組成物を急結させる急結剤とを用い、
    前記損傷箇所に前記セメント組成物を投入し、投入されたセメント組成物の上方から前記急結剤をさらに投入し、前記セメント組成物の表面部と前記急結剤とを混合することを特徴とする舗装の補修方法。
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