JP5803007B2 - アルデヒドの製造方法 - Google Patents

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本発明は、有機リン化合物由来の配位子及び遷移金属を一種以上含む錯体の存在下、原料オレフィンを水素及び一酸化炭素とヒドロホルミル化反応させることによりアルデヒドを製造する方法に関する。本発明はまた、更にアルコールを製造する方法に関する。
従来より、周期表第8〜10族遷移金属と有機リン化合物由来の配位子の存在下に、原料オレフィンを水素及び一酸化炭素と反応させてアルデヒドを製造するヒドロホルミル化反応は広く知られている。
例えば、式(A)に示すように、炭素数が3以上のオレフィンと水素及び一酸化炭素とのヒドロホルミル化反応においては、直鎖型のアルデヒドと分岐型のアルデヒドが生成する。直鎖型のアルデヒドの方が幅広い用途があることから、一般的に需要が高いため、下記式(A)の反応系においては、アルデヒドの直鎖選択性(以下、「L/B比」と称すことがある。)を高めるための種々の遷移金属−有機リン配位子触媒が開発されてきた(式(A)において、Rはアルキル基等の脂肪族炭化水素基を表す。)。
Figure 0005803007
その中でも活性の高さという点でロジウムを含む有機リン配位子を有する錯体触媒が主に用いられているが、ロジウムは非常に高価であるため、プロセス稼動開始時の触媒コストが非常に高くなったり、プロセス運転時も触媒回収によるロジウムの再利用を十分に行わなければ、触媒コストが更に高くなったりするなどの問題がある。
一方、ルテニウムや鉄は、ロジウムよりも遥かに安価な金属であるが、上記式(A)で示されるようなヒドロホルミル化反応に用いる錯体触媒の金属として利用した場合、ロジウムを含む有機リン配位子を有する錯体に比べ、活性及びアルデヒドの直鎖選択性の点で十分ではなかった。例えば、非特許文献1や非特許文献2には、シクロペンタジエニル基を有するルテニウムや鉄を含有する錯体を利用した1−オクテンのヒドロホルミル化反応が記載されているが、触媒活性は低く、1−オクテンの転化率に対するアルデヒドの選択性が20%程度と低い問題があるほか、アルデヒドの直鎖選択性(L/B比)は2〜4程度と低い。
また、非特許文献3には、ロジウムを含有する錯体と二座ホスフィンを用いたヒドロホルミル化反応系にシクロペンタジエニル基を有するルテニウム錯体を共存させて、原料オレフィンからアルコールを生成する反応が記載されている。しかしながら、非特許文献3に記載のシクロペンタジエニル基を有するルテニウム錯体は、反応系中で生成するアルデヒドを水添してアルコールに変換する反応に寄与しているにすぎない。その理由として、反応系中でのロジウム:二座ホスフィン:ルテニウムの存在比が1:2:2.5であるため、二座ホスフィンがロジウムに対して優先的に1:1で配位すれば、ルテニウムに対しては40%分の二座ホスフィンしか存在していないことが挙げられる。
更に、非特許文献3には、水酸基を置換基として持つシクロペンタジエニル基を有するルテニウム錯体を利用した直鎖選択性の高いアルコールの製造方法が記載されているが、前述したようにロジウムの共存が必要であり、触媒コストの点で不利であるほか、ロジウムとルテニウムの二種類の金属を用いなければならないことが工業プロセスの運転管理を複雑にする可能性があった。
J. Mol. Catal., 1978, 4, p205〜216 J. Mol. Catal., 1981, 10, p213〜221 Angew. Chem. Int. Ed., 2010, 49, p4488〜4490
上述した通り、従来は、アルデヒドを製造する方法として主にロジウムを含む錯体を用いたヒドロホルミル化法が知られているが、ロジウムは貴金属であるため触媒コストが高くなる懸念や市況変動による価格振れの影響を受け易い懸念がある。そのため、ロジウムよりも遥かに安価な金属を用いることで、ロジウムを含む錯体を用いた場合と同等のL/B比でアルデヒドが製造できる工業的に有用な方法が求められてきた。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、炭素数2以上の原料オレフィンを、水素及び一酸化炭素と反応させることで対応するアルデヒドを製造するにあたって、触媒コストを低減させ、直鎖選択性の高いアルデヒドを安価に製造することができる工業的に有利な方法を提供することにある。更に、遷移金属錯体に特定の置換基を導入することで直鎖選択性の高いアルコールも製造することができる利便性の高い方法を提供することにある。
本発明者らは、ロジウムよりも遥かに安価な金属であるルテニウムや鉄からなる錯体に注目し、ヒドロホルミル化反応用の錯体を鋭意検討していく中で、有機リン化合物由来の配位子とある特定の環状炭化水素構造を有するルテニウム錯体を組み合わせ、さらにルテニウムを含む錯体に対して有機リン化合物由来の配位子を過剰に存在させることによって、効率的にヒドロホルミル化反応が進行することを見出し本発明に到達した。また、特定構造の置換基を有するシクロペンタジエニル基を持つルテニウムや鉄触媒を用いた場合には、生成したアルデヒドを反応系内でアルコールにまで変換可能であることを見出し本発明に到達した。
即ち本発明の要旨は、下記(1)に存する。
(1) 座の有機リン化合物由来の配位子と下記式(a)で示される構造を有する鉄又はルテニウムを一種以上含む錯体の存在下、炭素原子数2以上の原料オレフィンを水素及び一酸化炭素と反応させることによりアルデヒドを製造する方法であって、前記二座の有機リン化合物が下記式(c−1)〜(c−3)のいずれかで表される基本骨格を有し、鉄又はルテニウムを一種以上含む錯体に対する該座の有機リン化合物由来の配位子のモル比が1以上20以下であることを特徴とするアルデヒドの製造方法。
Figure 0005803007
(上記式(a)中、Mは鉄又はルテニウムであり、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリーロキシ基、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、パーフルオロアルキル基、トリアルキルシリル基、ホルミル基、アシル基、アシロキシ基、エステル基、ホスフィノ基及びカルボキシ基からなる群より選ばれる基であり、これらの基は更に置換基を有していてもよい。また、RとR、RとR、RとR、RとR、及びRとRは互いに連結して環を形成してもよく、形成された環は更に置換基を有していてもよい。)
Figure 0005803007
(上記式(c−1)中、R 11 〜R 18 は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、並びに、鎖状又は環状の、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アミノ基、アシル基、アシロキシ基、カルボキシ基、及びエステル基からなる群より選ばれる基を表す。これらの基は、更に置換基を有していても良く、任意の2つの置換基が結合を形成して環状構造を形成しても良い。
また、R 21 〜R 24 は、それぞれ独立に、鎖状又は環状の、アルキル基、若しくはアリール基を表す。これらの基は、更に置換基を有していても良く、R 21 とR 22 、及びR 23 とR 24 においては、それぞれ、互いに結合を形成して環状構造を形成しても良い。)
Figure 0005803007
(上記式(c−2)中、R 31 〜R 36 は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、並びに、鎖状又は環状の、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アミノ基、アシル基、アシロキシ基、カルボキシ基、及びエステル基からなる群より選ばれる基を表す。これらの基は、更に置換基を有していても良く、任意の2つの置換基が結合を形成して環状構造を形成しても良い。
また、R 41 〜R 44 は、それぞれ独立に、鎖状又は環状の、アルキル基、若しくはアリール基を表す。これらの基は、更に置換基を有していても良く、R 41 とR 42 、及びR 43 とR 44 においては、それぞれ、互いに結合を形成して環状構造を形成しても良い。
また、A 1 及びA 2 は、それぞれ独立に、O、S、SiR 、NR 、CR であり、ここで、R 、R 、R 、R 及びR は、それぞれ独立に、水素原子、鎖状又は環状の、アルキル基、若しくはアリール基である。)
Figure 0005803007
(上記式(c−3)中、R 51 〜R 58 は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、並びに、鎖状又は環状の、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アミノ基、アシル基、アシロキシ基、カルボキシ基、及びエステル基からなる群より選ばれる基を表す。これらの基は、更に置換基を有していても良く、任意の2つの置換基が結合を形成して環状構造を形成しても良い。
また、R 61 〜R 64 は、それぞれ独立に、鎖状又は環状の、アルキル基、若しくはアリール基を表す。これらの基は、更に置換基を有していても良く、R 61 とR 62 、及びR 63 とR 64 においては、それぞれに、互いに結合を形成して環状構造を形成しても良い。)
本発明によれば、原料オレフィンを水素及び一酸化炭素と反応させてアルデヒド又はアルコールを製造する方法において、ルテニウムや鉄といった安価な金属錯体触媒を用い、触媒コストを大幅に低減した上で、直鎖選択性の高いアルデヒド又はアルコールの製造が可能となる。
以下、本発明につき詳細に説明する。
本発明のアルデヒドの製造方法は、多座の有機リン化合物由来の配位子(以下「多座有機リン配位子」と称す場合がある。)と下記式(a)で示される構造を有する遷移金属を一種以上含む錯体(以下「遷移金属錯体(a)」と称す場合がある。)の存在下、炭素原子数2以上の原料オレフィンを水素及び一酸化炭素と反応させることによりアルデヒドを製造する方法であって、遷移金属錯体(a)に対する多座有機リン配位子のモル比が1以上20以下であることを特徴とする。
Figure 0005803007
(上記式(a)中、Mはロジウムを除く周期表の第8〜10族遷移金属、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリーロキシ基、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、パーフルオロアルキル基、トリアルキルシリル基、ホルミル基、アシル基、アシロキシ基、エステル基、ホスフィノ基及びカルボキシ基からなる群より選ばれる基であり、これらの基は更に置換基を有していてもよい。また、RとR、RとR、RとR、RとR、及びRとRは互いに連結して環を形成してもよく、形成された環は更に置換基を有していてもよい。)
また、本発明のアルコールの製造方法は、多座の有機リン化合物由来の配位子(多座有機リン配位子)と遷移金属を一種以上含む錯体の存在下、炭素原子数2以上の原料オレフィンを水素及び一酸化炭素と反応させることによりアルコールを製造する方法であって、該遷移金属を一種以上含む錯体が下記式(b)で表される構造を有する錯体(以下「遷移金属錯体(b)」と称す場合がある。)であることを特徴とするアルコールの製造方法。
Figure 0005803007
(上記式(b)中、Mはロジウムを除く周期表の第8〜10族遷移金属、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリーロキシ基、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、パーフルオロアルキル基、トリアルキルシリル基、ホルミル基、アシル基、アシロキシ基、エステル基、ホスフィノ基及びカルボキシ基からなる群より選ばれる基であり、これらの基は更に置換基を有していてもよい。Xはヘテロ原子を含有し、該ヘテロ原子が水素原子と結合する連結基を表す。また、RとR、RとR、RとR、RとX、及びXとRは互いに連結して環を形成してもよく、形成された環は更に置換基を有していてもよい。)
<遷移金属錯体(a),遷移金属錯体(b)>
まず、本発明で用いる遷移金属錯体(a)及び遷移金属錯体(b)について説明する。
本発明に係る遷移金属錯体(a)及び遷移金属錯体(b)に含まれる遷移金属は、ロジウムを除く周期表第8〜10族(IUPAC無機化学命名法改訂版(1998)による)の遷移金属であり、具体的には、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金が挙げられる。これらの金属の内、周期表第8族遷移金属である鉄、ルテニウム、オスミウムが好ましく、低毒性、高反応性という理由から、鉄又はルテニウムが更に好ましく、活性が最も高いという理由でルテニウムが特に好ましい。遷移金属は1種類を用いても、2種以上を併用してもよい。
これらの金属を本発明に係る遷移金属錯体(a)及び遷移金属錯体(b)として用いる際、通常、その金属を含む化合物(以下、「金属化合物」と略記することがある)を用いるが、具体的な金属化合物としては、鉄化合物、ルテニウム化合物、オスミウム化合物、コバルト化合物、イリジウム化合物、ニッケル化合物、パラジウム化合物及び白金化合物の群から選ばれる1種以上の化合物が挙げられる。その中でも、鉄化合物、ルテニウム化合物、及びオスミウム化合物が好ましく、更に好ましくは鉄化合物及びルテニウム化合物であり、最も好ましくはルテニウム化合物である。
本発明のアルデヒドの製造方法において、用いられる遷移金属錯体(a)は、前記式(a)で示されるように、遷移金属Mにシクロペンタジエニル基が配位した構造を有するという構造的特徴を備える。
式(a)において、R〜Rのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、好ましくはフッ素原子が挙げられる。
〜Rのアルキル基としては、炭素数1〜30、好ましくは1〜15の直鎖又は分岐又は環状のアルキル基が挙げられる。なお、アルキル基においては、部分的に炭素−炭素二重結合を有しているものも包含される。
〜Rのアルコキシ基としては、炭素数1〜30、好ましくは1〜15の直鎖又は分岐のアルコキシ基が挙げられる。
〜Rのアリール基としては、炭素数3〜30、好ましくは5〜22の置換基を有していてもよいアリール基、例えばフェニル基、4−メチルフェニル基、4−t−ブチルフェニル基、2,4−ジ−t−ブチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、4−クロロフェニル基、4−メトキシフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−フェナントレニル基等が挙げられる。なお、本アリール基には、窒素原子、酸素原子、硫黄原子といった炭素原子以外の原子を芳香環形成原子に含んだ複素環式芳香族化合物由来の基(ヘテロアリール基)も包含される。具体的なヘテロアリール基としては、ピロリル基、フラニル基、チオフェニル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ピラゾリル基、ピリミジル基、ピリジル基などが挙げられる。
〜Rのアリーロキシ基としては、炭素数3〜30、好ましくは5〜22の置換基を有していてもよいアリーロキシ基が挙げられる。なお、本アリーロキシ基においても、酸素原子の先のアリール基としてヘテロアリール基を含む。
〜Rのアミノ基としては、窒素原子上の2つの置換基として水素原子、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数3〜30のアリール基を独立して有するアミノ基、好ましくは窒素原子上の2つの置換基として炭素数1〜15の直鎖又は分岐又は環状のアルキル基、炭素数5〜22の置換基を有していてもよいアリール基を独立して有するアミノ基が挙げられる。
〜Rのアミド基としては、窒素原子上の2つの置換基として水素原子、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数3〜30のアリール基を独立して有するアミド基、好ましくは窒素原子上の2つの置換基として水素原子、炭素数1〜15の直鎖又は分岐又は環状のアルキル基、炭素数5〜22の置換基を有していてもよいアリール基を独立して有するアミド基が挙げられる。
〜Rのパーフルオロアルキル基としては、炭素数1〜30のパーフルオロアルキル基、好ましくは炭素数1〜15のパーフルオロアルキル基が挙げられる。
〜Rのトリアルキルシリル基としては、珪素原子上の3つの置換基として炭素数1〜30のアルキル基を独立して有するシリル基、好ましくは珪素原子上の3つの置換基として炭素数1〜15の直鎖又は分岐又は環状のアルキル基が挙げられる。
〜Rのアシル基としては、炭素数1〜30のアルキル基、又は炭素数3〜30のアリール基をカルボニル基の先に有するアシル基、好ましくは炭素数1〜15の直鎖又は分岐又は環状のアルキル基、又は炭素数5〜22の置換基を有していてもよいアリール基をカルボニル基の先に有するアシル基が挙げられる。
〜Rのアシロキシ基としては、炭素数1〜30のアルキル基、又は炭素数3〜30のアリール基をカルボニル基の先に有するアシロキシ基、好ましくは炭素数1〜15の直鎖又は分岐又は環状のアルキル基、又は炭素数5〜22の置換基を有していてもよいアリール基をカルボニル基の先に有するアシロキシ基が挙げられる。
〜Rのエステル基としては、炭素数1〜30のアルキル基、又は炭素数3〜30のアリール基を酸素原子の先に有するエステル基、好ましくは炭素数1〜15の直鎖又は分岐又は環状のアルキル基、又は炭素数5〜22の置換基を有していてもよいアリール基を酸素原子の先に有するエステル基が挙げられる。
〜Rのホスフィノ基としては、リン原子上の2つの置換基として炭素数1〜30のアルキル基、又は炭素数3〜30のアリール基を独立して有するホスフィノ基、好ましくは炭素数1〜15の直鎖又は分岐又は環状のアルキル基、又は炭素数5〜22の置換基を有していてもよいアリール基を独立して有するホスフィノ基が挙げられる。
とR、RとR、RとR、RとR、RとRが互いに連結して環を形成している場合、形成される環としては、例えば、シクロペンテン環、シクロヘキセン環等の炭素数5〜20の脂肪族炭化水素環や、ベンゼン環、ジメチルベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環等の炭素数6〜20の芳香族炭化水素環などが挙げられる。
〜Rとしては、これらのうち、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜15の直鎖又は分岐のアルキル基、炭素数5〜22の置換基を有していてもよいアリール基であることが好ましい。
また、R〜Rの基、或いは、RとR、RとR、RとR、RとR、RとRが互いに連結して形成された環が有していてもよい置換基としては、反応系に悪影響を及ぼす虞のないものであれば特に制限されないが、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、ホルミル基、鎖状又は環状の、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールアルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルアリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基、アミド基、アシル基、又はアシロキシ基の中から選ばれるものが挙げられる。
なお、R〜Rは、置換基を有する場合は、その置換基を含めて、各々の分子量が400以下、特に300以下で、とりわけ200以下で合計で1200以下、特に800以下であることが好ましい。R〜Rの分子量が大き過ぎると反応条件下で反応溶媒中に溶解し得ず、触媒活性を十分に発揮し得ないおそれがある。
遷移金属錯体(a)を構成する具体的なシクロペンタジエニル基の例としては、以下のCp−1〜Cp−45の構造を挙げることができる(以下において、Phはフェニル基を表す。)。
Figure 0005803007
Figure 0005803007
Figure 0005803007
これらの中でもR〜Rがそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アリール基、或いはこれらが互いに連結して環を形成しているものであることが好ましく、具体的には上記のCp−1〜Cp−25が好ましい。
一方、Rが−X−H基(Xはヘテロ原子を含有し、該ヘテロ原子が水素原子と結合する連結基を表す。)で表される前記式(b)のシクロペンタジエニル基が配位した構造を持つ遷移金属錯体(b)は、アルコールの製造触媒として機能する。これは、同触媒によってヒドロホルミル化反応が進行しアルデヒドが製造されると共に、同触媒の−X−H基によるホルミル基の選択的な水素化作用により、生成したアルデヒドが効率的にアルコールにまで還元されるためである。
式(b)において、R〜Rの、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリーロキシ基、アミノ基、アミド基、パーフルオロアルキル基、トリアルキルシリル基、アシル基、アシロキシ基、エステル基、ホスフィノ基、RとR、RとR、RとR、RとX、XとRが互いに連結して環を形成している場合の形成された環、更には、R〜Rの基やこれらが連結して形成された環が有していてもよい置換基としては、式(a)におけるR〜Rの基、環及びその置換基として例示したものが挙げられ、その好適なものについても同様である。
式(b)において、連結基Xとしては、酸素原子、又は水素原子もしくはアルキル基又はアリール基を置換基として有する窒素原子(即ち、−NH−又は−NR−(Rはアルキル基又はアリール基))、又は当該窒素原子がアルキレン基やカルボニル基を介在してシクロペンタジエニル基に結合する基(即ち、−(CH−NH−、−(CH−NR−、−(C=O)−NH−、又は−(C=O)−NR−(nは1〜5までの整数、Rはアルキル基又はアリール基))が好ましく、窒素原子に置換したアルキル基としては、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10の直鎖又は分岐のアルキル基が挙げられ、窒素原子に置換したアリール基としては、好ましくは炭素数3〜30、より好ましくは炭素数5〜15の置換基を有していてもよいアリール基が挙げられる。
なお、R〜Rは、置換基を有する場合は、その置換基を含めて、各々の分子量が400以下、特に300以下で、とりわけ200以下で、R〜RとX−Hとの合計で1200以下、特に800以下であることが好ましい。R〜R、X−Hの分子量が大き過ぎると反応条件下で反応溶媒中に溶解し得ず、触媒活性を十分に発揮し得ないおそれがある。
遷移金属錯体(b)を構成する具体的なシクロペンタジエニル基の例としては、以下のCp−46〜Cp−75の構造を挙げることができる。
これらの中でも式(b)におけるXが、酸素原子、又は水素原子もしくは炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数6〜14のアリール基を置換基として有する窒素原子であるものが好ましい。すなわち、シクロペンタジエニル環にヒドロキシ基、又は水素原子を少なくとも一つ有するアミノ基が直接結合した構造であるシクロペンタジエニル基が好ましく、具体的には、Cp−46〜Cp−54、及びCp−59〜Cp−70が好ましい。
Figure 0005803007
Figure 0005803007
なお、本発明で用いる遷移金属錯体(a)及び遷移金属錯体(b)は、その反応系において存在していればよく、用いる原料錯体の構造や触媒分離塔など他の工程における錯体の構造には依存しない。
具体例を示しながら説明すると、下記Cp’−1〜Cp’−15は、シクロペンタジエンの構造にカルボニル基やアルケニル基が組み込まれたような構造をしているが、これらの錯体は、後掲の式(B)や式(C)のように水素ガスやアルコール等の水素供与体が存在する反応条件下ではカルボニル基の酸素原子やアルケニル基の末端炭素原子に水素が結合し、上で述べてきた五員環の5つの炭素原子で金属に結合(η−配位)したシクロペンタジエニル基に変換されることが知られている。すなわち、そうしたシクロペンタジエン配位(ジエン部分の4つの炭素原子で金属に配位:η−配位)錯体も本発明において好ましく用いることができる。また、蒸留塔底のように水素ガス濃度が低下する場所において元のシクロペンタジエンの構造(η−配位)に戻ったとしても、反応器に触媒がリサイクルされれば容易に五員環の5つの炭素原子で金属に結合(η−配位)したシクロペンタジエニル配位錯体に戻るため、本発明において好ましく用いることができる。
Figure 0005803007
Figure 0005803007
シクロペンタジエニル基を有する遷移金属錯体(a)及び遷移金属錯体(b)は、それぞれ対応するシクロペンタジエンをナトリウム等のアルカリ金属と反応させることで生成するアルカリ金属−シクロペンタジエニド塩と、遷移金属のハロゲン化物との反応等によって合成することができる。
通常、一つのシクロペンタジエニル基を有する遷移金属錯体は、錯体の安定化のために、当該シクロペンタジエニル基以外に他の配位子を有している。シクロペンタジエニル基を除いた残りの部分の錯体の形態としては、ハロゲン化合物、硫酸塩、硝酸塩等の無機塩の他、酢酸塩、アセチルセトナト化合物、アルケン配位化合物、アミン配位化合物、ピリジン配位化合物、一酸化炭素配位化合物、ホスフィン配位化合物、ホスファイト配位化合物等が具体例として挙げられる。
本発明における式(a),(b)で表されるシクロペンタジエニル基又はシクロペンタジエン配位子をCpで記載した上で、本発明に係る遷移金属錯体(a)及び(b)の原料化合物として好ましく用いることができる具体的な化合物例を示すと、鉄化合物としては、CpFe(CH)(CO)、CpFeBr(CO)、CpFeI(CO)、CpFe(CO)、[CpFe(CO)、CpFe(π−allyl)(CO)、CpFe(CO)(PPh)(Ac)等が挙げられる。
ルテニウム化合物としては、CpRuCl(CO)、CpRuCl(PPh、CpRuH(CO)、CpRu(cod)Cl、CpRu(CO)、[CpRu(OCH)]、[CpRu(acac)]、[CpRu(CO)、[CpRuCl等が挙げられる。
オスミウム化合物としては、CpOsCl(PPh、CpOs(CH)(CO)、[CpOs(CO)]等が挙げられる。
コバルト化合物としては、CpCo(PPh2、CpCo(cod)、CpCo(CO)、[CpCo(NO)]2等が挙げられる。
イリジウム化合物としては、CpIr(cod)、CpIr(CH(Py)Cl、CpIr(CH(CO)、[CpIrCl、[CpIrI等が挙げられる。
ニッケル化合物としては、CpNiCl(PPh)、[CpNi(CO)]2、CpNi(π−allyl)等が挙げられる。
パラジウム化合物としては、CpPd(π−allyl)、CpPd(CH、CpPdCl(PPh),CpPdCl(CO)、CpPd(OAc)(P(i−Pr))等が挙げられる。
白金化合物としては、CpPt(CH、CpPt(CHCl、CpPtCl(CO)、CpPtI(PPh)、CpPt(PPh、CpPt(CH)(cod)が挙げられる。
上述の例示において、π−allylはパイ−アリル基(即ち、CH=CH−CH−基)を、codは1,5−シクロオクタジエンを、Acはアセチル基を、Ph基はフェニル基を、acacはアセチルアセトナト基を、Pyはピリジン、i−Prはイソプロピル基をそれぞれ表す。後掲の実施例においても同様である。
本発明において、遷移金属錯体(a)及び遷移金属錯体(b)は、いずれも前述の式(a)又は(b)で表されるシクロペンタジエニル基を有した遷移金属錯体であれば、それ以外の部分の錯体の形態には特に制限されず、活性な金属錯体種は単量体、二量体及び/又は多量体であっても構わない。また、これらの遷移金属錯体の使用に際しては、ある一種類の特定の金属錯体を用いても、同一金属種であって複数の錯体を併用しても、また、異なる二種以上の金属種の錯体を共存させて用いても構わない。
本発明に係る遷移金属錯体(a)又は遷移金属錯体(b)の使用量については特に制限はないが、触媒活性と経済性の観点から、通常、反応器内の反応液中の遷移金属錯体(a)又は遷移金属錯体(b)の濃度として、通常1ppm以上、好ましくは10ppm以上、より好ましくは100ppm以上である。一方、通常10000ppm以下、好ましくは5000ppm以下、より好ましくは2000ppm以下である。
<多座有機リン配位子>
次に、本発明に用いることができる多座の有機リン系化合物由来の配位子について述べる。
本発明に係る多座有機リン配位子に用いられる多座の有機リン化合物は、ヒドロホルミル化反応条件下で安定であり、反応系中で遷移金属にリン原子で配位するものであれば特に限定されない。当該有機リン化合物の分子量は、触媒活性を上げるため、反応系で溶解し得るものが好ましいことから、通常3000以下、好ましくは2000以下、より好ましくは1500以下であり、通常50以上、好ましくは100以上、より好ましくは150以上である。
多座の有機リン化合物の中でも、遷移金属に2つのリンでキレート配位する二座の有機リン化合物が好ましい。また、金属に配位可能なリン原子であるためには三価のリン原子である必要があるが、三価のリン原子には3つの共有結合部位があり、それぞれが炭素原子、酸素原子、窒素原子等、様々な原子と共有結合する可能性が考えられるため、多種多様な二座の有機リン系化合物の可能性が考えられる。しかしながら、合成の容易さ、配位子としての性能、安定性等を考慮すると、二座の有機リン系化合物の各リンユニットは、リンに3つの炭素原子が結合したホスフィンタイプ、リンに2つの炭素原子と1つの酸素原子が結合したようなホスフィナイトタイプ、リンに1つの炭素原子と2つの酸素原子が結合したようなホスホナイトタイプ、リンに3つの酸素原子が結合したようなホスファイトタイプのいずれかであることが好ましい。その場合、二座の有機リン系化合物の2つのリンユニットは、ホスフィン−ホスフィン化合物(二座ホスフィン化合物)のように同じタイプのものであっても、ホスフィン−ホスファイト化合物のように異なるタイプの化合物であっても構わない。しかしながら、それらの中でも、二座ホスフィン化合物、及び二座ホスファイト化合物が特に好ましい。
二座ホスフィン化合物の具体的な例としては、1,2−ビス(ジ−t−ブチルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジエチルホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジメチルホスフィノ)−1,1,4,4−テトラメチルブタン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)ペンタン、1,6−ビス(ジフェニルホスフィノ)ヘキサン等が挙げられ、二座ホスファイトの具体的な例としては、特許第3416956号公報記載の二座ホスファイト等が挙げられる。
しかしながら、産業界において有用な直鎖型のアルデヒドやアルコールを製造するためには、従来のロジウム触媒を用いたヒドロホルミル化反応において高い直鎖選択性を発現させる二座ホスフィンや二座ホスファイトを用いることが好ましい。
具体的には、下記式(c−1)〜(c−3)で表される基本骨格を有する二座ホスフィンや二座ホスファイトを用いることが好ましい。
Figure 0005803007
(上記式(c−1)中、R11〜R18は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、並びに、鎖状又は環状の、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アミノ基、アシル基、アシロキシ基、カルボキシ基、及びエステル基からなる群より選ばれる基を表す。これらの基は、更に置換基を有していても良く、任意の2つの置換基が結合を形成して環状構造を形成しても良い。
また、R21〜R24は、それぞれ独立に、鎖状又は環状の、アルキル基、若しくはアリール基を表す。これらの基は、更に置換基を有していても良く、R21とR22、及びR23とR24においては、それぞれ、互いに結合を形成して環状構造を形成しても良い。)
Figure 0005803007
(上記式(c−2)中、R31〜R36は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、並びに、鎖状又は環状の、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アミノ基、アシル基、アシロキシ基、カルボキシ基、及びエステル基からなる群より選ばれる基を表す。これらの基は、更に置換基を有していても良く、任意の2つの置換基が結合を形成して環状構造を形成しても良い。
また、R41〜R44は、それぞれ独立に、鎖状又は環状の、アルキル基、若しくはアリール基を表す。これらの基は、更に置換基を有していても良く、R41とR42、及びR43とR44においては、それぞれ、互いに結合を形成して環状構造を形成しても良い。
また、A1及びA2は、それぞれ独立に、O、S、SiR、NR、CRであり、ここで、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、鎖状又は環状の、アルキル基、若しくはアリール基である。)
Figure 0005803007
(上記式(c−3)中、R51〜R58は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、並びに、鎖状又は環状の、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アミノ基、アシル基、アシロキシ基、カルボキシ基、及びエステル基からなる群より選ばれる基を表す。これらの基は、更に置換基を有していても良く、任意の2つの置換基が結合を形成して環状構造を形成しても良い。
また、R61〜R64は、それぞれ独立に、鎖状又は環状の、アルキル基、若しくはアリール基を表す。これらの基は、更に置換基を有していても良く、R61とR62、及びR63とR64においては、それぞれに、互いに結合を形成して環状構造を形成しても良い。)
上記の式(c−1)〜(c−3)で表される3タイプの二座の有機リン系化合物の内、高い直鎖選択性を示すアルデヒドを生成させるという観点で、より好ましいものは、R21〜R24、R41〜R44、及びR61〜R64で表される二座の有機リン系化合物の末端置換基が、置換基を有していても良いアリール基であるものである。そのような好ましい構造の二座の有機リン系化合物の具体例を以下に示す。以下の例示において、L−1〜L−20が好ましい二座ホスフィン化合物であり、L−21〜L−30が好ましい二座ホスファイト化合物である。以下において、Meはメチル基、tBuはt−ブチル基を表す。
Figure 0005803007
Figure 0005803007
Figure 0005803007
これらの有機リン化合物は、一種類の有機リン化合物のみを使用して反応を行なっても、二種類以上の有機リン化合物を任意に組み合わせて用いて反応を行なっても良い。
上述の有機リン化合物の使用量は、遷移金属錯体(a)又は遷移金属錯体(b)に対する比率(モル比)として、通常1以上、好ましくは1.5以上、特に好ましくは2以上、また、通常20以下、好ましくは15以下、特に好ましくは10以下の範囲である。有機リン化合物の使用量が上記範囲内であることにより、良好な反応活性、直鎖選択性が得られる。
<触媒の供給方法>
本発明では、多座有機リン配位子を有する遷移金属錯体(a)又は遷移金属錯体(b)を反応器内に存在させてヒドロホルミル化反応を行うが、上述の遷移金属錯体(a)又は遷移金属錯体(b)の原料となる遷移金属化合物と有機リン化合物とは、それぞれ独立して反応器に供給して反応器内で錯体を形成しても、ヒドロホルミル化反応を行う前に、予め錯体を形成させ、その錯体を反応器に供給してもよい。また、有機リン化合物を不溶性樹脂担体に結合させたものに、上述の遷移金属化合物を担持させた、不溶性固体触媒の状態として反応器に供給して使用しても良い。
また、遷移金属化合物として特にハロゲン原子が結合した化合物を用いる場合には、通常、塩基性化合物を加えて遷移金属化合物からハライド(ハロゲン化物イオン)を除去することで活性種を調製することが好ましい。これは、ハライドはしばしばヒドロホルミル化反応において触媒被毒源となり得るためである。
その場合の塩基性化合物としては、無機系の塩基、有機系の塩基、ルイス塩基等の塩基を使用することができる。具体的には、無機系の塩基としては、LiOH、NaOH、KOH、CsOH等のアルカリ金属の水酸化物、Li2CO3、Na2CO3、K2CO3、Cs2CO3等のアルカリ金属の炭酸塩、LiHCO3、NaHCO3、KHCO3、CsHCO3等のアルカリ金属の炭酸水素塩、Mg(OH)2、Ca(OH)2、Ba(OH)2等のアルカリ土類金属の水酸化物、MgCO3、CaCO3、BaCO3等のアルカリ土類金属の炭酸塩が挙げられる。また、有機系の塩基としては、メトキシナトリウム、エトキシナトリウム、t-ブトキシナトリウム、メトキシカリウム、エトキシカリウム、t-ブトキシカリウム等のアルカリ金属のアルコシキド化合物、酢酸ナトリウム、酪酸ナトリウム、酢酸カリウム、酪酸カリウム等のアルカリ金属のカルボン酸塩、ピリジン、4-メチルピリジン等のピリジン類、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ-n-オクチルアミン、1,5-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等の第3級アミン類、ピペリジン、N-メチルピペリジン、モルホリン等のその他のアミン類、1,8‐ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン‐7(略称:DBU)、1,5‐ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン‐5(略称:DBN)等の環状アミジン誘導体、t-ブチルイミノトリス(ジメチルアミノホスホラン)(略称:P1-t-Bu)、1-t-ブチル-4,4,4-トリス(ジメチルアミノ)-2,2-ビス[トリス(ジメチルアミノ)ホスホラニリデンアミノ]-2Λ5,4Λ5-カテナジ(ホスファゼン)(略称:P4-t-Bu)等のホスファゼン塩基、2,8,9-トリイソプロピル-2,5,8,9-テトラアザ-1-ホスファビシクロ[3.3.3]ウンデカン、2,8,9-トリメチル-2,5,8,9-テトラアザ-1-ホスファビシクロ[3.3.3]ウンデカン等のプロアザホスファトラン塩基等が挙げられる。
これらの塩基の中でも、遷移金属化合物からハライドを確実に引き抜けるような比較的強い塩基性化合物が好ましく、LiOH、NaOH、KOH、CsOH等のアルカリ金属の水酸化物、Li2CO3、Na2CO3、K2CO3、Cs2CO3等のアルカリ金属の炭酸塩、メトキシナトリウム、エトキシナトリウム、t-ブトキシナトリウム、メトキシカリウム、エトキシカリウム、t-ブトキシカリウム等のアルカリ金属のアルコシキド化合物が好ましい。
これらの塩基性化合物は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
塩基性化合物を使用する場合の使用量に関しては特に制限はないが、遷移金属化合物の使用モル数に対して、通常0.1モル倍以上、好ましくは0.5モル倍以上、より好ましくは1モル倍以上であり、通常、10モル倍以下、好ましくは5モル倍以下、より好ましくは2モル倍以下である。
また、塩基性化合物を使用する場合の触媒調製においては、それぞれの触媒成分(原料遷移金属化合物、有機リン化合物、及び塩基性化合物)を個別に反応系に添加して反応系内で触媒調製するよりも、別途設けた触媒調製槽で予め調製してから当該触媒を反応系に加える方が好ましい。これは、塩基性化合物を必要以上に反応系に加えると、触媒反応によって生成するアルデヒドがアルドール縮合を受け、一部消失してしまう可能性が考えられるからである。また、ヒドロホルミル化反応活性を高く維持するためにも、塩基性化合物との反応で遷移金属化合物から解離させたハライドは濾過、水洗、デカンテーション等の手法で予め除去し、反応系に持ち込まない方が好ましい。
触媒調製全般において言えることとして、反応系で速やかに触媒反応を開始させるようにするためにも、触媒は溶解した状態で反応系に導かれることが好ましい。また、場合によっては、触媒を調製して反応系に導入する前に、加熱処理や触媒活性種への変換に必要なガス処理、例えば水素や一酸化炭素等のガスとの加圧接触を予め行ってから触媒を反応系に導入しても良い。
<原料オレフィン>
続いて、本発明に適用可能な原料オレフィンについて述べる。本発明のアルデヒド又はアルコールの製造方法に適用される原料オレフィンとしては、炭素原子数2以上のオレフィンであって、分子内にオレフィン性二重結合を少なくとも1つ有する化合物であれば特にその構造に制限されるものではなく、飽和炭化水素基のみによって置換されたオレフィン、不飽和炭化水素基を含む炭化水素基によって置換されたオレフィン、又は、ヘテロ原子を含む官能基により置換されたオレフィン等、いずれのオレフィンにも適用できる。
具体的な例を挙げると、水素原子又は飽和炭化水素基のみにより置換されたオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、1−ドコセン等の直鎖状末端オレフィン性炭化水素、イソブテン、2−メチル−1−ブテン等の分岐状末端オレフィン性炭化水素、シス及びトランス−2−ブテン、シス及びトランス−2−ヘキセン、シス及びトランス−3−ヘキセン、シス及びトランス−2−オクテン、シス及びトランス−3−オクテン、シス及びトランス−4−オクテン等の直鎖状内部オレフィン性炭化水素、ブテン類の二量化により得られるオクテン、プロピレンや1−ブテンやイソブテン等の低級オレフィンの二量体〜四量体のようなオレフィンオリゴマー異性体混合物等の末端オレフィン性炭化水素ないし内部オレフィン性炭化水素混合物等が挙げられる。
不飽和炭化水素基を含む炭化水素基により置換されたオレフィンの例としては、スチレン、α−メチルスチレン、アリルベンゼンのような芳香族基を有するオレフィン、1,3−ブタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンのようなジエン化合物等が挙げられる。その他、ヘテロ原子を含む官能基により置換されたオレフィンの例としては、ビニルエチルエーテル、アリル−n−プロピルエーテル、1−メトキシ−2,7−オクタジエン等のオレフィン性二重結合を有するエーテル類、アリルアルコール、1−ヘキセン−4−オール、3−メチル−3−ブテン−1−オール、3−ヒドロキシ−1,7−オクタジエン、1−ヒドロキシ−2,7−オクタジエン等のオレフィン性二重結合を有するアルコール類、酢酸ビニル、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、1−アセトキシ−2,7−オクタジエン、3,4−ジアセトキシ−1−ブテン等のオレフィン性二重結合を有するエステル類のほか、7−オクテン−1−アール、アクリロニトリル等が挙げられる。
上記のオレフィンの内、炭素数3以上の直鎖状のオレフィンが好ましく、特に炭素数3以上の直鎖状末端オレフィン性炭化水素が好ましい。
なお、オレフィン性化合物の炭素数の上限については特に制限はないが、溶解性の問題、粘度の問題、原料確保の容易さなどを考慮して通常30以下である。
<アルデヒド>
本発明のアルデヒドの製造方法によって生成するアルデヒドとしては、炭素原子数3以上のアルデヒドであって、上述した原料オレフィンのオレフィン性二重結合に対して水素原子とホルミル基(アルデヒド基:−CHO基)が付加した構造のアルデヒドであれば特にその構造に制限されるものではない。ただし、オレフィン性二重結合に対する水素原子とホルミル基の付加の仕方には、炭素原子数2以上の原料オレフィンにおいては、前記の式(A)で述べたように二通りの結合形式があるので、直鎖型のアルデヒドと分岐型のアルデヒドが生成する。直鎖型のアルデヒドの収率を増やしたい場合には、上述したように、L−1〜L−30のような高い直鎖選択性を発現する有機リン化合物を配位子として用いれば良い。
本発明のアルデヒドの製造方法によって生成するアルデヒドとしては、具体的には、水素原子又は飽和炭化水素基のみによって置換されたオレフィンから生成するアルデヒド、不飽和炭化水素基を含む炭化水素基によって置換されたオレフィンから生成するアルデヒド、又は、ヘテロ原子を含む官能基により置換されたオレフィンから生成するアルデヒド等を挙げることができる。
それぞれに対して具体的な例を挙げると、水素原子又は飽和炭化水素基のみにより置換されたオレフィンから生成するアルデヒドとしては、n−プロピルアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、n−ペンチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、n−ヘプチルアルデヒド、n−ノニルアルデヒド、n−デシルアルデヒド、n−ウンデシルアルデヒド、n−トリデシルアルデヒド、n−ペンタデシルアルデヒド、n−ヘプタデシルアルデヒド、n−ノナデシルアルデヒド、n−ヘンエイコシルアルデヒド、n−トリコシルアルデヒド等の直鎖型のアルデヒド、i−ブチルアルデヒド、2−メチルブチルアルデヒド、2−メチルペンチルアルデヒド、2−メチルヘキシルアルデヒド、2−メチルオクチルアルデヒド、2−メチルノニルアルデヒド、2−メチルデシルアルデヒド、2−メチルドデシルアルデヒド、2−メチルテトラデシルアルデヒド、2−メチルヘキサデシルアルデヒド、2−メチルオクタデシルアルデヒド、2−メチルエイコシルアルデヒド、2−メチルドコシルアルデヒド、3−メチルブチルアルデヒド、3−メチルペンチルアルデヒド、2−エチルペンチルアルデヒド、2−エチルヘプチルアルデヒド、2−プロピルヘキシルアルデヒド等の分岐型のアルデヒドが挙げられるほか、2,3−ジメチルヘプチルアルデヒド、2,5−ジメチルヘプチルアルデヒドといったブテン類の二量化により得られるオクテン、プロピレンや1−ブテンやイソブテン等の低級オレフィンの二量体〜四量体のようなオレフィンオリゴマー異性体混合物から生成するアルデヒド等が挙げられる。
また、不飽和炭化水素基を含む炭化水素基により置換されたオレフィンから生成するアルデヒドの例としては、2−フェニルプロピルアルデヒド、3−フェニルプロピルアルデヒド、3−フェニルブチルアルデヒド、4−フェニルブチルアルデヒド、3−フェニル−2−メチルプロピルアルデヒドのような芳香族基を有するアルデヒド、2−ペンテニルアルデヒド、3−ペンテニルアルデヒド、4−ペンテニルアルデヒド、2−メチル−2−ブテニルアルデヒド、2−メチル−3−ブテニルアルデヒド、6−ヘプテニルアルデヒド、2−メチル−5−ヘキセニルアルデヒド、8−ノネニルアルデヒド、2−メチル−7−オクテニルアルデヒドのような不飽和脂肪族基を有するアルデヒド等が挙げられる。
その他、ヘテロ原子を含む官能基により置換されたオレフィンから生成するアルデヒドの例としては、2−エトキシプロピルアルデヒド、3−エトキシプロピルアルデヒド、2−(n−プロポキシメチル)プロピルアルデヒド、4−(n−プロポキシ)ブチルアルデヒド、2−メトキシメチル−7−オクテニルアルデヒド、2−(2’−メトキシエチル)−6−ヘプテニルアルデヒド、8−メトキシ−2−メチル−6−ヘプテニルアルデヒド、9−メトキシ−7−ノネニルアルデヒド等のエーテル基を含有するアルデヒド類、4−ヒドロキシブチルアルデヒド、3−ヒドロキシ−2−メチルプロピルアルデヒド、5−ヒドロキシヘプチルアルデヒド、4−ヒドロキシ−2−メチルヘキシルアルデヒド、5−ヒドロキシ−3−メチルペンチルアルデヒド、4−ヒドロキシ−8−ノネニルアルデヒド、3−ヒドロキシ−2−メチル−7−オクテニルアルデヒド、9−ヒドロキシ−7−ノネニルアルデヒド、8−ヒドロキシ−2−メチル−6−オクテニルアルデヒド等の水酸基を含有するアルデヒド類、2−アセトキシプロピルアルデヒド、3−アセトキシプロピルアルデヒド、3−メトキシカルボニルブチルアルデヒド、2−メトキシカルボニルプロピルアルデヒド、3−メトキシカルボニルプロピルアルデヒド、2−アセトキシメチル−7−オクテニルアルデヒド、2−(2’−アセトキシエチル)−6−ヘプテニルアルデヒド、4,5−ジアセトキシペンチルアルデヒド、3,4−ジアセトキシ−2−メチルブチルアルデヒド等のエステル基を含有するアルデヒド類のほか、ノナン−1,9−ジアールのような他のホルミル基を含有するアルデヒドや、2−シアノプロピルアルデヒドのようなシアノ基を含有するアルデヒド等が挙げられる。
<アルコール>
本発明のアルコールの製造方法によって生成するアルコールとしては、炭素原子数3以上のアルコールであって、上述したアルデヒドのホルミル基(アルデヒド基:−CHO基)が水素化された構造のアルコールであれば特にその構造に制限されるものではない。産業界において有用な直鎖型のアルコールを一つの反応器内で効率よく製造したい場合には、L−1〜L−30のような高い直鎖選択性を発現する有機リン化合物を配位子として用い、かつ、遷移金属錯体のシクロペンタジエニル基としてCp−46〜Cp−75のような生成アルデヒドのホルミル基の水素化能を有しているものを用いれば良い。
本発明のアルコールの製造方法によって生成するアルコールとしては、具体的には、水素原子又は飽和炭化水素基のみによって置換されたオレフィンから生成するアルコール、不飽和炭化水素基を含む炭化水素基によって置換されたオレフィンから生成するアルコール、又は、ヘテロ原子を含む官能基により置換されたオレフィンから生成するアルコール等を挙げることができる。
それぞれに対して具体的な例を挙げると、水素原子又は飽和炭化水素基のみにより置換されたオレフィンから生成するアルコールとしては、n−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、n−ヘプチルアルコール、n−ノニルアルコール、n−デシルアルコール、n−ウンデシルアルコール、n−トリデシルアルコール、n−ペンタデシルアルコール、n−ヘプタデシルアルコール、n−ノナデシルアルコール、n−ヘンエイコシルアルコール、n−トリコシルアルコール等の直鎖型のアルコール、i−ブチルアルコール、2−メチルブチルアルコール、2−メチルペンチルアルコール、2−メチルヘキシルアルコール、2−メチルオクチルアルコール、2−メチルノニルアルコール、2−メチルデシルアルコール、2−メチルドデシルアルコール、2−メチルテトラデシルアルコール、2−メチルヘキサデシルアルコール、2−メチルオクタデシルアルコール、2−メチルエイコシルアルコール、2−メチルドコシルアルコール、3−メチルブチルアルコール、3−メチルペンチルアルコール、2−エチルペンチルアルコール、2−エチルヘプチルアルコール、2−プロピルヘキシルアルコール等の分岐型のアルコールが挙げられるほか、2,3−ジメチルヘプチルアルコール、2,5−ジメチルヘプチルアルコールといったブテン類の二量化により得られるオクテン、プロピレンや1−ブテンやイソブテン等の低級オレフィンの二量体〜四量体のようなオレフィンオリゴマー異性体混合物から生成するアルコール等が挙げられる。
また、不飽和炭化水素基を含む炭化水素基により置換されたオレフィンから生成するアルコールの例としては、2−フェニルプロピルアルコール、3−フェニルプロピルアルコール、3−フェニルブチルアルコール、4−フェニルブチルアルコール、3−フェニル−2−メチルプロピルアルコールのような芳香族基を有するアルコール、2−ペンテニルアルコール、3−ペンテニルアルコール、4−ペンテニルアルコール、2−メチル−2−ブテニルアルコール、2−メチル−3−ブテニルアルコール、6−ヘプテニルアルコール、2−メチル−5−ヘキセニルアルコール、8−ノネニルアルコール、2−メチル−7−オクテニルアルコールのような不飽和脂肪族基を有するアルコール等が挙げられる。
その他、ヘテロ原子を含む官能基により置換されたオレフィンから生成するアルコールの例としては、2−エトキシプロピルアルコール、3−エトキシプロピルアルコール、2−(n−プロポキシメチル)プロピルアルコール、4−(n−プロポキシ)ブチルアルコール、2−メトキシメチル−7−オクテニルアルコール、2−(2’−メトキシエチル)−6−ヘプテニルアルコール、8−メトキシ−2−メチル−6−ヘプテニルアルコール、9−メトキシ−7−ノネニルアルコール等のエーテル基を含有するアルコール類、4−ヒドロキシブチルアルコール、3−ヒドロキシ−2−メチルプロピルアルコール、5−ヒドロキシヘプチルアルコール、4−ヒドロキシ−2−メチルヘキシルアルコール、5−ヒドロキシ−3−メチルペンチルアルコール、4−ヒドロキシ−8−ノネニルアルコール、3−ヒドロキシ−2−メチル−7−オクテニルアルコール、9−ヒドロキシ−7−ノネニルアルコール、8−ヒドロキシ−2−メチル−6−オクテニルアルコール等の水酸基を含有するアルコール類、2−アセトキシプロピルアルコール、3−アセトキシプロピルアルコール、3−メトキシカルボニルブチルアルコール、2−メトキシカルボニルプロピルアルコール、3−メトキシカルボニルプロピルアルコール、2−アセトキシメチル−7−オクテニルアルコール、2−(2’−アセトキシエチル)−6−ヘプテニルアルコール、4,5−ジアセトキシペンチルアルコール、3,4−ジアセトキシ−2−メチルブチルアルコールのエステル基を含有するアルコール類のほか、2−シアノプロピルアルコールのようなシアノ基を含有するアルコール等が挙げられる。
<溶媒>
本発明のアルデヒドの製造方法及びアルコールの製造方法は、溶媒の存在下或いは非存在下のどちらでも反応させることができる。溶媒を使用する場合、上述した遷移金属化合物や有機リン化合物、及び原料オレフィンを少なくとも一部溶解させるものであって、ヒドロホルミル化反応の反応活性や反応の選択性に悪影響を及ぼさないものであれば使用可能であり特に限定はない。
溶媒を使用する場合の溶媒の具体例としては、水の他、例えば、ジグライム(ジエチレングリコールジメチルエーテル)、トリグライム(トリエチレングリコールジメチルエーテル)、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、ジアリルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等のエーテル類、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酪酸エチル、酪酸ブチル、γ-ブチロラクトン、ジ(n−オクチル)フタレイト等のエステル類、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ドデシルベンゼン等の芳香族炭化水素類、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン等の脂肪族炭化水素類、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブチルアルコール、n−ペンタノール、ネオペンチルアルコール、n−ヘキサノール、2−エチルヘキサノール、n−オクタノール、n−ノナノール、n−デカノール等のアルコール類が挙げられる。
また、本発明のアルデヒド製造反応やアルコール製造反応の副生物として生成するアルデヒドのアセタール反応体、エステル類やアルドール縮合体といった、目的とする生成物であるアルデヒドやアルコールよりも高い沸点を有する化合物なども溶媒として用いることができる。
溶媒を使用する際の溶媒の量は、反応器内の反応液の総重量に対して通常5重量%以上、好ましくは10重量%以上であり、通常95重量%以下であり、好ましくは90重量%以下である。
なお、溶媒は、一種類を用いてもよく、複数の溶媒を混合して使用してもよい。
<反応条件>
次に、本発明のアルデヒド製造反応及びアルコール製造反応を行う際の反応条件について説明する。
反応器中の反応圧力、即ち、反応器での、水素の分圧、一酸化炭素の分圧、不活性ガスの分圧、原料オレフィンの分圧、及びヒドロホルミル化反応やアルデヒド水素化反応を行うことにより生成されるアルデヒドやアルコールを含む反応混合物の蒸気圧の総和(また、必要に応じて溶媒を使用する際は、その溶媒の蒸気圧を上記反応圧力に加えた値)は、特に限定されないが、通常0.01MPa以上、好ましくは0.10MPa以上、より好ましくは0.50MPa以上であり、通常30.00MPa以下、好ましくは20.00MPa以下、より好ましくは10.00MPa以下である。反応圧力が低すぎると、反応に使用する遷移金属錯体の遷移金属のメタル化が起き、失活してしまう恐れがある他、ヒドロホルミル化反応やアルデヒド水素化反応の活性が十分に発現せず、アルデヒドやアルコール収率が低下する恐れがある。また、一方で、反応圧力、特に水素の分圧と一酸化炭素の分圧が高すぎると、原料オレフィンの水素化による原料オレフィンのロスが増えたり、得られる目的生成物のアルデヒドやアルコールの直鎖選択性が低下したりする恐れがある。また、特に、水素の分圧は、好ましくは0.005MPa以上、より好ましくは0.01MPa以上であり、一方で、好ましくは20MPa以下、より好ましくは10MPa以下である。水素の分圧が低すぎると反応活性の低下が懸念され、水素の分圧が高すぎると原料オレフィンの水素化反応の進行により原料オレフィンが浪費される恐れがある。一酸化炭素の分圧は、好ましくは0.005MPa以上、より好ましくは0.01MPa以上であり、一方で、好ましくは15MPa以下、より好ましくは8MPa以下である。一酸化炭素の分圧が低すぎると反応活性の低下、特に遷移金属のメタル化が懸念され、高すぎると得られるアルデヒドやアルコールの直鎖選択性の低下が予想される。
本発明において、反応器に供給する水素と一酸化炭素とのモル比は、1:10〜10:1であり、より好ましくは1:5〜5:1であり、更に好ましくは1:2〜2:1である。特にアルコールを製造する場合には原料オレフィン1モルに対して理論的には水素2モルと一酸化炭素1モルを消費するので、反応器における水素と一酸化酸素のモル比は、例えば3:1〜1.1:1のように水素の方が高い圧力であることが好ましい。
また、反応器内の反応温度は、通常25℃以上、好ましくは50℃以上、より好ましくは70℃以上であり、一方で、通常200℃以下、好ましくは180℃以下、より好ましくは160℃以下である。反応温度が低すぎると反応活性自体が十分に得られない恐れがあり、また、反応温度が高すぎると得られる目的生成物のアルデヒドやアルコールの直鎖選択性の低下や生成したアルデヒドのアルコールの副反応(例えばアルドール縮合等)の進行による生成物収率の低下の恐れある。更には、有機リン化合物が熱分解により消失したり、遷移金属錯体自体の分解に伴う失活が起こったりする恐れがある。
<反応プロセス>
本発明で用いることができる反応プロセスに関して以下に記載する。
反応方式としては、撹拌型反応槽、又は気泡塔型反応槽中で、連続式、半連続式、又はバッチ式操作のいずれでも容易に実施し得る。
未反応原料オレフィンや生成物類と触媒との分離は、通常、単蒸留、減圧蒸留、薄膜蒸留、水蒸気蒸留等の蒸留操作のほか、気液分離、蒸発(エバポレーション)、ガスストリッピング、ガス吸収及び抽出等の公知の方法で行うことができる。蒸留条件は特に制限されるものではなく、生成物の揮発性、熱安定性、及び触媒成分の揮発性、熱安定性等を考慮して望ましい結果が得られるように任意に設定されるが、通常、50〜300℃の温度、760〜0.01mmHgの圧力条件の範囲から選ばれる。
分離操作において、未反応の原料(オレフィン、水素、一酸化炭素、アルコールを製造する場合には未反応のアルデヒド類)が得られた場合には、反応工程にリサイクルし、再利用することがより経済的で望ましい。
また、蒸留を行うに当たって、溶媒の使用は必須ではないが、必要に応じて生成物類や触媒成分に不活性な溶媒を存在させることができる。分離した触媒を含む残液からは、公知の方法により遷移金属を回収することができるし、あるいは残液の全量若しくは一部を反応工程にリサイクルして、触媒を再利用することもできる。
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
アルゴンガス雰囲気下、乾燥した内容量50mlの磁性誘導攪拌式のステンレス鋼オートクレーブに[CpRu(acac)](8.4mg、Ru換算で0.025mmol)及び二座ホスファイト配位子(明細書中式L−22の化合物)(26.8mg、0.025mmol、Ruに対して1当量)を量り取り、トルエン (2.0ml)を加え数分間攪拌し、錯体及び配位子を溶解させた。その後、反応原料である1−デセンとガスクロマトグラフィー分析用の内部標準物質であるドデカンの混合物(モル比=2/1) を210mg(1−デセン:1.0mmol)加え、オートクレーブを密閉後、水素及び一酸化炭素の混合ガス(混合比:水素/一酸化炭素=1/1(モル比))を系内圧力(ゲージ圧)が2.0MPaになるようにフィードし、攪拌速度800rpm下、100℃で18時間ほど反応させた。
ここでCpは明細書中式Cp−12のペンタメチルシクロペンタジエニル基を表す。
反応終了後、反応容器を冷却し、ガスをパージした後、生成物をガスクロマトグラフィーにて分析した。その結果、1−デセンの転化率は29.4%、ウンデカナール(n−ウンデシルアルデヒド)の収率は4.4%、直鎖型のウンデカナール(L−体)と分岐型のウンデカナール(B−体)の比はL/B=∞(分岐型のウンデカナールは生成せず)、ウンデカノール(n−ウンデシルアルコール)の収率は0%、デカン(原料1−デセンの水添体)の収率は0%、原料1−デセンの内部異性化体の収率は22.3%であった。
<実施例2〜4、比較例1>
実施例1において、二座ホスファイト配位子(明細書中式L−22の化合物)のRuに対する添加量を2当量(実施例2)、5当量(実施例3)、10当量(実施例4)、0.4当量(比較例1)に変えた以外は同様に反応を行ない、分析を実施した。結果を実施例1の結果と合わせて、表1にまとめて記す。
実施例1〜4及び比較例1の結果より、シクロペンタジエニル基を有するRu触媒に対して二座ホスファイト配位子の量が1当量以上、10当量以下の範囲において目的とするアルデヒド(ウンデカナール)の収率が増え、かつ、その直鎖選択性(L/B比)は高く、更に原料1−デセンの転化率に対する内部異性化体の割合は低いことが分かる。
<比較例2>
実施例2において、Ru触媒としてRu(CO)12(5.3mg、Ru換算で0.025mmol)を用いた以外は同様に反応を行ない、分析を実施した。結果を表1に記す。
<比較例3>
実施例2において、Ru触媒として[RuCl(p−cymene)](7.7mg、Ru換算で0.025mmol)を用いた以外は同様に反応を行ない、分析を実施した。結果を表1に記す。
実施例2と比較例2,3との対比より、シクロペンタジエニル基を有していないルテニウム化合物を触媒に用いた場合には、二座ホスファイト配位子を用いても目的とするアルデヒド(ウンデカナール)の収率が低く、デカンや内部異性化体といった副生物が多く生成していることが分かる。
<実施例5>
実施例1において、二座ホスファイト配位子の代わりに二座ホスフィン配位子(明細書中式L−11の化合物、14.5mg、0.025mmol、Ruに対して1当量)を用い、反応温度を160℃とした以外は同様に反応を行ない、分析を実施した。結果を表1に記す。
<実施例6>
実施例5において、二座ホスフィン配位子(明細書中式L−11の化合物)のRuに対する添加量を2当量に変えた以外は同様に反応を行ない、分析を実施した。結果を表1に記す。
<実施例7>
実施例5において、Ru触媒として[CpRu(OCH)](6.7mg、Ru換算で0.025mmol)を用いた以外は同様に反応を行ない、分析を実施した。結果を表1に記す。
<実施例8>
実施例5において、Ru触媒としてCpRu(cod)Cl(9.5mg、0.025mmol)を用い、塩基性化合物としてt−BuOK(2.8mg、0.025mmol、Ruに対して1当量)を添加し、反応時間を20時間にした以外は同様に反応を行ない、分析を実施した。結果を表1に記す。
<実施例9>
実施例6において、二座ホスフィン配位子を明細書中式L−11の化合物から1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン(20.6mg、0.025mmol、Ruに対して2当量)を用いた以外は同様に反応を行ない、分析を実施した。結果を表1に記す。なお、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパンは表1においてDPPPと記載している。
<比較例4>
実施例5において配位子を用いず、反応時間を12時間にした以外は同様に反応を行ない、分析を実施した。結果を表1に記す。
<比較例5>
実施例8において配位子を用いず、反応時間を18時間にした以外は同様に反応を行ない、分析を実施した。結果を表1に記す。
実施例5〜9及び比較例4,5の結果より、以下のことが分かる。シクロペンタジエニル基を有するRu触媒に対して1当量又は2当量の二座ホスフィン配位子を用いた場合には、目的とするアルデヒド(ウンデカナール)の収率が増える。特に、実施例5〜8のように高い直鎖選択性を与えることができる、より好ましい二座ホスフィン配位子(L−11)を用いた場合には、実施例9のDPPP配位子の場合と比較して、高い直鎖選択性(L/B比)を有するアルデヒドが生成している。比較として、配位子未添加系の例(実施例5の比較例として比較例4、実施例8の比較例として比較例5)を示しているが、アルデヒド(ウンデカナール)の収率は低く、内部異性化体が多く生成している。
<実施例10>
実施例5において、Ru触媒として下記構造のRu化合物(I)(13.6mg、Ru換算で0.025mmol)を用い、反応時間を23時間にした以外は同様に反応を行ない、分析を実施した。結果を表1に記す。なお、Ru化合物(I)は、二核錯体であり、形式上、右側のRu錯体ではシクロペンタジエン配位子が配位した構造で記載しているが、明細書にも述べているようにこのシクロペンタジエン配位子は水素ガスが存在する雰囲気下では左側のRu錯体のように水酸基を持つシクロペンタジエニル基に変化する。
Figure 0005803007
<実施例11>
実施例10において、Ru触媒として下記構造のRu化合物(II)(14.2mg、0.025mmol)を用いた以外は同様に反応を行ない、分析を実施した。結果を表1に記す。なお、Ru化合物(II)はシクロペンタジエン配位子が配位した構造を有しているが、実施例10で述べたように、水素ガス存在下では水酸基を持つシクロペンタジエニル基に変化する。
Figure 0005803007
<実施例12>
実施例10において、Fe触媒として下記構造のFe化合物(III)(10.5mg、0.025mmol)を用いた以外は同様に反応を行ない、分析を実施した。結果を表1に記す。なお、Fe化合物(III)はシクロペンタジエン配位子が配位した構造を有しているが、実施例10で述べたように、水素ガス存在下では水酸基を持つシクロペンタジエニル基に変化する。
Figure 0005803007
<比較例6>
実施例11において、二座ホスフィン配位子の代わりに単座ホスフィンであるトリフェニルホスフィン(26.2mg、0.100mmol、Ruに対して4当量)を用い、反応時間を18時間にした以外は同様に反応を行ない、分析を実施した。結果を表1に記す。
実施例10〜12及び比較例6の結果より以下のことが分かる。水酸基を置換基として持つシクロペンタジエニル基を有するRu触媒(実施例10及び11)では、アルコール(ウンデカノール)の収率が高く、かつ、その直鎖選択性(L/B比)が高い。また、水酸基を置換基として持つシクロペンタジエニル基を有するFe触媒(実施例12)では、アルデヒド(ウンデカナール)の収率が高く、かつ、その直鎖選択性(L/B比)が高い。一方、水酸基を置換基として持つシクロペンタジエニル基を有するRu触媒であっても単座ホスフィンを配位子として用いた場合(比較例6)には、アルデヒドの収率もアルコールの収率も共に低く、内部異性化体が多く生成している。
Figure 0005803007
<実施例13>
アルゴンガス雰囲気下、乾燥した内容量50mlの磁性誘導攪拌式のステンレス鋼オートクレーブに[CpRu(acac)](8.4mg、Ru換算で0.025mmol)及び二座ホスフィン配位子(明細書中式L−11の化合物)(28.9mg、0.050mmol、Ruに対して2当量)を量り取り、1,4−ジオキサン (2.0ml)を加え数分間攪拌し、錯体及び配位子を溶解させた。その後、オートクレーブにプロピレンガスを導入し、プロピレンのガス圧として0.8MPaかけた後、水素及び一酸化炭素の混合ガス(混合比:水素/一酸化炭素=1/1(モル比))を系内圧力(ゲージ圧)が2.0MPaになるようにフィードし、攪拌速度800rpm下、160℃で24時間ほど反応させた。
反応終了後、反応容器を冷却し、ガスをパージした後、ガスクロマトグラフィー分析用の内部標準物質であるドデカンを加えて、生成物をガスクロマトグラフィーにて分析した。その結果、ブタナールがTON=37.9で得られ、直鎖型のブタナール(N−体)に対する分岐型のブタナール(I−体)の比はN/I=13.0であった。また、ブタノールはTON=1.1で得られ、直鎖型のブタノール(N−体)に対する分岐型のブタノール(I−体)の比はN/I=∞(分岐型のブタノールは生成せず)であった。
ここで、TONは反応に用いたRu化合物に対する目的生成物のモル比を示す。結果を表2に記す。
<実施例14>
実施例13において、[CpRu(acac)]の代わりに下記構造のRu化合物(III)(11.3mg、0.025mmol)を用いて反応を行なった以外は同様に反応を行ない、分析を実施した。結果を表2に記す。
Figure 0005803007
<実施例15>
実施例14において、溶媒を1,4−ジオキサンからトルエンに変更した以外は同様に反応を行ない、分析を実施した。結果を表2に記す。
<実施例16>
実施例13において、[CpRu(acac)]の代わりに下記構造のRu化合物(IV)(6.8mg、Ru換算で0.025mmol)を用いて反応を行なった以外は同様に反応を行ない、分析を実施した。結果を表2に記す。
Figure 0005803007
<実施例17>
実施例13において、[CpRu(acac)]の代わりに下記構造のRu化合物(V)(15.1mg、Ru換算で0.025mmol)を用いて反応を行なった以外は同様に反応を行ない、分析を実施した。結果を表2に記す。
Figure 0005803007
<比較例7>
実施例13において、[CpRu(acac)]の代わりに[RuCl(p−cymene)](7.7mg、Ru換算で0.025mmol)を用いて反応を行なった以外は同様に反応を行ない、分析を実施した。結果を表2に記す。
実施例13〜17と比較例7との対比より、比較例7のようなシクロペンタジエニル基を有していないRu錯体を用いた場合には、得られるアルデヒド(ブタナール)の直鎖選択性(N/I比)が低いことが分かる。
<実施例18>
実施例13において、配位子を明細書中式L−11の二座ホスフィンから明細書中式L−1の二座ホスフィン(27.5mg、0.050mmol、Ruに対して2当量)に変更した以外は同様に反応を行ない、分析を実施した。結果を表2に記す。
<実施例19>
実施例18において、[CpRu(acac)]の代わりに上述したRu化合物(III)(11.3mg、0.025mmol)を用いて反応を行なった以外は同様に反応を行ない、分析を実施した。結果を表2に記す。
<実施例20>
実施例13において、配位子を明細書中式L−11の二座ホスフィンから明細書中式L−22の二座ホスファイト(53.6mg、0.050mmol、Ruに対して2当量)に変更し、反応温度を160℃から120℃に変更した以外は同様に反応を行ない、分析を実施した。結果を表2に記す。
<実施例21>
実施例20において、溶媒を1,4−ジオキサンからトルエンに変更し、反応温度を120℃から160℃に変更した以外は同様に反応を行ない、分析を実施した。結果を表2に記す。
<実施例22>
実施例14において、反応温度を160℃から120℃に変更した以外は同様に反応を行ない、分析を実施した。結果を表2に記す。
<実施例23>
実施例14において、反応温度を160℃から140℃に変更した以外は同様に反応を行ない、分析を実施した。結果を表2に記す。
<実施例24>
実施例14において、反応開始時の系内圧力(ゲージ圧)を2.0MPaから0.5MPaに変更した以外は同様に反応を行ない、分析を実施した。結果を表2に記す。
<実施例25>
実施例14において、反応開始時の系内圧力(ゲージ圧)を2.0MPaから1.0MPaに変更した以外は同様に反応を行ない、分析を実施した。結果を表2に記す。
<実施例26>
実施例14において、反応開始時の系内圧力(ゲージ圧)を2.0MPaから1.5MPaに変更した以外は同様に反応を行ない、分析を実施した。結果を表2に記す。
<実施例27>
実施例14において、反応開始時の系内圧力(ゲージ圧)を2.0MPaから3.0MPaに変更した以外は同様に反応を行ない、分析を実施した。結果を表2に記す。
<実施例28>
実施例14において、反応開始時の系内圧力(ゲージ圧)を2.0MPaから4.0MPaに変更した以外は同様に反応を行ない、分析を実施した。結果を表2に記す。
<実施例29>
アルゴンガス雰囲気下、乾燥した内容量50mlの磁性誘導攪拌式のステンレス鋼オートクレーブに[CpRu(acac)](8.4mg、Ru換算で0.025mmol)及び二座ホスフィン配位子(明細書中式L−22化合物)(53.6mg、0.050mmol、Ruに対して2当量)を量り取り、トルエン(2.0ml)を加え数分間攪拌し、錯体及び配位子を溶解させた。その後、オートクレーブにプロペンガスを導入し、プロペンのガス圧として0.8MPaかけた後、水素及び一酸化炭素の混合ガス(混合比:水素/一酸化炭素=1/1(モル比))を系内圧力(ゲージ圧)が2.0MPaになるようにフィードし、攪拌速度800rpm下、120℃で24時間ほど反応させた。
反応終了後、反応容器を冷却し、ガスをパージした後、ガスクロマトグラフィー分析用の内部標準物質であるドデカンを加えて、生成物をガスクロマトグラフィーにて分析した。その結果、ブタナールがTON=13で得られ、直鎖型のブタナール(N−体)に対する分岐型のブタナール(I−体)の比はN/I=40.0であった。また、ブタノールはTON=0.9で得られ、直鎖型のブタノール(N−体)に対する分岐型のブタノール(I−体)の比はN/I=2.9であった。
ここで、TONは反応に用いたRu化合物に対する目的生成物のモル比を示す。
<実施例30>
実施例29において、[CpRu(acac)]の代わりに、実施例16で用いたRu化合物(IV)(6.8mg、0.025mmol)を用いて反応を行なった以外は同様に反応を行ない、分析を実施した。
その結果、ブタナールがTON=51で得られ、直鎖型のブタナール(N−体)に対する分岐型のブタナール(I−体)の比はN/I=32であった。また、ブタノールはTON=3.3で得られ、直鎖型のブタノール(N−体)に対する分岐型のブタノール(I−体)の比はN/I=12であった。
ここで、TONは反応に用いたRu化合物に対する目的生成物のモル比を示す。
<実施例31>
実施例29において、[CpRu(acac)]の代わりに、下記のRu化合物(VI)(7.9mg、0.025mmol)を用いて反応を行なった以外は同様に反応を行ない、分析を実施した。
Figure 0005803007
その結果、ブタナールがTON=102で得られ、直鎖型のブタナール(N−体)に対する分岐型のブタナール(I−体)の比はN/I=41であった。また、n−ブタノールがTON=3.3で得られ、直鎖型のブタノール(N−体)に対する分岐型のブタノール(I−体)の比はN/I=∞(分岐型のブタノールは検出されず)であった。
ここで、TONは反応に用いたRu化合物に対する目的生成物のモル比を示す。
上記の実施例29〜31の結果も含めて実施例13〜28の結果を表2に示す。
Figure 0005803007

Claims (1)

  1. 座の有機リン化合物由来の配位子と下記式(a)で示される構造を有する鉄又はルテニウムを一種以上含む錯体の存在下、炭素原子数2以上の原料オレフィンを水素及び一酸化炭素と反応させることによりアルデヒドを製造する方法であって、
    前記二座の有機リン化合物が下記式(c−1)〜(c−3)のいずれかで表される基本骨格を有し、
    鉄又はルテニウムを一種以上含む錯体に対する該座の有機リン化合物由来の配位子のモル比が1以上20以下であることを特徴とするアルデヒドの製造方法。
    Figure 0005803007
    (上記式(a)中、Mは鉄又はルテニウムであり、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリーロキシ基、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、パーフルオロアルキル基、トリアルキルシリル基、ホルミル基、アシル基、アシロキシ基、エステル基、ホスフィノ基及びカルボキシ基からなる群より選ばれる基であり、これらの基は更に置換基を有していてもよい。また、RとR、RとR、RとR、RとR、及びRとRは互いに連結して環を形成してもよく、形成された環は更に置換基を有していてもよい。)
    Figure 0005803007
    (上記式(c−1)中、R 11 〜R 18 は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、並びに、鎖状又は環状の、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アミノ基、アシル基、アシロキシ基、カルボキシ基、及びエステル基からなる群より選ばれる基を表す。これらの基は、更に置換基を有していても良く、任意の2つの置換基が結合を形成して環状構造を形成しても良い。
    また、R 21 〜R 24 は、それぞれ独立に、鎖状又は環状の、アルキル基、若しくはアリール基を表す。これらの基は、更に置換基を有していても良く、R 21 とR 22 、及びR 23 とR 24 においては、それぞれ、互いに結合を形成して環状構造を形成しても良い。)
    Figure 0005803007
    (上記式(c−2)中、R 31 〜R 36 は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、並びに、鎖状又は環状の、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アミノ基、アシル基、アシロキシ基、カルボキシ基、及びエステル基からなる群より選ばれる基を表す。これらの基は、更に置換基を有していても良く、任意の2つの置換基が結合を形成して環状構造を形成しても良い。
    また、R 41 〜R 44 は、それぞれ独立に、鎖状又は環状の、アルキル基、若しくはアリール基を表す。これらの基は、更に置換基を有していても良く、R 41 とR 42 、及びR 43 とR 44 においては、それぞれ、互いに結合を形成して環状構造を形成しても良い。
    また、A 1 及びA 2 は、それぞれ独立に、O、S、SiR 、NR 、CR であり、ここで、R 、R 、R 、R 及びR は、それぞれ独立に、水素原子、鎖状又は環状の、アルキル基、若しくはアリール基である。)
    Figure 0005803007
    (上記式(c−3)中、R 51 〜R 58 は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、並びに、鎖状又は環状の、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アミノ基、アシル基、アシロキシ基、カルボキシ基、及びエステル基からなる群より選ばれる基を表す。これらの基は、更に置換基を有していても良く、任意の2つの置換基が結合を形成して環状構造を形成しても良い。
    また、R 61 〜R 64 は、それぞれ独立に、鎖状又は環状の、アルキル基、若しくはアリール基を表す。これらの基は、更に置換基を有していても良く、R 61 とR 62 、及びR 63 とR 64 においては、それぞれに、互いに結合を形成して環状構造を形成しても良い。)
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