JP5801072B2 - 発泡歯車 - Google Patents

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Description

本発明は、発泡歯車に関する。
従来より、射出成形法を用いて熱可塑性樹脂製の歯車(ギア)が製造され、例えば、電子写真装置やインクジェットプリンター等のプリンター、ファクシミリや複写機、更には、AV機器、光学機器、医療機器等、種々の分野で使用されている。
そして、これらの分野において、例えば、駆動機構を構成する駆動歯車では、特に高い寸法精度と強度(耐久性及び耐衝撃性)とが求められている。
一方、射出成形により発泡成形品を製造する技術としては、窒素や二酸化炭素からなる超臨界流体を発泡剤として用いる成形方法が知られている。この成形方法では、窒素や二酸化炭素からなる超臨界流体を溶融した熱可塑性樹脂に溶解させ、これを金型内に射出することで発泡成形品を製造する技術が知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。
また、例えば、特許文献4には、特定のメルトインデックスを有するポリフェニレンスルフィド樹脂と超臨界流体とを射出成形機に導入し、射出成形して得たポリフェニレンスルフィド樹脂の発泡形成品が開示されている。
これらの超臨界流体を発泡剤として用いる発泡成形方法は、Mucell(登録商標)とも称される微細発泡成形技術であり、超臨界流体を高圧下で溶融樹脂に溶解したものを成形に供し、急激な減圧により微細な発泡セルを有する成形品を得る成形技術である。この成形技術によれば、超臨界流体の液体に近い優れた溶解性と気体に近い優れた拡散性を利用することができるので、超臨界流体を短時間で溶融樹脂に含浸させることが可能となり、そのため、発泡セル径を微細化することが可能となるとされている。
特開平10−230528号公報 特許第2625576号公報 特開2005−144750号公報 特開2003−49017号公報
しかしながら、上述したような超臨界流体を発泡剤とする発泡成形技術を用いて射出成形により、樹脂成形品からなる歯車を製造する場合、耐衝撃性及び耐久性に優れ、かつ、高い寸法精度を有する歯車を確実に製造することは困難であった。
そこで、本発明者らは、超臨界流体を発泡剤として用いた射出成形による発泡歯車の製造において、耐衝撃性及び耐久性に優れ、かつ、寸法精度に優れた発泡歯車を製造する方法を鋭意検討し、発泡歯車の材料として、特定のSP値を有する熱可塑性樹脂を使用し、特定の発泡倍率及び発泡セル径を有する発泡歯車とすることで、高い寸法精度を備えるとともに、耐久性及び耐衝撃性に優れた発泡歯車となることを見出し本発明を完成した。
本発明の発泡歯車は、少なくとも熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物に超臨界流体を溶解させ、射出成形して得た発泡歯車であって、
上記熱可塑性樹脂のSP値は、16〜29であり、
上記発泡歯車は、その発泡倍率が1.05以下であり、かつ、発泡セル径が20μm以下であることを特徴とする。
本発明の発泡歯車において、上記熱可塑性樹脂は、ポリフェニレンスルフィド、又は、ポリオキシメチレンであることが望ましい。
また、上記発泡歯車において、上記樹脂組成物は繊維を含有することが望ましい。
本発明の発泡歯車は、特定のSP値を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物に超臨界流体を溶解し射出成形して得たものであり、その発泡倍率が1.05以下で、発泡セル径が20μm以下であるため、耐衝撃性及び耐久性に優れるとともに、従来の発泡歯車では達成することが困難であった高い寸法精度を備えている。
本発明の発泡歯車を成形するための射出成形機の概要を模式的に示す断面図である。 本発明の発泡歯車の一例を模式的に示す斜視図である。
以下、本発明の発泡歯車の実施形態について詳述する。
本発明の発泡歯車は、少なくとも熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物に超臨界流体を溶解させ、射出成形して得た発泡歯車であって、
上記熱可塑性樹脂のSP値は、16〜29であり、
上記発泡歯車は、その発泡倍率が1.05以下であり、かつ、発泡セル径が20μm以下であることを特徴とする。
上記発泡歯車は、少なくとも熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物に超臨界流体を溶解させ、射出成形して得たものである。
ここで、上記熱可塑性樹脂は、そのSP値が16〜29である。
上記熱可塑性樹脂は、そのSP値が上記範囲にあると、発泡歯車が寸法精度に優れることとなるからである。
熱可塑性樹脂のSP値を上記範囲にすることにより、発泡歯車の寸法精度が向上する理由は定かではないが、以下のように推測している。
本発明者が、超臨界流体を発泡剤とした発泡成形技術を用いて射出成形により成形した発泡歯車において、寸法精度が確保できない(例えば、歯外径寸法にバラツキがある)理由を検討したところ、樹脂組成物に超臨界流体を溶解させた際に注入した超臨界流体が樹脂組成物に完全に溶解していないことが理由として考えられた。
そこで、さらに検討を重ねた結果、熱可塑性樹脂のSP値が16〜29であると、超臨界流体を熱可塑性樹脂に完全に溶解させることができ、その場合、成形した発泡歯車の寸法精度が向上することが明らかとなった。
即ち、熱可塑性樹脂のSP値を上記範囲にすることにより発泡歯車の寸法精度が向上する理由は、熱可塑性樹脂のSP値が16〜29であると、超臨界流体を熱可塑性樹脂に完全に溶解させることができるためと推測している。
なお、熱可塑性樹脂のSP値は、KreverenとHoftyzerのSP値推算法に基づき算出する。
上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミドMXD6等のポリアミド系樹脂、ポリオキシメチレン(ポリアセタール、POM)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンエチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリスチレン、ABS、AES、ASといったスチレン系樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド等が挙げられ、これらのなかで、更にSP値が16〜29のものを用いる。
これらは単独で用いても良いし、2種以上併用してもよい。なお、2種以上併用する場合、熱可塑性樹脂の混合物全体でSP値が16〜29となればよい。
上記熱可塑性樹脂としては、ポリフェニレンスルフィド、及び、ポリオキシメチレンが好ましい。耐摩耗性(耐久性)に優れるため、歯車として長期間、安定して使用することができるからである。
更に、ポリフェニレンスルフィドは、耐熱性にも優れるためより好ましい。例えば、プリンター、ファクシミリや複写機等に使用される駆動歯車は、駆動時に高温下に晒されることがあるため、このような用途に使用される場合、ポリフェニレンスルフィドからなる発泡歯車が好適である。
なお、本発明において、上記樹脂組成物とは、熱可塑性樹脂のみを含有するものであってもよく、熱可塑性樹脂とともに、繊維や他の添加剤を含有するものであってもよい。
上記樹脂組成物は、繊維を含有していてもよい。繊維を含有することにより、発泡歯車の強度がより向上することとなるからである。
従来より樹脂成形品に繊維を配合することにより強度が向上することは知られていたが、その一方で、繊維を含有する樹脂組成物を射出成形機で発泡成形した場合、寸法精度が低下することは避けることができないとの問題があった。
これに対し、本発明の発泡歯車は、繊維を含有する場合であっても寸法精度に優れることとなる。
本発明において、発泡歯車が繊維を含有する場合であっても寸法精度に優れる理由については、定かではないが以下のように推測している。
樹脂組成物に繊維を配合した場合、成形時の収縮の度合いが大きくなったり、繊維が配向したり、残留応力が大きくなったりすることにより寸法精度が低下することとなるが、上記発泡歯車では、樹脂組成物に超臨界流体を混合し、射出成形して製造されたものであり、特定の発泡倍率と発泡セル径を備えているため、成形時の収縮や繊維の配向、残留応力の発生を回避(緩和)することができるためと推測している。
ここで、成形時の収縮については、成形時に樹脂組成物の内部に発泡セルが形成されることが、収縮を緩和する点で重要な要因であると推測している。また、残留応力については、超臨界流体を溶解させることで、樹脂組成物の粘度を低下させることができ、その結果、成形時に樹脂組成物が流動抵抗を受けにくくなることが、残留応力の発生を回避する点で重要な要因であると推測している。
上記繊維としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、セラミック繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル系繊維等が挙げられる。
上記繊維の形状は特に限定されないが、平均繊維長は、20〜800μm程度であることが好ましく、平均繊維径は、5〜20μm程度であることが好ましい。
上記繊維の平均繊維長が20μm未満では、発泡歯車の強度を維持することができない場合があり、一方、800μmを超えると異方性が大きすぎるため、発泡歯車の寸法精度が低下する場合がある。
また、上記繊維の平均繊維経が5μm未満では、成形中(計量時や射出時)に繊維が折れて補強効果を得られない場合があり、一方、20μmを超えるとL/D(アスペクト比)が小さくなるため、同様に補強効果が得られないおそれがある。
上記樹脂組成物が上記繊維を含有する場合、上記繊維の含有量は、上記熱可塑性樹脂100重量部に対して、20〜40重量部であることが望ましい。
20重量部未満では、強度を向上させる目的が充分に果せない場合があり、一方、40重量部を超えると発泡歯車の寸法精度が低下するおそれがある。
上記樹脂組成物は、更に他の添加剤を含有していてもよい。
具体的には、例えば補強性フィラー、滑剤、老化防止剤、低μ化剤等を含有していてもよい。
上記超臨界流体としては、例えば、二酸化炭素、窒素、アルゴンおよびヘリウム等の不活性ガスの超臨界流体が挙げられる。
これらのなかでは、二酸化炭素、又は、窒素の超臨界流体が好ましく、窒素の超臨界流体がより好ましい。16〜29のSP値を有する熱可塑性樹脂に対する溶解性に優れるからである。
上記超臨界流体の注入量は、上記樹脂組成物100重量部に対して、0.2〜0.4重量部であることが好ましい。
0.2重量部未満では、発泡セルの数が少なく、寸法精度を向上させることができない場合があり、一方、0.4重量部を超えると飽和量を超えて樹脂に完全に溶解しきれない場合がある。
上記発泡歯車は、その発泡倍率が1.05以下である。
上記発泡倍率が1.05を超えると、発泡歯車の耐衝撃性及び耐久性が不充分となるからである。
一方、上記発泡倍率の下限は、1.00を超えれば特に限定されないが、1.01以上であることが好ましい。寸法精度により優れることとなるからである。
上記発泡倍率は、上記超臨界流体を注入せず、上記樹脂組成物のみを射出成形した以外は同条件で成形した成形体の比重を、上記発泡歯車の比重で除した値である。また、上記比重は、ASTM D792に準じて測定する。
また、上記発泡倍率は、超臨界流体の注入量、樹脂組成物の充填量、成型時の保圧を適宜選択することで上記範囲とすることができる。
また、上記発泡歯車の発泡セル径は、20μm以下である。
上記発泡セル径が20μmを超えると、発泡歯車の強度が大きく低下することとなる。
また、上記発泡セル径は、5μm以上であることが好ましい。5μm未満では、発泡歯車の寸法精度が低下する場合がある。
上記発泡セル径は、発泡歯車の断面をレーザ顕微鏡にて観察し、該断面において無作為に抽出した500個の発泡セル径の平均値である。また、各発泡セル径は、観察面において最も長い部分の長さとする。
また、上記発泡セル径は、超臨界流体の注入量、樹脂組成物の充填量、成型時の保圧を調節することで制御することができる。
上記発泡歯車は、JGMA 116−02に規定される、両歯面全かみあい誤差及び両歯面1ピッチかみあい誤差の等級がともに4級以上であることが望ましい。
プリンター、ファクシミリや複写機等に使用する駆動歯車として好適に使用することができるからである。
通常、繊維を含有する樹脂成形品からなる歯車は、高い寸法精度を確保することが困難であるが、本発明の発泡歯車は、上述した構成を備えているため、歯車中に繊維を含有しない場合は勿論のこと、繊維を含有する場合であっても高い寸法精度を確保することができる。この理由は、既に説明した通り、上記発泡歯車は、樹脂組成物に超臨界流体を混合し、射出成形して製造されたものであり、特定の発泡倍率と発泡セル径を備えているため、成形時の収縮や繊維の配向、残留応力の発生を回避(緩和)することができるためと考えている。
上記発泡歯車は、JIS B 0601(2001)に基づく最大高さRzが10μm以下であることが好ましい。上記最大高さRzが、10μmを超えると歯車の作動時に相手材を傷付ける場合があるからである。
なお、上記最大高さRzの下限は、小さければ小さいほど好ましい。
上記発泡歯車は、その表面側にスキン層を有することが好ましい。
スキン層を有することで、上記発泡歯車の製品寿命が向上することとなるからである。
本発明の発泡歯車において、スキン層とは、発泡歯車の表面側に存在する発泡セルが形成されていない領域をいう。
また、上記スキン層の厚さの比率は、ピッチ円直径上における当該スキン層を含む全体の厚さの15〜35%であることが好ましい。スキン層の厚さの比率が15%未満では、発泡歯車の強度が低下することがある。一方、スキン層の厚さの比率が35%を超えると、優れた寸法精度を確保することができないことがある。
なお、上記スキン層の厚さの比率は、発泡歯車の断面をレーザ顕微鏡にて観察し、その観察画像から算出する。
次に、本発明の発泡歯車を製造する方法について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の発泡歯車を製造するために使用する射出成形機の一例を模式的に示す断面図である。
本発明の発泡歯車は、上記少なくとも熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物と上記超臨界流体とを射出成形機に導入して、熱可塑性樹脂を溶融させるとともに、樹脂組成物に超臨界流体を溶解させ、超臨界流体が溶解した樹脂組成物をキャビティー内に射出することで製造する。
即ち、射出成形機10が備えるホッパー11を介して樹脂組成物のペレットをスクリュー13を備えた加熱シリンダー12内に投入し、樹脂組成物を溶融させるとともに、ホッパー11より先端側(ノズル14側)に配設され、ボンベ17及び超臨界流体発生装置16に接続された超臨界流体注入装置15を介して加熱シリンダー内に超臨界流体を注入し、スクリュー13を回転させることにより、樹脂組成物に超臨界流体を溶解させつつ、ノズル14側に搬送する。その後、スクリュー13を押し込むことで、超臨界流体が溶解した樹脂組成物をノズル14を介して金型18のキャビティー19内に射出し、成形する。
これにより、多数の微細な気泡(発泡セル)を有する発泡歯車を成形することができる。
上記発泡歯車の製造においては、射出完了後、保圧を掛けることが望ましい。
保圧を掛けることにより、発泡セル径が大きくなりすぎることを抑制することができるからである。
また、保圧を掛けることにより、成形ごとの成形品の寸法バラツキの発生を回避することもできる。
また、保圧を掛ける場合、ゲートシールが完了するまでの時間かけることが望ましい。
上記発泡歯車の製造においては、金型温度は、例えば、熱可塑性樹脂としてポリフェニレンスルフィドを使用する場合は、130℃〜160℃に設定することが望ましい。130℃未満では、冷却時間が短くなり寸法精度を向上させるための充分な発泡セルを形成することができない場合があり、一方、160℃を超えると、発泡セル径が大きくなりすぎ、成形品の強度を維持することができない場合がある。
上記発泡歯車の製造においては、樹脂計量スクリュー回転数は50rpm以上、樹脂計量背圧は5MPa以上に設定することが望ましい。超臨界流体を加熱シリンダー内で樹脂に完全に溶解させるためである。
このような製造方法を用いることにより、本発明の発泡歯車を製造することができる。
以下、本発明について実施例を掲げてさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
図2は、本発明の実施例で製造した発泡歯車を模式的に示す斜視図である。
実施例及び比較例では、図2に示した発泡歯車100を製造した。発泡歯車100は、歯型を並歯、モジュール(m)=1.0、圧力角(α)=20°、歯数(Z)=45、基準ピッチ円直径=φ45mm、歯元のR(R)=0.2mm、マタギ歯厚(6枚)=16.87mmの発泡歯車である。
(実施例1)
射出成形機として、MuCell(登録商標)仕様に改変した東芝機械社製、EC60−1.5Aを使用して図2に示した発泡歯車を製造した。
ここで、樹脂組成物としては、ポリフェニレンスルフィド(PPS)を樹脂成分とし、ガラス繊維(GF:平均繊維長150μm、平均繊維径10μm)を40重量%含有した樹脂組成物(出光興産社製 C−140SG)を使用し、超臨界流体としては、窒素を使用した。超臨界流体の注入量は、樹脂組成物100重量部に対して0.4重量部とした。また、ポリフェニレンスルフィドのSP値は22.76である。
また、成形条件は、以下の通りとした。
・金型温度 140℃
・保圧 60MPa(4s)
(実施例2〜4、比較例1〜5)
超臨界流体の注入量、金型温度、及び、保圧の有無を、それぞれ表1又は2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして発泡歯車を製造した。
(実施例5)
樹脂組成物として、ポリフェニレンスルフィドのみからなる樹脂組成物(フォートロン 0220A9、ポリプラスチックス社製)を使用した以外は、実施例1と同様にして発泡歯車を製造した。
(比較例6)
超臨界流体を注入しなかった以外は、実施例5と同様にして発泡歯車を製造した。
(実施例6)
射出成形機として、MuCell(登録商標)仕様に改変した東芝機械社製、EC60−1.5Aを使用して図2に示した発泡歯車を製造した。
ここで、樹脂組成物としては、ポリアセタール(POM)のみからなる樹脂組成物(ユピタール F20−03、三菱エンジニアリングプラスチックス社製)を使用し、超臨界流体としては、窒素を使用した。超臨界流体の注入量は、樹脂組成物100重量部に対して0.3重量部とした。また、ポリアセタールのSP値は22.19である。
また、成形条件は、以下の通りとした。
・金型温度 60℃
・保圧 60MPa(4s)
(比較例7)
超臨界流体を注入しなかった以外は、実施例6と同様にして発泡歯車を製造した。
(比較例8)
射出成形機として、MuCell(登録商標)仕様に改変した東芝機械社製、EC60−1.5Aを使用して図2に示した発泡歯車を製造した。
ここで、樹脂組成物としては、ポリアミド66(PA66)のみからなる樹脂組成物(アミラン CM3001−N、東レ社製)を使用し、超臨界流体としては、窒素を使用した。超臨界流体の注入量は、樹脂組成物100重量部に対して0.3重量部とした。また、ポリアミド66のSP値は31.12である。
また、成形条件は、以下の通りとした。
・金型温度 70℃
・保圧 60MPa(4s)
(発泡歯車の評価)
実施例及び比較例で製造した発泡歯車の物性について、下記の方法で測定した。結果を表1又は2に示した。なお、JGMA 116−02に準じた、両歯面1ピッチかみあい誤差及び両歯面全かみあい誤差の評価については、実施例1〜5及び比較例1〜6についてのみ評価した。また、耐久性については、繊維を含有する発泡歯車(実施例1〜4及び比較例1〜5)についてのみ評価した。
(1)発泡セル径
発泡歯車の断面をレーザ顕微鏡にて観察し、500個の発泡セルのそれぞれの発泡セル径を測定し、その平均値を算出した。
(2)発泡倍率
各実施例及び比較例において、超臨界流体を注入せず、樹脂組成物のみを射出成形した以外は同条件で未発泡歯車を製造し、この未発泡歯車の比重を、実施例又は比較例で製造した歯車の比重で除して算出した。
(3)スキン層の厚さ
発泡歯車の断面をレーザ顕微鏡にて観察し、その観察画像から、スキン層の厚さを測定した。
(4)寸法精度
(4−1)歯外径寸法バラツキ
発泡歯車の歯外径をブレードマイクロメーターにて全周測定し、その最大値と最小値の差を算出した。
(4−2)両歯面1ピッチかみあい誤差及び両歯面全かみあい誤差
JGMA 116−02に準じて評価した。
(5)耐久性(摩耗量)
発泡歯車を相手歯車(PA66製)とかみ合わせて耐久試験(評価条件/トルク49N・cm、回転数990rpm、雰囲気温度140℃、評価時間48時間)を行い、試験後の重量減少から体積換算した摩耗量を測定し、評価した。
(6)耐衝撃性
シャルピー衝撃強さを、ISO 179−1に準拠して測定した。
(7)表面粗さ
歯車成形品で歯面部分の表面粗度Rz(JIS B 0601に準拠した最大高さRz)を測定した。
また、測定条件は、以下の通りとした。
・測定長さ 4.8mm
・速度 0.05mm/s
Figure 0005801072
Figure 0005801072
表1に示したように、SP値が16〜29の熱可塑性樹脂に超臨界流体を溶解させて製造した発泡倍率が1.05以下で、発泡セル径が20μm以下の発泡歯車は、寸法精度に優れるとともに、耐久性及び耐衝撃性にも優れることが明らかとなった。
これに対して、表2に示したように、SP値が上記範囲を外れる熱可塑性樹脂を使用した場合や、超臨界流体を溶解させず成形した場合、発泡倍率や発泡セル径が上記範囲を外れる場合、製造した発泡歯車は、優れた寸法精度を確保するとともに、優れた耐久性及び耐衝撃性を満足することができないことが明らかとなった。
10 射出成形機
11 ホッパー
12 加熱シリンダー
13 スクリュー
14 ノズル
15 超臨界流体注入装置
16 超臨界流体発生装置
17 ボンベ
18 金型
19 キャビティー
100 発泡歯車

Claims (5)

  1. 少なくとも熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物に超臨界流体を溶解させ、射出成形して得た発泡歯車であって、
    前記熱可塑性樹脂は、ポリフェニレンスルフィド、又は、ポリオキシメチレンであり、
    前記発泡歯車は、その発泡倍率が1.05以下であり、かつ、発泡セル径が20μm以下である
    ことを特徴とする発泡歯車。
  2. 前記樹脂組成物は繊維を含有する請求項1に記載の発泡歯車。
  3. 前記超臨界流体の注入量は、前記熱可塑性樹脂100重量部に対して、0.2〜0.4重量部である請求項1又は2に記載の発泡歯車。
  4. 前記発泡歯車は、表面側にスキン層を有する請求項1、2又は3に記載の発泡歯車。
  5. 前記スキン層の厚さは、スキン層を含む全体の厚さの15〜35%である請求項4に記載の発泡歯車。
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