JP5801072B2 - 発泡歯車 - Google Patents
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Description
そして、これらの分野において、例えば、駆動機構を構成する駆動歯車では、特に高い寸法精度と強度(耐久性及び耐衝撃性)とが求められている。
また、例えば、特許文献4には、特定のメルトインデックスを有するポリフェニレンスルフィド樹脂と超臨界流体とを射出成形機に導入し、射出成形して得たポリフェニレンスルフィド樹脂の発泡形成品が開示されている。
上記熱可塑性樹脂のSP値は、16〜29であり、
上記発泡歯車は、その発泡倍率が1.05以下であり、かつ、発泡セル径が20μm以下であることを特徴とする。
また、上記発泡歯車において、上記樹脂組成物は繊維を含有することが望ましい。
本発明の発泡歯車は、少なくとも熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物に超臨界流体を溶解させ、射出成形して得た発泡歯車であって、
上記熱可塑性樹脂のSP値は、16〜29であり、
上記発泡歯車は、その発泡倍率が1.05以下であり、かつ、発泡セル径が20μm以下であることを特徴とする。
ここで、上記熱可塑性樹脂は、そのSP値が16〜29である。
上記熱可塑性樹脂は、そのSP値が上記範囲にあると、発泡歯車が寸法精度に優れることとなるからである。
熱可塑性樹脂のSP値を上記範囲にすることにより、発泡歯車の寸法精度が向上する理由は定かではないが、以下のように推測している。
そこで、さらに検討を重ねた結果、熱可塑性樹脂のSP値が16〜29であると、超臨界流体を熱可塑性樹脂に完全に溶解させることができ、その場合、成形した発泡歯車の寸法精度が向上することが明らかとなった。
即ち、熱可塑性樹脂のSP値を上記範囲にすることにより発泡歯車の寸法精度が向上する理由は、熱可塑性樹脂のSP値が16〜29であると、超臨界流体を熱可塑性樹脂に完全に溶解させることができるためと推測している。
なお、熱可塑性樹脂のSP値は、KreverenとHoftyzerのSP値推算法に基づき算出する。
これらは単独で用いても良いし、2種以上併用してもよい。なお、2種以上併用する場合、熱可塑性樹脂の混合物全体でSP値が16〜29となればよい。
更に、ポリフェニレンスルフィドは、耐熱性にも優れるためより好ましい。例えば、プリンター、ファクシミリや複写機等に使用される駆動歯車は、駆動時に高温下に晒されることがあるため、このような用途に使用される場合、ポリフェニレンスルフィドからなる発泡歯車が好適である。
なお、本発明において、上記樹脂組成物とは、熱可塑性樹脂のみを含有するものであってもよく、熱可塑性樹脂とともに、繊維や他の添加剤を含有するものであってもよい。
従来より樹脂成形品に繊維を配合することにより強度が向上することは知られていたが、その一方で、繊維を含有する樹脂組成物を射出成形機で発泡成形した場合、寸法精度が低下することは避けることができないとの問題があった。
これに対し、本発明の発泡歯車は、繊維を含有する場合であっても寸法精度に優れることとなる。
本発明において、発泡歯車が繊維を含有する場合であっても寸法精度に優れる理由については、定かではないが以下のように推測している。
樹脂組成物に繊維を配合した場合、成形時の収縮の度合いが大きくなったり、繊維が配向したり、残留応力が大きくなったりすることにより寸法精度が低下することとなるが、上記発泡歯車では、樹脂組成物に超臨界流体を混合し、射出成形して製造されたものであり、特定の発泡倍率と発泡セル径を備えているため、成形時の収縮や繊維の配向、残留応力の発生を回避(緩和)することができるためと推測している。
ここで、成形時の収縮については、成形時に樹脂組成物の内部に発泡セルが形成されることが、収縮を緩和する点で重要な要因であると推測している。また、残留応力については、超臨界流体を溶解させることで、樹脂組成物の粘度を低下させることができ、その結果、成形時に樹脂組成物が流動抵抗を受けにくくなることが、残留応力の発生を回避する点で重要な要因であると推測している。
上記繊維の平均繊維長が20μm未満では、発泡歯車の強度を維持することができない場合があり、一方、800μmを超えると異方性が大きすぎるため、発泡歯車の寸法精度が低下する場合がある。
また、上記繊維の平均繊維経が5μm未満では、成形中(計量時や射出時)に繊維が折れて補強効果を得られない場合があり、一方、20μmを超えるとL/D(アスペクト比)が小さくなるため、同様に補強効果が得られないおそれがある。
20重量部未満では、強度を向上させる目的が充分に果せない場合があり、一方、40重量部を超えると発泡歯車の寸法精度が低下するおそれがある。
具体的には、例えば補強性フィラー、滑剤、老化防止剤、低μ化剤等を含有していてもよい。
これらのなかでは、二酸化炭素、又は、窒素の超臨界流体が好ましく、窒素の超臨界流体がより好ましい。16〜29のSP値を有する熱可塑性樹脂に対する溶解性に優れるからである。
0.2重量部未満では、発泡セルの数が少なく、寸法精度を向上させることができない場合があり、一方、0.4重量部を超えると飽和量を超えて樹脂に完全に溶解しきれない場合がある。
上記発泡倍率が1.05を超えると、発泡歯車の耐衝撃性及び耐久性が不充分となるからである。
一方、上記発泡倍率の下限は、1.00を超えれば特に限定されないが、1.01以上であることが好ましい。寸法精度により優れることとなるからである。
上記発泡倍率は、上記超臨界流体を注入せず、上記樹脂組成物のみを射出成形した以外は同条件で成形した成形体の比重を、上記発泡歯車の比重で除した値である。また、上記比重は、ASTM D792に準じて測定する。
また、上記発泡倍率は、超臨界流体の注入量、樹脂組成物の充填量、成型時の保圧を適宜選択することで上記範囲とすることができる。
上記発泡セル径が20μmを超えると、発泡歯車の強度が大きく低下することとなる。
また、上記発泡セル径は、5μm以上であることが好ましい。5μm未満では、発泡歯車の寸法精度が低下する場合がある。
上記発泡セル径は、発泡歯車の断面をレーザ顕微鏡にて観察し、該断面において無作為に抽出した500個の発泡セル径の平均値である。また、各発泡セル径は、観察面において最も長い部分の長さとする。
また、上記発泡セル径は、超臨界流体の注入量、樹脂組成物の充填量、成型時の保圧を調節することで制御することができる。
プリンター、ファクシミリや複写機等に使用する駆動歯車として好適に使用することができるからである。
通常、繊維を含有する樹脂成形品からなる歯車は、高い寸法精度を確保することが困難であるが、本発明の発泡歯車は、上述した構成を備えているため、歯車中に繊維を含有しない場合は勿論のこと、繊維を含有する場合であっても高い寸法精度を確保することができる。この理由は、既に説明した通り、上記発泡歯車は、樹脂組成物に超臨界流体を混合し、射出成形して製造されたものであり、特定の発泡倍率と発泡セル径を備えているため、成形時の収縮や繊維の配向、残留応力の発生を回避(緩和)することができるためと考えている。
なお、上記最大高さRzの下限は、小さければ小さいほど好ましい。
スキン層を有することで、上記発泡歯車の製品寿命が向上することとなるからである。
本発明の発泡歯車において、スキン層とは、発泡歯車の表面側に存在する発泡セルが形成されていない領域をいう。
また、上記スキン層の厚さの比率は、ピッチ円直径上における当該スキン層を含む全体の厚さの15〜35%であることが好ましい。スキン層の厚さの比率が15%未満では、発泡歯車の強度が低下することがある。一方、スキン層の厚さの比率が35%を超えると、優れた寸法精度を確保することができないことがある。
なお、上記スキン層の厚さの比率は、発泡歯車の断面をレーザ顕微鏡にて観察し、その観察画像から算出する。
図1は、本発明の発泡歯車を製造するために使用する射出成形機の一例を模式的に示す断面図である。
本発明の発泡歯車は、上記少なくとも熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物と上記超臨界流体とを射出成形機に導入して、熱可塑性樹脂を溶融させるとともに、樹脂組成物に超臨界流体を溶解させ、超臨界流体が溶解した樹脂組成物をキャビティー内に射出することで製造する。
即ち、射出成形機10が備えるホッパー11を介して樹脂組成物のペレットをスクリュー13を備えた加熱シリンダー12内に投入し、樹脂組成物を溶融させるとともに、ホッパー11より先端側(ノズル14側)に配設され、ボンベ17及び超臨界流体発生装置16に接続された超臨界流体注入装置15を介して加熱シリンダー内に超臨界流体を注入し、スクリュー13を回転させることにより、樹脂組成物に超臨界流体を溶解させつつ、ノズル14側に搬送する。その後、スクリュー13を押し込むことで、超臨界流体が溶解した樹脂組成物をノズル14を介して金型18のキャビティー19内に射出し、成形する。
これにより、多数の微細な気泡(発泡セル)を有する発泡歯車を成形することができる。
保圧を掛けることにより、発泡セル径が大きくなりすぎることを抑制することができるからである。
また、保圧を掛けることにより、成形ごとの成形品の寸法バラツキの発生を回避することもできる。
また、保圧を掛ける場合、ゲートシールが完了するまでの時間かけることが望ましい。
このような製造方法を用いることにより、本発明の発泡歯車を製造することができる。
図2は、本発明の実施例で製造した発泡歯車を模式的に示す斜視図である。
実施例及び比較例では、図2に示した発泡歯車100を製造した。発泡歯車100は、歯型を並歯、モジュール(m)=1.0、圧力角(α)=20°、歯数(Z)=45、基準ピッチ円直径=φ45mm、歯元のR(R)=0.2mm、マタギ歯厚(6枚)=16.87mmの発泡歯車である。
射出成形機として、MuCell(登録商標)仕様に改変した東芝機械社製、EC60−1.5Aを使用して図2に示した発泡歯車を製造した。
ここで、樹脂組成物としては、ポリフェニレンスルフィド(PPS)を樹脂成分とし、ガラス繊維(GF:平均繊維長150μm、平均繊維径10μm)を40重量%含有した樹脂組成物(出光興産社製 C−140SG)を使用し、超臨界流体としては、窒素を使用した。超臨界流体の注入量は、樹脂組成物100重量部に対して0.4重量部とした。また、ポリフェニレンスルフィドのSP値は22.76である。
また、成形条件は、以下の通りとした。
・金型温度 140℃
・保圧 60MPa(4s)
超臨界流体の注入量、金型温度、及び、保圧の有無を、それぞれ表1又は2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして発泡歯車を製造した。
樹脂組成物として、ポリフェニレンスルフィドのみからなる樹脂組成物(フォートロン 0220A9、ポリプラスチックス社製)を使用した以外は、実施例1と同様にして発泡歯車を製造した。
超臨界流体を注入しなかった以外は、実施例5と同様にして発泡歯車を製造した。
射出成形機として、MuCell(登録商標)仕様に改変した東芝機械社製、EC60−1.5Aを使用して図2に示した発泡歯車を製造した。
ここで、樹脂組成物としては、ポリアセタール(POM)のみからなる樹脂組成物(ユピタール F20−03、三菱エンジニアリングプラスチックス社製)を使用し、超臨界流体としては、窒素を使用した。超臨界流体の注入量は、樹脂組成物100重量部に対して0.3重量部とした。また、ポリアセタールのSP値は22.19である。
また、成形条件は、以下の通りとした。
・金型温度 60℃
・保圧 60MPa(4s)
超臨界流体を注入しなかった以外は、実施例6と同様にして発泡歯車を製造した。
射出成形機として、MuCell(登録商標)仕様に改変した東芝機械社製、EC60−1.5Aを使用して図2に示した発泡歯車を製造した。
ここで、樹脂組成物としては、ポリアミド66(PA66)のみからなる樹脂組成物(アミラン CM3001−N、東レ社製)を使用し、超臨界流体としては、窒素を使用した。超臨界流体の注入量は、樹脂組成物100重量部に対して0.3重量部とした。また、ポリアミド66のSP値は31.12である。
また、成形条件は、以下の通りとした。
・金型温度 70℃
・保圧 60MPa(4s)
実施例及び比較例で製造した発泡歯車の物性について、下記の方法で測定した。結果を表1又は2に示した。なお、JGMA 116−02に準じた、両歯面1ピッチかみあい誤差及び両歯面全かみあい誤差の評価については、実施例1〜5及び比較例1〜6についてのみ評価した。また、耐久性については、繊維を含有する発泡歯車(実施例1〜4及び比較例1〜5)についてのみ評価した。
(1)発泡セル径
発泡歯車の断面をレーザ顕微鏡にて観察し、500個の発泡セルのそれぞれの発泡セル径を測定し、その平均値を算出した。
各実施例及び比較例において、超臨界流体を注入せず、樹脂組成物のみを射出成形した以外は同条件で未発泡歯車を製造し、この未発泡歯車の比重を、実施例又は比較例で製造した歯車の比重で除して算出した。
発泡歯車の断面をレーザ顕微鏡にて観察し、その観察画像から、スキン層の厚さを測定した。
(4−1)歯外径寸法バラツキ
発泡歯車の歯外径をブレードマイクロメーターにて全周測定し、その最大値と最小値の差を算出した。
(4−2)両歯面1ピッチかみあい誤差及び両歯面全かみあい誤差
JGMA 116−02に準じて評価した。
発泡歯車を相手歯車(PA66製)とかみ合わせて耐久試験(評価条件/トルク49N・cm、回転数990rpm、雰囲気温度140℃、評価時間48時間)を行い、試験後の重量減少から体積換算した摩耗量を測定し、評価した。
シャルピー衝撃強さを、ISO 179−1に準拠して測定した。
歯車成形品で歯面部分の表面粗度Rz(JIS B 0601に準拠した最大高さRz)を測定した。
また、測定条件は、以下の通りとした。
・測定長さ 4.8mm
・速度 0.05mm/s
これに対して、表2に示したように、SP値が上記範囲を外れる熱可塑性樹脂を使用した場合や、超臨界流体を溶解させず成形した場合、発泡倍率や発泡セル径が上記範囲を外れる場合、製造した発泡歯車は、優れた寸法精度を確保するとともに、優れた耐久性及び耐衝撃性を満足することができないことが明らかとなった。
11 ホッパー
12 加熱シリンダー
13 スクリュー
14 ノズル
15 超臨界流体注入装置
16 超臨界流体発生装置
17 ボンベ
18 金型
19 キャビティー
100 発泡歯車
Claims (5)
- 少なくとも熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物に超臨界流体を溶解させ、射出成形して得た発泡歯車であって、
前記熱可塑性樹脂は、ポリフェニレンスルフィド、又は、ポリオキシメチレンであり、
前記発泡歯車は、その発泡倍率が1.05以下であり、かつ、発泡セル径が20μm以下である
ことを特徴とする発泡歯車。 - 前記樹脂組成物は繊維を含有する請求項1に記載の発泡歯車。
- 前記超臨界流体の注入量は、前記熱可塑性樹脂100重量部に対して、0.2〜0.4重量部である請求項1又は2に記載の発泡歯車。
- 前記発泡歯車は、表面側にスキン層を有する請求項1、2又は3に記載の発泡歯車。
- 前記スキン層の厚さは、スキン層を含む全体の厚さの15〜35%である請求項4に記載の発泡歯車。
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