JP5799494B2 - ダイクエンチ用プレス加工装置 - Google Patents
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Description
ダイクエンチは、鋼板をオーステナイト変態が開始する温度(以下、オーステナイト変態開始温度と呼ぶ)以上にまで加熱した後に、金型で成形し、さらにその後、マルテンサイト変態が開始する温度(以下、マルテンサイト変態開始温度と呼ぶ)以下にまで急冷して焼入れするようにしている。そして、ダイクエンチを採用した場合、残留応力が少なく、遅れ破壊が発生しにくい高強度のプレス加工部品を得ることができるため、近年広く採用されている。
またこの場合、硬度が高いプレス加工部品に対して抜き加工を施すことになるため、抜き加工に使用する抜き刃等の寿命が短くなり、プレス加工装置のメンテナンス費用が多大になるという問題もあった。
これらの場合、抜き加工をプレス加工とは別の工程で行う必要があるため、加工時間が長くなり、また工程スペースも大きくなるという問題があった。
特許文献1に開示された従来技術に係るプレス加工方法では、被加工材料に対する通電加熱工程を、抜き工程の後に行うようにしている。
これにより、ダイクエンチを採用した場合であっても、被加工材料に対する抜き加工を可能にしつつ、被加工材料をより効率よく加熱することができる。
また、特許文献1に開示された従来技術に係るプレス加工方法では、抜き加工後に通電加熱を行うため、電極の設置位置が適切でない場合には、通電時において孔部の周辺に電流が集中し、孔部周辺が過熱状態となって、適切な焼入れができないという問題があった。
まず始めに、本発明の一実施形態に係るダイクエンチ用プレス加工装置の全体構成について、図1および図2を用いて説明をする。
図1に示す如く、本発明の一実施形態に係るダイクエンチ用のプレス加工装置であるプレス加工装置1は、被加工材料10をダイクエンチによりプレス加工して、高強度のプレス加工製品を生成することができる装置であり、ダイ2、変位部3、加熱部4、冷却部5、駆動部6等からなる構成としている。
また、プレス加工装置1は、被加工材料10に対して抜き加工を施すための部位である、第一抜き加工部7、第二抜き加工部8、第三抜き加工部9を備えている。
そして、各冷却水孔5a・5aに連通する接続口5b・5bに図示しない冷却水設備を接続して、制御部1aからの動作指令に応じて(図2参照)、冷却水を供給することによって、上型2aを冷却する構成としている。さらに、冷却部5は、制御部1aからの動作指令に応じて、供給する冷却水の水量や冷却水温度等を調整することによって、上型2aの温度を調整し、冷却速度等の焼入れ条件を調整する構成としている。
駆動部6は、上型2aの上方において、各油圧シリンダ6a・6a・・・を各孔部2c・2d・2eに臨ませて配置する構成としており、各油圧シリンダ6a・6a・・・を下方に変位させることによって、クッション部材11・12を介して、各孔部2c・2d・2eに内蔵される部位(後述する各支持部7b・8b・9b)を下方に向けて押圧することができる構成としている。
抜き刃7aは、支持部7bの下端部において固設されており、また、抜き刃7aおよび支持部7bは、上型2aに形成された孔部2c内に収容されている。
支持部7bは、バネ部材13によって、図1における上方に変位する方向へ付勢されており、定常状態においては、支持部7bの下端部において固設されている抜き刃7aが、上型2aの成形面から下方に突出しない位置を保持する構成としている。
また、支持部7bは上端部が油圧シリンダ6aと当接しており、油圧シリンダ6aが下方に変位することによって、抜き刃7aを上型2aの下端部における成形面よりも外側(下方)に突出する位置まで変位させる構成としている。
抜き刃8aは、支持部8b・8cの下端部において固設されており、上型2aに形成された孔部2d・2e内に収容されている。
支持部8b・8cは、それぞれバネ部材14およびバネ部材15・16によって、図1における上方に変位する方向へ付勢されており、定常状態においては、支持部8b・8cの下端部において固設されている抜き刃8aが、上型2aの成形面から下方に突出しない位置を保持する構成としている。
そして、支持部8b・8cは上端部が油圧シリンダ6a・6a・6aと当接しており、油圧シリンダ6a・6aが下方に変位することによって、抜き刃8a・8aを上型2aの下端部における成形面よりも外側(下方)に突出させるように変位させる構成としている。
抜き刃9aは、カム機構9bに固設されており、また、カム機構9bは、第二抜き加工部8の支持部8cの下部に当接可能な位置に配置されている。
そして、抜き刃9aは、上型2aに形成された孔部2f内に収容されている。
そして、油圧シリンダ6aが下方に変位して、第二抜き加工部8の支持部8cが下方に変位することによって、第二抜き加工部8の動作にリンクしてカム機構9bを作動させる構成としている。
カム機構9bが作動することによって、抜き刃9aを、該抜き刃9aの先端部が、上型2aの成形面から斜め下方に突出する位置まで変位させる構成としている。
このため、上型2aおよび下型2bで被加工材料10をプレス加工している最中に(即ち、ダイ2を型閉めした状態において)、各抜き加工部7・8・9を作動させることによって、ダイクエンチによるプレス加工工程の期間内に抜き加工を行うことを可能にしている。
また、本実施形態では、被加工材料10に対する抜き加工を、油圧機構やカム機構により動作する各抜き加工部7・8・9で抜き加工を実現する態様としているが、抜き加工を実現するための機構の態様はこれに限定するものではない。
図4に示す如く、プレス加工装置1を用いた被加工材料10のプレス加工工程においては、プレス加工装置1の所定位置に被加工材料10を配置する前に、該被加工材料10を型外の加熱部4の各電極部4a・4bに接続して加熱する。
そして、この状態は、図3における時刻T0から時刻T1までの期間に対応しており、このときの被加工材料10の温度を温度A1としている。
ここでの目標温度である温度A2は、図3に示すように被加工材料10のオーステナイト変態開始温度Aaよりも高い温度に設定している。
例えば、本実施形態では、オーステナイト変態開始温度Aaがおよそ830℃であって、施されている亜鉛メッキ(Zn)の沸点がおよそ907℃である被加工材料10を使用しているため、温度A2を、830〜907℃の温度に設定している。
そして、被加工材料10の温度が、フェライト変態開始温度Afまで冷却されるよりも前である時刻T3から、ダイ2によるプレス加工(即ち、上型2aの変位させる)に移行する。
例えば、本実施形態では、フェライト変態開始温度Afがおよそ650℃であって、施されている亜鉛メッキ(Zn)が固体化する温度がおよそ700℃である被加工材料10を使用しているため、ダイ2によるプレス加工に移行するときの温度A3を、650〜700℃の温度に設定している。
また、図3に示す如く、上型2aは、位置L1(上死点)と位置L2(下死点)の間で変位可能であり、本実施形態では、時刻T3から時刻T5の間に、制御部1aからの動作指令に応じて、変位部3によって、上型2aを位置L1から位置L2まで変位させて、プレス加工を行う構成としている。
例えば、本実施形態では、およそ200℃以下でマルテンサイト変態が終了する被加工材料10を使用しているため、プレス加工が完了するときの温度A5を、200℃以下の温度に設定している。
以上で、ダイクエンチによるプレス加工工程を完了する。
図3に示す如く、プレス加工装置1を用いたダイクエンチによるプレス加工工程では、上型2aが下死点(位置L2)まで変位した時刻T5の後、被加工材料10の温度がマルテンサイト変態開始温度Am以下となる時刻Tmの前に、図6に示すように、各抜き加工部7・8・9を作動させて、被加工材料10に抜き加工を施すようにしている。
即ち、時刻Tbは、時刻Tmよりも前であって、時刻Tbのときには、既に抜き加工が完了している。
そして、時刻Tcまでに、駆動部6の動作を解除して、各抜き加工部7・8・9の作動状態を解除している。尚、時刻Tcは時刻Tmよりも前である必要はない。
例えば、本実施形態では、マルテンサイト変態開始温度Amがおよそ400℃である被加工材料10を使用しているため、抜き加工が完了する時刻Tbにおける被加工材料10の温度A4を、マルテンサイト変態開始温度Am(およそ400℃)よりも高い温度に設定している。
尚、マルテンサイト変態開始温度Amは、被加工材料10の材質に応じて異なるものであり、使用する被加工材料10の材質に応じて、抜き加工完了時の温度の目標値A4が設定される。
さらに、プレス加工工程の期間中に抜き加工が完了するため、別途抜き加工のための工程を設ける必要がなく、加工時間の短縮化および加工スペース等の削減等を実現することができる。
このような構成により、ダイクエンチにおいて、遅れ破壊を生じさせることなく、被加工材料10に抜き加工を施すことができる。また、各抜き刃7a・8a・9aの寿命を延ばすことができる。
このような構成により、ダイクエンチのプレス加工時間を延ばすことなく、被加工材料10に抜き加工を施すことができる。
このような構成により、遅れ破壊を生じさせることなく、被加工材料10に抜き加工を施すことができる。また、各抜き刃7a・8a・9aの寿命を延ばすことができる。さらに、ダイクエンチのプレス加工時間を延ばすことなく、被加工材料10に抜き加工を施すことができる。
2 ダイ
2a 上型
2b 下型
3 変位部
4 加熱部
5 冷却部
6 駆動部
7 第一抜き加工部
7a 抜き刃
8 第二抜き加工部
8a 抜き刃
9 第三抜き加工部
9a 抜き刃
10 被加工材料
Claims (1)
- 被加工材料に通電するための電極部と、
前記被加工材料を製品形状に成形するための複数の型部からなるダイと、
前記複数の型部を相対変位させるための変位部と、
前記ダイを冷却するための冷却部と、
を備え、
前記電極部により、前記被加工材料に対して通電することにより、該被加工材料をオーステナイト変態開始温度以上に加熱しておくとともに、
前記変位部により、前記ダイを型開きして、該ダイの所定の位置にオーステナイト変態開始温度以上に加熱した前記被加工材料を配置して、
その後、前記変位部により、前記ダイを型閉めして、前記被加工材料を製品形状に成形するとともに、
前記冷却部により所定の温度に冷却した前記ダイを前記被加工材料に接触させることにより、該被加工材料をマルテンサイト変態終了温度以下にまで冷却して焼入れをするダイクエンチ用プレス加工装置であって、
前記ダイは、
前記被加工材料に抜き加工を施すための複数の抜き刃と、
該複数の抜き刃を駆動するための一つの駆動部と、をさらに備え、
前記ダイを型閉めし、下死点に到達させた状態で、
前記一つの駆動部により、
前記被加工材料が、フェライト変態開始温度以下に冷却された後で、かつ、マルテンサイト変態開始温度以下に冷却される前に、
前記複数の抜き刃を駆動して、
オーステナイト状態の前記被加工材料に対して抜き加工を施し、
前記被加工材料が、マルテンサイト変態開始温度以下に冷却される前に、抜き加工を終了する、
ことを特徴とするダイクエンチ用プレス加工装置。
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