ここでは、まず本発明にかかる転写装置の一実施形態としての印刷装置の全体構成を説明した後、装置各部の構成および動作を詳しく説明する。この実施形態は基板表面に所定のパターンを転写により形成する転写装置であるが、以下に説明するように、版PPを用いてブランケットBL上に所定パターンのパターニングを行い、これを基板SBに転写するという印刷技術と同様のプロセスを採用していることから、本明細書ではこの装置を「印刷装置」と称している。
A.装置の全体構成
図1は、本発明にかかる印刷装置の一実施形態を示す斜視図であり、装置内部の構成を明示するために、装置カバーを外した状態の装置構成を図示している。また、図2は図1の装置の電気的構成を示すブロック図である。この印刷装置100は、装置の左側面側より装置内部に搬入される版の下面に対して、装置の正面側より装置内部に搬入されるブランケットの上面を密着させた後で剥離することで、版の下面に形成されたパターンによりブランケット上の塗布層をパターニングしてパターン層を形成する(パターニング処理)。また、印刷装置100は、装置の右側面側より装置内部に搬入される基板の下面に対して、パターニング処理されたブランケットの上面を密着させた後で剥離することで、そのブランケットに形成されたパターン層を基板の下面に転写する(転写処理)。なお、図1および後で説明する各図では、装置各部の配置関係を明確にするために、版および基板の搬送方向を「X方向」とし、図1の右手側から左手側に向かう水平方向を「+X方向」と称し、逆方向を「−X方向」と称する。また、X方向と直交する水平方向のうち、装置の正面側を「+Y方向」と称するとともに、装置の背面側を「−Y方向」と称する。さらに、鉛直方向における上方向および下方向をそれぞれ「+Z方向」および「−Z方向」と称する。
この印刷装置100では、バネ方式の除振台11の上に本体ベース12が載置され、さらに本体ベース12上に石定盤13が取り付けられている。また、この石定盤13の上面中央に2本のアーチ状フレーム14L、14Rが互いにX方向に離間しながら立設されている。これらのアーチ状フレーム14L、14Rの(−Y)側上端部には、2本の水平プレート15が連結されて第1フレーム構造体が構成されている。また、この第1フレーム構造体により覆われるように、第2フレーム構造体が石定盤13の上面に設けられている。より詳しくは、図1に示すように、各アーチ状フレーム14L、14Rの直下位置でフレーム14L、14Rよりも小型のアーチ状フレーム16L、16Rが石定盤13に立設されている。また、X方向に延設される複数の水平プレート17が各フレーム16L、16Rで柱部位同士を接続し、またY方向に延設される複数の水平プレート17がフレーム16L、16R同士を接続している。
このように構成されたフレーム構造体の間では、フレーム14L、16Lの梁部位の間、ならびにフレーム14R、16Rの梁部位の間に搬送空間が形成されており、当該搬送空間を介して版及び基板を水平姿勢に保持した状態で搬送可能となっている。本実施形態では、第2フレーム構造体の後側、つまり(−Y)側に搬送部2が設けられて版および基板をX方向に搬送可能となっている。
また、第1フレーム構造体を構成する水平プレート15に対して上ステージ部3が固定されて搬送部2により搬送される版および基板の上面を吸着保持可能となっている。つまり、搬送部2の版用シャトルによって版が図1の左手側から搬送空間を介して上ステージ部3の直下位置に搬送された後、上ステージ部3の吸着プレートが下降して版を吸着保持する。逆に、版用シャトルが上ステージ部3の直下位置に位置した状態で版を吸着した吸着プレートが吸着を解除すると、版が搬送部2に移載される。こうして、搬送部2と上ステージ部3との間で、版の受渡しが行われる。
また、基板についても版と同様にして上ステージ部3に保持される。すなわち、搬送部2の基板用シャトルによって基板が図1の右手側から搬送空間を介して上ステージ部3の直下位置に搬送された後、上ステージ部3の吸着プレートが下降して基板を吸着保持する。逆に、基板用シャトルが上ステージ部3の直下位置に位置した状態で基板を吸着した上ステージ部3の吸着プレートが吸着を解除すると、基板が搬送部2に移載される。こうして、搬送部2と上ステージ部3との間で、基板の受渡しが行われる。
上ステージ部3の鉛直方向の下方(以下「鉛直下方」あるいは「(−Z)方向」という)では、石定盤13の上面にアライメント部4が配置されている。そして、アライメント部4のアライメントステージ上に下ステージ部5が載置されて下ステージ部5の上面が上ステージ部3の吸着プレートと対向している。この下ステージ部5の上面はブランケットを吸着保持可能となっており、制御部6がアライメントステージを制御することで下ステージ部5上のブランケットを高精度に位置決め可能となっている。
このように、本実施形態では、上ステージ部3と下ステージ部5とが鉛直方向Zにおいて互いに対向配置されている。そして、それらの間に、下ステージ部5上に載置されるブランケットを上方より押さえる押さえ部7と、版、基板およびブランケットのプリアライメントを行うプリアライメント部8とがそれぞれ配置され、第2フレーム構造体に固定されている。
プリアライメント部8では、プリアライメント上部およびプリアライメント下部が鉛直方向Zに2段で積層配置されている。このプリアライメント上部は上ステージ部3の吸着プレートの直下位置に位置決めされた版用シャトルに保持される版にアクセスして版用シャトル上で版の位置合せを行う(版のプリアライメント処理)。また、吸着プレートの直下位置に位置決めされた基板用シャトルに保持される基板SBにアクセスして基板用シャトル上で基板の位置合せを行う(基板のプリアライメント処理)。さらに、プリアライメント下部は下ステージ部5の吸着プレート上に載置されたブランケットにアクセスして当該吸着プレート上でブランケットの位置合せを行う(ブランケットのプリアライメント処理)。
ブランケット上のパターン層を基板に精密に転写するためには、基板のプリアライメント処理以外に、精密なアライメント処理が必要となる。このため、本実施形態では、アライメント部4は4台のCCD(Charge Coupled Device)カメラCMa〜CMdを有しており、各CCDカメラCMa〜CMdにより上ステージ部3に保持される基板と、下ステージ部5に保持されるブランケットとの各々に形成されるアライメントマークを読み取り可能となっている。そして、CCDカメラCMa〜CMdによる読取画像に基づいて制御部6がアライメントステージを制御することで、上ステージ部3で保持される基板に対し、下ステージ部5で吸着されるブランケットを精密に位置合せすることが可能となっている。
また、ブランケット上のパターン層を基板に転写した後、ブランケットを基板から剥離するが、その剥離段階で静電気が発生する。また、版によりブランケット上の塗布層をパターニングした後、ブランケットを版から剥離した際にも、静電気が発生する。そこで、本実施形態では、静電気を除電するために、除電部9が設けられている。この除電部9は、第1フレーム構造体の左側、つまり(+X)側より上ステージ部3と下ステージ部5で挟まれた空間に向けてイオンを照射するイオナイザ91を有している。
なお、図1への図示を省略しているが、装置カバーのうち(+X)側カバーには版を搬入出するための開口が設けられるとともに、版用開口を開閉する版用シャッター(後の図13中の符号18)が設けられている。そして、制御部6のバルブ制御部64が版用シャッター駆動シリンダCL11に接続されるバルブの開閉を切り替えることで、版用シャッター駆動シリンダCL11を作動させて版用シャッターを開閉駆動する。なお、この実施形態では、シリンダCL11を駆動するための駆動源として加圧エアーを用いており、その正圧供給源として工場の用力を用いているが、装置100がエアー供給部を装備し、当該エアー供給部によりシリンダCL11を駆動するように構成してもよい。この点については、後で説明するシリンダについても同様である。
また、本実施形態では、(−X)側カバーおよび(+Y)側カバーにも、それぞれ基板およびブランケットを搬入出するための開口が設けられるとともに、基板用開口に対して基板用シャッター(後の図13中の符号19)およびブランケット用開口に対してブランケット用シャッター(図示省略)がそれぞれ設けられている。そして、バルブ制御部64によるバルブ開閉により基板用シャッター駆動シリンダCL12およびブランケット用シャッター駆動シリンダCL13がそれぞれ開閉駆動される。
このように、本実施形態では、3つのシャッターと3つのシャッター駆動シリンダCL11〜CL13によりシャッター部10が構成されており、版、基板およびブランケットをそれぞれ独立して印刷装置100に対して搬入出可能となっている。なお、本実施形態では、図1への図示を省略しているが、版の搬入出のために版用搬入出ユニットが装置100の左手側に並設されるとともに、基板の搬入出のために基板用搬入出ユニットが装置100の右手側に並設されているが、版を搬送するための搬送ロボット(図示省略)が直接的に搬送部2の版用シャトルにアクセスして版の搬入出を行うように構成してもよく、この場合、版用搬入出ユニットの設置は不要となる。この点に関しては、基板側でも同様である。つまり、基板を搬送するための搬送ロボット(図示省略)が直接的に搬送部2の基板用シャトルにアクセスして基板の搬入出を行うように構成することで、基板用搬入出ユニットの設置は不要となる。
一方、本実施形態では、ブランケットの搬入出については、ブランケットを搬送するための搬送ロボットを用いて行っている。すなわち、当該搬送ロボットが下ステージ部5に対してアクセスして処理前のブランケットを直接的に搬入し、また使用後のブランケットを受け取り搬出する。もちろん、版や基板と同様に、専用の搬入出ユニットを装置正面側に配置してもよいことは言うまでもない。
B.装置各部の構成
B−1.搬送部2
図3は図1の印刷装置に装備される搬送部を示す斜視図である。この搬送部2は、鉛直方向Zに延設された2本のブラケット21L、21Rを有している。図1に示すように、ブラケット21Lは左側フレーム14Lの後側柱部位の左隣で石定盤13の上面より立設され、ブラケット21Rは右側フレーム14Rの後側柱部位の右隣で石定盤13の上面より立設されている。そして、図3に示すように、これら2本のブラケット21L、21Rの上端部を互いに連結するようにボールねじ機構22が左右方向、つまりX方向に延設されている。このボールねじ機構22においては、ボールねじ(図示省略)がX方向に延びており、その一方端には、シャトル水平駆動用のモータM21の回転軸(図示省略)が連結されている。また、ボールねじの中央部に対して2つのボールねじブラケット23、23が螺合されるとともに、それらのボールねじブラケット23、23の(+Y)側面に対してX方向に延設されたシャトル保持プレート24が取り付けられている。
このシャトル保持プレート24の(+X)側端部に版用シャトル25Lが鉛直方向Zに昇降可能に設けられる一方、(−X)側端部に基板用シャトル25Rが鉛直方向Zに昇降可能に設けられている。これらのシャトル25L、25Rは、ハンドの回転機構を除き、同一構成を有しているため、ここでは、版用シャトル25Lの構成を説明し、基板用シャトル25Rについては同一符号または相当符号を付して構成説明を省略する。
シャトル25Lは、X方向に版PPの幅サイズ(X方向サイズ)と同程度、あるいは若干長く延びる昇降プレート251と、昇降プレート251の(+X)側端部および(−X)側端部からそれぞれ前側、つまり(+Y)側に延設された2つの版用ハンド252、252とを有している。昇降プレート251はボールねじ機構253を介してシャトル保持プレート24の(+X)側端部に昇降可能に取り付けられている。すなわち、シャトル保持プレート24の(+X)側端部に対し、ボールねじ機構253が鉛直方向Zに延設されている。このボールねじ機構253の下端には、版用シャトル昇降モータM22Lに回転軸(図示省略)が連結されている。また、ボールねじ機構253に対してボールねじブラケット(図示省略)が螺合されるとともに、そのボールねじブラケットの(+Y)側面に対して昇降プレート251が取り付けられている。このため、制御部6のモータ制御部63からの動作指令に応じて版用シャトル昇降モータM22Lが作動することで、昇降プレート251が鉛直方向Zに昇降駆動される。
各ハンド252、252の前後サイズ(Y方向サイズ)は版PPの長さサイズ(Y方向サイズ)よりも長く、各ハンド252、252の先端側(+Y側)で版PPを保持可能となっている。
また、こうして版用ハンド252、252で版PPが保持されたことを検知するために、昇降プレート251の中央部から(+Y)側にセンサブラケット254が延設されるとともに、センサブラケット254の先端部に版検知用のセンサSN21が取り付けられている。このため、両ハンド252上に版PPが載置されると、センサSN21が版PPの後端部、つまり(−Y)側端部を検知し、検知信号を制御部6に出力する。
さらに、各版用ハンド252、252はベアリング(図示省略)を介して昇降プレート251に取り付けられ、前後方向(Y方向)に延びる回転軸YA2を回転中心として回転自在となっている。また、昇降プレート251のX方向両端には、回転アクチュエータRA2、RA2が取り付けられている。これらの回転アクチュエータRA2、RA2は加圧エアーを駆動源として動作するものであり、加圧エアーの供給経路に介挿されたバルブ(図示省略)の開閉により180゜単位で回転可能となっている。このため、制御部6のバルブ制御部64による上記バルブの開閉を制御することで、版用ハンド252、252の一方主面が上方に向いてパターニング前の版PPを扱うのに適したハンド姿勢(以下「未使用姿勢」という)と、他方主面が上方を向いてパターニング後の版PPを扱うのに適したハンド姿勢(以下「使用済姿勢」という)との間で、ハンド姿勢を切替え可能となっている。このようにハンド姿勢の切替え機構を有している点が、版用シャトル25Lが基板用シャトル25Rと唯一相違する点である。
次に、シャトル保持プレート24に対する版用シャトル25Lおよび基板用シャトル25Rの取り付け位置について説明する。この実施形態では、図3に示すように、版用シャトル25Lおよび基板用シャトル25Rは、版PPや基板SBの幅サイズ(なお実施形態では、版PPと基板SBの幅サイズは同一である)よりも長い間隔だけX方向に離間してシャトル保持プレート24に取り付けられている。そして、シャトル水平駆動モータM21の回転軸を所定方向に回転させると、両シャトル25L、25Rは上記離間距離を保ったままX方向に移動する。例えば図3では、符号XP23が上ステージ部3の直下位置を示しており、シャトル25L、25Rは、位置XP23からそれぞれ(+X)方向および(−X)方向に等距離(この距離を「ステップ移動単位」という)だけ離れた位置XP22、XP24に位置している。なお、本実施形態では、図3に示す状態を「中間位置状態」と称する。
また、この中間位置状態からシャトル水平駆動モータM21の回転軸を所定方向に回転させてシャトル保持プレート24をステップ移動単位だけ(+X)方向に移動させると、基板用シャトル25Rが(+X)方向に移動して上ステージ部3の直下位置XP23まで移動して位置決めされる。このとき、版用シャトル25Lも一体的に(+X)方向に移動して版用搬入出ユニットに近接した位置XP21に位置決めされる。
逆に、シャトル水平駆動モータM21の回転軸を所定方向と逆の方向に回転させてシャトル保持プレート24をステップ移動単位だけ(−X)方向に移動させると、版用シャトル25Lが中間位置状態から(−X)方向に移動して上ステージ部3の直下位置XP23まで移動して位置決めされる。このとき、基板用シャトル25Rも一体的に(−X)方向に移動して基板用搬入出ユニットに近接した位置XP25に位置決めされる。このように、本明細書では、X方向におけるシャトル位置として5つの位置XP21〜XP25が規定されている。つまり、版受渡し位置XP21は、版用シャトル25Lが位置決めされる3つの位置XP21〜XP23のうち最も版用搬入出ユニットに近接位置であり、版用搬入出ユニットとの間で版PPの搬入出が行われるX方向位置を意味している。この基板受渡し位置XP25は、基板用シャトル25Rが位置決めされる3つの位置XP23〜XP25のうち最も基板用搬入出ユニットに近接位置であり、基板用搬入出ユニットとの間で基板SBの搬入出が行われるX方向位置を意味している。また、位置XP23は上ステージ部3の吸着プレート37が鉛直方向Zに移動して版PPや基板SBを吸着保持するX方向位置を意味しており、版用シャトル25LがX方向位置XP23に位置している際には、当該位置XP23を「版吸着位置XP23」と称する一方、基板用シャトル25RがX方向位置XP23に位置している際には、当該位置XP23を「基板吸着位置XP23」と称する。また、このようにシャトル25L、25Rにより版PPや基板SBを搬送する鉛直方向Zでの位置、つまり高さ位置を「搬送位置」と称する。
また、本実施形態では、パターニング時での版PPとブランケットとのギャップ量、ならびに転写時での基板SBとブランケットとのギャップ量を正確に制御するため、版PPおよび基板SBの厚みを計測する必要がある。そこで、版厚み計測センサSN22および基板厚み計測センサSN23が設けられている。
より具体的には、図3に示すように、前側、(+Y)側に延設されたセンサブラケット26Lが左側ブラケット21Lに取り付けられてセンサブラケット26Lの先端部が位置XP21に位置決めされる版PPの上方まで延びている。そして、センサブラケット26Lの先端部に対し、版厚み計測センサSN22が取り付けられている。このセンサSN22は投光部と受光部とを有しており、版PPの上面で反射された光に基づいてセンサSN22から版PPの上面までの距離を計測するとともに、版PPの下面で反射された光に基づいてセンサSN22から版PPの下面までの距離を計測し、それらの距離に関する情報を制御部6に出力している。したがって、制御部6では、これらの距離情報から版PPの厚みを正確に求めることが可能となっている。
また、基板側についても版側と同様にして、基板厚み計測センサSN23が設けられている。すなわち、センサブラケット26Rが右側ブラケット21Rに取り付けられてセンサブラケット26Rの先端部が位置XP25に位置決めされる基板SBの上方まで延びている。そして、センサブラケット26Rの先端部に対し、基板厚み計測センサSN23が取り付けられ、基板SBの厚みが計測される。
B−2.上ステージ部3
図4は図1の印刷装置に装備される上ステージ部を示す斜視図である。この上ステージ部3は位置XP23(図3参照)に位置決めされる版PPや基板SBの上方に配置されており、支持フレーム31が水平プレート15と連結されることによって第1フレーム構造体に支持されている。この支持フレーム31は、図4に示すように、鉛直方向Zに延設されたフレーム側面を有しており、鉛直方向Zに延設されたボールねじ機構32を当該フレーム側面で支持している。また、ボールねじ機構32の上端部には、第1ステージ昇降モータM31の回転軸(図示省略)が連結されるとともに、ボールねじ機構32に対してボールねじブラケット321が螺合している。
このボールねじブラケット321には、別の支持フレーム33が固定されており、ボールねじブラケット321と一体的に鉛直方向Zに昇降可能となっている。さらに、当該支持フレーム33のフレーム面で、別のボールねじ機構34が支持されている。このボールねじ機構34には、上記ボールねじ機構32のボールねじよりも狭ピッチのボールねじが設けられ、その上端部には、第2ステージ昇降モータM32の回転軸(図示省略)が連結されるとともに、中央部にはボールねじブラケット341が螺合している。
このボールねじブラケット341には、ステージホルダ35が取り付けられている。ステージホルダ35は、鉛直方向Zに延設された3枚の鉛直プレート351〜353で構成されている。そのうちの鉛直プレート351はボールねじブラケット341に固着され、残りの鉛直プレート352、353はそれぞれ鉛直プレート351の左右側に固着されている。そして、鉛直プレート351〜353の鉛直下方端に対して水平支持プレート36が取り付けられ、さらに当該水平支持プレート36の下面に、例えばアルミニウム合金などの金属製の吸着プレート37が取り付けられている。
したがって、制御部6のモータ制御部63からの動作指令に応じてステージ昇降モータM31、M32が作動することで、吸着プレート37が鉛直方向Zに昇降移動させられる。また、本実施形態では、異なるピッチを有するボールねじ機構32、34を組み合わせ、第1ステージ昇降モータM31を作動させることで比較的広いピッチで吸着プレート37を昇降させる、つまり吸着プレート37を高速移動させることができるとともに、第2ステージ昇降モータM32を作動させることで比較的狭いピッチで吸着プレート37を昇降させる、つまり吸着プレート37を精密に位置決めすることができる。
この吸着プレート37の下面、つまり版PPや基板SBを吸着保持する吸着面に複数本の吸着溝371が設けられている。また、吸着プレート37の外周縁に設けた複数の切欠部373および吸着プレート37の中央部には、複数の吸着パッド38が配置されている。なお、吸着パッド38は、先端面が吸着プレート37の下面と面一になった状態で吸着パッド38を支持するノズル本体が水平支持プレート36やノズル支持プレート39等の支持部材で支持されている。また、吸着パッド38のうち吸着プレート37の中央部に配置されるもの(図示省略)は、吸着強度を向上させるための補助的なものであり、このような補助的な吸着パッドを設けないことも可能である。
このように、本実施形態では、版PPや基板SBを吸着保持するための吸着手段として、吸着溝371および吸着パッド38が設けられるとともに、それぞれに対して負圧を独立して供給するための負圧供給経路を介して負圧供給源に接続されている。そして、制御部6のバルブ制御部64からの開閉指令に応じて吸着溝用の負圧供給経路に介挿されるバルブV31(図2)を開閉制御することで吸着溝371による版PPや基板SBの吸着が可能となる。また、バルブ制御部64からの開閉指令に応じて吸着パッド用の負圧供給経路に介挿されるバルブV32(図2)を開閉制御することで吸着パッド38による版PPや基板SBの吸着が可能となる。なお、本実施形態では、上記した吸着手段および後述するようにブランケットを吸着保持する吸着手段は、負圧供給源として工場の用力を用いているが、装置100が真空ポンプなどの負圧供給部を装備し、当該負圧供給部から吸着手段に負圧を供給するように構成してもよい。
B−3.アライメント部4
図5は図1の印刷装置に装備されるアライメント部および下ステージ部を示す斜視図である。アライメント部4および下ステージ部5は、図1に示すように、上ステージ部3の鉛直下方側に配置されている。アライメント部4は、カメラ取付ベース41、4本の柱部材42、中央部に開口が設けられた額縁状のステージ支持プレート43、アライメントステージ44および撮像部45を有している。このカメラ取付ベース41は、図1に示すように、石定盤13の上面中央部に形成された凹部の内底面に固定されている。また、カメラ取付ベース41の前後端部の各々から2本ずつ柱部材42が鉛直方向Zの上方(以下「鉛直上方」あるいは「(+Z)方向」という)に立設されており、これらによってカメラ取付ベース41のハンドリング性を向上させている。
ステージ支持プレート43は、図1に示すように、石定盤13の凹部を跨ぐように水平姿勢で配置され、ステージ支持プレート43の中央開口とカメラ取付ベース41とが対向した状態で石定盤13の上面に固定されている。また、このステージ支持プレート43の上面にアライメントステージ44が固定されている。
アライメントステージ44は、ステージ支持プレート43上に固定されるステージベース441と、ステージベース441の鉛直上方に配置されて下ステージ部5を支持するステージトップ442とを有している。これらステージベース441およびステージトップ442はいずれも中央部に開口を有する額縁形状を有している。また、これらステージベース441およびステージトップ442の間には、鉛直方向Zに延びる回転軸を回転中心とする回転方向、X方向およびY方向の3自由度を有する、例えばクロスローラベアリング等の支持機構(図示省略)がステージトップ442の各角部近傍に配置されている。
これらの支持機構のうち、前左角部に配置される支持機構に対してY軸ボールねじ機構443aが設けられるとともに、当該Y軸ボールねじ機構443aにY軸駆動モータM41が取り付けられている。また、前右角部に配置される支持機構に対してX軸ボールねじ機構443bが設けられるとともに、当該X軸ボールねじ機構443bにX軸駆動モータM42が取り付けられている。また、後右角部に配置される支持機構に対してY軸ボールねじ機構443cが設けられるとともに、当該Y軸ボールねじ機構443cの駆動源としてY軸駆動モータM43が取り付けられている。さらに、後左角部に配置される支持機構に対してX軸ボールねじ機構(図示省略)が設けられるとともに、当該X軸ボールねじ機構にX軸駆動モータM44(図2)が取り付けられている。このため、制御部6のモータ制御部63からの動作指令に応じて各駆動モータM41〜M44を作動させることで、アライメントステージ44の中央部に比較的大きな空間を設けながら、ステージトップ442を水平面内で移動させるとともに、鉛直軸を回転中心として回転させて下ステージ部5の吸着プレートを位置決め可能となっている。
本実施形態において中空空間を有するアライメントステージ44を用いた理由のひとつは、下ステージ部5の上面に保持されるブランケットおよび上ステージ部3の下面に保持される基板SBに形成されるアライメントマークを撮像部45により撮像するためである。以下、図5および図6を参照しつつ撮像部45の構成について説明する。
図6はアライメント部の撮像部を示す斜視図である。撮像部45は、ブランケットの4箇所にそれぞれ形成されるアライメントマーク、ならびに基板SBの4箇所にそれぞれ形成されるアライメントマークを撮像するものであり、4つの撮像ユニット45a〜45dを有している。各撮像ユニット45a〜45dの撮像対象領域は、
撮像ユニット45a:ブランケットおよび基板SBの前左角部の近傍領域、
撮像ユニット45b:ブランケットおよび基板SBの前右角部の近傍領域、
撮像ユニット45c:ブランケットおよび基板SBの後右角部の近傍領域、
撮像ユニット45d:ブランケットおよび基板SBの後左角部の近傍領域、
であり、互いに異なっているが、ユニット構成は同一である。したがって、ここでは、撮像ユニット45aの構成を説明し、その他の構成については同一または相当符号を付して説明を省略する。
撮像ユニット45aでは、XYテーブル451が、図6に示すように、カメラ取付ベース41の前左角部の近傍上面に配置されている。このXYテーブル451のテーブルベースがカメラ取付ベース41に固定されており、調整つまみ(図示省略)をマニュアルで操作することでXYテーブル451のテーブルトップがX方向およびY方向に精密に位置決めされる。このテーブルトップ上に、精密昇降テーブル452が取り付けられている。この精密昇降テーブル452には、Z軸駆動モータM45a(図2)が設けられており、制御部6のモータ制御部63からの動作指令に応じてZ軸駆動モータM45aが作動することで精密昇降テーブル452のテーブルトップが鉛直方向Zに昇降移動する。
この精密昇降テーブル452のテーブルトップの上面には、鉛直方向Zに延設されたカメラブラケット453の下端部が固定される一方、上端部がステージ支持プレート43の中央開口、アライメントステージ44の中央開口およびステージベースの長孔開口(これについては後で詳述する)を通過して下ステージ部5の吸着プレート51の直下近傍まで延設されている。そして、このカメラブラケット453の上端部に対し、撮像面を鉛直上方側に向けた状態でCCDカメラCMa、鏡筒454および対物レンズ455がこの順序で積層配置されている。また、鏡筒454の側面には光源456が取り付けられており、光源駆動部46により点灯駆動される。本実施形態では、光源456としては赤色LED(Light Emitting Diode)を用いているが、ブランケットや基板SBの材質などに応じた光源を用いることができる。また、鏡筒454の上方には対物レンズ455が取り付けられている。さらに、鏡筒454の内部には、ハーフミラー(図示省略)が配置されており、光源456から射出された照明光を(+Z)方向に折り曲げ、対物レンズ455および吸着プレート51の前左角部の近傍領域に設けられた石英窓52aを介して下ステージ部5上のブランケットに照射する。また、照明光の一部はさらに当該ブランケットを介して上ステージ部3の吸着プレート37に吸着保持される基板SBに照射する。なお、本実施形態では、ブランケットは透明部材で構成されているため、上記したように照明光はブランケットを透過して基板SBの下面に到達する。
また、ブランケットや基板SBから射出される光のうち(−Z)側に進む光は、石英窓52a、対物レンズ455および鏡筒454を介してCCDカメラCMaに入射し、CCDカメラCMaが石英窓52aの鉛直上方に位置するアライメントマークを撮像する。このように撮像ユニット45aでは、石英窓52aを介して照明光を照射するとともに石英窓52aを介してブランケットおよび基板SBの前左角部の近傍領域の画像を撮像し、その像に対応する画像信号を制御部6の画像処理部65に出力する。一方、他の撮像ユニット45b〜45dは、撮像ユニット45aと同様にして、それぞれ石英窓52b〜52dを介して画像を撮像する。
B−4.下ステージ部5
次に、図5に戻って下ステージ部5の構成について詳述する。この下ステージ部5は、吸着プレート51と、上記した4つの石英窓52a〜52dと、4本の柱部材53と、ステージベース54と、リフトピン部55とを有している。ステージベース54には、左右方向Xに延びる長孔形状の開口が前後方向Yに3つ並んで設けられている。そして、これらの長孔開口と、アライメントステージ44の中央開口とが上方からの平面視でオーバーラップするように、ステージベース54がアライメントステージ44上に固定されている。また、前側の長孔開口には、撮像ユニット45a、45bの上方部(CCDカメラ、鏡筒および対物レンズ)が遊挿されるとともに、後側の長孔開口には、撮像ユニット45c、45dの上方部(CCDカメラ、鏡筒および対物レンズ)が遊挿されている。また、ステージベース54の上面角部から柱部材53が(+Z)に立設され、各頂部が吸着プレート51を支持している。
この吸着プレート51は例えばアルミニウム合金などの金属プレートであり、その前左角部、前右角部、後右角部および後左角部の近傍領域には、石英窓52a〜52dがそれぞれ設けられている。また、吸着プレート51の上面には、石英窓52a〜52dを取り囲むように溝511が設けられるとともに、溝511により囲まれる内部領域では、石英窓52a〜52dを除き、左右方向Xに延びる複数の溝512が前後方向Yに一定間隔で設けられている。
これら溝511、512の各々に対して正圧供給配管(図示省略)の一方端が接続されるとともに、他方端が加圧用マニホールドに接続されている。さらに、各正圧供給配管の中間部に加圧バルブV51(図2)が介挿されている。この加圧用マニホールドに対しては、工場の用力から供給される加圧エアーをレギュレータで調圧することで得られる一定圧力のエアーが常時供給されている。このため、制御部6のバルブ制御部64からの動作指令に応じて所望の加圧バルブV51が選択的に開くと、その選択された加圧バルブV51に繋がる溝511、512に対して調圧された加圧エアーが供給される。
また、溝511、512の各々に対しては、加圧エアーの選択供給のみならず、選択的な負圧供給も可能となっている。すなわち、溝511、512の各々に対して負圧供給配管(図示省略)の一方端が接続されるとともに、他方端が負圧用マニホールドに接続されている。さらに、各負圧供給配管の中間部に吸着バルブV52(図2)が介挿されている。この負圧用マニホールドには、負圧供給源がレギュレータを介して接続されており、所定値の負圧が常時供給されている。このため、制御部6のバルブ制御部64からの動作指令に応じて所望の吸着バルブV52が選択的に開くと、その選択された吸着バルブV52に繋がる溝511、512に対して調圧された負圧が供給される。
このように本実施形態では、バルブV51、52の開閉制御によって吸着プレート51上にブランケットを部分的あるいは全面的に吸着させたり、吸着プレート51とブランケットとの間にエアーを部分的に供給してブランケットを部分的に膨らませて上ステージ部3に保持された版PPや基板SBに押し遣ることが可能となっている。
図7は下ステージ部に装備されるリフトピン部を示す図であり、同図(a)はリフトピン部の平面図であり、同図(b)は側面図である。リフトピン部55では、リフトプレート551が吸着プレート51とステージベース54との間で昇降自在に設けられている。このリフトプレート551には、4箇所の切欠部551a〜551dが形成されて撮像ユニット45a〜45dとの干渉が防止されている。つまり、撮像ユニット45a〜45dがそれぞれ切欠部551a〜551dに入り込む状態で、リフトプレート551は鉛直方向Zに昇降可能となっている。また、このように4箇所の切欠部551a〜551dを設けることでリフトプレート551には6本のフィンガー部551e〜551jが形成され、各フィンガー部551e〜551jの先端部から鉛直上方にリフトピン552e〜552jがそれぞれ立設されている。また、リフトピン552e、552fの間に別のリフトピン552kが立設されるとともに、リフトピン552i、552jの間にさらに別のリフトピン552mが立設されており、合計8本のリフトピン552(552e〜552k、552m)がリフトプレート551に立設されてブランケットの下面全体を支持可能となっている。これらのリフトピン552は吸着プレート51の外周縁に対して鉛直方向Zに穿設された貫通孔(図示省略)よりも細く、図5に示すように、貫通孔を鉛直下方側より挿通可能となっている。
また、各リフトピン552の上端側から圧縮ばね553およびハウジング554がこの順序で外挿され、圧縮ばね553の下端部がリフトプレート551で係止されるとともに、その上端部に対してハウジング554が覆い被さっている。なお、ハウジング554の上面は、吸着プレート51の貫通孔の内径よりも大きな外径を有する円形形状を有しており、次に説明するようにピン昇降シリンダCL51によりリフトプレート551を上昇させた際、ハウジング554の上面は吸着プレート51の下面で係止され、リフトプレート551とで圧縮ばね553を挟み込んで収縮させてリフトプレート551の上昇速度をコントロールする。また、リフトプレート551の下降にも、圧縮ばね553の圧縮力を利用してリフトプレート551の下降速度をコントロールする。
このピン昇降シリンダCL51は、下面がカメラ取付ベース41に固定されたガイドブラケット555の側面に固定されており、ピン昇降シリンダCL51のピストン先端がスライドブロック556を介してリフトプレート551を支持している。したがって、制御部6のバルブ制御部64がピン昇降シリンダCL51に接続されるバルブの開閉を切り替えることで、ピン昇降シリンダCL51を作動させてリフトプレート551を昇降させる。その結果、吸着プレート51の上面、つまり吸着面に対し、全リフトピン552が進退移動させられる。例えば、リフトピン552が吸着プレート51の上面から(+Z)方向に突出することで、ブランケット搬送ロボットによりブランケットがリフトピン552の頂部に載置可能となる。そして、ブランケットの載置に続いて、リフトピン552が吸着プレート51の上面よりも(−Z)方向に後退することで、ブランケットが吸着プレート51の上面に移載される。その後、後述するように適当なタイミングで、吸着プレート51の近傍に配置されたブランケット厚み計測センサSN51によって当該ブランケットの厚みが計測される。
図8はブランケット厚み計測部を示す斜視図である。この実施形態では、ブランケット厚み計測部56は下ステージ部5の一部構成であり、次のように構成されている。ブランケット厚み計測部56では、シリンダブラケット561が吸着プレート51の右側近傍位置で第2フレーム構造体に固定されている。また、このシリンダブラケット561に対し、センサ水平駆動シリンダCL52が水平状態で固定されており、制御部6のバルブ制御部64が当該シリンダCL52に接続されるバルブの開閉を切り替えることで、シリンダCL52に取り付けられたスライドプレート562が左右方向Xにスライドする。このスライドプレート562の左端部にはブランケット厚み計測センサSN51が取り付けられている。このため、センサ水平駆動シリンダCL52によってスライドプレート562が左(+X)側、つまり吸着プレート51側に水平移動すると、ブランケット厚み計測センサSN51が吸着プレート51に吸着保持されるブランケットの右端部の直上位置に位置決めされる。このセンサSN51も、版厚み計測センサSN22および基板厚み計測センサSN23と同様に構成されており、同様の計測原理によりブランケットの厚みを計測可能となっている。一方、計測以外のタイミングにおいては、センサ水平駆動シリンダCL52によってスライドプレート562は右(−X)側、つまり吸着プレート51から離れた退避位置に移動させられており、ブランケット厚み計測部56の干渉が防止される。
B−5.押さえ部7
図9は図1の印刷装置に装備される押さえ部を示す図である。同図(a)は押さえ部7の構成を示す斜視図であり、同図(b)は吸着プレート51に吸着保持されるブランケットBLを押さえ部7により押さえた状態(以下「ブランケット押さえ状態」という)を示し、同図(c)は押さえ部7によるブランケットBLを解除した状態(以下「ブランケット押さえ解除状態」という)を示している。この押さえ部7は、吸着プレート51の鉛直上方側に設けられる押さえ部材71を切替機構72によって鉛直方向Zに昇降することでブランケット押さえ状態とブランケット押さえ解除状態とを切り替える。
この切替機構72では、第2フレーム構造体の水平プレート17に対し、それぞれシリンダブラケット721〜723によって押さえ部材昇降シリンダCL71〜CL73が、ピストン724を鉛直下方側に進退自在に、取り付けられている。これらのピストン724の先端部では、押さえ部材71がぶら下がり状態で遊嵌されている。
押さえ部材71は、支持プレート711と、4つのブランケット押さえプレート712とを有している。支持プレート711は、ブランケットBLと同一の平面サイズを有し、その中央部が開口しており、全体として額縁形状を有している。この支持プレート711の下面に対し、4枚のブランケット押さえプレート712が固定されて支持プレート711の下面全部を覆っている。
また、支持プレート711には、図9(b)、(c)に示すように、押さえ部材昇降シリンダCL71〜CL73に対応する位置にピストン724の外径よりも広い内径を有する貫通孔716が穿設されている。そして、各貫通孔716の下方側より締結部材717が貫通孔716を介してピストン724の先端部に接続されている。これによって、押さえ部材昇降シリンダCL71〜CL73のピストン724は支持プレート711に遊嵌された状態で押さえ部材昇降シリンダCL71〜CL73に連結される。つまり、押さえ部材71は押さえ部材昇降シリンダCL71〜CL73に対してフローティング状態で支持されている。
そして、制御部6のバルブ制御部64が押さえ部材昇降シリンダCL71〜CL73に接続されるバルブの開閉を切り替えることで、押さえ部材昇降シリンダCL71〜CL73を作動させて押さえ部材71を下ステージ部5の吸着プレート51に対して当接または離間させる。例えば、押さえ部材71がブランケットBLを保持している吸着プレート51に下降してブランケット押さえ状態となり、ブランケットBLの周縁部を全周にわたって吸着プレート51とで挟み込んでホールドする。また、アライメントのために吸着プレート51が移動した際にも、押さえ部材71は吸着プレート51とともに水平方向(X方向、Y方向)に移動し、ブランケットBLを安定して保持する。
B−6.プリアライメント部8
図10は図1の印刷装置に装備されるプリアライメント部を示す斜視図である。プリアライメント部8は、プリアライメント上部81と、プリアライメント下部82とを有している。これらのうちプリアライメント上部81は、プリアライメント下部82よりも鉛直上方側に配置され、ブランケットBLとの密着に先立って、位置XP23で版用シャトル25Lにより保持される版PPおよび基板用シャトル25Rにより保持される基板SBをアライメントする。一方、プリアライメント下部82は、版PPや基板SBとの密着に先立って、下ステージ部5の吸着プレート51に載置されるブランケットBLをアライメントする。なお、プリアライメント上部81と、プリアライメント下部82とは基本的に同一構成を有している。そこで、以下においては、プリアライメント上部81の構成について説明し、プリアライメント下部82については同一または相当符号を付して構成説明を省略する。
プリアライメント上部81は、4つの上ガイド移動部811〜814を有している。各上ガイド移動部811〜814は第2フレーム構造体を構成する複数の水平プレートのうち上段側に配置された水平プレート17に設けられている。すなわち、前後方向Yに延設された2本の水平プレートのうちの左側水平プレート17aに対し、その中央部に上ガイド移動部811が取り付けられるとともに、その前側端部に上ガイド移動部812が取り付けられている。また、もう一方の右側水平プレート17bに対し、その中央部に上ガイド移動部813が取り付けられるとともに、その後側端部に上ガイド移動部814が取り付けられている。なお、上ガイド移動部811、813は同一構成を有し、また上ガイド移動部812、814は同一構成を有している。したがって、以下においては、上ガイド移動部811、812の構成を詳述し、上ガイド移動部813、814について同一または相当符号を付して構成説明を省略する。
上ガイド移動部811では、ボールねじ機構811aが左右方向Xに延設された状態で左側水平プレート17aの中央部に固定されている。そして、ボールねじ機構811aのボールねじに対してボールねじブラケットが螺合されるとともに、当該ボールねじブラケットに上ガイド811bが上ガイド移動部813に対向して取り付けられている。また、ボールねじ機構811aの左端部に上ガイド駆動モータM81aの回転軸(図示省略)が連結されており、制御部6のモータ制御部63からの動作指令に応じて上ガイド駆動モータM81aが作動することで上ガイド811bが左右方向Xに移動する。
また、上ガイド移動部812では、ボールねじ機構812aが前後方向Yに延設された状態で左側水平プレート17aの前側端部に固定されている。そして、ボールねじ機構812aのボールねじに対してボールねじブラケットが螺合されるとともに、当該ボールねじブラケットに対し、左右方向に延設されたガイドホルダ812cの左端部が固定されている。このガイドホルダ812cの右端部は、水平プレート17a、17bの中間位置に達しており、その右端部に上ガイド812bが上ガイド移動部814に対向して取り付けられている。また、ボールねじ機構812aの後端部に上ガイド駆動モータM81bの回転軸(図示省略)が連結されており、制御部6のモータ制御部63からの動作指令に応じて上ガイド駆動モータM81bが作動することで上ガイド812bが前後方向Yに移動する。
このように4つの上ガイド811b〜814bが位置XP23の鉛直下方位置で版PPや基板SB(同図中の一点鎖線)を取り囲んでおり、各上ガイド811b〜814bが独立して版PPなどに対して近接および離間可能となっている。したがって、各上ガイド811b〜814bの移動量を制御することによって版PPおよび基板SBをシャトルのハンド上で水平移動あるいは回転させてアライメントすることが可能となっている。
B−7.除電部9
図11は図1の印刷装置に装備される除電部を示す斜視図である。除電部9では、ベースプレート92が下ステージ部5の左側で石定盤13の上面に固定されている。また、ベースプレート92から柱部材93が立設されており、その上端部は下ステージ部5よりも高い位置まで延設されている。そして、ベースプレート92の上端部に対して固定金具94を介してイオナイザブラケット95が取り付けられている。このイオナイザブラケット95は右方向(−X)に延設され、その先端部は吸着プレート51の近傍に達している。そして、その先端部にイオナイザ91が取り付けられている。
B−8.制御部6
制御部6は、CPU(Central Processing Unit)61、メモリ62、モータ制御部63、バルブ制御部64、画像処理部65および表示/操作部66を有しており、CPU61はメモリ62に予め記憶されたプログラムにしたがって装置各部を制御して、図12ないし図19に示すように、パターニング処理および転写処理を実行する。
C.印刷装置の全体動作
図12は、図1の印刷装置の全体動作を示すフローチャートである。また、図13ないし図19は、図1の印刷装置の動作を説明するための図であり、図中のテーブルは制御部6による制御内容(制御対象および動作内容)を示し、また図中の模式図は装置各部の状態を示している。この印刷装置100の初期状態では、図13(a)に示すように、版用シャトル25Lおよび基板用シャトル25Rはそれぞれ中間位置XP22、XP24に位置決めされており、版用搬入出ユニットへの版PPのセットを待って版PPの投入工程(ステップS1)、ならびに基板用搬入出ユニットへの基板SBのセットを待って基板SBの投入工程(ステップS2)を実行する。なお、版用シャトル25Lおよび基板用シャトル25Rが一体的に左右方向Xに移動するという搬送構造を採用しているため、版PPの搬入を行った(ステップS1)後、基板SBの搬入を行う(ステップS2)が、両者の順序を入れ替えてもよい。
C−1.版搬入工程(ステップS1)
図13(b)の「ステップS1」の欄に示すように、サブステップ(1−1)〜(1−7)を実行する。すなわち、シャトル水平駆動モータM21が回転軸を所定方向に回転させ、シャトル保持プレート24を(+X)方向に移動させる(1−1)。これによって、版用シャトル25Lが版受渡し位置XP21に移動して位置決めされる。また、回転アクチュエータRA2、RA2が動作し、版用ハンド252、252を180゜回転させて原点位置に位置決めする(1−2)。これによって、ハンド姿勢が使用済姿勢から未使用姿勢に切り替わり、使用前の版PPの投入準備が完了する。
そして、版用シャッター駆動シリンダCL11が動作し、版用シャッター18を鉛直下方に移動させる、つまりシャッター18を開く(1−3)。それに続いて、制御部6からの動作指令に応じて版用搬入出ユニットが版PPを印刷装置100の内部に搬入し、版用シャトル25Lのハンド252,252上に載置する(1−4)。こうして版PPの投入が完了すると、上記バルブの開閉状態を元に戻すことで版用シャッター駆動シリンダCL11が逆方向に作動して版用シャッター18を元の位置に戻す、つまりシャッター18を閉じる(1−5)。
版PPの投入完了時点では、版PPは版受渡し位置XP21に位置している。そこで、このタイミングで、版厚み計測センサSN22が作動して版PPの上面および下面の高さ位置(鉛直方向Zにおける位置)を検出し、それらの検出結果を示す高さ情報を制御部6に出力する。そして、これらの高さ情報に基づいてCPU61は版PPの厚みを求め、メモリ62に記憶する。こうして、版PPの厚み計測が実行される(1−6)。その後、シャトル水平駆動モータM21が回転軸を逆回転させてシャトル保持プレート24を(−X)方向に移動させ、中間位置XP22に位置決めする(1−7)。
C−2.基板投入工程(ステップS2)
図13(b)の「ステップS2」の欄に示すように、サブステップ(2−1)〜(2−6)を実行する。すなわち、シャトル水平駆動モータM21が回転軸を所定方向と逆方向に回転させ、シャトル保持プレート24を(−X)方向に移動させる(2−1)。これによって、基板用シャトル25Rが基板受渡し位置XP25に移動して位置決めされる。なお、基板用ハンド252、252については回転機構が設けられておらず、サブステップ(2−1)が完了した時点で基板SBの投入準備が完了する。
そして、基板用シャッター駆動シリンダCL12が動作し、基板用シャッター19を鉛直下方に移動させる、つまりシャッター19を開く(2−2)。それに続いて、制御部6からの動作指令に応じて基板用搬入出ユニットが基板SBを印刷装置100の内部に搬入し、基板用シャトル25Rのハンド252,252上に載置する(2−3)。こうして基板SBの投入が完了すると、上記バルブの開閉状態を元に戻すことで基板用シャッター駆動シリンダCL12が逆方向に作動して基板用シャッター19を元の位置に戻す、つまりシャッター19を閉じる(2−4)。
基板SBの投入完了時点では、基板SBは基板受渡し位置XP25に位置している。そこで、このタイミングで、基板厚み計測センサSN23が作動して基板SBの上面および下面の高さ位置を検出し、それらの検出結果を示す高さ情報を制御部6に出力する。そして、これらの高さ情報に基づいてCPU61は、版PPに続いて、基板SBの厚みを求め、メモリ62に記憶する。こうして、基板SBの厚み計測が実行される(2−5)。その後、シャトル水平駆動モータM21が回転軸を所定方向に回転させてシャトル保持プレート24を(+X)方向に移動させ、中間位置XP24に位置決めする(2−6)。
このように、本実施形態では、図13(c)に示すように、パターニング処理を実行する前に、版PPのみならず、基板SBをも準備しておき、後で詳述するように、パターニング処理および転写処理を連続して実行する。これによって、ブランケットBL上でパターニングされた塗布層が基板SBに転写されるまでの時間間隔を短縮することができ、安定した処理が実行される。
C−3.版吸着(ステップS3)
図14(a)の「ステップS3」の欄に示すように、サブステップ(3−1)〜(3−7)を実行する。すなわち、シャトル水平駆動モータM21が回転軸を回転させ、シャトル保持プレート24を(−X)方向に移動させる(3−1)。これによって、版用シャトル25Lが版吸着位置XP23に移動して位置決めされる。そして、版用シャトル昇降モータM22Lが回転軸を回転させ、昇降プレート251を下方向(−Z)に移動させる(3−2)。これによって、版用シャトル25Lに支持されたまま版PPが搬送位置よりも低いプリアライメント位置に移動して位置決めされる。
次に、上ガイド駆動モータM81a〜M81dが回転軸を回転させ、上ガイド811b、813bが左右方向Xに移動するとともに、上ガイド812b、814bが前後方向Yに移動し、各上ガイド811b〜814bが版用シャトル25Lに支持される版PPの端面と当接して版PPを予め設定した水平位置に位置決めする。その後、各上ガイド駆動モータM81a〜M81dが回転軸を逆方向に回転させ、各上ガイド811b〜814bが版PPから離間する(3−3)。
こうして、版PPのプリアライメント処理が完了すると、ステージ昇降モータM31が回転軸を所定方向に回転させ、吸着プレート37を下方向(−Z)に下降させて版PPの上面と当接させる。それに続いて、バルブV31,V32が開き、これによって吸着溝371および吸着パッド38により版PPが吸着プレート37に吸着される(3−4)。
吸着検出センサSN31(図2)により版PPの吸着が検出されると、ステージ昇降モータM31が回転軸を逆方向に回転させ、吸着プレート37が版PPを吸着保持したまま鉛直上方に上昇して版吸着位置XP23の鉛直上方位置に版PPを移動させる(3−5)。そして、版用シャトル昇降モータM22Lが回転軸を回転させ、昇降プレート251を鉛直上方に移動させ、版用シャトル25Lをプリアライメント位置から搬送位置、つまり版吸着位置XP23に移動して位置決めする(3−6)。その後、シャトル水平駆動モータM21が回転軸を回転させてシャトル保持プレート24を(+X)方向に移動させ、空になった版用シャトル25Lを中間位置XP22に位置決めする(3−7)。
C−4.ブランケット吸着(ステップS4)
図14(a)の「ステップS4」の欄に示すように、サブステップ(4−1)〜(4−9)を実行する。すなわち、X軸駆動モータM42,M44およびY軸駆動モータM41,M43が作動してアライメントステージ44を初期位置に移動させる(4−1)。これによって、毎回スタートが同じ位置となる。それに続いて、ピン昇降シリンダCL51が動作してリフトプレート551を上昇させ、リフトピン552を吸着プレート51の上面から鉛直上方に突出させる(4−2)。こうして、ブランケットBLの投入準備が完了すると、ブランケット用シャッター駆動シリンダCL13が動作し、ブランケット用シャッター(図示省略)を移動させて当該シャッターを開く(4−3)。そして、ブランケット搬送ロボットが、装置100にアクセスしてブランケットBLをリフトピン552の頂部に載置した後、装置100から退避する(4−4)。これに続いて、ブランケット用シャッター駆動シリンダCL13が動作し、ブランケット用シャッターを移動させて当該シャッターを閉じる(4−5)。
次に、ピン昇降シリンダCL51が動作してリフトプレート551を下降させる。これによって、リフトピン552がブランケットBLを支持したまま下降してブランケットBLを吸着プレート51に載置する(4−6)。すると、下ガイド駆動モータM82a〜M82dが回転軸を回転させ、下ガイド821b、823bが左右方向Xに移動するとともに、下ガイド822b、824bが前後方向Yに移動し、各下ガイド821b〜824bが吸着プレート51に支持されるブランケットBLの端面と当接してブランケットBLを予め設定した水平位置に位置決めする(4−7)。
こうしてブランケットBLのプリアライメント処理が完了すると、吸着バルブV52が開き、これによって溝511、512に対して調圧された負圧が供給されてブランケットBLが吸着プレート51に吸着される(4−8)。さらに、各下ガイド駆動モータM82a〜M82dが回転軸を逆方向に回転させ、各下ガイド821b〜824bをブランケットBLから離間させる(4−9)。これによって、図14(b)に示すように、パターニング処理の準備が完了する。
C−5.パターニング(ステップS5)
ここでは、ブランケット厚みが計測された後で、パターニングが実行される。すなわち、図15(a)の「ステップS5」の欄に示すように、センサ水平駆動シリンダCL52が動作してブランケット厚み計測センサSN51をブランケットBLの右端部の直上位置に位置決めする(5−1)。そして、ブランケット厚み計測センサSN51がブランケットBLの厚みに関連する情報を制御部6に出力し、これによってブランケットBLの厚みが計測される(5−2)。その後で、上記センサ水平駆動シリンダCL52が逆方向に動作してスライドプレート562を(−X)方向にスライドさせてブランケット厚み計測センサSN51を吸着プレート51から退避させる(5−3)。
次に、第1ステージ昇降モータM31が回転軸を所定方向に回転させ、吸着プレート37を下方向(−Z)に下降させて版PPをブランケットBLの近傍に移動させる。さらに、第2ステージ昇降モータM32が回転軸を回転させ、狭いピッチで吸着プレート37を昇降させて鉛直方向Zにおける版PPとブランケットBLの間隔、つまりギャップ量を正確に調整する(5−4)。なお、このギャップ量は版PPおよびブランケットBLの厚み計測結果に基づいて制御部6により決定される。
そして、押さえ部材昇降シリンダCL71〜CL73が動作し、押さえ部材71を下降させてブランケットBLの周縁部を全周にわたって押さえ部材71で押さえ付ける(5−5)。それに続いて、バルブV51、52が動作して吸着プレート51とブランケットBLとの間にエアーを部分的に供給してブランケットBLを部分的に膨らませる。この浮上部分が上ステージ部3に保持された版PPに押し遣られる(5−6)。その結果、図15(b)に示すように、ブランケットBLの中央部が版PPに密着して版PPの下面に予め形成されたパターン(図示省略)がブランケットBLの上面に予め塗布された塗布層と当接して当該塗布層をパターニングしてパターン層を形成する。
C−6.版剥離(ステップS6)
図15(c)の「ステップS6」の欄に示すように、サブステップ(6−1)〜(6−5)を実行する。すなわち、第2ステージ昇降モータM32が回転軸を回転させて吸着プレート37が上昇して版PPをブランケットBLから剥離させる(6−1)。また、剥離処理を行うために版PPを上昇させるのと並行して適時、バルブV51、V52の開閉状態を切替え、ブランケットBLに負圧を与えて吸着プレート37側に引き寄せる。その後、第1ステージ昇降モータM31が回転軸を回転させ、吸着プレート37を上昇させて版PPをイオナイザ91とほぼ同一高さの除電位置に位置決めする(6−2)。また、押さえ部材昇降シリンダCL71〜CL73が動作し、押さえ部材71を上昇させてブランケットBLの押さえ付けを解除する(6−3)。それに続いて、イオナイザ91が作動して上記版剥離処理時に発生する静電気を除電する(6−4)。この除去処理が完了すると、第1ステージ昇降モータM31が回転軸を回転させ、図15(d)に示すように、版PPを吸着保持したまま吸着プレート37が初期位置(版吸着位置XP23よりも高い位置)まで上昇する(6−5)。
C−7.版退避(ステップS7)
図16(a)の「ステップS7」の欄に示すように、サブステップ(7−1)〜(7−7)を実行する。すなわち、回転アクチュエータRA2、RA2が動作し、版用ハンド252、252を180゜回転させて原点位置から反転位置に位置決めする(7−1)。これによって、ハンド姿勢が未使用姿勢から使用済姿勢に切り替わり、使用済みの版PPの受取準備が完了する。そして、シャトル水平駆動モータM21が回転軸を回転させ、シャトル保持プレート24を(−X)方向に移動させる(7−2)。これによって、版用シャトル25Lが版吸着位置XP23に移動して位置決めされる。
一方、第1ステージ昇降モータM31が回転軸を回転させ、版PPを吸着保持したまま吸着プレート37が版用シャトル25Lのハンド252、252に向けて下降してハンド252、252上に版PPを位置させた後、バルブV31,V32が閉じ、これによって吸着溝371および吸着パッド38による版PPの吸着が解除されて搬送位置での版PPの受け渡しが完了する(7−3)。そして、第1ステージ昇降モータM31が回転軸を逆回転させ、吸着プレート37を初期位置まで上昇させる(7−4)。その後、シャトル水平駆動モータM21が回転軸を回転させ、シャトル保持プレート24を(+X)方向に移動させる(7−5)。これによって、版用シャトル25Lが使用済み版PPを保持したまま中間位置XP22に移動して位置決めされる。
C−8.基板吸着(ステップS8)
図16(a)の「ステップS8」の欄に示すように、シャトル水平駆動モータM21が回転軸を回転させ、シャトル保持プレート24を(+X)方向に移動させる(8−1)。これによって、処理前の基板SBを保持する基板用シャトル25Rが基板吸着位置XP23に移動して位置決めされる。そして、版PPのプリアライメント処理(3−2、3−3)および吸着プレート37による版PPの吸着処理(3−4)と同様にして、基板SBのプリアライメント処理(8−2、8−3)および基板SBの吸着処理(8−4)が実行される。
その後、吸着検出センサSN31(図2)により基板SBの吸着が検出されると、ステージ昇降モータM31が回転軸を回転させ、基板SBを吸着保持したまま吸着プレート37を鉛直上方に上昇させて基板吸着位置XP23より高い位置に基板SBを移動させる(8−5)。そして、基板用シャトル昇降モータM22Rが回転軸を回転させ、昇降プレート251を鉛直上方に移動させ、基板用シャトル25Rをプリアライメント位置から搬送位置に移動させて位置決めする(8−6)。その後、シャトル水平駆動モータM21が回転軸を回転させてシャトル保持プレート24を(−X)方向に移動させ、図16(b)に示すように、空になった基板用シャトル25Rを中間位置XP24に位置決めする(8−7)。
C−9.転写(ステップS9)
図17(a)の「ステップS9」の欄に示すように、ここでは、ブランケット厚みが計測され、さらに精密アライメントが実行された後で、転写処理が実行される。すなわち、図17(a)の「ステップS9」の欄に示すように、パターニング処理(ステップS5)のサブステップ(5−1〜5−3)と同様にして、ブランケットBLの厚みが計測される(9−1〜9−3)。なお、このようにパターニング直前のみならず、転写直前においてもブランケットBLの厚みを計測する主たる理由は、ブランケットBLの一部が膨潤することでブランケットBLの厚みが経時変化するためであり、転写直前でのブランケット厚みを計測することで高精度な転写処理を行うことが可能となる。
次に、第1ステージ昇降モータM31が回転軸を所定方向に回転させ、吸着プレート37を下方向(−Z)に下降させて基板SBをブランケットBLの近傍に移動させる。さらに、第2ステージ昇降モータM32が回転軸を回転させ、狭いピッチで吸着プレート37を昇降させて鉛直方向Zにおける基板SBとブランケットBLの間隔、つまりギャップ量を正確に調整する(9−4)。このギャップ量については、基板SBおよびブランケットBLの厚み計測結果に基づいて制御部6により決定される。次のサブステップ(9−5)では、パターニング(ステップS5)と同様に、押さえ部材71によるブランケットBLの周縁部の押さえ付けを行う。
こうして、基板SBとブランケットBLとはいずれもプリアライメントされ、しかも転写処理に適した間隔だけ離間して位置決めされるが、ブランケットBLに形成されたパターン層を基板SBに正確に転写するためには、両者を精密に位置合せする必要がある。そこで、本実施形態では、サブステップ(9−6〜9−8)が実行される(精密アライメント)。
ここでは、アライメント部4のZ軸駆動モータM45a〜45dが作動して各撮像ユニット45a〜45dでブランケットBLにパターニングされたアライメントマークに対して焦点が合うようにピント調整が実行される(9−6)。そして、各撮像ユニット45a〜45dで撮像される画像が制御部6の画像処理部65に出力される(9−7)。そして、それらの画像に基づいて制御部6は基板SBに対してブランケットBLを位置合せするための制御量を求め、さらにアライメント部4のX軸駆動モータM42、M44およびY軸駆動モータM41、M43の動作指令を作成する。そして、X軸駆動モータM42、M44およびY軸駆動モータM41、M43が上記制御指令に応じて作動して吸着プレート51を水平方向に移動させるとともに鉛直方向Zに延びる仮想回転軸回りに回転させてブランケットBLを基板SBに精密に位置合せする(9−8)。
そして、バルブV51、52が動作して吸着プレート51とブランケットBLとの間にエアーを部分的に供給してブランケットBLを部分的に膨らませる。この浮上部分が上ステージ部3に保持された基板SBに押し遣られる(9−9)。その結果、図17(b)に示すように、ブランケットBLが基板SBに密着する。これによって、ブランケットBL側のパターン層が基板SBの下面のパターンと精密に位置合せされながら、基板Bに転写される。
C−10.基板剥離(ステップS10)
図18(a)の「ステップS10」の欄に示すように、サブステップ(10−1)〜(10−5)を実行する。すなわち、版剥離(ステップS6)と同様に、ブランケットBLからの基板SBの剥離(10−1)、除電位置への基板SBの位置決め(10−2)、押さえ部材71によるブランケットBLの押付解除(10−3)、除電(10−4)を実行する。その後、第1ステージ昇降モータM31が回転軸を回転させ、図18(b)に示すように、基板SBを吸着保持したまま吸着プレート37が初期位置(搬送位置よりも高い位置)まで上昇する(10−5)。
C−11.基板退避(ステップS11)
図19(a)の「ステップS11」の欄に示すように、サブステップ(11−1)〜(11−4)を実行する。すなわち、シャトル水平駆動モータM21が回転軸を回転させ、シャトル保持プレート24を(+X)方向に移動させる(11−1)。これによって、基板用シャトル25Rが基板吸着位置XP23に移動して位置決めされる。
一方、第1ステージ昇降モータM31が回転軸を回転させ、基板SBを吸着保持したまま吸着プレート37を基板用シャトル25Rのハンド252、252に向けて下降させる。その後、バルブV31,V32が閉じ、これによって吸着溝371および吸着パッド38による基板SBの吸着が解除される(11−2)。そして、第1ステージ昇降モータM31が回転軸を逆回転させ、吸着プレート37を初期位置まで上昇させる(11−3)。その後、シャトル水平駆動モータM21が回転軸を回転させ、シャトル保持プレート24を(−X)方向に移動させて当該基板SBを保持したまま基板用シャトル25を中間位置XP22に移動させて位置決めする(11−4)。
C−12.ブランケット取り出し(ステップS12)
図19(a)の「ステップS12」の欄に示すように、サブステップ(12−1)〜(12−6)を実行する。すなわち、バルブV51、52が動作して吸着プレート51によるブランケットBLの吸着を解除する(12−1)。そして、ピン昇降シリンダCL51が動作してリフトプレート551を上昇させ、使用済みのブランケットBLを吸着プレート51から鉛直上方に持ち上げる(12−2)。
次に、ブランケット用シャッター駆動シリンダCL13が動作し、ブランケット用シャッター(図示省略)を移動させて当該シャッターを開く(12−3)。そして、ブランケット搬送ロボットが、装置100にアクセスして使用済みのブランケットBLをリフトピン552の頂部から受け取り、装置100から退避する(12−4)。これに続いて、ブランケット用シャッター駆動シリンダCL13が動作し、ブランケット用シャッターを移動させて当該シャッターを閉じる(12−5)。さらに、ピン昇降シリンダCL51が動作してリフトプレート551を下降させ、リフトピン552を吸着プレート51よりも下方向(−Z)に下降させる(12−6)。
C−13.版取り出し(ステップS13)
図19(a)の「ステップS13」の欄に示すように、サブステップ(13−1)〜(13−5)を実行する。すなわち、シャトル水平駆動モータM21が回転軸を回転させ、シャトル保持プレート24が(+X)方向に移動する(13−1)。これによって、版用シャトル25Lが版受渡し位置XP21に移動して位置決めされる。また、版用シャッター駆動シリンダCL11が動作し、シャッター18を開く(13−2)。それに続いて、制御部6からの動作指令に応じて版用搬入出ユニットが使用済みの版PPを印刷装置100から取り出す(13−3)。こうして版PPの搬出が完了すると、上記バルブの開閉状態を元に戻すことで版用シャッター駆動シリンダCL11が逆方向に作動して版用シャッター18を元の位置に戻してシャッター18を閉じる(13−4)。そして、シャトル水平駆動モータM21が回転軸を回転させてシャトル保持プレート24を(−X)方向に移動させ、版用シャトル25Lを中間位置XP22に位置決めする(13−5)。
C−14.基板取り出し(ステップS14)
図19(a)の「ステップS14」の欄に示すように、サブステップ(14−1)〜(14−5)を実行する。すなわち、シャトル水平駆動モータM21が回転軸を回転させ、シャトル保持プレート24を(−X)方向に移動させる(14−1)。これによって、基板用シャトル25Rが基板受渡し位置XP25に移動して位置決めされる。また、基板用シャッター駆動シリンダCL12が動作し、シャッター19を開く(14−2)。それに続いて、制御部6からの動作指令に応じて基板用搬入出ユニットが転写処理を受けた基板SBを印刷装置100から取り出す(14−3)。こうして基板SBの搬出が完了すると、基板用シャッター駆動シリンダCL12が逆方向に作動して基板用シャッター19を元の位置に戻してシャッター19を閉じる(14−4)。そして、シャトル水平駆動モータM21が回転軸を回転させてシャトル保持プレート24を(+X)方向に移動させ、基板用シャトル25Rを中間位置XP23に位置決めする(14−5)。これにより、印刷装置100は、図19(b)に示すように、初期状態に戻る。
D.精密アライメント動作
次に、本実施形態における精密アライメント(図17、サブステップ9−8)のより具体的な動作についてさらに詳しく説明する。この精密アライメント動作は、プリアライメント部8により概略位置を調整された基板SBとブランケットBLとのXY平面における相対的な位置をより精密に合わせ込むための処理であり、本発明にかかるアライメント方法を適用することで高精度に、例えば±3μm程度の精度で両者の位置合わせを行うものである。想定する基板SBの平面サイズは350mm×300mm程度である。
この実施形態の精密アライメント動作では、以下に説明するように、基板SBおよびブランケットBLのそれぞれに位置基準となるアライメントマークを形成し、これらの位置関係を調整することで、基板SBとブランケットBLとの位置合わせを行う。なお、精密アライメントの最終的な目的は、ブランケットBL上に担持されたパターンが基板SB上の所定位置に正しく転写されるようにすることにある。一方、版PPによってブランケットBL上に形成されるパターンのブランケットBL上における位置は、パターニング時の版PPとブランケットBLとの位置関係に応じて多少の変動があり得る。したがって、精密アライメント動作ではブランケットBL上に担持されたパターンと基板SBとの位置関係が適切に調整されれば足り、ブランケットBL自体の基板SBに対する姿勢を制御する必要はない。
D−1.アライメントマーク
図20は精密アライメント動作のためのアライメントマークの配置を示す図である。基板SBおよびブランケットBLはほぼ同一の平面サイズを有する板状体であり、両者を重ね合わせたときに互いに対応する位置に、それぞれアライメントマークが形成される。すなわち、板状の基板SBの中央部には、回路パターン等の所定パターンが形成されて最終的にデバイスとして機能する有効パターン領域PRが設定される。これに対応するブランケットBLの表面領域がブランケットBLの有効パターン領域PRであり、基板SBに転写すべきパターンは版PPによってこの領域PRにパターニングされる。図20の例では矩形基板SBの中央部の矩形領域を有効パターン領域PRとしているが、これらの形状は矩形に限定されるものではなく任意である。
そして、有効パターン領域PRの四隅の外側、基板SBの角部に近接する領域を、アライメントマーク形成領域ARとしている。基板SBにおいては、例えばフォトリソグラフィー技術によって予めアライメントマークが4箇所のアライメントマーク形成領域ARのそれぞれに形成されている。一方、ブランケットBLの各アライメントマーク形成領域ARに形成されるアライメントマークは、有効パターン領域PRに形成されるパターンと共に、版PPを用いてパターン形成材料によりパターニングされる。そのため、パターニング時の版PPとブランケットBLとの位置関係に関わらず、ブランケットBL上において有効パターン領域PRに形成されるパターンとアライメントマーク形成領域ARに形成されるアライメントマークとの位置関係は不変である。これにより、アライメントマークを用いた位置合わせにより基板SBとブランケットBL上のパターンとの位置関係が一定に保たれる。
図21はアライメントマークのパターンの例を示す図である。より詳しくは、図21(a)はこの実施形態において基板に形成される第1アライメントマークの構成要素である第1アライメントパターンを示し、図21(b)はこの実施形態においてブランケットに形成される第2アライメントマークの構成要素である第2アライメントパターンを示す。また、図21(c)はこれらのアライメントパターンの空間周波数スペクトルを示している。
図21(a)に示すように、基板SBに形成される第1アライメントパターンAP1は、ピントが合わない状態でも図形が消失しない程度のサイズ、例えば1辺が50μm程度の矩形(この例では正方形)で、四辺に囲まれた内部が一様に塗り潰された中実な図形である。一方、図21(b)に示すように、ブランケットBLに形成される第2アライメントパターンAP2は、例えば1辺が120μm程度の矩形で内部が繰り抜かれて空白となった環状の中空な図形である。正方形をなす各辺の線幅は例えば10μmであり、したがって内部の正方形の1辺は100μm程度である。そのため重心を共通として第1アライメントパターンAP1と第2アライメントパターンAP2とを重ね合わせたときに、第1アライメントパターンAP1が第2アライメントパターンAP2内部の空白部分にすっぽりと収まるような寸法となっている。
これらのパターンの有する空間周波数成分を比較すると、図21(c)に示すように、中実図形である第1アライメントパターンAP1が、中空図形である第2アライメントパターンAP2よりも多くの低周波成分を含んでいる。つまり、第1アライメントパターンAP1の方が、空間周波数のスペクトルが低周波数側に偏っている。後述する精密アライメント動作では、この特徴を利用して各アライメントパターンの位置検出を行う。
すなわち、上記のように構成されたアライメントパターンをアライメント部4の撮像部45によって撮像し、撮像した画像からアライメントパターンを検出して基板SBとブランケットBL(厳密にはブランケットBL上のパターン)との位置関係を把握し、必要に応じてこれらの位置を合わせるための調整動作を行う。
なお、詳しくは詳述するが、本実施形態の第1アライメントマークおよび第2アライメントマークは、それぞれ上記したアライメントパターンを構成要素としてこれを1つまたは複数含んだものである。ただし、本発明にかかるアライメント方法を適用した本実施形態の精密アライメント動作自体は、単一のアライメントパターンのみからなるアライメントマークによっても成立する。そこで、ここでは単一の第1アライメントパターンAP1からなる第1アライメントマークを基板SBに形成し、単一の第2アライメントパターンAP2からなる第2アライメントマークをブランケットBLに形成した例を用いてアライメント動作の原理を説明する。
D−2.精密アライメントの原理
図22は精密アライメントのための撮像動作を示す図である。前記したように、この実施形態のアライメント部4は4組の撮像部45を有しているが、それらは同一構造であるので、ここではそのうち1つの撮像部45aの動作について説明する。
上記した第1アライメントパターンAP1が形成された基板SBは、上ステージ部3の吸着プレート37の下面にそのアライメントマーク形成面を下向きにして吸着保持されている。一方、第2アライメントパターンAP2が形成されたブランケットBLは、下ステージ部5の吸着プレート51にそのアライメントマーク形成面を上向きにして吸着保持されている。したがって、基板SBとブランケットBLとは、それぞれのアライメントマーク形成面同士が互いに対向するように配置される。これにより、鉛直方向(Z方向)における両アライメントマーク間の距離を小さくすることができる。基板SBとブランケットBLとの間の間隔Gsbについては、これをできるだけ小さくすることが望ましいが、装置各部の寸法精度や基板SBおよびブランケットBLの撓み等を考慮すると、基板SBとブランケットBLとの予定しない接触を防ぐためにはある程度離さざるを得ない。ここでは例えば間隔Gsbを300μmとする。
ブランケットBL表面の第2アライメントパターンAP2は、下ステージ部5の吸着プレート51に設けられた石英窓52aの直上に配置される。言い換えれば、石英窓52aはブランケットBLの1つのアライメントマーク形成領域AR(図20)の直下位置に設けられている。これと対応する位置に設けられた基板SB側の第1アライメントパターンAP1も、石英窓52aに臨む位置に配置される。
ブランケットBLは、ガラス板または透明樹脂板の表面に例えばシリコンゴムによる薄い弾性層が形成されたものであり、光透過性を有する。したがって、下ステージ部5の下方からは、石英窓52aおよびブランケットBLを介して第1アライメントパターンAP1および第2アライメントパターンAP2とが同時に見通せる状態となっている。なお、基板に転写すべきパターンおよび第2アライメントパターンAP2は、ブランケットBLの弾性層の表面に形成される。すなわち、ブランケットBLの主面のうち、弾性層が形成された側の一方主面が、パターンおよびアライメントマークの形成面となっている。
石英窓52aの下方(−Z)には、撮像部45aが配置されている。具体的には、石英窓52aの直下位置に、対物レンズ455、ハーフミラー457およびCCDカメラCMaの受光面458がこの順番で配置されている。対物レンズ455の光軸は略鉛直方向と一致しており、該光軸上に石英窓52aおよび受光面458がそれぞれ配置されている。ハーフミラー457には側方から光源456からの光が入射しており、該光はハーフミラー457で反射されて石英窓52aに向けて出射され、石英窓52aを介して第1および第2アライメントパターンを照射する。CCDカメラ受光面458は、石英窓52aに臨んで配された第1アライメントパターンAP1および第2アライメントパターンAP2を同一視野内で一括して撮像する。
対物レンズ455、ハーフミラー457、受光面458および光源456は一体的に、XYテーブル451によってXY平面に沿った方向に、また精密昇降テーブル452によって鉛直方向(Z方向)に移動可能となっている。対物レンズ455の前側焦点は、精密昇降テーブル452によってブランケットBLのアライメントマーク形成面に合わせられる。一方、後側焦点は予めCCDカメラの受光面458に合わせられている。このため、CCDカメラ受光面458には、ブランケットBLに形成された第2アライメントパターンAP2にピントが合った(焦点内の)光学像が結像され、CCDカメラCMaによりこの光学像が撮像される。
図23は精密アライメント動作の処理の流れを示すフローチャートである。なお、この処理において、ステップS901およびS902はそれぞれ図17のサブステップ(9−6)、(9−7)に対応する処理であり、図17のサブステップ(9−8)として示した「精密アライメント」は、図23のうちステップS903ないしS910に対応している。まず、精密昇降テーブル452により、撮像部45のピントがブランケットBLのアライメントマーク形成面(上面)に調整される(ステップS901)。具体的には、例えば次のようにすることができる。
第1の方法では、直前に計測されたブランケットBLの厚みに基づいて、対物レンズ455の前側焦点がブランケットBLの上面に一致するように、精密昇降テーブル452により撮像部45の上下方向位置が調整される。すなわち、ブランケット厚みの計測結果から、吸着ステージ51に保持されたブランケットBLの上面のZ方向位置を算出し、精密昇降テーブル452により対物レンズ455のZ方向焦点位置をブランケットBL上面に合わせる。
また、これに代わる第2の方法では、精密昇降テーブル452により撮像部45を上下方向(Z方向)に動かすことで焦点位置をZ方向に一定ピッチで変更設定しながら、その都度CCDカメラCMa等による撮像を行う。そして、撮像されるアライメントパターンAP2の画像から、画像コントラストが最大となる位置を算出し、その位置に対物レンズ455の焦点位置を合わせる。
上記2つの方法のいずれによってもピント調整を行うことができ、またこれらをオペレータの操作入力によって選択できるようにしてもよい。こうして撮像部45のピントが第2アライメントパターンAP2が形成されたブランケットBLの上面に合わせられる。これ以後は、光軸のブレに起因する検出誤差を生じさせないために、撮像部45の上下方向位置を動かさないようにする。
このとき、4つの撮像部45a〜45dが一体的に上下動されてもよく、また各撮像部45a〜45dがそれぞれ個別の移動量で上下動するようにしてもよい。前者の場合、ブランケット厚みの測定を代表的に1箇所のみで計測すれば済むので処理時間が短縮できる。また後者の場合、ブランケットBLの位置による厚みの違いにも対応してよりきめ細かな調整を行うことが可能である。
こうしてピント調整がなされた状態では、各CCDカメラCMa〜CMdの視野には第1アライメントパターンAP1およびこれに対応する第2アライメントパターンAP2が入っており、このうち第2アライメントパターンAP2にピントが合った状態である。各CCDカメラCMa〜CMdはそれぞれこの画像を撮像し、画像データを画像処理部65へ送出する(ステップS902)。画像処理部65は、こうして撮像された画像に対し所定の画像処理を行い、画像内における第1および第2アライメントパターンAP1,AP2の位置検出を行う(ステップS903、S904)。具体的にはこれらの重心位置G1m,G2mを検出する。
図24はCCDカメラで撮像された画像の一例を示す図である。撮像された画像IMには、図24(a)に示すように、ピントが合った状態で高い画像コントラストで撮像された第2アライメントパターンAP2が含まれる。したがって、撮像された画像から第2アライメントパターンAP2の重心位置G2mを検出することは比較的容易である。第2アライメントパターンAP2を環状矩形の中空図形とした場合、例えば次のようにして重心位置を求めることができる。図24(b)に示すように、画像内の各位置ごとの輝度を所定の閾値で二値化することで第2アライメントパターンAP2のエッジ部分を抽出し、これから第2アライメントパターンAP2の輪郭を推定してその重心G2mの位置を求めることができる(ステップS903)。特に、パターンの外形寸法や線幅などの特徴が予めわかっていることから、それらの特徴に特化した画像処理を適用することができる。
一方、基板側に形成された第1アライメントパターンAP1については、必ずしもピントが合っているとは限らない。光軸方向における第1アライメントパターンAP1と第2アライメントパターンAP2との間隔が対物レンズ455の被写界深度以下であれば、第1アライメントパターンAP1と第2アライメントパターンAP2との両方にピントが合った画像を撮像することが可能である。しかしながら、アライメントパターン間の間隔が対物レンズ455の被写界深度よりも大きいとき、第2アライメントパターンAP2にピントを合わせれば第1アライメントパターンAP1は被写界深度外となってピントが合わず、輪郭のぼやけた画像として撮像される。
本実施形態では5倍程度の倍率を有する対物レンズ455を使用しており、その被写界深度は±30μm(合焦範囲として60μm)程度である。一方、装置100にセットされた基板SBとブランケットBLとの間隔Gsbは300μm程度である。このような条件では、両アライメントパターンに同時にピントを合わせることは不可能である。すなわち、第2アライメントパターンAP2にピントを合わせれば、必然的に第1アライメントパターンAP1にはピントが合わない。本実施形態の精密アライメント方法は、このような場合にも対応して高精度の位置合わせを可能とするものである。
第1アライメントパターンAP1にピントが合っていないとき、図24(a)に示すように、第1アライメントパターンAP1は破線で示す本来の外形よりも大きく、しかも輪郭がぼやけた状態で撮像されている。したがって元の第1アライメントパターンAP1の形状が有していた空間周波数成分のうち比較的高い周波数成分は失われている。このため、第2アライメントパターンAP2の場合のようにエッジを抽出する方法は適用が難しくまた検出誤差も大きくなると考えられる。そこで、図24(c)に示すように、輝度レベルのピーク位置をもって第1アライメントパターンAP1の重心位置を求める。
このとき、図21(c)に示したように、予め第1アライメントパターンAP1の形状を低い空間周波数成分を多く含むものとしておくことによって、画像情報の損失を抑え、重心位置の検出精度の低下を抑制することができる。特にシェーディング補正を伴う画像処理を行う場合には、これによって低い周波数成分も失われるため、空間周波数の分布が低周波数側に寄った形状のパターンを用いることが有効である。
また、元の形状に含まれる高周波成分が失われることが予めわかっているのであるから、重心位置の検出において高周波成分は有用性を持たず、むしろノイズとして作用するものである。そこで、画像から高周波成分を除去する低域フィルタリング処理を行い、除去後の画像から重心位置を検出することが望ましい。このようにして、ピントが合わない第1アライメントパターンAP1の重心G1mの位置を検出する(ステップS904)。
図24(a)に示すように、例えば第1アライメントパターンAP1の重心位置G1mを基準としたとき、本来、つまり基板SBとブランケットBLとの位置関係が適切であるときに第2アライメントパターンAP2が位置すべき重心の位置を符号G2tにより表す。しかしながら、実測された重心G2mの位置は必ずしもこれと一致せず、これらを一致させるために精密アライメント動作が必要となる。すなわち精密アライメント動作では、同図において矢印で示すように、検出される第2アライメントパターンAP2の重心位置G2mをその適正位置G2tに一致させるように基板SBとブランケットBLとの相対位置を調整する。この実施形態では、撮像結果に基づきアライメントステージ44のステージトップ442の必要移動量を算出しこれを移動させることで、ステージトップ442に支持された下ステージ部5およびこれに載置されたブランケットBLを移動させて、基板SBに対する位置合わせを行う。
上記のようにして第1アライメントパターンAP1の重心G1m、および第2アライメントパターンAP2の重心G2mの位置が検出されると、続いてそれらの間の位置ずれ量を算出する(ステップS905)。ここで算出するべきは、検出された2つのアライメントパターンそれぞれの重心G1m、G2m間の位置ずれ量ではなく、第1アライメントパターンAP1の重心位置G1mから導かれる第2アライメントパターンAP2の適正な重心位置G2tと、実測により検出された第2アライメントパターンAP2の重心位置G2mとの間の位置ずれ量である。なお、第1および第2アライメントパターンがその重心位置が共通となるように配置されている(つまりG2tがG1mに等しい)場合には、当然に2つのアライメントパターンそれぞれの重心G1m、G2m間の位置ずれ量が、求めるべき量となる。
なお、XY平面内において基板SBとブランケットBLとの間で生じる位置ずれとしては、X方向およびY方向へのずれだけではなく、捩れ、つまり鉛直軸周りの回転角度が互いに異なるタイプのずれがある。基板SBおよびブランケットBLのそれぞれに設けた1対のアライメントパターンの重心位置の調整では、この鉛直軸周りの回転方向(以下、「θ方向」と称する)へのずれを補正することが難しい。特に一方のアライメントパターンがピントの合わない状態で撮像されているとき、ぼやけた画像から該パターンの回転角度を把握することは困難である。
この実施形態では、基板SBおよびブランケットBLの4隅それぞれに各1対のアライメントマークを設け(図20)、これらを4組の撮像部45で撮像する(図6)。そして、これら4組の撮像部45で撮像された画像のそれぞれから、以下のようにしてX、Yおよびθ方向の位置ずれを補正することで、基板SBとブランケットBLとの高精度な位置合わせを可能にしている。
図25および図26はこの実施形態における精密アライメントの原理を説明する図である。より詳しくは、図25は撮像結果から仮想平面に再配置されるアライメントパターンの位置関係を示す図であり、図26はこれに基づく位置ずれ補正の原理を説明する図である。これらの図および後出の図27における座標軸の方向は、撮像部45による撮像の態様にならい、基板SBおよびブランケットBLに形成されたアライメントパターンを下方から見上げた状態でのものを示している。
ここでは、基板SBの位置を基準として、ブランケットBLの位置をこれに合わせるためのブランケットBLの移動量を算出するものとし、その基本的な考え方を説明する。図25に示すように、4組のCCDカメラCMa〜CMdにより撮像された画像IMa〜IMdを仮想的なXY平面に再配置する。そして、CCDカメラCMa〜CMdによりそれぞれ撮像された基板SB側の4箇所のアライメントパターンAP1a〜AP1dを用いて構成される仮想的な図形と、ブランケットBL側の4箇所のアライメントパターンAP2a〜AP2dを用いて構成される仮想的な図形との位置関係から、基板SBとブランケットBLとの位置関係を把握する。
この実施形態では、基板SB上におけるアライメントパターンAP1a〜AP1dは、各々の重心位置を頂点とする四辺形Rsbが矩形となるように配置される。したがって、互いに対向する位置にあるアライメントパターンAP1aおよびAP1cの重心間を結ぶ線分は当該矩形の一の対角線となり、他の対角線であるアライメントパターンAP1bおよびAP1dの重心間を結ぶ線分との交点G10は、当該矩形Rsbの重心と一致する。同様に、ブランケットBL上におけるアライメントパターンAP2a〜AP2dは、各々の重心位置を頂点とする四辺形Rblが矩形となるように配置され、アライメントパターンAP2aおよびAP2cの重心間を結ぶ線分と、アライメントパターンAP2bおよびAP2dの重心間を結ぶ線分との交点G20は、当該矩形Rblの重心となる。
基板SB側、ブランケットBL側でそれぞれ検出された4箇所ずつのアライメントパターンの重心位置から、仮想平面内における矩形RsbおよびRblの重心位置の座標および座標軸に対する傾きは容易に算出可能である。それらの値から、基板SBとブランケットBLとの間の位置ずれ量、およびこれを補正するためのX方向、Y方向およびθ方向へのブランケットBLの移動量を求めることができる。
最も単純な例として、基板SB側の矩形RsbとブランケットBL側の矩形Rblとが相似形であり、基板SBとブランケットBLとが適正な配置であるときに基板SB側の矩形Rsbの重心G10とブランケットBL側の矩形Rblの重心G20とが仮想平面上において一致し、しかも仮想平面内における両矩形の傾きが等しくなるように、各アライメントパターンを配置した場合を考える。
図26(a)に示すように、矩形Rsbの重心G10と矩形Rblの重心G20とのXY平面における位置ずれを補正するためには、矩形Rbl(すなわちブランケットBL)を(−X)方向にMx、(+Y)方向にMyだけそれぞれ移動させればよい。このような移動を行うと、図26(b)に示すように、矩形Rblの重心は矩形Rsbの重心G10と一致するが、両矩形の傾きが異なり基板SBとブランケットBLとのθ方向の位置ずれが残っている場合がある。これを是正するために必要な、鉛直軸(Z軸)周りのブランケットBLの回転量Mθが、各アライメントパターンの重心位置の検出結果から算出可能である。
このように、基板SBとの位置ずれを補正するためのブランケットBLのX方向、Y方向およびθ方向の移動量Mx、My、Mθが、各アライメントパターンの重心位置検出結果から算出可能である。この算出結果に基づき、アライメントステージ44のステージトップ442を移動させて基板SBに対するブランケットBLの位置を調整することで、基板SBとブランケットBLとの位置合わせを高精度に行うことが可能である。
なお、この例では、基板SB側およびブランケットBL側における各アライメントパターンの重心を結んでなる図形が互いに相似であり、基板SBとブランケットBLとに位置ずれがなければ両図形の重心位置および傾きが等しいことを前提としたが、これに限定されない。すなわち、アライメントパターンの配置が如何なるものであっても、基板SB側のアライメントパターンの重心位置を適宜に結んでなる仮想的な図形と、ブランケットBL側のアライメントパターンの重心位置を適宜に結んでなる仮想的な図形との間における相対的な位置関係が、アライメントパターンの配置に応じて予め設定された関係となるように、基板SBに対するブランケットBLの移動量が算出されればよい。
図23のフローチャートに即して上記動作を説明する。基板SB側およびブランケットBL側のそれぞれについて、各カメラで撮像されたアライメントパターンの重心位置が画像処理部65による画像処理によって求められると(ステップS903、S904)、これらの算出結果から、基板SBとブランケットBLとの位置ずれ量を算出する(ステップS905)。ここでの位置ずれ量は、X方向、Y方向およびθ方向のそれぞれについて算出される。こうして求められた位置ずれ量が予め定められた許容範囲内にあれば(ステップS906)、基板SBとブランケットBLとの間の位置ずれは無視できるものとして精密アライメント動作を終了する。
位置ずれ量が許容範囲を超えているとき、これを補正するためのブランケットBLの移動が必要である。続いてそのための移動を行うのであるが、何らかの装置の不具合により位置合わせができない状態となっている可能性もあることを考慮して、位置合わせのための移動のリトライ回数に上限を設定しておく。すなわち、リトライ回数が予め設定された所定回数に達しているときには(ステップS907)、所定のエラー停止処理を実行した上で(ステップS908)、処理を終了する。このエラー停止処理の内容としては、例えば、所定のエラーメッセージを表示して処理自体を完全に中止する、エラーの内容をユーザに報知した上で以後の処理についてユーザの指示を待つ、などが考えられる。ユーザの指示に応じて処理を再開するようにしてもよい。
一方、所定のリトライ回数に達していなければ(ステップS907)、位置合わせのために必要なブランケットBLの移動量(Mx,My,Mθ)を算出し(ステップS909)、算出された移動量に基づきアライメントステージ44を動作させて(ステップS910)、ステージトップ442とともにブランケットBLの位置を移動させる。この状態で、再び各アライメントパターンの撮像および重心位置の検出を行い、ブランケットBLの再移動が必要か否かの判定を行う(ステップS902〜S906)。これを所定のリトライ回数に達するまで繰り返す(ステップS907)。
これにより、図26(b)に実線で示す基板SB側に形成された4箇所のアライメントパターンAP1がなす矩形Rsbと、点線で示すブランケットBL側に形成された4箇所のアライメントパターンAP2がなす矩形Rblとの重心位置(X方向、Y方向)およびXY平面における傾き(θ方向回転角度)が共に一致する、またはそのずれ量が許容範囲内に収まることとなる。これにより、基板SBとブランケットBLとの位置合わせ(精密アライメント)が完了する。
なお、この実施形態では、アライメントパターンの撮像および該撮像結果に基づくブランケットBLの移動を繰り返して実行することで基板SBに対するブランケットBLの位置を調整し位置ずれを補正してゆくが、少なくともθ方向のずれ量に関してはできるだけ早い段階で補正を完了させておくことが望ましい。その理由は、θ方向の位置ずれを補正するためにはアライメントステージ44を捻るような移動が必要であり、このような動きを繰り返すことは移動機構のバックラッシュによる誤差を招きやすいからである。
このように複数箇所で撮像されたアライメントパターンにより特定される図形の比較によって位置合わせを行うことで、次のような利点が得られる。第1に、複数箇所での検出結果を総合することで、X方向およびY方向だけでなく、鉛直軸(Z軸)周りのθ方向における位置ずれを容易に検出することができ、これを補正することができる。第2に、各カメラが撮像した画像それぞれにおけるアライメントパターンの位置検出誤差が希薄化されることで、位置合わせの精度が向上する。
第3に、各撮像部45のカメラ取付ベース41への取り付け位置精度に対する要求を引き下げることができる。高精度の位置合わせを行うためには、カメラ取付ベース41に対する撮像部45の取り付け位置を高精度に制御する必要があるが、本実施形態のように、基板SBおよびブランケットBLに設けた複数のアライメントパターンをそれぞれ個別の撮像部45により撮像し、それらのアライメントパターンの位置検出結果から総合的に位置合わせを行う構成では、以下に説明するように、撮像部45の取り付け位置のばらつきやその経時変化に起因する誤差を低減することが可能である。
図27は撮像部の取り付け位置の変動が位置合わせに及ぼす影響を説明する図である。例えば図27において符号IMaで示される領域を撮像すべきCCDカメラCMaが、その取り付け位置のずれにより符号IMa2で示される領域を撮像した場合を考える。この場合、4つのアライメントパターンAP1a、AP1b、AP1およびAP1dにより示される本来の重心G10と、検出されたアライメントパターンAP1a2、AP1b、AP1およびAP1dにより示される重心G11との間には、アライメントパターンAP1aとアライメントパターンAP1a2との仮想平面における位置の違いに起因した誤差が生じる。しかしながら、そのずれ量は、他の撮像部45で撮像されたアライメントパターンの位置検出結果と平均化されることで、アライメントパターン自体の検出位置誤差よりも小さくなる。
さらに、この実施形態では、基板SB側の4箇所のアライメントパターンと、これらのそれぞれと対になるブランケットBL側の4箇所のアライメントパターンとをそれぞれ同一の撮像手段45の同一視野内で撮像する。したがって、撮像手段45の取り付け位置精度に起因するアライメントパターンの位置ずれは、基板SB側、ブランケットBL側のアライメントパターンに対して同程度に生じる。このため、検出された基板SB側のアライメントパターンがなす図形Rsbの重心と、ブランケットBL側のアライメントパターンがなす図形Rblの重心との間における位置ずれ量はさらに小さく抑えられることとなる。
すなわち、撮像部45の取り付け位置が検出結果に及ぼす影響が軽減されており、撮像部45の取り付け位置に要求される精度を軽くすることができる。また、撮像部45の取り付け位置の経時変化による影響も抑えることができる。
このように、この実施形態における精密アライメント動作では、ブランケットBL側に設けられた中空図形である第2アライメントパターンAP2に撮像部45のピントを合わせた状態で、該第2アライメントパターンAP2と基板SB側に設けられた第1アライメントパターンAP1とを同一視野内で撮像する。そして、第2アライメントパターンAP2についてはエッジ抽出を含む画像処理により重心位置を検出する一方、第1アライメントパターンAP1については低域通過フィルタ処理を含む画像処理により重心位置を検出する。このために、第1アライメントパターンAP1としては低い空間周波数成分を多く含む中実図形とする。
これらの構成により、この実施形態では、第1アライメントパターンAP1にピントが合わない状態での撮像によって、第1および第2アライメントパターンそれぞれの重心位置を精度よく求めることができ、これに基づく基板SBとブランケットBLとの位置合わせを高精度に行うことが可能である。本願発明者らの実験によれば、鉛直方向に約300μm離れた基板SBとブランケットBLとの間で位置合わせを行った場合、互いの位置ずれを数μm程度に抑えることが可能であることが確認されている。
さらに、この実施形態では、基板SBおよびブランケットBLのそれぞれに、互いに対応する位置に複数のアライメントパターンを設け、これらを個別に撮像した画像から総合的に基板SBとブランケットBLとの位置関係を求めている。こうすることで、撮像された画像内でのアライメントパターンの位置検出誤差や、撮像手段の取り付け位置の変動に起因する検出誤差等による精度の低下を防止することができる。
D−3.アライメントマークの実例
上記した精密アライメント動作の原理説明では、理解を容易にするために、基板SB上に4箇所設けられたアライメントマークのそれぞれが単一の中実矩形のアライメントパターンAP1からなる一方、ブランケットBL上に4箇所設けられたアライメントマークのそれぞれが単一の中空矩形のアライメントパターンAP2からなるとした。このように原理的には単一図形のアライメントマークを用いて位置合わせを行うことが可能であるが、この実施形態では基板SB側のアライメントマークを、複数のアライメントパターンAP1を以下のように配列したものとしている。
図28はアライメントマークの具体例を示す図である。図28(a)に示されるように、基板SB上に形成されるアライメントマークAM1は、上記した中実矩形のアライメントパターンAP1を複数配列したものである。具体的には、アライメントマークAM1の中央部には縦横3個ずつ、計9個の同一形状のアライメントパターンAP101〜AP109を配する。隣接するアライメントパターンAP11間の間隔は、少なくとも各アライメントパターンAP1の1辺の長さ(50μm)の2倍、ここでは150μmとしている。また、こうして形成される各アライメントパターンAP11の3×3マトリクスの外側を囲むように、さらに4個のアライメントパターンAP111〜AP114が配置される。一方、ブランケットBL側のアライメントマークAM2は、単一の中空矩形であるアライメントパターンAP2のみからなるが、複数のアライメントパターンにより構成されてもよい。
基板SBとブランケットBLとの位置合わせは、基板SB側の計13個のアライメントパターンAP101〜AP109、AP111〜AP114のうちいずれか1つと、ブランケットBL側のアライメントパターンAP2とを用いて、上記原理により行うことが可能である。ただしこの実施形態では、後の転写プロセス(図17のサブステップ9−8)において基板SBに転写されるパターンと同じ材料でブランケットBL表面にアライメントマークAM2を形成しているため、アライメントマークAM2はパターンと共に基板SBに転写されてしまう。これを利用して基板SBへのパターン転写位置を事後的に確認できるようにするためのアライメントマークの配置の一例が、図28(a)に示すものである。
図28(a)に示すように、精密アライメント動作は、基板SB側のアライメントマークAM1とブランケットBL側のアライメントマークAM2とが各撮像部45で撮像される画像において互いに重ならないような位置関係で開始されることが望ましい。こうすることで、両アライメントマークが互いに干渉してその位置検出精度が低下するのを防止することができる。これはプリアライメント時の基板SBおよびブランケットBLの位置を適宜に設定することにより実現可能である。
一方、転写プロセス時、つまり精密アライメント後の基板SBとブランケットBLとの位置は、環状の第2アライメントパターンAP2が第1アライメントマークAM1のうち内側のアライメントパターンAP101〜AP109の1つの周囲を取り囲むような関係とする。例えば以下のようにする。このとき第2アライメントパターンAP2の重心と、これに囲まれることになる基板SB側のアライメントパターンの重心とが一致することがより望ましい。
基板SBへのパターン転写は複数回にわたって行うことが可能であり、これにより基板SB表面に多層のパターンを形成することができる。図28(b)は3回のパターン転写を行った場合の例を示している。第1回のパターン転写では、ブランケットBLに担持されていたアライメントパターンAP21が基板SB側の一のアライメントパターンAP101に重ねて転写される。同様に、第2回および第3回のパターン転写では、各回にブランケットBLに担持されていたアライメントパターンAP22、AP23がそれぞれ基板SB側のアライメントパターンAP102、AP103にそれぞれ重ねて転写される。
このとき、精密アライメントが適切に行われていれば、ブランケットBLから基板SBに転写されるアライメントパターンと、それに囲まれる基板SB側のアライメントパターンとはそれぞれの重心が一致するはずである。図28(b)の例では、アライメントパターンAP21とAP101との間、AP22とAP102との間ではこの関係が維持されている。一方、アライメントパターンAP23とAP103との間では重心位置がずれており、このことから、3回目のパターン転写において何らかの原因で基板SBとブランケットBLとの間で僅かな位置ずれがあったことが事後的に確認できる。この例では、9個のアライメントパターンAP101〜AP109を設けているので、最大9回のパターン転写における精密アライメントの成否を各回ごとに判断することが可能である。
このように、アライメントパターンAP101〜AP109は、パターンが転写された位置を確認するための基板SB側の位置基準となる基準マークとしての機能も有する。なお、こうしてブランケットBLから転写されたアライメントパターンAP21等により周囲を取り囲まれた基板SB側のアライメントパターンAP101等は、以後の精密アライメントにおける位置基準として用いるのには適さない。周囲に転写されたアライメントパターンAP21等が位置検出の際の外乱となるおそれがあるからである。すなわち、アライメントパターンAP101等は転写ごとに1つずつ「消費」されるものであると言える。本実施形態では、ブランケットBLからのアライメントパターンが周囲に転写されることのないアライメントパターンAP111〜AP114を別途設けており、これらを精密アライメント時の位置基準とすることでこの問題を解消している。
次に、アライメントパターンAP2の形状について説明する。この実施形態では、図21(b)に示したように外形が矩形(この例では正方形)で中空の図形をアライメントパターンAP2として用いている。アライメントパターンAP2はピントが合った状態で撮像されるため、その形状については比較的自由度が高い。例えば円環形状の図形などを用いることも考えられるが、その場合、次に説明するように、アライメントパターンが不完全な状態のときに重心位置の検出精度が大きく低下するという問題がある。このようなパターンの不完全さは、例えばブランケットBL表面の傷や汚れ等に起因して生じるほか、ブランケットBLに塗布された液体によりアライメントパターンが形成されている場合にその乾燥が不十分なとき等に生じることがある。
図29は欠損のあるアライメントパターン形状の例を示す図である。図29(a)に示すように、円環形状のアライメントパターンAP01では、円環の一部に欠損D01が生じたとき、観察されるパターンから把握される重心位置は本来の重心位置からずれてしまい、またその回転対称性に起因して、本来の重心位置を求めるための手掛かりとなる情報を画像から取得するのが容易でない。
これに対して、本実施形態の矩形の環状図形では、図29(b)に示すように1辺に欠損D21があっても互いに平行な2辺S21、S22が保存されていれば重心位置を正しく検出することが可能である。また、図29(c)に示すように、1つの頂点を含む欠損D22がある場合には、隣接する2辺S23、S24が保存されていればやはり重心位置を正しく検出することができる。より甚だしい欠損であっても、図29(d)に示すように、対角線上の2つの頂点P21、P22が保存されていれば、元の重心位置を正しく検出することが可能である。
E.その他
以上説明したように、この実施形態では、ブランケットBLが本発明の「担持体」に相当している。そして、下ステージ部5が本発明の「保持手段」として機能しており、そのうち吸着プレート51が、本発明の「担持体保持ステージ」として機能している。また、この実施形態では、撮像部45a〜45dが本発明の「撮像手段」として機能している。また、CPU61および画像処理部65が本発明の「位置検出手段」として機能する一方、アライメントステージ44が本発明の「アライメント手段」として機能している。
また、図25等における矩形Rsb、Rblが、それぞれ本発明の「第1図形」および「第2」図形に相当している。
また、この実施形態のステップS4(図12)およびS8が本発明の「保持工程」に相当しており、ステップS9が本発明の「撮像工程」、「位置検出工程」および「アライメント工程」に相当している。より詳しくは、図23のステップS902が本発明の「撮像工程」に相当し、ステップS903およびS904が「位置検出工程」に相当する。そして、ステップS909およびS910が、本発明の「アライメント工程」に相当している。
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態において示したアライメントマークの形状は一例にすぎず、上記以外に種々のものを採用可能である。ただし、上記したようにパターンの欠損による重心位置の検出誤差を低減するためには、重心に対しいくつかの回転角度について点対称な図形であることが好ましいが、円形または円環形状のものでないことが望ましい。
また例えば、上記実施形態では基板SBおよびブランケットBLの4つの角部の近傍に4組のアライメントマークを形成しているが、アライメントマークの形成個数はこれに限定されず任意である。ただし、鉛直軸周りの位置ずれを適切に補正するためには、異なる位置に形成した複数組のアライメントマークを用いることが好ましく、これらはできるだけ離れた位置にあることがより望ましい。また、各カメラの位置ずれによる誤差を抑えるためには、3組以上のアライメントマークが設けられることが望ましい。
また、上記実施形態ではブランケットBL上のアライメントマークをパターン形成材料と同一の材料により形成しているが、このことは必須の要件ではなく、例えば基板に転写されないアライメントマークをブランケットBLに予め形成しておいてもよい。この場合、基板SBへのパターン転写を高い位置精度で行うためにはブランケットBL上に担持されるパターンの位置精度が重要となるので、版PPによるブランケットBLへのパターニングを行うに際しては版PPとブランケットBLとの位置合わせをより精密に行うことが必要となる。
また、上記実施形態ではブランケットBL側のアライメントパターンAP21等を基板SB側のアライメントパターンAP101等の周囲に転写することで、転写位置の事後的な確認を容易にするようにしているが、このことは必須の要件ではない。すなわち、ブランケットBL側のアライメントパターンを基板SBの有効パターン領域PR外の適宜の位置に転写することができる。
また、上記実施形態では、本発明の転写装置の一実施態様である印刷装置の内部でブランケットBLへのパターニングを行っているが、本発明はこれに限定されず、例えば外部でパターニングが行われたブランケットが搬入されて基板へのパターン転写を行う装置に対しても、好適に適用可能なものである。