以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士を部分的に組み合わせることも可能である。
(第1実施形態)
本発明に係る温調装置は、例えば、内燃機関を走行用駆動源とする自動車、内燃機関と二次電池に充電された電力によって駆動されるモータとを組み合わせて走行駆動源とするハイブリッド自動車、モータを走行駆動源とする電気自動車等に用いられる。また、温調される温調対象9は、車両に設けられ、温度調節された温調空気が送風可能な空間、機器等である。
本発明の一実施形態である第1実施形態について図1〜図11を用いて説明する。なお、図2には、温度調節を要する温調対象を加熱する加熱モードを実施したときの空気の流れを矢印により示している。図面において、X方向は車両前方向に相当し、Y方向は車両左右方向(車両幅方向)に相当し、Z方向は車両上方向に相当する。第1実施形態では、温調対象の一例である組電池90を温度調整するために用いられる温調流体として空気を採用している。組電池90は、通電可能に接続された複数個の単電池からなる。
組電池90を構成する二次電池は、充放電可能で、車両走行用のモータ等に電力を供給する用途に用いられる。当該電力は、組電池90を構成する各単電池に蓄えられ、各単電池は、例えばニッケル水素二次電池、リチウムイオン二次電池、有機ラジカル電池である。組電池90は、電池パックとして、例えば、筐体内に収納された状態で自動車の座席下、後部座席とトランクルームとの間の空間、運転席と助手席の間の空間等に配置される。
温調装置1は、複数個の単電池に対して温度調整された空気(以下、「温調空気」ともいう)を送風する第1の送風機2及び第2の送風機3と、空気を温度調整する放熱器11及び蒸発器13と、温調空気が流通する空気通路を運転モードに応じて切り替え変更する第1のフィルムドア4及び第2のフィルムドア5と、各部の作動を制御する制御装置7と、を備える。
温調装置1は、例えば、図1及び図2に示すように、ケース8が温調対象9である組電池90を含む電池パックに一体に取り付けられることによって、一つのユニットを形成する。この構成により、空気通路が短く設定できるため、外気との熱的接触が抑制でき、熱損失を抑制することができ、省電力効果が期待できる。当該ユニットは、例えば、樹脂ケース、金属製のケースによって外郭を構成する。組電池90が収容される空間とケース8の内部とは、ケース8内部から流出した温調空気が組電池90に向かって流れる温調対象流入通路91と、組電池90の周囲を通過した空気がケース8内部に向かって流れる温調対象流出通路92と、によって接続される。
温調対象流入通路91及び温調対象流出通路92は、組電池90を収容するケースの側面にX方向に延びるように設けられ、図2に示すように、温調対象流入通路91は、組電池90のX方向長さ全体にわたって、組電池90の側方に配置され、温調対象流出通路92は、組電池90及びケース8のX方向長さ全体にわたって、組電池90の側面よりもY方向に突出する通路を形成する。なお、温調装置1を形成するケース8と組電池90を収容するケースとを2本のダクトによって接続することにより、温調装置1と温調対象9とを離した場所に配置するようにしてもよい。
温調装置1は、図1〜図3に示すように、ケース8の内部に各構成部品を収容した温調ユニットである。ケース8は、運転モードに応じて変更される空気経路を内部に有し、第1のフィルムドア4、第2のフィルムドア5、第1の送風機2、第2の送風機3、放熱器11、蒸発器13等を収容する筐体である。温調装置1は、例えば、自動車の座席下の車外空間、トランクルーム、後部座席とトランクルームとの間の空間、運転席と助手席の間の床下に形成された車外空間等に設置される。
組電池90は、車両に搭載される温度調整される温調対象、電気機器の一例でもある。組電池90には、空気が各単電池の外表面または電極端子に接触するように流れる電池通路が形成され、温調空気がこの電池通路を流れることで、組電池90を温度調整することができる。第1の送風機2及び第2の送風機3は、複数個の単電池に対して温調空気を送風する温調用送風装置である。
組電池90は、複数個の単電池の充電、放電、温度調節に用いられる電子部品(図示せず)によって制御され、周囲を流通する空気によって各単電池が温度調節される。この電子部品は、リレー、充電器のインバータ等を制御する電子部品、電池監視装置、電池保護回路、各種の制御装置等である。各単電池は、例えば扁平な直方体状の外装ケースを有し、外装ケースから電極端子が突出する。電極端子は、厚さ方向に平行な狭い面積の端面から外部へ突出し、各単電池において所定の間隔をあけて配置された正極端子及び負極端子からなる。例えば、組電池90を構成するすべての単電池は、その積層方向の一方端部側に位置する単電池における負極端子から始まって、隣接する単電池の電極端子間を接続するバスバーによって、積層方向の他方端部側に位置する単電池の正極端子に至るまで通電可能に直列接続される。
組電池90には、単電池の温度を検出する電池温度センサ6が設けられている。この電池温度センサ6は、温調対象の温度を検出する機器温度検出手段の一例である。また、電池温度センサ6は、所定の単電池の表面温度、電極端子の温度、またはバスバーの温度を検出するように構成することができる。
冷凍サイクル100は、少なくとも圧縮機10、放熱器11、減圧器12、及び蒸発器13を環状に接続して構成される冷媒回路である。冷凍サイクル100は、圧縮機10を迂回可能に蒸発器13と放熱器11を連絡するバイパス通路15と、バイパス通路15における冷媒の流通を許可及び禁止する弁装置の一例である電磁弁14とを有する。電磁弁14は、制御装置7によって、運転モードに応じて開状態、閉状態に制御されて、バイパス通路15における冷媒の流通を許可したり、阻止したりできる。
放熱器11は、冷凍サイクル100に含まれる構成部品であり、組電池90へ送風する空気を加熱して温調空気を生成する加熱用熱交換器の一例である。放熱器11は、加熱モード時に、冷凍サイクル100において圧縮機10で圧縮された冷媒が熱交換部11aで通過する空気に対して放熱する作用により、当該通過空気を加熱する熱交換器である。
熱交換部11aは、交互に配されたチューブとアウターフィンとを備え、これらを積層して一体にして形成される。上下方向に延びるチューブ内には、冷媒が流通し、チューブ間に存在するアウターフィンには、加熱される空気が冷媒流れ方向に対して直交する方向に通過する。複数のチューブの一方側端部は、上部タンク11bに接続され、他方側端部は下部タンク11cに接続される。上部タンク11bと下部タンク11cは、複数のチューブの内部を介して連通する。つまり、下部タンク11c内に流入した冷媒は、チューブ内部を介して上部タンク11bの内部に流通しうる。
なお、圧縮機10の吐出部と接続される放熱器11の部分は、下部タンク11cに限定するものではなく、その高さ位置を任意に設定してもよい。例えば、放熱器11の当該部分は、上部タンク11bに設けてもよい。
蒸発器13は、冷凍サイクル100に含まれる構成部品であり、組電池90へ送風する空気を冷却して温調空気を生成する冷却用熱交換器の一例である。蒸発器13は、冷却モード時に、冷凍サイクル100において放熱器11を流出後、減圧器12によって減圧された冷媒が熱交換部13aで通過する空気から吸熱する作用により、当該通過空気を冷却する熱交換器である。
熱交換部13aは、交互に配されたチューブとアウターフィンとを備え、これらを積層して一体にして形成される。上下方向に延びるチューブ内には、冷媒が流通し、チューブ間に存在するアウターフィンには、冷却される空気が冷媒流れ方向に対して直交する方向に通過する。複数のチューブの一方側端部は、上部タンク13bに接続され、他方側端部は下部タンク13cに接続される。上部タンク13bと下部タンク13cは、複数のチューブの内部を介して連通する。つまり、下部タンク13c内に流入した冷媒は、チューブ内部を介して上部タンク13bの内部に流通しうる。
なお、圧縮機10の吸入部と接続される蒸発器13の部分は、上部タンク13bに限定するものではなく、その高さ位置を任意に設定してもよい。例えば、蒸発器13の当該部分は、下部タンク13cに設けてもよい。また、減圧器12の出口部と接続される蒸発器13の部分は、上部タンク13bに限定するものではなく、その高さ位置を任意に設定してもよい。例えば、蒸発器13の当該部分は、下部タンク13cに設けてもよい。また、放熱器11と蒸発器13には、同じ構成の熱交換器、つまり、全く同じ部品を用いることが可能である。これにより、放熱器11及び蒸発器13として使用する熱交換器を一つの部品で管理できるので、部品の管理工数低減の効果により製品コスト低減に貢献できる。
蒸発器13は放熱器11よりも低い位置に配置されている。つまり、車両に設置された状態において、放熱器11は、上方に位置する熱交換器であり、蒸発器13は放熱器11よりも下方に位置する熱交換器である。
放熱器11は、ケース8の高さ方向Zに対して傾斜した姿勢でケース8内部に設けられる。蒸発器13は、ケース8の高さ方向Zに対して傾斜した姿勢でケース8内部に設けられる。放熱器11は、ケース8内部において、蒸発器13よりも上方に位置する。上方の放熱器11の上部(例えば、上部タンク11b)と下方の蒸発器13の下部(例えば、下部タンク13c)とは、ケース8内部において、同じ側に偏って位置する(図3のX方向に偏って位置する)。換言すれば、上方の放熱器11の上部と下方の蒸発器13の下部とは、ケース8に開口されて車室外の空気が導入される外気導入口81及び外気導入口82側に偏って位置する。
放熱器11の下部(例えば、下部タンク11c)と下方の蒸発器13の上部(例えば、上部タンク13b)とは、放熱器11の上部及び蒸発器13の下部が位置する側とは反対側に位置する。さらに放熱器11の下部と蒸発器13の上部は隣接して位置するため、両方の熱交換器を接続する冷媒配管の長さを短くすることができる。つまり、放熱器11と蒸発器13は、ケース8内部を側面視すると、「く」の字状または逆「く」の字状になるように傾斜した姿勢で設置されている。
さらに冷媒が蒸発器13に向けて流出する放熱器11の出口部は、下部タンク11cに設けられ、冷媒配管を介して減圧器12に接続されている。放熱器11と蒸発器13がヒートパイプ機能を発揮するためには、放熱器11の出口部は放熱器11において下部に配置されることが好ましい。また減圧器12は、冷媒配管を介して蒸発器13の上部タンク13bに接続されている。
温調装置1は、ケース8の内部に、車室外に通じる外気導入通路8a,8bと、循環気導入通路8cと、熱交換器下流側通路8d,8eと、を空気通路として備える。外気導入通路8aは、ケース8の車両前方上側に開口されて車室外の空気が導入される外気導入口81の下流側(外気導入口81よりも車両後方)に設けられた通路である。図2及び図3に示すように、ケース8の側面には、冷凍サイクル100の構成部品の一部が収められている収容カバー89が取り付けられている。収容カバー89の内部には、圧縮機10、電磁弁14、減圧器12、バイパス通路15を形成する冷媒配管及びその他の冷媒配管が内蔵されている。これらの部品をメンテンナンスするときには、収容カバー89を取り外して作業を行うことができる。
外気導入通路8aは、ケース8内部において、区画壁88、第1のフィルムドア4、及びケース8の車両前方上部の壁部分によって囲まれた空間をなす。外気導入通路8aは、第1のフィルムドア4に形成された第2開口部44が外気導入通路8aに臨む位置に制御されることによって、下流側に位置する放熱器11の熱交換部11aと連通するようになる。
外気導入通路8bは、ケース8の車両前方下側に開口されて車室外の空気が導入される外気導入口82の下流側(外気導入口82よりも車両後方)に設けられた通路である。外気導入通路8bは、ケース8内部において、区画壁88、第1のフィルムドア4、及びケース8の車両前方下部の壁部分によって囲まれた空間をなす。外気導入通路8bは、第1のフィルムドア4に形成された第1開口部43が外気導入通路8bに臨む位置に制御されることによって、下流側に位置する蒸発器13の熱交換部13aと連通するようになる。
循環気導入通路8cは、ケース8の車両前方の中ほどに設けられ、温調対象流出通路92に通じ、温調対象9側の空気が導入される連通開口83が臨む通路である。循環気導入通路8cは、ケース8内部において、区画壁88、第1のフィルムドア4、及びケース8の車両前方中央部の壁部分によって囲まれた空間をなす。循環気導入通路8cは、第1のフィルムドア4の第1開口部43が循環気導入通路8cに臨む位置に制御されることによって、下流側に位置する蒸発器13の熱交換部13aと連通し、第1のフィルムドア4の第2開口部44が循環気導入通路8cに臨む位置に制御されることによって、下流側に位置する放熱器11の熱交換部11aと連通するようになる。
また、連通開口83は、温調対象9に通じる連通路でもあり、図2及び図3に示すように、ケース8内部の車両前方の中ほどに設けられ、ケース8の側面に向けて開口している。また、連通開口83は、図3の二点鎖線で示すように、上方の放熱器11の上部と下方の蒸発器13の下部とで挟まれる範囲に位置するように設けられる。
熱交換器下流側通路8dは、第1のフィルムドア4よりも空気流れの下流に位置する通路であり、放熱器11及び第1の送風機2が設けられる通路である。熱交換器下流側通路8dと熱交換器下流側通路8eは、板状の仕切り部80と第1のフィルムドア4とによって、ケース8の内部の外気導入通路8a、8b及び循環気導入通路8cを除く空間を、上下に二分されて形成された通路である。また、仕切り部80は、放熱器11の下部と蒸発器13の上部とを支持する構造を有する。
ケース8には、熱交換器下流側通路8dに臨む第1排出口84及び第1連通口86が設けられている。ケース8の上面に形成される第1排出口84は、第2のフィルムドア5の第3開口部56が第1排出口84と重なる位置に制御されることによって、熱交換器下流側通路8dとケース8の外部とを連通させ、この状態で放熱器11によって温調された温調空気は第1排出口84から車両の外部へ向けて流出する。外気導入口81は、温調空気がケース8の内部から流出する第1排出口84や第1連通口86よりも、開口面積が大きくなるように形成されている。また、第1の送風機2は、軸流式送風機であり、ケース8内部の熱交換器下流側通路8dにおいて、放熱器11に対して、同じ向きに傾斜した姿勢で重なるように設けられる。第1の送風機2は、軸流式のファン、例えばいわゆるボックスファンを採用することにより、軸方向の厚さ寸法を抑えることができる。
熱交換器下流側通路8eは、第1のフィルムドア4よりも空気流れの下流に位置する通路であり、蒸発器13及び第2の送風機3が設けられる通路である。ケース8には、熱交換器下流側通路8eに臨む第2排出口85及び第2連通口87が設けられている。ケース8の下面に形成される第2排出口85は、第2のフィルムドア5の第1開口部54が第2排出口85と重なる位置に制御されることによって、熱交換器下流側通路8eとケース8の外部とを連通させ、この状態で蒸発器13によって温調された温調空気は第2排出口85から車両の外部へ向けて流出する。外気導入口82は、温調空気がケース8の内部から流出する第2排出口85や第2連通口87よりも、開口面積が大きくなるように形成されている。また、第2の送風機3は、軸流式送風機であり、ケース8内部の熱交換器下流側通路8eにおいて、蒸発器13に対して、同じ向きに傾斜した姿勢で重なるように設けられる。第2の送風機3は、軸流式のファン、例えばいわゆるボックスファンを採用することにより、軸方向の厚さ寸法を抑えることができる。
前述した温調装置1の構成によれば、加熱された空気がケース8内部及び温調対象9を循環する場合には、循環気導入通路8c、熱交換器下流側通路8d及び放熱器11、第1連通口86、温調対象流入通路91、組電池90、温調対象流出通路92、連通開口83、循環気導入通路8cを順に温調空気が流通する。冷却された空気がケース8内部及び温調対象9を循環する場合には、循環気導入通路8c、熱交換器下流側通路8e及び蒸発器13、第2連通口87、温調対象流入通路91、組電池90、温調対象流出通路92、連通開口83、循環気導入通路8cを順に温調空気が流通する。
第1のフィルムドア4は、運転モードに応じて温調空気が流通する空気経路を切り替える第1の切換ドアである。第1のフィルムドア4は、第1開口部43、第2開口部44を有するシート状のドア板部が平行移動して空気経路を切り換えるドアである。第1のフィルムドア4は、ドア板部を平行移動させて第1開口部43、第2開口部44の位置を制御することにより、放熱器11及び蒸発器13のそれぞれに通過させる空気として、車室外から導入する空気か、温調対象側から取り入れる空気のいずれかを選択するように空気経路を切り換える。
第1のフィルムドア4は、上部に設けたサーボモータ40の回転角度を制御して、シート状のドア板部を巻き取る量を制御することにより、第1開口部43、第2開口部44の位置を設定することができる。第1のフィルムドア4は、上部のサーボモータ40による回転軸部と、下部の回転軸部41と、中ほどの「く」の字状の曲がり部分でドア板部を滑るように支持する滑動支持部42と、を備えている。また、区画壁88の車両後方側の端部は、第1のフィルムドア4のドア板部が平行移動可能な状態で当該ドア板部に当接している。
第1のフィルムドア4は、ケース8内部において、その高さ方向Zの大きさが上方の放熱器11の上部と下方の蒸発器13の下部との間に収まるように設けられている。第1のフィルムドア4は、ケース8内部において、ドア板部が上方の放熱器11及び下方の蒸発器13と同じ向きに傾斜した姿勢となるように設けられている。すなわち、第1のフィルムドア4も、ケース8内部を側面視すると、ドア板部が「く」の字状または逆「く」の字状になるように傾斜した姿勢で設置されている。
第2のフィルムドア5は、運転モードに応じて温調空気が流通する空気経路を切り替える第2の切換ドアである。第2のフィルムドア5は、上方の熱交換器下流側通路8dから空気を、車両の外部へ向けて流出させる第1排出口84か、温調対象9へ向けて流出させる第1連通口86のいずれかを開放する。さらに第2のフィルムドア5は、下方の熱交換器下流側通路8eから空気を、車両の外部へ向けて流出させる第2排出口85か、温調対象9へ向けて流出させる第2連通口87のいずれかを開放する。これにより、第2のフィルムドア5は、空気経路を切り換えることができる。
第2のフィルムドア5は、第1開口部54、第2開口部55及び第3開口部56を有するシート状のドア板部が平行移動して空気経路を切り換えるドアである。第2のフィルムドア5は、ドア板部を平行移動させて第1開口部54、第2開口部55、第3開口部56の位置を制御することにより、放熱器11及び蒸発器13のそれぞれに通過させる空気を、第1排出口84、第2排出口85から車室外へ排出するか、第1連通口86、第2連通口87から温調対象9側へ供給するかのいずれかに選択するように空気経路を切り換えることができる。
第2のフィルムドア5は、ケース8内部において、ケース8の内面に沿うように断面コの字状を呈するような姿勢で設置されている。図5に示すように、第2のフィルムドア5は、シート状のドア板部が有する複数の第1開口部54、第2開口部55、第3開口部56が、ドア板部が平行移動する方向(例えばZ方向)に延びる長さが同じ長さとなるように構成される。また、シート状のドア板部が有する複数の複数の第1開口部54、第2開口部55、第3開口部56のうち少なくとも一つ、上記平行移動方向に直交する方向に延びる長さが、他の開口部とは異なる長さに設定される。例えば、図5では第2開口部55は、幅方向(Y方向)の長さ寸法がLsであり、他の開口部における幅方向(Y方向)の長さ寸法Lよりも短く設定されている。
第2のフィルムドア5は、上部に設けたサーボモータ50の回転角度を制御して、シート状のドア板部を巻き取る量を制御することにより、第1開口部43、第2開口部44の位置を設定することができる。第2のフィルムドア5は、上部のサーボモータ50による回転軸部と、上部に設けた直角曲がり部分でドア板部を滑るように支持する滑動支持部53と、下部の回転軸部51と、下部に設けた直角曲がり部分でドア板部を滑るように支持する滑動支持部52と、を備える。
第2のフィルムドア5は、ケース8内部において、その高さ方向Zの大きさが上方の放熱器11の上端部と下方の蒸発器13の下端部との間の高さ寸法と同等となるように、またはこの高さ寸法の範囲に収まるように設けられている。これにより、第2のフィルムドア5の高さ方向Zの寸法と、「く」の字状に配した放熱器11及び蒸発器13で占める高さ方向Zの寸法とを抑制することができるため、温調装置1の高さが抑制され、車室内の床下等に搭載する場合の占有スペースを低減することができる。
図4に示すように、制御装置7は、電池温度センサ6の検出信号が入力され、演算部、記憶装置等に予め記憶された演算プログラムを用いた演算結果にしたがい、圧縮機10の回転数、電磁弁14の開閉、各フィルムドア4,5の開口部の位置、第1の送風機2の回転数、第2の送風機3の回転数等の作動を制御する。なお、減圧器12は、開度が固定式の減圧器であるが、開度可変式の電子制御式膨張弁を用いて、制御装置7によって減圧量を制御するようにしてもよい。
制御装置7は、電池の温調制御において、温風の提供によって組電池90を温める加熱運転の実施条件が成立する場合、組電池90に与える空気を冷却する冷却運転の実施条件が成立する場合のそれぞれにおいて、各フィルムドア4,5、各送風機2,3、圧縮機10及び電磁弁14を制御して、加熱モードの運転、冷却モードの運転を実施する。この電池の温調制御は、車両のスタートスイッチ(例えば、イグニッションスイッチ)がON状態である場合に継続して実施される。また、冷却運転には、高能力冷却モードと低能力冷却モードの2段階の運転モードがある。
高能力冷却モードは、検出された電池温度が第1の所定温度T1を超える場合に実施される大きな冷却能力を発揮するモードである。第1の所定温度T1としては、例えば35℃を採用することができる。すなわち、制御装置7は、検出された電池温度が35℃を超えると判定すると、電池は即時に冷却を必要とする状態であると判断し、高能力冷却モードを実行する。この高能力冷却モードは、検出される電池温度がT1以下になるまで継続実施され、当該電池温度がT1以下であると判定すると、高能力冷却モードは終了する。なお、図6に示す矢印は、高能力冷却モードにおける冷媒に流れを示している。
制御装置7は、高能力冷却モードでは、図6及び図3に示すように、電磁弁14を閉状態に制御し圧縮機10を駆動するとともに、外気導入通路8aと熱交換器下流側通路8dとが放熱器11を経由して連通する空気経路をなし、第1排出口84を開放するとともに、循環気導入通路8cと熱交換器下流側通路8eとが蒸発器13を経由して連通する空気経路をなし、第2連通口87を開放するように、第1のフィルムドア4及び第2のフィルムドア5の平行移動位置を制御する。さらに制御装置7は、第1の送風機2及び第2の送風機3を駆動する。
これにより、圧縮機10から吐出された高圧の冷媒は、外気導入通路8aから熱交換器下流側通路8dへ流通する外気に対して放熱器11で放熱して外気を加熱する。加熱された外気は、再び車室外に排出される。このとき、車両走行風によって外気を外気導入通路8aから熱交換器下流側通路8dへ向けて流通させることができる場合には、第1の送風機2を駆動せず停止状態に制御してもよい。したがって、駐車時等、車両走行風が得られない場合は、第1の送風機2を駆動する必要がある。
また、放熱器11を流出した冷媒は、減圧器12で減圧された後、蒸発器13で気化して通過空気から吸熱することにより通過空気を冷却した後、圧縮機10に吸入される。蒸発器13で冷却された通過空気は、蒸発器13の熱交換部13aを通過する空気通路と組電池90の電池通路とを循環し続け、蒸発器13で冷却され続ける。このように冷却され続ける温調空気は、組電池90の電池通路を流通するときに、単電池の表面や電極端子に接触することで単電池から吸熱し、組電池90の温度を低下させることができる。つまり、高能力冷却モードでは、蒸発器13で冷却される空気を温調空気として組電池90に対して提供し、放熱器11で放熱した冷媒熱を車室外に排出する。
次に低能力冷却モードは、検出された電池温度が第2の所定温度T2以上で第1の所定温度T1以下に含まれる所定の温度範囲に該当する場合に実施される比較的小さな冷却能力を発揮するモードである。当該所定の温度範囲は、例えば、20℃以上35℃以下に設定することができる。すなわち、制御装置7は、検出された電池温度が20℃以上35℃以下の範囲に含まれると判定すると、電池は冷却を必要とする状態であるが、急激に温度低下を要する状態でないと判断し、低能力冷却モードを実行する。この低能力冷却モードは、検出される電池温度が20℃未満になるまで、または35℃を超えるまで継続実施される。なお、図7の矢印は、低能力冷却モードにおける冷媒に流れを示している。
制御装置7は、低能力冷却モードでは、図3及び図7に示すように、圧縮機10を停止状態、電磁弁14を開状態に制御し、外気導入通路8aと熱交換器下流側通路8dとが放熱器11を経由して連通する空気経路をなし、第1排出口84を開放するとともに、循環気導入通路8cと熱交換器下流側通路8eとが蒸発器13を経由して連通する空気経路をなし、第2連通口87を開放するように、第1のフィルムドア4及び第2のフィルムドア5の平行移動位置を制御する。さらに制御装置7は、第1の送風機2及び第2の送風機3を駆動する。
これにより、冷凍サイクル100内の冷媒の一部は、放熱器11よりも下方に配置されている蒸発器13に液体冷媒として留まるようになる。ここで組電池90から蒸発器13の熱交換部13aに送られる温風が熱交換部13aを通過するときに、液体冷媒が蒸発することにより、温風から吸熱する。これにより、温風は冷却されて再び組電池90の電池通路に供給され、電池を冷却する。蒸発器13で蒸発した冷媒は、バイパス通路15を通って、放熱器11に流入し、放熱器11の熱交換部11aで通過空気によって冷却されて凝縮する。そして、凝縮した冷媒は、自重によって放熱器の下部タンク11cを経由して再び蒸発器13に流入し、上記の冷媒の蒸発、凝縮の作用が繰り返し行われる。
したがって、蒸発器13、放熱器11及びこれらを連通させる冷媒配管は、ヒートパイプとして機能する。また、減圧器12に開度可変式の電子制御式膨張弁を用いた場合には、その開度を制御することにより、蒸発器13における冷却能力を調整することが可能である。
この低能力冷却モードでは、放熱器11で加熱された外気は、再び車室外に排出される。このとき、車両走行風によって外気を外気導入通路8aから熱交換器下流側通路8dへ向けて流通させることができる場合には、第1の送風機2を駆動せず停止状態に制御してもよい。したがって、駐車時等、車両走行風が得られない場合は、第1の送風機2を駆動する必要がある。
次に加熱モードは、検出された電池温度が第2の所定温度T2未満である場合に実施される大きな加熱能力を発揮するモードである。第2の所定温度T2は、第1の所定温度T1よりも低い温度に設定され、電池温度がそれ未満になると本来の充放電能力を発揮しがたい低温に設定される。第2の所定温度T2としては、例えば10℃を採用することができる。
すなわち、制御装置7は、検出された電池温度が10℃未満であると判定すると、電池は即時に暖機を必要とする状態であると判断し、加熱モードを実行する。この加熱モードは、検出される電池温度がT2以上になるまで継続実施され、当該電池温度がT2以上であると判定すると、加熱モードは終了する。なお、図9に示す矢印は、加熱モードにおける冷媒に流れを示している。
制御装置7は、加熱モードでは、図8及び図9に示すように、電磁弁14を閉状態に制御し圧縮機10を駆動するとともに、外気導入通路8bと熱交換器下流側通路8eとが蒸発器13を経由して連通する空気経路をなし、第2排出口85を開放するとともに、循環気導入通路8cと熱交換器下流側通路8dとが放熱器11を経由して連通する空気経路をなし、第1連通口86を開放するように、第1のフィルムドア4及び第2のフィルムドア5の平行移動位置を制御する。さらに制御装置7は、第1の送風機2及び第2の送風機3を駆動する。
これにより、圧縮機10から吐出された高圧の冷媒は、放熱器11で放熱して通過空気を加熱する。加熱された空気は、放熱器11の熱交換部11aを通過する空気通路と組電池90の電池通路とを循環し続け、放熱器11で加熱され続ける。このように加熱され続ける温調空気は、組電池90の電池通路を流通するときに、単電池の表面や電極端子に接触することで単電池を加熱し、組電池90の温度を上昇させて暖機することができる。
また、放熱器11を流出した冷媒は、減圧器12で減圧された後、蒸発器13で気化して通過空気から吸熱することにより通過空気を冷却した後、圧縮機10に吸入される。蒸発器13で冷却された通過空気は、外気導入通路8bから熱交換器下流側通路8eへ向けて流通する外気であり、再び車室外に排出される。このとき、車両走行風によって外気を外気導入通路8bから熱交換器下流側通路8eへ向けて流通させることができる場合には、第2の送風機3を駆動せず停止状態に制御してもよい。したがって、駐車時等、車両走行風が得られない場合は、第2の送風機3を駆動する必要がある。このように、加熱運転では、蒸発器13で吸熱した外気の熱を放熱器11で放熱して空気を加熱し、温調空気として組電池90に対して提供する。
さらに、温調装置1には、図10及び図11に図示する内部構成上の特徴がある。図10に示すように、放熱器11は、外気導入口81の中心と第1排出口84の中心とを結んだ仮想線CL1(二点鎖線)に対して、直交する状態に近づく方向に傾斜する姿勢で設けられるという特徴がある。換言すれば、図10に二点鎖線で図示する放熱器11の軸線S1は、Z方向(図10における鉛直方向)に軸線を向けた状態から、放熱器11の上部を第1排出口84寄りに傾けるのではなく、外気導入口81寄りに傾けるように倒した状態に設定されることが望ましいのである。すなわち、放熱器11の軸線を鉛直方向に向けた状態で当該軸線と仮想線CL1とがなす角度よりも、放熱器11の軸線を図10に示す方向に傾けた状態で軸線S1と仮想線CL1とがなす角度の方が90度に近い状態であればよいのである。
このような両者の関係となるように放熱器11を傾斜させた姿勢で設置することにより、第1の送風機2の運転によって外気導入口81からケース8の内部に導入された外気の主流方向を、放熱器11の熱交換部11aに対して垂直に近い状態で通過させることが可能なる。この作用により、熱交換部11aを通過する際の空気分布の偏りが小さくなり、放熱器11の有する放熱性能を発揮することができ、冷凍サイクル100の効率向上にも貢献できる。したがって、温調対象9側に供給される冷却空気に関しても、蒸発器13がその吸熱性能を十分に発揮することができ、温調対象9に与える冷却性能の向上に寄与することができる。
また、図11に示すように、蒸発器13は、外気導入口82の中心と第2排出口85の中心とを結んだ仮想線CL2(二点鎖線)に対して、直交する状態に近づく方向に傾斜する姿勢で設けられるという特徴がある。換言すれば、図11に二点鎖線で図示する蒸発器13の軸線S2は、Z方向(図11における鉛直方向)に軸線を向けた状態から、蒸発器13の上部を第2排出口85寄りに傾けるのではなく、外気導入口82寄りに傾けるように倒した状態に設定されることが望ましいのである。すなわち、蒸発器13の軸線を鉛直方向に向けた状態で当該軸線と仮想線CL2とがなす角度よりも、蒸発器13の軸線を図11に示す方向に傾けた状態で軸線S2と仮想線CL2とがなす角度の方が90度に近い状態であればよいのである。
このような両者の関係となるように蒸発器13を傾斜させた姿勢で設置することにより、第2の送風機3の運転によって外気導入口82からケース8の内部に導入された外気の主流方向を、蒸発器13の熱交換部13aに対して垂直に近い状態で通過させることが可能なる。この作用により、熱交換部13aを通過する際の空気分布の偏りが小さくなり、蒸発器13の有する吸熱性能を発揮することができ、冷凍サイクル100の効率向上にも貢献できる。したがって、温調対象9側に供給される加熱空気に関しても、放熱器11がその放熱性能を十分に発揮することができ、温調対象9に与える加熱性能の向上に寄与することができる。
以下に、本実施形態の温調装置1がもたらす作用効果について説明する。温調装置1は、温調対象9へ温調空気を送風する第1の送風機2及び第2の送風機3と、温調空気の空気経路を運転モードに応じて変更する第1のフィルムドア4及び第2のフィルムドア5と、加熱運転モードにおいて、冷凍サイクル100中を流れる冷媒の放熱作用により温調対象へ送風される空気を加熱する放熱器11と、冷却運転モードにおいて、冷媒の吸熱作用により温調対象9へ送風される空気を冷却する蒸発器13と、運転モードに応じて変更される空気経路を内部に有し、第1の送風機2、第2の送風機3、第1のフィルムドア4、第2のフィルムドア5、放熱器11及び蒸発器13を収容するケース8と、を備える。蒸発器13及び放熱器11は、それぞれケースの高さ方向Zに対して傾斜した姿勢でケース内部に設けられる。
これによれば、ケース8の内部において、蒸発器13及び放熱器11が占有するスペースを高さ方向Zに抑制することができる。このような蒸発器13及び放熱器11の傾斜姿勢を採用することによって、各熱交換器を通過する空気通風方向をケース8の内部において斜めに延びるように形成することができる。これにより、ケース8の内部に斜めに延びる空気経路を形成でき、かつ当該空気経路に伴い、ケース8の内部に形成される空きスペースを有効活用できる第1の送風機2、第2の送風機3、第1のフィルムドア4、第2のフィルムドア5等の配置構成を実現できる。したがって、温調装置1によれば、温調対象9を加熱及び冷却できる装置の体格を小型化することができる。
また、蒸発器13及び放熱器11は、ケース8内部において、一方が他方よりも上方に位置するとともに、上方の熱交換器の上部と下方の熱交換器の下部とが同じ側に位置するように、それぞれ傾斜した姿勢で設けられている。これによれば、蒸発器13と放熱器11は、上方の熱交換器の下部と下方の熱交換器の上部とが近接するように配置される。これにより、蒸発器13と放熱器11間を接続する冷媒配管の長さを短く設定することができる。したがって、配管接続部の簡素化、冷凍サイクル100の搭載性の向上及びサイクルに充填する冷媒量の抑制が図れる。また、蒸発器13と放熱器11とを合わせた高さ方向の寸法を抑制できるため、温調装置1と電池パックとを一体化する構成を採用する場合に、両者の高さを合わせることができ、車両への搭載上、有利である。
また、ケース8内部において、放熱器11は蒸発器13よりも上方に設置されている。この構成によれば、圧縮機10を駆動しない場合、すなわち強制的な冷媒の吐出を実施しない場合でも、放熱器11及び蒸発器13について、蒸発、凝縮を繰り返し起こさせるヒートパイプを構成できる。これにより、圧縮機を駆動する場合ほど高い冷却能力を必要としない状況、例えば、駐車中、市街地、住宅地の低速運転中等の温調制御において、動力不要の冷却モードが実施できるとともに、周辺への騒音低減が図れる。
また、上方の放熱器11の上部と下方の蒸発器13の下部は、外気導入口81,82側に偏って位置する。すなわち、放熱器11は、その熱交換部11aが外気の取り入れ口(外気導入口81)に近くなるように傾いた姿勢で設置され、蒸発器13は、その熱交換部13aが外気の取り入れ口(外気導入口82)に近くなるように傾いた姿勢で設置されることになる。これによれば、ケース8の内部に取り込まれた外気はスムーズに各熱交換部に流入するようになり、ケース8内部の空気流れの抵抗を抑制することができ、熱交換性能の向上に寄与する。
さらに、ケース8内部には、温調対象9側と通じ、温調対象9側からの空気が導入される連通路(連通開口83)が設けられる。連通路(連通開口83)は、上方の放熱器11の上部と下方の蒸発器13の下部と挟まれる範囲に位置する。このような連通口の配置構成によれば、ケース8の寸法を放熱器11の上部及び蒸発器13の下部が傾く方向に、すなわちX方向に短くすることができる。したがって、温調装置1の体格の抑制に寄与する。
また、空気経路切換装置は、上方の放熱器11及び下方の蒸発器13のそれぞれに通過させる空気として、車室外から導入する空気か、温調対象9側から取り入れる空気のいずれかを選択するように空気経路を切り換える第1の切換ドアを含む。この第1の切換ドアは、ケース8内部において、その高さ方向Zの大きさが上方の放熱器11の上部と下方の蒸発器13の下部との間に収まるように設けられる。
このような範囲に第1の切換ドアを配置することによれば、ケース8の寸法を放熱器11の上部及び蒸発器13の下部が傾く方向(X方向)に短くすることができる。したがって、温調装置1の体格の抑制に寄与する。
また、第1の切換ドアは、複数の開口部(第1開口部43、第2開口部44)を有するシート状のドア板部が平行移動して空気経路を切り換える第1のフィルムドア4によって構成される。この第1のフィルムドア4は、ケース8内部において、ドア板部が上方の放熱器11及び下方の蒸発器13と同じ向きに傾斜した姿勢で設けられる。
この構成によれば、空気の通風方向について、占有するスペースが小さくできるフィルムドアを、放熱器11及び蒸発器13と同じ向きに傾斜させるように、すなわち放熱器11及び蒸発器13の傾きに沿うように配置する。これにより、ケース8の寸法を放熱器11の上部及び蒸発器13の下部が傾く方向(X方向)にさらに一層短くすることができる。したがって、温調装置1の体格の抑制に大きく貢献できる。
また、温調用送風装置は、2個の軸流式の第1の送風機2及び第2の送風機3によって構成される。この軸流式の送風機のそれぞれは、ケース8内部において、放熱器11及び蒸発器13のそれぞれに対して、同じ向きに傾斜した姿勢で重なるように設けられる。この構成によれば、空気の通風方向について、占有するスペースが小さくできる軸流式の送風機を、放熱器11及び蒸発器13と同じ向きに傾斜させるように、すなわち放熱器11及び蒸発器13の傾きに沿うように配置する。これにより、ケース8の寸法を放熱器11の上部及び蒸発器13の下部が傾く方向(X方向)にさらに一層短くすることができる。したがって、温調装置1の体格の抑制に大きく貢献できる。
また、温調装置1は、第1の切換ドア(第1のフィルムドア4)とともに、上方の放熱器11が配置される空間と下方の蒸発器13が配置される空間とにケース8内部を区画する仕切り部80を備える。上方の放熱器11が配置される空間から空気を、車両の外部へ向けて流出させる第1排出口84か、温調対象9へ向けて流出させる第1連通口86のいずれかを開放し、かつ下方の放熱器11が配置される空間から空気を、車両の外部へ向けて流出させる第2排出口85か、温調対象9へ向けて流出させる第2連通口87のいずれかを開放することにより、空気経路を切り換える第2の切換ドア(第2のフィルムドア5)を備える。
これによれば、放熱器11による加熱空気を車外に排出する機構及び温調対象9へ供給する機構と、蒸発器13による冷却空気を車外に排出する機構及び温調対象9へ供給する機構と、をケース8内部においてコンパクトな空間に配置することができる。特に、放熱器11及び蒸発器13の傾き姿勢を活用することにより、このような配置空間を直方体形状または立方体形状の体格内に設定することができる。したがって、温調装置1の体格を車両への搭載上、有利な形状に形成することに貢献できる。
また、第2の切換ドアは、複数の開口部(第1開口部54、第2開口部55、第3開口部56)を有するシート状のドア板部が平行移動して空気経路を切り換える第2のフィルムドア5によって構成される。この第2のフィルムドア5は、ケース8の内部において、ケース8の内面に沿うように、断面コの字状を呈して設けられる。
これによれば、シート状部分が平行移動して複数の開口部を開閉する構成であるため、特に高さ方向及び横方向について通路切換のために占有する容積を小さくできる。また、ケース8の内面に沿う断面コの字状のドア板部を構成するため、第1排出口84と第2排出口85をケースの上面、下面に配置しやすく、外気がケース8内を流通する際の空気抵抗を抑制することができる。このため、車両走行によるラム圧を活用した外気導入を実施する場合には、ケース8の内部にスムーズに外気を導入することができ、風量確保とともに騒音抑制が図れる。
さらに、第2のフィルムドア5は、第1排出口84、第2排出口85、第1連通口86、第2連通口87といった、外部に空気を排出するための開口部と温調対象9へ空気を供給するための開口部とについて、開閉状態を制御する。これによれば、同一のドアで複数の機能を有する開口部の開閉状態を制御できるため、空気経路切換えのための機構について部品数の軽減、機構の簡素化が図れる。
また、車室外の空気が導入される外気導入口81,82は、温調空気がケース8の内部から流出する流出口(第1排出口84、第2排出口85、第1連通口86、第2連通口87)よりも、開口面積が大きくなるように設定されている。これによれば、車外から導入する外気の風量を大きくすることができるため、風量確保とともに騒音抑制の効果が図れ、また、車両走行によるラム圧を活用した外気導入を促進できる。
また、車室外の空気が導入される外気導入口81,82は、ケース8の車両前方側に形成されている。これによれば、車両走行によるラム圧を活用することにより、空気抵抗が減少できるので、ケース8の内部にスムーズに外気を導入することができ、騒音抑制が図れ、また大風量も得やすいという効果がある。
また、上方の放熱器11によって温調された温調空気が車両の外部へ流出する第1排出口84は、ケース8の上面に形成され、下方の蒸発器13によって温調された温調空気が車両の外部へ流出する第2排出口85は、ケース8の下面に形成されている。
これによれば、ケース8の内部に導入された外気は、ケース8の上面に位置する第1排出口84やケース8の下面に位置する第2排出口85から外部に抜けるため、ケース8内を流通する際の空気抵抗を抑制することができる。このため、車両走行によるラム圧を活用した外気導入を実施する場合に、ケース8の内部にスムーズに外気を導入することができ、風量確保とともに騒音抑制が図れる。
また、ケース内部と前記温調対象側とを連通する連通開口83は、ケースの側面に向けて開口する。この構成によれば、温調対象9とケース8の内部とを連絡する連絡するダクト等の部品の取り回しが行い易く、また、ダクト等の部品による凹凸が装置形状に現れることを抑制でき、製品の体型をコンパクトに形成することに貢献できる。
また、空気経路切換装置は、複数の開口部を有するシート状のドア板部が平行移動して空気経路を切り換えるシート状のドア(第1のフィルムドア4、第2のフィルムドア5)によって構成される。これによれば、シート状部分が平行移動する構成であるため、また、ケース8に設けた複数の開口部を一つのドアで開閉できるため、通路切換のために占有する容積を小さくできる。したがって、ケース8の体格の小型化に貢献できる。
また、第2のフィルムドア5が有する複数の開口部(第1開口部54、第2開口部55、第3開口部56)は、シート状のドア板部が平行移動する方向に延びる長さが同じ長さに設定されている。これによれば、一つの第2のフィルムドア5によって、ケース8に設けられた同じ大きさの複数の開口部を適切に開閉できるため、ドア機構に係る部品点数を低減することができる。
また、第2のフィルムドア5が有する複数の開口部(第1開口部54、第2開口部55、第3開口部56)のうち少なくとも一つは、シート状のドア板部が平行移動する方向に対して直交する方向に延びる長さが、他の開口部とは異なる長さに設定されている。これによれば、複数の開口部(第1開口部54、第2開口部55、第3開口部56)のうち、開口面積の異なる開口部(第2開口部55)がある場合でも、一つの第2のフィルムドア5によって、ケース8に設けられた複数の開口部を適切に開閉できるため、ドア機構に係る部品点数を低減することができる。
また、温調装置1によれば、加熱用熱交換器として冷凍サイクル100に含まれる放熱器11を採用し、冷却用交換器として冷凍サイクル100に含まれる蒸発器13を採用するため、簡単な構成の冷凍サイクルを活用することによって、低能力冷却モード、高能力冷却モード、及び加熱モードを実行できる装置を提供できる。したがって、冷媒の配管構成も簡単であるので、装置の小型化が図れ、装置の搭載性にも優れている。
また、冷凍サイクル100を車室内空調用の冷凍サイクルとは独立したサイクルとして使用する場合には、車室内空調の制御と適合させる必要がなく、温調対象にとって必要とされる温調能力に応じた温調制御が実施できる。
また、温調装置1によれば、温調対象9に供給する温調空気は循環する形態であるため、外部からの湿気、埃等の流入を抑制できるとともに、温調空気の熱損失を低減できるため、省電力の装置を提供できる。
また、温調装置1の冷凍サイクル100は、圧縮機10を迂回して蒸発器13と放熱器11を連絡するバイパス通路15と、バイパス通路15における冷媒の流通を許可及び禁止する電磁弁14とを有する。これによれば、圧縮機の停止、運転の切り替えと、電磁弁14の開状態、閉状態を切り替えとを実施する制御により、加熱モード、低能力冷却モード、高能力冷却モードの切り替えを、簡単なサイクル構成及び簡単な制御仕様によって実現する温調装置1を提供できる。
また、蒸発器13に連通する放熱器11の出口部(例えば下部タンク11c)は、放熱器11の下部に配置される。これによれば、蒸発器13で気化した冷媒が放熱器11で凝縮して液体になった冷媒を、自重により放熱器11の下部に集め、蒸発器13に確実に送ることができる。したがって、確実かつ効果的なヒートパイプ機能の発揮を実現できる。
また、温調対象9は、車両走行のための電力を蓄電する二次電池であるため、電池等の主要機能(充電、放電等)を発揮できる温度範囲が決まっている機器に関して、省電力かつ低騒音の効果的な温調制御を実施できる。
(第2実施形態)
第2実施形態では、第1実施形態に対して他の形態である冷凍サイクル100Aについて図12を参照して説明する。図12において第1実施形態で参照した図面と同一の符号を付した構成要素は、同一の要素であり、その作用効果も同様である。以下、第1実施形態と異なる形態、処理手順、作用等について説明する。
冷凍サイクル100Aは、第1実施形態の冷凍サイクル100に対して、バイパス通路15及び電磁弁14を備えない点と、減圧器12Aが開度可変式の電子制御式膨張弁である点とが相違する。第2実施形態の減圧器12Aは、制御装置7によってその開度が制御される。
つまり、前述の低能力冷却モードの際には、減圧器12Aの開度を開き、圧縮機10を停止した状態にし、蒸発器13で蒸発した冷媒は、減圧器12Aが設けられ蒸発器13と放熱器11をつなぐ通路を通って、放熱器11に流入し、放熱器11の熱交換部11aで凝縮し、凝縮した冷媒は、自重によって、同じ通路を通って、放熱器11の下部タンク11cを経由して再び蒸発器13に戻る。したがって、気体冷媒と液体冷媒が、当該同じ通路を逆向きに流れることで、蒸発器13、放熱器11、及び減圧器12Aが設けられる冷媒配管は、ヒートパイプとして機能する。
第2実施形態によれば、圧縮機10を迂回するバイパス通路、バイパス通路における冷媒流通の許可及び禁止を行える電磁弁等を必要としない冷凍サイクルを構成できる。したがって、構成部品数の低減が図れ、車両搭載性が向上する。
(第3実施形態)
第3実施形態では、第1実施形態に対して他の形態である温調装置1Aについて図13を参照して説明する。図13において第1実施形態で参照した図面と同一の符号を付した構成要素は、同一の要素であり、その作用効果も同様である。以下、第1実施形態と異なる形態、処理手順、作用等について説明する。なお、図13は、加熱モード時の各部の作動状態及び空気の流れを示している。
温調装置1Aは、第1実施形態の温調装置1に対して、温調対象が組電池90ではなく、温調対象空間である点、具体的には車両の乗員が存在する車室内である点で相違する。さらに温調装置1Aは、車室内の空気を温調対象流出通路92Aを介してケース8内部に取り入れ、蒸発器13または放熱器11で温調し、温調対象流入通路91Aを介して温調対象空間である車室内に供給した後、再び循環させたり(内気循環モード)、あるいは車室外に排出したりする。
温調対象流入通路91Aは、ケース8内部の熱交換器下流側通路8d,8eと温調対象空間の入口部とを連絡する通路であり、ダクトで形成されている。温調対象流出通路92Aは、温調対象空間の出口部とケース8内部の熱交換器下流側通路8d,8eとを連絡する通路であり、ダクトで形成されている。なお、温調装置1Aは、車室外の外気を取り入れ、蒸発器13または放熱器11で温調してから車室内に供給するようにしてもよい。
従来の車両空調装置では、春、秋等の冷房負荷が低い時期に、冷凍サイクルの圧縮機を駆動させるか、圧縮機を停止して車室内への送風のみを実施する制御が行われていた。そこで、第3実施形態によれば、温調装置1Aは、前述のヒートパイプ機能を発揮させることにより、圧縮機を駆動しなくても車室内の冷房能力が得られるため、乗員の快適性の確保を省電力運転によって実現することができる。
また、温調装置1Aは、温調対象を車室内とするため、低能力冷却モードの実行により、車室内空調運転における弱冷房機能を発揮させることができる。
(他の実施形態)
上述の実施形態では、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。上記実施形態の構造は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれらの記載の範囲に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものである。
本発明の温調装置が適用される温調対象としては、車室内、組電池90の他、インバータ、モータ等の電気機器、過給気を温調するインタークーラ、エンジン、ATF等のオイルを温調する熱交換器等を採用することができる。
上記の実施形態において、ケース8内部において、上方に放熱器11、下方に蒸発器13を配する構成としたが、本発明はこの位置関係に限定するものではない。
上記の実施形態において、単電池の温度を電池温度センサ6によって検出しているが、温調対象である電池の温度の代わりに、電池を収容している筐体の温度、電池近傍の他の部材の温度、電池の雰囲気温度等を検出し、電池の温度状態を判断する指標としてもよい。
上記の実施形態において、第1の送風機2及び第2の送風機3は、制御装置7によって回転数の制御が可能に構成されているが、運転及び停止のみが可能で回転数制御が不可能な機器であってもよい。
上記の実施形態において、第1のフィルムドア4、第2のフィルムドア5は、シート状のドア本体部を有する空気経路切替手段であるが、本発明はこの形態に限定するものではない。例えば、第1の切換ドア及び第2の切換ドアとして、ラックとピニオンの噛み合せによって平行移動可能なドア、回転軸を中心に回動するドア板部を有する各種のドアを採用してもよい。
上記の実施形態において、組電池90を構成する単電池の形状は、扁平な直方体状、円筒状等であり、特に限定されない。