JP5794061B2 - 除電装置 - Google Patents

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本発明は、イオン発生電極に高電圧を印加することによって放電を生じさせ、除電用のイオンを発生させる除電装置に関する。特に本発明は、高電圧パルスを用いた制御により、同一のイオン発生電極によって正イオンと負イオンとを交互に発生させるパルスAC方式の除電装置に関する。
パルスAC方式の除電装置の従来例として、たとえば特許文献1および2に開示されたものがある。
図4は、特許文献1に記載されている除電装置の構成を示す(図中の符号は特許文献1の記載とは異なる。)。
この除電装置は、イオン発生電極となる放電針41、一対の高電圧発生回路40a,40b、一対の抵抗Ra,Rb、直流電源44、各高電圧発生回路40a,40bを電源44に接続するためのスイッチ42a,42b、制御装置43などを具備する。
高電圧発生回路40a,40bには、昇圧トランス401a,401bやコッククロフト・ウォルトン型の倍電圧整流回路402a,402bが含まれる。高電圧発生回路40aはスイッチ42aの導通に応じて正極性の高電圧を出力し、高電圧発生回路40bはスイッチ42bの導通に応じて負極性の高電圧を出力する。
抵抗Ra,Rbは、高電圧発生回路40a,40bの出力端子403a,403bの間に直列に接続され、各抵抗Ra,Rbの間のラインに放電針41が接続される。
制御装置43は、スイッチ42a,42bの一方をオンにし、他方をオフにする制御をオン・オフの関係を切り換えて一定の周期で繰り返す。スイッチ42aがオンになると、高電圧発生回路40aからの正極性の高電圧が抵抗Ra,Rbの直列回路に印加され、抵抗Rbが分担する電圧が放電針41に印加される。この電圧印加に伴う放電針41の放電により、正イオンが発生する。
一方、スイッチ42bがオンになると、高電圧発生回路40bからの負極性の高電圧が抵抗Ra,Rbの直列回路に印加され、抵抗Raが分担する電圧が放電針41に印加される。この電圧印加に伴う放電針41の放電により負イオンが発生する。
図5は、特許文献2に開示された除電装置の構成を示す(図中の符号は特許文献2の記載とは異なる。)。
この除電装置では、昇圧トランス501および倍電圧整流回路502を含む高電圧発生回路50が1つ設けられる。昇圧トランス501の一次側コイルにはスイッチ53を介して交流電源54が接続され、倍電圧整流回路502の出力端にはカップリングコンデンサ52を介して放電針51が接続される。またコンデンサ52を挟んで、抵抗R,Rが並列に接続される。
さらにこの除電装置では、制御回路55によってスイッチ53の開閉が周期的に切り換えられる。これにより高電圧発生回路50から、スイッチ53の開閉周期に同期する正極性の高電圧パルスが出力される。高電圧パルスがオン状態の間は、コンデンサ52に蓄積される電位に基づきコンデンサ52から放電針51に正極性の高電圧が印加され、正イオンが発生する。高電圧パルスがオフ状態になると、コンデンサ52の放電によって放電針51に負極性の電圧が印加され、負イオンが発生する。
上記のとおり、図4,図5に示した除電装置では、放電針41,51に正の電圧を印加する期間と負の電圧を印加する期間とを交互に設定する制御によって正イオンと負イオンとを交互に発生させる。よって除電対象のワークが正負いずれの極性に帯電している場合でも、帯電電位とは反対の極性のイオンをワークに作用させて除電を行うことができる。
特許第4219451号公報 特許第4157359号公報
しかしながら、放電針とワークとの間にワークに帯電した電位に伴う電流の流れが生じて、放電針への印加電圧のベースにオフセット電圧が重畳することがある。このオフセット電圧が生じると、放電針は、ワークに帯電した電位と同極性のイオンを多く発生させる状態になる。
図6は、除電対象のワークの帯電状態と放電針からのイオンの発生状態との関係を示す模式図と、放電針に印加される電圧の波形とを用いて、オフセット電圧がイオンの発生状態に与える影響を示したものである。なお、模式図ではワークを符号Wで示し、放電針を符号Sで示す。
まず図6(A)の例では、ワークWが帯電していないものとし、高電圧パルスのデューティ比(オン期間およびオフ期間の全体に対するオン期間の割合)が約50%に設定されているものとする。この場合の放電針Sへの印加電圧の信号は、0Vを基準として、正極側の振幅と負極の振幅とがほぼ均等な波形になる。したがって各極性の印加電圧を受けた放電針Sの放電によって、正イオンと負イオンとをほぼ均等に発生させることができる。
図6(B)は、ワークWに正電位が帯電している場合のイオンの発生状態と放電針Sに印加される電圧の変化を示す。この場合には、放電針SとワークWとの間の空間に、ワークWから放電針Sへと向かう電流の流れが生じ、印加電圧の基準の電圧が0Vよりも高い状態になる。この結果、正の電圧が増加して負の電圧が減少するので、ワークWを除電するのに必要な負イオンの発生量が減少し、反対の極性である正イオンの発生量が増えてしまう。
図6(B)の例とは逆に、ワークWに負電位が帯電している場合には、印加電圧の基準の電圧は0Vよりも低くなる。この結果、負の電圧が増加して正の電圧が減少するので、ワークWを除電するのに必要な正イオンの発生量が減少し、反対の極性である負イオンの発生量が増えてしまう。
上記のように、ワークWに帯電している電位に伴うオフセット電圧によって、ワークWを除電するのに必要な極性のイオンが減り、反対の極性のイオンの方が多くなると、帯電したワークWを効率良く除電することが困難になる。
オフセット電圧は、高帯電のワークに放電針を近づけすぎた場合などに稀に生じるもので、ワークの中和が進むにつれて解消されるが、オフセット電圧が生じる可能性がある以上、その可能性を考慮してワーク1個あたりの除電時間を長めに見積もる必要がある。しかし、そうなると、処理効率を向上したいという現場の要望に対応するのが困難になる。
本発明は、上述の問題に着目し、放電針に印加される電圧レベルがワークに帯電している電位の影響により大幅に変動するのを防止して、除電を速やかに行うことができるようにすることを、課題とする。
本発明による除電装置は、放電によりイオンを発生させるイオン発生電極と、高電圧パルスを生成する高電圧発生回路と、高電圧発生回路の動作を制御する制御回路と、高電圧パルスに基づきイオン発生電極に正極性の電圧と負極性の電圧とを交互に印加してイオン発生電極に印加電圧と同じ極性のイオンを発生させる電圧印加回路とを具備するもので、電圧印加回路に、イオン発生電極への印加電圧を正負の各極性ともに一定のレベルまでに規制する電圧クランプ回路が含まれることを特徴とする。
上記の除電装置には、2つの高電圧発生回路を交互に動かすタイプのもの(図4の構成)と、1つの高電圧発生回路とカップリングコンデンサとを用いて印加電圧の極性を切り換えるタイプのもの(図5の構成)とが含まれる。
いずれのタイプの装置においても、ワークの帯電状態やワークと放電針との距離などに起因したオフセット電圧がイオン発生電極への印加電圧に重畳される可能性があるが、本発明によれば、イオン発生電極への印加電圧は正負の各極性ともに一定のレベルまでに規制されるので、いずれの極性のオフセット電圧が生じた場合でも、印加電圧のレベルの変化を許容範囲内に収めることができる。これによりワークの除電に必要な極性のイオンが減少して反対の極性のイオンが増えるのを防ぐことができ、ワークに対する除電を安定して行うことができる。
上記の除電装置の一実施形態の電圧印加回路には、高電圧回路とイオン発生電極との間に介装されるカップリングコンデンサが含まれ、高電圧パルスのオン,オフの切り換えに応じてカップリングコンデンサの充電と放電とが切り換えられることによって、前記放電針に正極性の高電圧と負極性の高電圧とが交互に印加される。
他の実施形態による除電装置では、偶数個の定電圧素子が極性の向きを互い違いにして直列に接続された回路を電圧クランプ回路として、イオン発生電極に並列に接続する。すなわち、極性の向きが相反する一対の定電圧素子の組を1または複数組導入した構成の電圧クランプ回路が導入されることになる。定電圧素子の組数は、クランプ電圧の目標値に応じて変更することができる。
本発明によれば、イオン発生電極に印加される電圧が、正負の各極性ともに一定のレベルまでに規制されるので、帯電ワークなどによるオフセット電圧がイオン発生電極の印加電圧に重畳された場合でも、印加電圧の変動を許容範囲内に収めることができる。これにより、ワークの除電に必要な極性のイオンが減少して反対の極性のイオンが増えるのを防いで、除電を安定して行うことができる。また、オフセット電圧の発生を考慮することなく、ワーク1個あたりの除電時間を決めることができるので、処理の効率を向上することが可能になる。
本発明が適用された除電装置の回路構成を示す図である。 図1の除電装置における放電針への印加電圧の調整の原理を示すグラフである。 図1の除電装置において、放電針への印加電圧が正・負の両極性ともに規制されるようにした例を示すグラフである。 パルスAC方式の従来の除電装置の第1の例を示す図である。 パルスAC方式の従来の除電装置の第2の例を示す図である。 従来の除電装置において、ワークの帯電状態が放電針への印加電圧に及ぼす影響を示す模式図およびグラフである。
図1は、本発明が適用されたACパルス方式の除電装置の一構成例を示す。
この除電装置は、イオン発生電極となる放電針1、高電圧発生回路2、電圧印加回路3、制御回路4、トランス駆動回路5、スイッチ部6、直流電源7などを有する。なお、放電針1は複数本設けられるが、図1では、それらのうちの1つを代表として示している。
高電圧発生回路2は、昇圧トランス21やコッククロフト・ウォルトン型の倍電圧整流回路22により構成される。昇圧トランス21の一次側コイル21Aの入力端にはトランス駆動回路5が接続され、さらにトランス駆動回路5にはスイッチ部6を介して直流電源7が接続される。
電圧印加回路3には、カップリングコンデンサ30、抵抗R1,R2、電圧クランプ回路31が含まれる。カップリングコンデンサ30(以下、単に「コンデンサ30」という。)は、倍電圧整流回路22の出力端および放電針1に直列に接続される。抵抗R1および電圧クランプ回路31は、コンデンサ30と放電針1との間のライン101とライン103とに接続され、抵抗R2は、倍電圧整流回路22とコンデンサ30との間のライン102とライン103とに接続される。ライン103は、高電圧発生回路2とグランドラインとを繋ぐライン104に接続される。
スイッチ部6のオン・オフ状態は、制御回路4からの制御信号によって周期的に切り換えられる。スイッチ部6がオン状態の間はトランス駆動回路5が作動して、昇圧トランス21の一次側コイル21Aに高周波信号が供給される。この高周波信号が二次側コイル21Bで昇圧されて倍電圧整流回路22に与えられることによって、倍電圧整流回路22から正極性の高電圧が出力される。スイッチ部6がオフ状態になると、昇圧トランス21の動作が停止し、倍電圧整流回路22からの正極性の高電圧の出力も停止する。
上記の動作により高電圧発生回路2からは、制御回路4からの制御信号に同期する周期で正極性の高電圧パルスが出力される。抵抗R1によってコンデンサ30からの放電が可能なレベルにまで出力側のインピーダンスが引き下げられるので、高電圧パルスがオン(正極側にふれている状態)の間はコンデンサ30からは正の電圧が出力され、高電圧パルスがオフになると、コンデンサ30からは負の電圧が出力される。これにより放電針1には、制御信号に同期する周期で、正極性の高電圧と負極性の高電圧とが繰り返し印加され、その印加電圧と同じ極性のイオンが発生する。なお、抵抗R2によって倍電圧整流回路22内のコンデンサ群(符号なし)やコンデンサ30の放電が促進されるので、高電圧パルスの正から負への立ち下がりを早く完了させることができる。
電圧クランプ回路31は、同一の性能を有する偶数個(図示例では8個)のツェナーダイオード32による直列回路である。各ツェナーダイオード32は、接続順に2つずつ組となり、各組のダイオード32,32がカソードを向き合わせた状態で接続される。
上記構成の電圧クランプ回路31によれば、コンデンサ30から負極性の電圧が出力されているときは、アノードをライン101の側に向けた4個のダイオード32によって印加電圧が規制される。一方、コンデンサ30から正極性の電圧が出力されているときは、カソードをライン101の側に向けた4個のダイオード32によって印加電圧が規制される。これにより、抵抗R1および放電針1に印加される電圧を正負の各極性ともに一定のレベルまでに規制することができる。
なお、電圧クランプ回路31におけるツェナーダイオード32の組数は4組に限定されるものではなく、目的のクランプ電圧に応じて変更することができる。またクランプ電圧は各ツェナーダイオード32のツェナー電圧によっても調整することができる。
以下の図2,図3の例では共に、クランプ電圧を±Qボルトとするが、Qの値は事例毎に異なる。
図2は、正に帯電したワークの影響により放電針1への印加電圧に正極性のオフセット電圧が重畳される場合の電圧クランプ回路31の作用を説明するものである。
同図では、電圧クランプ回路31による規制を受けた印加電圧の波形を実線により示すと共に、この規制がない場合の印加電圧の山部分および谷部分の波形を一点鎖線で示している。各一点鎖線が示すように、印加電圧が規制されない場合には、ワークから放電針1に流入する電流によって印加電圧の基準レベルが0Vより高くなるため、正の電圧信号が増える一方で負の電圧信号が減少する。
これに対し、電圧クランプ回路31が働くと、正極性の電圧の変動が+Qボルトまでに抑えられるので、正の電圧信号のレベルが大幅に高まるのを防ぐことができる。また+Qボルトを超える部分の信号成分に相当する電荷がコンデンサ30に蓄えられて、これが高電圧パルスがオフになったときの放出電荷に加わるので、図中のパターン塗りの部分に示すように、負の電圧信号の成分が増加する。よって、正に帯電したワークの除電に必要な負イオンが不足するのを防ぐと共に、正イオンの増加を抑えて、除電を安定して実施することが可能になる。
上記の例とは逆に、ワークが負に帯電している場合には、放電針1からワークに向かう電流の流れが生じ、印加電圧の基準レベルが0Vより低くなる。このため、印加電圧が規制されなければ、正の電圧信号が減少し、負の電圧信号が増加する。
しかし、電圧クランプ回路31が働くと、負極性の電圧の変動が−Qボルトまでの範囲に抑えられるので、負の電圧信号が大幅に増加するのを防ぐことができる。またこの規制によりコンデンサ30からの放電が抑えられ、高電圧パルスがオンになったときの正極性の印加電圧が高められる。よって、負に帯電したワークの除電に必要な正イオンが不足するのを防ぐと共に、負イオンの増加を抑えて、除電を安定して実施することが可能になる。
さらに図1の回路構成において、クランプ電圧のレベルQを放電針1に通常印加される電圧のレベルに応じた値に設定すれば、正負の印加電圧のレベルを常時安定させることも可能になる。
図3は、高電圧パルスのデューティ比と印加電圧との関係を示す。この実施例では、放電針1への印加電圧が通常取り得る範囲の上限および下限の電圧レベルよりやや低い値がクランプ電圧のレベルQに設定されている。したがって、この例におけるQの値は、図2の例で設定される値よりも小さくなる。
図3(A)は、高電圧パルスのデューティ比を約50%にした場合の印加電圧の変化の例を示し、図3(B)は、高電圧パルスのデューティ比を約25%に設定した場合の印加電圧の変化の例を示す。いずれの事例でも、正の印加電圧が+Qボルトまでに、負の印加電圧が−Qボルトまでに、それぞれ規制されるので、印加電圧の波形は、山部分および谷部分が±Qボルトに揃った状態になる。
上記のとおり、この実施例では、電圧クランプ回路31の機能を利用することによって正負の印加電圧をともに適切なレベルで安定させることができるので、高電圧パルスのデューティ比の調整によって正負のイオンの発生量を調整することが容易になる。
なお、図4に示した2つの高電圧発生回路を交互に動す方式により発生させるイオンの極性を切り換えるタイプの除電装置においても、高帯電のワークによるオフセット電圧の影響により、帯電電位と同じ極性の印加電圧のレベルが上昇し、帯電を促進させるイオンが増えるおそれがある。しかし、図4の構成の装置にも、図1と同様の構成の電圧クランプ回路31を、その一端を抵抗Raと抵抗Rbとの間の中点(放電針41に接続される点)に接続し、他端をグランドに接続する状態にして組み込めば、各高電圧発生回路40a,40bからの高電圧パルスにより放電針41に印加される電圧の変動をそれぞれ一定のレベルまでに規制することができる。
また図1の例では、偶数個のツェナーダイオード32の直列回路を電圧クランプ回路31としたが、電圧クランプ回路31の構成はこれに限定されるものではない。たとえば、ツェナーダイオード32に代えてバリスタを使用してもよい。その他のサージアブソーバにより、上記のクランプ回路31と同様の機能を有する回路を設計してこれを導入してもよい。
1 放電針
2 高電圧発生回路
3 電圧印加回路
4 制御回路
30 コンデンサ
31 電圧クランプ回路
32 ツェナーダイオード

Claims (2)

  1. 放電によりイオンを発生させるイオン発生電極と、高電圧パルスを生成する高電圧発生回路と、前記高電圧発生回路の動作を制御する制御回路と、前記高電圧パルスに基づき前記イオン発生電極に正極性の高電圧と負極性の高電圧とを交互に印加して前記イオン発生電極に印加電圧と同じ極性のイオンを発生させる電圧印加回路とを具備する除電装置において、
    前記電圧印加回路は、前記イオン発生電極への印加電圧を正負の各極性ともに一定のレベルまでに規制する電圧クランプ回路を含み
    前記電圧クランプ回路は、偶数個の定電圧素子を極性の向きを互い違いにして直列に接続して成る回路であって、前記イオン発生電極に並列に接続される、除電装置。
  2. 前記電圧印加回路は前記高電圧発生回路と前記イオン発生電極との間に介装されるカップリングコンデンサを含み
    前記高電圧パルスのオン,オフの切り換えに応じて前記カップリングコンデンサの充電と放電とが切り換えられることによって、前記イオン発生電極に正極性の高電圧と負極性の高電圧とが交互に印加される、請求項1に記載された除電装置。
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