JP5792992B2 - 干渉計測装置 - Google Patents

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Description

本発明は、干渉測長器や干渉型エンコーダ等の干渉計測装置に関する。
従来の回折干渉型ロータリーエンコーダは、ヘッド部とディスク部との間隔、半径方向の位置ずらし、ヘッドの傾き等の複数の調整機構を備えた機械部材に搭載して、干渉縞の状態を画像で確認し、所謂「ワンカラー状態」に追い込む調整を必要とする。以下本明細書文中において、「ワンカラー状態」とは、干渉光の受光部において、明暗の位相が全面一様な状態と定義する。例えば理想的な平面波同士の干渉の場合は、2光束の主光線の角度差が0°の場合に相当し、球面波同士の干渉の場合は、2光束の仮想点光源が空間上で一致する場合に相当し、何らかの歪を有した波面同士の場合は、2光束の波面が完全に重なる状態に相当する。また、「ワンカラー度」とは、受光面上の干渉縞の(小数点以下を含む)本数で定義し、完全なワンカラー状態では0本と定義する。また、ワンカラー度を受光面における2つの座標軸V、Hに対してそれぞれ定義することにする。例えば「V軸方位のワンカラー度」、「H軸方位のワンカラー度」と呼ぶことにする。
ヘッドとディスクが分離されたモジュール型エンコーダをユーザが装置に組み込むときはエンコーダ内部の情報である干渉縞画像を取得することはできない。そのため、一般的には、エンコーダヘッドから出力される周期信号の振幅のみを手がかりに振幅が最大になるように取付け姿勢の調整をすることが行われている。このことは、回折干渉型エンコーダに限らず、一般的な幾何光学式モジュール型エンコーダでも同じである。例えば、特許文献1に、周期信号の振幅により組み込み状態の良否の情報を出すことで、ユーザがより好ましい状態を探せるようにする技術が開示されている。
特開平5−133732号公報
しかし、従来技術では、干渉計測装置の調整手法は定型化されておらず最良の状態に調整するには勘や経験を必要としていた。例えばどの調整箇所をどの程度調整するかは不明なので、実際にやってみて信号の増減を判定し、より望ましい信号の状態になる位置を探し続けるようなものである。特に干渉測長装置や高精度な回折干渉型エンコーダの場合に、理想的なワンカラー状態まで調整する必要があるものの、組み込み者のスキルに頼っていた。
そこで、本発明は、調整の容易な干渉計測装置を提供することを目的とする。
本発明は、被検物への光照射に基づき得られる干渉光の強度の変動に基づいて前記被検物の変位または角度を検出する干渉計測装置であって、前記干渉光を受光して撮像する撮像素子と、前記撮像素子における前記干渉光の位相分布の均一性を示す指標の値を求める処理部と、前記処理部により算出された指標の値に基づいて前記撮像素子と前記被検物との相対位置を調整する必要性についての情報を出力する出力部と、を備え、前記処理部は、前記撮像素子が受光した全体領域から第1部分領域および第2部分領域を抽出し、抽出された前記第1部分領域で受光した干渉光の強度と前記第2部分領域で受光した干渉光の強度とを複数の時刻のそれぞれにおいて取得し、各時刻における前記強度のうちの一方および他方をそれぞれXY座標系のX座標値およびY座標値としたときの複数の前記Y座標値のうちの最大値と最小値との差分を第1差分として算出し、複数の前記X座標値および前記Y座標値の組み合わせのデータを一次関数で近似した場合の傾きを算出し、前記近似された一次関数の傾きがゼロとなるように前記XY座標系を回転し、回転後のXY座標系における複数の前記Y座標値のうちの最大値と最小値との差分を第2差分として算出し、前記第1差分をAとし、前記第2差分をB’とし、前記傾きをαとするとき、δ=asin{ (B’/cosα)/A }で表される角度δを算出し、当該角度δを前記指標として決定する、ことを特徴とする。
本発明によれば、調整の容易な干渉計測装置を提供することができる。
第1実施形態のエンコーダの構成を示した図である。 第1実施形態のエンコーダの撮像素子上の干渉縞を示した図である。 第1実施形態のエンコーダの撮像素子上の干渉縞の明暗分布がディスクの回転に伴って変化する様子を示した図である。 第1実施形態のエンコーダの信号処理部を示した図である。 第1実施形態のエンコーダの撮像素子上の干渉縞を切抜き分割する領域を示した図である。 第1実施形態のエンコーダの撮像素子の4分割された各領域の出力波形を示した図である。 第1実施形態のエンコーダの信号処理部において、リサージュ算出部を追加した図である。 第1実施形態のエンコーダの撮像素子領域を切抜き分割して求めたリサージュ波形を示した図である。 リサージュ波形から直線度を求める方法を示した図である。 画像取得点と画像取得点から算出したリサージュ波形と真のリサージュ波形を示した図である。 第1実施形態のリサージュ波形からワンカラー度を算出する手法を示した図である。 第2実施形態のリサージュ波形からワンカラー度を算出する手法を示した図である。 第1実施形態の画像取得点からリサージュ波形を近似する手法を示した図である。 第1実施形態の画像取得点を傾きαだけ回転させた際の図である。 第1実施形態の最低画像取得点の算出手法を示した図である。
以下に、本発明に係る干渉計測装置の実施形態を添付の図面に基づいて詳細に説明する。干渉計測装置は、光源から射出された光を2つの光束に分割し、分割された光束をスケールに一定のピッチで配列されたマークで回折させ、回折された2つの光束を重ね合わせることによって生成された干渉光の強度の変動に基づいて変位又は角度を検出する。第1〜第2実施形態に示される干渉計測装置は、角度変化を計測する回折干渉型のロータリーエンコーダである。しかし、本発明の干渉計測装置は、リニアーに移動した被検物の変位を計測する装置であってもよい。
〔第1実施形態〕
図1は第1実施形態の回折干渉型ロータリーエンコーダのヘッド部およびディスク部の構成図である。図1に示すように、レーザ光源LDから光ファイバーFBRを経由して発散光として光束を射出する。射出された光束は、コリメータレンズCOLにて平行光にされてから回折格子GT1にて±1次回折光の2つの光束に分割される。偏光素子POLP,POLSは、+1次光をP偏光、−1次光をS偏光に変換する。P偏光およびS偏光は、平行ミラーM1、M2をそれぞれ経由して、ヘッド部HEADに対して相対的に回転するディスクDSK上の放射状の回折格子(マーク)GT2に斜めに照射される。
回折格子GT1と放射状の回折格子GT2のピッチが等しくなる位置に照射され、回折格子GT2で回折された±1次回折光は、その光路を同軸に重ね合わせて垂直に射出される。これら2光束は、互いに偏光面を直交させる直線偏光と成っているので、1/4波長板QWPを透過し、さらに回折格子GT3により0次、+1次、−1次の3光束に分割される。分割された3光束は、さらに0度、+60度、−60度方位に偏光透過軸を有する3チャンネル偏光板アレイPOLAを透過させることで、干渉位相が互いに120°ずつずれた3相信号光が3つの受光部(撮像素子)により受光される。この光学系自体は、格子干渉計として公知であるが、この光学系で扱われる撮像素子へ入射される干渉光は所謂ワンカラー状態を前提にしている。すなわち撮像素子の受光面上で光束を観測したとき、回折格子GT2が移動するに従って、全面一様に干渉位相(明暗)がずれることを想定している。
しかし、実際にこうしたエンコーダ光学系を構成すると、平行ミラーM1の角度ずれや、回折格子GT1と回折格子GT2のピッチの不一致、平行光束のコリメート性の誤差等の影響で図2のように明暗分布が生じることがある。この明暗分布は、これら誤差が大きければ明瞭な干渉縞として観測できるが、誤差が少ないとき、明暗のタイミングに分布を生じるようになる。その様子を図3に示す。図3は、エンコーダのディスク部DSKが回転し明暗が1周期分変化したときの明暗分布が生じる様子を表している。よってワンカラー状態に近い干渉縞は、明暗の位相が変化していないと元々有している光量むらと分離することができない。
こうした干渉縞が生じたり、明暗の変化の分布(位相ずれ)が生じたりしているとき、図1の光学系においては、ヘッド部HEADをディスク部DSKに対して相対的に角度Δθを付与すると、横縞の干渉縞の程度が調整できる。また、ディスク部DSKの径方向にヘッド位置のずれΔrを付与すると、縦縞の干渉縞の程度が調整できる。よって、3つの光束のうちいずれかの光束を受光して撮像する撮像素子(受光部)で観察し、その観察結果からこれらΔθ、Δrの2つの調整を組合せることで、干渉光をワンカラー状態に収束させ、ヘッド位置を固定することができる。
しかし、画像情報のままだと強度むらや様々なパターンが重なっているため、人の感性的な調整になってしまう。また本来の信号検知用の受光部とは別に干渉縞の明暗の変化の位相ずれを別途検出するための受光部を用いるのは不合理である。そこで本実施形態では、3つの光束を、それぞれ受光部PD(A),PD(B),PD(C)でそれぞれ受光し、それらの出力を後述の信号処理部にて合成する。それによって、本来のエンコーダの3相信号を出力するとともに、干渉縞に関する情報(縞の向き、縞の混み具合)を出力する。なお、3つの受光部の出力のうち、いずれか1つについて干渉縞に関する情報を算出すればよい。
以下、信号処理部に関して以下に説明する。図4は、第1実施形態の信号処理部RVRのブロック図で、特に受光部PD(C)の演算処理について説明したものである。信号処理部RVRは、たとえばマイクロコンピュータやDSPなどであり信号を処理する機能を有する。後述の算出部はその演算機能により信号処理および演算を行う。他の受光部PD(A),PD(B)は各撮像素子の総和としてA相信号、B相信号を出力している。ヘッド部HEADに内蔵されている受光部PD(C)の出力は、2次元配列された受光セルの信号がクロック信号に基づいて周期的にシリアル信号として出力され、信号処理部RVRに入力される。
入力されたシリアル信号はAD変換され、メモリ部にPD(C)画像データとして蓄積される。PD(C)の画像データは、抽出分割部に送られる。切抜き分割部は、領域設定部の指示に従い、受光部PD(C)が受光した全体領域から干渉縞が観測される領域を図5のように切抜き、画像データとして時系列的に出力すると同時にその切抜きされた領域をX軸方向及びY軸方向に2等分する中心位置の情報を出力する。領域設定部は、画像メモリ上の切抜きするアドレスエリアを手動で設定することができる。
または、領域設定部は、自動で、例えば、初期状態などを指定したタイミングで、受光部PD(C)上の干渉縞が図3の様にサイクリック変化する中で、PD(C)全体の加算値が最大になる受光画像データを抽出することができる。切抜き分割部は、図5に示すように干渉縞が当たっている領域のX軸及びY軸上の最大、最小値(Xmin、Ymin、Xmax、Ymax)を抽出して、切抜きする領域を決める。そして、切抜き分割部は、その抽出領域をX軸方向及びY軸方向に各2等分することで、PD(C1),PD(C2),PD(C3),PD(C4)の4分割領域を決める。切抜きされ4分割された画像データは、干渉縞カウント部、差分算出部に送られる。
干渉縞カウント部は、抽出された画像データに干渉縞の明暗がX軸方向、Y軸方向に何本あるか、カウントする。カウントする方法としては、例えば、画像データを2次元高速FFTで周波数領域に変換して、0次を除いたピーク値に相当する周波数を求めて、各々X軸方向、Y軸方向の干渉縞本数とする。例えば、切抜きされた画像のX軸方向に1サイクルの干渉縞cos(θ)*cos(θ)(θ=2πx/L、L:画像の幅)があれば、フーリエ変換すればcos(θ)*cos(θ)= 1/2+cos(θ*2)/2であるから、干渉縞は2本になる。半サイクルの干渉縞はcos(2θ)*cos(2θ)=1/2+cos(θ)/2であるから、1本になる。各々半位相ずれた場合は、干渉縞sin(θ)*sin(θ)であれば、sin(θ)*sin(θ)=1/2-cos(θ*2)/2であるから−2本と算出でき、sin(2θ)*sin(2θ)=1/2-cos(θ)/2であるから、−1本になる。他の方法として、直接的に、X軸方向、Y軸方向に沿って画像をスキャンして明暗をカウントする方法もある。明部スタートの干渉縞は、プラスの干渉縞とし、暗部スタートはマイナスの干渉縞とする。
差分算出部は、まず4つの領域PD(C1),PD(C2),PD(C3),PD(C4)ごとに時系列で画像データの加算値を求める。その際の波形の例を図6に示す。干渉縞がワンカラー状態からずれているため明暗のタイミングがずれ、正弦波状の波形に位相ずれが生じることがわかる。入力された4つの信号C1〜C4は、上側2つの和の信号(C1+C2)および下側2つの和の信号(C3+C4)、また、左側2つの和の信号(C1+C4)および右側2つの和(C2+C3)の信号に変換される。PD(C1)およびPD(C2)の上側領域、PD(C3)およびPD(C4)の下側領域はそれぞれ、受光部PD(C)が受光した全体領域から抽出された第1部分領域と第2部分領域とを構成している。
また、PD(C1)および PD(C4)に左側領域、PD(C2)およびPD(C3)の右側領域もそれぞれ、受光部PD(C)が受光した全体領域から抽出された別の第1部分領域と第2部分領域とを構成している。その後、上下の差信号DEF(V)=C1+C2-C3-C4、左右の差信号DEF(H)=C1+C4-C2-C3、総和信号C=C1+C2+C3+C4を求め、更にCで規格化したDEF(H)/C、DEF(V)/Cを求める。この値は、ワンカラーに近い状態では、1以下の値になり、完全なワンカラー状態では、零になる。
ここでディスクDSKを何らかの操作で回転させたとき(実際は調整時のわずかな振動で回転させたとき)、干渉光の明暗位相が変動するため、周期信号が得られる。干渉縞がワンカラー状態であれば、差信号の振幅が最小値になり、総和信号Cの振幅が最大値になる。受光部PD(C)への入射光束で干渉縞を撮像素子CCDで撮像すれば干渉縞が形成されている場合は、その縞が揺れるように見えるはずである。また横縞(H軸方位)が形成されている場合は、差信号DEF(H)の振幅が零になっていないし、また縦縞(V軸方位)が形成されている場合は、差信号DEF(V)の振幅が零になっていない。しかし、干渉縞を理想的なワンカラー状態に調整できれば、総和信号Cが最大でかつ差信号DEF(H)、DEF(V)が零になる。また、必要があればDEF(H),DEF(V),Cの各信号を、オシロスコープで波形としてモニタすることで、縞の方位と量が判定できるので、調整を効果的に収束させることができる。
しかし、作業簡便性を向上させるため、本実施形態では、さらにワンカラー度算出部と2つのLED表示部LEDC(H),LEDC(V)を信号処理部RVRに具備する。差分算出部およびワンカラー度算出部は、複数の部分領域のそれぞれでの受光結果に基づいて受光領域における干渉光の位相分布の均一性を示す指標を求める処理部を構成している。また、2つのLED表示部LEDC(H),LEDC(V)は、算出部により算出された指標の値に基づいて前記受光部と前記スケールとの相対位置を調整する必要性についての情報を出力する出力部を構成している。そうすれば、作業者は、LED表示部LEDC(H),LEDC(V)から出力された情報を手がかりにエンコーダの姿勢調整をすることができる。その相対位置を調整する必要性についての情報とは、調整すべきか否かの0、1の2値の情報でもよいし、調整すべき部材の情報でも、調整パラメータや調整量でも良い。
ワンカラー度算出部は、干渉縞カウント部がカウントした干渉縞本数Nと差分算出部が算出したDEF(V),Cを用いて、V軸方位のワンカラー度OC(V)を次式1のように算出し、算出された値に応じて表示部LEDC(V)の点灯状態を変化させる。
OC(V)=N (N≧1) OC(V)=DEF(V)/C (N<1) ・・・(1)
例えば、LED表示として5個の発光ダイオードアレイを使うとする。そうすると、ワンカラー度OC(V)の値が0の状態がワンカラー状態なので、例えばワンカラー度が0.2以下になれば5個が点灯し、0.4〜0.2ならば4個が点灯し、その値が1に近い場合は全灯が消灯するように設定される。
また、ワンカラー度算出部は、H軸方位のワンカラー度OC(V)を干渉縞カウント部がカウントした干渉縞本数Nと差分算出部が算出したDEF(H),Cを用いて、H軸方位のワンカラー度OC(V)を次式2のように算出する。そして、ワンカラー度算出部により算出された値に応じて、表示部LEDC(H)は、点灯状態を変化させる。
OC(H)=N (N≧1) OC(H)=DEF(V)/C (N<1) ・・・(2)
例えば、LED表示として5個の発光ダイオードアレイを使うとする。そうすると、ワンカラー度OC(H)の値が0の状態がワンカラー状態なので、例えばワンカラー度が0.2以下になれば5個が点灯し、0.4〜0,2ならば4個が点灯し、その値が1に近い場合は全灯が消灯するように設定される。
よって、ヘッドの角度Δθを調整しながらLED表示部LEDC(H)が全灯点灯するようにし、ヘッドの位置Δrを調整しながらLED表示部LEDC(V)が全灯点灯するようにすれば、干渉縞をワンカラー状態に追い込むことが可能である。なお、ワンカラー度の情報の表示は、発光ダイオードの点灯数ではなく、赤、橙、黄、緑、青等の色の変化や、発光ダイオードの点滅状態の変化で表示しても良い。また干渉計測装置の仕様により必要なワンカラー度が異なる場合はその閾値を適宜変更することも可能である。また、LED表示部LEDC(H),LEDC(V)として、数値表示LEDを使うとすれば、OC(H),OC(V)の数値を直接表示してもよい。
図7に基づいて、本実施形態におけるワンカラー度の判定手法について説明する。実際には光束断面内で光量むらがあるため、前述の差信号の振幅のみを手がかりにする手法では、ワンカラー度を零近傍に追い込みきれない。そこで、光束断面内における位相差を検出すると、位相差が上下左右で零になる状態がより正しい意味のワンカラー状態となる。実際、例えば光束の右半分と左半分で光量比が1:2の場合、ワンカラー状態であっても差信号は零にならない。
そこで、本実施形態では、リサージュ波形を処理するために信号処理部RVRにリサージュ算出部、分割設定部を置く。リサージュ算出部もワンカラー度算出部とともに、複数の部分領域のそれぞれでの受光結果に基づいて受光領域における干渉光の位相分布の均一性を示す指標を求める処理部を構成している。ディスクDSKを何らかの操作で回転させ(実際は調整時のわずかな振動で回転させたとき)、明暗位相を変動させて、周期信号を発生させる。すると、受光部PD(C)の受光領域から切抜きされ分割された4つの受光領域PD(C1),PD(C2),PD(C3),PD(C4)における受光量の領域加算値C1,C2,C3,C4が得られる。この領域加算値C1〜C4より、図8に示す、上側2つの和信号(C1+C2)と下側2つの和信号(C3+C4)からのリサージュ波形と、右側2つの和信号(C2+C3)と左側2つの和信号(C1+C4)からのリサージュ波形とが得られる。これら2つのリサージュ波形が楕円ではなく直線になるように追い込めばワンカラー状態への調整が可能となる。
ここで、リサージュ算出部での処理を説明する。1周期分の複数の時刻のそれぞれにおけるM個の静止画像が切抜き、4分割処理されリサージュ算出部に送られてくる。リサージュ算出部は、領域PD(C1),PD(C2),PD(C3),PD(C4)の各々の加算値C1m,C2m,C3m,C4m(m=1・・M)を求める。リサージュ算出部は、更にM個の時刻における2つの和(C1m+C2m)、(C3m+C4m)(m=1・・M)の値を取得する。そして、リサージュ算出部は、2つの和のうちの一方(C1m+C2m)および他方(C3m+C4m)をそれぞれXY座標系のX座標値およびY座標値とし、それらの点(C1m+C2m,C3m+C4m)を通るべき下記の式3で表されるリサージュ波形を求めてそのパラメータXv0,Xv1,Yv0,Yv1,δvを決める。
C3m +C4m = Xv0 + Xv1 (1 + cosθ)
C1m +C2m = Yv0 + Yv1 (1 + cos(θ-δv)) ・・・(3)
式3中の位相差のパラメータδvをリサージュ波形のV軸方位の「ワンカラー度」と定義すれば、ヘッドの位置Δrに対応したV軸方位のワンカラー度が算出される。完全にワンカラー状態のときにワンカラー度δvは零になる。ワンカラー状態に近ければ、ワンカラー度の他の表現として直線度を用いることも可能である。図9のリサージュ波形の(C1+C2)方向の長さ(すなわち、複数のY座標値のうちの最大値と最小値との差分である第1差分)をAとする。リサージュ波形の中心を(C1+C2)方向に横切る切片の長さをBとする。そうすると、リサージュ波形の位相差δvは、δv = asin (B/A)で表される。なお、δv≒B/Aであるので、(B/A)をリサージュ波形の直線度とすれば、「ワンカラー度」として直線度も使うことが可能である。
また、受光部上の干渉縞を2平行光束の傾き量Tilt-vによる干渉縞とする。そして、PD(C1)とPD(C3)の間隔(または、PD(C2)とPD(C4)の間隔)をLvとすると、Tilt-v=λ/(2π) ×δv/ Lv である為、ワンカラー度として傾き量Tilt-vを用いつこともできる。
リサージュ波形のH軸方位のワンカラー度の算出方法も同様である。2つの和信号(C2m+C3m)、(C1m+C4m)(m=1..M)の値の組を算出し、ディスクをΔθだけ相対回転させて、下記の式4で表されるリサージュ波形を求めてそのパラメータXh0,Xh1,Yh0,Yh1,δhを決める。
C1m +C4m = Xh0 + Xh1 (1 + cosθ)
C2m +C3m = Yh0 + Yh1 (1 + cos(θ-δh)) ・・・(4)
式4中の位相差δhから、H軸方位のワンカラー度(=δh)が算出される。また、H軸方位のリサージュ波形の直線度をワンカラー度と定義してもよいし、H方向の傾き量Tilt-hを用いてもよい。
これらのワンカラー度の情報は前述した様にLED表示部の点灯数で情報表現される。よって同様に、ヘッドの角度Δθを調整しながらLED表示部LEDC(H)が全灯点灯するように、ヘッドの位置Δrを調整しながらLED表示部LEDC(V)が全灯点灯するようにすれば、リサージュ波形をワンカラー状態に追い込むことが可能である。
次の1周期の処理も、上記と同様に1周期ごとにC1m,C2m,C3m,C4m(m=1・・M)から周期ごとにワンカラー度を算出してもよい。1周期を待たなくても、シフトレジスターのように、前の1周期データのm=1を捨てて、順次m=2をm=1にシフトし、m=Mを,m=M-1にシフトする。そして、次の周期のm=1を前の周期のm=Mにシフトして、上記の処理を行うことで、ワンカラー度を求めることもでき、より早く調整が可能である。
上述した様に、リサージュ算出部でリサージュ波形を処理することによりワンカラー度を算出し、調整することが可能であるが、ワンカラー度の算出に誤差が生じると、調整誤差が発生することになる。以下に、ワンカラー度を高精度に算出するアルゴリズムに関して説明する。前述した様に、ディスクDSKを何らかの操作で回転させ(実際は調整時のわずかな振動で回転させたとき)、周期信号を発生させて画像を取得した場合、取得画像のサンプリングタイミング、及び、取得画像枚数により、ワンカラー度の算出誤差が生じ得る。図10の丸点は、画像より処理した2つの和信号(C1m+C2m)、(C3m+C4m)(m=1・・M)の関係を示すM個の点(C1m+C2m,C3m+C4m)を示し、実線は和信号より算出したリサージュ信号を示す。図10の場合の様に、取得画像点数が少ない、もしくは、画像のサンプリング周期に偏りがある場合、点線で示した真のリサージュ波形からずれた実線のリサージュ波形が算出されるおそれがある。
上記誤差を低減するためにリサージュ算出部により行われるリサージュ波形のフィッティングアルゴリズムに関して、図11を用いて説明する。以下の説明において、mは1〜Mとし、Mは画像取得枚数とする。また、各取得画像の(C1+C2)をYm = C1m+C2mとし、各取得画像の(C3+C4)をXm = C3m+C4mとする。
まず、リサージュ算出部は、S1にて、リサージュ波形を下記の式5にて定義する。
X = Xv0 + Xv1×(1+cosθ)
Y = Yv0+ Yv1×(1+cos(θ-δv)) ・・・(5)
式5において、−1≦cosθ, cos(θ-δv)≦1であるから、X座標値の最小値はXv0、最大値は(Xv0 +2Xv1)、Y座標値の最小値はYv0、最大値は(Yv0 +2Yv1)である。ここで、図13に示したように、全取得画像データから求めた(C3+C4)の最小値をX_min、(C1+C2)の最小値をY_min、(C3+C4)の最大値をX_max、(C1+C2)の最大値をY_maxとする。そして、X座標値の最小値Xv0、最大値(Xv0 +2Xv1)が全取得画像データから求めた(C3+C4)の最小値X_min、最大値X_maxとそれぞれ等しいと仮定する。また、Y座標値の最小値Yv0、最大値(Yv0 +2Yv1)が全取得画像データから求めた(C1+C2)の最小値Y_min、最大値をY_maxと等しいと仮定する。
リサージュ算出部は、S2にて、前記の仮定に基づき下記の式6を用いて、定数Xv0、Xv1、Yv0、Y v1を暫定的に設定する。
Xv0 =X_min
Xv1 =(X_max-X_min)/2
Yv0 =Y_min
Yv1 =(Y_max-Y_min)/2 ・・・(6)
Yv1は、図9におけるリサージュ波形の(C1+C2)方向の長さAを用いて、Yv1=A/2と表すことができる。次に、リサージュ算出部は、S3にて、図13のX座標値(C3+C4)およびY座標値(C1+C2)の組み合わせのデータを一次直線で近似した場合の傾きαを算出する。傾きαは以下の3種の方法で算出可能である。
<平均化法>
複数のX座標値(C3+C4)をXi(ただし、iは自然数)とし、複数の前記Y座標値(C1+C2)をYとするとき、リサージュ算出部は、式α=atan(Σyi/Σxi)を用いて傾きαを算出する。
<暫定定数法>
S2で設定された定数Xv1、Yv1を用いて傾きαは、下記の式7で算出される。
α = atan (Yv1 / Xv1) ・・・(7)
<最小二乗法>
複数のX座標値をX(ただし、iは自然数)とし、複数の前記Y座標値をYとするとき、リサージュ算出部は、式Σ(Y−αXを最小にする値αを前記傾きαとして算出する。すなわち、各取得画像のデータを(C3m+C4m, C1m+C2m)とした場合、傾きαに対する各点の差分値σmをσm=(C1m+C2m)-α×(C3m+C4m)と定義する。次に、リサージュ算出部は、各取得画像の差分値σmの二乗を全取得画像分積算したΣσmを下記の式8で算出する。傾きαは、このΣσmを最小とする傾きとして算出される。
Σσm= Σ{(C1m + C2m)- α×(C3m + C4m)} ・・・(8)
次に、リサージュ算出部は、S4にて、図14に示したように、近似された一次関数の傾きαがゼロとなるようにXY座標系を回転する。回転後の図14におけるX座標値およびY座標値(Xm’,Ym’)と回転前の図13におけるX座標値およびY座標値(X,Y)とは、下記9の関係式を満たす。
Xm’= Xm×cosα + Ym×sinα
Ym’= -Xm×cosα + Ym×cosα ・・・(9)
このXm’,Ym’データを基に、回転後のX’Y’座標系におけるY’座標値の最大値Y’maxと最小値Y’minとの差分である第2差分B’を算出する。リサージュ波形の中心をY方向に横切る切片の長さBは第2差分B’、傾きαを用いて下記の式10で表される。
B =B’ / cosα ・・・(10)
次に、リサージュ算出部は、S5にて、式11で表される角度δvを算出し、当該角度δvを位相差として決定する。
δv = asin {(B’ / cosα) / A}=asin (B / A) ・・・(11)
また、位相差δvは、下記の式12により2平行光束の傾き量Tilt-vへの変換が可能である。ここでλはエンコーダ計測に用いている光源波長である。
Tilt-v = λ/(2π)*δv / ( PD(C1)とPD(C3)の間隔 ) ・・・(12)
また、図15に示すように、本方式では、Aを( Y_max- Y_min )、Bを(Y’max-Y’min)/cosαにて定義している。よって、Y_max、Y_min、Y’max、Y’minを定義可能な少なくとも4つの時刻における画像データがあれば、リサージュ波形の位相差を算出することが可能となる。
〔第2実施形態〕
前述した様に、第1の実施形態によりδ=asin{ (B’/cosα)/A }からワンカラー度δ(δv及びδh)を求めることが可能である。しかし、以下の手法を用いてさらに高精度にワンカラー度δvを算出することも可能である。図12を用いて第2実施形態におけるワンカラー度の算出手法について説明する。
まず、リサージュ算出部によりS11でリサージュ波形の定義を行うのは、図11に示す第1実施形態のS1と同じである。次にS12において、リサージュ算出部は、定数Xv0、Xv1、Yv0、Yv1(=A/2)の初期値を設定する。第2実施形態では、リサージュ算出部は、定数Xv0、Xv1、Yv0、Yv1の初期値を任意の値に設定することができる。ここで、4つの定数の数値の設定範囲に制限はないが、以下の式13で表される範囲としておけば算出処理の時間の短縮が可能となる。
Xv0 =X_min-(X_max-X_min) 〜X_min + (X_max-X_min)
Xv1 =(X_max-X_min)/2 〜(X_max-X_min)
Yv0 =Y_min-(Y_max-Y_min) 〜Y_min + (Y_max-Y_min)
Yv1 =(Y_max-Y_min)/2 〜(Y_max-Y_min) ・・・(13)
次にS13〜S15は、図11で説明した第1実施形態のS3〜S5と同一である。S16において、リサージュ算出部は、S11〜S15において算出したリサージュ波形と各データ点(Xm,Ym)の差分の二乗和の平方根で表されるフィッティング残差を算出する。次にS17において、リサージュ算出部は、算出されたフィッティング残差が前回算出されたフィッティング残差よりも小さいかどうかを判断する。フィッティング残差が減少している場合、リサージュ算出部は、S18において、フィッティング残差を更新し保存する。リサージュ算出部は、そのときのA,Bの値も合わせて保存しておく。S17においてフィッティング残差が増大している場合、S18をスキップし、S19に進む。S19で、リサージュ算出部は、さらにS12〜S18を行うか否かの判断を行う。S19でさらにS12〜S18を行うと判断された場合、S12に戻る。一方、S19でさらにS12〜S18を行わないと判断された場合、リサージュ波形の算出処理は終了する。
上記算出処理により、定数Xv0、Xv1、Yv0、Yv1の設定範囲内において、近似リサージュ波形と各データ点(Xm,Ym)との差分が最小となる様にリサージュ波形を決定することが可能となり、高精度にワンカラー度を算出することが可能となる。リサージュ波形の算出に際して、データ点(Xm,Ym)が多い方がワンカラー度の算出誤差は小さくなるが、計測時間が増加する。その為、ディスクを回転させてデータ点(Xm,Ym)を取得する際には、ディスクを等速に回転させ同一の位相差でデータ点(Xm,Ym)を取得するのが望ましい。
図12のS12では、下記の式14を用いて各種定数を設定している。
Xv0 =X_min
Xv1 =(X_max-X_min)/2
Yv0 =Y_min
Yv1 =(Y_max-Y_min)/2 ・・・(14)
つまり、データ点(Xm,Ym)のX_min、X_max、Y_min、Y_maxのデータより、リサージュ波形の近似を行っていることになる。そのため、X_min、X_max、Y_min、Y_maxが真のリサージュ波形と合致する様にX_min、X_max、Y_min、Y_max近傍のデータ点数を増加させるのが良い。
[その他の実施形態]
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介して干渉計測装置に供給し、その干渉計測装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。

Claims (7)

  1. 被検物への光照射に基づき得られる干渉光の強度の変動に基づいて前記被検物の変位または角度を検出する干渉計測装置であって、
    前記干渉光を受光して撮像する撮像素子と、
    前記撮像素子における前記干渉光の位相分布の均一性を示す指標の値を求める処理部と、
    前記処理部により算出された指標の値に基づいて前記撮像素子と前記被検物との相対位置を調整する必要性についての情報を出力する出力部と、
    を備え、
    前記処理部は、
    前記撮像素子が受光した全体領域から第1部分領域および第2部分領域を抽出し、抽出された前記第1部分領域で受光した干渉光の強度と前記第2部分領域で受光した干渉光の強度とを複数の時刻のそれぞれにおいて取得し、
    各時刻における前記強度のうちの一方および他方をそれぞれXY座標系のX座標値およびY座標値としたときの複数の前記Y座標値のうちの最大値と最小値との差分を第1差分として算出し、
    複数の前記X座標値および前記Y座標値の組み合わせのデータを一次関数で近似した場合の傾きを算出し、
    前記近似された一次関数の傾きがゼロとなるように前記XY座標系を回転し、回転後のXY座標系における複数の前記Y座標値のうちの最大値と最小値との差分を第2差分として算出し、
    前記第1差分をAとし、前記第2差分をB’とし、前記傾きをαとするとき、δ=asin{ (B’/cosα)/A}で表される角度δを算出し、当該角度δを前記指標として決定する、
    ことを特徴とする干渉計測装置。
  2. 光源から射出された光を分割して得られる2つの光束を前記被検物としてのスケールに設けたマーク列に照射し、該マーク列からの2つの回折光を重ね合わせることによって前記干渉光を生成する、ことを特徴とする請求項1に記載の干渉計測装置。
  3. 前記処理部は、少なくとも4つの時刻における前記強度を取得する、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の干渉計測装置。
  4. 複数の前記X座標値をX(ただし、iは自然数)とし、複数の前記Y座標値をYとするとき、
    前記処理部は、式α=atan(Σyi/Σxi)を用いて前記傾きαを算出する、ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の干渉計測装置。
  5. 複数の前記X座標値をX(ただし、iは自然数)とし、その最大値をX_maxとし、その最小値をX_minとし、複数の前記Y座標値をYとし、その最大値をY_maxとし、その最小値をY_minとするとき、
    前記処理部は、式α=atan{(Y_max-Y_min)/ (X_max-X_min)を用いて前記傾きαを算出する、ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の干渉計測装置。
  6. 複数の前記X座標値をX(ただし、iは自然数)とし、複数の前記Y座標値をYとするとき、
    前記処理部は、式Σ(Y−αXを最小にする値αを前記傾きαとして算出する、ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の干渉計測装置。
  7. 前記処理部は、前記角度δを、前記X座標値および前記Y座標値の組み合わせのデータが前記XY座標系でリサージュ波形を形成するとしたときの該リサージュ波形の位相差として決定する、ことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の干渉計測装置。
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