特許文献1〜3の体毛処理装置は、主に脚や腕のむだ毛、あるいは髪の毛などの単毛を切断対象としており、そのため大量のひげを切断する用途には適さない。櫛歯で捕捉した長いひげの一群をヒーターで熱切断することは不可能ではないが、切断されたひげの長さを一定以下に短くすることはできないからである。一方、電気かみそりに代表される体毛処理装置は、大量のひげを肌面の近くまで効果的に切断できるものの、むだ毛のように数センチメートルを越える長いひげを、外刃と内刃のせん断面まで導入するのが難しく、そのため、この種の長いひげを切断しにくい点に問題があった。
本発明の目的は、せん断部と熱切断部とを備えていて、あらゆる長さと、あらゆる状態の体毛を効果的に切断することができ、従って、従来の体毛処理装置に比べて高度の体毛切断機能を発揮できる体毛処理装置を提供することにある。
本発明に係る体毛処理装置は、本体ケース1の一端に体毛処理ヘッド2を配置し、体毛処理ヘッド2に、せん断作用で体毛を切断するせん断部14と、熱切断作用で体毛を切断する熱切断部15とが設けてあることを特徴とする。
熱切断部15は、体毛処理ヘッド2のヘッドフレーム10で、ヘッドフレーム10から突出する第1位置(図3(a)の状態)と、第1位置よりヘッドフレーム10に接近する第2位置(図3(b)の状態)とに位置変更可能に支持する。第1位置における熱切断部15の位置は、せん断部14の位置よりヘッドフレーム10から離反している。
熱切断部15はヘッドフレーム10で、第1位置と、第2位置と、第2位置よりヘッドフレーム10に接近する第3位置(図3(c)の状態)とに位置変更可能に支持する。第3位置における熱切断部15の位置は、せん断部14の位置よりヘッドフレーム10に接近させる。
熱切断部15に、電熱によって体毛を熱切断する切断ユニット37を設ける。熱切断部15が第3位置に切換えられた状態においては、切断ユニット37への通電を遮断する。
熱切断部15は、切断ユニット37を備えた熱切断ヘッド36を備えている。図14に示すように、熱切断ヘッド36はヘッドフレーム10で往復動自在に案内支持して、ヘッドフレーム10と熱切断ヘッド36との間に配置したフロートばね51でフロート支持する。
熱切断ヘッド36がフロートばね51の付勢力に抗してフロート限界位置まで変位された状態において、切断ユニット37への通電を遮断する。
熱切断部15は、ヘッドフレーム10で第1位置と第3位置との間で位置変更可能に支持される熱切断ベース35と、切断ユニット37を備えた熱切断ヘッド36とを備えている。図1に示すように、熱切断ヘッド36は、熱切断ベース35で往復動自在に案内支持して、熱切断ベース35と熱切断ヘッド36との間に配置したフロートばね51でフロート支持する。熱切断ヘッド36は、第1位置と第2位置のそれぞれの切換え位置において、熱切断ベース35に対して上下フロートできるようにする。
体毛処理ヘッド2に、肌面へ向かって加圧空気を送給する送風ファン16を設ける。
図6および図7に示すように、切断ユニット37は、回転自在に支持される中心軸54と、中心軸54の周りに支持される1本の発熱線で構成した第1発熱体56と、複数の発熱線で構成した第2発熱体57とを含む。切断ユニット37を、その中心軸54の回りに回転操作して、第1発熱体56と、第2発熱体57とのいずれかひとつを択一的に使用姿勢に切換え操作できるようにする。
熱切断ヘッド36の外面に体毛を梳き流す毛梳体50を設ける。図15に示すように、熱切断ヘッド36の内部に発熱体56を備えた切断ユニット37と、切断ユニット37を回転駆動するモーター76を配置する。切断ユニット37を回転駆動した状態で体毛を熱切断する。
図16に示すように、切断ユニット37は、中心軸54と、中心軸54の周囲に張出される複数の熱線ホルダー55と、複数の熱線ホルダー55で支持される発熱体56とを含む。熱線ホルダー55は、発熱体56を緊張状態に保持するテンション体を兼ねる。
切断ユニット37の中心軸54の周囲に、体毛を起す起毛体80を設ける(図16参照)。
発熱体56への通電状態を断続的にオン・オフして、体毛を熱切断する(図19参照)。
中心軸54の軸端の周面に接触端子60・61を固定する。中心軸54の周囲外面に、前記接触端子60・61と摺接して発熱体56に駆動電流を供給する固定端子62を設けて、切断ユニット37が回転することで発熱体56への通電状態を機械的にオン・オフする。なお、中心軸54には、少なくとも左右一対の1種類の接触端子60が設けてあればよい。
本体ケース1および/または体毛処理ヘッド2に、熱切断ヘッド36が人体と接触したことを検知する人体検知センサー68を設ける。人体検知センサー68が人体と接触したことを検知した状態においてのみ、発熱体56に駆動電流を供給する(図10参照)。
本体ケース1に切断ユニット37の回転速度を変更する回転数調整器91を設ける(図24参照)。回転数調整器91を調整操作して、切断ユニット37の回転速度を所定の範囲内で変更できるようにする。
本体ケース1に発熱体56に供給される電流値を調整する電流調整器93を設ける。切断ユニット37の回転速度が増加するのに応じて、電流調整器93を調整して発熱体56への供給電流量を増加できるようにする。
本発明の体毛処理装置においては、体毛処理ヘッド2にせん断部14と熱切断部15を設けるので、せん断部14のせん断作用と熱切断部15の熱切断作用とによって、短毛、長毛、むだ毛、長い髪などの体毛を、体毛の状態に応じて効果的に切断することができる。従って、従来装置に比べて高度の体毛切断機能を発揮できる体毛処理装置を提供できる。また、本発明の体毛処理装置でひげを剃る場合には、長いひげを熱切断部15で効果的に切断したのち、短くなったひげをせん断部14で迅速に切断できるので、長いひげをせん断部14で徐々に切断する場合に比べて、効率よくひげ切断を行なうことができる。熱切断部15を併用することにより、せん断部14の切断負荷を大幅に軽減できるので、せん断部14を構成する部品の摩耗や消耗を抑止して寿命を向上できる。
熱切断部15を第1位置と第2位置とに位置変更可能に支持し、第1位置における熱切断部15の位置をせん断部14の位置よりヘッドフレーム10から離反させる体毛処理装置によれば、せん断部14に邪魔されることなく熱切断部15を第1位置で使用できる。従って、熱切断部15による長いひげや長い髪を的確にしかも効率よく切断できる。
さらに、熱切断部15を第3位置へ位置変更可能とし、第3位置における熱切断部15をせん断部14よりヘッドフレーム10に接近させると、熱切断部15に邪魔されることもなく、せん断部14を肌面にあてがって体毛、とくに短毛の切断を効果的に行える。
熱切断部15を第3位置に切換えた状態において、切断ユニット37への通電を遮断すると、せん断部14で体毛を切断する際に、熱切断部15によって電力が無駄に消費されるのを防止できる。また、第3位置に位置させた熱切断部15の発熱作用を確実に停止できるので、せん断部14で体毛を切断する際に、手指が熱切断部15に触れることがあっても、火傷を負う心配がなく体毛処理装置の安全性を向上できる。
熱切断ヘッド36をヘッドフレーム10とフロートばね51でフロート支持すると、熱切断ヘッド36が肌面に強く押し当てられるとき、熱切断ヘッド36をヘッドフレーム10側へ移動させて、肌面に作用する圧力を緩和することができる。従って、肌面の一部が熱切断ヘッド36の内部へ入り込んで発熱体56に接触するのを防止し体毛処理装置の安全性を向上できる。
熱切断ヘッド36がフロート限界位置まで変位した状態以降は、フロート構造で肌面に作用する圧力を緩和することができなくなり、肌面の一部が熱切断ヘッド36の内部へ入り込んで発熱体56に接触するおそれがある。しかし、フロート限界位置まで変位した状態において切断ユニット37への通電を遮断すると、発熱体56の発熱作用を停止して温度を低下できるので、肌面の一部が熱切断ヘッド36の内部へ入込んで火傷を負うのを避けることができ、体毛処理装置の安全性をさらに向上することができる。
熱切断ベース35を第1位置と第2位置に切換えた状態において、熱切断ヘッド36を熱切断ベース35に対して上下フロートさせると、熱切断ヘッド36を単独で使用し、あるいはせん断部14と併用する状態において、熱切断ヘッド36と接触する肌面に作用する圧力を緩和できる。従って、熱切断ヘッド36が使用可能な状態にあるときは常に、熱切断ヘッド36を熱切断ベース35側へ移動させて、肌面に大きな圧力が作用するのを防止し、肌面の一部が熱切断ヘッド36の内部へ入込んで発熱体56に接触するのを解消できる。
体毛処理ヘッド2に送風ファン16を設け、送風ファン16で加圧した空気を肌面へ向かって送給できるようにすると、肌面を加圧空気で冷却しながら熱切断ヘッド36で体毛を切断できる。また、熱切断ヘッド36に設けた発熱体56によって暖められた肌面を加圧空気で冷却できるので、熱切断ヘッド36による体毛の切断を快適に行える。
切断ユニット37を中心軸54の回りに回転操作して、第1発熱体56と、第2発熱体57とを択一的に使用姿勢に切換え操作できるようにすると、体毛の状態に適合した発熱体を選択して熱切断を行うことができる。例えば、密生した剛毛を熱切断する場合には、複数の発熱線で構成した第2発熱体57で熱切断し、細くて長い髪を切断する場合には、1本の発熱線で構成した第1発熱体56で熱切断する。第1発熱体56と第2発熱体57の特性の違いは、発熱温度以外に、熱容量の違い、あるいは冷却特性の違いなどであってもよい。
切断ユニット37を回転駆動した状態で体毛を熱切断する体毛処理装置によれば、切断ユニット37が一回転するごとに発熱体56が肌面に接近して体毛を熱切断でき、しかも、発熱体56は体毛を熱切断するのと同時に肌面から離れる。そのため、発熱体56が肌面と正対した状態のままで体毛を熱切断する場合に比べて、肌面が発熱体56の熱に晒される時間を短くでき、従って肌面が熱くなるのを確実に防止して、より快適に体毛を熱切断できる。
中心軸54と、複数の熱線ホルダー55と、発熱体56を含む切断ユニット37において、熱線ホルダー55の弾性を利用して発熱体56を緊張状態に保持すると、別途テンション体を設ける必要がないので、その分だけ切断ユニット37の構造を簡素化できる。また、テンション体を省略できる分だけ切断ユニット37の製造に要するコストを削減できるうえ、テンション体を設けた場合に避けられない、テンション体による無駄な電力の消費を解消できる。
切断ユニット37の中心軸54の周囲に起毛体80を設けると、肌面に沿って倒れこんだ体毛やくせ毛を起毛体80で強制的に起毛して、体毛の熱切断をさらに効果的に行うことができる。また、熱切断された体毛を起毛体80で跳ね飛ばして、熱切断された体毛が熱切断ヘッド36の内部へ入込むのをよく防止できる。
切断ユニット37を回転駆動しながら体毛を熱切断する体毛処理装置において、発熱体56への通電状態を断続的にオン・オフすると、発熱体56に駆動電流が連続して供給される場合に比べて、熱切断部15における消費電力量を減少できる。また、通電状態を断続的にオン・オフすることにより、発熱体56が過熱するのを防止しながら適温に保持した状態で体毛を熱切断できる。
中心軸54の軸端の周面に接触端子60・61を固定しておき、切断ユニット37が回転することを利用して発熱体56への通電状態を機械的にオン・オフすると、通電状態を断続的に変化させる給電構造を簡素化して低コスト化できる。
体毛処理装置に人体検知センサー68を設け、人体検知センサー68が人体と接触したことを検知した状態においてのみ発熱体56に駆動電流を供給すると、熱切断ヘッド36が肌面から離れるのに応じて発熱体56の発熱を停止できる。従って、発熱体56による消費電力量を減少して、電池3が無駄に消耗されるのを解消できる。また、体毛を熱切断する際に、台上に載置した体毛処理装置の熱切断ヘッド36に手指が触れることがあっても、発熱体56の熱で火傷するのを防止できる。
回転数調整器91を調整操作して、切断ユニット37の回転速度を所定の範囲内で変更できるようにすると、切断ユニット37の駆動回転数を使用者の好みの回転数に調整することができる。あるいは、体毛の太さや硬さ、あるいは体毛の密度などに応じて切断ユニット37の駆動回転数を調整することにより、発熱体56による熱切断条件を種々に変更して体毛の熱切断を的確に行うことができる。
切断ユニット37の回転速度が増加するのに応じて電流調整器93を調整して、発熱体56への供給電流量を増加すると、切断ユニット37の駆動回転数が増加するとき、発熱体56の温度が徐々に低下するのを補正して、発熱体56の発熱温度を適温に維持できる。従って、切断ユニット37の回転速度が所定の範囲内で変更される場合であっても発熱体56の発熱温度を適温に維持して、発熱体56による体毛の熱切断を常に好適に行える。
(実施例1) 図1ないし図12は、本発明に係る体毛処理装置の実施例1を示している。なお、本発明における前後、左右、上下とは、図2、図3に示す交差矢印と、各矢印の近傍に表記した前後、左右、上下の表示に従う。
図2において、体毛処理装置は、グリップ部を兼ねる本体ケース1と、本体ケース1の上端(一端)に配置した体毛処理ヘッド2とを備えている。本体ケース1の内部には、2個の2次電池(電池)3と制御基板4が収容され、ケースの前面にモーター5・6への通電状態をオン・オフするメインスイッチ7用の押しボタン8が配置してある。また、押しボタン8の下方には、メインスイッチ7がオン状態であるとき点灯する通電表示灯9が設けてある。図2に示すように、体毛処理ヘッド2はヘッドフレーム10を備えており、このヘッドフレーム10は本体ケース1で上下スライド自在に、しかも左右傾動可能に支持されて、両者1・2の間に配置した左右一対の第1フロートばね11でフロート支持してある。なお、体毛処理ヘッド2は本体ケース1でフロート支持する必要はなく、その場合にはヘッドフレーム10を本体ケース1と一体に形成することができる。
図1において、ヘッドフレーム10には、せん断作用で体毛を切断するせん断部14と、熱切断作用で体毛を切断する熱切断部15とが前後に隣接する状態で設けてある。また、両者14・15の間には、先のモーター5・6と、肌面へ向かって加圧空気を送給する遠心式の送風ファン16と導風路17とが設けてある。送風ファン16は、一方のモーター5で回転駆動され、他方のモーター6でメイン刃20の内刃23が回転駆動される。図1および図5に示すように、導風路17の吹出口18はせん断部14と熱切断部15との間の空間で開口されて、ヘッドフレーム10の上開口に臨ませてあり、吹出口18の左右幅はメイン刃20の左右幅と同じか、それより広幅に形成してある。
(せん断部の構造)
せん断部14は、メイン刃20と、メイン刃20の後側に配置したサブ刃21とで構成する。メイン刃20は、刃支持台22と、刃支持台22で回転自在に支持されるロータリー式の内刃23と、網刃で構成される外刃24とを備えており、主に短毛状のひげを切断して仕上げ剃りを行う。外刃24は、刃支持台22で逆U字状に保形してある。刃支持台22は、揺動軸25を中心にして上下揺動できるように支持され、さらに、刃支持台22の下側に配置したキックばねからなる第2フロートばね26でフロート支持してある。モーター6の回転動力は、ギヤトレイン27(図2参照)を介して内刃23へ伝動される。
サブ刃21は、主に長毛状のひげを切断して粗剃りを行うために設けられており、それぞれスリット刃で構成される可動刃30および固定刃31とで構成する。固定刃31はサブ刃支持台32で支持してある。先のモーター6の回転動力を、図示していない偏心カムと振動子で往復動力に変換し、この往復動力で可動刃30が往復駆動される。サブ刃支持台32は、ヘッドフレーム10で上下スライド自在に支持してあり、その下面側に配置した第3フロートばね33でフロート支持してある。このように、メイン刃20およびサブ刃21のそれぞれを、第2フロートばね26、および第3フロートばね33でフロート支持し、さらにヘッドフレーム10を第1フロートばね11でフロート支持することにより、せん断部13でひげ切断を行うときの肌当りを柔らかなものとすることができる。
(熱切断部の構造)
熱切断部15は、ヘッドフレーム10で上下に位置変更可能に支持される熱切断ベース35と、熱切断ベース35で支持される熱切断ヘッド36と、熱切断ヘッド36に設けられる切断ユニット37を備えている。熱切断ベース35は、左右に長い中空枠状の上側の保持枠38と、保持枠38の下部に設けた断面がH字状のスライド枠39とを一体に備えており、保持枠38で熱切断ヘッド36を上下スライド自在に支持している。スライド枠39は、ヘッドフレーム10に設けたガイド枠40と、前後一対のガイドピン41とに案内されて、上下スライド可能に支持してある。
熱切断ベース35を、ヘッドフレーム10から突出する第1位置と第2位置、およびヘッドフレーム10の側へ退入する第3位置において、それぞれ位置保持するために、熱切断ベース35とガイド枠40との間に節度構造を設けている。また、熱切断ベース35を各位置に切換え操作するために、ヘッドフレーム10の左右壁に上下に長い操作溝43を開口し、操作溝43の外面に熱切断ベース35をスライド操作する操作ボタン44を設けている(図3参照)。操作ボタン44は、先の保持枠38に連結してある。図1に示すように、節度構造は、スライド枠39の下部の弾性脚45の前後に設けた係合爪46と、ガイド枠40の前後壁の内面の上下3個所に設けた係合凹部47とからなる。係合爪46は、弾性脚45が弾性変形することで、隣接する係合凹部47の間の壁面を乗り越えることができる。
熱切断ベース35を最上部の第1位置に切換えた状態では、図3(a)に示すように、熱切断ヘッド36の上端が、メイン刃20の上端よりも寸法h1の分だけ上方に位置している。換言すると、第1位置における熱切断部15の上端の高さ位置は、せん断部14の上端の高さ位置よりヘッドフレーム10から離反させて上方に位置させてある。熱切断ベース35が第1位置にあるときの係合爪46は、最上部に位置する係合凹部47と係合しており、切断ユニット37のみで長い体毛や、ひげの長毛を熱切断することができる。
熱切断ベース35を第1位置から第2位置へ押し下げた状態では、図3(b)に示すように、熱切断ヘッド36の上端とメイン刃20の上端とが同じ高さ位置にある。熱切断ベース35が第2位置にあるときの係合爪46は、図1に示すように上下中途部に位置する係合凹部47と係合している。この第2位置においては、メイン刃20とサブ刃21と切断ユニット37との三者が協同してひげ切断を行うことができ、ひげの長毛部分を切断ユニット37で切断し、ひげの短毛部分および長毛をメイン刃20とサブ刃21とで切断できる。
熱切断ベース35を第2位置からさらに押し下げて第3位置へ切換えた状態では、図3(c)に示すように、熱切断ヘッド36の上端がメイン刃20の上端より寸法h2の分だけ低い位置にある。つまり、第3位置における熱切断部15の上端の高さ位置は、せん断部14の上端の高さ位置よりヘッドフレーム10に接近させて下方に位置させてある。熱切断ベース35が第3位置にあるときの係合爪46は、最下部に位置する係合凹部47と係合しており、この第3位置においては、メイン刃20とサブ刃21のみでひげの仕上げ剃りを行うことができる。
熱切断ヘッド36はトンネル断面状の中空体からなり、その半円状の上壁に体毛を導入するための導入開口49と、体毛を梳き流す毛梳体(櫛歯)50とが交互に形成してある(図5参照)。熱切断ヘッド36は、熱切断ベース35の保持枠38で上下方向へ進出および退入自在に案内支持されており、その底面と保持枠38の底壁との間に配置した第4フロートばね(フロートばね)51で、フロート支持されて上方へ進出する向きに付勢してある。このように、熱切断ヘッド36を熱切断ベース35および第4フロートばね51でフロート支持することにより、熱切断部15で体毛を熱切断するときの毛梳体50の肌当りを柔らかなものとすることができる。
図6および図7に示すように、切断ユニット37は、熱切断ヘッド36の左右壁で回転自在に支持される中心軸54と、中心軸54の周囲に張出される4個の熱線ホルダー55と、熱線ホルダー55で支持される第1発熱体(発熱体)56、および第2発熱体(発熱体)57と、給電構造などで構成する。熱線ホルダー55は円板状のプレス金具からなり、その周面の3個所に固定した絶縁リング58が中心軸54に沿って直線列状に整列する状態で、中心軸54に固定してある。第1発熱体56および第2発熱体57は、それぞれニクロム線(発熱線)で形成されて、各絶縁リング58を介して熱線ホルダー55に支持されている。第1発熱体56が1本のニクロム線で構成してあるのに対し、第2発熱体57は、第1発熱体56と同じ抵抗値の2本のニクロム線を平行に配置して構成してある。
給電構造は、中心軸54の周面の両端寄りに絶縁ボス59を介して固定される一対の接触端子60・61と、両接触端子60・61の一方と摺接して両発熱体56・57に駆動電流を供給する左右一対の固定端子62とで構成する。左右の固定端子62はそれぞれ熱切断ヘッド36で支持されており、その一方はスイッチを介して2次電池3の+極に、他方は−極に接続してある。第1発熱体56の一端は、図6において右側の接触端子60に接続され、第1発熱体56の他端は、図6において左側の接触端子60に緊張ばね(テンション体)63を介して接続してある。また、平行に配置した2本の第2発熱体57の一端は、それぞれ図6において右側の接触端子61に接続され、第2発熱体57の他端は、図6において左側の接触端子61に緊張ばね(テンション体)64を介して接続してある。
中心軸54の両軸端には、切断ユニット37の姿勢を変更操作するための操作摘み66が固定してある。この操作摘み66を回転することにより、図1に示すように第1発熱体56が導入開口49に正対する状態と、図8に示すように第2発熱体57が導入開口49に正対する状態とに切換えて、切断ユニット37の熱切断能力を異ならせることができる。第1発熱体56が導入開口49に正対する状態では、第1発熱体56の抵抗値に応じて、第1発熱体56の発熱温度を高めることができる。また、並列接続した第2発熱体57の抵抗値は、第1発熱体56の抵抗値の半分になり、全体の電流値は2倍になる。第2発熱体57の2本の発熱線は、それぞれが第1発熱体56の発熱線と抵抗値が同じであるので、第2発熱体57の発熱線のそれぞれの温度は、第1発熱体56の1本の発熱線の温度と同じになる。従って、消費電力は2倍となるものの、2本の発熱線で剛毛をすばやく熱切断できる。
先に説明したように、熱切断ベース35は第1位置と第3位置との間で姿勢を変更できる。また、熱切断ヘッド36は、熱切断ベース35および第4フロートばね51でフロート支持されて、一定範囲内で上下動できる。こうした、熱切断ベース35、および熱切断ヘッド36の上下位置を検出するために、図8に示すように、ガイド枠40の前壁側の係合凹部47のそれぞれに、係合爪46でオン操作される3個の位置検知スイッチ(位置センサー)67を設けている。また、熱切断ベース35を構成する保持枠38の前壁の上下に、熱切断ヘッド36でオン操作されて、同ヘッド36の上下位置を検出する人体検知スイッチ(人体検知センサー)68と、フロート限界スイッチ(フロート限界センサー)69を設けている。ヘッドフレーム10の前壁の上下には、熱切断ベース35の上下位置に対応して点灯する3個の位置表示灯70が設けてある。
図3(a)に示すように、熱切断ベース35が第1位置にある状態では、最上部の位置検知スイッチ67が係合爪46でオン操作されて、上部の位置表示灯70が点灯する。同様に、熱切断ベース35が第2位置にある状態では、上下中央の位置検知スイッチ67が係合爪46でオン操作されて、上下中央の位置表示灯70が点灯する。また、熱切断ベース35が第3位置にある状態では、下部の位置検知スイッチ67が係合爪46でオン操作されて、下部の位置表示灯70が点灯する。
人体検知スイッチ68は、熱切断ヘッド36が第4フロートばね51の付勢力に抗して押し下げられた状態において熱切断ヘッド36でオン操作されて、毛梳体50が人体の肌面に接触していることを検知する。フロート限界スイッチ69は、熱切断ヘッド36が第4フロートばね51の付勢力に抗して、下方の限界位置まで押し下げられた状態において熱切断ヘッド36でオン操作されて、毛梳体50が人体の肌面に食込むおそれがあることを検知する。
図9に制御基板4に搭載された制御回路71と各スイッチ7・67・68・69との関係、および制御回路71とモーター5・6、第1発熱体56、第2発熱体57などの負荷機器との関係、さらに制御回路71と各表示灯9・70との関係の概略を示している。以下、制御回路71による各負荷機器および各表示具の駆動状態の詳細を、図10から図12のタイミングチャートに基づき説明する。
図10は、熱切断ベース35が最上部の第1位置に切換えられたときのタイミングチャートであり、押しボタン8が押込まれてメインスイッチ7がオンするのと同時に、送風ファン16用のモーター5が起動される。せん断部14用のモーター5は、停止状態を維持している。同時に、通電表示灯9と上部の位置表示灯70とが点灯される。この状態で使用者が毛梳体50を肌面にあてがうと、熱切断ヘッド36が第4フロートばね51に抗して押込まれるため、人体検知スイッチ68がオン状態に切換わり、第1発熱体56(または第2発熱体57)への通電が開始される。使用者は、毛梳体50を肌面に沿って滑らせることにより、主に長毛あるいはむだ毛を第1発熱体56に接触させて熱切断することができる。このとき、肌面には送風ファン16から導風路17を介して常温の気流が吹付けられるので、第1発熱体56の熱で肌面が熱さを感じるのを防止できる。
熱切断時の毛梳体50が肌面に強く押付けられると、肌面が導入開口49から熱切断ヘッド36の内部に入り込んで第1発熱体56に接触するおそれがある。このような不具合をさけるために、熱切断ヘッド36が第4フロートバネ51の付勢力に抗して限界位置まで押し込み操作されると、フロート限界スイッチ69がオン状態に切換わり、オン信号を受けた制御回路71は第1発熱体56への通電を停止する。通電が停止された状態においても、送風ファン16による気流の供給は継続して行われているので、第1発熱体56の温度は急激に低下する。従って、肌面が第1発熱体56に接触して火傷を負うのを解消できる。毛梳体50の肌面に対する押圧力が減少すると、フロート限界スイッチ69がオフ状態に切換わり、第1発熱体56に対する通電が再開される。また、毛梳体50が肌面から離れると、人体検知スイッチ68がオフ状態に切換わるため、第1発熱体56に対する通電が停止される。以後、上記を繰り返すことにより、長毛あるいはむだ毛の熱切断が行われる。最後に、押しボタン8を押込んでメインスイッチ7がオフ状態に切換わると、全ての部材に対する電流の供給が停止される。
図11は、熱切断ベース35が上下中央の第2位置に切換えられたときのタイミングチャートである。そこでは、押しボタン8が押込まれてメインスイッチ7がオンするのと同時に、送風ファン16用のモーター5と、メイン刃20およびサブ刃21用のモーター6が同時に起動される点が、先のタイミングチャートと異なる。メインスイッチ7がオンするのと同時に、通電表示灯9と上下中央の位置表示灯70とが点灯される。先に説明したように、第2位置においては、メイン刃20とサブ刃21と切断ユニット37との三者が協同してひげ切断を行う。なお、人体検知スイッチ68およびフロート限界スイッチ69がオン・オフすることに伴う、第1発熱体56に対する通電状態の制御は、図10のタイミングチャートで説明した制御内容と同じであるので、その説明を省略する。
図12は、熱切断ベース35が最下部の第3位置に切換えられたときのタイミングチャートである。熱切断ベース35が第3位置に切換えられた状態では、最下部に位置する位置検知スイッチ67がオン状態に切換わる。そのため、メインスイッチ7がオン状態に切換わると、送風ファン16用のモーター5と、メイン刃20およびサブ刃21用のモーター6が同時に起動されるのみで、第1発熱体56への通電が無条件で停止される。つまり、熱切断部15が第3位置に切換えられた状態においては、人体検知スイッチ68のスイッチ状態とは無関係に、切断ユニット37への通電が遮断されて、熱切断部15が待機状態に保持される。このときの熱切断ヘッド36の底面は、図4に示すように、ガイドピン41の上端で受止められるので、それ以上下向きに移動することはない。メインスイッチ7がオンするのと同時に、通電表示灯9と最下部の位置表示灯70とが点灯される。第3位置においては、メイン刃20とサブ刃21とが協同してひげ切断を行い、メインスイッチ7がオフ状態に切換わると、全ての部材に対する電流の供給が停止される。
以上のように構成した体毛処理装置によれば、体毛処理ヘッド2にせん断部14と熱切断部15を設けるので、ひげや体毛の状態に応じてせん断部14と熱切断部15を併用してひげや体毛を切断し、あるいはいずれか一方でひげや体毛を切断できる。従って、上記の体毛処理装置によれば、あらゆる長さのひげおよび体毛を効果的に切断することができ、従来の電気かみそり、あるいは体毛処理装置に比べて高度の体毛切断機能を発揮できる。
(実施例2) 実施例2に係る体毛処理装置を図13ないし図19に示している。実施例2の体毛処理装置は、メイン刃20の構造、切断ユニット37の構造、および人体検知センサー68の構造などが実施例1と異なる。実施例1における送風ファン16およびモーター5と、サブ刃21は省略してある。図14に示すように、メイン刃20は、刃支持台22と、スリット刃で構成される内刃23と、網刃で構成される外刃24とで構成してあり、モーター6の出力軸に固定した偏心カム73と振動子74とでモーター動力を往復動力に変換して内刃23を往復駆動する(図13参照)。刃支持台22は、ヘッドフレーム10および圧縮コイルばねからなる第2フロートばね26で上下フロート自在に支持してある。
図14から図16に示すように、切断ユニット37は、中心軸54と、中心軸54の両端寄りに固定した左右一対の熱線ホルダー55と、両ホルダー55で支持される2個の第1発熱体(発熱体)56と、中心軸54の左右中央に固定されて発熱線のたわみを規制する規制腕75などで構成してある。切断ユニット37の全体は、熱切断ヘッド36の内部に収容したモーター76の回転動力で回転駆動できるようにしてある。そのために、中心軸54の両端を熱切断ヘッド36の左右壁で回転自在に軸支し、モーター76と中心軸54との間にギヤトレイン77を設けている。
熱線ホルダー55は、中心軸54に固定されるリング部から支持腕78・79を十文字状に張出して形成してあり、リング部を間に挟む一方の支持腕78のそれぞれで第1発熱体56を支持し、他方の支持腕79のそれぞれで体毛を起す起毛体80を支持している。第1発熱体56を支持する支持腕78は、互いに離れる向きにくせ付けされていて、それ自体が第1発熱体56を緊張させるためのテンション体を兼ねている。従って、実施例1における緊張ばね63・64は省略することができる。
一方の第1発熱体56は、左右一対の接触端子60に接続してあり、他方の第1発熱体56は、左右一対の接触端子61に接続してある。従って、切断ユニット37がモーター動力で回転駆動されるとき、第1発熱体56への通電状態を機械的にオン・オフして、各第1発熱体56に対して交互に駆動電流を供給することができる。
起毛体80は、摩擦力が大きなゴムまたは軟質プラスチックを素材にして形成した、断面が三つ指状の条材からなる。図16に示すように、規制腕75は第1発熱体56の回転方向上手側に配置されて、第1発熱体56が回転方向上手側へ撓むのを規制する。規制腕75は基本的に帯状に形成するが、その中途部を放射軸の周りに捻じることにより、腕全体を弾性変形しにくくしてある。
熱切断ヘッド36は、モーター76を収容する下ケース81と、下ケース81に固定される上ケース82とで構成する。上ケース82には、毛梳体50が一体に形成してあり、その前後端は下ケース81の前後壁よりも前後方向へ突出してある。熱切断ヘッド36の全体は、ヘッドフレーム10で上下スライド(往復動)自在に案内支持されて、両者10・36の間に配置したフロートばね51でフロート支持してある。人体検知センサー68は、本体ケース1のグリップ部に設けた左右一対のグリップ電極84と、熱切断ヘッド36の上端に配置した左右一対の肌電極85とで構成してある。手がグリップ電極84に接触し、肌電極85が肌面に接触した状態において、先の第1発熱体56に対して駆動電流が供給されて熱切断を行うことができる。
図18に制御回路71と、スイッチ7および人体検知センサー68との関係、および制御回路71とモーター6・76、第1発熱体56などの負荷機器との関係、さらに制御回路71と通電表示灯9との関係の概略を示している。以下、制御回路71による各負荷機器および各表示具の駆動状態の詳細を図19のタイミングチャートに基づき説明する。
押しボタン8が押込まれてメインスイッチ7がオンするのと同時に、メイン刃20用のモーター6が起動され、同時に通電表示灯9が点灯される。この状態で使用者が毛梳体50を肌面にあてがうと、グリップ電極84と肌電極85とが人体を介して導通するので、制御回路71は、切断ユニット37用のモーター76を起動し、所定時間T1が経過したのちに第1発熱体56に対して駆動電流を供給する。このとき第1発熱体56に対して、断続的に駆動電流を供給するので、一対の第1発熱体56に駆動電流が連続して供給される場合に比べて、熱切断部15における消費電力量を減少できる。また、切断ユニット37用のモーター76が起動して所定時間T1が経過したのちに、第1発熱体56に対して駆動電流を供給するので、回転しながら風を受けている第1発熱体56を発熱させることができ、第1発熱体56の温度が急激に上昇するのを防止できる。
上記のように、回転駆動しながら熱切断を行う切断ユニット37の場合には、使用時における第1発熱体56の温度を、回転駆動しない形態の切断ユニットの第1発熱体と同じ温度にするために、第1発熱体56の発熱温度が高く設定してある。そのため、切断ユニット37用のモーター76を起動するのと同時、あるいはモーター76の起動に先行して第1発熱体56に駆動電流を供給すると、第1発熱体56が必要以上に加熱されて、熱線の強度が極端に低下する。こうした不具合を解消し、熱線の強度が低下した状態で熱切断が行われるのを防ぐために、モーター76が起動して所定時間T1が経過したのちに、第1発熱体56を発熱させている。
グリップ電極84と肌電極85とのいずれか一方が手あるいは肌面から離れても、所定時間T2が経過するまでは、モーター76を引続き駆動し、第1発熱体56を発熱状態に保持し続ける。ただし、第1発熱体56に供給される駆動電流値を小さくして、消費電力を抑制した状態で発熱させる。これは、肌電極85が肌面から離れるごとに、モーター76および第1発熱体56の駆動が停止されるのを防止して、モーター76および第1発熱体56が再起動されるときの負荷を軽減するためである。所定時間T2が経過したのちは、モーター76および第1発熱体56への通電が停止される。再度、グリップ電極84と肌電極85とが人体を介して導通すると、第1発熱体56と、モーター76への通電が再開される。最後に、押しボタン8を押込んでメインスイッチ7がオフ状態に切換わると、全ての部材に対する電流の供給が停止される。上記以外は実施例1の体毛処理装置と同じであるので、同じ部材に同じ符号を付してその説明を省略する。
以上のように、切断ユニット37を回転駆動しながら熱切断を行う体毛処理装置によれば、各第1発熱体56がひげや体毛を切断するのと同時に肌面から離れるので、第1発熱体56の熱で肌面が熱さを感じるのをさらに確実に防止できる。また、一対の第1発熱体56に断続的に駆動電流を供給しながら熱切断を行うので、第1発熱体56の発熱温度が不必要に高くなるのを防止しながら体毛を熱切断できるので、体毛処理装置によるひげや体毛の熱切断を快適に行える。
上記の実施例2に係る体毛処理装置は、以下の形態で実施することができる。
1)熱切断ヘッド36の外面に体毛を梳き流す毛梳体50を設け、熱切断ヘッド36の内部に発熱体56を備えた切断ユニット37と、切断ユニット37を回転駆動するモーター76とを配置する。切断ユニット37を回転駆動した状態で体毛を熱切断する。
2)切断ユニット37の中心軸54の周囲に、体毛を起す起毛体80を設ける。
3)発熱体56への通電状態を断続的にオン・オフして体毛を熱切断する。
4)中心軸54の軸端の周面に接触端子60・61を固定する。中心軸54の周囲外面に、接触端子60・61と摺接して発熱体56に駆動電流を供給する固定端子62を設ける。切断ユニット37が回転することで発熱体56への通電状態を機械的にオン・オフする。
5)本体ケース1および/または体毛処理ヘッド2に、熱切断ヘッド36が人体と接触したことを検知する人体検知センサー68を設ける。人体検知センサー68が、人体と接触したことを検知した状態において、発熱体56に駆動電流を供給する。
図20は、実施例2における人体検知センサー68を省略した場合の、制御回路71による各負荷機器および各表示具の駆動状態の詳細を示すタイミングチャートである。その場合には、メインスイッチ7がオンするのと同時に、メイン刃20用のモーター6と切断ユニット37用のモーター76とが起動され、同時に通電表示灯9が点灯される。そして、所定時間T1が経過したのちに、第1発熱体56に対して駆動電流を供給して、回転しながら風を受けている第1発熱体56を発熱させて、実施例2と同様に第1発熱体56の温度が急激に上昇するのを防止する。
また、メインスイッチ7がオフ状態に切換わってから所定時間T2が経過するまでは、モーター76を引続き駆動し、第1発熱体56を発熱状態に保持し続ける。ただし、第1発熱体56に供給される駆動電流値を小さくして、消費電力を抑制した状態で発熱させる。これは、メインスイッチ7がオンオフされるごとに、モーター76および第1発熱体56の駆動が停止されるのを防止して、モーター76および第1発熱体56が再起動されるときの負荷を軽減するためである。
実施例2および図20で説明した体毛処理装置は、以下の形態で実施することができる。
1)切断ユニット37用のモーター76の起動後、所定時間T1が経過したのちに、発熱体56に駆動電流を供給する。
2)メインスイッチ7および人体検知センサー68がオフ状態に切換わってのち、所定時間T2が経過するまでの間、切断ユニット37用のモーター76と第1発熱体56への通電状態を維持し続ける。
3)所定時間T2が経過する間に第1発熱体56に供給される駆動電流が、使用状態において第1発熱体56に供給される駆動電流より小さく設定されて、第1発熱体56の消費電力を抑制した状態で発熱させる。
上記の実施形態1)によれば、切断ユニット37用のモーター76が起動されて、所定時間T1が経過したのちに、第1発熱体56に対して駆動電流を供給するので、回転しながら風を受けている第1発熱体56を発熱させることができ、従って、第1発熱体56の温度が急激に上昇するのを防止する。また、第1発熱体56が必要以上に加熱されて、熱線の強度が極端に低下するのを解消し、熱線の強度が低下した状態で熱切断が行われるのを防止できる。
上記の実施形態2)によれば、人体検知センサー68がオフ状態に切換わった場合に、所定時間T2が経過するまでの間、切断ユニット37用のモーター76と第1発熱体56への通電状態を維持し続ける。従って、人体検知センサー68がオフ状態に切換わるごとに、モーター76および第1発熱体56の駆動が停止されるのを防止して、モーター76および第1発熱体56が再起動されるときの負荷を軽減できる。
上記の実施形態3)によれば、人体検知センサー68がオフ状態に切換わったのち、所定時間T2が経過する間、つまり、待機状態における第1発熱体56の消費電力を抑制しながら発熱状態を維持できる。また、モーター76および第1発熱体56が再起動されるときの負荷を軽減できるので、全体として電池3の消耗度を低減できる。
(実施例3) 実施例3に係る体毛処理装置を図21ないし図23に示している。実施例3の体毛処理装置は、実施例2の体毛処理装置と同様に、切断ユニット37を回転駆動しながら熱切断を行うものであり、切断ユニット37の構造、および人体検知センサー68の構造などが実施例1、および実施例2と異なる。切断ユニット37は、中心軸54と、中心軸54の中央および両端寄りに固定した3個の熱線ホルダー55と、両ホルダー55で支持される2個の第1発熱体(発熱体)56と、起毛体80などで構成する。熱線ホルダー55は、実施例1の熱線ホルダーと同様に円板状に形成してあり、その対向周面に一対の第1発熱体56を配置し、一対の第1発熱体56と直交する熱線ホルダー55の対向周面に起毛体80が配置してある。人体検知センサー68は、非接触式の超音波型の近接センサーで構成してあり、放射した超音波が肌面で反射して戻ってくるまでの時間から切断ユニット37が肌面に接触しているか否かを判定する。他は実施例1および実施例2の体毛処理装置と同じであるので、同じ部材に同じ符号を付してその説明を省略する。
上記の実施例3に係る体毛処理装置は、以下の形態で実施することができる。
1)切断ユニット37は、中心軸54と、中心軸54に固定される円盤状の複数の熱線ホルダー55と、複数の熱線ホルダー55で支持される発熱体56と、起毛体80を含む。
2)人体検知センサー68は、非接触式の超音波型の近接センサーで構成する。
実施例2および実施例3では、切断ユニット37をモーター76で一定の駆動回転数で回転駆動することを想定した。しかし、必要があれば、切断ユニット37の回転速度を所定の範囲内で変更することができる。その場合には、図24の実施例4に示すように、モーター76と2次電池3とを接続する給電路90に回転数調整器91を設けて、回転数調整器91を使用者が調整操作することにより、切断ユニット37の駆動回転数を好みの回転数に変更することができる。回転数調整器91としては可変抵抗器を適用することができ、回転数調整器91を調整操作することにより、例えば50〜300rpmの範囲内で切断ユニット37の駆動回転数を変更することができる。
切断ユニット37の駆動回転数を増加すると、第1発熱体56の温度が徐々に低下する傾向がある。このような第1発熱体56の温度低下を防ぐために、第1発熱体56と2次電池3とを接続する給電路92に電流調整器93を設けて、切断ユニット37の回転速度が増加するのに応じて、発熱体56への供給電力量を増加することができる。電流調整器93としては可変抵抗器を適用することができる。回転数調整器91が使用者によって操作された場合には、回転数調整器91の調整信号を制御回路71に入力し、入力信号に応じて制御回路71から出力される指令信号に応じて電流調整器93を自動的に調整して、切断ユニット37の回転速度が増加するのに応じて、発熱体56への供給電流量を増加することができる。
上記の実施例4に係る体毛処理装置は、以下の形態で実施することができる。
1)本体ケース1に切断ユニット37の回転速度を変更する回転数調整器91を設ける。回転数調整器91を調整操作して、切断ユニット37の回転速度を所定の範囲内で変更できるようにする。
2)本体ケース1に発熱体56に供給される電流値を調整する電流調整器93を設ける。切断ユニット37の回転速度が増加するのに応じて、電流調整器93を調整して発熱体56への供給電流量を増加できるようにする。
上記の実施例では、中心軸54に絶縁ボス59を固定し、その外面に接触端子60・61を固定して、中心軸54と接触端子60・61を絶縁したがその必要はない。例えば、ステンレス材で中心軸54を形成し、その外面に絶縁皮膜処理を施した後、接触端子60・61を中心軸54に固定して、中心軸54と接触端子60・61を絶縁することができる。また、上記の実施例では、熱切断部15をヘッドフレーム10で上下スライド可能に支持して、第1位置と第3位置との間で上下に位置切換え可能としたが、その必要はなく、熱切断部15をヘッドフレーム10に対して揺動または回動させて、位置切換え可能とすることができる。
体毛処理ヘッド2には複数個の熱切断部15を設けることができる。例えば、せん断部14を前後に挟む状態で2個の熱切断部15を体毛処理ヘッド2の前後に配置することができる。メイン刃20は、図14に示す往復動式の内刃23の刃面に、切刃と交差する複数の細いワイヤーを配置する形態のメイン刃、つまり、外刃を省略したメイン刃であってもよい。発熱体56・57は、ニクロム線以外に、Fe、Cr、Alの合金からなるカンタル発熱線、Fe、Cr、Niの合金からなるクロタル発熱線、あるいはステンレス細管の内部に発熱線と絶縁材とが封入してある発熱体などを適用することができる。発熱体56・57は中心軸54の中心軸線と平行に配置する必要はなく、中心軸線に対して傾斜する状態で配置することができる。送風ファン16の吸込み口を導風路17に接続して、熱切断時に避けられない体毛が焼ける臭いを送風ファン16で吸引し、消臭処理したのち体毛処理装置の外へ吹出すことができる。