以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
(第1実施形態)
図1および図2は、本発明の第1実施形態に係る車両用内燃機関の制御装置を示しており、図1にその内燃機関の概略構成を示している。なお、本実施形態の内燃機関は、複数の気筒を有する火花点火方式の4サイクルエンジン、例えばガソリンエンジンである。
まず、構成について説明する。
図1に示すように、エンジン1(内燃機関)にはクラッチ機構2を介して変速機構であるトランスミッション3が連結されており、トランスミッション3には図示しないプロペラシャフトおよびディファレンシャルギヤ等を介して駆動車輪が駆動連結されている。そして、エンジン1の図示しないクランク軸から出力される回転動力が、クラッチ機構2を介してトランスミッション3に断続可能に伝達され、トランスミッション3により変速された動力が駆動車輪側に伝達されることで、図示しない車両の走行駆動がなされるようになっている。なお、クラッチ機構2およびトランスミッション3は、トルクコンバータ付きの自動変速機で構成されてもよいし、電動機と共にハイブリッドトランスアクスルとして構成されてもよい。
エンジン1は、複数の気筒11(同図1中に#1、#2、#3、#4で示す)が形成された機関本体10を備えている。詳細は図示しないが、機関本体10は、複数の気筒11に対応するシリンダボアが形成されたシリンダブロックと、そのシリンダブロックの上部側に設けられたシリンダヘッドおよびヘッドカバーと、シリンダブロックの下部側に設けられたクランクケースおよびオイルパンとによって構成されている。
この機関本体10は、いずれも詳細を図示しないが、複数の気筒11内に燃焼室12を形成する複数のピストンと、それら複数のピストンがコネクティングロッドを介して連結されたクランク軸と、を内蔵している。また、機関本体10は、燃焼室12の上部側で開閉する吸気弁および排気弁と、燃焼室12内の圧縮された混合ガスに火花点火する点火プラグ14と、吸気弁および排気弁をクランク軸の回転に伴うピストンのストローク位置に応じて開閉動作させる動弁機構と、を備えている。
また、機関本体10のシリンダヘッドの短手方向一方側には、複数の気筒11に対応する複数の吸気ポート(符号無し)が形成されており、それぞれの吸気ポートの内端側に吸気弁が設けられている。そして、各吸気弁の開弁時にその吸気弁に対応する燃焼室12内に空気および燃料の混合ガスを吸入(吸気)させることができるよう、機関本体10のシリンダヘッドには、複数の吸気ポートに対応する複数の吸気枝管16とこれら吸気枝管16が接続されたサージタンク18を有する吸気マニホールド20が装着されている。
吸気マニホールド20には上流側の吸気通路21を形成する吸気管22が接続されており、その吸気管22の最上流端側には吸入空気中の異物を除去可能なフィルタを有するエアクリーナ23が装着されている。また、吸気管22には、エアクリーナ23を通った空気の流量QAを計測するエアフローメータ24と、それより下流側で吸気管22内の吸気通路21の一部を絞ることができる電子スロットル弁25とが装着されている。
サージタンク18内の圧力PIはバキュームセンサ19によって検出される。また、電子スロットル弁25の開度はそのアクチュエータ25aによって可変制御されるようになっており、アクチュエータ25aは、車室内に設置されたアクセルペダル6の踏込み率であるアクセル開度ACCPに応じて電子スロットル弁25の開度位置を可変制御することができる。さらに、そのアクチュエータ25aには、電子スロットル弁25の開度位置に応じた電気信号THVを出力するスロットル開度センサ28が取り付けられている。
さらに、機関本体10のシリンダヘッドには、前記複数の吸気ポートおよび吸気枝管16に対応して複数のインジェクタ31(燃料噴射弁)が装着されている。これらのインジェクタ31は、デリバリーパイプ32を介して燃料ポンプ33に配管接続されており、燃料ポンプ33により図示しない燃料タンク内から汲み上げられた燃料、例えばガソリンを吸気ポート内に噴射する機能を有している。また、複数のインジェクタ31は、それぞれに対応する噴射駆動回路34(図2参照)によって、対応する気筒毎の所定の燃料噴射期間中に開弁駆動されるようになっている。なお、インジェクタ31は、筒内直接噴射用のインジェクタであってもよく、その場合、デリバリーパイプ32は高圧蓄圧器として機能し、燃料ポンプ33はフィードポンプとそのフィードポンプからの燃料を加圧する高圧加圧ポンプとによって構成される。
機関本体10のシリンダヘッドの短手方向他方側には、各排気弁の開弁時に対応する燃焼室12内から排気ガスを排出させることができるよう、複数の排気枝管42および集合管部44を有する排気マニホールド40が装着されている。
排気マニホールド40の集合管部44には、下流側の排気管46が接続されており、その排気管46には、エンジン1の排気ガス中に含まれる有害成分を浄化する触媒コンバータ50が装着されている。触媒コンバータ50は、公知の3元触媒を内蔵しており、燃焼室12内の空燃比が理論空燃比近傍の一定範囲内にあるとき、排気ガス中の有害成分であるNOx(窒素酸化物)、HC(炭化水素)およびCO(一酸化炭素)を、それぞれに高度に浄化することができるようになっている。また、排気マニホールド40の集合管部44あるいは触媒コンバータ50の近傍の排気管46には、触媒コンバータ50の上流側で排気空燃比を検出する公知の空燃比センサ48が装着されている。
一方、エンジン1には、図示しないクランク軸が所定角度(例えば10°)回転する毎にパルス信号CAを出力するクランク角センサ51と、エンジン1の冷却水温度に対応した電気信号TWを出力する水温センサ52とが取り付けられている。
また、エンジン1およびクラッチ機構2の結合部近傍には、スタータモータ61が取り付けられているとともに、フライホイール13(もしくはドライブプレート)が配置されている。フライホイール13は、中心側でクランク軸の出力端部に結合しており、外周側には図示しないリングギヤが装着されている。スタータモータ61は、フライホイール13の外周側のリングギヤに選択的に噛み合う軸方向可動のピニオンギヤを具備しており、エンジン1の始動時にバッテリ35をエネルギ源としてフライホイール13を回転作動し、エンジン1をクランキングする機能を有している。
エンジン1には、さらに、図示しないクランクプーリおよびベルトを介してクランク軸の先端部に連結された発電機構65が取り付けられている。この発電機構65は、例えばオルタネータ、レギュレータ、コントローラ等からなる。
以上のように構成されたエンジン1は、機関制御用の電子制御ユニットであるECU70によって電子制御されるようになっている。
ECU70は、図2に示すように、CPU(Central Processing Unit)71、ROM(Read Only Memory)72、RAM(Random Access Memory)73およびバックアップメモリ74を備えており、さらに、A/D変換器等を有する入力インターフェース回路75、ドライバ回路等が付設される出力インターフェース回路76、図示しない定電圧回路、他の車載ECUとの通信インターフェース回路77等を含んで構成されており、これらが双方向性バス78によって相互接続されている。
ECU70の入力インターフェース回路75には、前述のアクセル開度センサ7、ブレーキペダル8の操作/非操作を検出するブレーキスイッチ9、車室内に設置されたシフトレバーの操作位置を検出するシフト位置センサ27、バキュームセンサ19、エアフローメータ24、スロットル開度センサ28、空燃比センサ48、クランク角センサ51、水温センサ52、発電機構65の電圧検出部(符号なし)に加え、車両の走行速度を検出する車速センサ55、バッテリ35の放電電流量および充電電流量の積算値からバッテリ35の充電状態(State Of Charge)を算出するSOCコントローラ38等の各種センサが配線接続され、各種センサの出力信号がECU70に取り込まれるようになっている。さらに、ECU70には、スタータスイッチ56のオン/オフ信号(図1中にST_ON/OFFと記す)と、イグニッションスイッチ57のオン/オフ信号(図1中にIGN_ON/OFFと記す)とが入力されるようになっている。
また、ECU70の出力インターフェース回路76には、電子スロットル弁25のアクチュエータ25a、点火プラグ14を駆動する点火駆動回路15、インジェクタ31を駆動する噴射駆動回路34、前述のスタータモータ61および発電機構65が、それぞれ配線接続されている。そして、ECU70は、各種センサの出力信号をパラメータとして、点火駆動回路15、アクチュエータ25a、噴射駆動回路34、スタータモータ61あるいは発電機構65等に制御信号を出力する機能を有している。
ECU70のCPU71は、ROM72に記憶されたアプリケーションプログラムに従って動作し、各種センサの出力信号をパラメータとして燃料噴射制御、点火制御、スロットル制御等を実行するとともに、本発明にいう自動停止制御としてのアイドリングストップ制御を実行する機能を有している。
ECU70のROM72には、各インジェクタ31から噴射すべき燃料噴射量を決定するための燃料噴射量制御ルーチン、各インジェクタ31から燃料を噴射する時期を決定するための燃料噴射時期制御ルーチン、各気筒の点火時期を決定するための点火時期制御ルーチン、電子スロットル弁25の開度を決定するためのスロットル開度制御ルーチン等の各種アプリケーションプログラムと、各種の制御マップが格納されている。
ROM72に記憶される各種の制御マップとは、例えばエンジン1の運転状態と燃料噴射量との関係を示す燃料噴射量制御マップ、エンジン1の運転状態と燃料噴射時期との関係を示す燃料噴射時期制御マップ、エンジン1の運転状態と点火時期との関係を示す点火時期制御マップ、アクセルペダル6の踏込み量(アクセル開度)と電子スロットル弁25の目標開度(目標スロットル開度)との関係を示すスロットル開度制御マップ等である。
ROM72には、さらに、後述するアイドリングストップ作動の可否の判定処理(自動停止処理の実行の可否を判定する処理)や、その判定結果に応じたアイドリングストップ作動の選択的な実行を行うための制御プログラム(以下、アイドリングストップ制御プログラムという)等が格納されており、さらに、その制御プログラムで用いられる処理条件や判定条件等が記憶格納されている。このROM72に格納されるアイドリングストップ制御プログラムは、予め設定された自動停止条件が成立するか否か(成否)を所定時間毎に判定し、自動停止条件が成立すると、アイドリングストップ作動(自動再始動可能な自動停止処理)の実行を許可する機能を有している。
このアイドリングストップ制御プログラムでは、自動停止条件の成否を判断するに際し、まず、自動停止条件のうち車両の運転状態に関連する前提条件が成立するか否かが判定され、その前提条件が成立すれば、アイドリングストップの実行頻度に基づく自動停止条件の成否についての最終判断がなされるようになっている。ここにいう前提条件とは、車両がアイドリングストップ作動における自動停止を許容し得る状態にあるときの車両の運転状態に相当するものである(詳細は後述する)。また、アイドリングストップの実行頻度に基づく自動停止条件の成否についての最終判断は、少なくとも過去の1トリップを含む第1の運転期間におけるアイドリングストップ毎の車両の走行距離の平均値が予め設定された判定基準を上回っているか否かの判定と、現トリップおよび少なくとも直前の1トリップを含む通算トリップ(複数トリップ)におけるアイドリングストップ毎の車両の走行距離(所定速度以上での走行時間でもよい;以下、同様)の平均値が予め設定された判定基準を上回っているか否かの判定とを含むものである。そして、これら2つの判定で共に、アイドリングストップの実行頻度がそれぞれの運転期間に対応する判定閾値(後述する第1閾値αおよび第2閾値β)以下であり、アイドリングストップ毎の車両の走行距離の平均値が判定基準を上回っていることを条件に、エンジン1を自動停止させるアイドリングストップ作動が許可される。1トリップとは、ドライバからの運転開始要求操作入力によるエンジン1の始動時点から運転終了要求操作入力によるエンジン1の停止時点までの1運転期間である。また、現トリップとは、車両の運転開始を要求するドライバからのスイッチ操作入力によってエンジン1が最後に始動された時点から現在までの車両の運転期間(第2の運転期間)であり、通算トリップとは、現トリップまたは最後のトリップまでの過去の各トリップを通算した運転期間を意味する。
すなわち、このアイドリングストップ制御プログラムは、複数トリップにおける走行距離が判定基準以下であること(アイドリングストップ作動率が可否判定基準値を超えること)を条件に自動停止制御を禁止することによって、エンジン1のアイドリングストップ作動の頻度を許容範囲内に制限し、バッテリ35の充電不足による性能低下やスタータモータ61の劣化等を防止する機能を有している。なお、アイドリングストップ作動の可否の判定処理については後述する。
この制御プログラムでは、前述の自動停止条件と併せて、アイドリングストップ作動における自動再始動が許容される条件である自動再始動条件の成否も判断されるようになっている。これら自動停止条件および自動再始動条件は、ROM72およびバックアップメモリ74のうちいずれか(以下、ROM72等という)に予め記憶格納されている。
前述の前提条件となる自動停止条件は、例えば、車速センサ55の検出値VSP(車速(km/h)またはそれに代わる出力回転速度(rpm))が0である、シフト位置センサ27の検出値SHTが"ニュートラル位置"を示す信号である、クランク角センサ51の出力信号CAに基づいて算出されたエンジン回転数NE[rpm]が所定回転数以下である、アクセル開度センサ7の検出アクセル開度ACCP(アクセルペダル6の踏込み率)がゼロである等のうち少なくとも1つを含んでいる。また、自動停止条件は、所定車速以下の低速域でアクセル開度ゼロ(スロットル全閉)であってブレーキスイッチ9の検出信号BRKがON(ブレーキ操作有り)の状態となり、車両停止に至る可能性が大である場合にも成立するように設定されてもよい。
自動再始動条件は、アイドリングストップによる自動停止がなされた状態(以下、自動停止状態という)下でドライバによりブレーキペダル8の踏込み解除操作がなされたこと、自動停止状態下でアクセルペダル6の踏込み操作がなされたこと、シフトレバーのドライブレンジへの操作がなされたこと、バッテリ充電制御システムやエアコン等の車載機器の制御システムから再始動要求が発生したこと、のうち少なくとも1つを含む条件である。この自動再始動条件は、ブレーキ解除方向へのブレーキペダル8の踏込み量やマスターシリンダ液圧の変化速度(単位時間当たりの変化量)が所定の判定閾値未満であるときにも成立する条件とすることもできる。
ECU70のRAM73は、各センサからの出力信号やCPU71との間でデータの授受を行い、CPU71の演算結果等を格納することができるようになっている。ここにいうCPU71の演算結果とは、例えばクランク角センサ51の出力信号に基づいて算出される機関回転速度であり、各センサからの出力信号やCPU71の演算結果等はクランク角センサ51がパルス信号を出力する度に最新のデータに更新されるようになっている。
バックアップメモリ74は、エンジン1の停止後もデータを保持するようバックアップ電源によってバックアップされたRAMであり、不揮発性メモリで構成されてもよい。
CPU71は、このバックアップメモリ74に、例えば新車時から現時点に至るまでの車両の複数トリップにおける通算の実走行距離Mpsや、新車時から現時点に至るまでの複数トリップにおける通算の運転時間Tpsを公知の方法(例えば、特許文献1に記載の方法)で記憶させるようになっている。
また、CPU71は、現トリップにおける車両の総走行時間と、現トリップにおける総停止時間または総停止回数と、現トリップにおけるエンジン1の総運転時間またはエンジン1の運転を伴う車両の総走行時間と、現トリップにおけるエンジン1の総停止時間と、現トリップにおけるエンジン1の総停止回数であるアイドリングストップ(自動停止制御)の実行回数あるいは現トリップにおけるエンジン1の自動再始動の実行回数と、過去の各トリップにおけるアイドリングストップの実行回数または通算トリップにおけるアイドリングストップの実行回数等を、バックアップメモリ74の対応するカウント値記憶領域に記憶させるようになっている。そして、バックアップメモリ74に記憶格納されたこれらの記憶情報は、CPU71によって所定時間毎に更新されるようになっている。
CPU71は、また、少なくとも現トリップにおけるエンジン1の総運転時間またはエンジン1の運転を伴う車両の総走行時間と、現トリップにおけるアイドリングストップの実行回数またはそれに代わるエンジン1の総停止時間とを基に、現トリップにおけるアイドリングストップの作動率(自動停止処理の実行頻度)を算出する。さらに、CPU71は、現トリップにおけるアイドリングストップの作動率の算出結果と、過去の各トリップ(少なくとも1トリップ)についてのアイドリングストップの作動率の算出結果とを基に、現トリップおよび過去の少なくとも1トリップを含む複数トリップにおけるアイドリングストップの作動率とを算出して、それらの算出結果をバックアップメモリ74の対応する記憶領域に記憶させるようになっている。
なお、この場合、アイドリングストップの作動率は、アイドリングストップの1回の実行毎における直前(前回のアイドリングストップの実行後)のエンジン1の運転時間やエンジン1の運転を伴う車両走行時間の長さに対応する頻度値、もしくは、ドライバによる始動操作(イグニッションスイッチON)毎の自動再始動の回数の多さに対応する頻度値として算出されることになる。
このアイドリングストップの作動率は、現トリップにおけるアイドリングストップの作動回数を現トリップにおける車両の停止回数で除した値に対応する頻度値、または、現トリップにおけるエンジン1の総停止時間を現トリップにおける車両の総停止時間で除した値に対応する頻度値であってもよい。
また、CPU71は、現トリップにおけるエンジン1の総運転時間またはエンジン1の運転を伴う車両の総走行時間に代えて、現トリップにおけるバッテリ35の総充電量を算出するとともに、現トリップにおけるエンジン1の総停止回数や総停止時間に代えて、現トリップにおけるバッテリ35の総放電量を算出し、これらの算出値を基にアイドリングストップの作動率を算出してもよい。この場合、アイドリングストップの作動率は、現トリップにおけるバッテリ35の総放電量を現トリップにおけるバッテリ35の総充電量で除した値に対応(相当するか比例する場合を含む)する頻度値となる。現トリップにおけるバッテリ35の総放電量に代えて、自動再始動の回数とその自動再始動に要する平均電力の積を用いるようなことも考えられる。
また、バックアップメモリ74には、現トリップにおけるアイドリングストップ(自動停止制御)の実行回数をカウント値Cとして計数し記憶する第1のエコランカウンタ記憶領域と、過去の各トリップのカウント値Cを記憶する第2のエコランカウンタ記憶領域とが設定されている。また、バックアップメモリ74には、現トリップにおけるアイドリングストップ作動率(自動停止の実行頻度)を記憶する第1作動率記憶領域と、過去の各トリップのアイドリングストップ作動率をトリップ数(トリップ順序)と対応付けて記憶する第2作動率記憶領域とが設定されている。
前述のように、ECU70は、予め設定された自動停止条件の成立を条件に、車両に搭載されたエンジン1を自動再始動可能に自動停止させる自動停止処理をアイドリングストップ作動の一部として実行するに際して、車両の運転状態に関連する前提条件が成立するか否かを判定した上で、その前提条件の成立時に、自動停止処理の実行頻度が許容範囲内か否かによって自動停止条件の成否を最終判断し、アイドリングストップ作動の実行の可否を決定する処理を実行する。
この処理を実行可能にするため、ROM72等には、自動停止処理の実行頻度が許容範囲内か否かを車両の過去の少なくとも1トリップを含む第1の運転期間、例えば現トリップと直前の1トリップとを含む通算トリップについて判定可能な第1閾値α(第1の実行頻度閾値)と、自動停止処理の実行頻度が許容範囲内か否かを車両の現トリップである第2の運転期間について判定可能な第2閾値β(第2の実行頻度閾値)とが予め記憶格納されている。ここで、第1閾値αは、例えば40%であり、第2閾値βより小さい値に設定されている。
そして、ECU70は、ROM72に格納されたアイドリングストップ制御プログラムに従って、複数トリップにおけるアイドリングストップの作動率(複数の運転期間中における自動停止処理の実行頻度)が第1閾値α以下であるか否かの判定と、現トリップにおけるアイドリングストップの作動率(現運転期間中における自動停止処理の実行頻度)が第2閾値β以下であるか否かの判定とを実行し、それらの判定の結果に基づいて、自動停止処理の実行の要否を決定する機能を有している。
具体的には、ECU70は、車両の複数トリップにおけるアイドリングストップの作動率が第1閾値α以下であることを条件に、エンジン1の自動停止処理を実行するアイドリングストップの実行を許可し、車両の複数トリップにおけるアイドリングストップの作動率が第1閾値α以下でないときには、自動停止条件が成立しないと判定してアイドリングストップによるエンジン1の自動停止を禁止するようになっている。
また、ECU70は、車両の複数トリップにおけるアイドリングストップの作動率が第1閾値α以下であるとともに、車両の現トリップにおけるアイドリングストップの作動率が第2閾値β(第1閾値αより大きい閾値)以下となる場合に、エンジン1の自動停止処理の実行を許可するようになっている。
より具体的には、ECU70は、複数トリップにおけるアイドリングストップの作動率が第1閾値α以下であることを条件に、現トリップにおけるアイドリングストップの作動率が第2閾値β以下であるか否かを判定して、その判定結果がYES(肯定)であるとき、今回のアイドリングストップの作動を必要なものとして許可するようになっている。
ここで、第2閾値βは、現トリップにおける車両の停車率が予め設定された基準停車率、例えば50%を超える高停車率となるときに、現トリップにおけるアイドリングストップの作動率を基準停車率に等しい実行頻度値以下に制限する値に設定されている。また、現トリップにおける車両の停車率とは、現トリップにおける車両の総走行時間に対する現トリップにおける総停車時間の比に相当している。そして、第2の実行頻度閾値βは、基準停車率50%に対応する閾値50%に設定されている。
この第2閾値βは、現トリップにおけるエンジン1の始動用のバッテリ35に対する総充電量が、現トリップにおける自動再始動によるバッテリ35の総放電量と等しいかそれ以上となるように設定されている。
なお、以下の説明では、アイドリングストップの作動率、すなわち、アイドリングストップ作動による自動停止制御の実行頻度は、車両の運転期間(複数トリップあるいは現トリップのうちいずれか一方の運転期間)中におけるエンジン1の総停止時間とその運転期間中におけるエンジン1の総運転時間との比として、あるいは、その運転期間中におけるエンジン1の総停止時間とその運転期間中における車両の総走行時間の比として算出されるものとして説明するが、必ずしも時間比に限定されるものではない。例えば、トリップ中のアイドリングストップ回数の比率(アイドリングストップ回数/総停止回数)によって算出することが考えられる。また、その比率に一定の係数をかけてバッテリの充放電量の比に近い比率とするようなことも考えられる。
次に、作用について説明する。
上述のように構成された本実施形態の装置では、ECU70が、ROM72に格納されたアイドリングストップ制御プログラムに従って図3に示すような自動停止制御ルーチンを所定時間毎に切り返し実行する。
同図に示すように、まず、イグニッションスイッチ57のオン/オフ信号が入力され、イグニッションスイッチ57がオン状態にあるか否かが判別される(ステップS11)。
次いで、バックアップメモリ74に記憶格納され所定時間毎に更新される現トリップおよびそれを含む複数トリップ(通算トリップ)についての運転時間やアイドリングストップ実行回数等の記憶値が読み込まれるとともに(ステップS12)、各種センサ情報に基づいて車両の運転状態が検出される(ステップS13)。
次いで、ROM72等に記憶格納された自動停止の前提条件が成立するか否かが判定され、自動停止の前提条件が成立しなければ、今回の処理を終了する(ステップS14)。
一方、ROM72等に記憶格納された自動停止の前提条件が成立すれば、次いで、図4に示すようなアイドリングストップの実行頻度に基づくアイドリングストップの実行可否判定の処理が実行される。
図4に示すように、この実行可否判定処理では、まず、複数トリップにおけるアイドリングストップの作動率が第1閾値α、例えば40%以下であるか否かが判定される(ステップS21)。
このとき、複数トリップにおけるアイドリングストップの作動率が第1閾値α以下であれば(ステップS21でYESの場合)、次いで、現トリップにおけるアイドリングストップの作動率が第2閾値β以下であるか否かが判定される(ステップS22)。そして、その判定結果がYESとなれば、すなわち、現トリップにおけるアイドリングストップの作動率が第2閾値β以下であれば、自動停止条件が最終的に成立と判断され、その成立に対して、アイドリングストップの実行を必要なものとして許可する作動判定がなされる(ステップS23)。
一方、複数トリップにおけるアイドリングストップの作動率が第1閾値αを超える場合(ステップS21でNOの場合)や現トリップにおけるアイドリングストップの作動率が第2閾値βを超える場合(ステップS22でNOの場合)には、自動停止条件が最終的に不成立と判断され、アイドリングストップの実行を禁止する禁止判定がなされる(ステップS24)。
このような判定処理が終了すると、図3の処理に戻り、禁止判定がなされているか作動判定がなされているかが判別される(ステップS16)。
そして、禁止判定がなされている場合(ステップS16でYESの場合)には、アイドリングストップの実行が禁止され、アイドリングストップが実施されないまま今回の処理が終了する。
一方、作動判定がなされている場合(ステップS16でNOの場合)には、アイドリングストップ作動によるエンジン1の自動停止および自動再始動が実行された後、今回の処理が終了する。
このように、本実施形態においては、自動停止処理の実行頻度が許容範囲内か否かを車両の複数の運転期間(複数トリップ)について判定可能な第1閾値αと、その第1閾値αより大きい頻度値であり、車両の現運転期間(現トリップ)について判定可能な第2閾値βとに基づいて、自動停止処理の実行を許容するか禁止するかが決定される。
したがって、複数トリップにおける自動停止処理の実行頻度をバッテリ35等の補機類の経時劣化等による性能低下を十分に抑制できる許容範囲内に抑えつつ、複数トリップにおけるアイドリングストップ作動率(自動停止処理の実行頻度)に第1閾値αに対する余裕があるような場合には、一時的に現トリップにおけるアイドリングストップ作動率を第2閾値βで制限されるまで高めることができる。これにより、複数トリップにおける実行頻度の判定のみに応じてアイドリングストップ作動の要否を決定する場合よりもアイドリングストップの実行頻度を高めることができ、1トリップにおける実行頻度のみに応じてアイドリングストップ作動の要否を決定する場合よりも、過度の自動停止によるバッテリ35等の補機類の品質低下を抑制しつつ作動率のむらによるユーザの不満を抑えることができる。
したがって、例えばバッテリ35の経年劣化がある程度進んでいても、その悪化を抑えつつ、アイドリングストップ作動頻度を高めて、燃費を改善できる。
また、複数トリップにおける自動停止処理の実行頻度が第1閾値α以下である場合にのみ現トリップにおけるアイドリングストップの実行頻度を算出することができ、判定処理の負荷を軽減できる。
さらに、本実施形態では、車両の複数のトリップにおけるアイドリングストップ作動率が第1閾値α以下であるとともに、現トリップ中におけるアイドリングストップ作動率が第2閾値β以下である場合に、アイドリングストップ作動による自動停止処理を実行するので、バッテリ35等の補機類の性能低下を抑えつつ、アイドリングストップ作動による燃費低減効果も確保できることになる。
加えて、本実施形態では、車両の複数のトリップにおけるアイドリングストップ作動率が第1閾値α以下であることを条件に、車両の現トリップにおけるアイドリングストップ作動率が第2閾値β以下となる範囲内で、アイドリングストップ作動による自動停止処理の実行を許容する。したがって、現トリップにおけるアイドリングストップ作動率を極力停車率に応じて変化させつつその値が過度に高くなることを第2閾値βによって抑制できる。しかも、第1閾値αによって複数のトリップにおけるアイドリングストップ作動による自動停止処理の実行頻度を適度に抑えることができる。したがって、アイドリングストップ作動による自動停止処理の実行頻度を車両使用者に不満を抱かせない程度に高めつつ、過度のアイドリングストップ作動によるバッテリ35等の補機類の寿命低下を有効に抑制することができる。
また、本実施形態では、複数トリップにおけるアイドリングストップ作動率が第1閾値α以下でない場合には、現トリップにおけるアイドリングストップ作動率が第2閾値β以下であるか否かを判定する必要がなく、判定処理の負荷を軽減できる。
しかも、車両の基準停車率を超える高停車率となるときに、現トリップにおけるアイドリングストップ作動率が基準停車率に等しい程度の第2閾値βによって制限されるので、現運転期間中の停車率が高停車率となっても、現運転期間中のアイドリングストップ作動率が過度に高まることを抑制し、アイドリングストップ作動率にむらが生じるのを有効に抑制できる。また、アイドリングストップ作動率は車両の基準停車率である50%までの頻度値として制限されるので、高停車率時にのみアイドリングストップの作動率が制限されることになり、自動停止処理の実行頻度の不足感によるユーザの不満も抑えられる。
さらに、第2閾値βは、現トリップにおけるエンジン1の始動用のバッテリに対する総充電量が、現トリップにおける自動再始動によるバッテリの総放電量と等しいかそれ以上となるように設定されるので、エンジン1の運転中におけるバッテリ充電量に対し自動再始動のための放電量が一定比率を超えてしまうことがなく、エンジン1の再始動の度にバッテリが深い放電を繰り返したりそれによってバッテリ寿命が低下してしまったりすることを防止できる。
また、本実施形態では、複数トリップの運転期間が、車両の現運転期間および過去の通算の運転期間を含むので、バッテリ35等の補機類の耐用寿命を考慮したアイドリングストップ作動率の制御が可能となり、バッテリ35等の補機類が想定された耐用年数内に寿命に達してしまうようなことを確実に防止できる。
ここで、図5ないし図8を用いて、現トリップと複数トリップにおけるアイドリングストップ作動率を基に、アイドリングストップ作動の要否を判定することの利点について検討する。
図5は、第2閾値を用いた複数トリップにおけるアイドリングストップ作動率の制限によってアイドリングストップ実行頻度がバッテリ35等の補機の性能低下を抑え得る許容範囲内か否かを判定することの利点を説明するための一例を表で示す説明図である。
この図5は、車両の(n−1)トリップ目から(n+4)トリップ目までの6トリップの運転期間における各トリップでのアイドリングストップ作動率を上段に示し、同6トリップの運転期間における通算トリップでのアイドリングストップ作動率を下段に示す表となっている。なお、ここでのアイドリングストップ作動率(自動停止処理の実行頻度)は、例えば各トリップまたは複数トリップの運転期間中におけるエンジン1の総停止時間を同運転期間中におけるエンジン1の総運転時間で除したものをパーセント表示したものである。
同図において、各トリップおよび通算トリップのそれぞれにおいてアイドリングストップ作動を許容する許容範囲の上限値を閾値40%とし、それを超える作動率でのアイドリングストップ作動を禁止するとすれば、(n−1)トリップ目での1トリップおよび複数トリップでのアイドリングストップ作動率は共に30%であるから、アイドリングストップ作動は許可されるが、nトリップ目は1トリップでのアイドリングストップ作動率が50%であるから、アイドリングストップ作動が禁止されることになる。
しかし、複数トリップのアイドリングストップ作動率についての許容範囲の上限値を閾値40%とすると、nトリップ目におけるアイドリングストップ作動率が50%に達するまで一時的にアイドリングストップ作動率の上昇を許容できることになる。すなわち、1トリップにおけるアイドリングストップ作動率の許容範囲を規定する閾値に代えて、複数トリップにおけるアイドリングストップ作動率の許容範囲を規定する閾値を用いるだけでも、バッテリ35の経時劣化等を抑え得る程度に平均のアイドリングストップ作動率を制限しながら、停車率が高いとき等に一時的に1トリップにおけるアイドリングストップ作動率を高めることができ、アイドリングストップ作動率の不足によるユーザの不満を抑えることができる。
同図に示す場合、複数トリップにおけるアイドリングストップ作動率の許容範囲の上限を40%とすれば、(n−1)トリップ目から(n+4)トリップ目までの6トリップのすべてにおいてアイドリングストップ作動が可能となり、燃費低減効果の確保とアイドリングストップ作動率の不足によるユーザの不満解消とを両立させることができる。
次に、複数トリップにおけるアイドリングストップ作動率に対する許容範囲(禁止範囲でもよい)の判定閾値である第1閾値αと、1トリップにおけるアイドリングストップ作動率に対する許容範囲の判定閾値である第2閾値βとを併用することを利点について、図6および図7を用いて検討する。
図6は、車両の1トリップ目から6トリップ目までの各運転期間についての車両の停車率、各トリップにおけるアイドリングストップ作動率および複数トリップにおけるアイドリングストップ作動率の変化を示している。
この図6に示す例では、1トリップ目から3トリップ目までは停車率が低く、各トリップにおけるアイドリングストップ作動率および複数トリップにおけるアイドリングストップ作動率共に40%以下であるが、4トリップ目以降の停車率が70%まで急上昇している。この場合、4トリップ目では、未だ複数トリップにおけるアイドリングストップ作動率は40%以内になるため、この4トリップ目(1トリップ)におけるアイドリングストップ作動率に制限が無ければ、その作動率は停車率70%まで上昇することになる。しかし、この4トリップ目で複数トリップにおけるアイドリングストップ作動率が40%に達するため、次の5トリップ目、更に次の6トリップ目における停車率が70%のままとなるような走行状態(渋滞等)が続いていても、アイドリングストップ作動率は複数トリップについてバッテリ35等の性能低下を抑え得る第1閾値40%を超えない許容範囲内に制限されることになり、5トリップ目、6トリップ目の各1トリップにおけるアイドリングストップ作動率は40%に制限されることになる。したがって、例えば渋滞した道路を休憩を入れながら長時間走行するような場合に、高停車率であるもののアイドリングストップ作動率がその停車率から大きく乖離した状態(図6中では30%乖離した状態)が続き、アイドリングストップ作動率の不足に対するドライバの不満を招く可能性や故障との誤認を招く可能性が生じてしまう。
これに対し、図7に示すように、1トリップにおけるアイドリングストップ作動率に第2閾値βによる制限が加わる場合には、4トリップ目以降の停車率が70%まで上昇すると、4トリップ目以降の各トリップでのアイドリングストップ作動率が第2閾値βにより制限されるまで上昇することになり、例えば50%に達し得ることになる。したがって、図6に示した場合に比べて、4トリップ目以降でアイドリングストップ作動が長時間禁止されることが無くなり、アイドリングストップ作動率の不足に対するドライバの不満を招いたり故障との誤認を招いたりし得るという問題が解消されることになる。
また、図8に示すように、停車率が低いトリップと停車率が高いトリップが交互に繰り返されるような場合には、複数トリップにおけるアイドリングストップ作動率に対する許容範囲(禁止範囲でもよい)を第1閾値αのみで制限するだけでは、同図中に実線および二点差線で示すように、停車率が高いトリップでのアイドリングストップ作動率が十分でなく、高停車率に対する十分なアイドリングストップ作動ができない。しかし、1トリップにおけるアイドリングストップ作動率についての第2閾値βを併用することで、高停車率時にも十分なアイドリングストップ作動ができることとなる。したがって、この場合、第1閾値αおよび第2閾値βを併用することで、全トリップにおいて十分なアイドリングストップ作動率が得られることになる。また、停車率が30%と低い1トリップ目、3トリップ目および5トリップ目においては、アイドリングストップ作動率が30%であるから、車両の停車時に確実にアイドリングストップ作動を実行させることができ、停車率が50%とある程度高い2トリップ目、4トリップ目および6トリップ目においては、アイドリングストップ作動率が基準停車率50%に対し50%であるから、やはり、車両の停車時に確実にアイドリングストップ作動を実行させることができることになる。
このように、本実施形態においては、複数トリップにおけるアイドリングストップ作動率をバッテリ35等の補機類の性能低下を抑え得る許容範囲内に制限しつつ、複数トリップにおける実行頻度に第1閾値αに対する余裕があるような場合には、一時的に現トリップにおけるアイドリングストップ作動率を第2閾値βで制限されるまで高めることができる。したがって、複数トリップにおける実行頻度判定のみでアイドリングストップ作動の要否を決定する場合よりもアイドリングストップ作動率を高めることができ、現トリップにおけるアイドリングストップ作動率のみに応じて自動停止処理の要否を決定する場合よりも、過度の自動停止処理による補機類の品質低下を抑制しつつアイドリングストップ作動率のむらによるユーザの不満を抑えることができる。その結果、アイドリングストップ車の商品性を向上させることができる。
その結果、アイドリングストップ作動による自動停止処理の実行頻度を車両使用者に不満を抱かせない程度に高めつつ、過度の自動停止処理によるバッテリ35等の補機類の性能低下を有効に抑制することのできる車両用内燃機関の制御装置を提供することができるものである。
なお、上述の第1実施形態では、図4に示したように、複数トリップにおけるアイドリングストップ作動率が第1閾値α以下であるか否かを判定し、その判定結果がYESである場合に、現トリップ(1トリップ)におけるアイドリングストップ作動率が第2閾値β以下であるか否かを判定していたが、図9に示すように、両判定ステップの順序が逆であってもよい。
この図9に示す実行可否判定処理では、まず、現トリップにおけるアイドリングストップの作動率が第2閾値β、例えば50%以下であるか否かが判定される(ステップS31)。そして、その判定結果がYESとなれば、次いで、複数トリップにおけるアイドリングストップの作動率が第1閾値α、例えば40%以下であるか否かが判定される(ステップS21)。このとき、複数トリップにおけるアイドリングストップの作動率が第1閾値α以下であれば(ステップS21でYESの場合)、今回の自動停止条件の成立に対して、アイドリングストップの実行を必要なものとして許容する作動判定がなされる(ステップS23)。一方、現トリップにおけるアイドリングストップの作動率が第2閾値βを超える場合、および、複数トリップにおけるアイドリングストップの作動率が第1閾値αを超える場合には、それぞれアイドリングストップの実行を禁止する禁止判定がなされる(ステップS24)。
この場合、複数トリップにおけるアイドリングストップ作動率(複数の運転期間における自動停止の実行頻度)を計算する際に、例えば過去の通算の運転期間での実行頻度をバックアップメモリに記憶しておき、その記憶した通算期間での実行頻度を、現運転期間の実行頻度と、通算期間および現運転期間の時間比とに応じて増減変更して、過去の通算の運転期間の実行頻度を更新するようなことが考えられる。
(第2実施形態)
図10は、本発明の第2実施形態に係る車両用内燃機関の制御装置で実行される実行可否判定処理の概略手順を示すフローチャートである。なお、以下に説明する各実施形態においては、そのハード構成自体は図1および図2に示した第1実施形態と同様であり、そのアイドリングストップ制御の主な流れも図3に示した第1実施形態の場合と同様である。
したがって、以下、第1実施形態と相違する実行可否判定処理についてのみ説明する。また、第1実施形態中の処理ステップと同様の場合には、その処理ステップの符号を用いて説明する。
本実施形態では、ROM72等に記憶格納された自動停止条件が成立すれば、次いで、図10に示すようなアイドリングストップの実行頻度に基づくアイドリングストップの実行可否判定の処理が実行される。
図10に示すように、この実行可否判定処理では、まず、複数トリップにおけるアイドリングストップの作動率が、複数トリップ(例えば通算トリップ)におけるアイドリングストップ作動率が第1閾値αに対して十分な余裕を有するか否かの判定閾値である第3閾値γ(第3の実行頻度閾値)、例えば33%(すなわち、γ<α)と比較され、複数トリップにおけるアイドリングストップの作動率が、第3閾値γ以下であるか否かが判定される(ステップS41)。
このとき、複数トリップにおけるアイドリングストップの作動率が第3閾値γ以下であれば(ステップS41でYESの場合)、複数トリップにおけるアイドリングストップ作動率が第1閾値αに対して十分な余裕を有することになるので、1トリップにおけるアイドリングストップ作動率に制限をかけるまでも無く、今回の自動停止条件の成立に対して、アイドリングストップの実行を必要なものとして許容する作動判定がなされる(ステップS23)。
一方、このとき、複数トリップにおけるアイドリングストップの作動率が第3閾値γ以下でなければ(ステップS41でNOの場合)、それ以降は、第1実施形態における実行可否判定と同様なステップS21〜S24の処理が実行される。
すなわち、上述のように、まず、複数トリップにおけるアイドリングストップの作動率が第1閾値α、例えば40%以下であるか否かが判定され(ステップS21)、このとき、複数トリップにおけるアイドリングストップの作動率が第1閾値α以下であれば(ステップS21でYESの場合)、次いで、現トリップにおけるアイドリングストップの作動率が第2閾値β以下であるか否かが判定される(ステップS22)。そして、その判定結果がYESとなれば、すなわち、現トリップにおけるアイドリングストップの作動率が第2閾値β以下であれば、今回の自動停止条件の成立に対して、アイドリングストップの作動判定がなされる(ステップS23)。
一方、複数トリップにおけるアイドリングストップの作動率が第1閾値αを超える場合や、現トリップにおけるアイドリングストップの作動率が第2閾値βを超える場合には、アイドリングストップの実行を禁止する禁止判定がなされる(ステップS24)。
このように、本実施形態においては、自動停止処理の実行頻度が許容範囲内か否かを車両の複数の運転期間(複数トリップ)について判定可能な第1閾値αと、その第1閾値αより大きい頻度値であり、車両の現運転期間(現トリップ)について判定可能な第2閾値βと、その第1閾値αより小さい頻度値であり、車両の複数の運転期間(複数トリップ)について判定可能な第3閾値γとに基づいて、自動停止処理の実行を許容するか禁止するかが決定される。
したがって、複数トリップにおける自動停止処理の実行頻度をバッテリ35等の補機類の経時劣化等による性能低下を十分に抑制できる許容範囲内に抑えつつ、複数トリップにおけるアイドリングストップ作動率(自動停止処理の実行頻度)に第1閾値αに対する十分な余裕があり、バッテリ35の性能低下にほとんど影響が無いような場合には、一時的に現トリップにおけるアイドリングストップ作動率を第2閾値βを超える程度にまで十分に高めることができるし、処理負荷も軽減できる。
(第3実施形態)
図11は、本発明の第3実施形態に係る車両用内燃機関の制御装置で実行される実行可否判定処理の概略手順を示すフローチャートである。
本実施形態では、ROM72等に記憶格納された自動停止条件が成立すれば、次いで、図11に示すようなアイドリングストップの実行頻度に基づくアイドリングストップの実行可否判定の処理が実行される。
図11に示すように、この実行可否判定処理では、まず、現トリップにおけるアイドリングストップの作動率が、現トリップ(1トリップ)におけるアイドリングストップ作動率の許容範囲を規定する第2閾値βに対して十分な余裕を有するか否かの判定閾値である第4閾値δ(第4の実行頻度閾値)、例えば38%(すなわち、δ<β)と比較され、現トリップにおけるアイドリングストップの作動率が、第4閾値δ以下であるか否かが判定される(ステップS51)。
このとき、複数トリップにおけるアイドリングストップの作動率が第4閾値δ以下であれば(ステップS51でYESの場合)、現トリップにおけるアイドリングストップ作動率が第2閾値βに対して十分な余裕を有し、現トリップではほとんどエコラン走行していないことになるので、バッテリ35等の補機類の性能に若干の影響が懸念されたとしても、今回の複数トリップにおけるアイドリングストップ作動率に制限をかけずに、今回の自動停止条件の成立に対して、アイドリングストップの実行を必要なものとして許容する作動判定がなされる(ステップS23)。
一方、このとき、複数トリップにおけるアイドリングストップの作動率が第4閾値δ以下でなければ(ステップS51でNOの場合)、それ以降は、第1実施形態における実行可否判定と同様なステップS21〜S24の処理が実行される。
このように、本実施形態においては、自動停止処理の実行頻度が許容範囲内か否かを車両の複数の運転期間(複数トリップ)について判定可能な第1閾値αと、その第1閾値αより大きい頻度値であり、車両の現運転期間(現トリップ)について判定可能な第2閾値βと、その第2閾値βより小さい頻度値であり、車両の現運転期間(1トリップ)について判定可能な第4閾値δとに基づいて、自動停止処理の実行を許容するか禁止するかが決定される。
したがって、上述の第1実施形態と同様な効果を期待できるとともに、現トリップにおけるアイドリングストップ作動率に第2閾値βに対する十分な余裕がある場合には、現トリップでのアイドリングストップ作動率を高めて燃費低減効果を確保するとともに、処理を一部省略してアイドリングストップ作動の開始時期を早めるとともにECU70の処理負荷を軽減することができ、しかも、第4閾値δを適当に小さい値に設定しておくことによりエンジン1が再始動不能に陥るリスクも有効に回避できる。
(第4実施形態)
図12は、本発明の第4実施形態に係る車両用内燃機関の制御装置で実行される実行可否判定処理の概略手順を示すフローチャートである。
本実施形態では、ROM72等に記憶格納された自動停止条件が成立すれば、次いで、図12に示すようなアイドリングストップの実行頻度に基づくアイドリングストップの実行可否判定の処理が実行される。
図12に示すように、この実行可否判定処理では、まず、現トリップにおけるアイドリングストップの作動率が、第1閾値α、例えば40%と比較され、現トリップにおけるアイドリングストップの作動率が第1閾値α以下であるか否かが判定される(ステップS61)。
このとき、現トリップにおけるアイドリングストップの作動率が第1閾値α以下であれば(ステップS61でYESの場合)、現トリップにおけるアイドリングストップ作動率が第2閾値βに対して十分な余裕を有することになるので、今回の複数トリップにおけるアイドリングストップ作動率に制限をかけるまでも無く、今回の自動停止条件の成立に対して、アイドリングストップの実行を必要なものとして許容する作動判定がなされる(ステップS23)。
一方、このとき、現トリップにおけるアイドリングストップの作動率が第1閾値α以下でなければ(ステップS61でNOの場合)、次いで、現トリップにおけるアイドリングストップの作動率が第2閾値β、例えば45%以下であるか否かが判定され(ステップS22)、現トリップにおけるアイドリングストップの作動率が第2閾値β以下であれば、アイドリングストップの作動判定がなされる(ステップS23)。
一方、現トリップにおけるアイドリングストップの作動率が第1閾値αを超える場合、あるいは、現トリップにおけるアイドリングストップの作動率が第2閾値βを超える場合には、アイドリングストップの実行を禁止する禁止判定がなされる(ステップS24)。
このように、本実施形態においては、自動停止処理の実行頻度が許容範囲内か否かを車両の複数の運転期間(複数トリップ)について判定可能な第1閾値αと、その第1閾値αより大きい頻度値であり、車両の現運転期間(現トリップ)について判定可能な第2閾値βとに基づいて、自動停止処理の実行を許容するか禁止するかが決定される。
したがって、上述の第1実施形態と同様な効果を期待できるとともに、現トリップにおけるアイドリングストップ作動率に第1閾値αに対する余裕があり第2閾値βに対する十分な余裕がある場合には、不要な禁止処理を抑制してアイドリングストップ作動率を高めることにより燃費低減効果を確保するとともに、不要な判定処理を省略して、ECU70のような車載ハードウェア資源の処理負荷を軽減できる。
なお、上述の各実施形態においては、第1の運転期間としての複数トリップは、車両の1トリップ目からの通算のトリップであるものとしたが、必ずしも通算トリップに限定されるものではなく、例えば所定トリップ数を超える過去の多数のトリップを予め設定した方法で間引く等して、通算トリップ(初期からの全運転期間)におけるアイドリングストップ作動率の算出結果と同等の算出結果が得られる程度の多数トリップ(多数の運転期間)であるが通算トリップ数よりは少ないトリップ数に間引かれた複数の運転期間であってもよい。この場合、現トリップから遡って所定トリップ数まで1トリップ毎のアイドリングストップ作動率の算出結果をバックアップメモリ74に記憶し、それ以上過去に遡る複数トリップについてはアイドリングストップ作動率の平均値を記憶するといったことも考えられる。また、本発明にいう第1の運転期間は、過去の特定の1トリップとすることも考えられる。ここにいう過去の特定の1トリップは、過去の平均的な運転期間に近い期間として選択されたり、運転者のアイドリングストップ作動率に対する増減要求操作入力に応じて選択されたりしてもよいし、一定期間ごとにサンプリングされた複数の運転期間の平均の運転期間等であってもよい。勿論、第1の運転期間は、そのような過去の1トリップおよび現トリップを含む複数トリップとしたり、現トリップを含まない過去の複数のトリップとしたりすることも考えられる。そして、いずれの場合にも、上述の実施形態から明らかなように、第1の実行頻度閾値に基づく第1の運転期間中における自動停止処理の実行頻度判定と第2の実行頻度閾値に基づく第2の運転期間中における自動停止処理の実行頻度判定とは、その判定順序が逆転し得る。第1の運転期間を通算トリップとする場合に、現運転期間を含めるか含めないかは、任意である。
さらに、上述の実施形態では、アイドリングストップ作動率の許容範囲または禁止範囲を判定するための第1閾値αや第2閾値βを固定値としていたが、各種センサ情報や車両の使用時間(経過年数等)等を基に、第1閾値αや第2閾値βの設定値を補正したり、複数の設定値のうちから最適な設定値を選択して使用する等して、第1閾値αや第2閾値βを変更することも考えられる。
また、上述の実施形態では、車両の基準停車率を50%としたが、これに限定されるものではない。さらに、基準停車率に対応する第2閾値βをドライバからの要求操作入力やメンテナンス時の要求信号入力に応じて増減変更するようにすることも考えられる。
また、上述の実施形態では、エンジン1のみを走行駆動源とする車両を想定して説明したが、電動機等の他の原動機を走行駆動源として併用するハイブリッド駆動方式の車両において自動停止処理を実行するような場合にも、本発明は適用可能である。
以上説明したように、本発明に係る車両用内燃機関の制御装置は、第1の運転期間中における自動停止処理の実行頻度判定のみで自動停止処理の要否を決定する場合よりもその実行頻度を高めることができ、現運転期間に対応する第2の運転期間中における実行頻度のみに応じて自動停止処理の要否を決定する場合よりも、過度の自動停止処理による補機類の品質低下を抑制しつつ作動率のむらによるユーザの不満を抑えることができる。その結果、自動停止処理の実行頻度を車両使用者に不満を抱かせない程度に高めつつ過度の自動停止処理による補機類の性能低下を有効に抑制することのできる車両用内燃機関の制御装置を提供できる。このような本発明は、車両に搭載される内燃機関をその車両の運転状態に応じて自動再始動可能に自動停止させて燃費低減を図るようにした車両用内燃機関の制御装置全般に有用である。