以下本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明のハードコートフィルムは、少なくとも基層と表層とを有する多層構造からなるセルロースエステルフィルム上にハードコート層を有するハードコートフィルムであって、該セルロースエステルフィルム中に、少なくともジオールとジカルボン酸化合物とのエステル化反応により縮合または重縮合させて得られるエステル化合物とUV吸収剤を含有し、前記基層における該エステル化合物の含有量K1(質量%)、前記表層における該エステル化合物の含有量K2(質量%)、かつ前記基層における該UV吸収剤の含有量M1(質量%)、前記表層におけるUV吸収剤の含有量M2(質量%)とした時に、K1>K2であり、かつM1<M2であることを特徴とする。
ここで、上記KI(質量%)、K2(質量%)M1(質量%)、M2(質量%)はセルロースエステルフィルムに含有される固形分の質量に対する添加剤の含有質量比率を表す。
また、本願において、「基層」とは、セルロースエステルフィルムが三層以上積層された層で構成される場合、積層された層のうち内部側にある層をいう。その層厚は外部側にある「表層」より厚いことが好ましい。なお、セルロースエステルフィルムが二層構成である場合は、最も層厚が厚い層を「基層」とし、薄い層を「表層」とする。
一方、「表層」とは、セルロースエステルフィルムが三層以上積層された層で構成される場合、積層された層のうち外表面側にある層をいう。その層厚は内部側にある基層より薄いことが好ましい。
本発明に係るエステル化合物は、セルロースエステルフィルムの湿熱耐性を高める効果があるが、表面近傍に多量に存在すると湿熱条件下では析出してハードコート層との密着性を阻害するため、セルロースエステルフィルムを少なくとも基層と表層とを有する多層構造からなる基材とし、多量に含有させても湿熱条件下で析出し難い基層側に多く含有させることでハードコート層との密着性と高度な湿熱耐性との両立を図るものである。
同時に、UV吸収剤はハードコート層用組成物を塗布し紫外線を照射して塗膜を硬化させる際に多くの熱が発生するため、これによって基材とハードコート層に用いる樹脂同士の密着性をミクロ的、化学的なレベルで向上させることができることから、セルロースエステルフィルムを少なくとも基層と表層とを有する多層構造からなる基材とし、基層よりも表層に多く含有させてその効果を得るものである。
従って、前記エステル化合物とUV吸収剤をセルロースエステルフィルムの基層と表層に各々適切に配分する本発明の特定の構成により、基材フィルムとハードコート層の密着性を向上し湿熱環境下で階調の乱れやコントラストの低下のないメディカル用の液晶モニターに適するハードコートフィルムを実現するに至った。
以下本発明を詳細に説明するが、本発明の実施態様はこれに限定されるものではない。
<ジオールとジカルボン酸化合物とのエステル化反応により縮合または重縮合させて得られるエステル化合物>
本発明のハードコートフィルムは、前記基層におけるエステル化合物の含有量K1(質量%)、前記表層における該エステル化合物の含有量K2(質量%)とした時に、K1>K2であることが、本発明の効果を得る上で必要である。
本発明に係るエステル化合物のセルロースエステルフィルム中の含有量は、1〜20質量%であることが好ましく、2〜15質量%であることがより好ましい。また、基層及び表層への該エステル化合物の振り分けは、基層及び表層におけるエステル化合物の含有量K1、K2の比、K1/K2が1.5以上であることが好ましく、2.0以上であることがより好ましい。
エステル化合物の添加方法は、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコールやメチレンクロライド、酢酸メチル、アセトン、ジオキソラン等の有機溶媒あるいはこれらの混合溶媒にエステル化合物を溶解してからドープに添加するか、又は直接ドープ組成中に添加してもよい。
本発明に係るエステル化合物は、ジオールとジカルボン酸化合物とのエステル化反応により縮合または重縮合させて得られるエステル化合物であり特に限定されるものではないが、炭素数2〜20の脂肪族ジカルボン酸、炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸、またはその混合物と、炭素数2〜12の脂肪族ジオール、炭素数4〜20のアルキルエーテルジオール及び炭素数6〜20の芳香族ジオールから選ばれる少なくとも一種類以上のジオールとの反応によって得られるものであることが好ましく、かつ反応物の両末端は反応物のままでもよいが、さらにモノカルボン酸類やモノアルコール類又はフェノール類を反応させて、所謂末端の封止を実施してもよい。この末端封止は、特にフリーなカルボン酸類を含有させないために実施されることが、保存性などの点で有効である。本発明に係るエステル化合物に使用されるジカルボン酸は、炭素数4〜20の脂肪族ジカルボン酸又は炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸であることが好ましく、該ジカルボン酸が脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジカルボン酸を含有する場合は、脂肪族ジカルボン酸の含有する割合が芳香族ジカルボン酸の含有する割合よりも大きいことが好ましい。脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジカルボン酸の割合が55:45〜99:1の範囲であることが好ましく、60:40〜90:10の範囲であることがより好ましい。
本発明で好ましく用いられる炭素数2〜20の脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸が挙げられる。
また炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,8−ナフタレンジカルボン酸及び2,6−ナフタレンジカルボン酸等がある。
これらの中でも好ましい脂肪族ジカルボン酸としては、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸であり、芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸である。特に好ましくは、脂肪族ジカルボン酸成分としてはコハク酸、グルタル酸、アジピン酸であり、芳香族ジカルボン酸としてはフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸である。
本発明では、前述の脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジカルボン酸のそれぞれの少なくとも一種類が組み合わせて用いられる場合は、その組み合せは特に限定されるものではなく、それぞれの成分を数種類組み合わせても問題ない。
エステル化合物に利用されるジオール又は芳香族環含有ジオールは、例えば、炭素数2〜20の脂肪族ジオール、炭素数4〜20のアルキルエーテルジオール及び炭素数6〜20の芳香族環含有ジオールから選ばれるものである。
炭素原子2〜20の脂肪族ジオールとしては、アルキルジオール及び脂環式ジオール類を挙げることができ、例えば、エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロ−ルペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール等があり、これらのグリコールは、一種又は二種以上の混合物として使用される。
好ましい脂肪族ジオールとしては、エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールであり、特に好ましくはエタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールである。
炭素数4〜20のアルキルエーテルジオールとしては、好ましくは、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエチレンエーテルグリコール及びポリプロピレンエーテルグリコールならびにこれらの組み合わせが挙げられる。その平均重合度は、特に限定されないが好ましくは2〜20であり、より好ましくは2〜10であり、さらには2〜5であり、特に好ましくは2〜4である。これらの例としては、典型的に有用な市販のポリエーテルグリコール類としては、カーボワックス(Carbowax)レジン、プルロニックス(Pluronics)レジン及びニアックス(Niax)レジンが挙げられる。
炭素数6〜20の芳香族ジオールとしては、特に限定されないがビスフェノールA、1,2−ヒドロキシベンゼン、1,3−ヒドロキシベンゼン、1,4−ヒドロキシベンゼン、1,4−ベンゼンジメタノールが挙げられ、好ましくはビスフェノールA、1,4−ヒドロキシベンゼン、1,4−ベンゼンジメタノールである。
本発明においては、特に末端がアルキル基あるいは芳香族基で封止されたエステル化合物であることが好ましい。これは、末端を疎水性官能基で保護することにより、高温高湿での経時劣化に対して有効であり、エステル基の加水分解を遅延させる役割を示すことが要因となっている。
本発明においては、エステル化合物の両末端がカルボン酸やOH基とならないように、モノアルコール残基やモノカルボン酸残基で保護することが好ましい。
この場合、モノアルコールとしては炭素数1〜30の置換、無置換のモノアルコールが好ましく、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、ペンタノール、イソペンタノール、ヘキサノール、イソヘキサノール、シクロヘキシルアルコール、オクタノール、イソオクタノール、2−エチルヘキシルアルコール、ノニルアルコール、イソノニルアルコール、tert−ノニルアルコール、デカノール、ドデカノール、ドデカヘキサノール、ドデカオクタノール、アリルアルコール、オレイルアルコールなどの脂肪族アルコール、ベンジルアルコール、3−フェニルプロパノールなどの置換アルコールなどが挙げられる。
好ましく使用され得る末端封止用アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、イソペンタノール、ヘキサノール、イソヘキサノール、シクロヘキシルアルコール、イソオクタノール、2−エチルヘキシルアルコール、イソノニルアルコール、オレイルアルコール、ベンジルアルコールであり、特にはメタノール、エタノール、プロパノール、イソブタノール、シクロヘキシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、イソノニルアルコール、ベンジルアルコールである。
また、モノカルボン酸残基で封止する場合は、モノカルボン酸残基として使用されるモノカルボン酸は、炭素数1〜30の置換、無置換のモノカルボン酸が好ましい。これらは、脂肪族モノカルボン酸でも芳香族環含有カルボン酸でもよい。好ましい脂肪族モノカルボン酸について記述すると、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、カプリル酸、カプロン酸、デカン酸、ドデカン酸、ステアリン酸、オレイン酸が挙げられ、芳香族環含有モノカルボン酸としては、例えば安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、p−tert−アミル安息香酸、オルソトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、ジメチル安息香酸、エチル安息香酸、ノルマルプロピル安息香酸、アミノ安息香酸、アセトキシ安息香酸等があり、これらはそれぞれ一種又は二種以上を使用することができる。
本発明に係るエステル化合物の合成は、常法により上記ジカルボン酸とジオール及び/又は末端封止用のモノカルボン酸又はモノアルコール、とのポリエステル化反応又はエステル交換反応による熱溶融縮合法か、あるいはこれら酸の酸クロライドとグリコール類との界面縮合法のいずれかの方法によっても容易に合成し得るものである。これらのエステル化合物については、村井孝一編者「添加剤 その理論と応用」(株式会社幸書房、昭和48年3月1日初版第1版発行)に詳細な記載がある。また、特開平05−155809号、特開平05−155810号、特開平5−197073号、特開2006−259494号、特開平07−330670号、特開2006−342227号、特開2007−003679号各公報などに記載されている素材を利用することもできる。
本発明に係るエステル化合物の酸価に特に限定はないが、0.05〜1.5の範囲であることが好ましい。
ここでいう酸価とは、試料1g中に含まれる酸(試料中に存在するカルボキシル基)を中和するために必要な水酸化カリウムのミリグラム数をいう。酸価はJIS K0070に準拠して測定したものである。
即ち該酸価とは、ジオールとジカルボン酸化合物とが反応した際に生成しうる、末端にカルボキシル基を有するポリエステルに由来するもの、あるいは残留するモノマー成分によるものである。
フィルムに優れた耐透湿性を付与し、且つエステル化合物自体の安定性を維持するうえで、前記エステル化合物に含まれる、末端にカルボキシル基を有するポリエステルの含有量は極力少ない方が好ましく、その目安としては、酸価が前記範囲内であることが好ましい。
以下に、本発明で用いることができるエステル化合物の具体例を記すが、本発明で用いることができるエステル化合物はこれらに限定されるものではない。
表1〜表3中、PAはフタル酸を、TPAはテレフタル酸を、IPAはイソフタル酸を、AAはアジピン酸を、SAはコハク酸を、2,6−NPAは2,6−ナフタレンジカルボン酸を、2,8−NPAは2,8−ナフタレンジカルボン酸を、1,5−NPAは1,5−ナフタレンジカルボン酸を、1,4−NPAは1,4−ナフタレンジカルボン酸を、1,8−NPAは1,8−ナフタレンジカルボン酸をそれぞれ示している。
<UV吸収剤>
本発明のハードコートフィルムは、前記基層における該UV吸収剤の含有量M1(質量%)、前記表層におけるUV吸収剤の含有量M2(質量%)とした時に、M1<M2であることが本発明の効果を得る上で必要である。
本発明に係るUV吸収剤のセルロースエステルフィルム中の含有量は、0.5〜10質量%であることが好ましく、0.6〜4質量%であることがより好ましい。また、基層及び表層への該UV吸収剤の振り分けは、基層及び表層におけるUV吸収剤の含有量M1、M2の比、M2/M1が1.1以上であることが好ましく、1.5以上であることがより好ましい。
UV吸収剤の添加方法は、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコールやメチレンクロライド、酢酸メチル、アセトン、ジオキソラン等の有機溶媒あるいはこれらの混合溶媒にUV吸収剤を溶解してからドープに添加するか、又は直接ドープ組成中に添加してもよい。
無機粉体のように有機溶剤に溶解しないものは、有機溶剤とセルロースアセテート中にディゾルバーやサンドミルを使用し、分散してからドープに添加する。
本発明に係るUV吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましく用いられる。本発明に好ましく用いられるUV吸収剤の具体例としては、例えばヒンダードフェノール系化合物、ヒドロキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物、トリアジン系化合物などが挙げられる。これらのUV吸収剤の中ではヒンダードフェノール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物が好ましく、ベンゾトリアゾール系化合物がより好ましい。
ヒンダードフェノール系化合物の例としては、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレートなどが挙げられる。
ベンゾトリアゾール系化合物の例としては、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、(2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、(2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕などが挙げられる。
市販のUV吸収剤も好ましく用いられ、例えば紫外線吸収剤の具体例として、例えば、BASFジャパン(株)製のTINUVIN109、TINUVIN171、TINUVIN326、TINUVIN327、TINUVIN328、TINUVIN900、TINUVIN928、(株)ADEKA製のLA−31等のUV吸収剤も好ましく用いることができる。
更にトリアジン系化合物も好ましく用いることができ、1,3,5−トリアジン環を有する化合物が好ましく用いられる。
また、二種類以上の1,3,5−トリアジン環を有する化合物を併用してもよい。二種類以上の円盤状化合物(例えば、1,3,5−トリアジン環を有する化合物とポルフィリン骨格を有する化合物)を併用してもよい。
また、特開2001−235621号公報の一般式(I)で示されているトリアジン系化合物も本発明のハードコートフィルムに好ましく用いられる。
<セルロースエステル>
本発明に用いることができるセルロースエステルとしては、炭素数2以上の脂肪族アシル基を有するセルロースエステルであることが好ましく、更に好ましくは、セルロースエステルのアシル基総置換度が1.0〜2.95、かつアシル基総炭素数が2.0〜9.5であるセルロースエステルである。
セルロースエステルのアシル基総炭素数は、好ましくは、4.0〜9.0であり、さらに好ましくは5.0〜8.5である。但し、アシル基総炭素数は、セルロースエステルのグルコース単位に置換されている各アシル基の置換度と炭素数の積の総和である。
さらに、脂肪族アシル基の炭素数は、セルロース合成の生産性、コストの観点から、2以上6以下が好ましく、2以上4以下がさらに好ましい。なお、アシル基で置換されていない部分は通常ヒドロキシル基(水酸基)として存在している。
β−1,4−グリコシド結合でセルロースを構成しているグルコース単位は、2位、3位及び6位に遊離のヒドロキシル基(水酸基)を有している。本発明におけるセルロースエステルは、これらのヒドロキシル基(水酸基)の一部又は全部をアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。
ここで、アシル基置換度とは、繰り返し単位の2位、3位及び6位について、セルロースがエステル化している割合の合計を表す。具体的には、セルロースの2位、3位及び6位のそれぞれのヒドロキシル基(水酸基)が100%エステル化した場合をそれぞれ置換度1とする。したがって、セルロースの2位、3位及び6位のすべてが100%エステル化した場合、置換度は最大の3となる。
アシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ペンタネート基、ヘキサネート基等が挙げられ、セルロースエステルとしては、セルロースアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースペンタネート等が挙げられる。また、上述の側鎖炭素数を満たせば、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートペンタネート等のように混合脂肪酸エステルでもよい。この中でも、特にセルローストリアセテートが好ましい。
本発明において、好適に用いることができるセルロースエステルは、アセチル基置換度が2.80〜2.95であって数平均分子量が125000以上155000未満の範囲内のセルローストリアセテートである。
なお、アセチル基の置換度の測定方法はASTM−D817−96に準じて測定することができる。
本発明に係るセルロースエステルは、数平均分子量(Mn)は、125000以上155000未満の範囲内であり、129000〜152000が好ましい。さらに、重量平均分子量(Mw)は、265000〜310000であることが好ましい。Mw/Mnは、1.9〜2.1であることが好ましい。
本発明に係るセルロースエステルの平均分子量(Mn、Mw)及び分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定することができる。測定条件は以下の通りである。
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=2,800,000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いることが好ましい。
本発明に係るセルロースエステルは、特開平10−45804号、特開2005−281645号公報に記載の方法を参考にして合成することができる。
また、本発明に係るセルロースエステルは、セルロースエステル中の微量金属成分は、鉄(Fe)成分については、1ppm以下であることが好ましい。カルシウム(Ca)成分は60ppm以下、好ましくは0〜30ppmである。マグネシウム(Mg)成分については、0〜70ppmであることが好ましく、特に0〜20ppmであることが好ましい。鉄(Fe)分の含量、カルシウム(Ca)分含量、マグネシウム(Mg)分含量等の金属成分は、絶乾したセルロースエステルをマイクロダイジェスト湿式分解装置(硫硝酸分解)、アルカリ溶融で前処理を行った後、ICP−AES(誘導結合プラズマ発光分光分析装置)を用いて分析することができる。
また、本発明に係るセルロースエステルは、本発明に係る基層、表層で同じ種類のものを用いることや、或いは異なった種類のものを用いることができる。例えば、基層にセルロースアセテートプロピオネートを用い、表層にセルローストリアセテートを用いることができる。また、原料セルロース、アシル基置換度、分子量等を得られる性能や目的効果に応じて、適宜基層用、表層用に選択し使用することができる。
<添加剤>
本発明では、必要に応じ、可塑剤、劣化防止剤、剥離促進剤、マット剤、滑剤等を適宜用いることができる。
(可塑剤)
可塑剤としては、リン酸エステル又はカルボン酸エステルが用いられる。リン酸エステルの例には、トリフェニルホスフェート(TPP)及びトリクレジルホスフェート(TCP)が含まれる。カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステル及びクエン酸エステルが代表的である。フタル酸エステルの例には、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)及びジエチルヘキシルフタレート(DEHP)が含まれる。クエン酸エステルの例には、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)及びO−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)が含まれる。その他のカルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。フタル酸エステル系可塑剤(DMP、DEP、DBP、DOP、DPP、DEHP)が好ましく用いられる。DEP及びDPPが特に好ましい。可塑剤の添加量は、セルロース系樹脂の質量の0.1〜25質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることがさらに好ましく、3〜15質量%であることが最も好ましい。
(劣化防止剤)
本発明においてはセルロースエステル溶液に公知の劣化(酸化)防止剤、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、4,4′−チオビス−(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、1,1′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2′−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などのフェノール系あるいはヒドロキノン系酸化防止剤を添加することができる。さらに、トリス(4−メトキシ−3,5−ジフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなどのリン系酸化防止剤をすることが好ましい。劣化防止剤の添加量は、セルロース系樹脂100質量部に対して、0.05〜5.0質量部を添加する。
(剥離促進剤)
本発明のフィルムには、剥離促進剤を含有することが、より剥離性を高める観点から好ましい。剥離促進剤は、例えば、0.001〜1質量%の割合で含めることができ、0.5質量%以下の添加であれば剥離剤のフィルムからの分離等が発生し難いため好ましく、0.005質量%以上であれば所望の剥離低減効果を得ることができるため好ましいため、0.005〜0.5質量%の割合で含めることが好ましく、0.01〜0.3質量%の割合で含めることがより好ましい。剥離促進剤としては、公知のものが採用でき、有機、無機の酸性化合物、界面活性剤、キレート剤等を使用することができる。中でも、多価カルボン酸及びそのエステルが効果的であり、特に、クエン酸のエチルエステル類が効果的に使用することができる。
本発明のフィルムには、前記表層に剥離促進剤を含有することが好ましい。
(マット剤)
特に本発明のフィルムには、ハンドリングされる際に、傷が付いたり搬送性が悪化することを防止するために、微粒子を添加することが一般に行われる。それらは、マット剤、ブロッキング防止剤あるいはキシミ防止剤と称されて、従来から利用されている。それらは、前述の機能を呈する素材であれば特に限定されず、無機化合物のマット剤であっても、有機化合物のマット剤であってもよい。
前記無機化合物のマット剤の好ましい具体例としては、ケイ素を含む無機化合物(例えば、二酸化ケイ素、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムなど)、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化バリウム、酸化ジルコニウム、酸化ストロングチウム、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化スズ・アンチモン、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン及びリン酸カルシウム等が好ましく、更に好ましくはケイ素を含む無機化合物や酸化ジルコニウムであるが、セルロースエステルフィルムの濁度を低減できるので、二酸化ケイ素が特に好ましく用いられる。前記二酸化ケイ素の微粒子としては、例えば、アエロジルR972、R974、R812、200、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)等の商品名を有する市販品が使用できる。前記酸化ジルコニウムの微粒子としては、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)等の商品名で市販されているものが使用できる。
前記有機化合物のマット剤の好ましい具体例としては、例えば、シリコーン樹脂、弗素樹脂及びアクリル樹脂等のポリマーが好ましく、中でも、シリコーン樹脂が好ましく用いられる。シリコーン樹脂の中でも、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、トスパール105、トスパール108、トスパール120、トスパール145、トスパール3120及びトスパール240(以上東芝シリコーン(株)製)等の商品名を有する市販品が使用できる。
これらのマット剤をセルロースエステル溶液へ添加する場合は、特にその方法に限定されずいずれの方法でも所望のセルロースエステル溶液を得ることができれば問題ない。例えば、セルロースエステルと溶媒を混合する段階で添加物を含有させてもよいし、セルロースエステルと溶媒で混合溶液を作製した後に、添加物を添加してもよい。更にはドープを流延する直前に添加混合してもよく、所謂直前添加方法でありその混合はスクリュー式混練をオンラインで設置して用いられる。具体的には、インラインミキサーのような静的混合機が好ましい。
本発明のフィルムは、前記表層にマット剤を含有することが、フィルム面の摩擦係数低減による耐擦傷性、幅広幅フィルムを長尺で巻いたときに発生するキシミの防止、フィルム折れの防止の観点から好ましい。
本発明のフィルムにおいて、前記マット剤は、多量に添加しなければフィルムのヘイズが大きくならず、実際に液晶表示装置に使用した場合、コントラストの低下、輝点の発生等の不都合が生じにくい。また、少なすぎなければ上記のキシミ、耐擦傷性を実現することができる。これらの観点から0.01〜5.0質量%の割合で含めることが好ましく、0.03〜3.0質量%の割合で含めることがより好ましく、0.05〜1.0質量%の割合で含めることが特に好ましい。
<セルロースエステルフィルムの物性>
(ヘイズ)
本発明に係るセルロースエステルフィルムは、ヘイズが1%未満であることが好ましく、0.5%未満であることがより好ましい。ヘイズを1%未満とすることにより、フィルムの透明性がより高くなり、セルロースエステルフィルムとしてより用いやすくなるという利点がある。
(膜厚)
本発明のフィルムは、前記基層の平均膜厚が30〜100μmであることが好ましく、30〜80μmであることがより好まし好ましい。30μm以上とすることにより、ウェブ状のフィルムを作製する際のハンドリング性が向上し好ましい。また、80μm以下とすることにより、湿度変化に対応しやすく、光学特性を維持しやすい。
本発明に係るセルロースエステルフィルムは、前記表層の平均膜厚が前記基層の平均膜厚の0.2%以上25%未満であることが好ましい。
この範囲であると剥離性を維持しながら、スジ状のムラ、フィルムの膜厚不均一あるいは光学特性不均一が抑制される観点から好ましく、0.5〜15%であることがより好ましく、1.0〜10%であることが特に好ましい。
(フィルムの長さと幅)
本発明に係るセルロースエステルフィルムは、当該フィルムの長さが、5000〜10000mの範囲内であり、当該フィルムの幅が1.9〜3.0mの範囲内であることが好ましい。
<セルロースエステルフィルムの製造方法>
本発明に係るセルロースエステルフィルムの製造方法は、ポリマーを有機溶剤に溶解させてドープを調製する工程(ドープ調製工程)と、前記ドープを濾過する工程(濾過工程)と、ドープを支持体上に流延しする工程(流延工程)、得られたフィルムを乾燥する工程(乾燥工程)と、得られたフィルム延伸する工程(延伸工程)を少なくとも含み、その他必要に応じた工程を含むものである。
(ドープ調製)
ドープを調製する工程について述べる。ドープ中のセルロースエステルの濃度は、濃度が高い方が金属支持体に流延した後の乾燥負荷が低減出来て好ましいが、セルロースアセテートの濃度が高過ぎると濾過時の負荷が増えて、濾過精度が悪くなる。これらを両立する濃度としては、10〜35質量%が好ましく、更に好ましくは、15〜25質量%である。
本発明に用いられるドープで用いられる溶剤は、単独で用いても二種以上を併用してもよいが、セルロースエステルの良溶剤と貧溶剤を混合して使用することが生産効率の点で好ましく、良溶剤が多い方がセルロースエステルの溶解性の点で好ましい。良溶剤と貧溶剤の混合比率の好ましい範囲は、良溶剤が70〜98質量%であり、貧溶剤が2〜30質量%である。良溶剤、貧溶剤とは、使用するセルロースエステルを単独で溶解するものを良溶剤、単独で膨潤するか又は溶解しないものを貧溶剤と定義している。そのため、セルロースエステルのアセチル基置換度によっては、良溶剤、貧溶剤が変わり、例えばアセトンを溶剤として用いる時には、セルロースの酢酸エステル(アセチル基置換度2.4)では良溶剤になり、セルロースの酢酸エステル(アセチル基置換度2.8)では貧溶剤となる。
本発明に用いられる良溶剤は特に限定されないが、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物やジオキソラン類、アセトン、酢酸メチル、アセト酢酸メチル等が挙げられる。特に好ましくはメチレンクロライド又は酢酸メチルが挙げられる。
また、本発明に用いられる貧溶剤は特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、n−ブタノール、シクロヘキサン、シクロヘキサノン等が好ましく用いられる。また、ドープ中には水が0.01〜2質量%含有していることが好ましい。
上記記載のドープを調製する時の、セルロースエステルの溶解方法としては、一般的な方法を用いることができる。加熱と加圧を組み合わせると常圧における沸点以上に加熱できる。溶剤の常圧での沸点以上でかつ加圧下で溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら攪拌溶解すると、ゲルやママコと呼ばれる塊状未溶解物の発生を防止するため好ましい。また、セルロースエステルを貧溶剤と混合して湿潤或いは膨潤させた後、更に良溶剤を添加して溶解する方法も好ましく用いられる。
加圧は窒素ガス等の不活性気体を圧入する方法や、加熱によって溶剤の蒸気圧を上昇させる方法によって行ってもよい。加熱は外部から行うことが好ましく、例えばジャケットタイプのものは温度コントロールが容易で好ましい。
溶剤を添加しての加熱温度は、高い方がセルロースエステルの溶解性の観点から好ましいが、加熱温度が高過ぎると必要とされる圧力が大きくなり生産性が悪くなる。好ましい加熱温度は45〜120℃であり、60〜110℃がより好ましく、70℃〜105℃が更に好ましい。また、圧力は設定温度で溶剤が沸騰しないように調整される。
若しくは冷却溶解法も好ましく用いられ、これによって酢酸メチルなどの溶媒にセルロースエステルを溶解させることができる。
次に、このセルロースエステル溶液を濾紙等の適当な濾過材を用いて濾過する。濾過材としては、不溶物等を除去するために絶対濾過精度が小さい方が好ましいが、絶対濾過精度が小さ過ぎると濾過材の目詰まりが発生しやすいという問題がある。このため絶対濾過精度0.008mm以下の濾材が好ましく、0.001〜0.008mmの濾材がより好ましく、0.003〜0.006mmの濾材が更に好ましい。
濾材の材質は特に制限はなく、通常の濾材を使用することができるが、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等のプラスチック製の濾材や、ステンレススティール等の金属製の濾材が繊維の脱落等がなく好ましい。濾過により、原料のセルロースエステルに含まれていた不純物、特に輝点異物を除去、低減することが好ましい。
輝点異物とは、二枚の偏光板をクロスニコル状態にして配置し、その間にセルロースエステルフィルムを置き、一方の偏光板の側から光を当てて、他方の偏光板の側から観察した時に反対側からの光が漏れて見える点(異物)のことであり、径が0.01mm以上である輝点数が200個/cm2以下であることが好ましい。より好ましくは100個/cm2以下であり、更に好ましくは50個/m2以下であり、更に好ましくは0〜10個/cm2以下である。また、0.01mm以下の輝点も少ない方が好ましい。
ドープの濾過は通常の方法で行うことができるが、溶剤の常圧での沸点以上で、かつ加圧下で溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら濾過する方法が、濾過前後の濾圧の差(差圧という)の上昇が小さく、好ましい。好ましい温度は45〜120℃であり、45〜70℃がより好ましく、45〜55℃であることが更に好ましい。
濾圧は小さい方が好ましい。濾圧は1.6MPa以下であることが好ましく、1.2MPa以下であることがより好ましく、1.0MPa以下であることが更に好ましい。
ここで、ドープの流延について説明する。
(積層セルロースエステルフィルム)
本発明のセルロースエステルフィルムは、少なくとも基層と表層より構成される積層セルロースエステルフィルムであるが、該表層は該基層よりも膜厚が薄いものであり、基層及び表層用に調製されたセルロースエステル溶液(ドープ)から、ソルベントキャスト法により多層構造を有する積層セルロースエステルフィルムを製造することができる。
〈共流延〉
本発明では調製されたセルロースエステル溶液(ドープ)は、支持体としての平滑なバンド上或いはドラム上に前記2種以上の複数のセルロースエステル溶液を流延して製膜することが好ましい。
上記2種以上のドープを同時に支持体上に流延してもよいし、別々に支持体上に流延してもよい。別々に流延する逐次流延法の場合は、支持体側のドープを先に流延して支持体上である程度乾燥させた後に、その上に重ねて流延することが出来る。また、3種以上のドープを使用する場合、同時流延(共流延ともいう)と逐次流延を適宜組み合せて流延し、積層構造のフィルムを作製することも出来る。共流延若しくは逐次流延によって製膜されるこれらの方法は、乾燥されたフィルム上に塗布する方法とは異なり、積層構造の各層の境界が不明確になり、断面の観察で積層構造が明確には分かれないことがあるという特徴があり、各層間の密着性を向上させる効果がある。
本発明のセルロースエステルフィルムの製造方法は、生産性の観点からは共流延で行うことが好ましく、公知の共流延方法を用いることができる。例えば、金属支持体の進行方向に間隔を置いて設けた複数の流延口からセルロースを含む溶液をそれぞれ流延させて積層させながらフィルムを作製してもよく、例えば特開昭61−158414号、特開平1−122419号、特開平11−198285号の各公報などに記載の方法が適応できる。また、2つの流延口からセルロースエステル溶液を流延することによってもフィルム化することでもよく、例えば特公昭60−27562号、特開昭61−94724号、特開昭61−947245号、特開昭61−104813号、特開昭61−158413号、特開平6−134933号の各公報に記載の方法で実施できる。また、特開昭56−162617号公報に記載の高粘度セルロースエステル溶液の流れを低粘度のセルロースエステル溶液で包み込み、その高,低粘度のセルロースエステル溶液を同時に押出すセルロースエステルフィルム流延方法でもよい。更に又、特開昭61−94724号、特開昭61−94725号の各公報に記載の外側の溶液が内側の溶液よりも貧溶媒であるアルコール成分を多く含有させることも好ましい態様である。
あるいは、また、2個の流延口を用いて、第一の流延口により金属支持体に成型したフィルムを剥離し、金属支持体面に接していた側に第二の流延を行うことでより、フィルムを作製することでもよく、例えば特公昭44−20235号公報に記載されている方法である。
図1は共流延ダイ及び流延して多層構造ウェブ(流延直後はウェブをドープ膜ともいうことがある)を形成したところを表した模式図である。共流延は図1に示すように、共流延ダイ10の口金部分11に複数(図2では三つ)の表層用スリット13と15、基層用スリット14を有しており、金属支持体16の上に同時にそれぞれのスリットから表層用ドープ17、基層用ドープ18、及び表層用ドープ19を流延することにより、表層21/基層22/表層23の多層構造のウェブ20を形成する。基層と表層の2層である場合は、金属支持体16に接する側が膜厚の厚い基層22であることが好ましい。
流延するセルロースエステル溶液は基層用、表層用で異なるセルロースエステル溶液であって、前記エステル化合物に分布を持たせる。
同様に複数のセルロースエステル層に機能を持たせるために、その機能に応じたセルロースエステル溶液を、それぞれの流延口から押出せばよい。さらに本発明に係るセルロースエステル溶液は、他の機能層(例えば、接着層、染料層、帯電防止層、アンチハレーション層、UV吸収層、偏光層など)を同時に流延することも実施しうる。本発明に係るセルロースエステルフィルムを製造する方法としては、製膜が同時または逐次での多層流延製膜であることが好ましい。
以上から、共流延の場合、前述のエステル化合物、紫外線吸収剤、マット剤、その他添加剤等の添加物濃度、添加物種類が異なるセルロース溶液(ドープ)を共流延して、所望の積層構造のセルロースエステルフィルムを作製することもできる。
本発明では、多層流延したドープを乾燥させて支持体から剥離する。
ドープは、ドラムまたは金属支持体上に流延し、溶媒を蒸発させてフィルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が18〜35質量%となるように濃度を調整することが好ましい。ドラムまたは金属支持体の表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。ソルベントキャスト法における流延および乾燥方法については、米国特許2336310号、同2367603号、同2492078号、同2492977号、同2492978号、同2607704号、同2739069号、同2739070号、英国特許640731号、同736892号の各明細書、特公昭45−4554号、同49−5614号、特開昭60−176834号、同60−203430号、同62−115035号の各公報に記載がある。
ドープは、表面温度が10℃以下のドラムまたは金属支持体上に流延することが好ましい。流延してから2秒以上風に当てて乾燥することが好ましい。得られたフィルムをドラムまたは金属支持体から剥ぎ取り、さらに100℃から160℃まで逐次温度を変えた高温風で乾燥して残留溶媒を蒸発させることもできる。以上の方法は、特公平5−17844号公報に記載がある。この方法によると、流延から剥ぎ取りまでの時間を短縮することが可能である。この方法を実施するためには、流延時のドラムまたは金属支持体の表面温度においてドープがゲル化することが必要である。
流延(キャスト)工程における金属支持体は、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、金属支持体としては、ステンレススティールベルト若しくは鋳物で表面をメッキ仕上げしたドラムが好ましく用いられる。キャストの幅は1〜4mとすることができる。流延工程の金属支持体の表面温度は−50℃〜溶剤が沸騰して発泡しない温度以下に設定される。温度が高い方がウェブの乾燥速度が速くできるので好ましいが、余り高過ぎるとウェブが発泡したり、平面性が劣化する場合がある。好ましい支持体温度としては0〜100℃で適宜決定され、5〜30℃が更に好ましい。或いは、冷却することによってウェブをゲル化させて残留溶媒を多く含んだ状態でドラムから剥離することも好ましい方法である。金属支持体の温度を制御する方法は特に制限されないが、温風又は冷風を吹きかける方法や、温水を金属支持体の裏側に接触させる方法がある。温水を用いる方が熱の伝達が効率的に行われるため、金属支持体の温度が一定になるまでの時間が短く好ましい。温風を用いる場合は溶媒の蒸発潜熱によるウェブの温度低下を考慮して、溶媒の沸点以上の温風を使用しつつ、発泡も防ぎながら目的の温度よりも高い温度の風を使う場合がある。特に、流延から剥離するまでの間で支持体の温度及び乾燥風の温度を変更し、効率的に乾燥を行うことが好ましい。
本発明に用いられるセルロースエステルフィルムが良好な平面性を示すためには、金属支持体からウェブを剥離する際の残留溶媒量は10〜150質量%が好ましく、更に好ましくは20〜40質量%又は60〜130質量%であり、特に好ましくは、20〜30質量%又は70〜120質量%である。また、該金属支持体上の剥離位置における温度を−50〜40℃とするのが好ましく、10〜40℃がより好ましく、15〜30℃とするのが最も好ましい。
本発明においては、残留溶媒量は下記式で定義される。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
なお、Mはウェブ又はフィルムを製造中又は製造後の任意の時点で採取した試料の質量で、NはMを115℃で1時間の加熱後の質量である。
また、セルロースエステルフィルムの乾燥工程においては、ウェブを金属支持体より剥離し、更に乾燥し、残留溶媒量が0.5質量%以下となるまで乾燥される。
フィルム乾燥工程では一般にロール乾燥方式(上下に配置した多数のロールをウェブを交互に通し乾燥させる方式)やテンター方式でウェブを搬送させながら乾燥する方式が採られる。
前記金属支持体から剥離する際に、剥離張力及びその後の搬送張力によってウェブは縦方向に延伸する為、本発明においては流延支持体からウェブを剥離する際は剥離及び搬送張力をできるだけ下げた状態で行うことが好ましい。具体的には、例えば50〜170N/m以下にすることが効果的である。その際、20℃以下の冷風を当て、ウェブを急速に固定化することが好ましい。
セルロースエステルフィルムは、更に延伸処理により屈折率(面内の遅相軸方向の屈折率nx、面内の遅相軸に垂直な方向の屈折率ny及び厚さ方向の屈折率nz)を調整することができる。
本発明においては、フィルム性能を向上させるために積極的に幅方向に延伸してもよく、例えば、特開昭62−115035号公報、特開平4−152125号、同4−284211号公報、同4−298310号公報、同11−48271号公報などに記載されている方法を適用できる。
フィルムの延伸倍率(元の長さに対する延伸後の長さの倍率)は、1.03〜3倍であることが好ましく、さらに好ましいのは1.05〜2.5倍であり、より好ましくは1.05〜1.8倍である。この時、延伸方向は流延方向でもよいし、流延方向と直角な方向に延伸されてもよく、さらに場合によっては両方向に延伸されてもよい。この時、延伸は同時に実施されてもよく、一方向に延伸してその後別方向に延伸されてもよい。
本発明におけるセルロースエステルフィルムの製造に係わる巻き取り機は一般的に使用されているものでよく、定テンション法、定トルク法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法などの巻き取り方法で巻き取ることができる。本発明のでき上がり(乾燥後)の本発明におけるポリマーフィルムの厚さは、使用目的によって異なるが、フィルム厚さの調製は、所望の厚さになるように、ドープ中に含まれる固形分濃度、ダイの口金のスリット間隙、ダイからの押し出し圧力、支持体速度等を調節すればよい。
延伸速度は5%/分〜1000%/分であることが好ましく、さらに10%/分〜500%/分であることが好ましい。延伸はヒートロールあるいは/及び放射熱源(IRヒーター等)、温風により行なうことが好ましい。また、温度の均一性を高めるために恒温槽を設けてもよい。ロール延伸で一軸延伸を行なう場合、ロール間距離(L)とフィルム幅(W)との比であるL/Wが、2.0〜5.0であることが好ましい。さらに、テンター乾燥のウェブの発泡を防止し、離脱性を向上させ、発塵を防止するために、乾燥装置において乾燥器の熱風や熱源がウェブ両縁部に当たらないように、乾燥器の幅がウェブの幅よりも短く形成することも好ましい。また、テンターの保持部に熱風や熱源が当たらないようウェブ両側端部内側に遮蔽板を設置してもよい。
延伸フィルムは所定の厚さにすべき延伸倍率を選定すればよい。また、延伸することにより平面性などの面状の改良が達成でき好ましい場合がある。さらに、厚さのムラをより小さくするために、延伸温度を幅方向に勾配を持たせることで、一定の温度で延伸するより均一な延伸が達成できる場合もある。
<ハードコート層>
本発明のセルロースエステルフィルム上には、ハードコート層が設けられており、当該ハードコート層はクリアハードコート層又は防眩性ハードコート層のいずれかであることが好ましい。
本発明に係るハードコート層がクリアハードコート層の場合は、JIS B 0601で規定される中心線平均粗さ(Ra)が0.001〜0.1μmのクリアハードコート層であり、Raが0.002〜0.05μmであることが好ましい。中心線平均粗さ(Ra)は光干渉式の表面粗さ測定器で測定することが好ましく、例えばWYKO社製非接触表面微細形状計測装置WYKO NT−2000を用いて測定することができる。
本発明に係るハードコート層が防眩性である場合は、表面に微細な凹凸形状を有するが、該微細凹凸形状は、ハードコート層に微粒子を含有させることで形成し、下記のような平均粒径0.01μm〜4μmの微粒子をハードコート層中に含有させることで形成できる。また、後述するように、該防眩性ハードコート層上に設けられた反射防止層の最表面の表面粗さとして、JIS B 0601で規定される中心線平均粗さ(Ra)が0.08μm〜0.5μmの範囲に調整されることが好ましい。
本発明に係るハードコート層中に含有される粒子としては、例えば、無機又は有機の微粒子が用いられる。
無機微粒子としては酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化錫、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、カオリン、硫酸カルシウム等を挙げることができる。
また、有機微粒子としては、ポリメタアクリル酸メチルアクリレート樹脂微粒子、アクリルスチレン系樹脂微粒子、ポリメチルメタクリレート樹脂微粒子、シリコーン系樹脂微粒子、ポリスチレン系樹脂微粒子、ポリカーボネート樹脂微粒子、ベンゾグアナミン系樹脂微粒子、メラミン系樹脂微粒子、ポリオレフィン系樹脂微粒子、ポリエステル系樹脂微粒子、ポリアミド系樹脂微粒子、ポリイミド系樹脂微粒子、又はポリ弗化エチレン系樹脂微粒子等を挙げることができる。
本発明では特に、酸化ケイ素微粒子又はポリスチレン系樹脂微粒子であることが好ましい。
上記記載の無機又は有機の微粒子は、防眩性ハードコート層の作製に用いられる樹脂等を含む塗布組成物に加えて用いることが好ましい。
本発明に係るハードコート層に防眩性を付与するためには、無機又は有機微粒子の含有量は、防眩性ハードコート層作製用の樹脂100質量部に対して、0.1質量部〜30質量部が好ましく、更に好ましくは、0.1質量部〜20質量部となるように配合することである。より好ましい防眩効果を付与するには、平均粒径0.1μm〜1μmの微粒子を防眩性ハードコート層作製用の樹脂100質量部に対して1質量部〜15質量部を用いるのが好ましい。又、異なる平均粒径の微粒子を二種以上用いることも好ましい。
また、本発明に係るハードコート層には帯電防止剤を含有させることも好ましく、帯電防止剤としては、Sn、Ti、In、Al、Zn、Si、Mg、Ba、Mo、W及びVからなる群から選択される少なくとも一つの元素を主成分として含有し、かつ、体積抵抗率が107Ω・cm以下であるような導電性材料が好ましい。
前記帯電防止剤としては、上記の元素を有する金属酸化物、複合酸化物等が挙げられる。
金属酸化物の例としては、ZnO、TiO2、SnO2、Al2O3、In2O3、SiO2、MgO、BaO、MoO2、V2O5等、或いはこれらの複合酸化物が好ましく、特にZnO、In2O3、TiO2及びSnO2が好ましい。異種原子を含む例としては、例えばZnOに対してはAl、In等の添加、TiO2に対してはNb、Ta等の添加、またSnO2に対しては、Sb、Nb、ハロゲン元素等の添加が効果的である。これら異種原子の添加量は0.01〜25mol%の範囲が好ましいが、0.1〜15mol%の範囲が特に好ましい。
また、これらの導電性を有するこれら金属酸化物粉体の体積抵抗率は107Ω・cm以下、特に105Ω・cm以下である。
十分な耐久性、耐衝撃性を付与する観点から、クリアハードコート層又は防眩性ハードコート層の膜厚は0.5μm〜15μmの範囲が好ましく、更に好ましくは、1.0μm〜7μmである。
(活性線硬化型樹脂)
本発明に係るハードコート層は、紫外線等活性線照射により硬化する活性線硬化型樹脂をバインダーとして含有することが好ましい。
活性線硬化型樹脂とは紫外線や電子線のような活性線照射により架橋反応等を経て硬化する樹脂である。活性線硬化型樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等が代表的なものとして挙げられるが、紫外線や電子線以外の活性線照射によって硬化する樹脂でもよい。
好ましい親水性活性線硬化型樹脂は、その例として紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、又は紫外線硬化型エポキシ樹脂等を挙げることができる。
紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂は、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、又はプレポリマーを反応させて得られた生成物に更に2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下アクリレートにはメタクリレートを包含するものとしてアクリレートのみを表示する)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等のヒドロキシル基(水酸基)を有するアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることができる。例えば、特開昭59−151110号に記載の、ユニディック17−806(DIC(株)製)100部とコロネートL(日本ポリウレタン(株)製)1部との混合物等が好ましく用いられる。
紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂は、一般にポリエステル末端のヒドロキシル基(水酸基)やカルボキシル基に2−ヒドロキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、アクリル酸のようなモノマーを反応させることによって容易に得ることができる(例えば、特開昭59−151112号)。例えば、IRR338(ダイセル・ユーシービー(株)製)等が好ましく用いられる。
紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂としては、エチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることができる。例えば、EB11(ダイセル・ユーシービー(株)製)等が好ましく用いられる。
紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂は、エポキシ樹脂の末端のヒドロキシル基(水酸基)にアクリル酸、アクリル酸クロライド、グリシジルアクリレートのようなモノマーを反応させて得られる。例えば、IRR337(ダイセル・ユーシービー(株)製)等が好ましく用いられる。
紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシ樹脂の例として、有用に用いられるエポキシ系活性線反応性化合物を示す。
(a)ビスフェノールAのグリシジルエーテル(この化合物はエピクロルヒドリンとビスフェノールAとの反応により、重合度の異なる混合物として得られる)
(b)ビスフェノールA等のフェノール性OHを2個有する化合物に、エピクロルヒドリン、エチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドを反応させ末端にグリシジルエーテル基を有する化合物
(c)4,4′−メチレンビスフェノールのグリシジルエーテル
(d)ノボラック樹脂又はレゾール樹脂のフェノールフォルムアルデヒド樹脂のエポキシ化合物
(e)脂環式エポキシドを有する化合物、例えば、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)オキザレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−シクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチルピメレート)、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−1−メチルシクロヘキシルメチル−3′,4′−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−1−メチル−シクロヘキシルメチル−3′,4′−エポキシ−1′−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチル−シクロヘキシルメチル−3′,4′−エポキシ−6′−メチル−1′−シクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5′,5′−スピロ−3″,4″−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン
(f)2塩基酸のジグリシジルエーテル、例えば、ジグリシジルオキザレート、ジグリシジルアジペート、ジグリシジルテトラヒドロフタレート、ジグリシジルヘキサヒドロフタレート、ジグリシジルフタレート
(g)グリコールのジグリシジルエーテル、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、コポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)ジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル
(h)ポリマー酸のグリシジルエステル、例えば、ポリアクリル酸ポリグリシジルエステル、ポリエステルジグリシジルエステル
(i)多価アルコールのグリシジルエーテル、例えば、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、グルコーストリグリシジルエーテル
(j)2−フルオロアルキル−1,2−ジオールのジグリシジルエーテルとしては、前記低屈折率物質のフッ素含有樹脂のフッ素含有エポキシ化合物に挙げた化合物例と同様のもの
(k)含フッ素アルカン末端ジオールグリシジルエーテルとしては、上記低屈折率物質のフッ素含有樹脂のフッ素含有エポキシ化合物等を挙げることができる。
上記エポキシ化合物の分子量は、平均分子量として2000以下で、好ましくは1000以下である。
上記のエポキシ化合物を活性線により硬化する場合、より硬度を上げるためには、(h)又は(i)の多官能のエポキシ基を有する化合物を混合して用いると効果的である。
エポキシ系活性線反応性化合物をカチオン重合させる光重合開始剤又は光増感剤は、活性線照射によりカチオン重合開始物質を放出することが可能な化合物であり、特に好ましくは、照射によりカチオン重合開始能のあるルイス酸を放出するオニウム塩の一群の複塩である。
活性線反応性化合物エポキシ樹脂は、ラジカル重合によるのではなく、カチオン重合により重合、架橋構造又は網目構造を形成する。ラジカル重合と異なり反応系中の酸素に影響を受けないため好ましい活性線反応性樹脂である。
本発明に有用な活性線反応性エポキシ樹脂は、活性線照射によりカチオン重合を開始させる物質を放出する光重合開始剤又は光増感剤により重合する。光重合開始剤としては、光照射によりカチオン重合を開始させるルイス酸を放出するオニウム塩の複塩の一群が特に好ましい。
かかる代表的なものは下記一般式(a)で表される化合物である。
一般式(a):〔(R1)a(R2)b(R3)c(R4)dZ〕w+〔MeXv〕w−
式中、カチオンはオニウムであり、ZはS、Se、Te、P、As、Sb、Bi、O、ハロゲン(例えばI、Br、Cl)、又はN=N(ジアゾ)であり、R1、R2、R3、R4は同一であっても異なっていてもよい有機の基である。a、b、c、dはそれぞれ0〜3の整数であって、a+b+c+dはZの価数に等しい。Meはハロゲン化物錯体の中心原子である金属又は半金属(metalloid)であり、B、P、As、Sb、Fe、Sn、Bi、Al、Ca、In、Ti、Zn、Sc、V、Cr、Mn、Co等である。Xはハロゲンであり、wはハロゲン化錯体イオンの正味の電荷であり、vはハロゲン化錯体イオン中のハロゲン原子の数である。
上記一般式(a)の陰イオン〔MeXv〕w−の具体例としては、テトラフルオロボレート(BF4 −)、テトラフルオロホスフェート(PF4 −)、テトラフルオロアンチモネート(SbF4 −)、テトラフルオロアルセネート(AsF4 −)、テトラクロロアンチモネート(SbCl4 −)等を挙げることができる。
また、その他の陰イオンとしては過塩素酸イオン(ClO4 −)、トリフルオロメチル亜硫酸イオン(CF3SO3 −)、フルオロスルホン酸イオン(FSO3 −)、トルエンスルホン酸イオン、トリニトロベンゼン酸陰イオン等を挙げることができる。
このようなオニウム塩の中でも特に芳香族オニウム塩をカチオン重合開始剤として使用するのが有効であり、中でも特開昭50−151996号、同50−158680号等に記載の芳香族ハロニウム塩、特開昭50−151997号、同52−30899号、同59−55420号、同55−125105号等に記載のVIA族芳香族オニウム塩、特開昭56−8428号、同56−149402号、同57−192429号等に記載のオキソスルホキソニウム塩、特公昭49−17040号等に記載の芳香族ジアゾニウム塩、米国特許第4,139,655号等に記載のチオピリリューム塩等が好ましい。また、アルミニウム錯体や光分解性けい素化合物系重合開始剤等を挙げることができる。上記カチオン重合開始剤と、ベンゾフェノン、ベンゾインイソプロピルエーテル、チオキサントン等の光増感剤を併用することができる。
また、エポキシアクリレート基を有する活性線反応性化合物の場合は、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等の光増感剤を用いることができる。この活性線反応性化合物に用いられる光増感剤や光開始剤は、紫外線反応性化合物100質量部に対して0.1質量部〜15質量部で光反応を開始するには十分であり、好ましくは1質量部〜10質量部である。この増感剤は近紫外線領域から可視光線領域に吸収極大のあるものが好ましい。
本発明に有用な活性線硬化樹脂組成物において、重合開始剤は、一般的には、活性線硬化性エポキシ樹脂(プレポリマー)100質量部に対して0.1質量部〜15質量部の使用が好ましく、更に好ましくは、1質量部〜10質量部の範囲の添加が好ましい。
また、エポキシ樹脂を上記ウレタンアクリレート型樹脂、ポリエーテルアクリレート型樹脂等と併用することもでき、この場合、活性線ラジカル重合開始剤と活性線カチオン重合開始剤を併用することが好ましい。
また、本発明に係るハードコート層には、オキセタン化合物を用いることもできる。用いられるオキセタン化合物は、酸素又は硫黄を含む3員環のオキセタン環を有する化合物である。中でも酸素を含むオキセタン環を有する化合物が好ましい。オキセタン環は、ハロゲン原子、ハロアルキル基、アリールアルキル基、アルコキシル基、アリルオキシ基、アセトキシ基で置換されていてもよい。具体的には、3,3−ビス(クロルメチル)オキセタン、3,3−ビス(ヨードメチル)オキセタン、3,3−ビス(メトキシメチル)オキセタン、3,3−ビス(フェノキシメチル)オキセタン、3−メチル−3クロルメチルオキセタン、3,3−ビス(アセトキシメチル)オキセタン、3,3−ビス(フルオロメチル)オキセタン、3,3−ビス(ブロモメチル)オキセタン、3,3−ジメチルオキセタン等が挙げられる。なお、本発明ではモノマー、オリゴマー、ポリマーのいずれであってもよい。
本発明に係るハードコート層には、公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂又はゼラチン等の親水性樹脂等のバインダーを上記記載の活性線硬化樹脂に混合して使用することができる。これらの樹脂は、その分子中に極性基を持っていることが好ましい。極性基としては、−COOM、−OH、−NR2、−NR3X、−SO3M、−OSO3M、−PO3M2、−OPO3M(ここで、Mは水素原子、アルカリ金属又はアンモニウム基を、Xはアミン塩を形成する酸を、Rは水素原子、アルキル基を表す)等を挙げることができる。
本発明に係るハードコート層が活性線硬化型樹脂を含む場合、活性線の照射方法としては、支持体上に、ハードコート層、反射防止層(中〜高屈折率層及び低屈折率層)等の塗設後に活性線を照射してもよいが、ハードコート層塗設時に活性線を照射することが好ましい。
本発明に使用する活性線は、紫外線、電子線、γ線等で、化合物を活性化させるエネルギー源であれば制限なく使用できるが、紫外線、電子線が好ましく、特に取り扱いが簡便で高エネルギーが容易に得られるという点で紫外線が好ましい。紫外線反応性化合物を光重合させる紫外線の光源としては、紫外線を発生する光源であれば何れも使用できる。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。また、ArFエキシマレーザ、KrFエキシマレーザ、エキシマランプ又はシンクロトロン放射光等も用いることができる。波長250nm〜420nmの紫外領域に発光スペクトルを持つ光源を使用するのが好ましい。照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、照射光量は20mJ/cm2以上が好ましく、更に好ましくは、50mJ/cm2〜2000mJ/cm2であり、特に好ましくは、50mJ/cm2〜1000mJ/cm2である。
紫外線照射は、ハードコート層と後述する反射防止層を構成する複数の層(中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層)それぞれに対して1層設ける毎に照射してもよいし、積層後照射してもよい。或いはこれらを組み合わせて照射してもよい。生産性の点から、多層を積層後、紫外線を照射することが好ましい。
また、電子線も同様に使用できる。電子線としては、コックロフトワルトン型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器から放出される50〜1000keV、好ましくは100〜300keVのエネルギーを有する電子線を挙げることができる。
本発明に使用する上記活性線反応性化合物を光重合又は光架橋反応を開始させるには、上記活性線反応性化合物のみでも開始するが、重合の誘導期が長かったり、重合開始が遅かったりするため、光増感剤や光開始剤を用いることが好ましく、それにより重合を早めることができる。
本発明に係るハードコート層が活性線硬化樹脂を含有する場合、活性線の照射時においては、光反応開始剤、光増感剤を用いることができる。
具体的には、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等及びこれらの誘導体を挙げることができる。また、エポキシアクリレート系樹脂の合成に光反応剤を使用する際に、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等の増感剤を用いることができる。塗布乾燥後に揮発する溶媒成分を除いた紫外線硬化性樹脂組成物に含まれる光反応開始剤及び/又は光増感剤の使用量は、組成物の1質量%〜10質量%が好ましく、特に好ましくは2.5質量%〜6質量%である。
また、活性線硬化樹脂として、紫外線硬化性樹脂を用いる場合、前記紫外線硬化性樹脂の光硬化を妨げない程度に、後述する紫外線吸収剤を紫外線硬化性樹脂組成物に含ませてもよい。
ハードコート層の耐熱性を高めるために、光硬化反応を抑制しないような酸化防止剤を選んで用いることができる。例えば、ヒンダードフェノール誘導体、チオプロピオン酸誘導体、ホスファイト誘導体等を挙げることができる。具体的には、例えば、4,4′−チオビス(6−tert−3−メチルフェノール)、4,4′−ブチリデンビス(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)メシチレン、ジ−オクタデシル−4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルベンジルホスフェート等を挙げることができる。
本発明においては、その他適宜、種々の紫外線硬化樹脂を選択して使用することができる。例えば市販品としては、アデカオプトマーKR、BYシリーズのKR−400、KR−410、KR−550、KR−566、KR−567、BY−320B(以上、(株)ADEKA製)、コーエイハードのA−101−KK、A−101−WS、C−302、C−401−N、C−501、M−101、M−102、T−102、D−102、NS−101、FT−102Q8、MAG−1−P20、AG−106、M−101−C(以上、広栄化学工業(株)製)、セイカビームのPHC2210(S)、PHCX−9(K−3)、PHC2213、DP−10、DP−20、DP−30、P1000、P1100、P1200、P1300、P1400、P1500、P1600、SCR900(以上、大日精化工業(株)製)、KRM7033、KRM7039、KRM7130、KRM7131、UVECRYL29201、UVECRYL29202(以上、ダイセル・ユーシービー(株))、RC−5015、RC−5016、RC−5020、RC−5031、RC−5100、RC−5102、RC−5120、RC−5122、RC−5152、RC−5171、RC−5180、RC−5181(以上、DIC(株)製)、オーレックスNo.340クリヤ(中国塗料(株)製)、サンラッド H−601(三洋化成工業(株)製)、SP−1509、SP−1507(以上、昭和高分子(株)製)、RCC−15C(グレース・ジャパン(株)製)、アロニックスM−6100、M−8030、M−8060(以上、東亞合成(株)製)、又はその他の市販のものから適宜選択して利用することができる。
活性線硬化樹脂を含む塗布組成物は、固形分濃度は10質量%〜95質量%であることが好ましく、塗布方法により適当な濃度が選ばれる。
本発明に係るハードコート層は界面活性剤を含有することも好ましく、界面活性剤としては、シリコーン系又はフッ素系界面活性剤が好ましい。
シリコーン系界面活性剤としては、疎水基がジメチルポリシロキサン、親水基がポリオキシアルキレンから構成される非イオン界面活性剤が好ましい。
非イオン面活性剤は、水溶液中でイオンに解離する基を有しない系面活性剤を総称していうが、疎水基のほか親水性基として多価アルコール類のヒドロキシル基(水酸基)、また、ポリオキシアルキレン鎖(ポリオキシエチレン)等を親水基として有するものである。親水性はアルコール性ヒドロキシル基(水酸基)の数が多くなるに従って、またポリオキシアルキレン鎖(ポリオキシエチレン鎖)が長くなるに従って強くなる。本発明に係わる非イオン界面活性剤は疎水基としてジメチルポリシロキサンを有することに特徴がある。
疎水基がジメチルポリシロキサン、親水基がポリオキシアルキレンから構成される非イオン界面活性剤を用いると、防眩性ハードコート層や低屈折率層のムラや膜表面の防汚性が向上する。ポリメチルシロキサンからなる疎水基が表面に配向し汚れにくい膜表面を形成するものと考えられる。他の界面活性剤を用いることでは得られない効果である。
これらの非イオン活性剤の具体例としては、例えば、日本ユニカー(株)製、シリコーン界面活性剤 SILWET L−77、L−720、L−7001、L−7002、L−7604、Y−7006、FZ−2101、FZ−2104、FZ−2105、FZ−2110、FZ−2118、FZ−2120、FZ−2122、FZ−2123、FZ−2130、FZ−2154、FZ−2161、FZ−2162、FZ−2163、FZ−2164、FZ−2166、FZ−2191等が挙げられる。
また、SUPERSILWET SS−2801、SS−2802、SS−2803、SS−2804、SS−2805等が挙げられる。
また、これら、疎水基がジメチルポリシロキサン、親水基がポリオキシアルキレンから構成される非イオン系の界面活性剤の好ましい構造としては、ジメチルポリシロキサン構造部分とポリオキシアルキレン鎖が交互に繰り返し結合した直鎖状のブロックコポリマーであることが好ましい。主鎖骨格の鎖長が長く、直鎖状の構造であることから、優れている。親水基と疎水基が交互に繰り返したブロックコポリマーであることにより、シリカ微粒子の表面を1つの活性剤分子が、複数の箇所で、これを覆うように吸着することができるためと考えられる。
これらの具体例としては、例えば、日本ユニカー(株)製、シリコーン界面活性剤 ABN SILWET FZ−2203、FZ−2207、FZ−2208等が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、疎水基がパーフルオロカーボンチェインをもつ界面活性剤を用いることができる。種類としては、フルオロアルキルカルボン酸、N−パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−(フルオロアルキルオキシ)−1−アルキルスルホン酸ナトリウム、3−(ω−フルオロアルカノイル−N−エチルアミノ)−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、N−(3−パーフルオロオクタンスルホンアミド)プロピル−N,N−ジメチル−N−カルボキシメチレンアンモニウムベタイン、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、N−プロピル−N−(2−ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキルスルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル−N−エチルスルホニルグリシン塩、リン酸ビス(N−パーフルオロオクチルスルホニル−N−エチルアミノエチル)等が挙げられる。本発明では非イオン界面活性剤が好ましい。
これらのフッ素系界面活性剤はメガファック、エフトップ、サーフロン、フタージェント、ユニダイン、フローラード、ゾニール等の商品名で市販されている。
好ましい添加量はハードコート層の塗布液に含まれる固形分当たり0.01〜3.0%であり、より好ましくは0.02〜1.0%である。
他の界面活性剤を併用して用いることもでき、適宜、例えばスルホン酸塩系、硫酸エステル塩系、リン酸エステル塩系等のアニオン界面活性剤、また、ポリオキシエチレン鎖親水基として有するエーテル型、エーテルエステル型等の非イオン界面活性剤等を併用してもよい。
本発明にハードコート層を塗設する際の溶媒は、例えば、炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エステル類、グリコールエーテル類、その他の溶媒の中から適宜選択し、又は混合して使用できる。好ましくは、プロピレングリコールモノ(C1〜C4)アルキルエーテル又はプロピレングリコールモノ(C1〜C4)アルキルエーテルエステルを5質量%以上、更に好ましくは5質量%〜80質量%以上含有する溶媒が用いられる。
ハードコート層組成物塗布液の塗布方法としては、グラビアコーター、スピナーコーター、ワイヤーバーコーター、ロールコーター、リバースコーター、押出コーター、エアードクターコーター、スプレーコート、インクジェット法等公知の方法を用いることができる。塗布量はウエット膜厚で5μm〜30μmが適当で、好ましくは10μm〜20μmである。塗布速度は10m/分〜200m/分が好ましい。
ハードコート層組成物は塗布乾燥された後、紫外線や電子線等の活性線を照射され硬化処理されることが好ましいが、前記活性線の照射時間は0.5秒〜5分が好ましく、紫外線硬化性樹脂の硬化効率、作業効率等から更に好ましくは、3秒〜2分である。
<反射防止層>
本発明のハードコート層を有するセルロースエステルフィルムのハードコート層上には、反射防止層を設けることが視認性を更に向上するため好ましい。
用いられる反射防止層は低屈折率層のみの単層構成でもよいが、多層の屈折率層を設けることも好ましい。セルロースエステルフィルム上にハードコート層を有し、その表面上に光学干渉によって反射率が減少するように屈折率、膜厚、層の数、層順等を考慮して積層できる。反射防止層は、支持体よりも屈折率の高い高屈折率層と、支持体よりも屈折率の低い低屈折率層を組み合わせて構成したり、特に好ましくは、3層以上の屈折率層から構成される反射防止層であり、支持体側から屈折率の異なる3層を、中屈折率層(支持体又は防眩性ハードコート層よりも屈折率が高く、高屈折率層よりも屈折率の低い層)/高屈折率層/低屈折率層の順に積層されているものが好ましい。
又は、2層以上の高屈折率層と2層以上の低屈折率層とを交互に積層した4層以上の層構成の反射防止層も好ましく用いられる。
本発明に係る反射防止層の好ましい層構成の例を下記に示す。ここで/は積層配置されていることを示している。
セルロースエステルフィルム/クリアハードコート層/低屈折率層
セルロースエステルフィルム/クリアハードコート層/高屈折率層/低屈折率層
セルロースエステルフィルム/クリアハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
セルロースエステルフィルム/防眩性ハードコート層/低屈折率層
セルロースエステルフィルム/防眩性ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層
セルロースエステルフィルム/防眩性ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
汚れや指紋のふき取りが容易となるように、最表面の低屈折率層の上に、更に防汚層を設けることもできる。防汚層としては、含フッ素有機化合物が好ましく用いられる。
光学干渉により反射率を低減できるものであれば、特にこれらの層構成のみに限定されるものではない。また、上記層構成では、適宜中間層を設けてもよく、例えば導電性ポリマー微粒子(例えば架橋カチオン微粒子)又は金属酸化物微粒子(例えば、SnO2、ITO等)を含む帯電防止層等は好ましい。
低屈折率層、中屈折率層、高屈折率層は公知の構成で形成することができるが、特に低屈折率層は中空球状シリカ系微粒子が好適に用いられることが好ましく、(I)多孔質粒子と該多孔質粒子表面に設けられた被覆層とからなる複合粒子、又は(II)内部に空洞を有し、かつ内容物が溶媒、気体又は多孔質物質で充填された空洞粒子が用いられる。
上記、低屈折率層、中屈折率層、高屈折率層に関しては、特開2005−266051号公報に詳述されている。
反射防止層を構成する各屈折率層の膜厚としては、各々1nm〜200nmの範囲が好ましく、更に好ましくは、5nm〜150nmであるが、各層の屈折率に応じて、各々適切な膜厚を選択することが好ましい。
本発明に用いられる反射防止層は、450nm〜650nmにおける平均反射率が1%以下であることが好ましく、特に好ましくは0.5%以下である。また、この範囲における最低反射率は0.00〜0.3%にあることが特に好ましい。
反射防止層の屈折率と膜厚は、分光反射率の測定より計算して算出することができる。また、作製した低反射フィルムの反射光学特性は、分光光度計を用い、5度正反射の条件にて反射率を測定することができる。
<偏光板>
本発明のハードコートフィルムは、偏光板用保護フィルムに好ましく用いられ、液晶セルから視認側に配置される偏光板の表面側に用いられることが好ましい。
偏光板は、偏光子の少なくとも一方の面に保護フィルムを貼り合わせ積層することによって形成される。偏光子は従来から公知のものを用いることができ、例えば、ポリビニルアルコールフィルムのような親水性ポリマーフィルムを、沃素のような二色性染料で処理して延伸したものである。ハードコートフィルムと偏光子との貼り合わせは、特に限定はないが、水溶性ポリマーの水溶液からなる接着剤により行うことができる。この水溶性ポリマー接着剤は完全鹸化型のポリビニルアルコール水溶液が好ましく用いられる。
もう一方の面には本発明のハードコートフィルムを用いても、別の偏光板保護フィルムを用いてもよい。例えば、市販のセルロースエステルフィルム(例えば、コニカミノルタタック KC8UX、KC4UX、KC5UX、KC8UY、KC4UY、KC4UA、KC6UA、KC12UR、KC8UCR−3、KC8UCR−4、KC8UCR−5、KC8UE、KC4UE、KC4FR−3、KC4FR−4、KC4HR−1、KC8UY−HA、KC8UX−RHA、以上コニカミノルタオプト(株)製)等が好ましく用いられる。
本発明の好ましい態様としては、偏光子の一方の面に本発明のハードコートフィルムが貼合され、他方の面に厚さ20μm以上75μm以下の光学補償機能を有するセルロースエステルフィルムが貼合されてなる偏光板である。
偏光板の主たる構成要素である偏光子とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光子は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがある。
偏光子は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。
上記粘着層に用いられる粘着剤としては、粘着層の少なくとも一部分において25℃での貯蔵弾性率が1.0×104Pa〜1.0×109Paの範囲である粘着剤が用いられていることが好ましく、粘着剤を塗布し、貼り合わせた後に種々の化学反応により高分子量体または架橋構造を形成する硬化型粘着剤が好適に用いられる。
具体例としては、例えば、ウレタン系粘着剤、エポキシ系粘着剤、水性高分子−イソシアネート系粘着剤、熱硬化型アクリル粘着剤等の硬化型粘着剤、湿気硬化ウレタン粘着剤、ポリエーテルメタクリレート型、エステル系メタクリレート型、酸化型ポリエーテルメタクリレート等の嫌気性粘着剤、シアノアクリレート系の瞬間粘着剤、アクリレートとペルオキシド系の2液型瞬間粘着剤等が挙げられる。
上記粘着剤としては1液型であっても良いし、使用前に2液以上を混合して使用する型であっても良い。
また上記粘着剤は有機溶剤を媒体とする溶剤系であってもよいし、水を主成分とする媒体であるエマルジョン型、コロイド分散液型、水溶液型などの水系であってもよいし、無溶剤型であってもよい。上記粘着剤液の濃度は、粘着後の膜厚、塗布方法、塗布条件等により適宜決定されれば良く、通常は0.1〜50質量%である。
<液晶表示装置>
本発明のハードコートフィルム、当該フィルムを用いた偏光板は、様々な表示モードの液晶セル、液晶表示装置に用いることができる。TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)及びHAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な表示モードが提案されている。
特に、本発明のハードコートフィルム、当該フィルムを用いた偏光板はメディカル用液晶表示装置に適しており、高解像度モニターである場合に、湿熱環境下で階調の乱れやコントラストの低下のない液晶表示装置を提供することができる。
メディカル用液晶表示装置への要求性能は、例えばフルHD(1920×1080)液晶パネル、高輝度・高視野角であり様々な照明環境で使用でき、広い色再現性や、毛細血管や神経など小型モニターで判断の難しい画像を鮮明に再現できることなどが求められている。本発明のハードコートフィルム、当該フィルムを用いた偏光板は、このような高品位な表示を可能にするものである。
市販されている製品としては、SONY(株)製LMD−3250MD、NEC(株)製LCD2090UXi−M、ナナオ(株)製RadiForce GS521−ST、TOTSU Medical社製LMD−1420MD等が挙げられる。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例で用いる本発明に係るエステル化合物、比較の可塑剤、紫外線吸収剤について下記表4、化1に示す。
実施例1
<ハードコートフィルム101の作製>
〈微粒子分散液1〉
微粒子(アエロジル R972V 日本アエロジル(株)製) 11質量部
エタノール 89質量部
以上をディゾルバーで50分間攪拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。
〈微粒子添加液1〉
メチレンクロライドを入れた溶解タンクに十分攪拌しながら、微粒子分散液1をゆっくりと添加した。さらに、二次粒子の粒径が所定の大きさとなるようにアトライターにて分散を行った。これを日本精線(株)製のファインメットNFで濾過し、微粒子添加液1を調製した。
メチレンクロライド 99質量部
微粒子分散液1 5質量部
下記組成の2種のドープ液を調製した。まず加圧溶解タンクにメチレンクロライドとエタノールを添加した。溶剤の入った加圧溶解タンクにセルロースエステルを攪拌しながら投入した。これを加熱し、攪拌しながら、完全に溶解した。
この2種のドープを用いて、共流延によって基層、表層部分を有する積層セルロースエステルフィルム1を作製した。
(基層用セルロースエステルドープの調製)
メチレンクロライド 340質量部
エタノール 64質量部
ジアセチルセルロース(アセチル基置換度2.4、Mw=230000)
100質量部
エステル化合物A: 5.3質量部
(基層中の含有量がフィルム全固形分量に対して5.0質量%になる量を添加)
UV吸収剤a: 1.1質量部
(基層中の含有量がフィルム全固形分量に対して1.0質量%になる量を添加)
(表層用セルロースアセテートドープの調製)
メチレンクロライド 340質量部
エタノール 64質量部
セルローストリアセテート(アセチル基置換度2.78、Mw=250000)
100質量部
エステル化合物A: 1.1質量部
(表層中の含有量がフィルム全固形分量に対して1.0質量%になる量を添加)
UV吸収剤a: 5.4質量部
(表層中の含有量がフィルム全固形分量に対して5.0質量%になる量を添加)
微粒子添加液1 1質量部
上記の組成物を各々ミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解した後、平均孔径34μmのろ紙及び平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過し、各セルロースアセテートドープを調製した。ドープを図1で示すダイスを用い、バンド流延機にて金属製支持体上に基層/表層の順で2層構成になるように共流延した。ここで、各ドープの流延量を調整することにより結果的に延伸後のフィルムの膜厚が各々57μm/3μmとなるように同時多層流延を行った。残留溶剤量が約30質量%でバンドから剥ぎ取ったフィルムをテンターにより140℃の熱風を当てて、幅手方向に延伸率32%まで拡幅した後、延伸率が30%となるように140℃で60秒間緩和させた。その後テンター搬送からロール搬送に移行し、更に120℃から150℃で乾燥し搬送張力100N/mで巻き取った。
以上のようにして、乾燥膜厚60μm、長さ3000mの積層セルロースエステルフィルム1得た。
次いで上記作製した積層セルロースエステルフィルム1の表層表面に下記ハードコート層塗布液をダイコートし、80℃で乾燥した後、120mJ/cm2の紫外線を高圧水銀灯で照射して硬化後の膜厚が6μmになるようにクリアハードコート層を設け、ハードコートフィルム101を作製した。
(ハードコート層用塗布液)
アセトン 45質量部
酢酸エチル 45質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 10質量部
ウレタンアクリレート(DIC ユニディック RS27−921)
100質量部
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン
(イルガキュア184、BASFジャパン社製) 5質量部
2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モノフォリノ−1−オン
(イルガキュア907、BASFジャパン社製) 3質量部
BYK−331(シリコーン界面活性剤、ビックケミー・ジャパン(株)製)
0.5質量部
<積層セルロースエステルフィルム2〜20、ハードコートフィルム102〜120の作製>
ハードコートフィルム101の作製において、基層及び表層に用いる表4記載のエステル化合物、及び比較の可塑剤、基層及び表層に用いる上記UV吸収剤の種類、及び含有量を各々表5に記載のように変更した以外は同様にして、積層セルロースエステルフィルム2〜20、及びハードコートフィルム102〜120を作製した。
<偏光板の作製>
厚さ、120μmのポリビニルアルコールフィルムを、一軸延伸(温度110℃、延伸倍率5倍)した。
これをヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g、水100gからなる水溶液に60秒間浸漬し、次いでヨウ化カリウム6g、ホウ酸7.5g、水100gからなる68℃の水溶液に浸漬した。これを水洗、乾燥し偏光子を得た。
次いで、下記工程1〜5に従って偏光子と前記ハードコートフィルム101〜120と、裏面側にはコニカミノルタタックKC8UCR5(コニカミノルタオプト(株)製セルロースエステルフィルム)を貼り合わせて偏光板201〜220を作製した。
工程1:60℃の2モル/Lの水酸化ナトリウム溶液に90秒間浸漬し、次いで水洗し乾燥して、偏光子と貼合する側を鹸化したハードコートフィルム101〜120とコニカミノルタタックKC8UCR5を得た。
工程2:前記偏光子を固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1〜2秒浸漬した。
工程3:工程2で偏光子に付着した過剰の接着剤を軽く拭き除き、これを工程1で処理したハードコートフィルム101〜120の上にのせて配置した。
工程4:工程3で積層したハードコートフィルム101〜120と偏光子と裏面側コニカミノルタタックKC8UCR5を圧力20〜30N/cm2、搬送スピードは約2m/分で貼合した。
工程5:80℃の乾燥機中に工程4で作製した偏光子とハードコートフィルム101〜120とコニカミノルタタックKC8UCR5とを貼り合わせた試料を2分間乾燥し、それぞれ、ハードコートフィルム101〜120に対応する偏光板201〜220を作製した。
<メディカル用液晶表示装置の作製>
視野角測定を行う液晶パネルを以下のようにして作製し、メディカル用液晶表示装置としての特性を評価した。
TOTSU Medical 社製14型液晶モニターLMD−1420MDの予め貼合されていた両面の偏光板を剥がして、上記作製して湿熱処理した偏光板201〜220をそれぞれ液晶セルのガラス面の両面に貼合した。
その際、その偏光板の貼合の向きは、KC8UCR5の面が液晶セル側となるように、かつ、予め貼合されていた偏光板と同一の方向に吸収軸が向くように行い、それぞれ、偏光板201〜220に対応する液晶表示装置301〜320を各々作製した。
《評価》
(寸法収縮)
各ハードコートフィルム試料について、30mm幅×120mm長さ(流延方向)の試験片を2枚採取する。試験片の長さ方向の両端に6mmφの穴をパンチで100mm間隔であける。これを25℃60%RHの環境下で調湿した後、自動ピンケージ(新東科学(株)製)を用いて熱処理前のパンチ間隔の寸度を測定した。次に、各試験片を80℃90%RHの恒温恒湿器にいれて1000時間放置した後、25℃60%RHの室内で2時間放置し、同様の測定方法で熱処理後のパンチ間隔の寸度を測定した。
寸度収縮X(%)=[(熱処理前寸度−熱処理後寸度)/熱処理前寸度]×100
評価は以下の基準で行った
○:0≦X≦1.0
△:1.0<X≦1.5
×:1.5<X
(ヘイズ変動)
ヘイズ値はヘイズメーター(1001DP型、日本電色工業(株)製)を用いて測定し、透明性の指標とすることが出来る。
各ハードコートフィルム試料について、50mm幅×50mm長さ(流延方向)の試験片を1枚採取する。
これを25℃60%RHの環境下で調湿した後、ヘイズ値を測定した。
次に、各試験片を80℃90%RHの恒温恒湿器にいれて1000時間放置した後、25℃60%RHの室内で2時間放置し、同様の測定方法でヘイズ値を測定した。
ヘイズ変動Y(%)=(熱処理後のヘイズ値−熱処理前のヘイズ値)
評価は以下の基準で行った。
○:0≦X≦0.3
△:0.3<X≦0.5
×:0.5<X
(コントラスト)
上記作製した偏光板を80℃90%RHの恒温恒湿器にいれて1000時間放置した後、25℃60%RHの室内で2時間放置する。
その偏光板を用いたメディカル用液晶表示装置で23℃、60%RHの環境で、各液晶パネルのバックライトを点灯させて、30分間放置した後、白色部分と黒色部分とを含むテストパターンを表示し、そのコントラストを目視にて評価した。
◎:コントラストが、熱処理前の偏光板を用いたものと同等
○:コントラストが、熱処理前の偏光板を用いたものにわずかに劣る
△:コントラストが、熱処理前の偏光板を用いたものに劣る
×:コントラストが、熱処理前の偏光板を用いたものにかなり劣る
(階調)
上記作製した偏光板を80℃90%RHの恒温恒湿器にいれて1000時間放置した後、25℃60%RHの室内で2時間放置する。
その偏光板を用いたメディカル用液晶表示装置で、液晶表示装置に白と黒とその中間調、合わせて8段階の濃淡の異なる階調表示をさせた状態で、パネルの正面から徐々に下方向にパネルの傾斜角を倒していったときに、本来異なる階調が同じ階調に見える角度が、熱処理を実施していない偏光板を用いた液晶表示装置を基準として、
◎:基準よりも0°以上1°未満狭い
○:基準よりも1°以上3°未満狭い
△:基準よりも3°以上5°未満狭い
×:基準よりも5°以上狭い
以上の評価結果を表6に示す。
表6から、本発明のハードコートフィルムは、寸法収縮、ヘイズ変動に優れ、偏光板、メディカル用液晶表示装置に用いたところ、湿熱環境下でのコントラスト、階調に優れていることが分かる。特に、基層及び表層におけるエステル化合物の含有量K1、K2の比、K1/K2が1.5以上であり、かつ前記基層及び表層におけるUV吸収剤の含有量M1、M2の比、M2/M1が1.1以上であると、上記特性がより良好となった。
実施例2
実施例1で作製した積層セルロースエステルフィルム1、及びハードコートフィルム101において、表7記載のようにエステル化合物のジオールとジカルボン酸を変化させ、更にUV吸収剤の種類、基層、表層の膜厚を変化させて、積層セルロースエステルフィルム21〜45、及びハードコートフィルム121〜145を作製した。
作製したハードコートフィルムを用いて、偏光板、メディカル用液晶表示装置を作製し、実施例1と同じ評価を行い、結果を表8に示した。
本発明のハードコートフィルムは、エステル化合物の酸価が0.05〜1.5であること、UV吸収剤がベンゾトリアゾール系化合物であること、セルロースエステルフィルムの厚みが80μm以下であり、かつ前記表層の厚みが0.1μm以上、5μm以下である場合に、より優れた特性を発揮できることが分かった。