JP5787340B2 - 破骨細胞分化抑制組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、希少糖として自然界で産生されるD-アロースを有効成分とした破骨細胞形成抑制組成物であり骨粗鬆症などの骨の疾患の予防、治療に有用な組成物に関する。
近年の高齢化社会に伴い、壮年期以降の人に発現するとされる骨粗鬆症が注目を浴びている。骨粗鬆症は、骨自体の化学的成分の変化によるものではなく、骨量の異常な減少に伴い、骨密度及び骨強度が低下して骨折や骨破壊等を生じさせる病気であり骨の代謝平衡のバランスが崩れて発症する。骨は、重力に抗して身体を支え運動機能を保持すると共に、体内最大のカルシウムの貯蔵庫としてCaホメオスタシスの維持に必須の役割を果たしているが、運動機能およびCaホメオスタシス維持機能の2つの機能を果たすために、通常、骨は骨形成と骨吸収とを繰り返しており、現状を維持しながら新しく生まれ変わり、再構築を繰り返している。例えば、骨の吸収は、休止期にある骨の表面がホルモンやサイトカイン等の刺激物質により刺激を受けると、破骨細胞に情報伝達されて骨の吸収が開始される。一方、破骨細胞により吸収されて破壊された骨は、骨芽細胞によって修復され、骨の形成が行われる。このように破骨細胞及び骨芽細胞が並行して働き骨の吸収及び骨の形成が行われ、正常な状態にある生体内においては、骨の吸収量と骨の形成量とが並行しており、生体内の調和により骨は現状を維持しつつ新しく生まれ変わっている。
このように、骨の病気も細胞の段階でみると,骨芽細胞と呼ばれる骨を造る細胞と,破骨細胞と呼ばれる骨を壊す細胞の発現、あるいは活性、機能が何らかの形で異常となることで発症すると感がられる。健康な時には破骨細胞と骨芽細胞の活性は均衡しており,破骨細胞が壊した古い骨と同じ量の新しい骨が骨芽細胞によって造られ、骨の量は常に一定に保たれている。外から見ると,骨は全く変化していないように見えるが、内側の骨髄では人の一生の間、骨のリモデリングは継続している。ところが、骨粗鬆症の場合には,加齢やエストロゲンのようなホルモンの欠乏により骨芽細胞の活性が弱まり、一方、破骨細胞の活性が高まった結果、造られる骨の量よりも壊される骨の量が多くなり、全体として骨の量が減ってしまう状態となっている。骨粗鬆症では、骨は外側ではなく、内側の骨髄から量が減少する。
破骨細胞は白血球や赤血球などの骨髄中に含まれる血液細胞と同じ細胞起源を持ち、分化する方向が違っただけである。このようにして形成された破骨細胞は骨表面に接着して骨を吸収し,骨吸収を終えるとアポトーシスにより死滅して,その一生を終えるが、破骨細胞がこの全過程を終えるのにはほぼ2週間を要するといわれている。
骨の中で破骨細胞が作られたり、骨を吸収する際には破骨細胞と骨芽細胞がカップリングされている。試験管の中で破骨細胞を造る時にも破骨細胞が活動するためには骨芽細胞とのカップリングが不可欠です。これは、骨芽細胞が持っている膜結合性のサイトカインRANKL(Receptor Activator of NF-kappa B Ligand)と破骨細胞が持っているその受容体RANKとが応答し合うことが破骨細胞の形成、活性化、生存に必要である。
骨粗鬆症を防止する治療剤として、各種の薬剤が研究されている。例えば、エストロゲンは骨粗鬆症の治療作用を有するため、エストロゲンに化学構造が類似したステロイド系ホルモンおよびその誘導体であって骨粗鬆症治療作用を維持し、かつ、エストロゲンが有する副作用を軽減する物質の開発が行われてきた。他の破骨細胞を阻害する骨粗鬆症の治療薬としては、カルシトニン、活性型ビタミンD3、ビタミンK、イプリフラボン、ビスホスホネートなどが知られているが、本格的な研究がなされるまでには至っていない。
化合物を有効成分とするものとしては、活性ビタミンD3類が骨吸収、骨形成を調節するなどの作用を有するため骨粗鬆症治療剤などの治療剤として使用されている。例えば、活性型ビタミンD類とビスホスフォン酸類とを併用することにより、骨密度及び骨強度を向上させ、かつ、血中カルシウム濃度を上昇させないバランスのとれた骨粗鬆症治療剤(特許文献1)、アルデヒド化合物の一種を有効成分とする骨吸収抑制剤(特許文献2)、微生物の産生する化合物を有効成分とする破骨細胞文化抑制剤(特許文献3)などが開示されている。
また、天然に産する植物体やその抽出物を有効成分とする骨粗鬆症の治療薬が開示されている。例えば、 セリ科ペトロセリヌム(Petroselinum)属、キク科カーサムス(Carthamus)属、クマツヅラ科ヴァーベナ(Verbena)属、およびシソ科メリッサ(Melissa)属のハーブ植物から選ばれた、少なくとも1種類の植物の生および乾燥物またこれらより得られる抽出物を有効成分とする閉経後骨粗鬆症の予防又は治療剤(特許文献4)、ケルセチンまたはケルセチン誘導体を有効成分とするものであって、タマネギ、ほうれん草、ケールおよびパセリからなる群より選択されるいずれか1種以上の植物の抽出物からなる破骨細胞分化抑制因子産生促進用組成物(特許文献5)、温州ミカンの果実、果皮及び,じょうのう膜の溶媒抽出物を含有することを特徴とする骨粗鬆症予防、改善用組成物(特許文献6)や、ネギ属、オランダゼリ属、アブラナ属及びキバナスズシロ属の抽出物及び濃縮物からなる群から選択される植物抽出物もしくは濃縮物、またはその混合物を含む骨吸収に対して抑制効果を有する野菜抽出物もしくは濃縮物の使用(特許文献7)が開示されている。
特開平11−60489号公報 特開2010−1253号公報 国際公開WO2003/076639号パンフレット 特許第3479224号公報 特開2007−137775号公報 2006-83151号公報 特表2001−524119号公報 特開2002-17392号公報
Nature. 2003 May 15;423(6937):337-42 ジャーナル・オブ・ファーメンテーション・アンド・バイオエンジニアリング第85巻、539乃至541頁(1998年)
高齢化社会を迎えた現代において、寝たきり老人の増加は大きな課題となり、寝たきりを招く原因として脳卒中や骨折等があげられ、その予防が重要視されている。例えば、骨折への予防策として薬物治療が行なわれているが、服薬など患者への負担は大きいものである。壮年期以降の人に発現する骨粗鬆症の治療には多くの化合物、天然物が注目されているが、大量に安価で入手でき、副作用の心配がない化合物または素材を得ることは容易ではない。そこで、本発明者らは、比較的安価で大量生産でき副作用の心配がない天然物質を骨粗鬆症の治療薬として開発する努力をなしてきた。そうした中で、希少糖と呼ばれる天然産生の糖類は、従来、入手困難であり高価な糖類であったが、近年、大量に生産する手段が開発された。また、希少糖の生理活性が注目され様々な用途が開発されてきていることから骨粗鬆症の治療への適用を試みた開発研究を積み重ねた結果本発明に到達した。
本発明の目的は、D-アロースを有効成分とする破骨細胞への分化を抑制する組成物を提供することにある。また、本発明の目的は、天然に産する希少糖の一種であるD-アロースを有効成分とする骨粗鬆症の治療などに有用な組成物を提供することにある。また、本発明の目的は、希少糖を用いることにより化合物からなる薬剤と同様の効果を持つ組成物を通常の食事などで摂取でき患者への負担を軽減することである。
本発明は次の技術的事項から構成されている。
(1)D-アロースを有効成分とし、チオレドキシン結合蛋白質(TXNIP)の発現を促進するための、またはチオレドキシン(Thioredoxin)の発現を抑制するための、破骨細胞前駆細胞の破骨細胞への分化抑制組成物(但し、食品組成物である場合を除く。)
(2)上記(1)記載の破骨細胞前駆細胞の破骨細胞への分化抑制組成物(但し、食品組成物である場合を除く。)からなる骨吸収抑制剤。
(3)骨吸収性疾患の予防または改善のための上記(2)記載の骨吸収抑制剤。
(4)骨吸収性疾患が骨粗鬆症、骨量減少または骨折である上記(3)記載の骨吸収抑制剤。
D-アロースを有効成分とすることにより破骨細胞分化抑制効果を発揮する組成物を提供することができる。チオレドキシン結合蛋白質(TXNIP)の発現誘導を促進またはチオレドキシン(Thioredoxin)の発現を抑制させて破骨細胞前駆細胞の破骨細胞への分化を抑制する。チオレドキシンの発現誘導は破骨細胞の分化を促進するが、TXNIPの発現誘導は、チオレドキシンを結合することにより遊離のチオレドキシンを減らすので破骨細胞の分化を抑制する。
本発明の破骨細胞分化抑制組成物により、骨代謝異常疾患である骨吸収疾患、例えば骨粗鬆症や骨折の予防または治療に有用な組成物を提供することが可能となる。また、本発明により、骨粗鬆症、関節リウマチ、変形関節炎、関節炎、変形性腰、椎症、全身性エリテマトーデス、糖尿病における骨減少症、慢性腎不全における骨密度低下、骨髄腫、バーキットリンパ腫、悪性リンパ腫、家族性骨ページェット病、家族性拡張性骨溶解症または歯周疾患の予防または治療が期待される。また、D-アロースは天然物由来の糖であることから細胞毒性が低く安全性の高い骨粗鬆予防や治療用の組成物として提供される。D-アロースは、甘みを有する糖であることから食品類の甘味料の一部として簡便に摂取することが可能であるとともに、大量生産技術が開発されて安価に入手することができる利用に優れた糖である。
破骨細胞前駆細胞にRANKLを作用させ破骨細胞へと誘導した細胞を示す。 破骨細胞前駆細胞にRANKLとD-アロースを作用させた際の細胞の状態を示す。 リアルタイムPCRによる分化誘導を1,3,5日経過した後のTXNIPの発現変化を示す。 TRAP染色(左図)およびピットフォーメイション(右図)により、試験に使用するマウス由来の破骨細胞前駆細胞の破骨細胞へ分化することを確認したことを示す。 D-アロースの作用によるTXNIPおよびチオレドキシンの発現量の変化をリアルタイムPCRにより測定した結果を示す。 D-アロースの作用によるTXNIPおよびチオレドキシンの発現量の変化をウエスターンブロットにより測定した結果を示す。 D-アロースの作用により貧食が抑制されることをピットフォーメイションにより測定した結果を示す。 D-アロースの作用によりチオレドキシンの発現量が変化することを示す。 D-アロースの作用によりチオレドキシン結合タンパクの発現量が増加することを示す。 D-アロースの作用により破骨細胞への分化が抑制されることをTRAP染色により示す。
本発明は、D-アロースの作用により破骨細胞前駆細胞の分化抑制誘導因子であるTXNIPを過剰発現させて破骨細胞への分化を抑制する破骨細胞分化抑制組成物に関するものである。
破骨細胞は骨芽細胞とともに骨の代謝に重要な役割を果たし、両者の良好なバランスにより骨の機能が維持される。破骨細胞の分化には、細胞質のチオレドキシン(Thioredoxin)の核内への移行が引き金になっていることが知られている。また、分化誘導因子であるRANKL(Receptor Activator of NF-kappa B Ligand)を添加すると、前駆細胞は多核大型化した破骨細胞に分化誘導される。破骨細胞の分化過程においては、TXNIP(チオレドキシン結合蛋白質、Thioredoxin-interacting protein)による発現抑制が認められ、また、TXNIPの過剰発現はチオレドキシンを結合することで核に移行するチオレドキシンを減少させ破骨細胞への分化を抑制すると考えられる。
本発明者らは、TXNIP は、細胞質に存在しチオレドキシンを結合するタンパク質であるが、生理活性を有するD-アロースが破骨細胞の分化に影響を及ぼすのではないかとの仮説を立て実験を行った。そして、マウスマクロファージ様細胞株であるRAW264細胞をRANKLにより破骨細胞へと分化誘導する系にD-アロースを添加し、その影響を検討し、分化の評価にはTRAP(酒石酸抵抗性酸性フォスファターゼ)染色やPit formationによる骨吸収能によった。その結果、前駆細胞から破骨細胞への分化段階ではTXNIPの減少を伴うが、D-アロースの添加によりTXNIPの発現が増加するとともに分化が抑制されることが確認できた。この試験結果から、希少糖の一種であるD-アロースの骨粗鬆症治療への適用が可能であることが判明した。希少糖は天然物であり人体への影響がほとんどない無害な糖であることはよく知られているところであり食品類の飲食による有効成分の経口摂取により骨粗鬆症を治療するには最適な素材である。
これまで自然界に微量にしか存在しない希少糖の生産方法とその生理学的効果について研究を行なっているなかで、本発明者らは、D-アロースは、Thioredoxin interacting protein(TXNIP)遺伝子の強力な発現誘導によってがん細胞を特異的に増殖抑制する作用をもつことを見出した。TXNIPは破骨細胞の分化過程においても重要な役割をもつことが示唆されており、破骨細胞前駆細胞を用いてD-アロースによるTXNIP発現誘導の分化に対する影響や発現誘導メカニズムについて解析を行なった結果に本発明は基づいている。
そこで、破骨細胞前駆細胞であるRaw267をRANKLにて破骨細胞へ分化誘導し、D-アロースの作用効果を検討した。TRAP(酒石酸抵抗性酸性フォスファターゼ)染色では、RANKL処理によって赤色に染まる大型の破骨細胞が多数認められたが(図1参照)、D-アロースを同時投与によってその数が減少し分化抑制がみられた(図2参照)。また、リアルタイムPCRでは、RANKL処理後の分化過程では無処理(Control)に比べ、TXNIP発現が抑制されるが、D-アロース単独またはRANKLとの併用では著明なTXNIP発現誘導が見られた(図3参照)。これらの結果から前駆細胞から破骨細胞への分化過程ではTXNIP遺伝子発現が減少するが、D-アロース投与により発現を増強させると分化が抑制されることがわかり、D-アロースにより破骨細胞への分化をコントロールできる可能性が示唆された。今後、骨粗鬆症の治療などへの応用が考えられる。
[希少糖について]
「希少糖」とは、自然界に微量にしか存在しない単糖と定義づけることができる。自然界に多量に存在する単糖は、D-グルコース、D-フラクトース、D-ガラクトース、D-マンノース、D-リボース、D-キシロース、L−アラビノースの7種類あり、それ以外の単糖は、自然界における存在量が少なく希少糖に分類することができる。また、糖アルコールは単糖を還元してできるが、自然界にはD-ソルビトールおよびD-マンニトールが比較的多いが、それ以外のものは量的には少ないので、これらも希少糖と定義される。これらの希少糖は、これまで入手が困難であったが、自然界に多量に存在する単糖から希少糖を生産する方法が開発されつつあり、その技術を利用して製造することができる。
炭素数が6つの単糖(ヘキソース)は全部で34種類あり、アルドースが16種類、ケトースが8種類、糖アルコールが10種類ある。これらの糖は、酸化還元酵素の反応、アルドース異性化酵素の反応、アルドース還元酵素の反応で変換できることは、本発明者らの研究を含めた研究で知られている。しかしながら、D-グルコース(ブドウ糖)やD-フラクトースは自然界に多量に存在する糖であり安価であるが、これらから希少糖を合成することはできなかった。
[D-アロースについて]
アロース (allose) は、六炭糖およびアルドースに分類される単糖の一種。グルコースの3位のエピマーである。希少糖の中では、プシコースと並び最も研究がなされている。水に対して溶解するが、メタノールには不溶である。アフリカに自生するヤマモガシ科プロテア属の低木Protea rubropilosaの葉から誘導体が単離されていることが多い。抗酸化作用を示し、虚血による神経細胞死の保護作用や、癌細胞増殖抑制作用などを示すことが明らかにされている。水溶液中では異性化を起こし、環状構造との混合物となる(変旋光)。平衡状態では、β-ピラノース体の存在比が最も高い。
D-アロースは、希少糖研究の中で特に各種生理活性を有することが判明してきた希少糖である。D-アロース(D-アロヘキソース)は、アルドース(アルドヘキソース)に分類されるアロースのD体であり、融点が178℃の六炭糖(C6H12O6)である。このD-アロースの製法としては、D-アロン酸ラクトンをナトリウムアマルガムで還元する方法による製法や、また、シェイクワット・ホセイン・プイヤン等による「ジャーナル・オブ・ファンメンテーション・アンド・バイオエンジニアリング」第85巻、539ないし541頁(1993年)において記載されているが、さらに、L−ラムノース・イソメラーゼを用いてD-プシコースから合成する製法がある。近年では、特許文献8に記載されている、D-プシコースを含有する溶液にD-キシロース・イソメラーゼを作用させて、D-プシコースからD-アロースを生成する製法が発明されている。特許文献8に記載されている製法によれば、D-アロースを生成する場合には、未反応のD-プシコースと共に、新たに生成したD-アロースを含有している酵素反応液として得られる。D-アロースに変換可能な基質を酵素反応でD-アロースに変換する際に用いる酵素の種類は限定されないが、D-プシコースからD-アロースを生産することができる酵素「L−ラムノースイソメラーゼ」を好ましいものとして例示される。L−ラムノースイソメラーゼは、非特許文献2で発表された公知酵素である。L−ラムノースからL−ラムニュロースへの異性化反応ならびにL−ラムニュロースからL−ラムノースへの異性化を触媒する酵素である。L−ラムノースイソメラーゼは、D-アロースとD-プシコースの間の異性化にも作用するので、D-プシコースからD-アロースを生産することができる酵素である。
[本発明の破骨細胞分化抑制組成物の利用]
本発明の破骨細胞分化抑制組成物(破骨細胞分化抑制剤)は、例えば、食品組成物や医療用の組成物に配合して利用することができる。食品として使用する場合、一般食品の他、骨吸収性疾患の予防または改善を目的とした、美容食品、病者用食品、栄養機能食品または特定保健用食品等の機能性食品とすることができる。食品は、固形、半固形または液状であり得る。食品の例としては、パン類、麺類、菓子類、ゼリー類、乳製品、冷凍食品、インスタント食品、その他加工食品、飲料、スープ類、調味料、栄養補助食品等、およびそれらの原料が挙げられる。食品は、錠剤形態、丸剤形態、カプセル形態、液剤形態、シロップ形態、粉末形態、顆粒形態等であってもよい。
本発明の破骨細胞分化抑制組成物(破骨細胞分化抑制剤)を食品としてあるいは食品に配合して使用する場合、本発明のD-アロースを単独で使用してもよく、他の食品材料と組み合わせて使用してもよい。本発明の食品は、必要に応じて食品添加物を含有してもよい。食品添加物の例としては、溶剤、油、軟化剤、乳化剤、防腐剤、安定剤、酸化防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、保湿剤、増粘剤、光沢剤、甘味料、香料等が挙げられる。
食品中における本発明の植物またはそれらの抽出物の量は、通常、抽出物の乾燥物換算で、食品の全質量の0.0001質量%〜50質量%であり、好ましくは、0.0003質量%〜10質量%であり、さらに好ましくは、0.0005質量%〜5質量%である。
本発明の破骨細胞分化抑制組成物(破骨細胞分化抑制剤)を医療用に使用するときは、例えば、骨吸収性疾患である骨粗鬆症、骨量減少または骨折の治療に使用できる。また、関節リウマチ、変形関節炎、関節炎、変形性腰、椎症、全身性エリテマトーデス、糖尿病における骨減少症、慢性腎不全における骨密度低下、骨髄腫、バーキットリンパ腫、悪性リンパ腫、家族性骨ページェット病、家族性拡張性骨溶解症または歯周疾患の予防または治療が期待される。これらの疾患の予防または治療に使用する場合は任意の投与形態で投与され得る。投与形態としては、経口および非経口投与が挙げられる。経口投与のための製剤の剤型としては、錠剤、丸剤、カプセル、粉剤、顆粒、シロップ、エリキシル、液剤等が挙げられる。非経口投与としては、注射、輸液、経皮、経粘膜、経鼻、吸入、坐剤、ボーラス等が挙げられる。斯かる製剤では、本発明のD-アロースを単独で使用してもよく、薬学的に許容される担体と組み合わせて使用してもよい。斯かる担体としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、希釈剤、浸透圧調整剤、pH調整剤、乳化剤、防腐剤、安定剤、酸化防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、保湿剤、増粘剤、光沢剤、活性増強剤、抗炎症剤、殺菌剤、矯味剤、矯臭剤等が挙げられる。
製剤中における本発明のD-アロースの量は、通常、製剤の全質量の0.01質量%〜100質量%であり、好ましくは、0.1質量%〜70質量%であり、さらに好ましくは、0.5質量%〜50質量%である。
上記製剤の投与量は、患者の状態、体重、性別、年齢、またはその他の要因に従って変動し得る。好ましい成人1人当りの1日投与量は、本発明の抽出物の乾燥物換算で、0.002〜2000mg/体重Kg/日であり、好ましくは0.02〜200mg/体重Kg/日であり、より好ましくは0.2〜20mg/体重Kg/日である。上記製剤は、任意の投与計画に従って投与され得る。例えば、持続投与、1日に3回、1日に2回、1日1回、2日に1回、3日に1回、1週間に1回、または任意の期間および間隔で投与され得る。
本発明の医療用の用途または食品組成物は、少なくとも1種のカルシウム摂取もしくは吸収促進剤または骨代謝改善剤と組み合わせて調製されてもよい。カルシウム摂取もしくは吸収促進剤としては、炭酸カルシウム等のカルシウム塩、DFAIII(ツイントース)、FOS(フラクトオリゴ糖)、CPP(カゼインホスホペプチド)、ビタミンD等が挙げられる。骨代謝改善剤としては、炭酸カルシウム等のカルシウム塩、ビタミンD、ビタミンK、大豆イソフラボン、コラーゲン、MBP(乳塩基性タンパク質)等が挙げられる。
以下の実施例に記載の試験を行うにあたり、実験は細胞系を用いて行い、マウス由来マクロファージ様細胞であるRAW264細胞を理化学研究所バイオリソースセンターより入手し、これに既知の分化誘導因子であるReceptor Activator for Nuclear Factor κB Ligand (RANKL) を作用させて破骨細胞に分化させる系においてD-アロースの効果を検討した(非特許文献1参照)。
マウス由来の破骨細胞前駆細胞のRAW264を5%二酸化炭素および高湿度の37℃インキュベーター内で、10%(v/v)ウシ胎児血清(MBL)、1%(v/v)ペニシリン・ストレプトマイシン(GIBCO)になるように調整して添加したDMEM(Sigma)を用いて培養した。このRAW264細胞に対して、30 ng/mL のRecombinant mouse RANKL(R&D)と希少糖D-アロース(25 mM)を、(1)何も加えないcontrol群、(2)D-アロースのみの添加群、(3)RANKLのみの添加群、(4)RANKLとD-アロースの添加群の4つの条件に合わせて添加し、1〜7日間培養した。
RAW264.7細胞の破骨細胞への分化の確認や、分化した細胞数の比較のためにはTRAP染色(破骨細胞を特異的に染める)を用い、破骨能比較のためにはPit formation(疑似骨のプレートを用いた培養)を用いた。 また、TXNIPやチオレドキシン(TXNIPの発現に関与する)の発現量の比較のためにはリアルタイムPCR、Western blot、免疫染色を用い、TXNIP遺伝子発現調整の解析のためルシフェラーゼアッセイを用いた。これらの試験方法は、従来公知であり、破骨細胞の分化の試験にはしばしば採用されている。
試験に先立ち、RAW264.7細胞が分化することを確認した。まずcontrol、D-アロースの条件では破骨細胞への分化と破骨能が見られず、細胞にRANKL(30ng/mL)を添加して7日間培養した後、核を三個以上持ちTRAP(酒石酸抵抗性酸性フォスファターゼ)染色により染色された細胞を破骨細胞に分化したものとした。TRAP染色キット(プライマリーセル)を用いて染色し、染色後はデジタルカメラ付き顕微鏡を用いて撮影を行い、視野の中の細胞数をカウントした。各群10視野について観察した。
図1のようにRANKLではRAW267.4細胞の分化が促進され、これにD-アロースを加えると分化の程度が抑えられた(図2)。
Pit formationによる破骨能の確認は5日間培養した後に行った。分化した破骨細胞の破骨能(骨基質の貪食能)を測定するため、BD BioCoat OSTEOLOGIC Bone Cell Culture System(BD Biosciences)のwell内にRAW264細胞を50,000個/2mLになるように播種し、前述のDMEMで24時間培養した後、10%(v/v)ウシ胎児血清(MBL)、1%(v/v)ペニシリン・ストレプトマイシンになるように調整したMEM alpha(Invitrogen)にメディウムを変えた。メディウムを変えると同時に、RANKL(30ng/mL)とD-アロース(25mM)を添加し、5%二酸化炭素および高湿度の37℃インキュベーターで7日間培養した。培養後、bleach solutionで5分間固定し、十分乾燥させた後にデジタルカメラを用いて写真撮影を行った。写真はフリーソフトImageJを用いて貪食割合(面積)を算出した。
RANKLまたはRANKL+D-アロースを添加した条件でRAW264.7細胞を1、3、5日間培養してチオレドキシンとTXNIPの発現量をリアルタイムPCRで測定した。
RAW264細胞を60mm dishに100,000個/4mLになるように播種し、前述のDMEMで24時間培養した後、10%(v/v)ウシ胎児血清(MBL)、1%(v/v)ペニシリン・ストレプトマイシンになるように調整したMEM alpha(Invitrogen)にメディウムを変えた。メディウムを変えると同時に、RANKL(30ng/mL)とD-アロース(25mM)を添加し、5%二酸化炭素および高湿度の37℃インキュベーターで培養した。
RNeasy Mini KiT(QIAGEN)のプロトコールに従ってRNAを抽出した後、Omniscript RT Kit(QIAGEN)のプロトコールに従って、cDNAを作製した。
既製のTaqman gene expression assaysプライマー(Applied Biosystems)と Premix EX Taq (TAKARA BIO)試薬を使用し、Realtime PCR 7300 system(Applied Biosystems)を用いて95℃10秒間の後、1サイクルを95℃10秒間、60℃31秒間とし、40サイクル繰り返して遺伝子の発現量を測定した。
その結果を図3に示す。TXNIPの測定では、RANKLの条件と比較してRANKL+ D-アロースの条件の方が顕著な増加を見せた。また、時間変化に伴ってRANKL対RANKL+ D-アロースのTXNIPの発現比率は増加して後者によるTXNIPの発現が優勢となることがわかった。
ちなみに図4の左はTRAP染色により分化を確認したものであり、図4の右はPit formationにより破骨能を確認したものである。
同様の実験を、Control、RANKL、RANKL+D-アロースの条件で培養を行い、Western blotによりTXNIP, Thioredoxin、β-actinの生成量の測定を行った。
CelLytic(登録商標) MT Cell Lysis Reagent (SIGMA)を使用して培養細胞のタンパク質を抽出した後、10%トリシンゲルを用いて各サンプル50μgずつ110Vで90分間泳動した。
蛋白質をニトロセルロースメンブレンに転写し、5% milk をTTBS (0.05% Tween in Tris Bufferd Saline)に溶かしたバッファーで60分間blockingを行った後、TTBSで10秒間の振とうwashを2回、更にTTBSで15分間のwashを1回、5分間のwashを2回行い、Can Get Signal Solution1(TOYOBO)を用いて500:1に希釈した1次抗体(anti-thioredoxin / Cell signaling, anti-TXNIP / Zymed)でパッキングし、4℃ cold roomでover nightインキュベーションした。TTBSで10分間のwashを3回行い、その後2次抗体 (Cell signaling)をCan Get Signal Solution2(TOYOBO)を用いて10,000:1に希釈し、室温で60分間メンブレンをパッキングし振とうした。TTBSで10分間のwashを3回行った後に、蛋白質バンドの撮影を行った。バンドの撮影はImmobilon Western発光試薬 (Millipore)にメンブレンを浸し、Lumi Vision Pro 400EX (AISIN)を用いた。その結果を図5に示す。TXNIP、チオレドキシンの発現量は、RANKLのみの条件と比較してRANKL+ D-アロースの条件の方が増加することがわかった。
以上の試験結果により次の事項が判明した。
TRAP染色とPit formationよりcontrol、D-アロースのみ添加した条件では破骨細胞への分化と破骨能が見られず、RANKLとRANKL+D-アロースの条件では破骨細胞への分化と破骨能が見られた。また、RANKLとRANKL+D-アロースを比較すると、RANKL+D-アロースの条件の方が破骨細胞への分化と破骨能が小さいことがわかる。よって、分化誘導因子RANKLと希少糖D-アロースを共に添加すると破骨細胞への分化が抑制され、破骨能が低下する。つまり、D-アロースにはRANKLによるRAW264.7細胞の破骨細胞への分化を抑制する作用があるといえる。
Western blotとリアルタイムPCRより、D-アロースを分化誘導因子RANKLと共に添加した場合のTXNIPの発現量はRANKLのみを添加した場合と比較して増加した。 このことより、D-アロースを添加することで破骨細胞への分化過程において、TXNIPの発現抑制が行なわれず、むしろTXNIPの過剰発現が起き、破骨細胞への分化が抑制されていると推測できる。
また、リアルタイムPCRによる時間変化のグラフではTXNIPの発現量が増加しているように見受けられた。チオレドキシンについては、RANKLとRANKL+D-アロースを比較するとほとんど変化がなかった。
分化した破骨細胞の破骨能(骨基質の貪食能)を測定するため、BD BioCoat OSTEOLOGIC Bone Cell Culture System(BD Biosciences)のwell内にRAW264細胞を50,000個/2mLになるように播種し、前述のDMEMで24時間培養した後、10%(v/v)ウシ胎児血清(MBL)、1%(v/v)ペニシリン・ストレプトマイシンになるように調整したMEM alpha(Invitrogen)にメディウムを変えた。メディウムを変えると同時に、RANKL(30ng/mL)とD-アロース(25mM)を添加し、5%二酸化炭素および高湿度の37℃インキュベーターで7日間培養した。培養後、bleach solutionで5分間固定し、十分乾燥させた後にデジタルカメラを用いて写真撮影を行った。写真はフリーソフトImageJを用いて貪食割合(面積)を算出した。RAW264.7細胞にRANKL,RANKL+ D-アロース, D-アロースを加えて5日間培養し、Pit formation(疑似骨のプレートを用いた培養)により破骨能をcontrolと比較した。測定した貧食能の値を表1に示す。
Pit formation assayでは明らかな貪食の差がみられた(図7参照)。上の表は、ImageJにて貪食をされていた部分を計測し、well全体に占める貪食した部分の割合を算出した。
RANKLを加えることで貪食能が高まっている。RANKLと同時にD-アロースを加えると貪食が抑制されていることが判明した。D-アロース単独では、貪食能への変化は認められなかった。
本実施例では、リアルタイムPCRによるチオレドキシンの発現解析を行った。
RAW264細胞を60mm dishに100,000個/4mLになるように播種し、前述のDMEMで24時間培養した後、10%(v/v)ウシ胎児血清(MBL)、1%(v/v)ペニシリン・ストレプトマイシンになるように調整したMEM alpha(Invitrogen)にメディウムを変えた。メディウムを変えると同時に、RANKL(30ng/mL)とD-アロース(25mM)を添加し、5%二酸化炭素および高湿度の37℃インキュベーターで1日、3日、5日間の培養日数で培養した。RNeasy Mini KiT(QIAGEN)のプロトコールに従ってRNAを抽出した後、Omniscript RT Kit(QIAGEN)のプロトコールに従って、cDNAを作製した。既製のTaqman gene expression assaysプライマー(Applied Biosystems)と Premix EX Taq (TAKARA BIO)試薬を使用し、Realtime PCR 7300 system(Applied Biosystems)を用いて95℃10秒間の後、1サイクルを95℃10秒間、60℃31秒間とし、40サイクル繰り返して遺伝子の発現量を測定した。
実施例2と同様にして試験を行いリアルタイムPCRによりチオレドキシン(TRX)の発現量を検討した。その結果を図8おいてRANKLのみ加えたもので著しい増加がみられるが、それ以外では有意な差はないという結果になった。RANKLで増加したTRXはD-アロースにより発現の抑制が3日、および5日で明らかに認められた。
実施例4と同様にして試験を行いTXNIPの発現量を検討した。その結果を図9に示す。TXNIPはリアルタイムPCRでは、どの日においても、D-アロースを加えることで著明に増加していた。一方RANKLのみ加えた条件では減少していた。
実施例2と同様の試験を行い、TRP染色により破骨細胞に分化した細胞を計測しその結果を図10に示す。実際の写真、細胞計測ともにRANKLを加えることで破骨細胞に分化し、D-アロースを加えると分化が抑制されていることが分かる。分化した破骨細胞を示す多核細胞数で見ると、明らかにRANKLで増加するがD-アロースにより減少していた。
本実施例では、Western blotによるTXNIPとチオレドキシンの発現解析を行った。その結果は、図8および図9の下部分の写真で示す。
RAW264細胞を10cm dishに700,000個/10mLになるように播種し、前述のDMEMで24時間培養した後、10%(v/v)ウシ胎児血清(MBL)、1%(v/v)ペニシリン・ストレプトマイシンになるように調整したMEM alpha(Invitrogen)にメディウムを変えた。メディウムを変えると同時に、RANKL(30ng/mL)とD-アロース(25mM)を添加し、5%二酸化炭素および高湿度の37℃インキュベーターで1日、3日、5日間の培養日数で培養した。
CelLytic(登録商標) MT Cell Lysis Reagent (SIGMA)を使用して培養細胞のタンパク質を抽出した後、10%トリシンゲルを用いて各サンプル50μgずつ110Vで90分間泳動した。
蛋白質をニトロセルロースメンブレンに転写し、5% milk をTTBS (0.05% Tween in Tris Bufferd Saline)に溶かしたバッファーで60分間blockingを行った後、TTBSで10秒間の振とうwashを2回、更にTTBSで15分間のwashを1回、5分間のwashを2回行い、Can Get Signal Solution1(TOYOBO)を用いて500:1に希釈した1次抗体(anti-thioredoxin / Cell signaling, anti-TXNIP / Zymed)でパッキングし、4℃ cold roomでover nightインキュベーションした。TTBSで10分間のwashを3回行い、その後2次抗体 (Cell signaling)をCan Get Signal Solution2(TOYOBO)を用いて10,000:1に希釈し、室温で60分間メンブレンをパッキングし振とうした。TTBSで10分間のwashを3回行った後に、蛋白質バンドの撮影を行った。バンドの撮影はImmobilon Western発光試薬 (Millipore)にメンブレンを浸し、Lumi Vision Pro 400EX (AISIN)を用いた。
本実施例では、TRAP(酒石酸抵抗性酸性フォスファターゼ)染色による破骨細胞への分化の評価を行った。RAW264細胞を35mm dishに50,000個/2mLになるように播種し、前述のDMEMで24時間培養した後、10%(v/v)ウシ胎児血清(MBL)、1%(v/v)ペニシリン・ストレプトマイシンになるように調整したMEM alpha(Invitrogen)にメディウムを変えた。メディウムを変えると同時に、RANKL(30ng/mL)とD-アロース(25mM)を添加し、5%二酸化炭素および高湿度の37℃インキュベーターで7日間培養した。培養後は、4%パラホルムアルデヒド・リン酸緩衝液(和光純薬工業)で5分間固定を行い、TRAP染色キット(プライマリーセル)を用いて染色した。染色後はデジタルカメラ付き顕微鏡を用いて撮影を行い、視野の中の細胞数をカウントした。各群10視野について観察した。
TRP染色により破骨細胞に分化した細胞を計測しその結果を図10に示す。図10上部の写真は分化した細胞の状態を示し、下部のグラフは細胞数を計測した結果である。写真、計測結果ともにRANKLを加えることで破骨細胞に分化し、D-アロースを加えると分化が抑制されていることが分かる。
上記の試験で、破骨細胞前駆細胞であるRaw267をReceptor Activator for Nuclear Factor κB Ligand (RANKL) にて破骨細胞へ分化誘導してD-アロースの効果を検討した。その結果、TRAP(酒石酸抵抗性酸性フォスファターゼ)染色では、RANKL処理によって赤色に染まる大型の破骨細胞が多数認められたが、D-アロースを同時投与によってその数が減少し分化抑制がみられた。また、リアルタイムPCRでは、RANKL処理後の分化過程では無処理(Control)に比べ、TXNIP発現が抑制されるが、D-アロース単独または、RANKLとの併用では著明なTXNIP発現誘導が見られた。これらの結果から前駆細胞から破骨細胞への分化過程ではTXNIP遺伝子発現が減少するが、D-アロース投与により発現を増強させると分化が抑制されることがわかり、D-アロースにより破骨細胞への分化を抑制的にコントロールできる可能性が示唆された。破骨細胞の分化が抑制されれば、骨吸収能が弱くなり、結果としてより骨新生の方にバランスが傾くことになる。従って今後D-アロースを骨粗鬆症の予防や治療に応用することが考えられる。
人体に安全で安定的に生産できるD-アロースを有効成分として含有する本発明の破骨細胞分化抑制組成物により骨粗鬆症予防、治療に応用可能な破骨細胞分化抑制組成物ならびにそれらの組成物を配合してなる医薬組成物、食品組成物を提供できる。また、優れた破骨細胞分化抑制活性を有し、また培養細胞に対する毒性が低いので、破骨細胞の活性亢進に随伴する疾患の治療への利用が期待できるD-アロースを有効成分とする組成物を提供することができる。

Claims (4)

  1. D-アロースを有効成分とし、チオレドキシン結合蛋白質(TXNIP)の発現を促進するための、またはチオレドキシン(Thioredoxin)の発現を抑制するための、破骨細胞前駆細胞の破骨細胞への分化抑制組成物(但し、食品組成物である場合を除く。)
  2. 請求項1記載の破骨細胞前駆細胞の破骨細胞への分化抑制組成物(但し、食品組成物である場合を除く。)からなる骨吸収抑制剤。
  3. 骨吸収性疾患の予防または改善のための請求項2記載の骨吸収抑制剤。
  4. 骨吸収性疾患が骨粗鬆症、骨量減少または骨折である請求項3記載の骨吸収抑制剤。
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