JP5785374B2 - 冷媒輸送用ホース及びそのガスバリア層形成用ポリアミド樹脂組成物 - Google Patents
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例えば、エアコンシステム内に微量でも酸性成分が存在する場合、高温/高圧の実使用条件下では、ポリアミド樹脂組成物がこの酸性成分により著しく劣化し、使用に耐えなくなる場合がある。この酸性成分としては冷媒と共に封入されるコンプレッサーオイルに含まれる極圧剤などが考えられる。このため、エアコンに使用されるオイルの種類や環境条件によっては、従来の冷媒輸送用ホースでは実用的な耐久性が得られず、使用不可能となる場合もある。
ポリアミド樹脂の劣化にはまた、ホースを透過して系内に浸入する水分も大きく影響している。
本発明で用いるシリカ系無機物による、ポリアミド樹脂の冷媒やコンプレッサーオイルに起因する酸性成分や水分による劣化防止の作用機構の詳細は明らかではないが、ポリアミド樹脂組成物に配合されたシリカ系無機物が吸着剤として機能し、酸性成分やホースを透過して系内に侵入した水分などの劣化原因物質を効率的に吸着して、これらがポリアミドに及ぼす悪影響(攻撃)を抑制し、この結果、ポリアミド樹脂の劣化防止効果が発現されるものと推定される。
また、ポリアミド樹脂組成物のポリオレフィン系エラストマーの含有量は、ポリアミド樹脂組成物中のポリマー成分100重量部に対して10〜45重量部であることが好ましい(請求項6)。
しかしながら、ポリアミド樹脂はシリカ系無機物の均一分散性が悪く、例えば、ポリアミド樹脂に対して多量のシリカ系無機物を混練した場合、シリカ系無機物の不均一分散のために、膜肌の悪い不均一部分が形成され(即ち、表面平滑性が劣るものとなり)、この部分が破壊の起点となって、耐インパルス性を低減させる原因となる。
このように多量の金属化合物を配合しても、上述のような2段階混練を行う場合には、シリカ系無機物の分散性に優れたポリオレフィン系エラストマーに予めシリカ系無機物を混練するため、シリカ系無機物の分散不良が問題になることはない。
まず、本発明の冷媒輸送用ホースのガスバリア層を構成する本発明の冷媒輸送用ホースのガスバリア層形成用ポリアミド樹脂組成物について説明する。
ここで、ポリアミド樹脂組成物中のポリマー成分とは、ポリアミド樹脂、或いはポリアミド樹脂と後述のポリオレフィン系エラストマー、その他の樹脂等の高分子成分の合計をさす。
本発明で用いられるポリアミド樹脂は、アミノ酸、ラクタムあるいはジアミンとジカルボン酸を主たる構成成分とするポリアミド樹脂である。これらの構成成分の具体例を挙げるとε−カプロラクタム、エナントラクタム、ω−ラウロラクタムなどのラクタム、ε−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸などのアミノ酸、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、1,4−ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビス−p−アミノシクロヘキシルメタン、ビス−p−アミノシクロヘキシルプロパン、イソホロンジアミンなどのジアミン、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、ゼバシン酸、ドデカン2酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ダイマー酸などのジカルボン酸がある。これらの構成成分は単独あるいは2種以上の混合物の形で重合に供され、得られるポアミド樹脂はホモポリマー、コポリマーのいずれであっても良い。
本発明のポリアミド樹脂組成物に含まれるシリカ系無機物としては、一般にゴム組成物や樹脂組成物に用いられるものであれば特に制限はない。具体的には、シリカ、含水非晶質二酸化ケイ素、含水ケイ酸アルミニウム、ケイ砂、ケイ石粉末、カオリナイト、モンモリロナイト、サポナイト、白雲母、パラゴナイト、シリカゲルなどを挙げることができる。このうち、本発明においては、シリカ、含水非晶質二酸化ケイ素、含水ケイ酸アルミニウムが好ましい。
これらのシリカ系無機物は1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
本発明のポリアミド樹脂組成物には、ポリオレフィン系エラストマーを配合してもよい。ポリオレフィン系エラストマーを配合することにより、このポリアミド樹脂組成物で構成されるガスバリア層の柔軟性、耐久性を付与することができると共に、シリカ系無機物を配合することによる表面平滑性の低下を防止して、耐インパルス性を高めることができる。
特に、本発明では、ポリアミド樹脂組成物中のポリオレフィン系エラストマーのうちの40〜100重量%を酸変性エラストマーとしたものが好ましい。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、樹脂成分としてポリアミド樹脂以外の樹脂成分を含んでいても良いが、その場合において、ポリアミド樹脂組成物中の全ポリマー成分のうちの70重量%以上がポリアミド樹脂であることが、ガスバリア性の確保のために好ましい。
本発明に係るポリアミド樹脂組成物の製造方法には特に制限はなく、ポリアミド樹脂組成物を構成するすべての材料を一度に混練りする一括混練によるものであってもよいが、特に、ポリアミド樹脂組成物がポリオレフィン系エラストマーを含有する場合、まず、ポリオレフィン系エラストマーとシリカ系無機物とを混練し、得られた混練物に、ポリアミド樹脂を混練してポリマーアロイとする2段階混練を行うことが好ましく、2段階混練を行うことにより、シリカ系無機物のポリアミド樹脂組成物中への均一分散性を高め、形成されるガスバリア層の表面平滑性を良好なものとすることができることから、シリカ系無機物の高配合による劣化防止効果を十分に得た上で耐インパルス性に優れた冷媒輸送用ホースとすることができる。
本発明では、後述の如く、ポリオレフィン系エラストマーとシリカ系無機物との混練に引き続いてポリアミド樹脂を混練することが好ましいことから、エラストマーの熱劣化の問題がなく、かつ流動性が得られる温度であって、用いるポリアミド樹脂の融点以上の温度、例えばポリアミド樹脂の融点よりも10〜60℃程度高い温度条件で加熱して混練することが好ましい(第1の混練工程)。
この混練は、ポリオレフィン系エラストマー中にシリカ系無機物が十分に均一に分散される程度であれば良く、混練時間等には特に制限はない。
次に、上記冷媒輸送用ホースのガスバリア層形成用ポリアミド樹脂組成物をガスバリア層の構成材料として用いる本発明の冷媒輸送用ホースについて、図面を参照して説明する。
ガスバリア層2は、シリカ系無機物を、ポリマー成分100重量部に対して1〜20重量部配合した本発明のガスバリア層形成用ポリアミド樹脂組成物よりなる。
従ってガスバリア層2の膜厚は、50〜400μm、特に100〜300μmであることが好ましい。
内層ゴム層3及び外被ゴム層7を構成するゴムとしては、一般にブチルゴム(IIR)、塩素化ブチルゴム(C1−IIR)、塩素化ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン、臭素化ブチルゴム(Br−IIR)、イソブチレン−ブロモパラメチルスチレン共重合体、EPR(エチレン−プロピレン共重合体)、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体)、NBR(アクリロニトリルブタジエンゴム)、CR(クロロプレンゴム)、水素添加NBR、アクリルゴム、エチレンアクリルゴム(AEM)、これらのゴムの2種以上のブレンド物、或いは、これらのゴムを主成分とするポリマーとのブレンド物、好ましくはブチル系ゴム、EPDM系ゴムが用いられる。これらのゴムには、通常用いられる充填剤、加工助剤、老化防止剤、加硫剤、加硫促進剤等の配合処方を適用できる。
第1補強糸層4は、補強糸をスパイラル状に巻き付けたものであり、第2補強糸層6は、この第1補強糸層4とは逆方向にスパイラル状に補強糸を巻き付けたものである。
このような本発明の冷媒輸送用ホースは、常法に従って、マンドレル上にガスバリア層2と内層ゴム層3の材料を所定の厚さに押し出して積層し、補強糸層4を巻き付け、中間ゴム層5を押し出して積層し、補強糸層6を巻きつけ、次いで外被ゴム層7を押し出して積層し、その後140〜170℃で30〜120分間加硫することにより製造することができる。
以下に、ポリアミド系樹脂片について行った、実施例及び比較例に相当する試験例について説明する。
エラストマー:三井化学社製 α−オレフィンポリマー(エチレン・ブテン共重合体)
「タフマーA−1050S」
マレイン酸変性エラストマー:三井化学社製マレイン酸変性α−オレフィンポリマー
(エチレン・ブテン共重合体)「タフマーMH7010」
シリカ:東ソーシリカ社製 シリカ「ニプシールAQ」
混練手順A:全材料の全量を一括して混練りする1段階混練
混練手順B:エラストマー(マレイン酸変性エラストマーを含む)とシリカとを混練り
した後、ポリアミド6を添加して混練りする2段階混練
電子顕微鏡(SEM)を用い、リンタングステン酸で表面処理した試験用ポリアミド系樹脂片を観察してエラストマーの分散粒径を調べ、エラストマーの分散粒径が3μm以下をOK(○)、3μmを超えるものをNG(×)とした。
東洋精機社製引張り試験機を用い、各試験用ポリアミド系樹脂片について、引張り速度50mm/minで伸長して弾性率を測定し、比較例1の試験用ポリアミド系樹脂片(100)に対する指数で表記した。
GTRテック社製ガス透過試験機を用い、各試験用ポリアミド系樹脂片について、100℃絶対差圧226cmHgでHeガス透過係数を測定し、比較例1の試験用ポリアミド系樹脂片(100)に対する指数で表記した。
東洋精機社製引張り試験機を用い、以下の老化試験前後の各試験用ポリアミド系樹脂片について、引張り速度50mm/minで伸長して破断強力を測定し、老化試験前の値に対する老化試験後の値の百分率で表記した。
東洋精機社製引張り試験機を用い、以下の老化試験前後の各試験用ポリアミド系樹脂片について、引張り速度50mm/minで伸長して破断伸びを測定し、老化試験前の値に対する老化試験後の値の百分率で表記した。
以下の1〜7の手順で行なった。
1 耐圧容器(200cc)に0.7ccの水を入れる。
2 巾10×長さ50mm×厚み0.1mmサイズの試験用ポリアミド系樹脂片を入れ
る。
3 ポリアルキレングリコールオイルを70cc入れる。
4 耐圧容器を15分冷凍した後、5分間耐圧容器を真空引きする。
5 冷媒としてR−134aを70cc入れる。
6 高温槽に150℃で4週間放置する。
7 容器から試験用ポリアミド系樹脂片を取出し、評価測定に供する。
株式会社小坂研究所製「表面粗さ測定器サーフコーダSE−2300」を用いて、JIS B0601に準拠して中心線平均粗さを測定した。
2 ガスバリア層
3 内層ゴム層
4,6 補強糸層
5 中間ゴム層
7 外被ゴム層
Claims (7)
- ポリアミド樹脂組成物よりなるガスバリア層を有する冷媒輸送用ホースにおいて、
該ポリアミド樹脂組成物が、シリカを、該ポリアミド樹脂組成物中のポリマー成分100重量部に対して1〜15重量部含有する冷媒輸送用ホースであって、
前記ポリアミド樹脂組成物は、ポリオレフィン系エラストマーを含有し、前記ポリオレフィン系エラストマーの少なくとも一部が酸変性されており、また、ポリアミド樹脂の海相内にエラストマーの島相が分散すると共に、このエラストマーの島相内にポリアミド樹脂が散点状に分散している
ことを特徴とする冷媒輸送用ホース。 - 請求項1において、前記ポリオレフィン系エラストマーとポリアミド樹脂とがアロイ化していることを特徴とする冷媒輸送用ホース。
- 請求項1又は2において、前記ポリアミド樹脂組成物のポリオレフィン系エラストマーの含有量が、該ポリアミド樹脂組成物中のポリマー成分100重量部に対して10〜45重量部であることを特徴とする冷媒輸送用ホース。
- 請求項1ないし3のいずれか1項において、前記ガスバリア層の外周側に、補強糸よりなる補強層と外被ゴム層とが設けられていることを特徴とする冷媒輸送用ホース。
- ポリアミド樹脂組成物よりなるガスバリア層を有する冷媒輸送用ホースの製造方法であって、
前記ポリアミド樹脂組成物は、シリカ、含水非晶質二酸化ケイ素、含水ケイ酸アルミニウム、ケイ砂、ケイ石粉末、カオリナイト、モンモリロナイト、サポナイト、白雲母、パラゴナイト、シリカゲルからなる群より選択されるシリカ系無機物を、該ポリアミド樹脂組成物中のポリマー成分100重量部に対して1〜15重量部含有し、
前記ポリアミド樹脂組成物は、ポリオレフィン系エラストマーを含有し、該ポリオレフィン系エラストマーの少なくとも一部は酸変性されており、また、ポリアミド樹脂の海相内にエラストマーの島相が分散すると共に、このエラストマーの島相内にポリアミド樹脂が散点状に分散しており、
前記ポリオレフィン系エラストマーとシリカ系無機物とを混練した後、得られた混練物にポリアミド樹脂を混練してアロイ化する工程を含むことを特徴とする、冷媒輸送用ホースの製造方法。 - 冷媒輸送用ホースのガスバリア層形成用ポリアミド樹脂組成物において、シリカを、該ポリアミド樹脂組成物中のポリマー成分100重量部に対して1〜15重量部含有し、
前記ポリアミド樹脂組成物は、ポリオレフィン系エラストマーを含有し、前記ポリオレフィン系エラストマーの少なくとも一部が酸変性されており、また、ポリアミド樹脂の海相内にエラストマーの島相が分散すると共に、このエラストマーの島相内にポリアミド樹脂が散点状に分散している
ことを特徴とする冷媒輸送用ホースのガスバリア層形成用ポリアミド樹脂組成物。 - 冷媒輸送用ホースのガスバリア層形成用ポリアミド樹脂組成物の製造方法であって、
前記ポリアミド樹脂組成物は、シリカ、含水非晶質二酸化ケイ素、含水ケイ酸アルミニウム、ケイ砂、ケイ石粉末、カオリナイト、モンモリロナイト、サポナイト、白雲母、パラゴナイト、シリカゲルからなる群より選択されるシリカ系無機物を、該ポリアミド樹脂組成物中のポリマー成分100重量部に対して1〜15重量部含有し、
前記ポリアミド樹脂組成物は、ポリオレフィン系エラストマーを含有し、該ポリオレフィン系エラストマーの少なくとも一部は酸変性されており、また、ポリアミド樹脂の海相内にエラストマーの島相が分散すると共に、このエラストマーの島相内にポリアミド樹脂が散点状に分散しており、
前記ポリオレフィン系エラストマーとシリカ系無機物とを混練した後、得られた混練物にポリアミド樹脂を混練してアロイ化する工程を含むことを特徴とする、ガスバリア層形成用ポリアミド樹脂組成物の製造方法。
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