JP5784183B2 - 潤滑油組成物 - Google Patents
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Description
しかし、ジチオリン酸亜鉛は、分解すると硫酸やリン酸を発生するため、エンジン油中の塩基性化合物を消耗して潤滑油の劣化を促進し、更油期間を極端に短くすることがある。また、ジチオリン酸亜鉛は高温条件でスラッジ化し、エンジン内部の清浄性を悪化することがある。さらに、ジチオリン酸亜鉛は分子中に金属分(亜鉛)とともに、リン分および硫黄分を多量に含んでいることから、排出ガス浄化装置への悪影響の原因となることが考えられる。したがって、ジチオリン酸亜鉛を使用しなくても耐摩耗性に優れる潤滑油組成物の開発が望まれる。
すなわち本発明は、
1.基油に、コハク酸イミド化合物と、2,5−ビス(n−オクチルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール及び/又は2,6−ジ−t−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノールとを配合してなる潤滑油組成物、
2.さらに、下記(A)及び/又は(B)を配合してなる上記1に記載の潤滑油組成物。
(A)下記一般式(I)で表される硫黄含有化合物。
(B)下記一般式(II)で表される硫黄含有化合物。
3.前記一般式(I)において、X1が1である上記2に記載の潤滑油組成物、
4.リン含有量が0.5質量%以下であり、かつ、硫酸灰分が0.6質量%以下である上記1〜3のいずれかに記載の潤滑油組成物、
5.リン含有量が0質量%であり、かつ、硫酸灰分が0.1質量%以下である上記1〜4のいずれかに記載の潤滑油組成物、及び
6.後処理装置が装着されたエンジンに用いられる上記1〜5のいずれかに記載の潤滑油組成物、
を提供するものである。
本発明において用いる基油としては、特に制限はなく、従来、潤滑油の基油として使用されている鉱油や合成油の中から任意のものを適宜選択して用いることができる。
前記鉱油としては、例えば、原油を常圧蒸留して得られる常圧残油を減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製等のうちの1つ以上の処理を行って精製した鉱油、あるいはワックスや、GTL WAXを異性化することによって製造される鉱油等が挙げられる。
本発明においては、基油として、前記鉱油は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、前記合成油を一種用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。更には、鉱油一種以上と合成油一種以上とを組み合わせて用いてもよい。
100℃における動粘度が2mm2/s以上であると蒸発損失が少なく、また30mm2/s以下であると、粘性抵抗による動力損失が抑制され、燃費改善効果が得られる。
%CAが3.0以下で、硫黄分が50質量ppm以下の基油は、良好な酸化安定性を有し、酸価の上昇やスラッジの生成を抑制しうる潤滑油組成物を提供することができる。より好ましい%CAは1.0以下、さらには0.5以下であり、またより好ましい硫黄分は30質量ppm以下である。
本発明におけるコハク酸イミド化合物としては、例えば、下記一般式(IV)で表されるモノタイプのコハク酸イミド化合物、又は下記一般式(V)で表されるビスタイプのコハク酸イミド化合物が挙げられる。
上記R17、R19及びR22の数平均分子量が500以上であれば、基油への溶解性が良好であり、4,000以下であれば分散性が低下する恐れがない。
さらに一般式(V)において、sは好ましくは1〜4、より好ましくは2〜3である。sが上記範囲内であれば、分散性及び基油に対する溶解性の点で好ましい。
コハク酸イミド化合物としては、ポリブテニルコハク酸イミド等のアルケニルコハク酸イミド化合物や、アルキルコハク酸イミド化合物が好ましく用いられる。
また、前記ポリアミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ペンチレンジアミン等の単一ジアミン;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ジ(メチルエチレン)トリアミン、ジブチレントリアミン、トリブチレンテトラミン、ペンタペンチレンヘキサミン等のポリアルキレンポリアミン;アミノエチルピペラジン等のピペラジン誘導体;などを挙げることができる。
アルケニル若しくはアルキルコハク酸イミド化合物のホウ素誘導体は、常法により製造したものを使用することができる。例えば、前記ポリオレフィンを無水マレイン酸と反応させてアルケニルコハク酸無水物とした後、更に上記のポリアミンと酸化ホウ素、ハロゲン化ホウ素、ホウ酸、ホウ酸無水物、ホウ酸エステル、ホウ素酸のアンモニウム塩等のホウ素化合物を反応させて得られる中間体と反応させてイミド化させることによって得られる。
このホウ素誘導体中のホウ素含有量には、特に制限はないが、ホウ素として、通常、0.05〜5質量%の範囲、好ましくは0.1〜3質量%の範囲である。
コハク酸イミド化合物の配合量が0.5質量%以上であると、潤滑油組成物の耐デポジット性が十分に改善し、一方、15質量%以下であると、潤滑油組成物の低温流動性が大幅に改善する。
前記(A)成分は、下記一般式(I)で表される硫黄含有化合物であり、前記(B)成分は、下記一般式(II)で表される硫黄化合物である。
R1〜R12で表されるシクロアルキル基は、炭素数3〜30のシクロアルキル基が好ましく、炭素数3〜24のシクロアルキル基がより好ましい。シクロアルキル基の具体例としては、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、メチルシクロペンチル基、ジメチルシクロペンチル基、メチルエチルシクロペンチル基、ジエチルシクロペンチル基、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、メチルエチルシクロヘキシル基およびジエチルシクロヘキシル基等が挙げられる。また、シクロアルキル基は芳香族基で置換されていてもよく、例えばフェニルシクロペンチル基、フェニルシクロヘキシル基等が挙げられる。
R1〜R12で表されるアルケニル基は、炭素数2〜30のアルケニル基が好ましく、炭素数2〜24のアルケニル基がより好ましい。アルケニル基の具体例としては、例えばビニル基、アリル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−メチルビニル基、1−メチルアリル基、1,1−ジメチルアリル基、2−メチルアリル基、ノネニル基、デセニル基、オクタデセニル基等が挙げられる。また、アルケニル基は芳香族基で置換されていてもよい。
R1〜R12で表されるシクロアルケニル基は、炭素数3〜30のシクロアルケニル基が好ましく、炭素数3〜24のシクロアルケニル基がより好ましい。シクロアルケニル基の具体例としては、シクロブテニル基、メチルシクロブテニル基等が挙げられる。また、シクロアルケニル基は芳香族基で置換されていてもよい。
R1〜R12で表されるアリール基は、炭素数6〜30のアリール基が好ましく、炭素数6〜24のアリール基がより好ましい。アリール基の具体例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ブチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基等が挙げられる。
一般式(I)および(II)において、X1及びX2は1〜3の整数であり、1が好ましい。nはそれぞれ独立に1〜5の整数であり、1または2が好ましい。
(1)pが0の場合
X1、X2、及びX3は、それぞれ独立にNもしくはNH、O又はSを示す。
x及びyは、それぞれ独立に0〜2の整数、vは0〜5の整数を示す。
n及びmは、それぞれ独立に0又は1、x、y、n、m及びvは同時に0にはならない。
R13及びR14は、それぞれ独立に炭素原子に結合する水素原子;炭素数1〜50の炭化水素基;アミノ基、アミド基、エーテル基、チオエーテル基、ジチオエーテル基及びカルボキシル基の中から選ばれる炭素数1〜50の官能基;あるいは該官能基の中から選ばれる少なくとも一種の置換基を有する全炭素数1〜150の炭化水素基を示し、R13及びR14は同時に水素原子になることはない。
(2)pが1の場合
X1、X2、X3及びX4は、それぞれ独立にNもしくはNH、O又はSを示す。
x及びyは、それぞれ独立に0〜2の整数、u及びrは、それぞれ独立に0〜3の整数、t及びwは、それぞれ独立に0〜3の整数を示す。vは0〜3の整数を示す。
n及びmは、それぞれ独立に0又は1、kは0〜3の整数を示し、R13〜R16は、それぞれ独立に炭素原子に結合する水素原子;炭素数1〜50の炭化水素基;アミノ基、アミド基、エーテル基、チオエーテル基、ジチオエーテル基及びカルボキシル基の中から選ばれる炭素数1〜50の官能基;あるいは該官能基の中から選ばれる少なくとも一種の置換基を有する全炭素数1〜150の炭化水素基を示し、R13〜R16は同時に水素原子になることはない。
さらに好ましくは、オクチル、2−エチルヘキシル、デシル、ドデシル、ドデセニル、テトラデセン、テトラデセニル、ヘキサデセン、ヘキサデセニル、オクタデシル、オクタデセニル、オレイル、ステアリル、イソステアリル、ドコセニル、デセントリマー基等の炭素数8〜30の炭化水素基である。
一般式(III)で表される複素環化合物は、例えば、複素環の基本骨格となるピリジン、ピロール、ピリミジン、ピラゾール、ピリダジン、イミダゾール、ピラジン、トリアジン、トリアゾール、テトラゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、チアゾール、チアジアゾール、フラン、ジオキサン、ピラン、チオフェンを基本骨格とする化合物及びそれらの誘導体(a)と炭素数10〜200のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基を有するハロゲン化合物、アミン化合物、アルコール類、メルカプト類、エポキシ化合物及びカルボキシル基等の官能基を有する化合物(b)とをモル比(a):(b)を1:5〜5:1、好ましくは、1:2〜2:1の割合で反応させて得ることができる。
(a)と(b)の反応は、室温〜200℃、好ましくは50〜150℃で行う。
反応は、無触媒でも触媒の存在下で行なってもよい。
また、反応を行うに際して溶剤、例えば、ヘキサン、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)等の有機溶剤を使用することもできる。
また、例えば、トリアゾール化合物は、対応するアミン化合物とジアシルヒドラジンの反応、あるいは、対応するアミノグアニジン誘導体と酸誘導体の反応により、チアジアゾール化合物は、対応する硫黄化合物とジアシルヒドラジンの反応により、トリアジン化合物は、対応するニトリル化合物の三量化反応により、複素環を形成して得ることもできる。
このような環状化合物としては、ピリジン、ピロール、ピリミジン、ピラゾール、ピリダジン、イミダゾール、ピラジン、トリアジン、トリアゾール、テトラゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、チアゾール、チアジアゾール、フラン、ジオキサン、ピラン、チオフェン及びそれらの誘導体が挙げられる。
より好ましくは、ピリジン、ピロール、ピリミジン、ピラゾール、ピリダジン、イミダゾール、ピラジン、トリアジン、トリアゾール、テトラゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、フラン、ジオキサン、ピラン、及びそれらの誘導体が挙げられる。
これらは、前記した単環の環状化合物であっても、例えば、インドール、インダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾイミダゾール、プリン、キノリン、イソキノリン、ナフチリジン、カルバゾール、ナフトイミダゾール等の多環の環状化合物であってもかまわない。
また、複素環化合物に官能基として炭化水素基又はアミン、アミド、アルコール、ケトン、アルデヒド、カルボン酸、エステル、エーテル、チオエーテル、ジチオエーテル、ハロゲン及びそれらを含む炭化水素化合物が付加したものでもよいが、炭化水素基又はアミン、アミド、アルコール、ケトン、アルデヒド、カルボン酸、エステル、エーテル、チオエーテル、ジチオエーテル及びそれらを含む炭化水素化合物が付加したものがよい。
複素環化合物に付加する官能基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基;アミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、アミノメチル基等の置換もしくは無置換のアミノ基;カルバモイル基;水酸基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基;カルボキシメチル基、カルボキシエチル基;エトキシル基、プロポキシル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基;メチルカルボニル基、エチルカルボニル基;アセトキシル基、プロピオキシル基、ブチロイルキシル基;ホルミル基;ハロゲン;アルキルチオ基、アルキルジチオ基等のスルフィド基、ジスルフィド基;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミン等のポリエチレンポリアミン残基;アミノエチルピペラジン残基等が挙げられる。
好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基;アミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等の置換もしくは無置換のアミノ基;アルキルチオ基、アルキルジチオ基等のスルフィド基、ジスルフィド基等が挙げられる。
これらは単独で用いてもよいし、2種類以上の混合物として用いてもよい。
Y1及びY2のうちの少なくとも一方は、化合物(b)に由来する。
複素環化合物とホウ素化合物との反応は、50〜250℃、好ましくは100〜200℃で行なわれる。
反応を行うに際して溶剤、例えば、炭化水素油、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン等の有機溶剤を使用することもできる。
ホウ素化合物としては、例えば、酸化ホウ素、ハロゲン化ホウ素、ホウ酸、ホウ酸無水物、ホウ酸エステルなどを使用することができる。
複素環化合物とモリブデン化合物との反応は、50〜250℃、好ましくは100〜200℃で行なわれる。
反応を行うに際して溶剤、例えば、炭化水素油、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン等の有機溶剤を使用することもできる。
モリブデン化合物としては、例えば、酸化モリブデン、ハロゲン化モリブデン、モリブデン酸などを使用することができる。
複素環化合物とケイ素化合物との反応は、50〜250℃、好ましくは100〜200℃で行なわれる。
反応を行うに際して溶剤、例えば、炭化水素油、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン等の有機溶剤を使用することもできる。
ケイ素化合物としては、例えば、酸化ケイ素、ハロゲン化ケイ素、ケイ酸、ケイ酸エステルなどを使用することができる。
上記(A)及び(B)成分の配合量は、組成物全量基準で、0.01〜5.0質量%が好ましく、0.1〜2.0質量%がより好ましい。0.01質量%以上であることで、通常、十分な耐デポジット性及び耐摩耗性が得られ、5.0質量%を超えた場合、添加量に見合った効果が得られない場合がある。
上記(C)成分の配合量は、組成物全量基準で、0.01〜20質量%、好ましくは、0.05〜15質量%、より好ましくは、0.1〜10質量%である。配合量を0.01質量%以上とすることにより、耐デポジット性及び耐摩耗性が発揮され、20質量%以下とすることにより、コスト増を避け、かつ、潤滑油基油が有する本来の特性を低下させることを防止することができる。
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−ノニルフェノール)、2,2’−イソブチリデンビス(4,6−ジメチルフェノール);2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−アミル−p−クレゾール、2,6−ジ−t−ブチル−4−(N,N’−ジメチルアミノメチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルベンジル)スルフィド、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド、n−オクチル−3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、n−オクタデシル−3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、2,2’−チオ[ジエチル−ビス−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などが挙げられる。
これらの中で、特にビスフェノール系及びエステル基含有フェノール系のものが好適である。
これらの中で、ジアルキルジフェニルアミン系及びナフチルアミン系のものが好適である。
前記6価のモリブデン化合物と反応させるアミン化合物としては特に制限されないが、具体的には、モノアミン、ジアミン、ポリアミン及びアルカノールアミンが挙げられる。より具体的には、メチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、メチルエチルアミン、メチルプロピルアミン等の炭素数1〜30のアルキル基(これらのアルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい)を有するアルキルアミン;エテニルアミン、プロペニルアミン、ブテニルアミン、オクテニルアミン、及びオレイルアミン等の炭素数2〜30のアルケニル基(これらのアルケニル基は直鎖状でも分枝状でもよい)を有するアルケニルアミン;メタノールアミン、エタノールアミン、メタノールエタノールアミン、メタノールプロパノールアミン等の炭素数1〜30のアルカノール基(これらのアルカノール基は直鎖状でも分枝状でもよい)を有するアルカノールアミン;メチレンジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、及びブチレンジアミン等の炭素数1〜30のアルキレン基を有するアルキレンジアミン;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン等のポリアミン;ウンデシルジエチルアミン、ウンデシルジエタノールアミン、ドデシルジプロパノールアミン、オレイルジエタノールアミン、オレイルプロピレンジアミン、ステアリルテトラエチレンペンタミン等の上記モノアミン、ジアミン、ポリアミンに炭素数8〜20のアルキル基又はアルケニル基を有する化合物やイミダゾリン等の複素環化合物;これらの化合物のアルキレンオキシド付加物;及びこれらの混合物等が例示できる。
また、特公平3−22438号公報及び特開2004−2866号公報に記載されているコハク酸イミドの硫黄含有モリブデン錯体等が例示でき、具体的には、以下の工程(m)および(n)により製造することができる。
(m)酸性モリブデン化合物又はその塩と、コハク酸イミド、カルボン酸アミド、炭化水素モノアミン、炭化水素ポリアミン、マンニッヒ塩基、ホスホン酸アミド、チオホスホン酸アミド、リン酸アミド、分散剤型粘度指数向上剤およびそれらの混合物からなる群より選ばれた塩基性窒素化合物とを、反応温度を約120℃以下に維持して反応させてモリブデン錯体を形成する工程。
(n)(m)の工程の生成物を少なくとも一回のストリッピング又は硫化工程または両工程にかける。ただし、モリブデン錯体をイソオクタンで希釈して、希釈したモリブデン錯体g当りモリブデン0.00025gの一定モリブデン濃度として、UV−可視分光光度計で光路長1センチメートルの石英セルで測定したときに、波長350ナノメータにおける吸光度が0.7未満であるモリブデン錯体を与えるのに充分な時間をかけ、かつストリッピング又は硫化工程における反応混合物の温度を約120℃以下に維持する工程。
また、このモリブデン錯体は、以下の工程(o)、(p)および(q)によっても製造することができる。
(o)酸性モリブデン化合物又はその塩と、コハク酸イミド、カルボン酸アミド、炭化水素モノアミン、炭化水素ポリアミン、マンニッヒ塩基、ホスホン酸アミド、チオホスホン酸アミド、リン酸アミド、分散剤型粘度指数向上剤およびそれらの混合物からなる群より選ばれた塩基性窒素化合物とを、反応温度を約120℃以下に維持して反応させてモリブデン錯体を形成する工程。
(p)(o)の工程の生成物を約120℃以下の温度でストリッピングする工程。
(q)得られた生成物を約120℃以下の温度で、硫黄とモリブデンのモル比が約1:1かそれ以下で、そしてモリブデン錯体をイソオクタンで希釈して希釈したモリブデン錯体g当りモリブデン0.00025gの一定モリブデン濃度にして、UV−可視分光光度計で光路長1センチメートルの石英セルで測定したときに、波長350ナノメータにおける吸光度が0.7未満であるモリブデン錯体を与えるのに充分な時間をかけて、硫化する工程。
酸化防止剤の配合量は、組成物全量基準で、通常0.1〜5質量%の範囲が好ましく、0.1〜3質量%の範囲がより好ましい。また、モリブデン錯体の配合量は、組成物全量基準でモリブデン量換算により、10〜1000質量ppmが好ましく、30〜800質量ppmがより好ましく、50〜500質量ppmがさらに好ましい。
これらはまた1級アルキル基、2級アルキル基又は3級アルキル基でもよい。
なお、ここでいう全塩基価とは、JIS K 2501「石油製品及び潤滑油−中和価試験方法」の7.に準拠して測定される電位差滴定法(塩基価・過塩素酸法)による全塩基価を意味する。
なお、ここでいう金属比とは、金属系清浄剤における金属元素の価数×金属元素含有量(モル%)/せっけん基含有量(モル%)で表され、金属元素とはカルシウム、マグネシウム等、せっけん基とは、スルホン酸基、フェノール基及びサリチル酸基等を意味する。
配合量が0.01質量%未満の場合、高温清浄性や酸化安定性、塩基価維持性などの性能が得られにくくなるため好ましくない。一方、20質量%以下であれば、通常その添加量に見合った効果が得られるが、当該金属系清浄剤の配合量の上限については、上記の範囲に関わらず、配合量を可能な限り低くすることが肝要である。それによって、潤滑油組成物の金属分、すなわち硫酸灰分を少なくして、自動車の排出ガス浄化装置の劣化を防止することができる。
また、金属系清浄剤は、上記の規定量を含有する限り、単独又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。
粘度指数向上剤の配合量は、配合効果の点から、潤滑油組成物全量基準で、0.5〜15質量%の範囲が好ましく、より好ましくは1〜10質量%の範囲である。
流動点降下剤の配合量は、配合効果の点から、潤滑油組成物全量基準で、0.1〜2質量%の範囲が好ましく、より好ましくは0.1〜1質量%の範囲である。
金属不活性剤の配合量は、潤滑油組成物全量基準で、0.01〜3質量%の範囲が好ましく、より好ましくは0.01〜1質量%の範囲である。
これら防錆剤の配合量は、配合効果の点から、潤滑油組成物全量基準で、0.01〜1質量%の範囲が好ましく、より好ましくは0.05〜0.5質量%である。
(1)硫酸灰分(JIS K2272)が、0.6質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下であること。かつ、
(2)リン含有量(JIS−5S−38−92)が、0.05質量%以下、より好ましくは0.02質量%以下、さらに好ましくは0質量%であること。
さらに、上記に加えて以下を満たすことがより好ましい。
(3)硫黄含有量(JIS K2541)が、0.4質量%以下、より好ましくは0.2質量%以下であること。
(4)ホウ素含有量が、0.4質量%以下、より好ましくは0.2質量%以下であること。
これらの性状を満たす本発明の潤滑油組成物は、自動車エンジンの酸化触媒、三元触媒、NOx吸蔵型還元触媒、ディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)等の劣化を抑制できる。
<性状、性能の測定方法>
以下の実施例、参考例及び比較例における潤滑油組成物の性状及び性能は、次の方法によって求めた。
JPI−5S−38−92に準拠して測定した。
(2)硫黄含有量
JIS K 2541に準拠して測定した。
(3)ホウ素含有量
JPI−5S−38−92に準拠して測定した。
(4)硫酸灰分
JIS K 2272に準拠して測定した。
試験温度は300℃に設定し、その他の条件については、JPI−5S−55−99に準拠して測定した。JPI−5S−55−99に準拠して、試験後のガラス管を0点(黒色)〜10点(無色)の11段階にて評価した。数字が高い程、耐デポジット性が良好であることを示す。
(6)銅板腐食試験
試験温度を100℃、試験時間を3時間とし、それ以外の条件はJIS K 2513に準拠し、下記4段階で評価した。数字が低いほど、耐腐食性が良好であることを示す。
1:わずかに変色
2:中程度に変色
3:濃く変色
4:腐食
(7)往復動摩擦試験
往復動摩擦試験機にて、試験板として硬度(HRC)が61、表面の十点平均粗さ(Rz)が0.042μmで、大きさが3.9mm×38mm×58mmのSUJ−2製板、試験球として直径が10mmのSUJ−2製ボールを用い、下記の試験条件で摩耗試験を行った。摩耗試験後、試験球の摩耗痕径を測定した。摩耗試験後の試験球の摩耗痕径が小さいほど、耐摩耗性が優れていることを示す。
−試験条件−
・試験温度:100℃
・荷重:200N
・振幅10mm
・振動数:10Hz
・試験時間:30分
第1表及び第2表に示した基油及び添加剤を第1表及び第2表に示す割合で配合して、潤滑油組成物を調製した。その組成物の性状・組成及び性能を第1表及び第2表に示す。
基油:水素化精製基油、40℃動粘度21mm2/s、100℃動粘度4.5mm2/s、粘度指数127、%CA0.0、硫黄含有量20質量ppm未満、NOACK蒸発量13.3質量%
ポリブテニルコハク酸モノイミド:ポリブテニル基の数平均分子量1000、窒素含有量1.76質量%、ホウ素含有量1.9質量%
ジアルキルジチオリン酸亜鉛:Zn含有量9.0質量%、リン含有量8.2質量%、硫黄含有量17.1質量%、アルキル基;第2級ブチル基と第2級ヘキシル基の混合物
化合物A:ビス(n−オクトキシカルボニルメチル)ジスルフィド、硫黄含有量15.2%
化合物B:ビス(トリデシルオキシカルボニルエチル)スルフィド、硫黄含有量5.4%
化合物C:2,6−ジ−t−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール、硫黄含有量10.9%
化合物D:2,5−ビス(n−オクチルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール、硫黄含有量33.5%
化合物E:5−(8−ヘプタデセニル)−3−アミノ−1,2,4−トリアゾール
化合物F:5−(8−ヘプタデセニル)−3−アミノ−1,2,4−トリアゾールのホウ酸反応物
化合物G:オレフィンサルファイド、硫黄含有量43%(日本ルーブリゾール製、商品名:Anglamol33)
化合物H:ジオクチルポリサルファイド、硫黄含有量39%(大日本インキ化学工業製、商品名:DAILUBE GS−440)
化合物I:硫化油脂、硫黄含有量10.4%
化合物J:メチレンビス(ジブチルジチオカーバメート)、硫黄含有量30.3%
また実施例1〜6及び参考例1〜7と、比較例5〜9との対比から分かるように、上記併用により発現する本願発明の効果は、ポリブテニルコハク酸モノイミド、硫黄含有化合物、複素環化合物又はその反応生成物をそれぞれ単独で用いても発現しない。
上記のように、ポリブテニルコハク酸イミドと、特定の硫黄含有化合物、特定の複素環化合物及びその反応生成物から選択される化合物とを併用することで、低リン分、低硫黄分、低硫酸灰分であっても耐デポジット性、耐腐食性及び耐摩耗性に優れる潤滑油組成物が得られる。
Claims (6)
- 基油に、コハク酸イミド化合物と、2,5−ビス(n−オクチルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール及び/又は2,6−ジ−t−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノールとを配合してなり、リン含有量が0質量%であり、かつ、硫酸灰分が0.1質量%以下である潤滑油組成物。
- さらに、下記(A)及び/又は(B)を配合してなる請求項1に記載の潤滑油組成物。
(A)下記一般式(I)で表される硫黄含有化合物。
(式中、R1及びR2はそれぞれ独立に、水素原子;アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基およびアリール基から選ばれる炭素数1〜50の炭化水素基;またはこれらの炭化水素基中に酸素原子、窒素原子および硫黄原子から選ばれる原子を含んでなる炭素数1〜50のヘテロ原子含有基を表す。Yはそれぞれ独立に、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−(C=O)O−、−(C=O)NH−、−O(C=O)NH−、−C(=O)−、−N(H)−、−NHCONH−、−N=N−、−NH−C(=NH)−NH−、−S−C(=O)−、−NH−C(=S)−および−NH−C(=S)−NH−から選ばれる二価の基を表す。X1は1〜3の整数であり、nはそれぞれ独立に1〜5の整数である。)
(B)下記一般式(II)で表される硫黄含有化合物。
(式中、R3〜R12はそれぞれ独立に、水素原子;アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基およびアリール基から選ばれる炭素数1〜50の炭化水素基;またはこれらの炭化水素基中に酸素原子、窒素原子および硫黄原子から選ばれる原子を含んでなる炭素数1〜50のヘテロ原子含有基を表す。Yはそれぞれ独立に、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−(C=O)O−、−(C=O)NH−、−O(C=O)NH−、−C(=O)−、−N(H)−、−NHCONH−、−N=N−、−NH−C(=NH)−NH−、−S−C(=O)−、−NH−C(=S)−および−NH−C(=S)−NH−から選ばれる二価の基を表す。X2は1〜3の整数である。) - 前記一般式(I)において、X1が1である請求項2に記載の潤滑油組成物。
- 前記コハク酸イミド化合物の配合量が、潤滑油組成物全量基準で3〜7質量%である請求項1〜3のいずれかに記載の潤滑油組成物。
- 前記2,6−ジ−t−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノールを配合してなる請求項1〜4のいずれかに記載の潤滑油組成物。
- 後処理装置が装着されたエンジンに用いられる請求項1〜5のいずれかに記載の潤滑油組成物。
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