JP5783762B2 - 外断熱壁の構築方法 - Google Patents

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本発明は、合成樹脂発泡体の断熱板を用いた同時打込工法による外断熱壁の構築方法に関する。
従来、コンクリート躯体に合成樹脂発泡体製の断熱板を接着した後、この断熱板の案内溝に嵌め込まれたチャンネル材を受け材として外装材を取り付けることで外断熱壁を構築することが知られている(例えば、特許文献1参照)。また、合成樹脂発泡体製の断熱板を設置した型枠内にコンクリートを打設することで、コンクリート躯体の構築と同時に断熱板を付設する同時打込工法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
特開2008−156874号公報 特開2004−107942号公報
ところで、近年の高断熱化に伴い、一般の建物でも複数枚の断熱板を重ねて取り付けることが行われている。また、冷凍倉庫等の建築に際しては、複数枚の断熱板を重ねて取り付けることは珍しいことではない。
同時打込工法を用い、上記のような複数枚の断熱板を重ねて設置する場合、最も内側の断熱板は同時打込工法で付設することができるが、残りの断熱板はコンクリート躯体の構築後に取り付けられることになる。残りの断熱板の取り付けは、コンクリート躯体の構築時に付設された最も内側の断熱板の上に、例えば接着剤で接着するか、コンクリート躯体までアンカーピンを打ち込んで固定することになる。また、最も室外側の断熱板にチャンネル材を取り付ければ、これに外装材を取り付けることができる。
しかしながら、同時打込工法の施工時に付設することができない断熱板を、コンクリート躯体の構築後に付設するのでは、作業性が悪い問題がある。つまり、壁用のコンクリート躯体は1800mm〜3000mmの高さで構築されることから、このような高さの面に沿って断熱板を立てて接着又はピン止めするのは手間がかかり、施工効率が悪い問題がある。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、複数枚の断熱板が重ねて設置された断熱構造の外断熱壁を同時打込工法で構築するのに際し、施工効率を向上させることを目的とする。
上記目的のために本発明は、合成樹脂発泡体の断熱板を用いた同時打込工法による外断熱壁の構築方法において、重ねられた複数枚の断熱板の一方の露出面に所定の間隔で設けられた下地材と前記複数枚の断熱板とを結合し、前記複数枚の断熱板のいずれかの側面に、前記一方の露出面の長辺側及び短辺側で内外面方向に形成位置をずらせてそれぞれスプライン溝を形成して複合板とし、該複合板の前記一方の露出面を建物の外面側にして、相隣接して設置される前記複合板の相対向するスプライン溝間に跨って細板状のスプラインを差し込み、前記複合板の他方の露出面と型枠との間にコンクリーを打設して、前記断熱板が一体に設けられたコンクリート躯体を構築した後、前記下地材に外装材を取り付けることを特徴とする外断熱壁の構築方法を提供するものである。
上記本発明は、前記一方の露出面の前記下地材の設置位置に受け溝を形成する一方、下地材としてコ字形のチャンネル材を用い、該コ字形のチャンネル材である下地材を、コ字形の両脚部を前記一方の露出面を構成する断熱板に差し込んで前記受け溝内に設けると共に、ボルト材を前記下地材上から前記複数枚の断熱板を貫通させ、該ボルト材の先端部にナット材をねじ込んで締め付けることで、前記下地材と複数枚の断熱板とを結合すると共に、前記ボルト材の頭部を前記受け溝の深さ内に収容すること
記一方の露出面を構成する断熱板として他の断熱板より小さいものを用い、前記一方の露出面を構成する断熱板の外周面を他の断熱板の外周面より内側に引っ込めておくことで、相隣接して配置される前記複合板の前記一方の露出面側に、継ぎ目に沿ってシール溝を形成し、このシール溝に、前記外装材の取り付け前にシール材を充填すること
をその好ましい態様として含むものである。
本発明によれば、外装材を取り付けるための下地材と複数の断熱板とを結合した複合板を同時打込工法に用いるので、同時打込工法によるコンクリート躯体の形成と同時に複数枚の断熱板の設置が完了する。また、下地材と複数の断熱板との結合は、予め工場で行っておくこともできるが、現場で行う場合でも断熱板を横にした状態で行うことができるので作業性がよい。従って、コンクリート躯体の形成後にも断熱板の付設作業を行わなければならない場合に比して施工効率が向上する。
本発明のその他の効果については、実施形態と共に説明する。
本発明に用いる複合板の一例を示す斜視図である。 (a)は図1に示す複合板の平面図、(b)は図1に示す複合板の底面図である。 図1及び図2に示す複合板における下地材周りの拡大図側面図で、(a)は下地材取り付け途中段階の状態を示す図、(b)は下地材の取り付け完了後の状態を示す図である。 図1〜図3に示す複合板を用いた同時打込工法によるコンクリート躯体の形成時時の型枠周りの縦断面図である。 図1〜図3に示す複合板を用いた同時打込工法によるコンクリート躯体の形成時時の型枠周りの横断面図である。 外装材の取り付け時のコンクリート躯体周りの縦断面図である。 外装材の取り付け時のコンクリート躯体周りの横断面図である。
本発明では、外断熱壁の構築を、図1〜図3に示すような複合板1を用いた同時打込工法で行う。本例の複合板1は、長方形の合成樹脂発泡体製の二枚の断熱板2a,2bと、所定の間隔で設けられた複数の下地材3とで構成されている。
断熱板2a,2bを構成する合成樹脂発泡体としては、独立気泡の合成樹脂発泡体が用いられる。具体的には、ポリスチレン系発泡体、ポリエチレン系発泡体、ポリプロピレン系発泡体、ポリウレタン系発泡体、フェノール樹脂系発泡体等を用いることができる。これらの中でも、吸水性が低く、断熱性、機械的強度に優れることから、ポリスチレンの発泡体が好ましく、特に押出発泡成形品が好ましい。本例では二枚の断熱板2a,2bを重ねて用いているが、三枚以上の断熱板2a,2b,…を重ねることも可能である。また、重ねる断熱板2a,2b,…の材質は、通常は同じ種類の合成樹脂発泡体が用いられるが、異なる種類の合成樹脂発泡体とすることもできる。
下地材3は、外装材4(図6及び図7参照)を取り付ける際の受け材として用いるもので、例えば木材、合成樹脂等の帯状板材を用いることもできるが、本例の下地材3は、図3に拡大して示すように、コ字形のチャンネル材で構成されている。この下地材3は、重ねた二枚の断熱板2a,2bの一方の露出面(断熱板2aの表面)を横断して所定間隔で設けられている。なお、上記重ねた二枚の断熱板2a,2bの一方の露出面は建物の室外側に向けられる面で、以下外面という。
図3(a)に示すように、上記外面において、下地材3の設置位置には受け溝5が形成されている。この受け溝5の両側部にはコ字形のチャンネル材である下地材3の両脚部を差し込む差し込み溝6が形成されている。下地材3は、図3(b)に示すように、外面を構成する断熱板2aに差し込み溝6を介してその両脚部が差し込まれて受け溝5内に設置されている。下地材3としてコ字形のチャンネル材を用い、その両脚部を外面を構成する断熱板2aに差し込んで設置すると、下地材3の取り付け状態を安定させやすくなる。
下地材3上から、二枚の断熱板2a,2bを貫通してボルト材7が設けられ、重ねた二枚の断熱板2a,2bの他方の露出面(断熱板2bの表面)側に突出したボルト材7の先端部にナット材8がねじ込まれ、締め付けられている。これにより、二枚の断熱板2a,2bと下地材3が一体に結合されて、複合板1を構成している。なお、上記重ねた二枚の断熱板2a,2bの他方の露出面は建物の室内側に向けられる面で、以下内面という。
両断熱板2a,2b及び下地材3の結合は、例えば接着等によって行うこともできるが、上記のようにボルト材7とナット材8により行うと、現場でも迅速に行うことができる。また、接着剤を使用する場合でも、ボルト材7とナット材8による結合を併用すると、接着剤の硬化を待たずに作業を進めることができるので好ましい。ナット材8は、熱橋の形成を遮断することができるよう、合成樹脂製の袋ナット状とすることが好ましい。また、ボルト材7の頭部は、受け溝5の深さ内に収容することが好ましい。ボルト材7の頭部を受け溝5の深さ内に収容して外面から突出しないようにしておくと、その後の室外側の型枠9a(図4及び図5参照)の設置や外装材4(図6及び図7参照)の取り付け時に邪魔になるのを防止することができる。
本例の複合板1においては、断熱板2aが断熱板2bより一回り小さくなっており、断熱板2aの外周面は断熱板2bの外周面より内側へ引っ込められている。このようにしておくことで、相隣接して配置される複合板1の外面側に、継ぎ目に沿ってシール溝10(図4及び図5参照)を形成することができる。
本例の複合板1においては、外面を構成する断熱板2aの厚さに比して内面を構成する断熱板2bの厚さが大きくなっており、断熱板2bの側面にスプライン溝11a,11bが形成されている。このスプライン溝11a,11bは、相隣接して設置される複合板1の相対向するスプライン溝11a同士又は11b同士間に跨って細板状のスプライン12a又は12b(図4〜図7参照)を差し込むためのものである。長辺側のスプライン溝11aと短辺側のスプライン溝11bとは、それぞれスプライン12aとスプライン12bとを差し込む際に干渉しないよう、形成位置が内外面方向にずらされている。なお、本例で断熱板2aより断熱板2bが厚くなっているのは、スプライン溝11a,11bを形成しやすくするためである。但し、使用する断熱板2a,2b,…の厚さによっては、等しい厚さとすることも可能である。また、スプライン12a,12bの設置はノロ止めためであるので、コンクリートの打設領域に近い位置にスプライン12a,12bを設置できるよう、スプライン溝11a,11bは、最も室内側となる断熱板(本例では断熱板2b)に形成することが好ましい。
次に、上述した複合板1を用いた同時打込工法について説明する。
複合板1は、予め工場で組み立てた後に現場へ搬入するか、現場で組み立てる。現場で複合板1を組み立てる際は、工場にて断熱板2aへ下地材3を仮止めした状態で搬入すると、組み立て作業が容易となる。下地材3をコ字形のチャンネル材とすると、断熱材2aに差し込み溝6を形成し、コ字形の両脚部を差し込むことで容易に仮止めすることができる。また、断熱板2a,2bの所定の位置に、ボルト材7を差し込む貫通孔を予め形成しておくことも、現場での組立を容易にするのに役立つ。
搬入した複合板1又は現場で組み立てた複合板1を立ち上げ、図4及び図5に示すような壁型枠を形成する。壁型枠は、建物の室外側に設けられる型枠9aと、建物の室内側に設けられる型枠9bとを間隔をあけて対向して設置すると共に、室外側の型枠9a側に複合板1を設置することで形成される。型枠9aと型枠9bは、両者間の間隔を維持するセパレーター13で接続する。複合板1は、やはりセパレーター13を用いて型枠9aにその外面を押し付けるようにして設置する。
通常、複合板1は縦長の状態で設置される。複合板1の設置に際しては、横方向に隣接して設置される複合板1のスプライン溝11a同士間に跨ってスプライン12aを差し込んで、長辺同士の継ぎ目からのノロの流出を防止できるようにすることが好ましい。このようにして一段目の壁型枠を形成した後、複合板1の内面と型枠9bとの間の空間にコンクリートを打設し、硬化させることでコンクリート躯体14を形成する。また、複合板1はコンクリート躯体14の形成と共にコンクリート躯体14に一体に付設されることになる。
二段目以降の壁型枠は、通常、前段のコンクリートの打設後一段毎に形成する。二段目以降の壁型枠の形成に際しては、横方向に隣接する複合板1間のスプライン12aだけでなく、縦方向に隣接する複合板1のスプライン溝11b間に跨るスプライン12bの差し込みも行い、短辺同士の継ぎ目からのノロの流出も防止できるようにすることが好ましい。
複合板1が付設されたコンクリート躯体14を必要な高さに形成後、型枠9aと型枠9bを外す。コンクリート躯体14の室外側の面に一体に付設された複合板1の外面側には、相隣接して配置された複合板1間の継ぎ目に沿って形成されたシール溝10が露出する。図6及び図7に示されるように、このシール溝10にシール材15を充填すると、継ぎ目が開いてしまうこと等による断熱性能の低下を防止することができる。シール材15としては、現場発泡のポリウレタン発泡体を用いることができる。シール材15の充填後、外装材4の取り付けを行う。外装材4の取り付けは、断熱板2aの外面に取り付けられた下地材3を受け材として行うことができる。外装材4としては、金属サンドイッチパネル、サイディング等を用いることができる。
以上のようにして、外断熱壁を構築することができる。なお、上記の例においては、室外側の型枠9aで複合板1を支持しているが、複合板1が必要な剛性を備えている場合、型枠9aを省略し、複合板1を型枠兼用とすることが可能である。
1 複合板
2a,2b 断熱板
3 下地材
4 外装材
5 受け溝
6 差し込み溝
7 ボルト材
8 ナット材
9a 室外側の型枠
9b 室内側の型枠
10 シール溝
11a,11b スプライン溝
12a,12b スプライン
13 セパレーター
14 コンクリート躯体
15 シール材

Claims (3)

  1. 合成樹脂発泡体の断熱板を用いた同時打込工法による外断熱壁の構築方法において、重ねられた複数枚の断熱板の一方の露出面に所定の間隔で設けられた下地材と前記複数枚の断熱板とを結合し、前記複数枚の断熱板のいずれかの側面に、前記一方の露出面の長辺側及び短辺側で内外面方向に形成位置をずらせてそれぞれスプライン溝を形成して複合板とし、該複合板の前記一方の露出面を建物の外面側にして、相隣接して設置される前記複合板の相対向するスプライン溝間に跨って細板状のスプラインを差し込み、前記複合板の他方の露出面と型枠との間にコンクリーを打設して、前記断熱板が一体に設けられたコンクリート躯体を構築した後、前記下地材に外装材を取り付けることを特徴とする外断熱壁の構築方法。
  2. 前記一方の露出面の前記下地材の設置位置に受け溝を形成する一方、下地材としてコ字形のチャンネル材を用い、該コ字形のチャンネル材である下地材を、コ字形の両脚部を前記一方の露出面を構成する断熱板に差し込んで前記受け溝内に設けると共に、ボルト材を前記下地材上から前記複数枚の断熱板を貫通させ、該ボルト材の先端部にナット材をねじ込んで締め付けることで、前記下地材と複数枚の断熱板とを結合すると共に、前記ボルト材の頭部を前記受け溝の深さ内に収容することを特徴とする請求項1に記載の外断熱壁の構築方法。
  3. 前記一方の露出面を構成する断熱板として他の断熱板より小さいものを用い、前記一方の露出面を構成する断熱板の外周面を他の断熱板の外周面より内側に引っ込めておくことで、相隣接して配置される前記複合板の前記一方の露出面側に、継ぎ目に沿ってシール溝を形成し、このシール溝に、前記外装材の取り付け前にシール材を充填することを特徴とする請求項1又は2に記載の外断熱壁の構築方法。
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