JP5780549B2 - レプチン抵抗性を改善および/または予防するための薬学的組成物、並びにその使用 - Google Patents

レプチン抵抗性を改善および/または予防するための薬学的組成物、並びにその使用 Download PDF

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Description

レプチン抵抗性を改善および/または予防するための薬学的組成物、並びにその使用に関するものである。
レプチンは、主に脂肪組織によって分泌されるホルモンである。循環血液中に分泌されたレプチンは、視床下部および脳幹部に存在するレプチン受容体を介して摂食抑制作用やエネルギー消費亢進をもたらすことで体重を減少させる。
近年、血中レプチン濃度が上昇するにもかかわらず、レプチンの作用が低下する、いわゆる「レプチン抵抗性」となることが報告されている(非特許文献1の記載を参照)。
レプチン抵抗性獲得のメカニズムとしては、様々な原因が考えられている。例えば、非特許文献2、6および7には、レプチン抵抗性にはプロテインチロシンホスファターゼ1B(protein tyrosine phosphatase 1B)が関与することが示されている。
また、非特許文献3および4には、視床下部におけるsuppressor of cytokine signaling 3(SOCS3)の発現増加によってレプチン抵抗性が誘発されることが示されている。さらに、非特許文献5には、レプチン自体の反応性というよりむしろ、循環血液中のレプチンを血液脳関門を通って中枢系へと輸送する系に何らかの原因があってレプチン抵抗性が誘発されることが示唆されている。
最近では、レプチン抵抗性が、糖尿病、高血圧症、高脂血症、動脈硬化症等の発症要因になっているとも考えられており、レプチン抵抗性を改善および/または予防することは、レプチン抵抗性に起因する疾病を改善および/または予防するためにも重要である。
例えば、特許文献1には、中枢神経における小胞体ストレスを改善するための薬学的組成物について開示されている。かかる薬学的組成物は、非ステロイド性抗炎症性化合物を含有することを特徴としている。そして、上記非ステロイド性抗炎症性化合物として、フルルビプロフェンが利用可能であることが示唆されている。
日本国公開特許公報「特開2008−208091号公報(2008年9月11日公開)」
H. Munzberg, M. G. Myers, Jr., Molecular and anatomical determinants of central leptin resistance. Nature Neuroscience, 2005, 8: 566-570. Bence KK, Delibegovic M, Xue B, Gorgun CZ, Hotamisligil GS, Neel BG, and Kahn BB (2006) Neuronal PTP1B regulates body weight, adiposity and leptin action. Nature Med 12: 917-924. C. Bjorbaek, J. K. Elmquist, J. D. Frantz, S. E. Shoelson, J. S. Flier, Identification of SOCS-3 as a Potential Mediator of Central Leptin Resistance. Molecular Cell, 1998, 1: 619-625. C. Bjorbaek, K. El-Haschimi, J. D. Frantz, J. S. Flier, The Role of SOCS-3 in Leptin Signaling and Leptin Resistance. THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY, 1999, 274(42): 30059-30065. M. V. Heek, D. S. Compton, C. F. France, R. P. Tedesco, A. B. Fawzi, M. P. Graziano, E. J. Sybertz, C. D. Strader, H. R. Davis, Jr., Diet-induced Obese Mice Develop Peripheral, but Not Central, Resistance to Leptin. J. Clin. Invest., 1997, 99(3): 385-390. Cheng A, Uetani N, Simoncic PD, Chaubey VP, Lee-Loy A, McGlade CJ, Kennedy BP, and Tremblay ML (2002) Attenuation of leptin action and regulation of obesity by protein tyrosine phosphatase 1B. Dev Cell 2: 497-503. Zabolotny JM, Bence-Hanulec KK, Stricker-Krongrad A, Haj F, Wang Y, Minokoshi Y, Kim YB, Elmquist JK, Tartaglia LA, Kahn BB, et al. (2002) PTP1B regulates leptin signal transduction in vivo. Dev Cell 2: 489-495.
しかしながら、特許文献1に開示される薬学的組成物は、中枢神経における小胞体ストレスを改善することを意図しており、レプチン抵抗性を改善および/または予防することを考慮して開発されたものはない。
上述したように、レプチン抵抗性は、様々な原因によって誘発されるものであり、レプチン抵抗性の根本的なメカニズムは未だ不明である。そのため、レプチン抵抗性を改善および/または予防するための決定的な治療薬を得るには至っていない。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、レプチン抵抗性を改善および/または予防するための薬学的組成物、および当該薬学的組成物の使用を提供することにある。
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、従来、非ステロイド性抗炎症薬として慢性関節リウマチ、腰痛症等の疾患に対して適用されてきたフルルビプロフェンが、レプチン抵抗性を改善および/または予防する効果を有することを発見し、本発明を完成させるに至った。
これまで、フルルビプロフェンにレプチン抵抗性を改善および/または予防する効果があるということは一切知られていない。したがって、フルルビプロフェンにレプチン抵抗性を改善および/または予防する効果があるということは、本発明者らが初めて見出し、ここに開示するものである。
すなわち、本発明にかかるレプチン抵抗性を改善および/または予防するための薬学的組成物は、フルルビプロフェンを含有することを特徴としている。
本発明は、レプチン抵抗性を改善および/または予防するための薬学的組成物を製造するための、フルルビプロフェンの使用を包含する。
なお、特許文献1には、小胞体ストレスによって誘導されるGRP78およびCHOPの発現がフルルビプロフェンによって抑制されることが示されている。これは、小胞体ストレスを改善するためにフルルビプロフェンを利用可能であることが示唆されているに過ぎない。上述したように、レプチン抵抗性は、小胞体ストレス以外の原因によっても誘発されるものである。よって、フルルビプロフェンがレプチン抵抗性獲得の一因である小胞体ストレスを改善する効果があることが特許文献1に示唆されているからといって、フルルビプロフェンにレプチン抵抗性を改善する効果があることまでは予想できない。それゆえ、本発明は特許文献1等の記載に基づいて容易に想到し得るものではない。
本発明のさらに他の目的、特徴、および優れた点は、以下に示す記載によって十分わかるであろう。また、本発明の利益は、添付図面を参照した次の説明で明白になるであろう。
本発明にかかる薬学的組成物は、レプチン抵抗性を改善および/または予防し得るという非常に優れた効果を奏するものである。
なお、本発明にかかる薬学的組成物に含有されるフルルビプロフェンは、既に非ステロイド性抗炎症薬として上市されている。そのため、投与による副作用(胃部不快感、食欲不振、悪心等)も予想できるものであり、さらに、フルルビプロフェンに対する依存性及び耐性発現が認められないことも確認されている。したがって、レプチン抵抗性を改善および/または予防するための長期投与可能な安全な薬剤となり得る点で非常に優れている。
高脂肪食または普通食が与えられたマウスにおける体重の変化を示すグラフである。 高脂肪食を与えることによってレプチン抵抗性が誘発されることを示す図である。 フルルビプロフェン投与後8週間における各グループのマウスの体重の変化を示すグラフである。 レプチン投与30分後の各グループのマウスの視床下部におけるSTAT3のリン酸化をウエスタンブロットによって調べた結果を表す図である。 図4のウエスタンブロットの結果を数値化したグラフである。縦軸は、各グループのマウスの視床下部におけるSTAT3のリン酸化の強度を表す。 絶食前後における血漿中のレプチン濃度を測定した結果を表すグラフである。図6の(a)は絶食前の血漿中のレプチン濃度を表し、(b)は絶食後の血漿中のレプチン濃度を表している。 血漿中のレプチン濃度と体重との相関を表すグラフである。図7の(a)は絶食前の血漿中のレプチン濃度と体重との相関を表し、(b)は絶食後の血漿中のレプチン濃度と体重との相関を表している。 グルコース負荷試験の結果を表すグラフである。 フルルビプロフェンを投与して8週目の各グループのマウスの脂肪量を示すグラフである。 フルルビプロフェンを投与して8週目の各グループのマウスの行動量を示すグラフである。 実施例7の実験の手順を示す図である。 レプチン投与後の各グループのマウスの摂食量変化率を示すグラフである。 コントロール群およびフルルビプロフェン投与群のマウスの体重変化率を示すグラフである。 コントロール群およびフルルビプロフェン投与群のマウスにおける普通食投与3週間後の内蔵脂肪量を示すグラフである。 コントロール群およびフルルビプロフェン投与群のマウスにおける普通食投与3週間後の血中レプチン濃度を示すグラフである。 コントロール群およびフルルビプロフェン投与群のマウスにおける普通食投与3週間後の体長を示すグラフである。 グルコース負荷試験の結果を表すグラフである。 飲水量の測定結果を表すグラフである。
本発明の一実施形態について説明すると以下の通りである。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、記述した範囲内で種々の変形を加えた態様で実施できるものである。また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。なお、本明細書において特記しない限り「A〜B」は、「A以上、B以下」を意味する。
〔薬学的組成物〕
本発明にかかる薬学的組成物は、レプチン抵抗性を改善および/または予防するための薬学的組成物であって、フルルビプロフェンを含有することを特徴としている。本明細書において、「フルルビプロフェン」は、以下の一般式で表される化合物(I)およびその鏡像異性体、並びにこれらの薬学的に許容される塩が包含される。
さらに、本明細書において、上記「フルルビプロフェン」には、上記化合物(I)の骨格を有した誘導体も包含される。
上記「誘導体」としては、誘導体の形態において、上記化合物(I)と同等の活性を有するものであってもよく、誘導体の形態においては不活性であるが、生体内における生理的条件下において酵素等による反応により、上記化合物(I)に変換されて活性を再獲得する、いわゆる「プロドラッグ」の形態であってもよい。このような「誘導体」としては、例えば、上記化合物(I)におけるカルボン酸がエステル化された誘導体;上記化合物(I)におけるカルボン酸がアキセチル化された誘導体;等を挙げることができる。
上記化合物(I)におけるカルボン酸がエステル化された誘導体としては、例えば、上記化合物(I)におけるカルボン酸が、メチルエステル化、エチルエステル化、またはフェニルエステル化された誘導体等を挙げることができる。
中でも、上記化合物(I)におけるカルボン酸をメチルエステル化した誘導体は、上記化合物(I)と比較して、脳への移行性が向上することが報告されている(http://www.riken.go.jp/r-world/research/results/2010/100309/index.html)〔2010年4月5日検索〕。これらの「誘導体」は、従来公知の方法によって上記化合物(I)から製造することができる。
本発明にかかる薬学的組成物は、製薬分野における公知の方法によって製造することができる。本発明にかかる薬学的組成物におけるフルルビプロフェンの含有量としては、薬学的組成物の製剤形態、投与方法、使用目的および当該医薬の投与対象である患者の年齢、体重、症状等を考慮し、当該薬学的組成物を用いて後述する投与量の範囲内でフルルビプロフェンを投与できるような量であれば特に限定されない。フルルビプロフェンの投与量の下限としては、成人(体重60kg)1日あたり、好ましくは、0.013〜401mg/kg、より好ましくは、0.13〜40mg/kg、さらにより好ましくは、0.44〜12mg/kgである。
但し、好ましい投与量の範囲は、種々の条件によって変動するため、上述した投与量よりも少ない量でも十分な場合もあれば、上述した範囲以上の量を投与することが必要な場合もある。
ここで、上記「レプチン抵抗性」について以下に説明する。本明細書において「レプチン抵抗性」とは、血中にレプチンが存在するが、視床下部におけるレプチンシグナルが抑制されている状態を意味している。
ここで、上記「レプチンシグナル」について簡単に説明する。レプチンは、サイトカインレセプターのファミリーに属するレプチン受容体に作用してJak2を活性化する。その結果として、転写因子であるSTAT3がリン酸化される。リン酸化されたSTAT3は核内に移行し、プロ−オピオメラノコルチン(POMC)等の転写を活性化する(H. Munzberg, M. G. Myers, Jr., Molecular and anatomical determinants of central leptin resistance. Nature Neuroscience, 2005, 8: 566-570)。そのため、レプチン投与後の、レプチン受容体が発現している組織におけるSTAT3のリン酸化の状態を指標として、レプチンシグナルが抑制されているか否かを確認することができる。
したがって、本明細書において「レプチン抵抗性の予防」とは、例えば、レプチン抵抗性が誘発される条件下(例えば、後述する高脂肪食を長期間与える等)であっても、視床下部においてレプチンによるSTAT3のリン酸化状態が維持されることを意図している。また、「レプチン抵抗性の改善」とは、例えば、レプチン抵抗性が誘発されて視床下部においてレプチンによるSTAT3のリン酸化が抑制された状態から、STAT3が再びリン酸化されるようになることを意図している。
尚、後述する実施例に示すように、「レプチン抵抗性の予防」または「レプチン抵抗性の改善」は、STAT3のリン酸化状態のみならず、体重、血糖値および血中レプチン濃度を指標としても評価することができる。具体的には、例えば、レプチン抵抗性が誘発される条件下(例えば、後述する高脂肪食を長期間与える等)であっても、血中レプチン濃度が有意に増加しない状態が維持されればレプチン抵抗性が予防されたと評価することができる。また、レプチン抵抗性が誘発された状態(例えば、後述する高脂肪食を与えることによってレプチン抵抗性が誘発されて血中レプチン濃度が増加した状態等)から、血中レプチン濃度が有意に減少した状態になればレプチン抵抗性が改善したと評価することができる。
本発明にかかる薬学的組成物は、フルルビプロフェンの効果を阻害しない、フルルビプロフェン以外の他の成分(例えば、薬学的に受容可能なキャリア等)をさらに含有してもよい。
ここで、上記「薬学的に受容可能なキャリア」について以下に説明する。本明細書において「薬学的に受容可能なキャリア」(以下、単に「キャリア」ともいう)とは、医薬、または動物薬のような農薬を製造するときに、処方を補助することを目的として用いられる物質であって、有効成分に有害な影響を与えないものをいう。さらに、本発明にかかる薬学的組成物を受容した個体において毒性が無く、且つキャリア自体は有害な抗体の産生を誘導しないものが意図される。
上記キャリアとしては、製剤素材として使用可能な各種有機または無機のキャリア物質が用いられ、後述する薬学的組成物の投与形態および剤型に応じて適宜選択することができる。例えば、固形製剤における賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤等;液状製剤における溶剤、溶解補助剤、懸濁剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤等;防腐剤;抗酸化剤;安定剤;矯味矯臭剤等として配合されるが、本発明はこれらに限定されない。
上記「賦形剤」としては、例えば、乳糖、白糖、D-マンニトール、キシリトール、ソルビトール、エリスリトール、デンプン、結晶セルロース等を挙げることができるが、製薬分野において通常用いられるものであれば特に限定されるものではない。
上記「滑沢剤」としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ワックス、タルク、コロイドシリカ等を挙げることができるが、製薬分野において通常用いられるものであれば特に限定されるものではない。
上記「結合剤」としては、例えば、α化デンプン、メチルセルロース、結晶セルロース、白糖、D-マンニトール、トレハロース、デキストリン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン等を挙げることができるが、製薬分野において通常用いられるものであれば特に限定されるものではない。
上記「崩壊剤」としては、例えば、デンプン、カルボキシメチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム等を挙げることができるが、製薬分野において通常用いられるものであれば特に限定されるものではない。
上記「溶剤」としては、例えば、注射用水、アルコール、プロピレングリコール、マクロゴール、ゴマ油、トウモロコシ油、トリカプリリン等を挙げることができるが、製薬分野において通常用いられるものであれば特に限定されるものではない。
上記「溶解補助剤」としては、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、D-マンニトール、トレハロース、安息香酸ベンジル、エタノール、トリスアミノメタン、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム等を挙げることができるが、製薬分野において通常用いられるものであれば特に限定されるものではない。
上記「懸濁剤」としては、例えば、ステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、モノステアリン酸グリセリン等の界面活性剤、あるいは、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の親水性高分子等を挙げることができるが、製薬分野において通常用いられるものであれば特に限定されるものではない。
上記「等張化剤」としては、例えば、塩化ナトリウム、グリセリン、D-マンニトール等を挙げることができるが、製薬分野において通常用いられるものであれば特に限定されるものではない。
上記「緩衝剤」としては、例えば、リン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩等の緩衝液等を挙げることができるが、製薬分野において通常用いられるものであれば特に限定されるものではない。
上記「無痛化剤」としては、例えば、ベンジルアルコール等を挙げることができるが、製薬分野において通常用いられるものであれば特に限定されるものではない。
上記「防腐剤」としては、例えば、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸等を挙げることができるが、製薬分野において通常用いられるものであれば特に限定されるものではない。
上記「抗酸化剤」としては、例えば、亜硫酸塩、アスコルビン酸等を挙げることができるが、製薬分野において通常用いられるものであれば特に限定されるものではない。
また、上記安定剤、矯味矯臭剤としては、製薬分野において通常用いられるものであれば特に限定されるものではない。
本発明にかかる薬学的組成物の投与形態としては、経口的に投与するものであっても、非経口的に、静脈内、直腸内、腹腔内、筋肉内、または皮下に投与するものであってもよく、製剤形態に応じた適当な投与経路で投与することができる。中でも、投与が容易であるとの理由から、本発明にかかる組成物は、経口的に投与されることが好ましい。
なお、本明細書中において、上記「非経口」とは、脳室内、静脈内、筋肉内、腹腔内、胸骨内、皮下、および関節内の注射および注入を含む投与の様式をいう。
本発明にかかる薬学的組成物を経口的に投与する場合、かかる薬学的組成物(以下、「経口剤」ともいう)の剤型としては、例えば、粉剤、顆粒剤、錠剤、リポソーム、カプセル剤(ソフトカプセル、マイクロカプセルを含む)、散剤等の固形製剤や、シロップ剤等の液状製剤とすることができる。
上記「液状製剤」は、上記キャリアとして、例えば、水;グリセロール、グリコール、ポリエチレングリコール等の有機溶媒;これらの有機溶媒と水との混合物等を用いて、製薬分野において通常用いられる方法で製造することができる。また、上記液状製剤は、さらに、溶解補助剤、緩衝剤、等張化剤、安定剤等を含んでいてもよい。
上記「固形製剤」は、上記キャリアとして、例えば、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、安定剤、矯味矯臭剤等を用いて、製薬分野において通常用いられる方法で製造することができる。
かかる経口剤を調製する際には、目的に応じて、潤滑剤、流動性促進剤、着色剤、香料等をさらに配合してもよい。
また、本発明にかかる薬学的組成物を非経口的に投与する場合、かかる薬学的組成物(以下、「非経口剤」ともいう)の剤型としては、例えば、注射剤、坐剤、ペレット、点滴剤等とすることができる。かかる非経口剤は、製薬分野において公知の方法に従って、本発明にかかる薬学的組成物を、希釈剤(例えば、注射用蒸留水、生理食塩水、ブドウ糖水溶液、注射用植物油、ゴマ油、ラッカセイ油、ダイズ油、トウモロコシ油、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)に溶解または懸濁させ、目的に応じて、殺菌剤、安定剤、等張化剤、無痛化剤等をさらに加えることにより調製することができる。
また、本発明にかかる薬学的組成物の一実施形態として、製薬分野において通常用いられる技術により、徐放性製剤とすることもできる。
本発明にかかる薬学的組成物は、単独で投与されてもよいし、他の薬剤と併用して投与されてもよい。併用して投与される方法としては、例えば、他の薬剤との混合物として同時に投与されてもよいし、他の薬剤とは別の薬剤として同時にもしくは並行して投与されてもよいし、あるいは経時的に投与されてもよいが、本発明はこれに限定されない。
また、本発明にかかる薬学的組成物が1日あたりに投与される回数は特に限定されるものではない。フルルビプロフェンの投与量が、1日あたりの所要の投与量範囲内であれば、1日あたり1回の投与であってもよいし、複数回に分けて投与を行ってもよい。
なお、本発明にかかる薬学的組成物は、ヒト以外の哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、およびサル等)に対しても適用可能であることは、当業者であれば容易に理解する。
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
本実施例では、実験動物として、4週齢の雄のマウス(C57BL/6 Cr Slc、清水実験材料株式会社)を用いた。また、本実施例における全ての動物実験は、実験動物の飼育と使用のためのNIH指針(NIH Guide for Care and Use of Laboratory Animals)に従って行った。
〔実施例1〕
<レプチン抵抗性に対するフルルビプロフェンの効果1>
(レプチン抵抗性の誘発方法および確認方法)
まず、本実施例で用いたレプチン抵抗性の誘発方法およびレプチン抵抗性の確認方法について以下に説明する。
図1は、高脂肪食または普通食が与えられたマウスにおける体重の変化を示すグラフである。図1のグラフに示す値は、各グループにおけるマウスの体重を、それぞれのマウスの体重の平均値±標準偏差として示した(グループあたりn=7〜8)。また、t検定を用いて統計解析を行った。なお、図1中に記載される「**」は、危険率1%未満において、高脂肪食が与えられたグループの体重と普通食が与えられたグループの体重との間に有意差があることを表す。また、「***」は、危険率0.1%未満において、高脂肪食が与えられたグループの体重と普通食が与えられたグループの体重との間に有意差があることを表す。
図1に示すように、高脂肪食(60kcal%fat、D12492、Reserch DIET社製)を与えられたマウスは、普通食(10kcal%fat、D12450B、Reserch DIET社製)を与えられたマウスと比較して、有意に体重が増加した。
次いで、高脂肪食または普通食を与えて16週目のマウスに、マウス由来のレプチン(450−31、PeproTech社製または498−OB、rmLeptin、R&D社製)を生理食塩水に溶解して調製したものを、投与量が5ml/kg(1mg/kg)になるように、非経口的に尾静脈内投与した。レプチン投与のコントロールとしては、等量の生理食塩水を尾静脈内投与した。
レプチン投与30分後のマウスの視床下部におけるSTAT3のリン酸化を、リン酸化STAT3を認識する抗体(9131S、Cell Signaling製)を用いたウエスタンブロットによって調べた結果を図2に示す。図2に示すように、高脂肪食を与えて16週目のマウスでは、レプチン投与後であっても視床下部におけるSTAT3のリン酸化が抑制されていた。これは、レプチン投与後であっても視床下部におけるレプチンシグナルが抑制されている、すなわちレプチン抵抗性が誘発されていることを示す結果である。
図1および図2の結果から、高脂肪食を長期間に渡って与えることによってレプチン抵抗性を誘発可能であることが確認できた。さらに、マウスの体重増加と、視床下部におけるSTAT3のリン酸化の抑制とが相関していることが確認できた。これは、レプチン抵抗性の有無をマウスの体重増加によっても評価できることを示している。よって、本実施例では、高脂肪食を長期間に渡って与えることによってレプチン抵抗性を誘発し、フルルビプロフェン投与によってレプチン抵抗性が改善および/または予防されたことをマウスの体重の変化を指標として確認した。
(実験)
マウスを7〜8匹ずつ計4つのグループに分け、各グループのマウスには以下の食事を与えた。
グループ1:普通食(10kcal%fat、D12450B、Reserch DIET社製)のみ
グループ2:高脂肪食(60kcal%fat、D12492、Reserch DIET社製)のみ
グループ3:普通食+フルルビプロフェン(F8514、SIGMA社製)
グループ4:高脂肪食+フルルビプロフェン(F8514、SIGMA社製)
なお、フルルビプロフェンは、1日当たりおよそ10mg/kgの投与量になるように飲用水を用いて希釈して、飲用水として経口投与した。その後、7日ごとにマウスの体重を測定した。
(結果)
結果を図3に示す。図3は、フルルビプロフェン投与後8週間における各グループのマウスの体重の変化を示すグラフである。図3のグラフに示す値は、各グループにおけるマウスの体重を、それぞれのマウスの体重の平均値±標準偏差として示した(グループあたりn=7〜8)。また、t検定を用いて統計解析を行った。なお、グラフ中に示す「*」は、危険率5%未満において、グループ2の体重とグループ4の体重との間に有意差があることを表す。
図3に示すように、フルルビプロフェン投与後8週目において、グループ2の体重とグループ4の体重との間に有意な差異が認められた。これは、フルルビプロフェン投与によってグループ4の体重の増加が抑制されたことを示している。前出の「レプチン抵抗性の誘発方法および確認方法」の項において、図2の結果を引用して、高脂肪食をマウスに与えることによってレプチン抵抗性を誘発することができるということを示した。そして、レプチン抵抗性の有無をマウスの体重増加によっても評価できることを同項において示した。図3に示すように、グループ2は高脂肪食が与えられることによって普通食が与えられたグループ1に対して体重が増加していることから、当然のことながらレプチン抵抗性が誘発されたと認められる。一方、グループ4は、同様に高脂肪食が与えられているにも関わらず普通食が与えられたグループ1に対して体重が増加していないことから、高脂肪食が与えられることによって本来ならばレプチン抵抗性が誘発されるところ、フルルビプロフェン投与によって、そのレプチン抵抗性の誘発が予防されたものと推察される。
一方、普通食を与えたグループ1の体重とグループ3の体重との間には有意な差異が認められなかった。このことから、フルルビプロフェン投与によって毒性もしくは副作用が誘発された結果、体重減少が惹起されるわけではないことを確認できた。
〔実施例2〕
<レプチン抵抗性に対するフルルビプロフェンの効果2>
(レプチン抵抗性の誘発方法および確認方法)
4週齢の雄のマウス(C57BL/6 Cr Slc)に普通食(10kcal%fat、D12450B、Reserch DIET社製)または高脂肪食(60kcal%fat、D12492、Reserch DIET社製)を与えた。フルルビプロフェンは、1日当たりおよそ10mg/kgの投与量になるように飲用水を用いて希釈して、飲用水として経口投与した。
具体的には、マウスを7〜8匹ずつ計4つのグループに分け、各グループのマウスには以下の食事を与えた。
グループ1:普通食(10kcal%fat)のみ
グループ2:高脂肪食(60kcal%fat)のみ
グループ3:普通食+フルルビプロフェン
グループ4:高脂肪食+フルルビプロフェン
高脂肪食または普通食を与えて8週目のマウスに、マウス由来のレプチン(450−31、PeproTech社製または498−OB、rmLeptin、R&D社製)を生理食塩水に溶解して調製したものを、投与量が1mg/kgになるように、非経口的に尾静脈内投与した。レプチン投与のコントロールとしては、等量の生理食塩水を尾静脈内投与した。
レプチン投与30分後のマウスの視床下部におけるSTAT3のリン酸化を、リン酸化STAT3を認識する抗体(9131S、Cell Signaling製)を用いたウエスタンブロットによって調べた結果を図4および図5に示す。図4は、レプチン投与30分後の各グループのマウスの視床下部におけるSTAT3のリン酸化をウエスタンブロットによって調べた結果を表す図である。図5は、図4のウエスタンブロットの結果を数値化したグラフである。図5中の縦軸は各グループのマウスの視床下部におけるSTAT3のリン酸化の強度を表す。図5のグラフに示す値は、各グループのマウスの視床下部におけるSTAT3のリン酸化の強度を、それぞれのマウスの視床下部におけるSTAT3のリン酸化の強度±標準偏差として示した(グループあたりn=7〜8)。また、t検定を用いて統計解析を行った。なお、図5中に記載される「**」は、危険率1%未満において、高脂肪食を与えて8週目にレプチンを投与したグループ2のマウスの視床下部におけるSTAT3のリン酸化の強度と、高脂肪食+フルルビプロフェン投与後8週目にレプチンを投与したグループ4のマウスの視床下部におけるSTAT3のリン酸化の強度との間に有意差があることを表す。
図4に示すように、高脂肪食を与えて8週目のマウスでは、レプチン投与後であっても視床下部におけるSTAT3のリン酸化が抑制されていた。これは、レプチン投与後であっても視床下部におけるレプチンシグナルが抑制されている、すなわちレプチン抵抗性が誘発されていることを示す結果である。一方、高脂肪食+フルルビプロフェン投与後8週目のマウスでは、レプチン投与後に視床下部におけるSTAT3がリン酸化されていた。また、図5に示すように、高脂肪食+フルルビプロフェンが与えられたグループ4のマウスの視床下部におけるSTAT3のリン酸化の強度は、高脂肪食が与えられたグループ2のマウスの視床下部におけるSTAT3のリン酸化の強度と比較して有意に強い。これらの結果から、高脂肪食とフルルビプロフェンとを同時に投与することにより、高脂肪食を長期間に渡って与えることによるSTAT3のリン酸化の抑制、すなわちレプチン抵抗性の誘発、を抑制することができることが明らかになった。
〔実施例3〕
<血中レプチン濃度の上昇に対するフルルビプロフェンの効果>
(血中レプチン濃度を上昇させる方法および血中レプチン濃度の確認方法)
4週齢の雄のマウス(C57BL/6 Cr Slc)に普通食(10kcal%fat、D12450B、Reserch DIET社製)または高脂肪食(60kcal%fat、D12492、Reserch DIET社製)を与えた。フルルビプロフェン(F8514、SIGMA社製)は、1日当たりおよそ10mg/kgの投与量になるように飲用水を用いて希釈して、飲用水として経口投与した。
具体的には、マウスを7〜8匹ずつ計4つのグループに分け、各グループのマウスには以下の食事を与えた。
グループ1:普通食(10kcal%fat)のみ
グループ2:高脂肪食(60kcal%fat)のみ
グループ3:普通食+フルルビプロフェン
グループ4:高脂肪食+フルルビプロフェン
高脂肪食または普通食を与えて8週目のマウスから、絶食前または28〜29.5時間絶食後の血液をそれぞれ20〜25μL、尾部から採取した。採取した血液は、0.5M EDTAを1μL加えて遠心分離(3000rpm、15分)を行った。遠心分離によって得られた上清の血漿を用いて、ELISA法により血漿中のレプチン濃度を測定した。
結果を図6および図7に示す。図6は絶食前後における血漿中のレプチン濃度を測定した結果を表すグラフである。図6の(a)は絶食前の血漿中のレプチン濃度を表し、(b)は絶食後の血漿中のレプチン濃度を表している。図6の(a)のグラフに示す値は、各グループのマウスにおける絶食前の血漿中のレプチン濃度を、それぞれのマウスにおける絶食前の血漿中のレプチン濃度±標準偏差として示した(グループあたりn=7〜8)。これと同様に、図6の(b)のグラフに示す値は、各グループのマウスにおける絶食後の血漿中のレプチン濃度を、それぞれのマウスにおける絶食後の血漿中のレプチン濃度±標準偏差として示した(グループあたりn=7〜8)。また、t検定を用いて統計解析を行った。なお、図6中に記載される「***」は、危険率0.1%未満において、高脂肪食が8週間与えられたグループ2のマウスにおける絶食前の血漿中のレプチン濃度と、普通食が与えられたグループ1のマウスにおける絶食前の血漿中のレプチン濃度との間に有意差があることを表し、「**」は、危険率1%未満において、高脂肪食が8週間与えられたグループ2のマウスにおける絶食後の血漿中のレプチン濃度と、普通食が与えられたグループ1のマウスにおける絶食後の血漿中のレプチン濃度との間に有意差があることを表す。また、図6中に記載される「###」は、危険率0.1%未満において、高脂肪食+フルルビプロフェンを8週間投与したグループ4のマウスにおける絶食前の血漿中のレプチン濃度と、高脂肪食が与えられたグループ2のマウスにおける絶食前の血漿中のレプチン濃度との間に有意差があることを表し、「##」は、危険率1%未満において、高脂肪食+フルルビプロフェンを8週間投与したグループ4のマウスにおける絶食後の血漿中のレプチン濃度と、高脂肪食が与えられたグループ2のマウスにおける絶食後の血漿中のレプチン濃度との間に有意差があることを表す。
図7は血漿中のレプチン濃度と体重との相関を表すグラフである。図7の(a)は絶食前の血漿中のレプチン濃度と体重との相関を表し、(b)は絶食後の血漿中のレプチン濃度と体重との相関を表している。なお、図7中に記載される「R」は相関係数を表す。
図6に示すように、絶食前および絶食後において、高脂肪食が8週間与えられたグループ2のマウスでは、普通食が与えられたグループ1のマウスと比較して、血漿中のレプチン濃度が有意に高かった。これに対し、高脂肪食+フルルビプロフェンを8週間投与したグループ4のマウスでは、高脂肪食が与えられたグループ2のマウスと比較して、血漿中のレプチン濃度が有意に低かった。さらに図7に示すように、絶食前および絶食後において、マウスの体重と血漿中のレプチン濃度との間には相関が認められた。これらの結果から、高脂肪食とフルルビプロフェンとを同時に投与することにより、血漿中のレプチン濃度の上昇を抑制することができることが明らかになった。
レプチン抵抗性が誘発された個体ではレプチンが機能しないため、生体の恒常性の維持機構が働いて、より多くレプチンが分泌される。その結果、レプチン抵抗性が誘発された個体では、血中レプチン値は高くなる。高脂肪食+フルルビプロフェンを8週間投与したグループ4のマウスでは、レプチン抵抗性が予防されたことにより、レプチンは正常に機能しているため、より多くレプチンを分泌する必要がない。このため、高脂肪食+フルルビプロフェンを8週間投与したグループ4のマウスでは、血中レプチン値は正常値に維持されていると考えられた。
〔実施例4〕
<フルルビプロフェンによる血糖値減少効果>
レプチン抵抗性が糖尿病の発症に関与することが報告されている(例えば、Gwo-Hwa Lee et al, Abnormal splicing of the leptin receptor in diabetic mice, Nature 1996, 379(15):632-635; Hong Chen et al, Evidence That the Diabetes Gene Encodes the Leptin Receptor: Identification of a Mutation in the Leptin Receptor Gene in db/db Mice, Cell 1996, 84: 491-495等を参照)。具体的には、レプチン高親和性受容体(OB-R)に変異を有し、レプチンシグナル伝達に欠陥があるdb/dbマウスは、糖尿病を発症する。このため、グルコース負荷試験における血糖値の変化を1つの指標として、レプチン抵抗性が誘発されているか否かを確認することができると考えられる。
そこで、実施例4では、グルコース負荷試験における血糖値の変化を1つの指標としてレプチン抵抗性の誘発を評価しえるか検討した。同時に、グルコース負荷試験における血糖値の変化を1つの指標として、フルルビプロフェン投与によって、レプチン抵抗性の誘発を予防しえるかについて検討した。具体的には、4週齢の雄マウス(C57BL/6 Cr Slc)を14〜16匹ずつ計4つのグループに分け、実施例3と同様に、各グループのマウスに以下の食事を8週間与えた。
グループ1:普通食(10kcal%fat)のみ
グループ2:高脂肪食(High Fat Diet:HFD)(60kcal%fat)のみ
グループ3:普通食+フルルビプロフェン
グループ4:高脂肪食+フルルビプロフェン
なお、フルルビプロフェン(F8514、SIGMA社製)は、1日当たり10mg/kgの投与量になるように飲用水を用いて希釈して、飲用水として経口投与した。
高脂肪食または普通食を与えて8週間後に、各グループのマウスに対し、グルコース負荷試験を行った。
(グルコース負荷試験)
グルコース負荷試験は、耐糖能とインスリン分泌能を評価する最も基本的な方法である。実施例4では、グルコース負荷試験の前日の夜からマウスを17時間絶食させ、翌日午前10時から空腹時血糖値(pre)をFreestyle freedom(ニプロ株式会社 血糖自己測定システム)によって測定した。その後、2g/kgの投与量になるようにグルコースを腹腔内(i.p.)投与し、30分後、1時間後および2時間後の血糖値をFreestyle freedom(ニプロ株式会社 血糖自己測定システム)によって測定した。
結果を図8に示す。図8はグルコース負荷試験の結果を表すグラフである。図8のグラフに示す値は、各グループのマウスにおける血糖値(mg/dL)をそれぞれのマウスにおける血糖値±標準偏差として示した(グループあたりn=14〜16)。また、t検定を用いて統計解析を行った。なお、図8中の「*」は、高脂肪食が8週間与えられたグループ2のマウスにおける血糖値と、普通食が与えられたグループ1のマウスにおける血糖値との間に危険率5%未満において有意差があることを示し、「***」は、危険率0.1%未満において有意差があることを示している。
また、図8中の「#」は、高脂肪食+フルルビプロフェンを8週間投与したグループ4のマウスにおける血糖値と、高脂肪食が与えられたグループ2のマウスにおける血糖値との間に危険率5%未満において有意差があることを示し、「##」は、危険率1%未満において有意差があることを示し、「###」は、危険率0.1%未満において有意差があることを示している。
図8に示すように、高脂肪食が与えられたグループ2のマウスでは、普通食が与えられたグループ1のマウスと比較して、グルコース投与2時間後の血糖値が有意に高くなっていた。実施例1〜3で示したように、高脂肪食を8週間与えることによってレプチン抵抗性が誘発されることが明らかになっているので、図8の結果は、レプチン抵抗性の有無をグルコース負荷試験における血糖値の変化を確認することによっても評価できることを示している。
さらに、レプチン抵抗性が誘発されないコントロール群であるグループ1およびグループ3のマウスと同様、グループ4のマウスではグルコース投与1時間後には速やかに血糖値が減少していた。また、グルコース投与1時間後におけるグループ2の血糖値とグループ4の血糖値との間には有意な差異が認められた。このことから、フルルビプロフェン投与によってレプチン抵抗性の誘発が予防されたことを、グルコース負荷試験における血糖値の変化を指標として確認することができた。
一方、普通食を与えたグループ1の血糖値とグループ3の血糖値との間には有意な差異が認められなかった。このことから、フルルビプロフェンによって直接的に血糖値が低下させられているわけではないことを確認できた。
〔実施例5〕
<高脂肪食およびフルルビプロフェン投与によるマウス脂肪量への影響>
4週齢の雄マウス(C57BL/6 Cr Slc)を7〜8匹ずつ計4つのグループに分け、実施例4と同様に、各グループのマウスには以下の食事を8週間与えた。
グループ1:普通食(10kcal%fat)のみ
グループ2:高脂肪食(60kcal%fat)のみ
グループ3:普通食+フルルビプロフェン
グループ4:高脂肪食+フルルビプロフェン
なお、フルルビプロフェン(F8514、SIGMA社製)は、1日当たり10mg/kgの投与量になるように飲用水を用いて希釈して、飲用水として経口投与した。
高脂肪食または普通食を与えて8週間飼育したマウスを正中線に沿って切開し、脂肪組織の量(内蔵脂肪)を測定した。内蔵脂肪は、マウス腹部より摘出し、その重さ(wet weight)を測定した。
結果を図9に示す。図9はフルルビプロフェンを投与して8週目の各グループのマウスの脂肪量を示すグラフである。図9のグラフに示す値は、各グループのマウスにおける脂肪量(g)をそれぞれのマウスにおける脂肪量±標準偏差として示した(グループあたりn=7〜8)。また、t検定を用いて統計解析を行った。なお、図9中の「***」は、高脂肪食が8週間与えられたグループ2のマウスにおける脂肪量と、普通食が与えられたグループ1のマウスにおける脂肪量との間に危険率0.1%未満において有意差があることを示している。また、「#」は、高脂肪食+フルルビプロフェンを8週間投与したグループ4のマウスにおける脂肪量と、高脂肪食が与えられたグループ2のマウスにおける脂肪量との間に危険率5%未満において有意差があることを示している。
図9に示すように、普通食が与えられたグループ1のマウスに対して、高脂肪食が8週間与えられたグループ2のマウスでは、脂肪量の有意な増加が認められた。さらに、高脂肪食が8週間与えられたグループ2のマウスに対して、高脂肪食+フルルビプロフェンを8週間投与したグループ4のマウスでは、脂肪量の有意な減少が認められた。
〔実施例6〕
<マウス行動量に対する高脂肪食、フルルビプロフェンの影響>
マウスの行動量を測定するために、Open Field Testを行った。具体的には、4週齢の雄マウス(C57BL/6 Cr Slc)を15〜16匹ずつ計4つのグループに分け、実施例5と同様に、各グループのマウスには以下の食事を8週間与えた。
グループ1:普通食(10kcal%fat)のみ
グループ2:高脂肪食(60kcal%fat)のみ
グループ3:普通食+フルルビプロフェン
グループ4:高脂肪食+フルルビプロフェン
なお、フルルビプロフェン(F8514、SIGMA社製)は、1日当たり10mg/kgの投与量になるように飲用水を用いて希釈して、飲用水として経口投与した。
高脂肪食または普通食を与えて8週間飼育したマウスについて、Open Field Testを行った。
(Open Field Test)
Open Field Testは、マウスを正方形のフィールド(48×48cm)の中央に静置し、新規環境でのマウスの行動量を数値化して測定する方法である。具体的には、自発運動測定装置(SCANET MV-10MT,東洋産業株式会社製)を用いて、マウスの摂食行動が活発化する前の16:30〜17:30の間に、一匹あたり5分間の行動量を測定した。
結果を図10に示す。図10はフルルビプロフェンを投与して8週目の各グループのマウスの行動量を示すグラフである。図10のグラフに示す値は、各グループのマウスにおける行動量(自発運動:locomotor activity(counts/5分))をそれぞれのマウスにおける行動量±標準偏差として示した(グループあたりn=15〜16)。また、t検定を用いて統計解析を行った。
図10に示すように、高脂肪食が与えられたグループ2のマウスと、普通食が与えられたグループ1のマウスとの間には、行動量に有意な差は認められなかった。また、フルルビプロフェンが投与されていないグループ1またはグループ2のマウスと、フルルビプロフェンが投与されたグループ3または4のマウスとの間には、行動量に有意な差は認められなかった。
このことから、高脂肪食またはフルルビプロフェンの投与は、マウスの行動量に影響を与えないことを確認することができた。
〔実施例7〕
<フルルビプロフェンによるレプチン抵抗性の予防〜摂食量の検討〜>
レプチン抵抗性が誘発されると、血中レプチン濃度が上昇するにもかかわらず、レプチンによる摂食抑制作用やエネルギー消費亢進作用が低下する。このことから、レプチンによる摂食抑制作用の有無を指標として、レプチン抵抗性の有無を確認することができる。そこで、実施例7では、レプチンによる摂食抑制作用の有無を指標として、フルルビプロフェンによってレプチン抵抗性の誘発が予防されることをさらに確認した。
具体的には、4週齢の雄マウス(C57BL/6 Cr Slc)を6〜8匹ずつ計4つのグループに分け、実施例5と同様に、各グループのマウスには以下の食事を8週間与えた。
グループ1:普通食(10kcal%fat)のみ
グループ2:高脂肪食(60kcal%fat)のみ
グループ3:普通食+フルルビプロフェン
グループ4:高脂肪食+フルルビプロフェン
なお、フルルビプロフェン(F8514、SIGMA社製)は、1日当たり10mg/kgの投与量になるように飲用水を用いて希釈して、飲用水として経口投与した。
図11は、実施例7の実験の手順を示す図である。図11に示すように、高脂肪食または普通食を与えて8週間飼育したマウスを1匹/ケージとなるように隔離(isolation)した日を0日目(Day 0)とし、3日間馴化(habituation)させた。また、注射による摂食行動への影響を除去するために、3日目(Day 3)および4日目(Day 4)に、ダミーとして5mL/kgとなるように生理食塩水(saline)の腹腔内(i.p.)投与を行った。さらに、5日目(Day 5)に5mL/kgとなるように生理食塩水を腹腔内(i.p.)投与し、6日目(Day 6)において生理食塩水投与後24時間までの摂食量をコントロールとした。
次に、6日目(Day 6)に0.5mg/kgとなるようにレプチン(型番:498−OB、rmLeptin、R&D社製)を腹腔内(i.p.)投与し、7日目(Day 7)においてレプチン投与後24時間までの摂食量を測定した。5日目(Day 5)〜6日目(Day 6)の摂食量に対する6日目(Day 6)〜7日目(Day 7)の摂食量の割合を指標に、レプチンによる摂食量に与える影響(摂食量変化率)を検討した。摂食量変化率は、以下の式(1)で表される。
摂食量変化率(%)=(6日目〜7日目の摂食量/5日目〜6日目の摂食量)×100 … (1)
なお、レプチンおよび生理食塩水の投与は全て、1日2回、定刻(9:00および19:00)に行った。
結果を図12に示す。図12は、レプチン投与後の各グループのマウスの摂食量の変化を示すグラフである。図12のグラフに示す値は、各グループのマウスにおける摂食量変化率(%)をそれぞれのマウスにおける摂食量変化率±標準偏差として示した(グループあたりn=6〜8)。また、t検定を用いて統計解析を行った。なお、図12中の「*」は、高脂肪食が8週間与えられたグループ2のマウスにおける摂食量変化率と、普通食が与えられたグループ1のマウスにおける摂食量変化率との間に危険率5%未満において有意差があることを示している。
図12に示すように、高脂肪食が8週間与えられたグループ2のマウスでは、レプチンによる摂食抑制が起こらず、摂食量はむしろ増加した。これに対し、高脂肪食+フルルビプロフェンを8週間投与したグループ4では、フルルビプロフェンの投与によってレプチンによる摂食抑制が起こった。高脂肪食+フルルビプロフェンを8週間投与したグループ4のマウスにおける摂食量変化率と、普通食が与えられたグループ1のマウスにおける摂食量変化率との間には有意な差が認められなかった。このことはすなわち、高脂肪食+フルルビプロフェンを投与されたマウスは、普通食を投与されたマウスと比較して摂食量変化率に違いがないことを示しておいる。従って、高脂肪食+フルルビプロフェンを投与されたマウスでは、レプチン抵抗性が予防されたと考えられる。
以上よりこれらの結果は、グループ4のマウスでは、レプチンシグナルが正常に機能している、すなわち、グループ4のマウスでは、フルルビプロフェンによって、高脂肪食の摂取によるレプチン抵抗性が予防されていることを示すものである。
以上の結果から、フルルビプロフェンは、レプチン抵抗性の予防に有用であると結論付けられる。
〔実施例8〕
<フルルビプロフェンの体重減少効果(治療効果)>
実施例8では、レプチン抵抗性の改善においてもフルルビプロフェンが有用であることを、マウスの体重の変化を指標として確認した。具体的には、4週齢の雄マウス(C57BL/6 Cr Slc)を高脂肪食(High Fat Diet;HFD)を6ヶ月間与えてレプチン抵抗性を誘発した。その後、これらのマウスを2つのグループ(各14匹ずつ)に分け、各グループのマウスには以下の食事を3週間与えた。
コントロール群(Cont):普通食(10kcal%fat)のみ
フルルビプロフェン投与群(Ful):普通食+フルルビプロフェン
なお、フルルビプロフェン(F8514、SIGMA社製)は、1日当たり3mg/kgの投与量になるように飲用水を用いて希釈して、飲用水として経口投与した。
フルルビプロフェン投与開始日(0週)を基準とし、各グループのマウスの体重変化率を測定した。また、3週目の内蔵脂肪量(g)を測定した。内蔵脂肪は、マウス腹部より摘出し、その重さ(wet weight)を測定した。
結果を図13および図14に示す。図13は、コントロール群およびフルルビプロフェン投与群のマウスの体重変化率を示すグラフである。図13のグラフに示す値は、各グループのマウスにおける体重変化率(%)をそれぞれのマウスにおける体重変化率±標準偏差として示した(グループあたりn=14)。また、t検定を用いて統計解析を行った。なお、図13中の「*」は、コントロール群のマウスにおける体重変化率と、フルルビプロフェン投与群のマウスにおける体重変化率との間に危険率5%未満において有意差があることを示している。
また、図14は、コントロール群およびフルルビプロフェン投与群のマウスにおける普通食3週間後の内蔵脂肪量(g)を示すグラフである。図14のグラフに示す値は、各グループのマウスにおける内蔵脂肪量(g)をそれぞれのマウスにおける内蔵脂肪量±標準偏差として示した(グループあたりn=14)。また、t検定を用いて統計解析を行った。なお、図14中の「**」は、コントロール群のマウスにおける内蔵脂肪量と、フルルビプロフェン投与群のマウスにおける内蔵脂肪量との間に危険率1%未満において有意差があることを示している。
図13に示すように、フルルビプロフェン投与前の平均体重は、コントロール群が53.879±0.6299g、フルルビプロフェン投与群が53.479±0.7804gであった。これに対し、フルルビプロフェン投与3週間後の平均体重は、コントロール群が48.371±0.6387g、フルルビプロフェン投与群が45.543±1.1103gとなり、有意な体重減少効果があることが観察された(P<0.05)。この結果は、臨床レベルの投与量(1日当たり3mg/kg)のフルルビプロフェンを投与することによってレプチン抵抗性を改善し得ることを示している。また、フルルビプロフェン投与1週間後にはフルルビプロフェンによるレプチン抵抗性改善効果が現れることを確認することができた。
さらに、図14に示すように、フルルビプロフェン投与3週間後のフルルビプロフェン投与群のマウスの内臓脂肪量は、コントロール群のマウスの内臓脂肪量に対して有意に減少していることが確認された(P<0.01)。
〔実施例9〕
<フルルビプロフェン投与による血中レプチン濃度の減少>
実施例8と同様に、4週齢の雄マウス(C57BL/6 Cr Slc)を高脂肪食(High Fat Diet;HFD)を6ヶ月間与えてレプチン抵抗性を誘発した。その後、これらのマウスを2つのグループ(各8匹ずつ)に分け、各グループのマウスには以下の食事を3週間与えた。
コントロール群(Cont):普通食(10kcal%fat)のみ
フルルビプロフェン投与群(Ful):普通食+フルルビプロフェン
なお、フルルビプロフェン(F8514、SIGMA社製)は、1日当たり3mg/kgの投与量になるように飲用水を用いて希釈して、飲用水として経口投与した。
フルルビプロフェン投与3週間後の血中レプチン濃度を測定した結果を図15に示す。図15は、コントロール群およびフルルビプロフェン投与群のマウスにおける普通食投与3週間後の血中レプチン濃度(ng/ml)を示すグラフである。図15のグラフに示す値は、各グループのマウスにおける血中レプチン濃度(ng/ml)をそれぞれのマウスにおける血中レプチン濃度±標準偏差として示した(グループあたりn=8)。また、t検定を用いて統計解析を行った。なお、図15中の「*」は、コントロール群のマウスにおける血中レプチン濃度と、フルルビプロフェン投与群のマウスにおける血中レプチン濃度との間に危険率5%未満において有意差があることを示している。
図15に示すように、コントロール群のマウスの血中レプチン濃度は、106.51±3.7122(ng/ml)であった。これに対して、フルルビプロフェン投与群のマウスの血中レプチン濃度は、87.105±5.4415(ng/ml)であり、フルルビプロフェン投与によって血中レプチン濃度が有意に減少することが確認された(P<0.05)。
レプチン抵抗性が誘発された個体ではレプチンが機能しないため、生体の恒常性の維持機構が働いて、より多くレプチンが分泌される。その結果、レプチン抵抗性が誘発された個体では、血中レプチン濃度は高くなる。フルルビプロフェンを3週間投与したフルルビプロフェン投与群(Ful)のマウスでは、レプチン抵抗性が改善されたことにより、レプチンの機能が改善されたため、より多くレプチンを分泌する必要がない。このため、フルルビプロフェン投与群(Ful)のマウスでは、コントロール群(Cont)と比較して血中レプチン濃度が有意に減少したと考えられた。これらの結果は、フルルビプロフェンによるレプチン抵抗性の改善を、血中レプチン濃度の減少を確認することによっても評価することができることを示している。
〔実施例10〕
<フルルビプロプェン投与による体長の変化>
実施例8と同様に、4週齢の雄マウス(C57BL/6 Cr Slc)を高脂肪食(High Fat Diet;HFD)を6ヶ月間与えてレプチン抵抗性を誘発した。その後、これらのマウスを2つのグループ(各8匹ずつ)に分け、各グループのマウスには以下の食事を3週間与えた。
コントロール群(Cont):普通食(10kcal%fat)のみ
フルルビプロフェン投与群(Ful):普通食+フルルビプロフェン
なお、フルルビプロフェン(F8514、SIGMA社製)は、1日当たり3mg/kgの投与量になるように飲用水を用いて希釈して、飲用水として経口投与した。
フルルビプロフェン投与3週間後のマウスの体長を測定した結果を図16に示す。図16は、コントロール群およびフルルビプロフェン投与群のマウスにおける普通食投与3週間後の体長(cm)を示すグラフである。図16のグラフに示す値は、各グループのマウスにおける体長(cm)をそれぞれのマウスにおける体長±標準偏差として示した(グループあたりn=8)。また、t検定を用いて統計解析を行った。
図16に示すように、コントロール群のマウスの体長と、フルルビプロフェン投与群のマウスの体長との間に有意な差は認められなかった。このことから、実施例8では、フルルビプロフェン投与によって毒性もしくは副作用が誘発され成長が阻害された結果、体重減少が惹起されたわけではないことを確認できた。
〔実施例11〕
<フルルビプロフェンによる血糖値改善効果>
実施例8と同様に、4週齢の雄マウス(C57BL/6 Cr Slc)を高脂肪食(High Fat Diet;HFD)を6ヶ月間与えてレプチン抵抗性を誘発した。その後、これらのマウスを2つのグループ(各8匹ずつ)に分け、各グループのマウスには以下の食事を3週間与えた。
コントロール群:普通食(10kcal%fat)のみ
フルルビプロフェン投与群:普通食+フルルビプロフェン
なお、フルルビプロフェン(F8514、SIGMA社製)は、1日当たり3mg/kgの投与量になるように飲用水を用いて希釈して、飲用水として経口投与した。
フルルビプロフェン投与3週間後のマウスについて、グルコース負荷試験を行った。
(グルコース負荷試験)
実施例11では、グルコース負荷試験の前日の夜(17時から18時)からマウスを17時間絶食させ、翌日午前(10時から11時)から空腹時血糖値(pre)をFreestyle freedom(ニプロ株式会社 血糖自己測定システム)によって測定した。その後、2g/kgの投与量になるようにグルコースを腹腔内(i.p.)投与し、30分後、1時間後、2時間後、3時間後および4時間後の血糖値をFreestyle freedom(ニプロ株式会社 血糖自己測定システム)によって測定した。
血糖値を測定した結果を図17に示す。図17は、グルコース負荷試験の結果を表すグラフである。図17では、グルコース投与後の各時間における血糖値を、空腹時血糖値を100%としたときの割合(%)として表した。図17のグラフに示す値は、各グループのマウスにおける血糖値(%)をそれぞれのマウスにおける血糖値(%)±標準偏差として示した(グループあたりn=8)。また、t検定を用いて統計解析を行った。
図17に示すように、フルルビプロフェン投与群のマウスの血糖値は、グルコース投与2時間〜4時間後に低下することが確認できた。特にグルコース投与3時間後では、フルルビプロフェン投与群のマウスでは、コントロール群のマウスと比較して、血糖値が抑制されることが確認できた(t検定でP<0.07)。
これらの結果は、フルルビプロフェンによるレプチン抵抗性の改善を、グルコース負荷試験における血糖値の変化を確認することによっても評価できることを示している。
以上の結果から、フルルビプロフェンは、レプチン抵抗性の改善においても有用であると結論付けられる。
〔実施例12〕
<マウスの飲水量に対する高脂肪食、フルルビプロフェンの影響>
マウスの飲水量を測定するために、4週齢の雄マウス(C57BL/6 Cr Slc)を7〜8匹ずつ計4つのグループに分け、マウスを1ケージ1匹となるように隔離(isolation)し、2日間馴化させた。馴化2日目の午前から24時間おきに4日間飲水量を測定し、4日間の合計量を集計した。
グループ1:普通食(10kcal%fat)のみ
グループ2:高脂肪食(60kcal%fat)のみ
グループ3:普通食+フルルビプロフェン
グループ4:高脂肪食+フルルビプロフェン
なお、フルルビプロフェン(F8514、SIGMA社製)は、1日当たり10mg/kgの投与量になるように飲用水を用いて希釈して、飲用水として経口投与した。
飲水量を測定した結果を図18に示す。図18は、飲水量の測定結果を表すグラフである。図18のグラフに示す値は、各グループのマウスにおける4日間の飲水量の累計(g)をそれぞれのマウスにおける4日間の飲水量の累計(g)±標準偏差として示した(グループあたりn=7〜8)。また、t検定を用いて統計解析を行った。
その結果、図18に示すように、4日間の飲水量の累計は、フルルビプロフェン投与の有無に関わらず一定であることが確認された。
本発明にかかる薬学的組成物を用いれば、レプチン抵抗性を改善および/または予防することができる。さらに、本発明にかかる薬学的組成物を用いれば、レプチン抵抗性に付随した関連疾患、例えば、糖尿病、高血圧、高脂血症、動脈硬化等の疾病を改善および/または予防に有効であると考えられる。したがって、本発明にかかる発明は、医薬品産業において利用可能である。

Claims (2)

  1. フルルビプロフェンを含有することを特徴とする、生体におけるレプチン抵抗性を改善および予防することによって高脂血症を改善および予防するための薬学的組成物。
  2. 生体におけるレプチン抵抗性を改善および予防することによって高脂血症を改善および予防するための薬学的組成物を製造するための、フルルビプロフェンの使用。
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