JP5360933B2 - ニトロソニフェジピン誘導体を有効成分とする糖尿病性腎症治療剤 - Google Patents

ニトロソニフェジピン誘導体を有効成分とする糖尿病性腎症治療剤 Download PDF

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本発明は、ニトロソニフェジピン誘導体を有効成分とする新規な糖尿病性腎症治療剤に関する。更に詳しくは、本発明の糖尿病性腎症治療剤は、尿中アルブミンおよび尿中タンパクの排泄量増加を抑制し、メサンギュウム領域の拡大を抑制できる。更に尿中の8-ヒドロキシデオキシグアノシン(8−OHdG)の増加を抑制して、糖尿病性腎症の進行抑制に有用な治療剤である。
我が国における糖尿病患者数は生活習慣の欧米化に伴い年々増加し、糖尿病予備軍を含めた患者数は約2000万人に達しているとされている。糖尿病患者において、特に問題となるのが糖尿病合併症によるQOLの低下である。糖尿病性腎症は我が国における透析導入原疾患の第1位であり透析導入率の約45%を占めている。
ニフェジピン(NIF)は世界中で広く高血圧治療薬として使用されているカルシウム拮抗薬である。ニフェジピンは生体内でそのニトロ基がニトロソ基に変換されて、Caチャネル拮抗作用をほとんど示さないニトロソニフェジピン(NO−NIF)となることが知られている(非特許文献1)。また、光照射下においても同様にニトロソニフェジピン(NO−NIF)に変化することが知られている。この代謝物のニトロソニフェジピンの薬理作用については、細胞膜保護作用があることが報告されている(特許文献1)。また、そのメカニズムは、NO−NIFの持つラジカルの強い消去能であり、その結果、酸化ストレスの抑制効果を示すことが明らかにされている(非特許文献2〜4)。
一方、酸化ストレスの亢進が糖尿病合併症の成因であるとされており、酸化ストレス亢進が糖尿病性腎症の発症に関与していることが報告されている(非特許文献5)。ビタミンEなどの抗酸化剤の効果が検討されているが、充分な効果は出ていない。また、特許文献2で示される抗酸化剤であるNO-NIFに関しても、糖尿病性腎症に対する治療効果は、これまで全く報告がされていない。
特開2007−91664号公報 特開2009−73759号公報
マグネティック・レゾナンス・イン・メディシン(Magn.Reson.Med.)42:691−694,1999 ジャーナル・ファルマコロジカル・サイエンス(J. Pharmacol.Sci.)109,14−19(2009) ジャーナル・メデイカル・インベスディゲイション(J.Med.Invest.)58:118−126,2011 ケミカル・ファーマシュウテイカル・ブレタン(Chem.Pharm.Bull.)59(2)208−214(2011) 福岡医誌、99(3):45−55(2008)
本発明は、新規な糖尿病性腎症の治療剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、ニトロソニフェジピン誘導体を用いた酸化ストレス軽減作用の研究を進める中で、今回、糖尿病の合併症の一つである糖尿病性腎症に着目した。本発明者らは、糖尿病性腎症に対するニトロソニフェジピン誘導体の効果を評価するため、糖尿病性腎症のモデル動物としてKKAyマウス(12週令)を使用し、その効果を評価した。その結果、以下に示すニトロソニフェジピン誘導体の効果が見出された。
a)図1と2に示すように、尿中アルブミンおよび尿中タンパク質の排出量増加を抑制する。
b)図3に示すように、腎糸球体直径の伸長および糸球体係蹄面積の拡大を抑制する。
c)図10に示すように、尿中の8-ヒドロキシデオキシグアノシン(8−OHdG)の増加を抑制する。
d)図11に示すように、腎臓における活性酸素種(ROS)の産生を抑制する。
e)図12に示すように、腎臓におけるTNF−αのmRNA発現上昇を抑制する。
f)図5〜6に示すように、耐糖能、インスリン抵抗性、血圧に関して影響を与えない。
g)図7〜9に示すように、脂肪細胞の肥大と白色脂肪細胞の組織重量の増加に対して影響を与えない。
以上のことから、本発明のニトロソニフェジピン誘導体には、糖尿病性腎症の進展を抑制する効果が存在し、しかも、血糖降下作用や降圧作用のないことが見出された。これらのことから、本発明者らは、ニトロソニフェジピン誘導体が、副作用のない(血糖値、血圧、肥満に影響を与えない)良好な糖尿病性腎症の治療剤・予防剤になることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1)一般式(1):
[式中、Rは低級アルキル基、Rは置換または非置換低級アルキル基、X’は2−、3−または4−位におけるニトロソ基を表わす。]で示されるニトロソニフェジピン誘導体を有効成分とする糖尿病性腎症治療剤。
(2)一般式(1)におけるR、Rがそれぞれメチル基である、上記(1)に記載の糖尿病性腎症治療剤。
(3)ニトロソニフェジピン誘導体がニトロソニフェジピンである、上記(1)に記載の糖尿病性腎症治療剤。
(4)一般式(1):
[式中、Rは低級アルキル基、Rは置換または非置換低級アルキル基、X’は2−、3−または4−位におけるニトロソ基を表わす。]で示されるニトロソニフェジピン誘導体を有効成分とする、尿中タンパク質と尿中アルブミンの排出量増加抑制剤。
(5)一般式(1)におけるR、Rがそれぞれメチル基である、上記(4)に記載の抑制剤。
(6)ニトロソニフェジピン誘導体がニトロソニフェジピンである、上記(4)に記載の抑制剤。
本発明のニトロソニフェジピン誘導体(1)は、糖尿病性腎症の進展を抑制する効果を有しており、そして、腎臓の糸球体を保護して、尿中タンパク質と尿中アルブミンの排出量増加を抑制できている。このように、本発明のニトロソニフェジピン誘導体は、効果の点で、これまでにない糖尿病性腎症の治療剤となっている。更に、本発明のニトロソニフェジピン誘導体は、ニフェジピンに由来する作用を有しておらず、その結果、本発明のニトロソニフェジピン誘導体は、体重、血圧、血糖値、インスリン抵抗性に影響を与えず、更に腎重量、白色脂肪組織重量と脂肪細胞の大きさに影響を与えることはなかった。このように本発明のニトロソニフェジピン誘導体は、安全性が高く、しかも糖尿病性腎症の進行を抑制できるものであるため、糖尿病性腎症の治療剤として非常に有用なものとなっている。
糖尿病性腎症モデルマウス(12週令KKAyマウス)にニトロソニフェジピンを投与し、腎障害に対する効果を尿中のタンパク質の漏出量で評価した図である。評価結果を4種の棒グラフで示す。4種の棒グラフは、それぞれ左から右へ、C57BL/6マウス(コントロール)、C57BL/6マウス(ニトロソニフェジピン投与群)、KKAyマウス(コントロール)、KKAyマウス(ニトロソニフェジピン投与群)における尿中のタンパク質の全量を表している。 糖尿病性腎症モデルマウス(12週令KKAyマウス)にニトロソニフェジピンを投与し、腎障害に対する効果を尿中のアルブミンの漏出量で評価した図である。評価結果を4種の棒グラフで示す。4種の棒グラフは、それぞれ左から右へ、C57BL/6マウス(コントロール)、C57BL/6マウス(ニトロソニフェジピン投与群)、KKAyマウス(コントロール)、KKAyマウス(ニトロソニフェジピン投与群)における尿中のアルブミンの全量を表している。 糖尿病性腎症モデルマウス(12週令KKAyマウス)と通常のC57BL/6マウスの各腎臓糸球体の組織切片の拡大写真を示した図である。ニトロソニフェジピン(NO−NIF)の投与により、腎糸球体直径の伸長および糸球体係蹄面積の拡大が抑制されることをPAS染色で評価した。NO−NIFの投与(+)と無投与(―)の場合の腎臓糸球体組織をPAS染色して比較すると、NO−NIFの投与により、糖尿病性腎症モデルマウスの腎糸球体直径の伸長および糸球体係蹄面積の拡大が抑制されることが示された。 糖尿病性腎症モデルマウスにおいて、NO−NIFの投与により、腎糸球体直径の伸長および糸球体係蹄面積の拡大が抑制されたことを定量的に表わした図である。4種の棒グラフは、それぞれ左から右へ、C57BL/6マウス(コントロール)、C57BL/6マウス(ニトロソニフェジピン投与群)、KKAyマウス(コントロール)、KKAyマウス(ニトロソニフェジピン投与群)における腎糸球体直径の伸長(左図)および糸球体係蹄面積の拡大(右図)を表わしている。糖尿病性腎症モデルマウスは、通常のC57BL/6マウスと比較して腎糸球体直径の伸長および糸球体係蹄面積の拡大が観察され、NO−NIFの投与により、それらは抑制された。
糖尿病性腎症モデルマウスと通常のC57BL/6マウスの体重と血圧に対するNO−NIFの投与の影響を表わした図である。上記図4と同じ4つの投与群に分け、NO−NIF投与の有無による、体重の変化(左図)と血圧の変化(右図)を評価した。NO−NIFは、体重と血圧に対して何ら影響を示さなかった。なお、血圧はtail cuff法にて測定した。 糖尿病性腎症モデルマウスと通常のC57BL/6マウスにおいて、糖負荷試験後の血糖値とインスリン抵抗性に対するNO−NIF投与の影響を表わした図である。上記図4と同じ4つの投与群に分け、NO−NIF投与の有無による、糖負荷試験後の血糖値の変化(左図)とインスリン抵抗性の変化(右図)を評価した。NO−NIFは、血糖値とインスリン抵抗性に対して何ら影響を示さなかった。 糖尿病性腎症モデルマウスと通常のC57BL/6マウスにおいて、腎重量と白色脂肪組織(WAT)重量に対するNO−NIF投与の影響を表わした図である。上記図4と同じ4つの投与群に分け、NO−NIF投与の有(+)無(−)による影響を上記図4の記載方法に準じて棒グラフで表わしている。腎重量の変化(左図)とWAT重量の変化(右図)を評価したが、NO−NIFは、腎重量とWAT重量に対して何ら影響を示さなかった。 糖尿病性腎症モデルマウスと通常のC57BL/6マウスにおいて、NO−NIF投与の有(+)無(−)による影響を比較した脂肪細胞組織の組織切片の拡大写真である。上記図4と同じ4つの投与群に分け、採取した脂肪細胞組織の切片をHE染色法で染色した。この組織切片の拡大写真を比較評価すれば、NO−NIFは、脂肪細胞の大きさに影響を与えないことが示された。 上記図8の拡大写真から、各脂肪細胞の大きさ(面積)を測定して、4つの群におけるNO−NIF投与の影響を比較した図である。いずれのモデルマウスにおいても、NO−NIFは脂肪細胞の肥大に関して影響を与えないことが示された。 糖尿病性腎症モデルマウスと通常のC57BL/6マウスにおいて、全身性酸化ストレスマーカーの尿中8−OHdG排出量に対するNO−NIF投与の影響を表わした図である。上記図4と同じ4つの投与群に分け、NO−NIF投与の有無による影響を上記図4の記載方法に準じて棒グラフで表わしている。糖尿病性腎症モデルマウスの尿中8−OHdG排出量の増加は、NO−NIFの投与により抑制されることが示された。 糖尿病性腎症モデルマウスと通常のC57BL/6マウスにおいて、腎臓における活性酸素種(ROS)に対するNO−NIF投与の影響を表わした腎臓組織切片の拡大写真である。上記図4と同じ4つの投与群に分け、採取した腎臓組織の切片をジヒドロキシエチジウム(dihydroethidium)染色法で染色した。この組織切片の拡大写真を比較評価すると、NO−NIFの投与により糖尿病性腎症モデルマウスのROSの産生増加が抑制されることが示された。 糖尿病性腎症モデルマウスと通常のC57BL/6マウスにおいて、腎臓におけるTNF−αに対するNO−NIF投与の影響を表わした図である。上記図4と同じ4つの投与群に分け、採取した腎臓組織におけるTNF−αのmRNA発現量をReal−Time PCR法により測定した。この測定結果を上記図4の記載方法に準じて棒グラフで表わした。これにより、糖尿病性腎症モデルマウスにおいて、NO−NIFは腎臓におけるTNF−αmRNA発現の増加を抑制することが示された。
−本発明の第一の態様−
本発明の第一の態様は、ニトロソニフェジピン誘導体を有効成分とする糖尿病性腎症の治療剤に関するものである。
本発明の「ニトロソニフェジピン誘導体」とは、一般式(1):
[式中、Rは低級アルキル基、Rは置換または非置換低級アルキル基、X’は2−、3−または4−位におけるニトロソ基を意味する。]
で示されるピリジン化合物を表わすものである。
上記一般式(1)において、R基の低級アルキル基としては炭素数1〜4個の直鎖または分枝鎖アルキル基が挙げられ、好ましくはメチル基またはイソプロピル基である。
基の置換または非置換低級アルキル基における低級アルキル基としては炭素数1〜4個の直鎖または分枝鎖アルキル基が挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基、イソプロピル基またはイソブチル基である。またその置換基としては、炭素数1〜3個の直鎖アルコキシ基(例えばメトキシ基)、フリル基、または低級アルキル基および/またはフェニル低級アルキル基によりモノまたはジ置換されたアミノ基(例えば、N−メチル−N−フェニルメチルアミノ)等が挙げられる。
一般式(1)のピリジン化合物の好ましい具体例は、ニトロソ−ニフェジピン(一般式(1)中、R:−CH、R:−CH、X’:2−NO・)、ニトロソ−ニソルジピン(一般式(1)中、R:−CH、R:−CH(CH、X’:2−NO・)ニトロソ−ニモジピン(一般式(1)中、R:−CH(CH、R:−(CHOCH、X’:3−NO・)、ニトロソ−ニカルジピン(一般式(1)中、R:−CH、R:−(CH)N(CH)(CH)、X’:3−NO・およびニトロソ−ニトレンジピン(一般式(1)中、R:−CH、R:−CHCH、X’:3−NO・)である。
本発明のニトロソニフェジピン誘導体(1)は、対応するニトロ置換フェニル−1,4−ジヒドロピリジン化合物を紫外線照射処理することにより容易に製造される〔ヤネッツら、バイオオルガニック・メディシナル・ケミストリィ(Yanez C.,et al. Bioorg.Med.Chem.)2004,12(9):2459−68を参照〕。
本発明のニトロソニフェジピン誘導体の内、より好ましいものとしては、RとRがそれぞれメチル基のものであり、更に好ましくは、X’が2位のニトロソ基である、ニトロソニフェジピン(NO−NIF)を挙げることができる。
本発明の「糖尿病性腎症治療剤」とは、糖尿病性腎症の進行を抑制し、腎症の悪化を抑制して、腎不全になることを阻止するための治療剤のことを言う。糖尿病性腎症とは、糖尿病が進行して起こる糖尿病の合併症の一つであり、腎臓の糸球体が細小血管障害のため硬化して数を減じて行く病気であり、最終的には腎不全となり、人工透析に至る主要原因となっている。本発明の糖尿病性腎症の治療剤は、図1〜4に示されるように病態の進行を抑制し、軽減することによって腎不全やそれに伴う人工透析への移行を阻止するための治療剤として有効であり、しかも、図5〜9に示される副作用の少ない治療剤である。
本発明の糖尿病性腎症治療剤は、1,4−ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬と同様に経口製剤、非経口製剤(注射剤、経皮製剤等)として用いることができ、それら製剤は、その有効成分のニトロソニフェジピン誘導体(1)を通常の医薬製剤と同様に処方することにより製造される。
そのような製剤の具体例としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤などの経口剤、静注、筋注などの注射剤、点滴静注剤等が挙げられ、それら製剤は通常用いられる医薬用担体を用いて調製される。
上記医薬用担体としては、医薬分野において常用され、かつ本発明のニトロソニフェジピン誘導体(1)と反応しない物質が用いられる。錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤の製造に用いられる医薬用担体の具体例としては、乳糖、トウモロコシデンプン、白糖、マンニトール、硫酸カルシウム、結晶セルロースのような賦形剤、カルメロースナトリウム、変性デンプン、カルメロースカルシウムのような崩壊剤、メチルセルロース、ゼラチン、アラビアゴム、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドンのような結合剤、軽質無水ケイ酸、ステアリン酸マグネシウム、タルク、硬化油のような滑沢剤が挙げられる。錠剤は、通常のコーティング剤を用い、周知の方法でコーティングしてもよい。
シロップ剤製造に用いられる担体の具体例としては、白糖、ブドウ糖、果糖のような甘味剤、アラビアゴム、トラガント、カルメロースナトリウム、メチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、結晶セルロース、ビーガムのような懸濁化剤、ソルビタン脂肪酸エステル、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート80のような分散剤が挙げられる。
注射剤は、通常、ニトロソニフェジピン誘導体(1)を注射用蒸留水に溶解して調製するが、必要に応じて溶解補助剤、緩衝剤、pH調整剤、等張化剤、無痛化剤、保存剤等を添加することができる。更に、該化合物を注射用蒸留水又は植物油に懸濁した懸濁性注射剤の形であってもよく、必要に応じて基剤、懸濁化剤、粘調剤等を添加することができる。
本発明の有効成分のニトロソニフェジピン誘導体の投与量は投与方法、患者の症状・年齢等によっても異なるが、対応する1,4−ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬と同程度の用量でよく、また血圧や心機能に対する作用がないことからより高用量で投与することもでき、通常大人で1日当たり数mg〜百数十mg、好ましくは20mgから60mg程度で1日1回または数回に分けて投与することができる。
−本発明の第二の態様−
本発明の第二の態様は、ニトロソニフェジピン誘導体を有効成分とする尿中タンパク質と尿中アルブミンの排出量の増加抑制剤に関するものである。
本発明の「尿中タンパク質と尿中アルブミンの排出量の増加抑制剤」とは、尿中タンパク質と尿中アルブミンの排出量の増加を共に抑制する薬剤と言うことである。即ち、腎臓障害に基づき腎臓の糸球体が損傷を受けると、血中のタンパク質とアルブミンが尿中に排出されることになる。糸球体の損傷の程度が大きければ、尿中に排出されるタンパク質とアルブミンの量が増大する。本発明のニトロソニフェジピン誘導体は、腎臓障害の進行を抑制し、あるいは腎臓障害を治癒して、糸球体の損傷拡大を抑制または阻止する薬物である。その結果、図1と2に示されるように尿中タンパク質と尿中アルブミンの排出量の増加が抑制されることになる。
本発明のニトロソニフェジピン誘導体の作用機序としては、図11に示されるように腎臓における活性酸素種(ROS)の産生を抑制し、酸化ストレスを抑制できるためと考えられる。その結果、腎臓組織におけるTNF−αの産生が図12に示すように抑制されている。このことは、酸化ストレスのマーカーである尿中8−OHdGの排出量が顕著に抑制されていることからも明らかとなっている。
なお、第2態様において、前述の第一態様と共通する用語は、それぞれ同じ意味を表す。また、製剤および投与法等についても、第一態様に準じて適用されるものである。
以下、実施例および試験例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれによってなんら限定されるものではない。
(実施例1)ニトロソニフェジピン(NO−NIF)の合成
ニフェジピン(和光純薬製)をメタノールに溶解し、25mMニフェジピンメタノール溶液(500mL)を調製する。この溶液にハロゲン光(Kodak Ektagraphic III E Plus projector)を7時間照射する。それによって黄色のニフェジピン溶液は徐々に緑色に変色する。光照射後、メタノールをエバポレーターで減圧下除去し、析出する結晶を冷メタノールで洗浄する。得られる結晶をメタノールで再結晶して、2−ニトロソ−ニフェジピン(NO−NIF)を得る。その生成物をNMRスペクトル、元素分析により同定する。HPLCにより測定した純度は>99.9%であった。
(実施例2)糖尿病性腎症のモデルマウスに対するNO−NIFの作用
(1)実験材料:
C57BL/6マウス(雄性)、KKAyマウス(雄性)を日本CLEAから購入した。
使用する抗体は市販のものを使用。
(2)試験方法:
a)投与方法:
糖尿病性腎症のモデルマウスとして12週令の雄性KKAyマウスを用いた。また、比較対象として12週令の雄性C57BL/6マウスを使用した。
上記マウスをそれぞれ2群に分け、その一方にNO−NIFの投与を行なった。まず、NO−NIFを1%CMC−生理食塩液に懸濁し、30mg/kg/dayの投与量で4週間連日腹腔内投与を行った。同時に、NO−NIFを含有しない溶液をコントロール群に同様に投与した。
b)効果の測定:
1)尿中蛋白の排出量の測定:
尿中タンパク排泄量は公知のBradford法を用いて測定した。
2)尿中アルブミン量の測定:
尿中アルブミン排泄量は公知のELISA法を用いて測定した。
3)メサンギウム領域の拡大測定:
メサンギウム領域の拡大は腎糸球体をPAS染色することによって評価した。
4)尿中8−OHdGの測定:
尿中の8−OHdG排泄量は、上記マウスから排出された24時間分の尿サンプルを使用し、ELIZA法(酵素結合の免疫吸着アッセイ・キット)により、手順書(伏見製薬)に従い測定した。
5)腎臓での活性酸素種(ROS)の測定:
活性酸素種の測定は、DHE染色法を用いて実施した(Mol Endcrinol24:1338−1348,2010)。採取された腎臓組織をOCT化合物中で凍結させ、切断して、ガラス・スライドに設置する。切片を暗室内でPBS(10mmol/l)中、ジヒドロエチジュウムで処理し、保湿容器中で室温下30分静置する。切片にカバーグラスを掛けて、腎臓組織を蛍光顕微鏡を用いて観察、評価した。
6)腎臓でのTNF−αのmRNAの測定:
遺伝子発現はReal−Time PCRにより確認した。まず、腎臓組織から、RNAを採取し、先行文献(Mol Endcrinol24:1338−1348,2010)に基いてcDNAが合成された。定量的リアルタイムPCRを行い、プライマーとしてロシュ社のTNF−αプライマーセットを使用した。
7)耐糖能、インスリン抵抗性の測定:
随時血糖値およびグルコース負荷試験における血糖値は、自己検査用グルコース測定器を用いて測定した。
8)血圧の測定:
マウスの尾静脈の血圧をテイル・カッフ(Tail cuff)法により測定した。
9)脂肪細胞の肥大の測定:
脂肪細胞の肥大はHE染色にて測定・評価した。
(3)測定結果:
1)尿中蛋白と尿中アルブミン量について:
図1と図2に示されるように糖尿病性腎症のモデルマウス(KKAyマウス)では、コントロール群では尿中タンパク排泄量および尿中アルブミン排泄量が増加する。しかし、NO-NIF投与群ではKKAyマウスにおける尿中タンパク排泄量および尿中アルブミン排泄量は増加しなかった。
2)腎糸球体直径の伸長および糸球体係蹄面積の拡大について:
図3と図4に示されるようにKKAyマウスでは、コントロール群では腎糸球体直径の伸長および糸球体係蹄面積の拡大が観察されるが、NO−NIF投与群では抑制されていた。
3)尿中8−OHdGについて:
図10に示されるように尿中の8−OHdG排泄量は、NO−NIF投与群では抑制され、増加することはなかった。
4)腎臓での活性酸素種(ROS)とTNF−αのmRNAについて:
図11と図12に示されるように腎臓におけるROS産生とTNF−αのmRNA発現は、NO−NIF投与群では抑制され、増加することはなかった。
5)耐糖能、インスリン抵抗性について:
図6に示されるようにKKAyマウスにおいて、コントロール群とNO−NIF投与群との間で、耐糖能、インスリン抵抗性に関する差はなく、NO−NIFが影響を与えないことが分った。
6)血圧について:
上記の耐糖能等と同様に、図5に示されるようにNO−NIFは血圧に対して何の影響も示さなかった。
9)脂肪細胞の肥大等の測定:
図7に示されるようにKKAyマウスにおいて、コントロール群とNO−NIF投与群が共に腎重量および白色脂肪細胞組織(WAT)重量の増加を生じ、投与の有無で差が見られなかった。即ち、NO−NIFは、腎重量とWAT重量の増加に対して影響を示さなかった。
図8と図9に示されるようにKKAyマウスにおいて、コントロール群とNO−NIF投与群が共に脂肪細胞の肥大を生じ、投与の有無で差が見られなかった。即ち、NO−NIFFは、脂肪細胞の大きさ(肥大)に対して影響を示さなかった。
以上のことから、NO−NIFは糖尿病性腎症の進展に対して抑制効果を示すが、随伴する副作用として血糖降下作用や降圧作用を示さず、安全な薬剤であることが示された。
本発明の糖尿病性腎症の治療剤は、血糖値や血圧、肥満などに対して影響を示さず、主作用として糖尿病性腎症の進展を阻止できる薬剤である。このように本発明のニトロソニフェジピン誘導体は、随伴する副作用のない糖尿病性腎症の治療剤であることから、ニトロソニフェジピン誘導体を母核化合物とする、これまでになかった新規な糖尿病性腎症治療剤を提供することができるようになった。
即ち、本発明のニトロソニフェジピン誘導体は、糖尿病治療において血糖コントロール困難な症例に対しても腎障害抑制効果を示し、糖尿病性腎症による透析導入を防ぐ新たな治療薬であることが示された。

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  1. ニトロソニフェジピンを有効成分とする糖尿病性腎症治療剤
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